互層・中間土層の支持地盤としての評価手法

【63】
全地連「技術e-フォーラム2007」札幌
互層・中間土層の支持地盤としての評価手法
1. はじめに
中央開発㈱
○遠藤
彰博
中央開発㈱
束原
純
中央開発㈱
前田
直也
の関係は,一般に qu が高い値を示すほどVs も高い値を
構造物基礎の直下や杭基礎の支持層の直下に砂質土と
示し,Vs=31 qu0.360(今井ら)の関係にある。本調査
粘性土の互層もしくは中間土層が堆積している場合,そ
結果の qu とVs は,qu に対してVs が若干高い値を示す
の支持力および変形を評価することは性能設計を行う上
ものの,概ね一般的な関係であるといえる。
で非常に重要である。そのためには,N値等の局所的な
表1
地盤情報だけでなく,地層全体をマクロ的に表現する地
一
般
盤情報に基づいて,その剛性等を評価することが必要で
ある。
そこで,本件では S 波速度を中心とした評価手
法を検討した。
Dcs1層の物理特性
湿 潤 密 度
ρt
1.55~1.91
(1.73)
g/cm3
土粒子の密度
3
g/cm
ρs
2.614~2.716
(2.682)
自然含水比
Wn
%
17.7~63.0
(44.0)
礫 分
%
0.0~7.0
(0.8)
砂 分
%
1.0~73.0
(20.6)
シ ル ト 分
%
15.0~83.0
(64.1)
粘 土 分
%
5.0~19.0
(14.6)
細粒分含有率
Fc
%
20.0~99.0
(78.7)
2. 調査内容
本調査地は大阪湾岸エリアに位置し,
水深8m程度の海
粒
度
域を浚渫土により埋立・造成されている。今回,当該地
における杭基礎の検討にあたり,支持地盤として上部洪
積層(段丘層)の礫質土層である Dg1層および Dg2層が挙
げられるが,その間に分布が確認された中間土層(Dcs1
均 等 係 数
Uc
層)の支持層としての評価について検討した。調査項目
平 均 粒 径
D50
mm
0.0175~0.500
(0.0838)
液 性 限 界
WL
%
43.6~48.9
(47.1)
塑 性 限 界
Wp
%
24.2~29.5
(27.0)
は次の通りである。
コ
ン
シ
特ス
性テ
ン
シ
・標準貫入試験
ー
・PS検層
・室内土質試験(一軸圧縮試験等)
9.82~27.23
(15.08)
塑 性 指 数
Ip
3.調査結果
19.4~21.3
(20.0)
2
一軸圧縮強さ qu(kN/m )
Dcs1層の物理特性および粒径加積曲線を図1,表1に示
0
100
200
300
400
S波速度 ( m / s )
0
10
10
0
0
-10
-10
-20
-20
100
200
300
400
500
600
す。Dcs1層は粘土層,砂層の互層状であり,粘土分が優
勢な土層である。N値も土質によりばらつきがみられ,
N=5~30(平均15)を示す。
100
通過質量百分率(%)
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
0.001
0.01
0.1
1
10
100
粒 径(mm)
図1
粒径加積曲線(Dcs1層)
Dcs1
PS検層のS波速度(Vs)および一軸圧縮強さ(qu)
の深度分布を図2に示す。Dcs1層のVs は180~260(平均
230)m/s であり,一般的な洪積粘性土・中間土層程度の
値を示す(図3)
。Vs のばらつきは土質のばらつきに起
Bsg
Bc
Dc1
因している。Vs とN値との相関性は良く,一般式と比
Dg1
Dc2
。
較すると,Vs に対してN値が若干低い値を示す(図4)
Dcs1
Dc3(U)
Dc3(L)
qu は,145~218(平均188)kN/m2であり,N値との相関
Dg2
Dcs2(粘土)
は,N値が大きくなると qu も大きくなる傾向がみられ,
Dcs2(砂)
Dc4
概ね qu=10Nから15Nの範囲内に分布する。Vs と qu
-30
図2
-30
Vs と qu の深度分布図
全地連「技術e-フォーラム2007」札幌
の一般的な範囲であったことから,同一の粘性土層とし
て表現できるものと考え,Vs ,qu の平均値等により地
盤定数の設定を行った。
Dcs1
Dcs1
図3
Vs の一般値と Dcs1層の測定値
S波速度 Vs (m/s)
1000
100
Dcs1
洪積砂質土の一般式
洪積粘性土の一般式
図5
一般式
沖積砂 :Vs=80.6N 0.331 洪積砂 :Vs=97.2N 0.323
沖積粘土:Vs=102N 0.292 洪積粘土:Vs=114N 0.294
10
1
10
100
1,000
N 値
図4 Vs とN値の関係
4.互層・中間土層の評価
地盤評価に際してN値を過信して粘性土・中間土に対
しても砂質土と同じ扱いをすると,Dcs1層のようなN値
表2
ヤング率とN値の関係
UBC による地盤の分類(一部抜粋)
地盤状況
硬岩
岩
非常に締まった砂・軟岩
硬い
軟弱
せん断波速度
Vs(m/s)
>1500
760~1500
360~760
180~360
<180
非排水せん断強さ
Cu(kPa)
>100
50~100
<50
=5~15程度の中間土層の支持力を過小評価する可能性
が高い。
近年,性能設計として変形解析等による評価が行われ
5.今後の課題
ており,対象地盤の荷重-沈下挙動は,地盤のせん断波
地盤のヤング率(Es)を求める方法は,平板載荷試験
速度(Vs)から求めた地盤のヤング率(Es)を用いた
や標準貫入試験のN値から求める手法など種々のものが
解析により比較的精度良く再現でき,その意味でVs(な
あるが,地盤の変形特性は,ひずみおよび拘束圧に依存
いしはEs)は土層の支持性能を評価する指標とみなせ,
して変化するため,建築構造設計指針等では,測定時の
UBC(Uniform Building Code)の地盤分類(図5,表2)
地盤条件や拘束圧が明確であるVs を用いる手法が推奨
にも用いられている。
このUBCの指標から分類すると,
されている。今回はVs を用いた地盤評価の一例につい
Dcs1層は本調査結果におけるVs ,qu より,「堅い」地盤
て紹介したが,今日の地盤調査に要求される地盤調査手
に該当する。
法を確立するため,これらのモデルを用いた変形解析等
Dcs1層は砂と粘土との互層地盤ではあるが,粒度特性
が粘性土優勢であること,Vs の分布範囲が洪積粘性土
を行い,実測値(試験値)と解析値との比較・検討を進
めていく必要があると考える。