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は
じ
め
に
大阪市の教育改革を総合的かつ計画的に推進するために、平成25年3月に「大阪市教育振興基
本計画」が改訂されました。本市における教育のめざすべき目標像を、「全ての子どもたちが学
力を身に付けながら健やかに成長し、自立した個人として自己を確立し、他者とともに次代の社
会を担うようになる」こととし、そのために、「社会が多様化し激しく変化する中で、国際化の
進展や未曽有の災害の発生を踏まえ、子どもが心豊かに力強く生き抜き、未来を切り拓く力を備
えるようにする」ことが掲げられています。
大阪市教育センターにおきましては、学校園における教育改革の担い手である管理職をはじめ
とした教職員一人一人の資質・能力の向上を図るため、研修、研究等の事業に取り組んできまし
た。
教職員のキャリアステージに応じた「研修体系」の充実に努めるとともに、今年度から「教師
力トップアシスト事業」では、若手教員の指導力の向上をめざして、全小・中学校に教育指導員
や大学教授等有識者を派遣し、校内での指導や授業研究を伴う校内研修の活性化を図ることに加
え、若手教員リーダーとなる「メンター」を位置づけた若手教員育成のための校内体制づくりを
支援してきました。
また、今日的教育課題をテーマとした「学校園運営研修」を新設し、学校園全体として教職員
が今日的な教育課題に対する共通理解を深め、組織として力を発揮できるように、管理職研修の
改編に取り組みました。
さらに、「学校教育ICT活用事業」では、モデル校(小4校、中2校、小中一貫校1校)に
対し、タブレットPCや電子黒板等のICT機器を整備するとともに、機器の運用、ICTを活
用した授業づくりに関する研修を開始しました。また、これからの大阪市の教育を支える、実践
的指導力を備えた人材を育成するために、学生等を対象に「大阪市教師養成講座」を開設してい
ます。講座修了者の多くが本市教員として活躍しています。
平成25年度に大阪市教育センターは、開所30周年を迎えます。そこで、3つの『C』、『Change
(チェンジ)』『Chance(チャンス)』『Challenge(チャレンジ)』をキャッチフレーズとし
て掲げ、研修、研究を通して、今後も教職員の資質・能力の向上に努めて参ります。
平成25年3月
大阪市教育センター
所長
沢田 和夫
目
次
はじめに
(1)平成 24 年度 教育センター機構図・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
(2)研修事業評価会議 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
【1】教師力向上をめざして
(1)教師力トップアシスト事業 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
(2)OJT支援事業 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
(3)教員基本研修 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
(4)地域研修 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
(5)管理職研修 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
(6)学校マネジメント研修 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14
(7)大阪市教師養成講座 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15
(8)学校教育ICT活用事業 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17
(9)指導改善研修会 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19
(10)小学校外国語活動・中学校英語科の連携した研修 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
(11)道徳教育 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22
(12)習熟度別授業の進め方研修 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24
(13)海外派遣研修 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26
(14)特別支援教育研修・特別支援教育コーディネーター連絡協議会 ・・・・・・・・・・・・27
(15)情報教育研修 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29
(16)教職員人権教育研修 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30
(17)養護教諭・養護職員研修 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31
(18)栄養教諭・学校栄養職員研修 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・32
(19)幼稚園教育研修 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33
【2】研究の推進
(1)研究支援事業
(2)研究の概要
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34
①
小・中学生の動植物との体験・認識及び環境意識に関する研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36
②
言語活動の基盤となる「言語力」の育成に関する研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・38
③
言語活動の充実を図り、思考力・判断力・表現力を育てる算数科の指導・・・・・・・・・・・40
④ 「Differentiated Instruction:DI(生徒の多様性に応じた指導)」を取り入れた中学校英
語科の授業実践
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42
⑤
帰国・渡日の子どもの自己実現をめざす支援に関する研究(Ⅱ)・・・・・・・・・・・・・・・・・44
⑥
小学校通常学級における授業のユニバーサルデザインに関する研究・・・・・・・・・・・・・・・46
(3)情報教育
長期研修報告
「実施可能なICTを利用した英語授業の構築」 ・・・・・48
【3】教員の自己研鑽に対する支援
(1)教師力向上支援室 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・51
(2)
「授業の巧 DVD」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・53
(3)自主研修支援 夜間セミナー ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・54
【4】報告
(1)指定都市教育研究所連盟第 17 次共同研究 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・55
編集後記
平成24年度 教育センター 機構図
所 長
文書、予算、決算、物品、施設設備の管理、その他
管理担当
6572-0263
基本研修
企画
グループ
6572-0657
専門研修
企画
グループ
6572-0603
教育振興
担当
指導研究
グループ
6572-0667
教育情報サービス
6572-0810
情報教育
グループ
6572-0822
特別支援
教育
グループ
特別支援教育推進
ルーム
教員の研修についての計画、立案、実施、連絡調整
・基本研修(新任、2年、5年、10年)
・内定者研修
・大阪市教師養成講座
・校内研修支援(OJT支援事業)
・教師力トップアシスト事業
・特別企画研修
・長期自主研修、長期社会体験研修
・大学連携
教職員の専門研修等についての計画、立案、実施、連絡調整
・管理職研修、学校マネジメント研修
・主任・主事等研修
・教職員人権教育研修(課題別研修・実践講座・地域研修)
・人権教育教材の調査・研究及び教材の作成
・児童・生徒指導、子ども理解等に関する研修
・幼児教育研修
・養護教諭・養護職員研修
・栄養教諭・学校栄養職員研修
研修・研究会での指導助言や調査・研究及び教科等の研修
・教科等指導力向上研修、学力向上授業研修
・教師力向上支援室の運営
(教育図書、資料の収集、整理、保管と教育情報の提供、教材開発等)
・教育センターにおける研究推進及び紀要発行
・教育センターフォーラムの計画、実施
・全国学力・学習状況調査の分析、検証、改善
・研究支援事業
・夜間セミナーの実施
・指導要請
情報教育の推進に関わる事業及び運用、保守、管理
・情報教育研修
・ネットワークシステム運用、保守、管理
・ソフトウェアライブラリセンターの運用、保守、管理
・情報教育に関する調査・研究、学校への技術支援
特別支援教育に関する研修、相談、調査・研究
・特別支援教育に関する研修の企画、立案実施
・特別支援教育に関する相談
・特別支援教育に関する調査・研究
(こども相談センター教育相談担当兼務)
6572-0567
1
研修事業評価会議
学校園の実態に応じた支援とさらなる研修の充実をめざして
1
はじめに
○新任教員研修会の校種間連携研修を見学した
が、興味深い。企業でも同様の研修を行って
いる。成功・失敗の事例を出すことで、押さ
えるべき定石に気付くことが重要だ。
本センターの研修事業の改善・充実に資する
ことを目的として、大学等学識経験者・民間企
業関係者・学校園関係者からなる「大阪市教育セ
○人材育成の大切な視点は人間力だ。先人の優れ
た知恵に学んだり、新たな見聞を広めたり等、
管理 職自 身 も学 び 続け る こと ので き る 研修や
ンター研修事業評価会議」を年間3回(8月・12
後進を育てる力となる研修を行ってほしい。
○学校園マネジメント力の向上をめざす研修で
は、「『育てる心』を育成する」内容を入れて
いただきたい。
月・2月)開催し、研修事業の一層の充実をめ
ざして協議を行いました。
2
会議の協議内容
重点課題として取り上げた内容
① 若手教員の育成
② 学校園マネジメント力の向上
貴重なご意見を参考に
さらなる改善を図ります
本年度は、大阪市教育センター経営方針につ
いて報告するとともに重点課題を中心に協議を
◆「教師力トップアシスト事業」により、小・中学
行いました。
「教師力キャリアアップシート」の
校において、授業研究を伴う校内研修の年間目標
活用方法について、指導力の向上をめざしたメ
実施回数である小学校9回、中学校6回を達成で
ンター研修の実施について、管理職研修や学校
きるようにします(平成 24 年度小学校 86.6%、
園マネジメント研修についての提言がありまし
中学校 95.3%が達成)。
た。主な意見を掲載します。
◆「OJT事業」は今後も小・中学校2年目教員に
対する支援を推進していきます。
○学校園の規模や教員の構成など各校園により
異なった実態があるので、若手教員の育成に
対する意識にも違いがある。各校園の実態に
合わせた支援にしてほしい。
○「OJT事業」は非常にありがたい。中学校
では 1 名配置の教科は校内での指導が難し
く、教育センターの指導に期待している。
◆新任・2年・5年次研修の研修内容と「教師力キ
ャリアアップシート」の内容を関連づけて、シー
トのより有効な活用方策について検討します。
◆各年次研修を関連させて、研修内容の系統化を図
○「教師力キャリアアップシート」について、教
員として身につけるべき内容が体系的にまとめ
られているので、若手育成の場面で活用したい。
小学校・中学校だけでなく、幼稚園・特別支援
学校でも校園種にあわせて活用できるよう、デ
ータを送付または Web にアップしていただきた
い。
○メンターを支援するには、全てのメンターが
研修を受講することが大切である。また、メ
ンター対象のアンケート結果を共有できるよ
うに工夫することで、同じような立場の人が
何を考えどのような取組をしているのかアイ
ディアのもととなるようなものを提供でき、
メンターはもとより若手の支援にもなるので
はないか。
りながら、学校が組織的にメンター、ミドルリー
ダーの育成に取り組めるよう支援します。
◆次年度からの新任教員研修の2年実施に伴い、
「キ
ャリアプランの設定」の内容の見直しを図ります。
◆新任・5年次・10 年次で実施している校種間連携
研修について、キャリアステージに応じて系統化
を図り、継続的な実践につないでいきます。
◆「『管理職研修』に関するアンケート」結果をもと
に、
「人材育成」、
「組織マネジメント」、
「ICTの
活用」等に重点を置いた研修をさらに充実します。
-2-
教師力トップアシスト事業
「教員の指導力」の一層の向上
教師力の向上の鍵はチーム力
1
はじめに
(1)
大阪市では、教職員の大量退職に伴い、現在
教育指導員による学校訪問
1つ目の学校支援は、教育指導員(経験豊富
毎年 600 人規模の新規採用が続いています。
な退職校長)による学校訪問です。教育指導員
が全ての小・中学校の校内研修の実施状況に応
じて年間2~5回訪問し、若手教員の育成や校
内研修の推進について学校をサポートします。
教育指導員は定例会を開き、よりよい支援の
あり方について協議したり、情報交換をしたり
しています。教育指導員も時には、ワークショ
ップ型研究協議会の進め方についての指導や、
若手教員が企画した研修会に参加し、助言など
平成 30 年頃には管理職も含めて小学校で
もしています。
40%強、中学校で 50%強を採用 10 年以下の教
【教育指導員定例会(小学校)】
員が占めると予測されます。加えて豊富な力量
を持つベテラン教員が大量に退職していくこと
を見通したとき、ベテラン教員の指導力や学校
文化を継承するとともに、若手教員が自律的に
学び、教師力を高める体制づくりが急務です。
2
「教師力トップアシスト事業」について
平成 21 年度より3年間実施した
「授業力アッ
(2)
中核となる教員への研修
プサポート授業」の成果を受けて、今年度から
2つ目の学校支援は、中核となる教員への研
スタートした「教師力トップアシスト事業」で
修です。校内研修の中核となる「校内研修主担
は、授業研究を伴う「校内研修の活性化」と、
者」を対象にした「校内研修主担者研修会」を
若手教員リーダーとなるメンターを位置づけた
今年度は2回、若手教員のリーダーである「メ
組織的な「若手教員の育成」を目的の柱に学校
ンター」に対する「メンター研修会」を2回実
を支援しています。
施しました。
ア
3 「教師力トップアシスト事業」の学校への
校内研修主担者研修会
第1回目の「校内研修主担者研修会」(7月
支援について
26 日)では、鳴門教育大学の村川教授を招聘し、
-3-
ワークショップ型の研究協議の進め方について
支援する状況を設定し、演じることにより具体
研修しました。研修会では、各区・校種ごとに
的な取組への見通しをもつことができるように
分かれて、まず実際の授業のビデオを視聴して
しました。
模擬授業参観をしました。授業参観を通して授
この研修会では、中学校区でグループをつく
業の良さや、自己の授業に取り入れたい点、改
り、小・中学校のメンターが各校の状況を交流
善点について観察しました。
しながら、各校のメンタリングの状況について
協議を行いました。近くの学校の同じ立場の教
【校内研修主担者研修会】
員と知り合い、率直に話し合いました。このよ
うに、
「校内研修主担者研修会」
「メンター研修
会」ともに、人のつながり・チーム力を生み出
すことを大切にしています。
2回目の
「メンター研修会」
(2 月 18 日)では、
小・中学校のメンターの代表が座談会形式で各
校の取組の発表を報告し、その後の班別協議会
その後、様々な手法(指導案拡大シート・マ
では、今後のメンタリングや学校体制作りに、
トリックスシート・概念化シート)で付箋を使
見通しを持ち、意欲を高めました。
ったワークショップ型研究協議を行い、各校で
の校内研修の実態の情報交換をおこないました。
第2回目の「校内研修主担者研修会」(11 月
26 日)では、引き続き村川教授を招聘し、1回
目の研修会で実施したアンケートの結果をもと
に、校内研修主担者の課題や悩みについて、具
体的な事例や解決策を示していただきました。
その後の班別研究協議では、各校での実施方法
や成果と課題を交流しました。
イ
メンター研修会
(3)
大学教授等の派遣について
今年度から各小・中学校では、若手教員リー
3つ目の学校支援は、モデル校・外部講師招
ダーである「メンター」を位置づけ、若手教員
聘校への大学教授・有識者等の派遣です。校内
の育成に取り組んでいます。
研修や若手教員の育成について先進的に進め、
9月4日に、1回目の「メンター研修会」を
その手法や成果を広める学校を支援するため、
開催しました。高知大学の島田希先生を招聘し、
大学教授等の派遣を行います。
メンターの意義と役割、実践の方法について研
モデル校は平成 24・25 年度の2年間指定し、
修しました。メンタリングの方法についてはロ
年間3回(計6回)の講師派遣を行います。小・
ールプレイングを取り入れ、支援する側のメン
中学校合わせて9校を指定しています。
ターが、支援される側の若手教員(メンティ)を
モデル校は、今日的な5つの教育課題「①若
-4-
手教員育成のための校内研修体制づくり」
「②ワ
きたりして、自己の授業改善に役立っている。
」
ークショップ型校内研修による授業改善」
「③学
という報告がありました。小・中学校合同で授
力向上に資する授業研究の在り方」
「④授業改善
業研究に取り組んだ学校では、研究協議会で校
を軸とした小中一貫した教育」
「⑤全教員の公開
種を越えて系統的な指導改善に向けた意見交流
授業による教師力の向上」からテーマを選択し
を行い、両校の教員にとって新たな気づきがあ
て研究・実践を行っています。
りました。
外部講師招聘校は、1年間の指定で年間2回
5
の講師派遣を行います。今年度は 35 校指定して
若手教員育成の取組
事業のもう一つの柱である「若手教員の育成」
います。今年度は、モデル校で 24 回、外部講師
では、メンターが若手教員のニーズに合わせ、
招聘校で 95 回、計 119 回大学教授・有識者等を
テーマを設定して研究授業を実施したり、事例
派遣しました。
検討会や研究協議会を行なったりするなど、積
このモデル校・外部講師招聘校では、教員一
極的に取り組んでいる学校がありました。また、
人一人の授業力を高めるために、より多くの研
若手教員研修会の講師として中堅教員やベテラ
究授業・協議会の実施が有効であると考え、授
ン教員を招いている学校では、若手教員と中
業を伴う校内研修の年間実施回数を、全国の平
堅・ベテラン教員がつながり、学校が活性化し
均的実施回数である小学校で9回、中学校では
てきています。今年度、小学校では 98%、中学
6回以上をめざしています。
校では 100%の学校でメンターを位置づけてい
ます。
4
校内研修の活性化
事業の柱の一つである「校内研修の活性化」
の取組について、従来の協議方法からワークシ
ョップ型研究協議にチャレンジしたという学校
からは、
「ワークショップ型に変えたことで、全
員が積極的に意見を述べることができた。
事業評価アンケートの「メンターとして自覚
をもって若手教員を支援した」という設問に対
して、
「とても思う」
「思う」と肯定的な回答し
た割合は、小学校が 77%、中学校が 83%でし
た。メンターの先生方が自ら動き出している様
子が見られます。
メンターが取り組んだことは上位から「若手
特に若手教員からは、
学年・教科を越えて様々
教員の悩みを聞いた。相談を受けた。」
「授業や・
な意見交換ができたり、些細なことでも質問で
児童生徒への指導についてアドバイスした。」
-5-
「若手教員がもつ課題の解決策をともに考えた」
若手教員が学び合いをする学校もあります。自
でした。
己評価をした後に、自分の課題について話し合
メンターが若手教員に寄り添い、共に考える
ったり、メンターに相談したりしています。 項
という「身近な相談役」からスタートしている
目に沿って話し合い、例えば『豊かな心』を育
ことが、うかがえました。
てるには、どんな指導をすればいいのだろうと、
「メンターとして自分を高めることができた
気づくことができています。教材・発問・板書・
か」との質問に、
「とても思う」
「思う」と肯定
資料についてアイデアを出し合うことができま
的な回答は、小学校では 75%、中学校では 74%
した。
でした。
メンターを中心とした若手教員育成の学び合
7
成果と課題について
いが、今後さらに広がっていくためには、若手
各校の教師力トップアシスト事業の実施報告
教員とそれを支える中堅・ベテラン教員を一つ
書から、授業研究を伴う校内研修の年間平均実
のチームとして機能させていくことが必要です。
施回数は、小学校 13.1 回、中学校 10.7 回とな
りました。平成 25 年度末の到達目標である「小
6
「教師力キャリアアップシート」の活用
学校9回」
「中学校6回」を達成した学校の割合
今年度、若手教員育成をめざした自己チェッ
は、小学校 85.6%、中学校 93.8%となりました。
クのための「教師力キャリアアップシート」を
【授業研究を伴う校内研修の実施回数】
小学校・中学校の1年目から5年目のすべての
年 度
H19
H20
H21
H22
H23
H24
教員に配布しました。
小学校回 数
7
7
8.3
9.8
9.4
13.1
中学校回 数
2
3
3.7
6.9
7.7
10.7
※H19,20 は全国学力・学習状況調査。H21~23 は授業力アップサポート事業報告書による。
今後も、引き続き児童・生徒の学力向上につ
ながる教員の指導力の向上を図るために、メン
ター及びミドルリーダーとなる校内研修主担者
の育成に努めます。
メンター研修会では、研究協議のグループ分
けを行政区やブロック単位で行い、取組を交流
「教師力キャリアアップシート」は、5年目
することにより、各校の若手教員研修の内容の
までの教員が身に付けたい力を 30 項目示し、自
充実を図ります。また校内研修主担者にはファ
己評価できるシートで、授業力だけでなく「教
シリテーション力を身につけるような研修を進
師としての基本的な姿勢」や「児童生徒理解」
めていきます。
など、広い視点から教師としての自己をふり返
教師力トップアシスト事業では、つながりの
ることができます。
輪を広げながら、チームとして若手育成・校内
「教師力キャリアアップシート」を活用して
研修会の活性化を推進するよう努めていきます。
-6-
校内研修支援「OJT事業」
2年目教員の指導力向上をめざして!
1
校内研修支援「OJT事業」とは
業を実施しています。受講者の様子について教
小・中学校2年目教員を対象にした校内研修
育指導員から次のような報告がありました。
支援「OJT事業」では、指導力の向上をめざ
・自己の課題を意識し、「わかる」「楽しい」
して、教育指導員(経験豊富な退職校長)が学
授業づくりに努めている。
校を訪問し、直接指導を行っています。
2
・熱心な教材研究をし、教具を工夫して作成
1学期の学校訪問
している。
教育指導員が受講者の日常の授業を参観し、
・わかりやすい指示や発問の工夫、一人一人
児童・生徒とのコミュニケーションの取り方は
へ的確な声かけができてきている。
適切か、児童・生徒一人一人の学習の様子を把握
また、この研究授業の実施に向けて、校内の
し、適切に指導しているか等について、具体的
若手教員で主体的に事前検討会をしたり、授業
に指導助言を行いました。
参観・協議会を実施したりして、若手教員が学
受講者は、助言をもとに2年次研修で学んだ
び合い高め合う学校も増えてきています。参加
「PDCAサイクル」に沿って、自分の授業づ
した若手教員からは、
「教育指導員から『教師と
くりを見直し、課題を明確にして授業改善を行
して大切なこと』や『授業の基礎基本』につい
いました。
て学ぶことができ、非常に有意義であった」と
3
の声が聞かれました。
夏季グループ研修
夏季休業中には、
「グループ研修」を実施しま
5
成果と今後の課題
した。小学校では区担当の教育指導員が、中学
校内研修支援「OJT事業」についての事業
校では各教科担当指導主事が教育指導員と連携
評価アンケートを校長と受講者を対象に実施し
し、「新学習指導要領で求められる授業づくり」
ました。
や「学習意欲を高め
「授業改善への意識」について「向上した」と回
る指導」について、
答した校長は小・中学校ともに 99%で、受講者
研修を行いました。
は小学校 98%、中学校 99%でした。教育指導員
受講者は、グルー
によるきめ細かな指導が受講者の授業改善への
プで協議したり、自
取組に効果を上げています。また、「OJT対象
己の実践を交流した
者を育成する雰囲気」が「高まった」との回答し
りして充実した学び合いになりました。教育指
た割合は、小学校の校長が 98%で受講者が 85%、
導員からは、
「今後、校内でも若手教員の学び合
中学校の校長が 82%、受講者 81%で、本事業を
いを大切にし、授業力の向上に努めてほしい」
始めた平成 20 年から大きく増加しました。本事
との助言がありました。
業が若手教員育成の体制づくりに年々効果的に
4
活用されていることがわかります。今後も本事
2・3学期の学校訪問
2・3学期には、1学期の訪問指導や夏季グ
業を通して2年次教員育成、増加する若手教員
ループ研修の成果を活かして、受講者が研究授
育成の体制づくりへ支援を行っていきます。
-7-
教員基本研修
教員が自ら学び、教師力の向上をめざす
~キャリアステージに応じた、PDCAサイクルに基づく研修~
大阪市教育センターでは、教員のキャリアス
しました。
テージに応じた研修を実施しています。
1
新任教員研修会
キャリアステージの「ステップ1」として新
新任研修会の「マナー研修」、「保護者との関
任教員、経験2年目の教員に基礎的・基本的な
係づくり研修」においては具体的な場面を設定
知識・技能の習得を、
「ステップ2」として経験
してロールプレイングを取り入れた研修を行い
5年目の教員に経験を踏まえ、より高い知識・
ました。これらの研修をとおして、対人関係に
技能の習得を、
「ステップ3」として経験 10 年
おける基本的なコミュニケーション力の向上を
目の教員に広い見地からの具体的な教育課題の
図りました。また、連続する校種間での連携し
解決ができる資質・能力の習得を支援していま
た教育の重要性を理解するために、
「校種間連携
す。このように各年次研修で身につけるべき資
研修」や社会的視野を広げるために「社会体験
質・能力を明らかにし、系統性・継続性を重視
研修」を実施しています。この他にも「コンプ
しながら、PDCAサイクルに基づいた研修を
ライアンス研修」
、「特別支援教育研修」
、
「人権
実施しています。
教育研修」など、幅広い内容にわたって研修会
を実施し、基礎的・基本的な知識・技能の習得
を図っています。また、新任教員が自主的に研
修に参加できるよう研修形態としてワークショ
ップや演習等の参加体験型の研修を取り入れ、
受講者が自ら学び、深めていく工夫をしていま
す。研修受講後に調査しているアンケート結果
の平均充実度が 97%であったことから、新任教
員のニーズにあった研修内容であったことが分
かります。
今年度は、各年次研修のつながりをもたせる
ため、新任教員に対して経験2年目の教員が、
経験2年目の教員に対しては経験5年目の教員
が、
経験5年目の教員に対しては経験 10 年目の
教員が、それぞれの経験を踏まえた助言者とし
て関わるようにしました。また、各年次研修の
全体研修によって学校園を越えた教員の横のつ
ながり、先輩教員の具体的な指導から学ぶ縦の
つながりを強めた系統性を重視した研修を実施
【ロールプレイングを取り入れた研修】
-8-
校種別研修では教員としての専門性を高める
力向上への取組」についての実践報告を聞き、
「教科・領域等研修」
、先進的な教育実践を学ぶ
先輩教員と協議することで、2年目の自己実践
「新任教員研究発表会参加研修(小・中)
」「全
への見通しを持ち、校内での研究授業の実施を
市一斉研究発表会参加研修(中)
」を実施し、教
含め、自らの研修計画を立案していきました。
科等指導力の向上を図っています。
2月実施の共通研修会(2)では、一年間の自己
実践をふり返り、班別で実践交流を行うととも
に、今後もキャリアステージに応じた研修に取
り組み、5年目を見据えた教師力向上に向けて
「授業改善に向けたPDCAサイクル」を実践
することの大切さを学べるようにしました。ま
た、若手教員が増加する中、校内では若手教員
の先輩として、相談相手や助言者となる「メン
ター」の役割を担う必要性についても協議しま
した。
今後も研究授業の実施や教科等指導力向上研
【ワークショップ型を取り入れた校種間連携研修会】
今後も、教員としての基礎的・基本的な知識・
修会を必修研修に位置づけるなど、教師力向上
技能の習得をめざし、新任教員研修会の充実を
を図る若手教員の育成に努めます。
図っていきます。
3
2
2年次研修会
5年次研修
経験5年目の教員は、キャリアステージの「ス
2年次研修は、キャリアステージの「ステッ
テップ2」にあたり、メンター(若手教員リーダ
プ1」にあたり、新任教員研修会に引き続き、
ー)として、自覚を高めるとともに、より高い専
教科等の実践的な指導力の向上を目的として、
門的知識・技能の習得を図ることが求められて
実施しています。授業改善を図ることで指導力
います。
向上を図る「PDCAサイクル」の進め方につ
6月の共通研修(1)では、奈良教育大学の小柳
いて研修し、授業デザイン力を身につけます。
和喜雄教授に「メンターの意義と実践」の講話
をもとに、自己の課題と若手教員研修の取組に
ついて班別協議を行いました。若手教員への
関わり方等のメンタリングについて学びました。
7月の共通研修(2)では、関西大学の磯野雅治
先生の「人間尊重を基盤とした『仲間づくり』
『学級づくり』
」に関する講話や先輩教員の実践
報告から、人間尊重を基盤とした教育について
班別協議を行い人権教育についての理解を深め
ました。1月の共通研修(3)では、経験 10 年目
【2年次研修「先輩教員の実践報告を聞く」
】
の先輩教員の実践報告に続き、先輩との協議を
6月実施の共通研修(1)では、
「授業改善に向
とおして、教科指導だけでなく、若手教員のか
けたPDCAサイクル」について学び、校園種
かわり方や学校組織を意識した取組の大切さに
別協議会で、経験5年目の先輩教員から、
「指導
気づくことができました。
-9-
今後、10 年目を見据え、PDCAサイクルに
は、大阪ガス、NTT日本、ニッケ、パナソニ
そって研修を行うことで、自主的・主体的に自
ックの4社に 47 名が受講しました。事業活動に
己研鑽に取り組むミドルリーダーの育成を図り
対する考え方や人材育成の取組、地域貢献、環
ます。
境問題への対応等、幅広い分野に対する理解を
深めるとともに、自分を振り返る契機としてい
ます。
【5年次研修「先輩教員の実践報告を聞く」
】
4
10 年次研修
経験10年目の教員は、
キャリアステージの
「ス
【
「民間企業研修」環境問題についての話を聞く】
テップ3」にあたり、主任等の主要な役割を担
共通研修会(4)では、
「若手教員を育成するた
うとともに、若手教員への助言・援助などの指
めの取組~学校組織マネジメントの視点から
導的役割やベテラン教員と若手教員のパイプ役
~」の実践報告をもとに班別協議を行いました。
として期待されています。特に教員に求められ
「組織としての助言者となり、校務の改善すべ
る資質能力等の専門知識だけでなく、広く学校
き点を具体的に伝えたり、保護者対応などすぐ
園経営に参画する学校マネジメント力が求めら
に相談できる体制を整えたりしてきた。」
「若手
れています。
教員グループを組織化し、指導・助言にベテラ
今年度は、190 名が 10 年次研修を受講しまし
ン教員が参加できるようにした。」など、組織を
た。共通研修会(1)では、
「若手教員を育成する
意識した取組が報告されていました。
ための取組~学校組織マネジメントの視点から
~」の講話から自己実践計画をたて、実践研究
に努めるようにしました。また、共通研修会(2)
「特別支援教育研修」や共通研修会(3)「人権教
育研修」から自校の課題を明らかにし、学校の
中核教員の立場で班別協議を行い、課題解決に
向けての取組について意見交流を行いました。
また、自己の課題にあった研修が受講できる
ように、大学等と連携して 26 講座から選択し、
受講できるようにしています。さらに、地域で
【10 年次研修若手教員の育成についての班別協議】
の「社会体験研修」は、校区内の事業所とし、
これらの研修をとおして、ミドルリーダーと
地域の実態や思いにふれながら、対人関係能力
して、さらに資質・能力を高め、広い見地から
の向上を図るともに社会的責任について理解を
の教育課題解決に向けた組織的な取組が実践で
深められるようにしています。
「民間企業研修」
きるようにします。
- 10 -
地域研修
地域の活力となる教育実践をめざして
1
地域研修
く、学級でも使えるので役に立ちます。」
「炎の
地域研修は、各校園教職員が自ら果たすべき
燃え方に合わせた
役割の重要性を認識し、専門的な知識や実践的
ミニゲームがたく
な指導力などの資質向上に努めることを目的と
さんあることを知
して、
「教職員地域研修推進委員会」が企画・運
りました。
」などの
営しています。
感想が数多くあり
本年度の研修は、教科指導・人権教育・防災
ました。
教育・いじめ・児童虐待防止・野宿者問題・国
際理解教育・在日外国人教育・特別支援教育・
②「沖縄を知ろう」(8月・12 月)
男女共同参画・共生教育・平和学習など、各地
工房「ゆいま~る」代表の米田文泰さんを講
域(各ブロック)や校園の課題に基づいた内容
師として、例年、受講希望者が特に多い状況か
を取り上げ、研修を実施しました。
ら、夏季冬季あわせて6回研修を行いました。
研修の形態についても、講演・実習・公開授
1部は、米田さんが沖縄で暮らした4年間で
業・フィールドワーク・体験など、各地域の実
感じ取った歴史や文化、そして沖縄での人との
態や課題に即した形で行いました。
「ゆいま~る」
(結びつき)についての講話。
市内全区で実施した「人権教育実践交流会」
2部は、シーサーをモチーフにした模擬授業。
では、報告者と参加者が共に各学校園での実践
3部では、授業展開をイメージしながら実際
を出し合うことで、お互いに教育実践力を高め
にシーサーを制作しました。実技研修中、米田
ていくことをめざして、交流を深めました。
さんから「シーサーの容姿に拘らず、子どもた
ちの発想で個性豊かな作品ができるように指導
してください。
」と指示がありました。
2
研修の具体的な取り組み
受講者から研修を振り返って、
「シーサー作り
(1)合同研修会
が、平和について考える導入になればと思いま
①集団づくり実践講座(6月)
した。」など、人権教育へのきっかけとして活用
大阪市立びわ湖青少年の家の江島徹さんと木
したいといった意欲的な感想が多くありました。
本博之さんを講師として、
「仲間づくりのための
キャンプファイヤーゲームと集団遊び」をテー
③「防災を体験し、考える」
(8月)
マに実践講座を実施しました。内容は、宿泊行
体験学習と実践報告による防災教育研修を実
事に向けて、子どもの人数や学年に応じたキャ
施しました。
ンプファイヤーのプログラム作りやゲームの
前半は、大阪市立阿倍野防災センターで防災
進行の仕方についての説明を受けながら集団ゲ
体験を行い、後半は、鶴見橋中学校の教員と生
ームの体験にとりくみました。
徒から「防災教育実践の取組みから学ぶ」をテ
受講者からは、
「キャンプファイヤーだけでな
ーマにした報告と意見交流を行いました。生徒
- 11 -
による報告では、
「『いのち』を見つめ、
『つなが
中学校では、授業力の向上と若手教員の育成、
り』の大切さを確かめる」を合言葉に取り組ん
教員間の連携を目的に6回の研修会を行いまし
だ防災活動から学んだことや、その活動内容を
た。研修会では、各教科の専門性を高め授業に
近隣の小学校をはじめさまざまなところで発表
生かそうと、参加した教員から実践に向けて積
し、防災の輪を広めていく中で気づいたことな
極的な討議がされました。
どを力強く報告してくれました。
受講者からは、「“普段していることを真剣
(3)人権教育実践交流会
に!”という言葉の重みを感じることができ、
「人権教育実践交流会」は、成果のあった教
自校の学級の子どもたちに返していきたいと思
育実践だけを報告するのではなく、実践報告を
いました。
」など、防災教育が人権や道徳の学習
通して参加者が共に各学校園での実践を出し合
に通じるものである
い交流することによって、教職員が自己変革す
ことを実感したとい
ることを目的としています。実践を交流する中
う内容の感想が多く
で、一人ひとりを大切にする教育の実践を確認
ありました。
し合い高め合う機会として活発な交流が行われ
ました。
④「私の戦争体験」
(9月)
交流会では、子どもたちが「いのちを大切に
瀧本邦慶さん自身が、整備兵として軍艦「飛
すること」や「みんなと仲良くすること」を学
龍」に配属され、体験された「戦争」について
び合う、共生の心を醸成することを大切にして
語っていただきました。
います。また、他校種の教職員が、この実践交
瀧本さんは、
戦争で生き残った体験者として、
流会を通して異校種間の交流や連携を深める意
戦いや飢餓生活によって大勢の人が命を落とし
義深い機会となっています。
たさまざまな場面を振り返り、平和の大切さを
力強く伝えてくださいました。
受講者からは、
「子どもが親よりも先に死ぬよ
3
成果と課題
うな悲しい歴史を2度と繰り返してはならな
各地域に根ざした研修をめざして、教員の活
い。
」などの感想がありました。この他、自身の
力となるよう地域研修を実施しました。その中
祖父や父親が戦死した受講者からも「教師とし
で、教員が人権に対する意識・態度・実践的な
て子どもたちに伝えていきたい」といった決意
行動力などのさまざまな資質や能力を身に付け
を感じさせるものもありました。
るには、日常の教員活動の中で、どれだけ子ど
もたちと関わり、その実態と思いを知ることが、
(2)教科研修会
まず何よりも大切であることを共通理解するこ
学力向上のために、小学校教育研究会・中学
とができました。
校教育研究会と連携し、さまざまな授業実践研
今後の課題としては、地域研修に参加した教
修会を通して、教科指導の充実を図りました。
職員の内面的な変化や教育実践による子どもた
小学校は、
研究授業をすべての研究部に広げ、
ちの変容を把握するよう努め、より一層、教職
70 回実施しました。研修会では、教員の必要に
員の資質向上と教育実践に役立つ研修を実施し
応じて教科・領域を選択し、積極的に参加して
ていきたいと考えています。
いました。
- 12 -
管理職研修
学校園の活性化を図るために
づ
1
管理職研修
づき」、
それに対して何をすればいいかを「考え」
、
大阪市立学校活性化条例では、
「学校が子ども、
「話し合う」こと、これが本来の「防災」であ
保護者や地域住民等の意向をくみ取り、教職員
る。更に、災害の実情に学び、巨大地震は絶対
が能力を十分に発揮し、学校が子どもの活気あ
に起こることを前提に、子どもたちにどのよう
ふれる場となるよう運営することで、学校活性
な故郷を残すかといった、これまでの常識にと
化に資することを目的とする。
」という内容が盛
らわれない視点を持つことの大切さなどを語ら
り込まれています。大阪市教育センターでは、
れました。
管理職に対して、その権限と責任により、自立
3
「教頭・幼稚園主任研修会」(保護者理解)
的な学校運営を行い、子どもや保護者の意向に
「教頭・幼稚園主任研修会」では、学校園運
応え、学校園や地域の実情に応じた特色ある教
営に関わる様々な課題に対して、幅広い知識や
育実践を創造し、
学校園の活性化が図れるよう、
的確な判断力、迅速な対応力等を高めることを
研修を実施しています。
ねらいとして、より実践的な内容の研修を実施
特に今年度より、
「学校園運営研修会」を新た
しました。
「保護者理解」をテーマとした研修で
に設置し、管理職が教職員と共有していただき
は、常磐会学園大学の佐谷 力教授より、社会が
たい「防災教育」や「道徳教育」
「情報教育」等
一層複雑化し、価値観の多様化する今日、保護
の「今日的課題」をテーマにした研修を実施し
者・地域の方々をはじめ、人とどのように接す
ました。
るべきかについてご講演をいただきました。相
2
手の思いや願いをどのように理解し、どのよう
「学校園運営研修会」
(防災教育)
一昨年、東日本大震災が発生し、学校園にお
に思いを伝えていくか、人との「話し方」
「聞き
ける防災教育の重要性が再認識されました。文
方」
「向き合い方」等について、演習を交えなが
部科学省の有識者会議の中間取りまとめでは
らの研修は、受講者に大変好評でした。
「自然災害等の危険に際して、
『主体的に行動す
4
る態度の育成』や、支援者となる視点から『安
今後に向けて
全ての子どもたちが、次代の社会を担うこと
心・安全な社会づくりに貢献する意識の向上』
」
のできる人材として、学力を身につけながら健
が示されています。そこで、5 月に実施した学
やかに成長し、自立した個人として自己を確立
校園運営研修会では、
「防災教育を考える」と題
できるようにすることが求められています。管
して、富士常葉大学の小村隆史准教授よりご講
理職が、学校園経営を充実させ、子どもをとり
演をいただきました。小村准教授は、簡易型災
まく様々な環境を整備し、活力ある安全で安心
害図上訓練 DIG の開発者としても知られてい
な学校づくり、それぞれに創意工夫をこらした
ます。地図や見取り図に参加者が危険個所の書
特色ある教育実践を推進することができるよう、
き込みをし、自分の住まいや職場に潜む危険性
より充実した内容の研修を企画・運営してまい
を「見える化」することによって、次に何をす
ります。
べききかが見えてくる。大切なことは、何に「気
- 13 -
学校マネジメント研修
学校園の活性化につながるリーダーシップを!
1 研修の目的について
てこられた「理念の必然性」
「挑み続ける情熱」
「心
学校マネジメント研修会では、これからの大阪
配する前に行動」
「PDCAに基づく挑戦の繰り返
市の教育を担う中堅教員が、学校園運営マネジメ
し」等の体験に基づくお話には、学校園のマネジ
ントについて理解を深め、実践的で専門的な知識
メントや様々な実践に通じるヒントがあふれてい
を習得し、学校園の教育実践の推進・組織の活性
ました。また、企業ゆえの厳しさや合理性を追求
化・若手育成等の中心となってリーダーシップを
した考え方、理念を持つことや理念に支えられた
発揮できるようにすることをねらいとしています。
実践の大切さ、PDCAを生かした実践の継続が
学校園の運営に積極的に参画するために、1年目
成功につながる話は、受講者の実践意欲を高める
には【基礎編】として5回、2年目には【発展編】
ことにつながりました。
として5回の研修を位置づけ、2年間で 10 回の研
修を系統的・継続的に実施しました。
第2~4回目の研修では、経営マネジメントの
理解を深める研修やマネジメントに活用する視点
また、本研修は、新任首席の必修研修として位
や専門的知識を学ぶ研修として「学校危機管理」
置付けています。首席が、教職員をとりまとめ、
「ファシリテーション」「学校園における法的知
リーダーシップを発揮して組織の円滑な運営に貢
識」をテーマとした研修を実施しました。
献できるようにすることをめざしています。
講師には、企業経営者、大学教授、元校長など、
2 『研修課題シート』
各分野から実績と経験豊富な講師の方々を招聘し
今年度は、受講者が、研修の成果を学校園での
ました。受講生は、毎回熱心に研修に取り組み、
教育実践に生かしやすくするために、研修を通じ
受講後のアンケートでは、いずれの研修も満足度
て、
『研修課題シート』を作成することに取り組み
の高い結果となりました。
ました。受講者が、学校園の特色を生かし、自身
第5回目の研修では、リーダーシップについて
の課題や果たすべき役割について考えた上で、
の理解を深める研修として、【基礎編】【発展編】
PDCA サイクルに基づき目標を設定し、教育実践
それぞれの研修に、
(株)日本総合研究所の鈴木正
に取り組めるようにしました。
一主任研究員を招いて研修を実施しました。企業
3 研修の内容について
での組織マネジメントの手法や考え方をヒントに、
第1回目の研修は、【基礎編・発展編】合同で、
学校組織をより機能的に活性化するために必要な
本研修の目的を理解し、学校園のマネジメントに
ことやリーダーシップについて学びました。グル
対する意識を高めるために、東大阪宇宙開発協同
ープでの意見交流を交えながら、具体的・実践的
組合
内容の研修を行いました。
専務理事の棚橋
秀行社長(棚橋電気株式
会社)より「経営マネジメントについて~ものづ
4 今後に向けて
くりは人づくり~」というテーマでお話しいただ
大きな変革の時を迎えている学校園において、
きました。
『夢を打ち上げよう!東大阪の人工衛星
中堅教員の果たすべき役割は、益々重要となって
プロジェクト』の成功に携わられた棚橋社長は、
きています。教育センターでは、本研修会をさら
様々な問題を乗り越え、人を動かしものづくりを
に充実させ、活力ある学校園運営を実現させるた
進めてこられました。その過程において大切にし
めの研修となるような企画・運営をしていきます。
- 14 -
1・・・・・・・・10・・・・・・・・・20・・・・・・・・・30・・・・・・・・・40・・・・45
大阪市教師養成講座
2
「大阪市で先生になる!」を応援して
3
4
5
1
大阪市教師養成講座
大阪市教師養成講座は、平成 20 年度に大阪市
指導しています。毎回講座終了時にはホームル
の教員を強く志望する大学生等を対象とし、教
ームを実施し、講座内容のふり返りを行うとと
員としての自覚と情熱をもち、学校現場におい
もに、受講生一人一人の学習状況に応じた助言
て即戦力となる人材の育成をねらいとして開講
を行っています。また、毎回の学びを記した受
しました。5年目を迎えた平成 24 年度は、小学
講シートにも助言や励ましのコメントを記入し
校・中学校・養護教諭をめざす 197 名が学んで
ています。
います。現在、養成講座修了者のうち 339 名が
大阪市の教員として採用されており、平成 25
2
年 4 月より新たに 80 名の採用が内定しています。
講座のようす
「授業づくり」
今年度は、受講者に即戦力となる授業実践力
を身につけることができるよう、
「授業づくり」
の講座を充実させています。
「授業づくり」講座
は、前期3回・後期3回の全6回実施し、受講
者には2回の模擬授業を課しています。
【開講式】
また、今年度より、修了要件(出席率 80%、
模擬授業、受講シートの内容)を満たした者に
は、次年度の大阪市教員採用選考テストの1次
選考免除の特例を措置することになりました。
講座は、9~3月までの 15 回(原則として土
曜日の午前中)実施し、授業づくりをはじめ、
【講座内容】
児童生徒理解、保護者との関係づくり、学級集
小学校では、前期と後期で国語と算数、中学
団づくり、道徳教育、市内の社会教育施設の見
校・養護教諭は、それぞれ専門の教科等の授業
学による行事計画の立案など、学校現場で生か
づくりについて学びます。
担当指導主事から「新
せる実践的指導力を高めるような内容を設定し
学習指導要領に即した授業づくり」
「子どもの学
ています。
習意欲を高める指導法」について指導を受けて
さらに、今年度から班担当教育指導員による
指導案づくりを行い、「声の出し方」
「子どもと
担任制をとり、受講生の学びを継続的に支援し、
のコミュニケーション」
「板書」など教師として
- 15 -
身に付けるべき基本的な指導技術について実践
「子ども理解②(いじめ・不登校への対応)」
的に学び、模擬授業を通して総合的な指導力を
「子ども理解②」講座では、佐藤精治教育指
身につけていきます。
また、
模擬授業の際には、
導員から「聞こえませんか
互いの授業の「よい点」
「改善点」について協議
ませんか 見えない痛みを」というテーマで講
したり、評価をフィードバックしたりして、さ
演していただきました。いじめに関する裁判の
らなる指導力向上をめざしています。
判決文から
受講生からは、
「授業は、実際に行うことで改
いじめの実
善点が見えてくることがわかった。現在の大学
態や学校・
でも、教師になってからも率先して授業を見て
教師が果た
いただき、PDCAサイクルで授業力を高めて
すべき義務
心の悲鳴を 感じ
について具
体的に提示
され、
「教育活動の全てにおける教師の姿勢こそ
がいじめから子どもを守る」と話されました。
講演後の班別協議会では、受講生が自己の体
験を語りながら、子どもを守るために何ができ
るかについて議論しました。
「いじめ被害者のた
った一度の本気のサインを見逃さない教師にな
いきたい。
」等、授業力向上に向け意欲的に取り
りたい」
「日頃からたくさん話をして子ども同士
組む声が多数聞かれました。
が『いじめはあかん』と言い合える学級づくり
「保護者との関係づくり」
をしたい」
「子どものことをていねいに見て、問
子どもを健やかに育てるためには、保護者の
題から逃げない」と一人一人が担任の立場にな
想いを知り、良好な関係を築き、ともに育てる
り深く考える機会となりました。
という姿勢が欠かせません。
どの講座においても体験的に学び、自己の実
「保護者との関係づくり」講座では、ロール
践につなぐという過程を経て、子どもを見守る
プレイングの手法を取り入れました。
「個人懇談
教師としての視点を知り、実践的な指導力を高
会・家庭訪問」の場面を想定し、「教師」
「保護
めています。
者」
「生徒」の立場になり体験しました。
「子ど
もを想う保護者の気持ちに気づいた」
「保護者の
3
気持ちをどのように受け止めるかについてじっ
今後に向けて
今後も教師
くりと考えることができた」等、相手意識をも
養成講座で学
って関わることの大切さを実感するとともに、
んだ受講生が
良好なコミュニケーションのあり方について学
大阪市の教員
びました。
として活躍で
また、班担当教育指導員からは、豊富な経験
きるよう、さ
をもとにして、保護者と情報を共有し、ともに
らに実践的な
愛情をもって見守ることの大切さについて語っ
学びの場を創り出し、講座内容の充実を図りま
ていただきました。
す。
- 16 -
学校教育ICT活用事業
ICTを活用した新しい学びの創造へ
~学校教育ICT活用事業の現状と今後の取り組みについて~
1
学校教育 ICT 活用事業計画の背景
2
小学校・中学校の新しい学習指導要領では、
学校教育 ICT 活用事業の取り組み
このような背景のもと、本市では、急激に変
情報教育や授業における ICT 活用など、学校に
化する社会の中で、
子どのたちの、
「知識・理解」、
おける教育の情報化について一層充実を図るこ
「思考力・判断力・表現力」、
「関心・意欲」
「情
とが盛り込まれています。また、近年の知識基
報活用能力」を育む教育が実現できるように、
盤社会化や、グローバル化が急激に進展する状
最新の ICT 環境の中で、
「協働教育」、
「言語活動
況において、日常生活の中で ICT(情報通信技
の充実を図る授業」、
「児童・生徒一人一人に応
術)を活用する場面が急速に拡大しています。
じた教育」等を実践するという「学校教育 ICT
そのような中、学校教育においても、これから
活用事業」を本年度から実施しています。
の社会を生きる子どもたちに、情報や情報手段
事業の内容は、平成 24 年度に学校教育への
を主体的に選択し、活用する資質(情報活用能
ICT 活用のモデル校7校を決定し、そのモデル
力)を育成することをめざして、電子黒板や実
校に、電子黒板やタブレット PC 等の ICT 環境を
物投影機、タブレット PC 等のデジタル機器を活
整備し、教員に対して事前研修を実施します。
用した学習活動が重要になってきました。
平成 25 年度・26 年度においてモデル校での学
大阪市では、
平成 21 年度の国の補正予算を活
校教育 ICT の利活用の実証研究を行い、課題の
用して、小・中・高・特別支援学校の全校に、
抽出・分析の下、学校教育における ICT 活用に
校内 LAN 用ノート型パソコンを1校当たり学級
関する
「大阪市スタンダードモデル」
を作成し、
数プラス1の台数で整備し、高等学校を除く全
平成 27 年度の全市展開をめざすというもので
校対象に電子黒板機能付きデジタルテレビを各
す。
校1台整備しました。各校では、整備されたパ
平成 24 年8月末に決定されましたモデル校
ソコンや電子黒板を有効活用して、授業を展開
は、小学校4校(本田小学校・阿倍野小学校・
し、児童・生徒の学習意欲の向上を図っていま
東都島小学校・堀江小学校)
、中学校2校(昭和
す。しかしながら、電子黒板機能付きデジタル
中学校・旭陽中学校)、
施設一体型小中一貫校(や
テレビが学校に1台という現状においては、複
たなか小中一貫校)の7校で、それらモデル校
数の学級で同じ授業時間では使用できないとい
に整備される ICT 環境としては、全普通教室に
う問題や、キャスター付きとはいえ使用する教
無線 LAN 環境を整備し、小学校3年以上(中学
室に毎回、大きな電子黒板機能付きデジタルテ
校3年まで)の普通教室に、超短焦点型の壁付
レビを移動させる不便さなどから十分な活用が
型の電子黒板機能付きプロジェクタ、書画カメ
できず、新学習指導要領に示されているような、
ラを設置し、タブレット PC を小学校では3年~
児童・生徒がそれらを活用して課題を解決する
6年まで各学年 41 台ずつ(一校当たり計 164
ために、主体的に学習に取り組む態度を育成す
台)、中学校では1年から3年まで各学年 82 台
るような活用までは至っていないのが現状です。
ずつ(一校当たり計 246 台)を基準に配備する
というものです。タブレット PC の OS について
- 17 -
は学校単位で、小学校2校・中学校1校・小中
これらの教育環境のもと、平成 25 年度・26
一貫校に iOS を、残りの小学校2校・中学校1
年度において、学校教育での ICT の利活用で明
校 に は
確になった課題の抽出・分析を実施します。具
Windows8
体的な効果検証として、モデル校では、公開授
を整備しま
業や状況調査を通して、双方向の学習形態への
す。
変化、協働的な学習形態への変化、個に応じた
また、授
学習への変化、言語活動の充実を図る授業の変
業において、
化等、授業の質が変わってくることによって、
児童・生徒
児童・生徒が主体的に機器を活用し、互いの考
のタブレッ
モデル校の電子黒板機
え方を相互に交換したり、教え合ったり学び合
ト PC 相互
能付きプロジェクタ
ったりするなどの、学びの姿勢の変化や情報活
間、児童・
用能力、自ら学ぶ力などの変化の様子を分析し
生徒と教員
ます。また、知識・理解、思考力・判断力・表
とのタブレット PC 間、そして電子黒板機能付き
現力、関心・意欲の側面から、学力層の変化等
プロジェクタと教員、児童・生徒のタブレット
の検証も進めます。 他にも、ネットワーク及び
PC 間で、授業の教材・問題・回答・自分自身の
様々な ICT 機器・人的支援・学習コンテンツな
考え等が円滑にかつ簡単に双方向にやり取りが
どの整備する ICT 環境についても、質問紙調
できる授業支援システム(ソフトウェア及びサ
査・聞き取り調査、モデル校での回線への負荷
ーバ等ハードウェア)も併せて整備します。
検査や速度調査を実施し検証します。
加えて、国の「フューチャースクール推進事
それらの検証の分析をもとに、ICT 機器の活
業」の報告にも人的支援の重要性が示されてい
用方法や教員の研修、モデル校への支援のあり
る事から、本市においても、各モデル校には ICT
方、整備する機器の種類や台数などを検討し、
機器やソフト等の管理、操作方法研修・助言を
効果検証を反映させた「大阪市スタンダードモ
行なう ICT 支援員を派遣します。さらに、本市
デル」を作成します。同時に、学校教育 ICT の
独自の人的支援として、ICT を活用した授業づ
利活用における、事例の収集を行ない、カリキ
くりについて指導・助言・支援をする「コーデ
ュラムの作成も進めていきます。そして、平成
ィネーター」や「授業づくり指導員」などの人
27 年には、この「スタンダードモデル」をもと
材を配置します。特に「授業づくり指導員」は、
に全市展開し、児童・生徒に「生きる力」を育
優れた授業実践の経験・技術・能力を持ち、な
んでいきたいと考えています。
おかつ ICT 活用について理解をしている外部人
平成 25 年度・26 年度には、モデル校での教
材を各モデル校に配備し、ICT を活用した効果
育実践を、公開授業の開催や様々な機会を通じ
的な授業計画の作成・実践について、実際に活
て発表するととともに、教育センターの Web ペ
用する担当教員の授業づくりを指導するととも
ージなどを通して大阪市の学校全体にも発信し
に、また ICT 支援員と協力してサポートしてい
ていきます。
きます。このように大阪市においては ICT 機器
を導入が決して目的ではなく、それによってい
かに授業の質を変化させていくかが重要である
と考えています。
- 18 -
指導改善研修会
全国学力・学習状況調査の結果をふまえた授業の改善を
1
研修会の趣旨
能をもとに考えたり表現したりする活用する力
平成 24 年の「全国学力・学習状況調査」は、
の育成が重要であることが実感できました。
小学校国語、算数、理科、中学校国語、数学、
理科で実施されました。大阪市ではその結果か
ら、成果や課題を分析し、指導の改善ポイント
や大阪市学力向上強化戦略に基づく取組をまと
め、10 月に公表しています。
児童・生徒の学力向上を図るためには、こう
した分析結果を基に、言語活動の充実を図り、
他教科や日常生活等と関連付けた教材を工夫す
ることなどが求められます。
そこで教育センターでは、平成 23 年度から
「全国学力・学習状況調査の結果をふまえた指
導改善研修会」を実施し、授業の改善を図って
います。小学校では、各校一人以上の教員が参
加し、国語、算数、理科について研修しました。
小学校の研修会の様子
中学校では、国語、数学、理科の教科別に研修
を実施し、教科担当の教員が参加しました。研
次に、実際の授業における指導のポイントに
修に参加された方から研修内容を校内で伝達し
ついて、教科書の内容や指導案・実践例をもと
てもらうことで、各校における授業改善の取組
に研修を行いました。どの教科の指導において
に役立ててもらうことをねらいとしています。
も、根拠を挙げて説明をすること、児童・生徒
が自分の意見を交流することで様々なものの見
2
研修会の内容
方ができるようになること、言語活動を充実す
研修会では、教科ごとに全国学力・学習状況
ることで主体的な学習となり、身に付けた力を
調査の結果を説明しました。その際には、過去
活用することができるようになることを確認し
5年間の傾向や領域ごとの傾向などの観点を踏
ました。
まえた分析を説明しました。経年での変化や傾
また、この研修会では、各校ですぐに活用で
向をみることで、大阪市の児童・生徒の課題が
きる資料(児童・生徒の復習用プリント教材)
明らかになります。また、領域ごとに課題を分
を作成し、活用できるようにしています。研修
析することで、授業での重点指導事項が明確に
内容を各校で伝達していただき、明日からの授
なります。その際、参加者は実際に学力調査の
業改善につなげていただき、確実な知識・技能
設問を解き、求められている力を分析しました。
の定着を図っていただきたいと思います。
実際に解答してみることで、習得した知識・技
- 19 -
・・・・・・・・10・・・・・・・・・20・・・・・・・・・30・・・・・・・・・40・・・・45
小学校外国語活動・中学校英語科の連携した研修
2
小中一貫した英語教育をすすめるために
3
4
5
1
小中一貫した英語教育をめざして
2
小学校で外国語活動が始まって2年目を迎え、
これからの小中連携
小中学校で取り組む具体的な指導内容・方法
中学校では学習指導要領が完全実施となりまし
の連携について、大阪教育大学の吉田晴世教授
た。グローバル社会に生きる子どもたちに、
「多
から、
「これからの小中連携―Hi, friends!と中
様な文化を理解する態度を身に付け、世界のさ
学校教科書とのつながりを通して」というテー
まざまな人とコミュニケーションを図ることが
マでご講演いただきました。今年度から、
「英語
できる力を育成する」ために、小学校5年生か
ノート」に代わって小学校で使用されている“Hi,
ら中学校3年生までの5年間で育む力を共通理
friends!”の特色や中学校の指導内容と関連す
解し、円滑な接続を図ることをめざして、小学
る場面・使用表現・指導法等の紹介がありまし
校外国語活動主担者・中学校英語科教員主任研
た。小学校の先生にとっては現在の学習が中学
修会(平成 21 年度より実施)を7月 31 日に開催
校につながること、中学校の先生にとっては小
しました。
学校の学びの活かし方について大きなヒントと
なりました。
図1 大阪市小中一貫カリキュラム(一部)
- 20 -
3
小中一貫カリキュラム
介するDVDを作成してアメリカの学校と交
各中学校区で小中一貫した取組をすすめる際
流)の映像や、大正東中学校の生徒がアメリカ
の参考資料として、
「大阪市小中一貫カリキュラ
の学校との手紙の交換を通して、コミュニケー
ム(大阪市教育委員会平成 24 年4月配付)」(図
ションを深めていく様子も紹介されました。
1参照)を紹介しました。5年間を見通した目
標とともに小・中学校それぞれの段階において
(2)
小中連携を組織的に推進する取組
子どもたちに育みたい力を「小中一貫コンセプ
-淡路中学校区-
トマップ」として示しているほか、小中一貫し
小中連携を図るには、教員一人一人が連携の
た取組の方法や、授業づくりについて載せてい
充実を意識するとともに、学校間で組織的に小
ます。
中連携を推進することが重要であると言われて
います。
4
小学校の素地を大切に育成するために
(1)
そこで、本研修では、中学校区の小・中学校
中学校の指導の工夫-大正東中学校区-
3校合同の教育目標を掲げて、組織的な小中連
小学校で育成された「コミュニケーション能
携を進めている淡路中学校、淡路小学校、西淡
力の素地」を、中学校で大切に引き継ぎ育むた
路小学校の先生方に実践報告をしていただきま
めに、中学校の指導についても工夫改善が進ん
した。
でいます。
淡路中学校の1年生が、2校の小学校の5年
本研修では、
「中学校の指導の工夫」
と題して、
生を対象に学習のサポーターとして関わる「リ
音と意味の理解から文字の理解につなげる指導
トルティーチャー」の取組を中心に、実際の児
の工夫が、大正東中学校英語科の先生方によっ
童生徒の交流場面が映像で紹介されました。リ
てバリエーション豊かに示されました。また研
トルティーチャーの特徴は、例年2月に行われ
修参加者は、教科書本文の内容について、ピク
る体験授業当日だけではなく、年間計画のもと
チャーカードを活用して先生が生徒と英語でや
に事前の取組を進め、中学校1年生が小学校に
りとりしながら内容理解を促し暗唱までつなげ
出向いて交流会をすることだそうです。
る段階的な指導について、生徒役の体験を通し
全体を通して、小中連携の推進役である小・
て学びました。
中学校3校の先生方が素晴らしい協力関係、信
研修参加者からは、
「中学校の指導がよくわか
頼関係を築いて取り組んでおられることが印象
り、勉強になった。
(小学校教諭)
」
「中学校の教
的で、児童生徒にもよい影響を与えている様子
科書を紹介していただき、大変参考になった。
が伝わってくる実践報告でした。
小学校の取組が具体的に中学校でどのようにつ
5
ながるのか、見通しを持つことができた。
(小学
各中学校区での交流
研修の最後に、講話や発表、実践報告等を受
校教諭)
」「絵や音声で意味理解をしっかりさせ
けて、各中学校区で研修計画の検討や情報交換
てから教科書本文の文字を導入することで、暗
ができる時間を持ちました。学校間で組織的に
唱ができる生徒が増えると思った。
(中学校教
小中連携を位置づける必要性やICT環境の整
諭)
」などの感想が寄せられました。
備等、小中一貫した英語教育の充実に向けて、
また、大正東中学校の英語科と三軒家西小学
積極的な協議が行われ、小中連携の理解が深ま
校6年生の担任が連携して取り組んだ「スクー
ったとの声が多く聞かれました。
ルランチプロジェクト」
(小学校給食を英語で紹
- 21 -
道徳教育
道徳教育および「道徳の時間」の充実に向け て
1
8月29日(水)
教育振興基本計画を受けて
中学校新任教員
道徳教育新任教員研修会(2)
中学校教育研究会 部長・副部長
「大阪市教育振興基本計画」には、豊かな心
模擬授業および授業づくりの視点について
の育成に向けて、道徳性を養う教育の推進と「道
1 月24日(木)・25日
(金)2月20日(水)
徳教育推進教師」を中心とした道徳教育推進体
受講希望者
制の充実があげられています。
学力向上授業研修会
(小学校・中学校 道徳)
研究支援事業 各研究発表校
道徳の時間の指導の実際と、指導の工夫・充実について
大阪市教育センターでは、教育研究会のご協
1月29日(火)
力もいただき、表のように道徳教育の推進に向
道徳教育推進教師
けて、対象者に応じて焦点を絞った研修を実施
しています。今年度は、のべ 2300 人を超える
道徳教育推進教師研修会(3)
大阪教育大学
金光 靖樹 准教授
道徳教育のさらなる推進に向けて(各校による取組の交流)
センター開館延長時
夜間セミナー(小学校 道徳)
先生方が参加し、具体的な授業づくりについて
受講希望者
実践的な指導力の向上を図りました。
月
日
対
象
研
道徳教育推進教師
会
講
研
5月22日(火)
修
修
内
受講者のニーズに合わせた研修
名
師
全校園長
道徳教育推進教師研修会(1)
小学校新任教員
教員自主研修会(中学校 道徳)
受講希望者
中学校教育研究会 部長・副部長
道徳の時間の指導の組み立て方 指導案づくり 読み物資料分析
兵庫教育大学 谷田 増幸 教授
2
学校園運営研修(1) 「道徳教育」
研修の実際
(1) 学校園運営研修(1)「 道徳教育」
関西外国語大学
小寺 正一 教授
道徳教育を充実させるためには、まず校園
校園長の方針のもと、道徳教育推進教師を中心に進める
道徳教育について
6月中旬~7月上旬
奇数月の土曜日
容
道徳教育推進教師の役割と各種計画の作成
6月25日(月)
教育センター指導主事
長が道徳教育の基本的な方針を自校園の全教
職員に明確に示すことが大切です。
新任教員道徳教育研修会①~⑦
関西外国語大学の小寺教授からは、学校園
各小学校教諭及び指導主事
の実態に応じた道徳教育を展開することの重
道徳の時間の重要性と指導法(公開授業・討議会・講義)
6月14日(木)
道徳教育新任教員研修会(1)
要性の説明があり、そのためには、道徳教育
中学校新任教員
小学校教育研究会 副部長
に関する学校独自の計画をしっかりと作成し
道徳の時間の重要性と指導法 (講義・演習)
8月3日(金)
道徳教育推進教師
及び受講希望者
なければならいという示唆がありました。
道徳教育推進教師研修会(2)
(小・中学校 道徳教育研修会)
また、
「 各教科やさまざまな体験活動の中で
『心の出番』を設定することが、学校教育全
畿央大学 島 恒生 教授
体で進める道徳教育につながる」という講義
道徳教育及び道徳の時間の充実に向けて
- 22 -
から、学校の教育活動全体を通して道徳教育
(3) 新任教員研修会
を推進するときに大切にしなければならない
小学校の新任教員研修会では、7つの班に
視点を学びました。
分かれて実際に先輩教員の道徳の時間を参観
(2) 道徳教育推進教師研修会
し、研究討議を通して「道徳の時間」の基本
新学習指導要領で明記された「道徳教育推
的な考え方と指導法について研修しました。
進教師」対象の研修会を、昨年度から年間3
授業参観後の討議では、普段の「道徳の時間」
回実施しています。
の中での「読み物資料の扱い方」や「授業の
第 1 回目の研修では、兵庫教育大学の谷田
基本的な流し方」等の疑問点が解決され、実
教授から、学習指導要領の変更点(各学年段
践意欲を高めることができました。
階で指導する内容の変更等)の確認がありま
中学校の新任教員研修会では、読み物資料
した。また、
「道徳教育推進教師の役割」につ
の分析の仕方や「道徳の時間」の指導の基本
いての講義の中で、それぞれの道徳教育推進
について、講義や模擬授業を通して研修しま
教師が役割と責任を自覚して活動するために、
した。
基本的に知っておかなければならないことに
(4) 夜間セミナー
ついて確認しました。
道徳教育推進教師対象に各校における道徳
2回目の研修では、畿央大学の島教授を講
教育の研修会を充実していただくために、
「道
師に、道徳の時間に使用する読み物資料をも
徳教育の研修会をつくろう」というテーマで
とにしたワークショップを中心にした研修を
夜間セミナーを開催しました。その中で、4
行いました。その中で、
「指導者は資料を深く
月当初に全校に配布した「授業の巧 DVD(道
読み解き、ねらいに迫る道徳的な発問をしな
徳の時間の指導編)」を校内での研修会でどの
ければならない」といった、道徳の時間の教
ように活用するか理解を深めました。
材研究をするときの視点が明確になりました。
また、
「 道徳授業づくりセミナー」と題して、
3回目は、道徳教育推進教師が各学校での
道徳の時間の指導の基本から応用まで、読み
実践をまとめた「道徳教育推進シート」をも
物資料を使った指導法や読み物資料を使わず
とに、大阪教育大学の金光准教授から道徳教
ダイナミックに展開する指導法等について学
育推進のためのポイントを講義いただきまし
ぶ講座を実施しました。
た。その後の分科会においては、道徳教育推
進教師が、それぞれの取組を交流し、新年度
3
平成25年度に向けて
に向けて「道徳教育の計画を見直していくこ
研修会後のアンケートでは、全ての研修会
と」や「道徳の時間の指導についての研修を
で「充実した研修会になった」という項目で
充実させること」等の方向性が見出されまし
ほぼ 90%の肯定的回答が得られています。今
た。
後も引き続き、実践につながる研修を考えて
います。
- 23 -
習熟度別授業の進め方研修
個に応じた学習指導の充実を図るために
1
習熟度別少人数授業とは
第2回目は、算数の授業の在り方について研
大阪市では、児童・生徒一人一人が「わかる」
修を行い、矢田北小学校の取組を報告していた
「できる」という喜びを実感し、自信をもって
だきました。報告では、第3学年の「わり算」
学習に取り組めるように、習熟度別少人数授業
の実践を中心に、校内研究推進体制、年間指導
を実施しています。習熟度別少人数授業とは、
計画、児童の実態を踏まえた学習コースの設定、
学習内容の理解度や技能の習得の程度、興味・
保護者への発信等にもふれながら、具体的に説
関心の程度などに応じて少人数のグループをつ
明していただきました。
くり、個に応じた指導を行うものです。つまず
研修の後半は、
きを解消しながら、次のステップへ進む授業を
グループによる情
実施することで、学習内容の確実な定着をめざ
報交換の場を取り
しています。
入れ、各校で取り
そこで、大阪市教育センターでは、効果的に
組まれた成果や今
「習熟の程度に応じた学習」を進められるよう
後の課題等につい
小中学校の担当者を対象に「習熟度別授業の進
て話し合い、情報
め方研修会」を実施しています。
を共有しました。
参加者からは、
2
小学校の取組
「たくさんの実
(1) 小学校の現状
践と分かりやす
小学校では、3年生~6年生において「国語」
習熟度別授業の進め方(算数科)
の研修風景
い資料を見るこ
「算数」の2教科で「習熟度別少人数授業」を
とができてよかった。
」「各校の取組の交流が参
行っています。特に3年生では、児童にとって
考になった。」との感想が多数ありました。
も初めての「習熟度別少人数授業」であるため
第3回目は、国語科の授業の在り方について
に、コース分けをより丁寧に説明したり、児童
研修しました。今年度、実施された桜宮小学校
の実態把握をきめ細かく行ったりする必要があ
の 4 年生国語科の実践例を紹介し、その効果に
ります。
ついて分析を行いました。単元の各時間の学習
内容をふまえて、一斉指導、習熟度別指導そし
(2) 研修の様子
て単純に人数を3分割した少人数の授業といっ
1回目の研修では、国語・算数の指導計画の
たように、その時間に一番効果的な指導形態を
立て方、レディネステストの作成法、授業での
とった単元計画であり、各校でのこれからの取
配慮事項などを研修しました。国語科では、昨
組の参考になる実践でした。
年度実施した習熟度別少人数授業の実践を紹介
また、新学期から習熟度別少人数授業が円滑
し、習熟度別少人数授業が効果的な単元の特徴
に実施されることをめざし、この研修では次年
や、授業の成果について報告しました。
度の年間指導計画の立て方をワークショップ形
- 24 -
式で研修しました。
特性や学習内容を踏まえ、学習方法の工夫をす
習熟度別少人数授業では、教員同士の打ち合
ることが大切であることを確認しました。
わせ時間の確保や計画的な実施が課題となって
3回目の研修では、教科ごとに習熟度別少人
います。今年度の成果を次年度に生かし、指導
数授業を参観し、協議を行いました。
計画や指導案を共有化したり、各校の工夫を取
り入れたりして、効率的に打ち合わせや計画の
立案ができるようにすることが大切です。
3
中学校の取組
(1) 中学校の現状
中学校では、全学年の「国語」
「数学」
「英語」
の3教科で、習熟度別少人数授業など個に応じ
花乃井中学校での研究協議会の様子
た指導の充実を図る学習指導を進めています。
そこで、教育センターでは、これまでの「習
数学科では、
花乃井中学校での授業を見た後、
熟度別少人数授業の進め方研修」の見直しを図
授業者からの習熟度別授業を進める上での留意
り、平成 22 年度より全ての中学校が、3年間で
点等をお話いただきました。また、グループに
「国語」
「数学」
「英語」の全ての研修を受講で
分かれて各校の実践を出し合い、成果と課題に
きるようにしました。
ついて意見交流を行いました。
(2) 研修の様子
各学校から提出していただいた実践(学習指
今年度の研修会は、
次の内容で実施しました。
導案)は、教育センター6階の教師力向上支援
1回目の研修では、国語・数学・英語科の教員
室で閲覧できるように展示してあります。
で、初めて習熟度別少人数授業を担当する教員
を対象に、習熟度別少人数授業の意義や年間指
4
今後に向けて
導計画・単元計画での効果的な展開例、コース
各校では、研修会で得たことを校内で伝達講
分けや保護者や生徒への説明の方法、さらには
習して共通理解を図ったり、校内体制の整備や
学習評価などについて説明しました。
授業研究会などの開催、教材の工夫を行ったり
2回目の研修では、奈良教育大学の小柳和喜
しています。その結果、実践報告やレポートの
雄教授を講師に迎え、少人数・習熟度別指導の
内容が年々充実し、成果も上がってきています。
方法や「学習の個別化・個性化」についてご指
児童・生徒の意識調査では、習熟度別少人数授
導をいただきました。習熟度別少人数授業は、
業の実施前よりも実施後で「授業がわかる」と
学習内容の習熟の程度が十分ではない生徒の関
回答した割合が増加しています。
心・意欲を高めることや、全国学力・学習状況調
今後は、このような各校の実践の成果を集約
査の正答率が上昇し無解答率が下降する傾向が
し、広く共通理解を図る研修会を実施していく
あるなどの興味深い内容でした。また、学習の
ことで、より効果的な習熟度別少人数授業が展
場面(導入・話し合い・実験・練習など)と学習形
開されていくものと考えます。教育センターで
態(一斉・TT・習熟度・少人数など)の工夫
も、指導案や資料等をより多く収集し、閲覧で
についても学ぶことができ、各校で実践されて
きるように努めていきます。
いる中身や成果と課題を交流しました。教科の
- 25 -
海外派遣研修
先進的な海外の教育実践に学ぶ
大阪市教育センターでは、文部科学省及び外
した教育を行っています。集団生活をとおして
務省、独立行政法人教員研修センターからの依
コミュニケーション力が培われ、体験活動を重
頼を受け、海外派遣研修の受講者を推薦してい
視し、知的好奇心を目覚めさせる取組が行われ
ます。
ていました。
平成 24 年度は
「教育課題研修指導者海外派遣
プログラム」
、
「日本人若手英語教員米国派遣」
に教員を派遣しました。
なかでも「教育課題研修指導者海外派遣プロ
グラム」では、大阪市の小学校、中学校、高等
学校教員を計9名派遣しました。
教育課題のテーマについては、以下のとおり
です。
○
学校経営の改善 (アメリカ)
○
言語力・コミュニケーション力の育成
(フィンランドの授業風景)
アメリカでは、
「いじめ」予防のために、絵本
の読み聞かせや教職員による演劇等、発達段階
(フィンランド)
○
PISA型学力の育成(フィンランド)
○
キャリア教育の充実(オーストラリア)
○
特別支援教育の充実(韓国)
○
生徒指導・教育相談の充実(アメリカ)
に応じた取組が進められていました。また、学
校評価を学校経営改善に結びつけるため、評価
項目を細分化して、保護者、地域の人々の意見
を反映しやすいシステムを構築していました。
オーストラリアでは、Year7(中学校 1 年)から
派遣教員については、帰国後、海外で教育課
キャリア教育が本格的に行われ、キャリアアド
題について調査研究した内容を報告書にまとめ、
バイザーからの進路選択の支援や Year12(高等
各研修会等を開催し、全市に研究成果を発信し
学校 3 年)では 1 週間の職業体験が位置付けら
ています。本年度は、2月に開催した大阪市教
れていました。韓国の特別支援教育は、障がい
育センターフォーラムで調査研究と今後の活用
に応じて、きめ細かなプログラムを作成し、教
について報告会を実施しました。多数の教員の
材のネット配信や DVD 教材の開発等、指導し
参加がありました。
やすい環境づくりを進めていました。
報告内容を紹介しますと、
フィンランドでは、
報告会後、独立行政法人教員研修センターの
子どもが自分の人生に必要な知識を自ら求め
西村雅司主任指導主事より、海外派遣の目的・
(主体性)
、
知識を獲得していく活動が重要視さ
趣旨の説明や他府県、他都市の教員研修の活用
せていることや就学前から「自己確立」を意識
事例を紹介していただきました。
- 26 -
特別支援教育研修・特別支援教育コーディネーター連絡協議会
特別支援教育のさらなる充実に向けて
1
はじめに
○
特別支援教育コーディネーター研修
平成 24 年7月に中央教育審議会初等中等教
新年度、新たに特別支援教育コーディネータ
育分科会は「共生社会の形成に向けたインクル
ーになられた先生方がすぐに活躍できるように
ーシブ教育システム構築のための特別支援教育
「特別支援教育コーディネーター基礎研修」を
の推進(報告)
」をまとめ、今後の方向性として
4月に2回実施しました。各校園に配布してい
「教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供
ます「特別支援教育コーディネーターガイドブ
できる、多様で柔軟な仕組みを整備することが
ックⅠ・Ⅱ」をもとに、発達障がいについての
重要である」としています。本市においてはす
基本的な理解、コーディネーターの役割等につ
でに児童・生徒の実態に応じて、通常学級、通
いてお伝えしました。
級指導教室、特別支援学級、特別支援学校と多
6月から、
「個別の教育支援計画と個別の指導
様な学びの場で、特別支援教育に取り組んでお
計画について」
「教室の中で見られる気づきと支
り、その取り組みの重要性が改めて示されたと
援について」「発達障がいと二次障がい」
「当事
言えるでしょう。
者として、保護者として」
「行動面の指導」「就
また平成 24 年 12 月に、文部科学省は「通常
労支援とキャリア教育」のテーマで、特別支援
の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別
教育コーディネーター研修を6回実施しました。
な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調
専門的な内容を講師の方々にわかりやすくお話
査結果について」を公表し、
「知的発達に遅れは
していただくことで、参加者からは「知りたか
ないものの学習面又は行動面で著しい困難を示
ったことが聞けてよかった」
「具体的な例があっ
す」児童・生徒が通常学級に 6.5%(推定値)
てよくわかった」
「貴重なお話を聞くことができ
在籍すると示しました。この2度目の全国調査
た」等の感想をいただきました。
により、通常学級にも支援を必要とする子ども
さらに特別支援教育コーディネーターコアメ
がかなりの割合で存在することが再度裏付けら
ンバー養成研修では、
「コンサルテーションの進
れました。一方、それらの児童・生徒のうち
め方」
「アセスメントの活用」について演習を伴
38.6%(推定値)は「いずれの支援もなされて
う実践的な研修を行いました。
いない」と示されており、一定の理解は広まっ
○
たものの、特別支援教育の一層の充実が必要で
その他の研修
その他、幼稚園特別支援教育研修会、特別支
あることが、改めて明らかになっています。
援学級担任者研修会、特別支援教育実践講座等、
さまざまな立場の方々のさまざまなニーズに応
2
特別支援教育に関する研修
じて学んでいただけるようにと、研修を企画・
今年度も教育センターの特別支援教育推進ル
実施しました。
ームでは、各学校園で特別支援教育を推進する
また夜間セミナーでは「特別支援学級担任の
ため、さまざまな角度から特別支援教育に関す
ための教材研究入門」
「ゲームやワークを通して
る研修会や夜間セミナー等を実施しました。そ
取り組む活動のヒント」といった具体的な実践
の一部を紹介します。
につながる内容をシリーズで実施しました。そ
- 27 -
の際、今年度整備した特別支援教育研究室の展
あり方について話合いました。また、2回目・
示スペースを見ていただき、実際に教材に触れ
3回目は区ごとのニーズに基づき「校園内研修
てもらいながら指導の工夫を考えたり、ロール
の持ち方について」
「保護者支援について」など
プレイで子どもへの対応を考えたりする演習を
様々なテーマで活発な情報交換が行われました。
行いました。参加者からはさまざまアイデアが
出て盛り上がり、
「参考になった」
「いろいろな
人と話ができてよかった」等の感想が聞かれま
した。
【特別支援教育コーディネーター連絡協議会の様子】
さらに「大阪市立高等学校特別支援教育コー
ディネーター連絡協議会」を 12 月に開催し「ケ
【特別支援教育研究室の展示スペース】
ースに応じた具体的な取り組み例」
「指導や評価
○
校園内研修への指導主事派遣
における合理的配慮」等、高等学校が抱える多
今年度も、学校園からの派遣要請に応じて指
様な課題について活発な意見交換が行われまし
導主事が出張し、特別支援教育に関する校園内
た。各校での取り組みについて情報を共有し、
研修を支援しました。
お互いに学び合うことができました。
研修のテーマは学校園の課題に応じてさまざ
このように、これからも特別支援教育コーデ
まですが、学習面や行動面での具体的な支援を
ィネーター間の連携・協力体制を一層強め、学
考えるケース検討会等、より実践的な研修を企
校園での障がいのある幼児・児童・生徒の指導
画されることが増えてきています。また校園内
や支援の充実を図っていきたいと思います。
研修の支援を通じて、それぞれの校園で工夫さ
れている取り組みの情報を得ることができ、他
4
校園にお勧めしたこともありました。
来年度に向けて
特別支援教育についての理解が進む中、各学
校園では障がいの有無に関わらず、先生方の気
3
各区特別支援教育コーディネーター連絡
づきを活かして必要な配慮や支援が行われるよ
協議会と大阪市立高等学校特別支援教育コ
うになってきました。そして子どもの教育的ニ
ーディネーター連絡協議会の開催
ーズの多様化とともに、研修内容等の見直しも
特別支援教育推進ルームでは、各区で「特別
必要になってきています。そこで、来年度は研
支援教育コーディネーター連絡協議会」を実施
修体系を整理・検討し、新たな形のものにする
し、障がいのある幼児・児童・生徒の指導や支
ことを考えています。また、特別支援教育コー
援の充実に向け、
校園間の連携を図っています。
ディネーター連絡協議会についても3年間継続
今年度の第 1 回目は全区共通のテーマで「外部
してきた成果を踏まえ、より発展させたものに
リソース活用の留意点」や関係機関との連携の
したいと考えています。
- 28 -
情報教育研修
学校における教育の情報化の充実をめざして
1
研修の目的
た、演習題材も学校園での実務に合わせた内容
情報教育や授業における ICT 活用など、学校
を扱い、
「データ処理や整理に今後役立てたい。」
における教育の情報化について一層充実を図る
「充実した研修であった。校内で他の教員に伝
ことを盛り込んだ新学習指導要領への改訂に基
えたい。」など、先生方から好評でした。
づいて、文部科学省は、平成 22 年 10 月に「教
(2) 情報モラル教育研修会〈専門研修会より〉
育の情報化に関する手引」を公表しました。
本年度の情報モラルについての研修会は全学
この手引では、新学習指導要領における
「情報
校園対象に情報セキュリティ研修を1講座、ま
教育」や「教科指導における ICT 活用」
、
「校務
た、小学校・中学校の教員を対象にしたスカイ
の情報化」についての具体的な進め方、実現に
メニュー(小・中学校のコンピュータ教室に導
必要な「教員の ICT 活用指導力の向上」と「学
入されている授業支援ソフト)の中に含まれて
校における ICT 環境整備」
、また、
「特別支援教
いる情報モラルに関する教材を活用した研修を
育における教育の情報化」についても詳細に示
1講座、計2講座を実施しました。
されています。
「ネットいじめ」の問題やネットを通じての
そこで、教育センターでは、本年度、情報教
犯罪が社会問題となっている現在、教員はもと
育実技研修会(10 コース 27 講座)
、情報教育専
より、児童・生徒が被害者にも加害者にもなら
門研修会(6コース6講座)及び夜間セミナー
ないようにするためにも情報セキュリティの重
(5コース6講座)を実施しました。
要性や役割を理解し、各自の情報モラルを高め
ていく事の理解を深める研修会が実施できたと
2
主な研修の内容
思います。
(1) Excel コース〈実技研修会より〉
Excel コースは例年、とても人気があるコー
3
成果と課題
スで、本年度は、基礎コースを4講座、応用コ
本年度も多くの教職員の方々に受講していた
ースを3講座実施しました。平均倍率は、基礎
だき、各学校園の ICT 活用能力の向上に成果が
コースが 5.0 倍、応用コースが 3.7 倍となりま
あったと思います。次年度は、校務用 PC が教員
した。
一人1台整備されたことと学校教育 ICT 活用事
研修内容は、表の作成、編集、数値計算、基
業との関連性も考え、より現場二-ズに合った
礎・応用のそれぞれのレベルに応じた関数、グ
研修会を企画し、実施していきたいと思ってい
ラフ化など多岐
ます。特に、実技研修会のコース編成について
にわたり、研修
は、講座を精査し、全体の回数を減少させつつ
後、学校園の現
も希望の多いコースの回数を増やすなど、より
場で、即、活用
受講者のスキルに応じた研修となるよう、改善
できるものとな
に努めたいと考えています。
っています。ま
- 29 -
教職員人権教育研修
人権教育の視点から「防災教育」を考える
大阪市では、人間尊重の精神と態度を養うと
「高校生、災害と向き合う
ともに、心豊かな人間の育成をめざした教育を
~舞子高等学校環境防災科の10年~」
推進しています。大阪市教育センターでは、各
阪神淡路大震災の教訓をもとに設置された環
学校園での人権教育の一層の深化・充実を図る
境防災科の取り組みを、科の担当として設立時
ため、教職員人権教育研修を実施しています。
から関わっておられる教員の諏訪清二さんから
東日本大震災の発生から2年が過ぎました。
うかがいました。
依然として、復興に向けた課題も多く、新たな
多くの学校園で、避難訓練のような災害直後
災害に対する備えも重要です。そこで、今年度
の緊急対応を想定した訓練は実施されています
の教職員人権教育研修では、学校園における防
が、環境防災科は、2つの命を守る視点で教育
災教育をさらに充実させるために、東日本大震
を進めています。1つは災害で命を落とさない、
災の教訓を人権教育の視点から学ぶ講演会を実
もう1つは災害後に孤独死等を防ぎ、助かった
施しました。
命を守る教育です。
人との出会い、つながりを大切にした授業と
「いのちの居場所 ~車いすから問う大震災~」
して、阪神淡路大震災で救援・復興に携わった
講師の藤原
人からの聞き取り、被災地でのボランティア活
勝也さんは、
動等を行っています。高校生が被災地で、被災
障がい者の自
者の気持ちに寄り添い懸命に働く姿は、希望を
立を支援する
なくし、孤独を感じている被災者に生きる勇気
団体に所属し
をあたえています。
ています。
災害の発生を防ぐことはできませんが、減災
今回の東日本大震災は、被災地が広範囲で、
は可能です。建物の耐震化のようなハード面の
被害も甚大であったため、障がい者への救助や
備えの強化も必要ですが、救援活動の充実のよ
状況把握が遅れました。避難後も障がい者のニ
うなソフト面の強化は、直ちに学校教育で取り
ーズに十分に応えられない状況がありました。
組むことが可能
被災地の障がい者の実情を明らかにし、本当
です。日頃から
に必要とされている支援を行うために、人工呼
気持ちよくあい
吸器をつけ、車イスで藤原さんが被災地を訪ね
さつを交わすと
ました。藤原さんの活動は、必要とされる支援
いった、人と人
の提供とともに、障がい者の生活を見直すこと
とのつながり、
にもつながり、自立生活をはじめた障がい者も
一人一人を大切にする人権尊重の精神を基盤と
います。現在、生活再生に向けた町づくりが進
した教育をすすめていくことが、防災教育の充
められていますが、障がい者をはじめ、色々な
実につながります。
立場の人たちの意見を盛り込もうとする動きも
でてきています。
- 30 -
養護教諭、養護職員研修
専門性を活かした健康教育の実践をめざして
1
研修のねらい
ほけんだよりの発行を通して」
、特別支援学校の
養護教諭には、専門性を活かして子どもの健
実践「本校の校内緊急体制と緊急時シミュミレ
康を保持増進するために、学校保健活動を推進
ーション」の報告後に、研究協議では活発な意
していく重要な役割があります。児童虐待の増
見交流ができました。
加、発達障がい、性の多様化や感染症などの健
「LGBT(多様な性的指向、性自認)の子ども
康関連の問題も多様化している状況の中、保健
たちと学校生活」
・
「HIV 感染」についての講演
管理、保健教育、保健室経営、健康相談、組織
を通して、養護教諭の職務の重要性、保健室で
活動などについて、
研修を計画、
実施しました。
の対応、養護教諭のあり方などを学びました。
2
とりわけ「保護者との連携~事例分析から養護
主な研修の紹介
(1) 実技研修会
教諭の保護者支援を考える~」では、保護者対
「応急処置」、「保健教育」、「上級救命講習」
応の具体例をもとに多くのケースを学び、今後
「保健室経営」
、
「パソコン活用」について演習
の実践に活かせる研修になりました。
や実技を実施し、専門職としての指導力・技能
(3)全体研修会
の向上を図りました。
「応急処置」では、スポー
今日的課題の「児童虐待」について「健やか
ツ外傷についての講演を通して、事例より、対
なこどもの成長のために~関係機関との連携に
応方法を学びました。
「保健教育」では、喫煙防
ついて~」と題して、暴力と児童虐待の関連性
止教育についての講義により、ICT を使った教
やさまざまな影響について理解することの重要
材づくりを学びました。
「上級救命講習」では、
性、早期発見と発見後の対応・支援等について
AED を使って心肺蘇生法、止血法の実習に取り
講演を実施しました。また、大阪市保健所に依
組みました。
「保健室経営」では、保健室経営計
頼し、
「わかりやすい予防接種について」の講演
画案作成についての講義を通して、実際に保健
を通して、予防接種の大切さを学びました。
室経営計画案を作成することで、自校の健康課
3
成果と今後の課題
題の解決に向けた対策を学びました。
「パソコン
様々な研修を通じて、その専門性を活かした
活用」では表計算ソフトやプレゼンテーション
実践的な指導力を高めていくことができました。
ソフトを使った資料の作成法を学びました。
養護教諭にとって、今日的な課題に適切に対
(2)課題別研修会
応するための新たな知識や技能を修得していく
歯と口の健康、毎日の生活と健康、性に関す
ことがますます重要になってきます。また、新
る問題、HIV 感染、保護者との連携などの課題
規採用者の増加に伴う新任研修では、養護教諭
について、研究授業・研究討議、講演、実践報
の職務の基本的な研修を中心に実務的な研修を
告を実施し、専門的知識・技能及び指導力の向
計画的に進めていく必要があります。今後、養
上を図りました。
護教諭が、学校の保健活動全体により効果的な
中学校の実践「保健室来室生徒の対応を通し
役割を発揮でき、その力量を高めていけるよう
て学び感じたこと」
、高等学校の実践「担任版
な実践的な研修を実施していきます。
- 31 -
栄養教諭・学校栄養職員研修
食育のさらなる推進と充実をめざして
1
研修のねらい
(3)課題別研修会
食事環境の変化、食生活の乱れ、生活習慣病
給食管理や食に関する指導についての今日的
の増加等、食をめぐる現状に様々な問題がある
課題に対する専門性を高めるため、学校給食摂
中、学校においては、成長期にある児童・生徒
取基準や食中毒を防止するための留意点、学級
が食に関する正しい知識と望ましい食習慣を身
指導の中での特別支援教育、保育所における食
につけることができるよう、食育の推進をめざ
育、健康な大人になるための子どもの食嗜好に
しています。その中核として、栄養教諭・学校
ついて講義を行いました。
栄養職員が専門性を活かして食育を進めていく
(4)専門研修会
ために、校内における食に関する指導体制の確
学校給食内容の充実を図るため、学校給食に
立、指導内容の充実、指導力の向上、教職員・
活かせる薬膳料理について講義、調理実習を行
家庭・地域との連携、学校給食の充実を図る研
いました。また、守口市の学校給食と食育につ
修を実施しました。
いての講義、献立の充実をどのように図るかに
2
ついて協議を行いました。
主な研修の紹介
(1)2年次・5年次・10 年次研修
(5)特別企画研修会
総合的な学習
生活科・道徳と関連した食に関する指導を進
と関連した「食」
めるために、各々の教科等についての理解を深
に関する指導や、
め、食育との関連や具体的にどのように関わる
城東区内で進め
ことができるのか指導案を考えました。
ている食育等、
3
先輩の実践報告
成果と今後の課題
様々な研修を通じ、専門的な知識や技能を身
や授業参観をはじめ、受講者による「おやつの
につけ、各学校における食育の広がりや定着を
とり方について考えよう」
「つよい骨を作ろう」
図るために必要な幅広い視野と実践的な指導力
等の研究授業・研究協議を行いました。また、
を高めることができました。
食育を進めるための教職員との連携について考
今後は、児童・生徒の実態に応じた食に関す
える演習や食品企業における食育についての講
る全体計画や年間指導計画の達成に向け、さら
義・施設見学を行いました。現在の自分自身の
なる食育の推進、充実をめざし、学校全体で計
課題に気付き、課題解決のヒントや今後の目標
画的、継続的に取り組むことが重要な課題です。
を明確にすることができました。
その課題解決に向け、栄養教諭・学校栄養職員
(2)実技研修会
は、常に専門性を磨くとともに、各校で食育を
食に関する指導を進める上での専門的な知識
進めるコーディネーターとしての中心的な役割
や技術を習得するために、教材の作成と活用法、
を果たすため、創造力、指導力、実践力が求め
板書技法、食育に活かすカウンセリングについ
られます。今後も資質の向上をめざし、教育実
て講義と演習を行いました。
践につながる研修を実施したいと考えています。
- 32 -
幼児教育研修
幼稚園教育における教師の役割
1
法則 1:29:300>をもとに、「教育は今日行く」
はじめに
幼児期の教育は、人格形成の基礎を培うもの
ことや「プロとしての意識」を学び、また、カ
であり、その教育に携わる教師が担う役割は極
ウンセリングの技法では、聴き方(うなずき・
めて重要です。幼児教育研修会では、大阪市内
くり返し・共感・受容)について演習し、受け
の幼稚園教員が、幼児の主体的な活動を促すた
止めること、言葉を伝えること、初期対応の重
めの教師のあり方や幼稚園のあるべき姿を学ぶ
要性を再確認しました。
ことを目的としています。
2
「困った行動への対応」では、幼児の行動理
主な研修の紹介
解、分析、判断について学習し、感情的な大声
(1)幼児教育研修会
での叱責は禁物であり、わかりやすく環境を整
教員対象で年 12 回実施しました。幼稚園教
え、ほめることを増やす重要性を学びました。
育要領の各領域に関する内容及び特別支援教育、
「小学校からみた幼児期の食育の課題」では小
小学校との連携について具体的に研修しました。
学校の学年別食育指導を知り、幼児期の指導の
「音楽とのふれあい」
「子どもの心を育てる絵
あり方を考えることができました。
画表現」では、実際に「幼児の歌」を歌い、子
「小学校教育との学びの連続性」では、実践を
どもの絵を鑑賞しました。歌や造形表現は幼児
もとに単なる交流ではなく教育課程を見直し、
の心の表出であり、それを受け止めるのが教師
幼小の教員が学びのつながりの重要性を認識し
の役割です。
研修を通して幼児の内面を理解し、
て取り組む必要性を感じました。
心の声をしっかりと聴くことが幼児の主体的な
「道徳性の芽生えを培う」では、幼稚園教諭で
活動を促すことを実感しました。
あることの喜びを感じ、人的環境である教師の
「子どもの心に響く自然環境~大阪近郊に自
感性や道徳性が大切であると学びました。そし
生する野草~」では、大和川近辺に自生する野
て「幼稚園における教師の役割」については、
草に直に触れながら名称や特性について学びま
教師すなわち人としてどうあるべきかを学び、
した。教師が身近な野草に関心をもち、命ある
「幼稚園教育要領」をくり返し読むことが教師
ものを大切に思う気持ちをもつことが幼児の好
の資質の向上につながることを実感しました。
奇心や探究心を高めるとともに自然への畏敬の
(2)園長・設置者研修
念を抱かすことができることを学びました。
文部科学省教科調査官を招聘し、
「質の高い幼
「楽しいマジック」でも身近な材料をもとに不
児期の学校教育を考える」
「幼児期からの体系的
思議に思う心を高める動機づけの大切さを実感
な教育」のテーマで「子ども子育て関連 3 法案」
しました。
の趣旨・ポイント並びに幼児期と児童期の教育
図書館司書による「子どもたちと本をつなぐ
の目標を「学びの基礎力の育成」というつなが
ために」
では、
多数の絵本を持参していただき、
りとして捉えることの重要性を学びました。
絵本は目で見て、耳で聞いて楽しむ芸術である
3
おわりに
こと、絵本を通じて想像の世界を体験するもの
様々な研修を通して、
「教育は人なり」という
であると再認識し、読み聞かせの仕方や絵本の
ことを実感し、また教師の姿勢が子どもの育ち
選び方も学びました。
に大きな影響を及ぼすことを学びました。
「保護者との良きかかわり」では、キーワード
今後も教師の資質の向上をめざして研修を深
<聴く><YES BUT 法><ハインリッヒの
めていきます。
- 33 -
dw
研究支援事業
「生きる力」の育成をめざして
~先進的な研究の取組をとおして~
1 研究支援事業とは
と表現を深める言語活動の充実(話合い活動)」
大阪市教育委員会では、本市における学力の
「言語環境を整える工
向上をはじめとする教育課題の研究、また、学
夫」の三点を中心に研
校園における教育目標の達成や課題解決に向け
究に取り組まれた成果
た研究を支援し、本市の子どもたちに「確かな
が、授業の中で児童の
学力」
「豊かな人間性」
「健康や体力」など、
「生
生き生きとした姿とし
きる力」を育む教育活動の推進を目的として、
てあらわれていました。
研究支援事業を実施しています。
本年度の各研究指定校では、研究内容の充実
2 本年度の概要
を図るために、研究分野の内容に応じて、児
研究分野として、「学力向上クリエイト研究」
童・生徒や教職員等を対象としたアンケートや
「今日的課題研究」、「学校アクションプラン推
自己評価を実施しています。児童・生徒を対象
進研究」、「グループ提案型研究」の4分野を設
に実施したアンケート の1学期と2学期の集
定し、研究校・研究グループ(39 校、40 グルー
計結果は次の通りです。
児童・生徒対象のアンケート結果より
プ)を指定しました。
※「○○」の部分は各研究校のテーマに応じた教科等 が入る。
※各質問で「とても思う」「思う」と答えた児童・生徒の割合の
合計について 1 学期と 2 学期の結果を比較。
指定校・指定グループでは、研究により見込
まれる成果を明確にし、PDCAサイクルを踏
(1) ○○の勉強は好き(学校の勉強は好き)ですか。
1学期:76.0%→2学期:78.0%
(2) ○○の勉強はよくわかりますか。(学校の勉強はよ
くわかりますか。)
1学期:84.0%→2学期:84.6%
(3) ○○の勉強は、普段の生活や社会に出たときに役に
立つと思いますか。
1学期:83.1%→2学期:86.4%
(4) ○○の勉強では、自分の考えを書いたり話し合った
りする機会がありますか。
1学期:77.3%→2学期:81.5%
まえた実践的な研究を進め、公開授業、研究発
表等により、研究成果を全市に発信します。
3
研究指定校の紹介
「学力向上クリエイト研究」分野では、
「全国
学力・学習状況調査」の結果等、児童・生徒の
実態を踏まえ、授業改善や指導力の向上等をテ
ーマとする研究が行われています。
上の(4)は、4.2 ポイント増加していることか
十三小学校では、11 月 30 日に、
「言語活動の
ら、考えを書いたり、話し合ったりするという
充実を通して思考力・判断力・表現力を高める
言語活動の充実につながる取組が進められて
指導の工夫 ―伝え合い、深め合える授業をめ
いる状況がうかがえます。また、(2)は、0.6 ポ
ざして―」をテーマに研究発表会が開催されま
イントの増加にとどまっていることから、学習
した。
内容の理解という点については、今後の研究に
当日は全学年の公開授業が実施され、児童が
おいて、子どもたちにとってよくわかる授業の
感じたことや考えたことを書き、話し合う場面
工夫改善をより一層進めていく必要がうかが
が多く見られました。研究の視点として、「自
えます。この結果を踏まえ、各校で今年度の研
分の考えを持つための書く活動の充実」「思考
究のまとめに向けた取組を進めます。
- 34 -
平成24年度 研究支援事業 指定校
①学力向上クリエイト研究
研究主題等
学校名
東都島小学校
学ぶ姿勢や学び方を生み出す学習集団作り-学ぶ、考える、表現・発信する子どもを育てる〈キャリア教育を中心に〉-
日吉小学校
授業力の向上-言語力をはぐくむための国語科学習指導-
十三小学校
言語活動の充実を通して思考力・判断力・表現力を高める指導の工夫-伝え合い、深め合える授業をめざして-
古市小学校
授業力の向上-主体的に問題解決活動を進める子どもの育成-
~自然現象への興味・関心を高め、科学的な思考力・表現力を育成する理科学習の創造~
晴明丘南小学校
瓜破西小学校
学び合い、高め合いながら言語力を養い、進んで表現する子どもを育てる-国語科を中心に-
言語力向上検証改善システムの構築-国語科・読むことの授業を通して-
②今日的課題研究 テーマⅠ小中一貫した教育の推進
研究主題等
学校名
啓発小学校
啓発・中島小中一貫校カリキュラムの特色の実現に向けた教科指導の方法を工夫する
-「じっくり考える」授業づくりを通して-
やたなか小中一貫校 言語力を育成し、生きる力をはぐくむ9年一貫教育
花乃井中学校
義務教育9ヶ年の一貫カリキュラムづくり
-小中一貫教育を推進するための花乃井中校区小学校との連携-西船場小学校・明治小学校・本田小学校
大正東中学校
指導者間の交流と共通理解を深め、学校全体で小中連携に取り組む
テーマⅡ 道徳教育の推進及び道徳の時間の充実
研究主題等
学校名
真田山小学校
心豊かで自ら進んで伝え合う子どもを育てる-言語活動を重視した道徳の時間の指導を通して-
鯰江東小学校
豊かなかかわりを通してよりよい生き方を考える道徳学習-書く活動を取り入れ自分の成長を実感できる指導法の工夫-
大和川中学校
道徳教育を通して心豊かな授業づくりの創造
テーマⅢ メンターの活用による若手教員の育成
研究主題等
学校名
堀川小学校
授業力を高める、若手教員集団の育成
鷺洲小学校
学びや成長を児童自ら実感できる授業の工夫を通して
大桐小学校
ともに考え、ともに成長し合う若手教員の育成-算数科における授業力アップをめざして-
神路小学校
若手教員の指導力向上とリーダー的資質の養成
鶴見小学校
校内若手教員育成のより効果的な方法についての研究
焼野小学校
言語活動の充実をめざして-教師の授業力向上とともに-
清水丘小学校
メンターの力量を活かして若手教員を育成する研修組織の研究
-すべての子どもの言語活動に焦点をあてた授業研究をとおして-
北田辺小学校
自ら学び、考え、表現する子を育てる-「読む力」の育成を通して-
西淀中学校
メンターを活用した組織の活性化
淡路中学校
若手教員の指導力向上による学校力向上をめざして
旭陽中学校
メンターを中心とした組織的な若手教員の育成について
天下茶屋中学校
めざせ教師力向上-天下茶屋プロジェクト
③ 学校アクションプラン推進研究
学校名
聖和小学校
栄小学校
研究主題等
学んだことを豊かに表現し、共に学び合う子どもを育てる-QUの分析を授業づくりに生かして-
豊かなコミュニケーション能力の育成をめざして
-人権を基底とし、一人一人の学びを大切にした指導法の工夫-
敷津小学校
仲間とともに、すすんで課題を探究する子どもを育てる-心と体をひらき、ともに学び合う体育科学習の創造-
田川小学校
豊かなかかわりを通して、よりよい生き方をみつめる道徳学習
-一人一人が考えをもち、話し合う活動を通して、道徳的判断力を育てる指導法の工夫-
木川南小学校
課題解決の楽しさを感じ、意欲的に取り組む子どもを育てる-算数的活動を通して-
西淡路小学校
仲間とともに考える力の育成-PISA型読解力・話し合う力を育てる-
鶴橋小学校
やってみるで!見てみるで!みんなでええとこ見つけるで!-人とかかわり 町とつながり 自分を見つめる活動を通して-
榎本小学校
算数的活動を活かし、筋道を立てて表現する子どもを育てる-個に応じた表現方法を用いて、自分の考えを伝え合う-
長池小学校
自分の思いを生き生きと表現する子どもを育てる-図画工作科における表現活動を通して-
加賀屋東小学校
新北野中学校
昭和中学校
鶴見商業高校
光陽特別支援学校
自分で考え、伝え合える子どもを育てるために-国語力の育成と指導の工夫-
~言語活動を充実させ、表現力を高める指導を工夫する~
中学校の専門性を生かした児童生徒への基本的な動作の指導について
ICT機器を活用した情報活用能力の育成-情報通信技術を活用した思考力・判断力・表現力の育成-
ラジオメディアを活用した地域の活性化
児童がいきいきとする授業づくりをめざして-児童生徒の実態に即した授業構成と実践的指導力のレベルアップのために-
- 35 -
研 究 の 概 要
教育センターで実施した研究の概要を紹介します。
詳細は、「研究紀要 第 202 号~第 204 号」「研究報告
覧ください
第 21 号~第 23 号」等をご
『研究紀要 第 203 号』
小・中学生の動植物との体験・認識及び環境意識に関する研究
-1991 年、2001 年、2011 年における調査結果の比較分析-
教育振興担当 谷村 載美
【キーワード】環境教育 生物多様性 生態系概念 自然体験 理科・生活科 環境保全行動
1
研究の目的
○
小・中学生の動植物を見た経験率及び採集し
1991 年及び 2001 年と同様の調査を 2011 年に
た経験率、動植物の名前及び生息環境の認識度
実施し、この時間的隔たりの三時点において
は、多くの種で 1991 年に比べて 2001 年に低下
したものの、2011 年に高くなっている種もあり、
小・中学生の動植物に対する体験・認識及び環
境意識にどのような変化が生じたか、それらを
生み出した背景はどのようなことなのかを考
改善の方向にある。
○
経験率及び動植物名の認識度には、該当の動植
察し、大都市における生物的自然を生かした環
境教育を進める際の改善の方向性を見出すこ
小・中学生の動植物を見た経験率、採集した
物の教科書への収録状況が関与している。
○
とを目的とする。
動植物を見ただけの経験者グループ(群)よ
り採集した経験者グループ(群)の方が動植物
の名前及び生息環境の認識度が高く、環境問題
2
に関する情報入手の経験率及び環境問題への関
研究の内容
心が高い。また、生物分野の学習及び理科・生
(1) 調査の方法
大阪市内の各行政区から無作為二段抽出法に
より選んだ公立の小・中学校 178 校における該
活科に対する肯定的な回答率が高い。
○
生物分野及び理科・生活科に対する肯定的な
回答率は低学年で高いものの、その後低下傾向
当学年の1学級に在籍する児童生徒を対象に、
を示し、学年が上がるにつれ否定的な回答率が
2011 年 11 月に質問紙調査を実施した(1991 年、
高くなる。その傾向は、男子に比べて女子に顕
2001 年も同じ 11 月)。有効回答数は、1991 年
著に認められる。
n=5637、2001 年
n=5328、2011 年
○
n=5086。
小・中学生の環境問題に関する関心は、地球
温暖化やエネルギー問題に向けられ、実際にし
(2) 調査の内容
ている環境保全行動も省エネ・省資源に関する
小学校1年生~中学校3年生には、18 種の動
ものが多い。いっぽう、自然環境の保全に関す
植物に対する見た経験の有無、採集した経験の
る関心が低下し、実施率も低下している。
有無、名前及び生息環境の認識度、理科・生活
調査結果の例
科及び生物分野の学習に対する好き嫌いについ
小6 採集したー理科好き
て尋ねた。
すき
小学校5年生~中学校3年生には、環境問題
に関する情報入手の経験、情報の入手先、環境
問題への関心の程度、関心のある環境問題の内
容、実際にしている環境保全行動の内容につい
て尋ねた。
(3) 調査の結果
どちらでもない
どちらかといえば嫌い
図1
である。
- 36 -
嫌い
無答
n=3
n=11
n=16
n=36
n=51
n=45
n=69
n=65
n=62
n=58
n=42
n=48
n=28
n=18
n=24
n=9
n=8
n=5
n=2
0
2
4
6
8
10
12
14
16
18
0%
本調査で明らかにしたポイントは、次の5点
どちらかといえば好き
20%
40%
60%
80%
100%
動植物を採集した経験と理科・生活科に対す
る好き嫌いとの関係
見ただけの経験
好き
どちらかといえば嫌い
採集した経験
どちらでもない
無答
全体 '91
アゲハ '91
'01
'11
'01
'11
クマゼミ'91
'01
'11
小1 '91
シオカラトンボ'91
'01
'11
'01
'11
トノサマバッタ'91
'01
'11
小2 '91
ミヤマクワガタ '91
'01
'11
'01
'11
ツヅレサセコオロギ '91
'01
'11
小3 '91
'01
アメリカザリガニ '91
'01
'11
'11
トノサマガエル '91
'01
'11
小4 '91
'01
ゲンゴロウブナ '91
'01
'11
'11
フナムシ '91
'01
'11
小5 '91
エノコログサ '91
'01
'11
'11
'01
タンポポ '91
'01
'11
小6 '91
カタバミ '91
'01
'11
'11
シロツメクサ '91
'01
'11
中1 '91
オオバコ '91
'01
'11
'11
'01
'01
中2 '91
セイタカアワダチソウ '91
'01
'11
'01
'11
シマスズメノヒエ '91
'01
'11
中3 '91
カラスノエンドウ '91
'01
'11
'01
'11
0%
20%
1991 年
図2
3
どちらかといえば好き
嫌い
n=5637
40%
2001 年
60%
n=5328
80%
2011 年
100%
0%
n=5086
20%
1991 年
動植物を見た経験、採集した経験
図3
研究のまとめと今後の課題
n=5637
40%
2001 年
60%
n=5148
80%
2011 年
100%
n=4957
理科・生活科に対する好き嫌い
日常的に野生生物とかかわることができる環
本調査の結果を踏まえ、大阪市の小・中学生
境:ビオトープを学校やその周辺に整備し活
が生物や生態系を保全する重要性を理解し、そ
の認識のもとに環境保全に意欲的に取り組むよ
用する。
④
我々の生活は生物や生態系の恩恵を受けて
うにするには、次の点に留意する必要があると
成り立っていることを理解し、その認識のも
考える。
とに生物多様性保全の観点から環境保全に取
①
り組めるよう学習内容を工夫する。
身近な動植物との直接経験を通して生物へ
の関心を高め、生態系概念を育む学習プログ
ラムを開発・展開する。
②
今後は具体的な授業内容を追究し、授業改善
や環境整備に生きる研究成果を求めていきたい。
地域の自然環境への関心を高め、それらの
保全の重要性を認識できるよう、地域や学校
*
に生息する野生生物の教材化を図る。
③
本調査を実施するにあたり、忙しい時間を割いて
ご協力いただいた先生方、また関係の方々に対して
上記①と②を可能にするよう、児童生徒が
- 37 -
心からお礼を申しあげたい。
『研究報告
第 21 号』
言語活動の基盤となる「言語力」の育成に関する研究
-小学校国語科において異なる領域間のつながりに着目した指導-
教育振興担当
中西 康恵
【キーワード】言語力 国語科教育 習得 活用 異なる領域を貫く言語活動
1
研究の目的
で付けたい力を次の2点とした。
本研究では、先行研究を基に、めざす「言語
・目的や意図に応じ、必要な資料を選び、内容
力」を「日常生活や社会生活に必要な基礎的・
や要旨をとらえ、自分の考えを明確にしなが
基本的な国語の能力」と整理し、「言語力」の
ら読む能力。
育成を図るために、異なる領域を機能的に関連
・目的や意図に応じ、考えたことや伝えたいこ
させた指導のあり方について明らかにすること
とを、構成や表現の効果を考え、文章に書い
を目的とする。
たり、的確に説明したりする能力。
2
この目標を達成するため、単元1から単元3
研究の内容
(1) 授業設計とその要件
授業設計にあたって、まず、領域が機
能的に相互に関わり合う授業設計モデ
までを貫く課題を決め、図1の授業設計モデル
図(試案)を基に、第6学年における学習指導
過程を立案した。(図2)
ル図(図1)を構想した。
低学年では二つの領域の異なる教
材をつなぎ、知識・技能の習得と活
用を図る。中・高学年では、低学年
の 2 教材程度をつなぐ単元を基本に
し、さらに単元同士のつながりを明
確にしていく。図1でいえば、最終
単元の言語活動に向けて、単元1、
単元2の学習で必要な知識や技能の
習得と活用を計画的に積み重ねてい
く。
次に、授業設計にあたって共通す
る要件を、次の3点とした。
・児童の興味・関心を基にした価値
ある学習課題の設定
・育成する言語力の明確化
・単元を貫く言語活動の設定
(2) 異なる領域を関連させた授業の
実際
事前調査の結果を踏まえ、本単元
図 1 領域が機能的に相互に関わり合う授業設計モデル図【試案】
- 38 -
単元1・2では、異なる領域の教
材を組み合わせて、単元内で習得と
活用を行なう。さらに、単元1~3
を貫く課題「環境にやさしい生活に
ついて調べたり考えたりしたことを
提案しよう」の設定により、各単元
間において習得と活用が繰り返し行
われる学習過程となっている。
実際には、まず、単元3で行う提
案に必要な知識や技能を明らかにす
る。次に、その必要な知識や技能に
ついて、単元1では、構成や述べ方
の工夫、予想される反対意見に対す
る反論の書き方など、基礎的・基本
的なことについて学習する。
単元2では、単元1で学習した内
容を生かしながら、さらに、説得力
のある提案になるよう、資料や具体
物を生かした書き方や、書き手の考
えと関連づけた資料の選び方につい
て学習する。また、例えば単元1に
おいて、新聞の投書を読み比べて筆
者の述べ方の工夫などを習得し、そ
れを活用して意見文を書くというよ
うに、単元内でも異なる領域の教材
を組み合わせている。
その結果、児童は、単元2において習得した
内容とともに単元1で学習した表現の工夫を
図2
授業設計の全体構想図
生かしてリーフレットを作成した。また、単元
3では、単元1・2の学習内容を活用しながら、
②
単元間を貫く学習課題の設定によって、児
調べたり考えたりしたことが伝わるよう、構成
童に各単元の学習内容がどのようにつながっ
や聞き手の興味を引く述べ方や資料の提示の
ているのかを意識化できる。その結果として、
仕方を工夫した提案を行うことができた。
学習した知識・技能を次の単元に生かそうと
3
する態度を育成することが可能となる。
研究のまとめと課題
検証授業の結果、次のことが明らかになった。
①
③
①と②によって、習得した知識や技能を活
異なる領域を相互に関連させて「習得→活
用することの有用感を高めることができる。
用」を繰り返すことによって、学習内容の定
今後は、授業実践をさらに積み重ね、試案の
着を図ることができる。
有効性を確かめていきたい。
- 39 -
『研究報告
第 22 号』
言語活動の充実を図り、思考力・判断力・表現力を育てる算数科の指導
―低学年における、考えを「かく活動」を重視した学習を通してー
教育振興担当 片岡 誠
【キーワード】
1
思考力・判断力・表現力 小学校算数 かく活動 発達段階
研究の目的
(2)
「かく活動」が果たす機能
本研究は、算数科において小学校低学年児童
言葉、数、式、図等を使って自分の考えを表
の思考力・判断力・表現力を育成するために、
現することは、思考力・判断力・表現力を高め
児童の考えを「かく活動」の指導のあり方を明
ることにつながる。
「かく活動」として次のよう
らかにすることを目的としている。
な機能を指導者が認識し、指導に工夫を加えて
いくことが重要になる。
2
研究の内容
〇
学習の記録としての機能
〇
自らの考えを明確にし、表現するための機能
思考力・判断力・表現力の育成には、低学年
〇
自らの考えを他者へ理解してもらうための機能
の時期から問題を解決する方法を考えたり、考
〇
自らの考えを振り返るための機能
〇
自らの学びを評価するための機能
(1)
思考力・判断料・表現力の育成を目指す「かく活動」
えたことを表現したりするための指導が大切
である。そのためには、小学校低学年児童の発
(※新算数教育研究会著「算数ノートのとらせ方・生かし方」
)
達段階に応じた「かく活動」を明らかにし、自
(3) ノート指導における留意点
分の考えを記述し、説明する活動を取り入れる
以上をふまえて、小学校低学年における「か
ことで、言語活動の充実を図るようにすること
く活動」の視点と指導上の留意点を先行研究を
が大切になる。
もとに整理した。
(表1)
表 1 低学年「数と計算」における「かく活動」の視点および指導上の留意点
学習場面
ノート記述の視点
課題把握
・情報の選択
指導上の留意点
・本時の課題
・問題文から必要な情報を見つけ出して線を引き、その部分を抜き書きする。
・演算決定の根拠を考え、式をノートに記述できるようにする。
・既習事項との相違点を見つけ、本時の学習課題を考えて記述できるようにする。
見通し
・結果の見通し
・方法の見通し
・どのような結果になりそうなのか自分なりの考えを記述できるようにする。
・既習事項を活用して、自分なりの見通しを記述できるようにする。
自力解決
・根拠の記述
・どのように考えて解決したのか、操作活動、絵、図、数、式と言葉を繋いでわか
りやすく記述できるようにする。
・簡潔・明瞭・的確といった視点で友達と自分の解決方法の共通点や相違点を見つ
け出し、友達の解決方法のよい点を記述できるようにする。
・比較検討
まとめ
・課題のまとめ
・各々の解決方法の共通点から、本時の課題に対する学習のまとめを記述できるよ
うにする。
・学習の振り返り
・わかったことだけでなく、友達の解決方法のよい点や次時への関心・意欲等につ
いて吹き出し等に記述できるようにする。
※土屋 明子 「思考過程が表れるノート指導のあり方~5年生「分数」の実践を通して~」をもとに、低学年「数と
計 算」の 指導に ついて 作成し たもの である 。 www.shinko-keirin.co.jp/keirinkan/tea/sho/jissen/.../index.html
(2012.8.2 参照)
- 40 -
(4)
小学校低学年での「かく活動」の実際
考えを説明したりできる児童が増え、低学年か
表 1 に示した「かく活動」の視点を考慮して、
ら「かく活動」を充実させていく重要性を確認
小学校第2学年の児童 34 名を対象に、「たし算
することができた。
とひき算の筆算」の授業を実施した。
このことは、 事前の診断的評価に比べて事後
ここでは、自力解決の場面におけるノートに
の総括的評価において、加法・減法の筆算の計
見られるある児童の考えの変容を示す。(図1)
算のしかたを説明する問題の正答率が高くなっ
ていることにも現れている。(図2、3)
加法の計算のしかたの説明 n=34
事前
↓
事後
0
図2
20
40
60
80
100 (%)
加法の計算のしかたの説明の正答率
減法の計算のしかたの説明 n=34
↓
事前
事後
0
図1
児童の考えの変容
図3
ノートに記述された児童の考えを見れば、た
だ単に計算問題に取り組んでいるのではなく、
既習内容を活かして自分で考え、ノートに他者
にも説明できるように記述できるようになって
きていることがわかる。
20
40
60
80
100 (%)
減法の計算のしかたの説明の正答率
「かく活動」を中心に授業づくりをしてきた
結果、児童の言葉、式、図などで表現するとい
う数学的表現力は、学習が進むにつれて向上が
見られた。
「かく活動」を重視した授業の工夫に
より算数科の目標の一つである「見通しをもち
学習が進むにつれて、図を効果的に取り入れ
た数学的表現力の向上が見られた。
筋道を立てて考え、表現する能力」が育成され
ていることがわかる。
今後は他の領域や中・高学年においての実践
3
研究の成果と今後の課題
を広げていき、計画的・継続的に「かく活動」
授業実践の結果、筆算や図だけでなく言葉を
用いて自分の考えを記述したり、友達に自分の
の充実に向けた取り組みを工夫していくことが
課題である。
- 41 -
『研究報告 第 23 号』
「Differentiated Instruction:DI(生徒の多様性に応じた指導)
」を
取り入れた中学校英語科の授業実践
教育振興担当
伊藤由紀子
【キーワード】 DI(生徒の多様性に応じた指導)
レディネス 興味・関心 学習プロフィール
1.研究の目的
③
成果物
英語に対する意欲や理解度の異なる生徒一人
学んだ知識やスキルを統合し、表現する力を
一人に対して、一斉指導のみで応じることは難
育成する「パフォーマンス課題」を設定し、自
し い 。 そ こ で 、 本 研 究 で は 「 Differentiated
由英作文やスキット(寸劇)、発表等に取り組む。
Instruction:DI(生徒の多様性に応じた指導)」
評価は、記述テスト、実技テストに活用力や
を取り入れた効果的な指導のあり方を探ること
表現力を問うパフォーマンス評価(作品や発表)
を目的とする。
等、様々なものを組み合わせて行う。
2.研究の内容
(3) 「DI」を取り入れた授業設計の手順
(1) 「 Differentiated Instruction(DI)」とは
目標の確認
「DI」とは、共通の到達目標を設定し、その
目標に個々の生徒が到達できるよう、彼らのレ
ディネス、興味・関心、学習プロフィールの違
「DI」できる場面
評価規準の作成
記述テストやアンケートなどで
個々の多様性を把握す
る。
いに応じて複数の指導法を提供し、学習の手立
てを工夫する指導法のことである。
診断的評価
習得した知識・スキルを活用する課題の設定
生徒の多様性に応じ DI
場面においても、指導者が多様な表現方法を提
示し、その中から生徒が自分に合ったものを選
する内容・方法を複数準
授業計画
目指す。
授業実践
生徒の多様性に、どのように応じるのか
指導者が提供した複数の
「DI」では、①学習内容、②学習プロセス、
③成果物の3つを工夫することにより、生徒一
教材や指導法を生徒が選
形成的評価
を促す。
学習内容
総括的評価
学習内容とは、事実、概念、一般論、スキル
等から成り立っており、学習到達目標に至るま
での日々の目標や手段を個に応じて変える。
②
択し、教師はサポ-ト役にな
って生徒の主体的な活動
人一人の多様性に応じようとする。
①
備する。パフォーマンス課題を
設定する。
択できるようにして学習意欲や理解度の向上を
(2)
生徒の多様性に応じて
評価は継続して行い、常
授業評価・改善
に記録しておく。記述テス
トと パフォーマンス評 価 等 を 組
み合わせて評価する。
学習プロセス
最終到達目標に至るまでの活動や教材を、簡
授業改善
単なものから複雑なものまで用意する。
- 42 -
(4)
中学校英語科における「DI」を取り入れた授業の実際
“公民権運動に関わる人物を紹介しよう“ (全 12 時間)
「書く」指導とグループプレでのゼンテーション(New Crown3, Lesson6”I Have a Dream”)
研究協力委員の協力を得て、大阪市の中学
≪単元の指導目標≫
校 3 年生 33 名を対象に授業を実施した。
◎ 後置修飾を理解し、活用することができる
後置修飾を学習する単元に「DI」を取り入
◎ 公民権運動に関わる人物について、まとまった
れ、パフォーマンス課題として「書く」課題
英文で紹介できる
とプレゼンテーションに取り組んだ。「DI」
を次の3場面に取り入れて実践を行った。
①
複数の導入方法提示
≪視聴覚機器(ICT)を使った導入と、アクティビティを取り入れた導入≫
生徒の学習スタイルに関する事前の調査によって,「視聴
覚型」と「体験型」に分けて後置修飾を導入した。「視聴覚
型」は、タブレット PC やノートパソコンなどの ICT を活用
し、後置修飾を実際の場面で使用しているビデオを視聴し
た。「体験型」は、後置修飾を使って会話をするアクティビ
【視聴覚型の活動】
ティを行った。
②
【体験型の活動】
A: 注釈を最小限にして自力で日本語訳をする
積み上げ式の学習
B: 注釈を減らし、半分程度日本語訳をする
≪教科書のリーディングの補助プリントを3種類準備≫
注釈の数や書き込む量などを変えたプリントを、3種類用意し
C: 注釈を増やし日本語を書き込みやすくする
生徒が学習到達度に合わせて選択して使用し、順に難易度の高い
内容に挑戦することができるようにした。
③
パフォーマンス課題 (紙芝居、英字新聞等)
≪グループ学習で作成する成果物を自由に選択≫
公民権運動に関わる人物や表現方法を選択し、当時の様子を伝
える資料や辞書を使って、グループで協力して作成・発表した。
【生徒の作品】
【実践の結果】
表1
総括的評価の結果、全ての生徒が本単元の評
内容・構成
項目
価規準に達していた(表1)。事後の意識調査に
(外国語表現の
おいては、
「 以前より授業が理解できるようにな
能力)
ったという肯定的な回答が、19 名(58%)から
内容 分量
規準
28 名(85%)に増加した。
3.研究の成果と今後の課題
「DI」を取り入れた授業の結果、生徒の学習
意欲と理解度の向上が認められた。また授業者
最終到達目標の到達度
パフォーマンス
( 言 語 や 文 化 に つ (コミュニケーションへの ( 外 国 語 表 現 の
いての知識・理解) 関心・意欲・態度)
能力)
文章構成・ 聞く態度 発表態度
表現
A
24
18
23
20
22
B
9
15
10
13
11
C
0
0
0
0
0
A:十分満足できる B:ほぼ満足できる C:努力を要する (n=33)
への聞き取りから、言語活動をより生徒主体の
ものにするには、取り組みの前に「DI」の目的
今後は「DI」の多様な指導法を組み合わせな
や学習規律等について、生徒と共通理解を図る
がら、さらにその有効性を探っていくことが課
ことが肝要であることが確認された。
題である。
- 43 -
『研究紀要 第 202 号』
帰国・渡日の子どもの自己実現をめざす支援に関する研究(Ⅱ)
-「センター校」に通級する子どもの学びからの考察-
教育振興担当
1
研究の目的
宋 英 子
同じ内容のテスト問題にしてほしいと言うよう
小学校「帰国した子どもの教育センター校」
になりました。友達とのつながりの中で、日本
(以下、
「センター校」と称す)や中学校「セン
語や教科の学習用語を覚えていったようです。
ター校」に通級する帰国・渡日の子どもは、
「セ
2012 年6月に「センター校」への通級を終え、
ンター校」でどのような学びを得ているのか、
7月に修了式を迎えました。同じ「センター校」
また、子どもが自己実現をめざすためにどのよ
に通級している仲間が見守る中で、イエンは修
うな支援が必要なのかを明らかにしました。
了作文を読み上げました。イエンの作文には、
教員や友達のこと、そして、遠足で行った国立
2
小学校「センター校」に通級する子ども
民族学博物館で見た中国の遊びや衣装のことが
イエンは、先に日本に居住していた保護者に
書かれていました。
呼び寄せられて 2011 年7月に中国より日本に
来ました。10 月に小学校の4年生に編入し、「セ
3
文化間移動に伴う戸惑いを感じて
ンター校」にも通級することになりました。「セ
(1) 自分らしさを大切にしたい
ンター校」では、
中国語を母語とする日本語初級
マリアは、2010 年4月、日本に永住するため
の学習グループに入り、週2~3回、2時間、
にブラジルから日本に来ました。5月に小学校
日本語を学習する生活が始まりました。
の6年生に編入し、
「センター校」に通級して日
通級を始めた頃、いつも緊張していました。
本語を学習することになりました。日本での生
その緊張を解くために、担当者が中国語で話し
活や学校生活の中で起こる様々な出来事に驚き、
かけたり、イエンの兄の小学校の頃の様子等を
分からないことばかりでした。自分のアイデン
話したりしましたが、顔を赤くしながらにっこ
ティティはどこにあるのか、
自問自答しますが、
り笑うだけでした。日本語教室の雰囲気や中国
答えが見つかりませんでした。毎日、何をした
語を母語とする友達にも慣れてくると、友達や
らよいのかが分からない日々が続きました。
担当者に中国語で話しかけたり、日本語で話し
そしてやがて、今のままの状態では駄目だと
かけたりするようになりました。
考えるようになり、両親に反抗することや泣く
担当者は、イエンが早く学校に慣れ、日本語
ことを止めて、日本での生活や学校生活を有意
が習得できるように、電話連絡や連絡帳を通し
義に過ごしたい、幸せになりたい、夢を探して
て絶えず学級担任にイエンの様子と日本語の習
その夢を実現したいと思うようになりました。
得状況を知らせました。学級担任も、学級で何
そう思うようになると、友達や周りにいる人た
ができるのかを担当者によく相談するようにな
ちから何を言われてももう怖くなくなってきま
りました。また、学級担任は、イエンが持って
した。失敗しても怖くはない、夢を実現させた
帰る保護者用の連絡プリントには必ず翻訳文書
い、自分と人とを比べるのではなく、自分のス
を作成し、イエンが困らないようにしました。
タイルをもって、自分らしさを大切にしたいと
5年生になり、イエンは学級担任にみんなと
思うようになりました。
- 44 -
(2) 「帰ったらいけないよ」と言われて
帰国・渡日の子どもは、
「センター校」での学
ユキは、2009 年 10 月にフィリピンから日本
びを自らの意識の形成のための手段として用い、
に来ました。中学校の1年生に編入し、
「センタ
自己実現は、その学びから得た知識や意識を伴
ー校」にも通級することになりました。日本に
った行動から生み出されていると考えます。帰
来たとき、これから家族と一緒に生活できると
国・渡日の子どもが学んでいるのは、
「言語認識」
思うとうれしくて堪りませんでした。母親と暮
「社会認識」「自然認識」
「芸術認識」の「四認
らせると思うとそれだけでうれしくなりました。
識」と捉えました。この「四認識」は、1971 年
しかし、日本での生活や勉強のことが心配で
の全国同和教育研究大会において提起されてき
す。高校入試に合格できるだろうかといつも考
たことです。
えています。日本での勉強は難しく、またフィ
文化間移動に伴う様々な悩みや葛藤を自分な
リピンに戻って勉強を続けるしかないだろうと
りに受け止め、子どもが本来もっている可能性
考えるようになりました。
を発揮しながら自己実現をめざすうえで、帰国・
学級担任や周りの友達に、フィリピンに戻っ
渡日の子どもにとって必要な学びは、この「四
て勉強を続けると言ったとき、
「帰ったらいけな
認識」と「学びの基軸」です。そして、それら
いよ。日本語を書いたり話したりできるように
を温かく包み込み、それらをより高めるものは
なったところで諦めるなんてもったいない。
」と
「周りの支え」です。
「学びの基軸」とは、「ア
言われました。学級担任や周りの友達から言わ
イデンティティの形成」
「自己実現へのコミット
れ、ユキの胸は痛みました。フィリピンに戻る
メント」のことです。
「周りの支え」とは、教員
のか、日本に残って一生懸命勉強するのか、悩
や友達、保護者等による支えのことです。帰国・
みました。自分が本当にやりたいことは何かを
渡日の子どもは、友達や教員、保護者等の周り
真剣に考えるようになりました。ユキは、自分
の支えをバネにして、自分の勇気と意志と決断
がやりたいことを実現するために、日本に残っ
と強さをもって自分の存在価値を求め続けるこ
て勉強することを選択しました。
とができるのです。
4
5
帰国・渡日の子どもに必要な学び
帰国・渡日当初は、自分の思いを身振りや手振
成果と課題
本研究では次の点を明らかにしました。
り、行動で表現することで精一杯だった子ども
「センター校」に通級する子どもが、自己実
は、
「センター校」に通級し、日本語を習得し始
現をめざそうとする意欲を呼び起こすのは、学
めると環境の変化に伴う様々な悩みや葛藤を抱
びから得た知識や意識を伴った行動です。知識
いていたことを話し始めます。文化間移動に伴
や意識を伴った行動は、帰国・渡日の子どもが
う様々な環境の変化は、友達や保護者との関係、
アイデンティティを形成し、自己実現をめざす
学力や進路問題、アイデンティティ形成等に大
ために必要な力です。その力を最大限に高める
きな影響を与えますが、
帰国・渡日の子どもは、
ためには友達や教員、保護者等の周りの人々に
文化間移動に伴う様々な悩みや葛藤、また、家
よる支えが必要です。
族と離れて暮らす日本での生活、自分や家族の
今後、帰国・渡日の子どもが自己実現をめざ
おかれている現状等を直視し、自分なりに受け
すために、子どもの未来に関わる進路保障をど
止め、自分のもつ可能性を発揮しながら自己実
う進めるのかをさらに追究する必要があります。
現をめざそうとしています。
(※子どもの名前は仮名です。
)
- 45 -
『研究紀要 第 204 号』
小学校通常学級における授業のユニバーサルデザインに関する研究
―大阪市立小学校のユニバーサルデザインの取組の現状と課題―
教育振興担当
所員
上田 敬三
【キーワード】小学校 通常学級 大阪市 授業 ユニバーサルデザイン 先行研究
1
研究の目的
特別支援教育の本格的な実施に伴い、近年、
①学校教育における「ユニバーサルデザイン」
全国各地の小学校通常学級を中心にユニバーサ
ということばに関する認知度について(図 1)
ルデザインの視点を取り入れた授業づくりや学
A:ことばも内容も知っていた(57%)
級づくりの取組が広まってきている。
B:ことばは知っているが、内容は詳しく知ら
本研究では、まず授業のユニバーサルデザイ
ない(35%)
ンに関する先行研究の検討を行い、その概要を
C:聞いたことがない(8%)
まとめた。その上で、大阪市立小学校における
ユニバーサルデザインの認知度や取組状況の調
査を行い、調査結果や実践事例の分析を踏まえ
て大阪市立小学校のユニバーサルデザインの取
組の現状と課題を明らかにした。
2
研究の方法と結果
(1)先行研究の比較・検討
授業のユニバーサルデザインに関する先行研
究について比較・検討を行ったところ、次のよ
うな点が明らかになった。
①定義づけをしている研究者は少数であり、そ
図1
の定義についても枠組みは緩やかである。
学校教育におけるユニバーサルデザイン
ということばに関する認知度について
②授業のユニバーサルデザインを実践するにあ
たっては環境整備等の基盤が重要である。
②「ユニバーサルデザイン」をテーマにした
③授業のユニバーサルデザインの要件は研究者
研修や会議等での話し合いの有無
によって異なり、多岐にわたっている。
A:話し合ったことがある(研修含む)(16%)
以上のことから、学校教育活動の中心である
B:同様の内容について話し合ったことがある
授業にユニバーサルデザインの視点を取り入れ
(研修含む)(44%)
る試みは、明確な位置づけがなされていない段
C:特に話し合っていない(40%)
階にあり、今後の実践・研究を通じて確立・発
③自校の取組の状況
展させていくものと考えられる。
1)教室や校内の環境整備に関して
(2) アンケート調査の実施
A:全校的に取り組んでいる(33%)
一次調査として、大阪市立の全小学校(分校
B:一部の学級や学年で取り組んでいる(49%)
を除く 299 校)の管理職に対し、次の項目につ
C:特に取り組んでいない(11%)
いてアンケート調査を実施した。
- 46 -
2)授業内容や指導方法に関して
板書の量や見やすさに配慮している事例(写真
A:全校的に取り組んでいる(42%)
3)など、大阪市立小学校におけるユニバーサル
B:一部の学級や学年で取り組んでいる
デザインの実践の一端が明らかになった。
(43%)
C:特に取り組んでいない(8%)
3)学年・学級における集団づくりに関して
A:全校的に取り組んでいる(61%)
B:一部の学級や学年で取り組んでいる
(28%)
C:特に取り組んでいない(4%)
以上のような結果が得られた。
さらに、これらの結果が学校の規模によって
写真 2
拡大写真やイラストの活用
写真 3
見やすく適当な量の板書
相関がないかどうかの分析も行った。
(※学校規
模別のグループの分類にあたっては、在籍児童
数を基準とした本研究独自の分類を行った)
その結果、認知度に関しては、学校規模との
相関は低いと考えられ、話し合い・研修に関し
ては、学校規模がより小さいグループの方が多
く実施されているという傾向が示された。
また、取組の状況については、「集団づくり」
における A 回答(全校的に取り組んでいる)が
3
突出して高く、次いで「授業内容や指導方法」
考察とまとめ
授業のユニバーサルデザインの成立に不可欠
「教室や校内の環境整備」の順となっている。
な「基盤」の一つである「集団づくり」につい
(3)実地調査の実施
ては、学校の規模に関係なく 6 割前後の学校が
二次調査として、アンケート項目の全てに A
全校的に取り組んでいると回答している。また、
と回答した学校等から数校を選んで実地調査を
大阪市立小学校においては、全ての児童にとっ
行った。その結果、全校的に視覚的な環境整備
て「過ごしやすい学校・わかりやすい授業」を
を推進している事例(写真 1)や授業において教
目指した様々な取組が進められている。
材の提示方法を工夫している事例(写真 2)、
しかしながら、ユニバーサルデザインという
ことばの認知度が決して高くないこともあり、
そこでなされる工夫や配慮などがユニバーサル
デザインの取組に当たることが余り知られてい
ない現状だと思われる。
今後はそれらの取組とユニバーサルデザイン
ということばが結びつくことによって、有効な
取組が学校内外でより共有化しやすくなるもの
と考えられる。
写真1 スリッパの並べ方・校舎案内図
- 47 -
情報教育
長期研修員研修報告
実施可能なICTを利用した英語授業の構築
-ICT教育の普及を目指して-
大阪市立東高等学校
1
国際社会における ICT 教育
庄司
美千代
用することに配慮する。
』とされており、中学
21 世紀において、知識が社会・経済の発展を
校、高等学校を通して継続的に英語教育におい
左右する「知識基盤社会(Knowledge-based
て ICT 技術を活用することが求められていま
society)」の時代を迎えていると言われていま
す。インターネットの普及や各種 ICT ツールの
す。OECD(経済協力開発機構)では、
「知識
開発により、英語教育に活用できるリソースや
基盤社会」の時代を担う子どもたちに必要な生
ツールの種類は飛躍的に増えつつあります。こ
活の中で生きていく能力を「キー・コンピテン
のような状況にもかかわらず、中学校・高等学
シー(Key competency・主要能力)
」と位置付
校の英語科における指導では、中学校で
け、社会変化に対応できる能力を身に付けるこ
80.07%、高等学校で 64.63%がコンピュータを
とが重要であるとしています。そのキー・コン
「活用していない」と答える(注1)など、ま
ピテンシーの具体的な内容のなかに、テクノロ
だまだ十分に活用されているとはいえない現状
ジーを活用する能力として①個人が日々の生活
があります。選択肢が多いことは、喜ばしいこ
においてテクノロジーが新しい方法で活用でき
とであると同時に、利用する我々教師の選択眼
ることに気付くことが第一であること。②テク
がますます問われることになることを意味して
ノロジーには、遠隔地間の協働、情報へのアク
います。
セス、他人との双方向のやりとりなど新たな可
能性があり、そのためには、E-mail の送信など
3
文科省の提言に係る調査より
単なるインターネットの活用スキル以上のもの
平成 23 年度「『国際共通語としての英語力向
が必要であると書かれています。このような国
上のための5つの提言と具体的施策』に係る状
際水準をかんがみて、我が国でも情報教育おい
況調査」の結果を見てみると、公立高等学校・
て、国際競争力をつけることが重要であると考
中等教育学校後期課程のインターネットや電子
えます。
黒板などの ICT を、授業内や授業外で活用する
ことにより、英語を見聞きしたり使用したりす
2
る機会を設けている学校数は 22.2%にとどま
我が国の英語教育における ICT 利用の現状
現在の日本社会において、情報活用能力を育
り(注2)
、さらにその活用方法の例として、
成することの重要性は国際的な共通認識であり、
1
我が国においても、新学習指導要領の下、各学
ポート作成、発表等の学習活動を行っている。
校段階を通じて情報活用能力の育成が図られて
2
います。高等学校学習指導要領解説 外国語編・
交流や海外機関についての情報収集を行ってい
英語編によると、
『言語活動、言語材料、教材、
る。
指導上の工夫及び配慮事項については、各科目
3
のねらいに配慮しつつ、中学校と同様の趣旨で
ビ会議システムを活用して、海外の高校生等と
改善を図る。また、ICT などを指導上有効に活
の交流や意見交換を行っている。
- 48 -
海外ウェブサイトを活用した情報収集やレ
電子メールやチャットを活用し、海外との
電子メール、チャット、テレビ電話、テレ
ニュースサイト等の海外ウェブサイトや動
プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン と い え ば Microsoft
画を、時事問題やリスニングの教材として活用
PowerPoint があまりにも主流になっています
している。
が、英語のプレゼンテーションソフトに目を向
5
けてみるといくつか創造的なソフトが存在しま
4
英語学習用ソフトウェアやインターネット
上の英語学習サイトを活用している。
す。このことは、高等学校においてすべての英
6
教材の効果的な提示のために、プレゼンテ
語授業を英語で行うことを基本とするとされて
ーションソフトや電子黒板、プロジェクター、
いる新学習指導要領を、来年度から実施するに
携帯用音声再生機等を活用している。
あたっても英語で授業を行う指導案作りにも適
が挙げられています。
上記の調査結果によると、
当であると考えられます。現行の高校の英語科
ICT そのものが英語教材になっている場合がほ
目「オーラル・コミュニケーション」で英語を
とんどで、ツールとしての ICT 教材は6のみで
使って授業をしているのは、約 2 割にすぎない
す。
(注3)とされている中、英語のプレゼンテー
コンピュータを利用した授業は、最終的には
ションソフトの利用はこのような状況に対する
受験,目先には年数回実施される業者による全
ひとつの方策になるでしょう。そのうちのひと
国模試が重くのしかかる進学校においては、は
つである Prezi は、従来のスライドを 1 枚ずつ
っきりとした成果の見えにくいことから導入し
表示していくプレゼンテーションとは根本的に
にくい状況にあるといえると思います。そのよ
コンセプトが異なります。このツールは「非線
うな進学校においては、いわゆる講義型授業を
形」のプレゼンテーションを可能にし、作者は
普通教室で行っている場合がほとんどでしょう。
テキスト、リンク、画像、ビデオその他ビジュ
本研究においては、特に特別教室としてのコン
アルな図解の任意の要素に自由にズームインし
ピュータ教室ではなく、普通教室の通常授業の
たり、ズームアウトすることができ、かなり独
中での ICT を利用した英語教育、すなわちツー
創的なツールと言えます。
ルとしての ICT 教材について考察します。
4
黒板からスライドへ
(1) Microsoft PowerPoint
黒板を用いずプレゼンテーションソフトを用
いる利点として、単純に板書の手間が省くこと
ができます。プレゼンテーションソフトの種類
については、もっとも一般的なものとして、プ
レゼンテーションの代名詞ともなっている
【Prezi によるプレゼンテーション画面】
Microsoft PowerPoint が 挙 げ ら れ ま す 。
Sliderocket はブラウザ上でプレゼンテーシ
Microsoft PowerPoint はその優れたプレゼン
ョンを作成できるウェブサービスです。その特
テーション・デザイン性能に加え、音声・図形・
徴は Flash を利用した多彩なアクションにあり
動画・アニメーションなどを統合的に一つのメ
ます。写真や動画の挿入、グラフの作成、豊富
ディアとして扱うことで、ビジネス、アカデミ
なトランジションなど専用ソフトにまったくひ
ックの現場で使用されています。
けをとらない機能をもっているうえ、データは
(2) Prezi と SlideRocket
クラウド上にあるので、Prezi 同様ウェブサイ
- 49 -
トやソーシャルメディアでも公開できます。
か教材を作成しました。
【「ExcelVBA」の活用例(タイマー)】
この度の研修では、比較的容易に導入できる
【Sliderocket によるプレゼンテーション画面】
5
Microsoft Office の再考
コンピュータを使った教材開発に取り組みまし
当初、それぞれのプレゼンテーションソフト
た。ICT 教育の推進が叫ばれていても、受験指
を使いこなすことに専念していたわけですが、
導等によって導入しにくい状況にあった先生方
Excel 自体をいろいろ利用しているうちに、
にも授業においてコンピュータを利用しやすい
Excel VBA なるものの存在を知り調べてみた
ような方策を中心に考察しました。お示ししま
ところ、一種のプログラミングであることを知
した具体例をもとに、教員がそれぞれのオリジ
りました。Excel VBA を用いることにより更な
ナリティーを加えて、教材にさらに工夫を加え
る時間短縮ができることを知り、その方法を模
ることにより、より多様な教材作成が可能にな
索するようになりました。一連のプロセスを実
ると思います。自身についても、今回の機会に
行することにより、たとえば成績処理において
学んだことをベースにさらに研鑽を積みたいと
計算関数を一つずつにコピーをしていたものが、
思います。
ワンクリックですべての生徒分の計算式がコピ
ーされるということです。Excel の操作を記録
注1)平成 16 年 11 月「中学校・高等学校『英
する VBA を「ExcelVBA」と呼んでいますが、
語教育活動』に関する現状調査」日本生涯学習
Word や PowerPoint などの Office 製品にもマ
総合研究所
注2)平成 23 年度 「『国際共通語としての英
語力向上のための5つの提言と具体的施策』に
係る状況調査」の結果について(公立高等学校・
中等教育学校後期課程)
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/
education/detail/__icsFiles/afieldfile/2012/03/
21/1318781_02.pdf
注3)高校「英語で授業」は大丈夫?Benesse(ベ
ネッセ)教育情報サイト
【「ExcelVBA」の活用例(問題演習)】
http://benesse.jp/blog/20110221/p1.html
クロ機能が搭載されていて、その裏側で
「WordVBA」や「PowerPointVBA」が活躍し
ています。この VBA の機能を利用していくつ
- 50 -
dw
研究支援事業
「生きる力」の育成をめざして
~先進的な研究の取組をとおして~
1 研究支援事業とは
と表現を深める言語活動の充実(話合い活動)」
大阪市教育委員会では、本市における学力の
「言語環境を整える工
向上をはじめとする教育課題の研究、また、学
夫」の三点を中心に研
校園における教育目標の達成や課題解決に向け
究に取り組まれた成果
た研究を支援し、本市の子どもたちに「確かな
が、授業の中で児童の
学力」
「豊かな人間性」
「健康や体力」など、
「生
生き生きとした姿とし
きる力」を育む教育活動の推進を目的として、
てあらわれていました。
研究支援事業を実施しています。
本年度の各研究指定校では、研究内容の充実
2 本年度の概要
を図るために、研究分野の内容に応じて、児
研究分野として、「学力向上クリエイト研究」
童・生徒や教職員等を対象としたアンケートや
「今日的課題研究」、「学校アクションプラン推
自己評価を実施しています。児童・生徒を対象
進研究」、「グループ提案型研究」の4分野を設
に実施したアンケート の1学期と2学期の集
定し、研究校・研究グループ(39 校、40 グルー
計結果は次の通りです。
児童・生徒対象のアンケート結果より
プ)を指定しました。
※「○○」の部分は各研究校のテーマに応じた教科等 が入る。
※各質問で「とても思う」「思う」と答えた児童・生徒の割合の
合計について 1 学期と 2 学期の結果を比較。
指定校・指定グループでは、研究により見込
まれる成果を明確にし、PDCAサイクルを踏
(1) ○○の勉強は好き(学校の勉強は好き)ですか。
1学期:76.0%→2学期:78.0%
(2) ○○の勉強はよくわかりますか。(学校の勉強はよ
くわかりますか。)
1学期:84.0%→2学期:84.6%
(3) ○○の勉強は、普段の生活や社会に出たときに役に
立つと思いますか。
1学期:83.1%→2学期:86.4%
(4) ○○の勉強では、自分の考えを書いたり話し合った
りする機会がありますか。
1学期:77.3%→2学期:81.5%
まえた実践的な研究を進め、公開授業、研究発
表等により、研究成果を全市に発信します。
3
研究指定校の紹介
「学力向上クリエイト研究」分野では、
「全国
学力・学習状況調査」の結果等、児童・生徒の
実態を踏まえ、授業改善や指導力の向上等をテ
ーマとする研究が行われています。
上の(4)は、4.2 ポイント増加していることか
十三小学校では、11 月 30 日に、
「言語活動の
ら、考えを書いたり、話し合ったりするという
充実を通して思考力・判断力・表現力を高める
言語活動の充実につながる取組が進められて
指導の工夫 ―伝え合い、深め合える授業をめ
いる状況がうかがえます。また、(2)は、0.6 ポ
ざして―」をテーマに研究発表会が開催されま
イントの増加にとどまっていることから、学習
した。
内容の理解という点については、今後の研究に
当日は全学年の公開授業が実施され、児童が
おいて、子どもたちにとってよくわかる授業の
感じたことや考えたことを書き、話し合う場面
工夫改善をより一層進めていく必要がうかが
が多く見られました。研究の視点として、「自
えます。この結果を踏まえ、各校で今年度の研
分の考えを持つための書く活動の充実」「思考
究のまとめに向けた取組を進めます。
- 34 -
平成24年度 研究支援事業 指定校
①学力向上クリエイト研究
研究主題等
学校名
東都島小学校
学ぶ姿勢や学び方を生み出す学習集団作り-学ぶ、考える、表現・発信する子どもを育てる〈キャリア教育を中心に〉-
日吉小学校
授業力の向上-言語力をはぐくむための国語科学習指導-
十三小学校
言語活動の充実を通して思考力・判断力・表現力を高める指導の工夫-伝え合い、深め合える授業をめざして-
古市小学校
授業力の向上-主体的に問題解決活動を進める子どもの育成-
~自然現象への興味・関心を高め、科学的な思考力・表現力を育成する理科学習の創造~
晴明丘南小学校
瓜破西小学校
学び合い、高め合いながら言語力を養い、進んで表現する子どもを育てる-国語科を中心に-
言語力向上検証改善システムの構築-国語科・読むことの授業を通して-
②今日的課題研究 テーマⅠ小中一貫した教育の推進
研究主題等
学校名
啓発小学校
啓発・中島小中一貫校カリキュラムの特色の実現に向けた教科指導の方法を工夫する
-「じっくり考える」授業づくりを通して-
やたなか小中一貫校 言語力を育成し、生きる力をはぐくむ9年一貫教育
花乃井中学校
義務教育9ヶ年の一貫カリキュラムづくり
-小中一貫教育を推進するための花乃井中校区小学校との連携-西船場小学校・明治小学校・本田小学校
大正東中学校
指導者間の交流と共通理解を深め、学校全体で小中連携に取り組む
テーマⅡ 道徳教育の推進及び道徳の時間の充実
研究主題等
学校名
真田山小学校
心豊かで自ら進んで伝え合う子どもを育てる-言語活動を重視した道徳の時間の指導を通して-
鯰江東小学校
豊かなかかわりを通してよりよい生き方を考える道徳学習-書く活動を取り入れ自分の成長を実感できる指導法の工夫-
大和川中学校
道徳教育を通して心豊かな授業づくりの創造
テーマⅢ メンターの活用による若手教員の育成
研究主題等
学校名
堀川小学校
授業力を高める、若手教員集団の育成
鷺洲小学校
学びや成長を児童自ら実感できる授業の工夫を通して
大桐小学校
ともに考え、ともに成長し合う若手教員の育成-算数科における授業力アップをめざして-
神路小学校
若手教員の指導力向上とリーダー的資質の養成
鶴見小学校
校内若手教員育成のより効果的な方法についての研究
焼野小学校
言語活動の充実をめざして-教師の授業力向上とともに-
清水丘小学校
メンターの力量を活かして若手教員を育成する研修組織の研究
-すべての子どもの言語活動に焦点をあてた授業研究をとおして-
北田辺小学校
自ら学び、考え、表現する子を育てる-「読む力」の育成を通して-
西淀中学校
メンターを活用した組織の活性化
淡路中学校
若手教員の指導力向上による学校力向上をめざして
旭陽中学校
メンターを中心とした組織的な若手教員の育成について
天下茶屋中学校
めざせ教師力向上-天下茶屋プロジェクト
③ 学校アクションプラン推進研究
学校名
聖和小学校
栄小学校
研究主題等
学んだことを豊かに表現し、共に学び合う子どもを育てる-QUの分析を授業づくりに生かして-
豊かなコミュニケーション能力の育成をめざして
-人権を基底とし、一人一人の学びを大切にした指導法の工夫-
敷津小学校
仲間とともに、すすんで課題を探究する子どもを育てる-心と体をひらき、ともに学び合う体育科学習の創造-
田川小学校
豊かなかかわりを通して、よりよい生き方をみつめる道徳学習
-一人一人が考えをもち、話し合う活動を通して、道徳的判断力を育てる指導法の工夫-
木川南小学校
課題解決の楽しさを感じ、意欲的に取り組む子どもを育てる-算数的活動を通して-
西淡路小学校
仲間とともに考える力の育成-PISA型読解力・話し合う力を育てる-
鶴橋小学校
やってみるで!見てみるで!みんなでええとこ見つけるで!-人とかかわり 町とつながり 自分を見つめる活動を通して-
榎本小学校
算数的活動を活かし、筋道を立てて表現する子どもを育てる-個に応じた表現方法を用いて、自分の考えを伝え合う-
長池小学校
自分の思いを生き生きと表現する子どもを育てる-図画工作科における表現活動を通して-
加賀屋東小学校
新北野中学校
昭和中学校
鶴見商業高校
光陽特別支援学校
自分で考え、伝え合える子どもを育てるために-国語力の育成と指導の工夫-
~言語活動を充実させ、表現力を高める指導を工夫する~
中学校の専門性を生かした児童生徒への基本的な動作の指導について
ICT機器を活用した情報活用能力の育成-情報通信技術を活用した思考力・判断力・表現力の育成-
ラジオメディアを活用した地域の活性化
児童がいきいきとする授業づくりをめざして-児童生徒の実態に即した授業構成と実践的指導力のレベルアップのために-
- 35 -
「授業の巧 DVD」
指導のコツ、授業のポイントを DVD で必要な時に
1
指導技術の伝達をめざして
パスや絵の具の基本的な使い方の指導、用具の
大阪市では、大量退職・大量採用の時代を迎
扱い方などを説明しています。また、鑑賞指導
え、今まで培ってきた指導技術の伝達や継承が
では作品の鑑賞の視点、評価の仕方についても
急務となっています。新任教員の研修会や校内
取り上げています。
の研修会でも、ベテランの先生に指導を仰ぎた
【小学校体育科編】
いが時間がとれない、普段の授業ですぐに使え
跳び箱指導について収録しています。良い跳
るコツを伝授してほしいという声が多数ありま
び方と悪い跳び方の比較や、姿勢などについて
す。こうした声に応えるために、授業の実際の
映像で比較できるようにしています。
様子や指導のコツを収録した DVD を作成して、
【音読編】
各学校園に配付しています。また教育センター
プロのアナウンサーによる音読指導の様子を
6階「教師力向上支援室」でも視聴できるよう
収録しています。
良い発声の仕方、朗読の仕方、
にしています。
感情の込め方などを取り上げています。
【書写編】
2
「授業の巧 DVD」とは
硬筆書写、毛筆書写の指導の方法を収録して
「ちょっとしたコツ」
「ベテランの技」などを
います。用具の扱い方、とめ、はね、はらいな
チャプターに分け、短時間で研修できるように
どの運筆のコツについて、運筆している手もと
収録した DVD です。今までに製作した DVD は次
の映像で説明しています
の通りです。
【道徳編】
道徳教育の指導のポイントや留意する点につ
いて、模擬授業や実際の授業の様子をもとに説
明しています。
3
さらなる充実を図って
各校園では、若手教員中心の校内研修会や学
年会などで活用していただいています。
「知りた
いところを絞って視聴できるので、忙しい中で
【小学校音楽科編】
も活用できる」
「授業の様子や板書の仕方など基
リコーダーの導入期(小学校 3 年生)での指
本的なことが収録されているので、すぐに役立
導のポイントを中心に、子どもが楽しく演奏で
つ」などの感想をいただいています。
きる声かけや楽曲について説明しています。ま
平成 24 年度は「理科指導」「小学校外国語活
た、
合唱指導の初歩についても集録しています。
動」をテーマにした DVD を製作し、各校に配付
【小学校図画工作科編】
する予定です。これまでの DVD と同様に、積極
絵画指導編と鑑賞指導編を収録しています。
的に活用していただければと考えています。
- 53 -
自主研修支援
夜間セミナー
教員の自主的な研修の支援に向けて
1
夜間セミナー
(1) 目的
7
デジタルカメラを大いに活用しよう!
1
教職員の自主研修の機会の拡大を図るため、
8
子どもの力を引き出す指導
1
今日的課題を踏まえた研修を企画し、積極的に
9
夢と志をもって社会を生き抜くための力
をはぐくむために
1
10
授業用ノートPCメンテナンス実習講座
1
11
学級づくり入門「信頼ベースの学級ファ
シリテーション講座」
2
12
英語絵本を楽しもう!
1
内容を工夫しています。また、昼間の研修に参
13
音読のコツ
3
加することが難しい先生方に対して新しい情報
14
道徳授業づくりセミナー
3
を提供し、指導技術の向上をめざして、スキル
15
特別支援教育セミナー「ゲームやワーク
を通して取り組む活動のヒント」
2
アップが図れる講座を開設しています。
16
デジカメ写真を大いに活用しよう!
1
支援しています。
(2) 研修内容
先生方のニーズに即して、身近なテーマや題
材をとりあげ、すぐに授業等で活用できるよう
【16 講座
計 31 回実施】
(4) 成果
研修時間を確保し、より深く学ぶことができ
るよう、多くの講座が研修を展開しています。
どの講座も、指導力の向上やスキルアップをめ
ざして先生方が熱心に参加され、各校園での教
「音読のコツ」連続3回講座のべ受講者数 45 名
育活動の充実に役立っています。
(3) 研修期間・回数・受講者数
平成 24 年5月 10 日~11 月 29 日の木曜日の
夜間(18:00~20:00)に、1学期 17 回、2学
期 14 回のべ約 350 名の先生方が受講しました。
平成 24 年度 夜間セミナー講座名及び実施回数
講座名
回
1
新任教員のための何でも教育相談
4
2
授業支援ソフト「SKYMENU Pro」を活用
しよう!
2
3
道徳の研修会をつくろう!(小学校)
2
4
動画を編集してみよう!
2
5
やってみよう!理科実験とその工夫
4
6
特別支援学級担 任のための教材研究
入門
1
「特別支援教育セミナー「ゲームやワークを通し
て取り組む活動のヒント」のべ受講者数 31 名
(5) まとめ
今後もニーズに応える効果的な研修内容の工
夫と参加しやすい時期を検討し、先生方の自主
的な研修支援を行っていきます。
- 54 -
指定都市教育研究所連盟 第 17 次共同研究
これからの時代を生きる子どもたちの姿や思いを探る
1
共同研究のあゆみ
(3) 研究の方法
指定都市教育研究所連盟による共同研究では、
昭和 38 年に第1次共同研究がスタートし、
以後
・質問紙法による実態および意識調査。
・19 政令指定都市に在籍する小学校4年生、
48 年間にわたって、都市域における子どもの実
6年生、中学校2年生を調査対象。
態や意識を調査し、さまざまな角度から提言を
・一学年当たり 7,600 人(一都市あたり 400
行ってきました。
人以上)、全体 22,800 人(同 1,200 人以
第 17 次共同研究(平成 24~26 年)では、今
上)を抽出、集計対象。
日的な教育課題である「情報化の進展にともな
うモラルのあり方」や、「社会や人との関係性
3 調査の観点
の希薄化」などにも新たに焦点を当て、また、
研究の内容及び方法に沿って、次の4つの調
時代の変化に合わなくなった過去の設問を精査
査の観点を設定し、研究を進めます。
し、調査問題を作成します。
①
家庭・地域社会における生活
②
家庭・地域社会における学習
2 研究の概要
③
学校における生活
(1)研究主題
④
学校における学習
「これからの時代を生きる子どもたちの姿や
思いを探る」
4 研究の流れ
-今日的な教育課題に焦点を当てて-
【1年次(平成 24 年度)】
計画立案、調査方法の共通理解、観点のとら
(2) 研究内容
え作成、調査問題の検討、分析の視点作成、
・第 16 次共同研究の成果を踏まえ、さらに、
調査問題原案作成
新たな今日的な教育課題に関する調査を加
【2年次(平成 25 年度)】
え、学校・家庭・地域社会と子どもたちの生
調査問題の確定、データ分析についての共通
活や学習のかかわりの状況を把握します。
理解、単純集計結果公表についての共通理解、
・設問については、原則として第 16 次共同研
観点のとらえ確定、調査実施とデータ分析、
究を引き継ぎ、客観的事実として提示できる
各章の考察とまとめ作成
ように、選択肢は時間・程度・頻度・有無等
【3年次(平成 26 年度)】
比較しやすいものとします。
設問ごとの調査結果・各章の考察とまとめに
・第 18 次、第 19 次の共同研究において、経年
ついての確認、序章・終章の作成、第 18 次共
比較により提言をすることができるような内
同研究についての共通理解
容とします。
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編
集
後
記
所報『クリエイト』は、教育センターにおいて取り組んだ教職員の資質・指導力向上の
ための研修や研究等について、大阪市だけでなく、全国にも発信することを目的として年
1回発行してきました。
第62号は、研修・研究の他に、教職員の自己研鑽に対する教育センターの支援等、教
育センターの事業内容や今課題となっている情報を具体的に発信できるように編集しま
した。今後も、本市の教育の更なる振興を図っていきたいと考えております。
今年度からは、冊子の発行は行わず、大阪市教育センターWebページ掲載だけとなりま
す。データはダウンロードが可能となっていますので、必要に応じてご活用ください。
本書をご高覧いただき、教職員の皆様と教育センターの事業が、より身近な存在となる
ことを願っております。
(大阪市教育センターWebページhttp://www.ocec.jp/center/)