. . 武田考司 鹿児島大学大学院 理工学研究科 物理科学専攻 2008 年 2 月 14 日 . . .. . FXS: 新開発のソフトウェア広帯域デジタル分光計 研究目的 . .. 本研究の目的は、十分に広帯域で安価なデジタル分光計を開 . 発し、6m 電波望遠鏡や VERA 入来電波望遠鏡に搭載すること である。 開発にあたって、以下のような性能を目標とした。 256 MHz の帯域幅 8192 点の分光点数 30.0 kHz の周波数分解能 (0.41 km s−1 @22 GHz) . . . 導入 本研究のインパクト 導入 . 汎用計算機上のソフトウェアで実装。 . コストを 2, 000, 000 円に抑えている。こ れは専用ハードウェア分光計の 10 分の 1 である。 性能の指標の一つである帯域幅は、従来 のものに比べて 8 倍である。 プログラムをコピーするだけで量産で きる。 . .. 低コストで量産も容易であることから、 デジタル分光計の普及促進を期待できる。 . 分光とデジタル化 分光計の役割 信号のデジタル化 方法 FXS の構成 . .. FFT 計算を LAN ネットワークで繋がれているコンピュータ . で分散し、リアルタイムで高速に実行する。 Distributor が FFT プロセッサに分配するデータ量をそれぞれ の性能に応じて調整する。 . . . 方法 周波数応答関数 . .. FXS で得るスペクトルは、真のスペクトルを sinc2 関数で畳 . み込んだものになる。 周波数応答関数を測定。半値幅 (周波数分解能) とサイドロー ブの大きさを求めた。 結果は、半値幅=27.8 kHz, サイドローブ =−13.7 dBm (4.2 %) であった。 . . . 評価 線形性 . .. 1024 channel 101 FXS: y=0.9932±0.002801x SA: y=0.9929±0.005206x 100 Detected Amplitude SG の出力を −68 から −32 . dBm まで 3 dB ステップで 変化させ、スペクトラムア ナライザと FXS の検出強度 を比較した。 1024, 4096, 7168 チャンネ ルで測定。 どの周波数チャンネルにお いても、スペクトラムアナ ライザと FXS の間には 1 % 以下の誤差しか見られな かった。 . . . 評価 10−1 10−2 10−3 10−3 10−2 10−1 100 Signal Generator Output 101 線形性 (続き) 評価 4096 channel 7168 channel 101 101 FXS: y=0.9967±0.001560x SA: y=1.001±0.002063x FXS: y=0.9926±0.002428x SA: y=0.9988±0.001649x 100 Detected Amplitude Detected Amplitude 100 10−1 10−2 10−3 10−3 10−1 10−2 10−3 10−2 10−1 100 Signal Generator Output 101 10−3 10−2 10−1 100 Signal Generator Output 101 感度 評価 感度が 積分時間 に比例して改善することを確かめる。 FXS を使用して 30 秒から 15600 秒まで熱雑音の積分データ を 30 秒毎に測定した。 −1/2 0.1 % 以下の誤差で 積分時間 に比例している。 . 108 RMS in Integrated Spectrum . .. −1/2 107 y=7.35157·107(±4.484·104)x−1/2+18153.3(±5140) 10 6 1 10 100 Total Integration Time [×30 sec] . . . テスト観測 . .. . 23.694, 23.722, 23.870 GHz の周波数を持つ NH3 (J, K) = (1, 1), (2, 2), (3, 3) 輝線を同時観測した。 Sgr B 分子雲の近くにある (l, b) = (0.750d, −0.125d) 地点 を鹿児島 6m 電波望遠鏡で観測した。 帯域幅は 256 MHz でこれは NH3 の周波数帯において 3200 km s−1 の速度帯域をカバーする。 . . . 評価 性能 議論 帯域幅 MHz 分光点数 チャンネル間隔 kHz 周波数分解能 kHz サイドローブ dB アナログ AOS 40 2048 20 ∗∗ ∗∗ デジタル NRFD FPGA 32 1024 2048 16383 16 61 ∗∗ 98 ∗∗ −61 FXS 256 8192 31 28 −14 Table: 各分光計の性能比較 FXS は帯域、分光点において FPGA にはかなわないものの、 . AOS、NRFD に対しては大きなアドバンテージがある。 FXS は計算機を調整することで FPGA ではオーバースペック な環境にも対応する。 ※時期を考慮する必要がある。 . .. . . . コストパフォーマンス A/D 含む コスト (万円) . .. FPGA ○ 300 FXS × 120 + 80 . NRFD は専用 LSI のため圧倒的に高価格。 FXS と FPGA は A/D の有無の差はあるが同価格帯である。 FXS ではデータ取り込みボードが 120 万円とコストを押し上 げており、よりコストを下げられる可能性がある。 FXS は A/D とは分離されているため、再利用できる可能性が ある。 . . . NRFD × 1000 議論 結論 . .. FXS は帯域幅や分光点において AOS,NRFD など既存の分光計 . を圧倒し、FPGA 分光計の性能にも迫る。 A/D などの既存の機器を活かす場合、機器の組み合わせの自 由度が高い FXS は有利であり、そうでない場合も A/D の選択 を上手くすれば低コストに抑えることができる。 FXS は以上の高性能と低コストの性格を合わせ持ち、様々な 望遠鏡への普及が期待できる。 . . . 結論 Van-Vleck 補正 . . .. 粗い量子化にともない、線 . 形性が失われるのでこれを 補正しなければならない。 Wiener-Khintchen の定理に 従い、パワースペクトルを 逆 FFT して得た自己相関関 数に補正曲線をかける。 入力パワーレベルにより、 この補正曲線は変化する。 . 離散フーリエ変換 . . . .. n=0 Vˆn exp(−2πink/N) . FXS の分光計算は離散フーリエ変換 (DFT) を高速化したアル . ゴリズムである高速フーリエ変換 (FFT) を利用している。 DFT の計算量 O (N2 ) に対し、FFT ならば O (N log N) に削 減できる。 FXS では FFT 計算にはソフトウェアライブラリである FFTW を使用している。 . . . .. . N−1 ∑ . Sk =
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