Bloom! - 東京医科歯科大学

特集
世界に冠たる
医療系総合大学
を目指す新体制
編集後記
発行:東京医科歯科大学
〒113- 8510 東京都文京区湯島 1-5-45
URL http://www.tmd.ac.jp/
編集:東京医科歯科大学広報部
E-Mail [email protected]
編集協力:日経BPコンサルティング
印刷:大日本印刷
デザイン:Art of NOISE
表紙イラスト:タケウマ
Ⓒ東京医科歯科大学
本誌記事、写真、イラストの無断転載を禁じます。
3
Bloom! 医科歯科 No.17
2 0 1 4年4月、吉澤学長が就任し、新たな本学
の歴史が幕を開けました。本号では、2部構成
で新体制を紹介しています。学長と理事の座談
会では、学長に大学運営の基本方針、各理事
に担当分野の課題や計画を語っていただきまし
た。学長室で行われたこの座談会は、和やかな
雰囲気で、時折笑いも起こりました。
副学長と部局長には、担当分野においてどの
ような計 画や考えで取り組んでいくのかをお聞き
しました。本 学が進もうとしている道がどのようなも
のなのか、
合わせて10ページにわたり特集しました。
スポーツサイエンス機構を設置し、室伏広治
氏を教授として招へいすることを発表した記者会見
には、多数の報道関係者が訪れ、多くの媒体
で取り上げられました。2 0 2 0年の東京オリンピッ
ク・パラリンピックへの対応と併せて、スポーツに
関する本学の取り組みに社会の期待が高まってい
ます。
卒業生と現役学生を紹介するページでは、あ
えて所属学科を揃えてみました。臨床現場で働き
ながら研究を続ける卒業生は、かつて研究ができ
る場所を求めて行動した学生でした。大学院進
学を考えている現役学生の志が向かう未来とのつ
ながりを感じます。
本誌は新体制発足に伴い、表紙と中面デザ
インをリニューアルしました。1 0号から1 6号までは
大学外観の写真が表紙だったものを、本号より
イラストに変更しました。東京医科歯科大学の新
たな歴史の始まりを誌面からも感じていただければ
幸いです。
Bloom! 医科歯科 No.17
2
巻頭座談会
吉澤靖之学長就任
未来の東京医科歯科大学を語る
❽
新学長を支える副学長・部局長紹介
吉澤靖之学長就任
巻頭座談会
❷
特集
医療研究 ★ 最前線 未来医療を拓く
⓬
Focus on
⓮
「スポーツサイエンス機構」新設
Focus on
⓰
世界で活躍する医療人になるためのグローバル教育
2014年4月、第 代学長に吉澤
靖 之 学 長 が 就 任 し、 新 体 制 で の
東 京 医 科 歯 科 大 学 が 動 き 始 め た。
「 知と癒しの匠を創造し、国内外に
展開して世界に冠たる医療系総合
大学へ」というミッションをどのよ
うに実現するのか ︱︱。教育、
研究、
医療など各分野を担当する理事が
集 い、 こ れ か ら の 東 京 医 科 歯 科
大 学の未来について語り合った。
吉澤学長 本学は2014年4月か
ら 新 た な 体 制 と な り ま し た。 ミ ッ
ションの具現化に向けて、さらなる
大学改革を推進していきます。その
ための大学運営の基本方針につい
て、まず私からご説明します。
新体制では、学長、理事直属の指
揮系統をより明確にし、「学長のリー
ダーシップ」と「 愛校心」という基本
方針に基づいて大学を運営していき
ます。理事の担当分野としては、従
来の
「企画・国際交流担当」
に代わっ
て、
「企画・大学改革担当」と「法務・
コンプライアンス担当」という分野を
新設しました。さらに、各理事の担
当に、その分野で国際化を目指すと
いう役割を加えています。従いまし
て
「教育・学生・国際交流担当」「研究・
国際展開担当」「医療・国際協力担当」
という計5つの担当分野の理事の下
に副理事を配置し、全学で議論しな
がら大学運営を推進し得る体制を整
えました。様々な議論を行う中枢を
担うのが統合戦略会議であり、5つ
の分野の垣根を越えて多角的な意見
を交えられる場を目指しています。
ミッションを実現するためのポイ
ントの1つが、医学部、歯学部、教
養部、生体材料工学研究所、難治疾
患研究所という全学体制で大学運営
に取り組むことです。研究もしくは
世界に冠たる医療系総合大学を 目指す新体制
附属病院 ◎ 診療科訪問
⓲
歯学部附属病院 歯科衛生保健部
⓳
医科歯科大生 f ile
自ら問い、自ら導く学生たち
⓴
医科歯科百景
夢を力に 2014 日本最大級のシティドレッシング
21
㉑
Campus Information
22
㉒
されます。役員会が月1回開催であ
会にかかる前に統合戦略会議で検討
例えば、推進協議会や戦略会議で
議論された分野ごとの案件は、役員
を設けたのです。
しっかりと行う目的で統合戦略会議
担当分野の理事同士で情報共有を
わけではありませんでした。
そこで、
ションが必ずしも十分にとれていた
行っており、分野間のコミュニケー
研 究、 医 療 な ど の 分 野 別 に 議 論 を
れまでは大学運営にあたり、教育、
いう2つの組織を設置しました。こ
烏山理事 この度新しく、学長直属
の「学長企画室」と
「統合戦略会議」と
担当の烏山理事からお願いします。
と思います。まずは企画・大学改革
進していくのかご説明いただきたい
それでは、理事の皆さんに各担当
分野の計画を具体的にどのように推
す。
学が実現できるものと考えていま
ることで世界に冠たる医療系総合大
科大学のアイデンティティーを共有す
そのことで、全教職員が東京医科歯
最 初 に 述 べ た「 愛 校 心 」と は ま さ に
境にしていきたいと考えています。
一人ひとりが個の力を発揮できる環
と癒しの匠を創造し、かつ各部門の
らかに偏ることなく全学を挙げて知
臨床、医学もしくは歯学など、どち
未 来の東 京 医 科 歯 科 大 学 を 語 る
分子薬理学分野 野田政樹教授
特集
2
Bloom! 医科歯科 No.17
Bloom! 医科歯科 No.17
3
世界に冠たる
医療系総合大学を目指す新体制
11
卒業生の今
活躍する医科歯科人
吉澤靖之 学長
烏山 一 理事・副学長(企画・大学改革担当)
田上順次 理事・副学長(教育・学生・国際交流担当)
森田育男 理事・副学長(研究・国際展開担当)
田中雄二郎 理事・副学長(医療・国際協力担当)
高橋茂樹 理事(法務・コンプライアンス担当)
S
T
N
E
T
N
O
C
巻頭
案をしていきたいと考えています。
横断的な議論に基づいた画期的な提
有をこれまで以上に深めることで、
2回開催ですから、理事間の情報共
るのに対して、統合戦略会議は月に
背景から順序立てて説明して理解を
を取り巻く社会環境の変化といった
こで、FD研修の際には、国立大学
前の一教員のときはそうでした。そ
面もあります。私自身も理事になる
大学改革やガバナンスがよりスピー
接扱います。こうした新体制により、
担っていたガバナンス関連の案件を直
担 う 組 織 で、 従 来 は 総 務 企 画 課 が
な ります。学長企画室はその役割を
マネジメントする事務組織が必要に
を踏まえたうえで、より良い学生を
傾向は異なりますので、学科の特徴
医科と歯科など学科によって学生の
ていきます。同じ医療系といっても
田上理事 教育・学生・国際交流に
つきましては、まず入試改革を進め
しょう。田上理事お願いします。
吉澤学長 ありがとうございます。
次 に、 教 育 面 に つ い て は い か が で
合内での転学の可能性といったこと
外国語大学、一橋大学との4大学連
学内での転科、東京工業大学、東京
ています。具体的には、飛び入学や
けたワーキンググループが動き始め
学試験委員会では、学長の諮問を受
れつつあるようです。医療面では他
教育については、徐々にその成果が表
田上理事 まさにその通りでしょう。
一方で、4年目を迎えた医歯学融合
きことは増えていくと思います。
語の必修化など、教育面で改革すべ
促す必要があると考えています。
ディーに進められると考えています。
受け入れるための入試改革が必要で
一方で、学長の立案による何らか
のプランを実行するとなった場合、
大学改革の必要性は、トップダウ
ンでいくら説明したところで教職員
大学や薬学部の学生も含めた「 チー
います。
ずと優秀な学生が集まってくると思
学をアピールしていくことで、おの
上に研究成果を上げ、広く世界に本
とを考えなければなりません。今以
これからは私費留学生も獲得するこ
田上理事 その点は教育面でも同様
で、
現在は国費留学生が大半ですが、
必要だと考えています。
て働いてもらえるような環境整備も
そのまま本学に残ってポスドクとし
したり、
渡米したりするのではなく、
生が本学の博士課程を修了して帰国
みが必要です。例えば、優秀な留学
くの留学生がいますが、さらなる試
しゃったように、本学大学院には多
今後強化すべき点としては、
一方、
国際展開でしょう。田上理事がおっ
ますし、入試改革は急務ですね。英
吉澤学長 2015年4月からは学
校教育法も国立大学法人法も変わり
の提供も検討事項の1つです。
でしょうから、英語による教養教育
外の研究者たちと話す機会も増える
ると、日本の文化や歴史について海
います。グローバルに活躍するとな
程内でも教養を学べる機会を設けて
学して成熟する2年次以降の専門課
間に短縮された代わりに、学生が進
さらに同センターでは、外部資金
の 公 募 情 報 提 供、 申 請 書 作 成 の サ
ら本格始動することになりました。
スタッフを配属しており、今年度か
倫理審査、研究計画支援を行う専門
ターには、契約、知的財産管理から
ス を 行 う 機 能 を 担 い ま す。 同 セ ン
を支援し、迅速な製品化やライセン
ターです。出口戦略を見据えた研究
略などを含めた戦略立案などを行う
いです。これらを背景に知的財産戦
は大学発ベンチャーに育ちそうな勢
ロジェクトが進行中で、今年度中に
りつつある核酸医薬に関する大型プ
共同研究のほか、現在トレンドにな
数多く推進しています。ソニーとの
利用して、医学系の産学連携活動を
科学省や経済産業省のプログラムを
せが増えています。厚生労働省によ
最 近 で は、 留 学 生 の 間 で 臨 床 ト
レーニングをしたいという問い合わ
学生を増やすことも必要でしょう。
グローバル化を考えると、さらに留
は他大学に類を見ませんが、大学の
教育の質です。本学の留学生の多さ
率ですが、今後さらに強化すべきは
います。いずれも定員を超える志願
をはるかに上回る大学院生が学んで
大学院については大学院重点化に
より医学、歯学ともに本学部卒業生
ム医療入門」という科目で、医歯学融
合での臨床教育が始まっています。
森田理事 先ほどの留学生をポスド
クとして定着してもらう件とも関連
ポート、若手研究者に向けた申請書
のが医療イノベーション推進セン
連携も重要な項目です。本学は文部
しますね。そして、研究面では産学
については、従来の教養課程が1年
国際交流を視野に入れて、グロー
バル人材育成のための教養教育改革
も含め検討を進めていきます。
理事・副学長
(企画・大学改革担当)
はないかと考えています。すでに入
り外国人の医師・歯科医師の修練制
度が定められていますが、数々の制
約が多く、実際に行うのは大変難し
いのが現状です。これについては厚
労省内でも見直しが進められている
そうですが、本学からも積極的に意
見を上げていくようにすべきかもし
れません。
吉澤学長 では次に、研究面につい
てどうでしょうか。森田理事お願い
します。
森田理事 本学は、昨年度から研究大
学強化促進事業に採択されました。
採択準備段階やその後の情報を分析
してみると、本学における研究面の
強み、弱みが明らかになりました。
本学の強みの1つに、1論文当た
りの被引用率がアジアの大学でトッ
プだということが挙げられます。他
大学では一握りの極めて優秀な研究
者の論文が被引用率を高めているこ
とが多いですが、本学においては全
ての論文が等しく引用されているこ
とが特長です。しかも海外の研究者
との共同研究はさほど多くないにも
吉澤靖之 学長
全てに理解してもらうことは難しい
烏山 一
理事・副学長(教育・学生・国際交流担当)
田上順次
かかわらずこれだけ被引用率が高い
のですから、それぞれが自分の研究
の質をもう1ランク上げ、国際共同
研究などに発展させることができれ
ば知名度も被引用率も飛躍的に上が
るのではと想定しています。
Yoshizawa Yasuyuki
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Bloom! 医科歯科 No.17
Bloom! 医科歯科 No.17
5
Karasuyama Hajime
Tagami Junji 座談会
世界に冠たる医療系総合大学を目指す新体制
特集
巻頭
請まで支援することが決まりました。
経費を出していただき、次年度の申
が通らなかった研究者には学長裁量
支援を幅広く行います。科研費申請
の書き方指導など、研究者のための
両方の電 子カルテシステムを統一し、
います。そのためにも医科、歯科の
もらえることを目指したいと考えて
大学の病院に掛かっている」と思って
学部の分け隔てなく「 東京医科歯科
度を上げていくことが重要でしょ
究、臨床と全ての力を結集して知名
課題です。そのためには、教育、研
外における本学の知名度向上なども
のですが、外国人教員の少なさや海
森田理事 そうした取り組みは、 年
後に世界の大学ランキングで100
ました。
援のためにも積極的に使うことにし
が、これからは若手研究者の研究支
で支援することが多かったのです
吉澤学長 従来は各研究プロジェク
トのフォローアップを学長裁量経費
ビリテーションなど、アスリートが早
圧酸素治療、早期回復のためのリハ
ポーツ外傷の治療や日本最大の高気
ポーツ医学診療センターがあり、ス
も推進しています。本学には従来ス
さらに、2020年の東京オリン
ピック・パラリンピックに向けた計画
んでいます。
て医科と歯科の連携はスムーズに進
が密接に連携するなど、診療におい
部の口腔外科と医学部の頭頸部外科
舌がんなどについては、すでに歯学
サービスも検討中です。咽頭がんや
ケアを受けられるといった新しい
も計画しています。
行う、長寿健康推進センターの設立
たテーラーメイドの先進医療などを
ます。さらに、ゲノム情報を活用し
防医学につながることを期待してい
するものであり、QOLの維持や予
ることができる健康長寿社会に貢献
究は同時に、高齢者でも運動を続け
の開発をしていきます。こうした研
なメンタル・フィジカルトレーニング
に出 場できることを目 標 に、 科 学 的
診断医も現地に派遣しています。こ
外科医、診断技術向上のための病理
供していますし、内視鏡指導を行う
検査キットを国内企業と連携して提
壮大なプロジェクトでは、本学から
田中理事 おっしゃる通りです。南
米の大腸がん患者を減らそうという
での医療教育が実現していますね。
リ、タイの3拠点のうち、チリとタイ
田上理事 他分野との関連が深い国
際医療教育については、ガーナ、チ
医学部で手術を受ける前に口腔内の
う。単科大学がベスト100に入る
期かつ高レベルで競技復帰できるよ
位以内に入るという目標に向けたも
投げのアテネオリンピック金メダリ
招き、科学的な裏付けに基づいた傷
吉澤学長 研究力強化のためにもぜ
ひお願いします。次に、医療担当分
します。
ンなどを行います。
同センターでは、
ストである室伏広治氏を教授として
田中理事 本学には医学部附属病院
と歯学部附属病院の2つがあり、患
現在活躍しているアスリートたちが
害の予防や早期のリハビリテーショ
者さんはそれぞれの病院に掛かって
2 0 2 0 年 に も 現 役 でオリンピック
りかねません。ただ、学内の全てに
高橋理事 今やコンプライアンス違反
は企業や組織にとって致命傷にもな
えています。
ライアンスの問題が重要であると考
す。大学にとってもそれだけコンプ
ている大学が増えつつあるようで
が、コンプライアンス担当を設置し
大学の組織や運営体制を調べました
回新しい組織を作るにあたって、他
最後に、法務・コンプライアンス
担当の高橋理事にお聞きします。今
と考えています。
な医療活動はさらに活性化できれば
ていく必要がありますので、国際的
で
「知と癒しの匠」
となる人材を育て
技術を教えるのではなく、その土地
吉澤学長 国際交流をするうえで重
要なのは人材育成です。単に内視鏡
ところです。
高めるための活動に取り組んでいる
ムなど東アジアの歯科医療の水準を
中心となり、インドネシアやベトナ
タイについては歯学部が長らく交
流してきたチュラロンコーン大学が
広がっています。
ジルやエクアドルへと活動の範囲が
た実績があり、チリから周辺のブラ
のような支援を継続的に実施してき
い ると思っていますが、医 学 部・ 歯
野の計画について田中理事にお聞き
えています。
月に開設するスポーツサイエン
スセンターには、陸上男子ハンマー
のは容易ではないかもしれません
理事・副学長
(研究・国際展開担当)
うサポートしてきました。
Morita Ikuo
が、実現に向けて取り組みたいと考
森田育男
理事・副学長(医療・国際協力担当)
るのが私の仕事だと考えています。
くしていこうという意識を根付かせ
組織の一員として、自分の大学を良
校心」
がそれにあたると思いますが、
なります。
吉澤学長のおっしゃる
「愛
学内の教職員に根付かせることも重
性が増すのです。そういった意識を
得るため、コンプライアンスの重要
では手段を選ばずということもあり
に競争原理が働きます。そうした中
スは法令や社会規範を順守しながら
の治療だとすれば、コンプライアン
ます。監事が事後の対処を行う病気
し、学内の情報もたくさん入ってき
会議にも出席するようになります
見ていくことになります。統合戦略
することになりますので、学内から
事に対して、今回は理事として担当
た。従来の第3者的な立場である監
プライアンスにかかわってきまし
で担当理事の皆さんをはじめ、全教
いずれ実をつけるでしょう。それま
らに幹が育ち、枝ができ、花が咲き、
という実感があります。これからさ
かかわらず、すでに大地に根付いた
ですが、植えられたばかりの木にも
新しい体制になってまだ日が浅いの
欠かせないことだと思います。この
は大切ですし、どの分野にとっても
りという意味でもコンプライアンス
吉澤学長 教員の皆さんが教育や研
究に安心・安全に打ち込める環境作
要な役割だと考えています。
経営を行う予防医学のようなものだ
職員、学生と共に未来の東京医科歯
私は2004年の国立大学法人化
以来、非常勤監事として本学でコン
といえるでしょう。
ます。
科大学を描いていければと願ってい
社会が変われば大学も変わらなけ
ればなりませんし、法人化した途端
6
Bloom! 医科歯科 No.17
Bloom! 医科歯科 No.17
7
目を配ることは不可能ですので、教
吉澤靖之学長 田中雄二郎
理事(法務・コンプライアンス担当)
高橋茂樹
10
10
職員一人ひとりの自己意識が大切と
「この新しい体制になってまだ日が浅いのですが、
植えられたばかりの木にもかかわらず、
すでに大地に根付いたという実感があります」
Tanaka Yujiro Takahashi Shigeki 座談会
世界に冠たる医療系総合大学を目指す新体制
特集
特集
世界に冠たる医療系総合大学を目指す新体制
世界トップレベルの
研究拠点を目指します
内部質保証を充実し、
社会への説明責任を
果たします
で、吉澤新学長の下、内部質保証の
こそ説明責任を果たす基盤ですの
する義務を負いますが、内部質保証
大学としての存在意義を社会に説明
証が求められています。本学は国立
に基づくため、大学は内部での質保
もが大学の実施する自己点検・評価
けています。これらの評価のいずれ
学省法人評価委員会による評価を受
実施状況については毎年度に文部科
画を策定し認可を受けますが、その
大臣が示す中期目標に従って中期計
す。また、国立大学法人は文部科学
り、本学は2015年度に受審しま
大学には認証評価機関による認証
評価を定期的に受審する義務があ
をしていきたいと思います。
を捨てて愛校心をもって全力で仕事
め、吉澤学長、新執行部の下、邪心
うな大切な時期に責務を果たすた
えることになると思います。このよ
期計画期間に入り、新たな局面を迎
た、2016年度からは第3期の中
実現させていきたいと思います。ま
らも積極的に新しいことを提案し、
て、教職協働の精神で事務の立場か
が、グローバル化を目指す大学とし
ると受け身がちになってしまいます
ります。事務系の仕事は、ややもす
立って頑張っていきたいと考えてお
ミッションの下、事務職員の先頭に
「 世界に冠たる医療系総合大学を
目 指 す 」と い う 吉 澤 学 長 の 新 た な
教職協働と
愛校心の実現を
目指して
さらなる充実に取り組みます。
存じます。さらに本学のミッション
を深め一体感の醸成につながればと
かった」という自校への誇りと愛着
京 医 科 歯 科 大 学 に 学 び、 勤 め て 良
されるとともに、
学生や教職員が
「東
本学が地域社会に愛され世界に認知
て、
ブランド力の向上を目指します。
心に響き記憶に残る情報発信によっ
る本学の魅力がステークホルダーの
療、社会・国際貢献に高い実績があ
に尽力いたします。教育、研究、診
本学の継続的な発展に寄与する広報
科 歯 科 大 学 」が 真 っ 先 に 連 想 さ れ、
世界トップブランドの医療系総合
大学として、
「 TMDU」や「 東京医
ことによって、本学が世界のトップ
PDCAサイクルを適切に実行する
時に、これらの一連の活動に対する
等を目指します。そうすることと同
スレーショナル研究の成果創出強化
医科歯科大学の研究力強化やトラン
センター等の研究者と連携し、東京
の配下のURA室は、関連分野・各
リサーチユニバーシティ推進機構とそ
す。研究大学強化促進を目的とした
化の必要性が、強く認識されていま
核的役割を果たす国立大学の機能強
ション創出力にあり、そのための中
我が国の発展の源は、その科学技
術力を基盤とした新たなイノベー
ラリンピックへの本学における各種
び2020年東京オリンピック・パ
めの予防医歯学研究の体制整備およ
化社会に向けての健康長寿推進のた
学長が強く推進されています超高齢
練りたいと考えています。さらに、
しの匠」の聖地にふさわしい計画を
成します。世界へ飛翔する「 知と癒
Uのキャンパスマスタープランを作
全で優しい、近未来におけるTMD
また、受診される患者の方々にも安
快適に教育・研究・診療に打ち込め、
所存です。当面は、教職員、学生が
学長の指示に基づいて大学運営が
円滑に遂行できるよう努めてまいる
行うとともに、国際的指導力をもっ
社会に貢献する歯科医療人の養成を
歯学部においては、使命感をもって
せる力を育てたいと思います。また
知の発見と、それらを社会に展開さ
て、医学・歯学領域における新たな
としての恵まれた研究環境を活かし
学総合研究科では、医療系総合大学
リーダーシップの下で、大学院医歯
康増進が求められます。吉澤学長の
るまで、各ライフステージに応じた健
抜くためには、小児から高齢者に至
ます。また、長寿社会を健康に生き
急速な少子高齢化によって、国民
の疾病構造は大きく変化してきてい
を育成したいと考えています。
て明日の歯学・歯科医療を担う人材
いきたいと考えています。
支援企画実施についても取り組んで
大学院医歯学総合研究科長・
歯学部長
レベルの研究拠点となるよう貢献し
副学長(総括担当)
本学のブランド力向上の
ための広報活動を推進
副学長(事務総括担当)
明日の医歯学研究と
歯科医療を支える
人材育成
近藤 弘
東京医科歯科大学の
「基本理念」に
沿って業務精励
副学長(評価担当)
森山啓司
木村彰方
谷本雅男
遂行のプラスになる好循環が継続で
副学長(URA担当)
てまいります。
副学長(広報担当)
きるよう工夫してまいります。
田賀哲也
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Bloom! 医科歯科 No.17
Bloom! 医科歯科 No.17
9
眞峯隆義
新学長を支える
副学長・部局長紹介
特集
世界に冠たる医療系総合大学を目指す新体制
保健系分野の
水準向上を担う
教育・研究者の育成
グローバル化に
対応した
教養教育を目指して
教養部長
た。この流れを医学部長の立場から
外活動に多くの時間を割いてきまし
で国際交流担当副医学部長として海
歩になると期待しています。これま
本学の海外拠点校設立へ向けた第一
ジョイント・ディグリー・コース等 は、
大 腸 癌 プロジェクトやチリ大学との
活性化が著しく、特に南米における
の外部資金を背景に海外拠点活動の
最近は文科省、外務省、経産省から
な合意形成が図れるよう尽力します。
の意向や要望を調整しながら発展的
教授会や現場との間を仲介し、両者
た今、医学部長として大学執行部と
学長の強いリーダーシップと迅速
な組織対応が求められるようになっ
必要とする博士人材の輩出を目指す
育へ参画していただき、真に社会が
て、多くの企業や公的機関の方に教
は疾患予防科学をキーワードとし
を育成しています。2014年から
性をもち、国際的に活躍できる人材
大学院連携)を活用し、高度な専門
子大学、北里大学、学習院大学との
科学東京コンソーシアム
(お茶の水女
附置研究所を母核として、学際生命
タートを切りました。本専攻は、両
専攻として2012年に新たなス
に、医歯学総合研究科生命理工学系
育部は、医歯学との融合教育を目的
医学、歯学を支える生命理工学分
野の教育研究を担う生命情報科学教
化を一層推し進めていく所存です。
に、国内外教育研究機関との連携強
教育・研究の質向上を目指すととも
ての自覚をもち、他分野連携による
指す東京医科歯科大学の一部局とし
「世界に冠たる医療系総合大学」
を目
究者の育成に努めています。また、
い専門性を有する、優れた教育・研
インドをもち、それぞれの分野に高
これらを実現するために、医療人マ
を備えた人材の育成が不可欠です。
人としての優れた人格と高い倫理観
高度な専門知識と技術に加え、医療
向上させることです。
そのためには、
本の医療における両分野の質を一層
本研究科の使命は、看護および臨
床検査分野のパイオニアとして、日
んでいきます。
に対応した新しい教養教育に取り組
かしつつも、グローバル化する社会
部教員は、これまでの良き伝統を活
ことを目指しています。私たち教養
ミュニケーション能力を身に付ける
ぶ 力、 国 際 的 な 医 療 人 に 必 須 の コ
理観、自ら問題を見つけ継続して学
とにより、医療人に必要な高度な倫
会・自然・外国語系の科目を学ぶこ
学科の別なく全学生が共に人文・社
います。そのため教養部では、
学部・
ための人間としての力が求められて
理解できる教養と、他者を理解する
加えて、様々な文化や多様な世界を
世界に通用する医療人になるため
には、専門教育で獲得する知と技に
歯学部附属病院と
医学部附属病院の
連携推進に尽力します
新しい大学院教育も進めています。
病院機能を
最高度に発揮するため
現場力の充実を
を生かし、医学系、歯学系の先生方
学の中に設置されているという特長
強化を推進していきます。医療系大
他大学とのネットワーク構築などの
国際連携による優秀な研究者 留
・学
生の確保、若手研究者・大学院教育、
通して本学発の材料・技術の実用化、
情報発信するとともに、産学連携を
領域を開拓し、最先端の研究成果を
医学、歯学、工学の融合分野で研究
料 生
・ 体工学を扱う工学分野の附置
研究所として位置付けられました。
生体材料工学研究所は文部科学省
ミッションの再定義により、生体材
備し、より良い研究環境を提供する
動物センターなどとの協力体制を整
疾患バイオリソースセンター、実験
にとの命を受けております。学内の
る研究活動の効率的支援を図るよう
部・歯学部および両附属病院におけ
らは、拠点活動強化により本学医学
に選定されましたが、吉澤新学長か
昨年、本学はリサーチ・ユニバーシティ
拠点”
としての活動も続けています。
研究拠点の1つ“ 難治疾患共同研究
2010年より全国共同利用・共同
る こ と を 使 命 と し て お り ま す が、
難治疾患研究所は難治疾患にかか
わる最先端の基礎医学研究を推進す
本院の魅力を広報しつつ、国内外の
し、これらを集約して
(書籍として)
各部門の優位性「ウリ」の構築を推進
力向上を図りたいと思います。
また、
がいのある環境の下で総合的な病院
内媒体で情報を共有しながら、やり
間の多様な規模の連携を促進し、院
護などの重層的な連携、医療従事者
の連携、診療科・中央診療施設・看
と思います。医科と歯科の多方面で
と「評価」をキーワードに目指したい
この現場力の格段の充実を、
「連携」
で、
最高度の機能が発揮されますが、
病院は人体のように、優れた中枢
( 方向性 )と優れた臓器( 診療現場 )
医療体制への貢献にも積極的に参画
の東京オリンピックに向けた本学の
センターへの協力体制や2020年
が推進されております長寿健康推進
考えております。また、吉澤新学長
を受けられるように進めていきたいと
患者さんがスムーズに両病院で診察
携、さらに医療情報の一元化など、
と顎顔面口腔領域のがん治療の連
者さんの周術期の口腔ケアや頭頸部
えば、医学部で手術を受けられる患
進していくよう努力いたします。例
た。今後は両病院の連携をさらに推
附属病院の連携強化に努力されまし
吉澤新学長は、これまで医療担当
理事として歯学部附属病院と医学部
できるよう努力してまいります。
患者さんに高く評価される医療環境
の構築と洗練を目指します。
ことで、その責務を果たしてまいり
歯学部附属病院長
リサーチユニバーシティに
おける難治疾患研究の
使命
嶋田昌彦
との交流 共
・ 同研究を深め、医歯工
連携を積極的に推進して特色ある医
医学部附属病院長
たいと考えております。
木原和徳
療系総合大学の実現に貢献します。
難治疾患研究所長
医・歯・工の
連携による
先端研究を推進します
さらに強化したいと考えています。
清田正夫
生命理工学と医歯学の
学際分野を
けん引する人材を育成
大学院保健衛生学研究科長
戸塚 実
大学の
ガバナンス強化と
グローバル化に向けて
大学院医歯学総合研究科
副研究科長・生命情報科学教育部長
影近弘之
石野史敏
10
Bloom! 医科歯科 No.17
Bloom! 医科歯科 No.17
11
大学院医歯学総合研究科
副研究科長・医学部長
江石義信
生体材料工学研究所長
宮原裕二
RANK mRNA
医療研究★最前線
未 来 医 療 を 拓 く
骨の中身がなくなり骨がもろく
なる骨粗鬆症。高齢化が進む日本
では、1200万人を超える骨粗
鬆症患者がいるといわれる。骨粗
鬆症により骨が弱くなると、例え
野田政樹 教授
難治疾患研究所 分子薬理学分野
Time after addition of DRB
[Hour]
ば、ちょっと転倒しただけでも骨
折してしまう。これが引き金とな
り、大腿骨頸部を骨折して寝たき
りになる要介護高齢者も多い。
体内では、古くなった骨が破骨
細 胞 に よ っ て 壊 さ れ る「 骨 吸 収 」
と、細胞により新しい骨が形成さ
れる
「骨形成」
を繰り返し、丈夫な
骨を保っている。こうした
「骨のリ
モデリング」のバランスが崩 れ た
ときに起こる病態が骨粗鬆症だ。
骨粗鬆症の原因としては、生活
習慣病やステロイド薬の副作用に
よるもののほか、女性ホルモンの
分泌低下が影響することが知られ
10
ている。骨粗鬆症患者に閉経後の
転 写 や メ ッ セ ン ジ ャ ー RNA
( mRNA
)で 働 い て い る こ と が 分
か っ て い ま す。 全 て の Cnot3
を
ノックアウトすると死 ん で し ま う
9
6
3
0
ので、2本ある染色体のうち1本
の 染 色 体 に 載 っ て い る Cnot3
の
みを欠損させたマウスを使ってい
ま す が、 当 初 は Cnot3
と骨量の
関係はまったく知られていません
でした」
破骨細胞の活性を
抑制する Cnot3
は破骨細胞、骨芽細胞の
Cnot3
どちらにも存在している。という
ことは、
「骨の吸収を抑える」「骨の
形成を増やす」という2つの可能
性が考えられる。そこで、 Cnot3
欠損マウスの体内から取り出した
破骨細胞と骨芽細胞をそれぞれ培
養し、どこで、どのように骨量減
少を抑えているのか、より詳しく
見ていった。
を欠損させた
その結果、 Cnot3
状態で培養させた骨芽細胞には、
正常に骨を作り出す能力があり、
Cnotの
3 有無は影響していなかっ
た。一方、 Cnot3
の欠損した破骨
細 胞 は、 通 常 の 倍 に 数 が 増 え、
の影響が見られた。
Cnot3
50
女性が多いのはそのためだ。
を比較。健康なマウスでも、生後
が進むことを考えれば、加齢によ
いない。日本で今後さらに高齢化
のメカニズムはほとんど分かって
「 マウスで生後2年はかなり高
齢です。すでに骨量が3分の1ま
らに半分くらいまで減少していた。
3分の1程度に減るが、 Cnot3
を
欠損させた高齢マウスは骨量がさ
2年になれば骨量は若いマウスの
る骨粗鬆症に対する安全で有効な
で減っているのだから、それ以上
大きくは減りにくいと思っていま
し た。ところが、 Cnot3
を欠損さ
せたマウスの骨は、さらに半分に
まで減っていたのです」
が骨量減少を抑制してい
Cnot3
る裏付けとして、健康な高齢マウ
ス の 骨 で Cnot3
発現量を調べた
ところ、若いマウスの3分の1程
度まで低下していた。
野生型では、
高 齢 で も Cnot3
があればこの骨
量を維持できることになる。
抑える働きをすることをマウスの
実験により発見したのだ。
「 Cnot3
はイーストからヒトまで
あ ら ゆ る 生 き 物 の 体 内 に 存 在 し、
伝子診断で Cnot3
の発現量を調べ
れば、詳しく骨粗鬆症リスクを診
断し、早期治療や予防を行える可
能性がある。
現在は、ホルモンやサイトカイ
ン内をスクリーニングし、 Cnot3
発現の調節の可能性を探っている
れました。培養皿の中で破骨細 胞
の前駆細胞の
て骨粗鬆症の治療にあたってきた
をノックダウン
Cnot3
させると RANK
が増える。そのた
め破骨細胞が増えて、骨吸収が促
るのではないかと見ている。
も過剰には活性化しないのです」
が
さ ら に 野 田 教 授 は、 Cnot3
経験から、
“運動”
にも重要性があ
「 骨粗鬆症を防いで、骨の量を増
やすには、
適度な運動が必要です。
高齢者の場合は、散歩など歩くこ
促すなど、骨に対して様々な効果
とも大切。歩くことで骨そのもの
の分解スピードを検証。 Cnot3
が
欠 損 し た 細 胞 で は正常なタイプに
ませんが、運動することで重要な
に刺激が与えられ、全身の血流を
比べて分解スピードが遅く、 RANK
遺伝子の発現を増加させることが
いと考えています」
遺伝子の発現が増えるかもしれな
があります。まだ詳しくは分かり
分かった。これは Cnot3
が転写を
制御しているのではなく、転写後
整形外科医として臨床にもあた
る野田教授は、加齢性骨粗鬆症に
よる寝たきりの状態を減らしたい
という思いも強い。
「 世界有数の高齢社会である日
本では、加齢による骨粗鬆症はと
この研究を発展させていきたいと
ても大きな問題。
将来のためにも、
を食い止める Cnot3
の知見は、
加齢
性骨粗鬆症の病態解明や治療薬開
考えています」
破骨細胞の活性を抑え骨量減少
治療薬としての応用や
遺伝子診断にも期待
の mRNA
の安定性を制御してい
ることを意味する。
分解を促進する分子であ
mRNA
ることから、 RANK
遺伝子の mRNA
という野田教授。整形外科医とし
されます。 Cnot3
があれば RANK
をほどよく減らすので、破骨細胞
は、受け皿である RANK
を増加さ
せないように働いていると考えら
「 破骨細胞は RANKL
というタン
パク質が RANK
という受容体と結
合して分化誘導されます。 Cnot3
実験では、生後4カ月の若いマウ
スと生後2年の高齢マウスの骨量
ことに成功した。
「 Cnot3
」という
遺伝子が、加齢による骨量減少を
減少に影響する遺伝子を特定する
野田政樹教授は、加齢による骨量
長年にわたって骨粗鬆症研究に
取り組んできた難治疾患研究所の
加齢マウスの骨は
若いマウスの3分の1以下
治療法の確立は急務だといえる。
性別に関係なく、加齢も骨量が
減少する原因の1つ。しかし、そ
のだ・まさき
1977年東京医科歯科大学医学部卒
業。整形外科医として臨床に携わっ
た後、骨の研究をするために東京医
科歯科大学大学院修了。フルブライ
ト奨学金による留学を経て、米国メ
ルク社の研究部門で骨粗鬆症に関す
る研究に参加。骨粗鬆症治療薬の研
究開発を行った。1991年より現職。
難治疾患研究所長、本学GCOEプロ
グラム拠点長、日本学術会議連携会
員を歴任。
発などへの応用が期待できる。遺
12
Bloom! 医科歯科 No.17
Bloom! 医科歯科 No.17
13
WT
[%]
骨量の減少を抑制する遺伝子を発見
骨粗鬆症を防いで健康長寿に貢献
RANKL
Treated
Cnot3欠失は、RANKのmRNAの半減期を青矢印の
方向に延長することにより、RANKの遺伝子発現を矢
印のように増加させる。
A〜Cは分化する前の破骨細胞。D〜FはRANKLにより分化させた後の破骨細胞。Cnot3(緑
色の部分)は、破骨細胞の細胞質に存在し、核(青色の部分)には存在しないことが分かる。
100
Before
Differentiation
Number.12
Wo r k e r
KO
R e s e a r c h
Merge
DAPI
Cnot3
P
O
I
N
T
【フォーカス・オン】
⃝「スポーツサイエンス機構」を設置し、
スポーツ医歯学、スポーツ科学を融合
した国内初の拠点大学を目指します。
⃝2014年10月
「スポーツサイエンス機構」
室伏広治氏を教授として招へい
の設置に向け、現役トップアスリートと
しての経験や研究者としての理論を持
アスリートをトータルでケアする
「スポーツサイエンス機構」新設
ち、博士(体育学)の学位を有する室
伏広治氏を教授(スポーツサイエンス
センター長)として招へいします(8月1
日から設置準備のため特任教授として
招へい)。
⃝室伏広治氏を招へいするにあたり、民
間企業(ミズノ株式会社)
との「クロスア
2014年10月、東京医科歯科大学は医療系総合大学としての強みを活かした「スポーツサイエンス
ポイントメント制度」※を導入します。
機構」を設置。トップアスリートとしての経験と博士(体育学)の学位を有する室伏広治氏を教授と
医学部附属病院スポーツ医学診療センターのアスレティックリハビ
リテーションルーム。体幹部の筋力や左右バランスをチェックした
うえで、最適なリハビリテーションを行う。
⃝東京オリンピック・パラリンピック競技
大会組織委員会との大学連携協定に
基づきオリンピック教育の推進を図る
して招へいし、スポーツ医歯学とスポーツ科学を融合した国内初の大学拠点を目指す。
高気圧治療部見学会で
記者に説明をする柳下
和慶スポーツ医歯学セ
ンター長。
とともに、オフィシャルホスピタルを目
指して、トップアスリートへの診療支援
を展開していきます。
⃝障害・外傷予防、診療、アスレティッ
クリハビリテーション、競技復帰とパ
フォーマンス向上のためのトレーニン
グ、栄養など、アスリートに必要なトー
タルケアを提供します。
※クロスアポイントメント制度:他機関との混合給与を制度
化したもので、双方に身分を有し、双方の業務を行う。
双方の勤務割合を協定で定め、勤務割合に応じた給与を
各機関が支払う。
020年に開催される東京
オリンピック・パラリンピック
を見据え、けがの予防や治療から、
パフォーマンス向上のためのトレー
ニング開発まで、トータルでケアで
きる環境が必要だとされている。
東京医科歯科大学では、医学部
附属病院のスポーツ医学診療セン
ター、歯学部附属病院のスポーツ
歯科外来にて、
アスリートの診断・
治 療を行っている。また、
大学院医
歯学総合研究科に「スポーツ医歯学
分野」を設置し、スポーツや運動が
身体に及ぼす影響を研究している。
こうした実績をふまえ、「スポー
ツサイエンス機構」を設置。スポーツ
科学・理論を研究する博士( 体育
学)
の学位を持ち、
世界的アスリー
トでもある室伏広治氏を教授( セ
ンター長)として迎え、アスリート
に必要なトータルケアを提供する。
スポーツサイエンス機構は、「ス
ポーツ医歯学診療センター」
と
「ス
ポーツサイエンスセンター」の2つ
のセンターから構成される。
スポーツ医歯学診療センターは、
スポーツ外傷や障害治療などのア
スレティックリハビリテーションな
ど、医療的なアプローチを中心に
アスリートを支援。早期回復のた
めの治療やリハビリはもちろん、
より高いレベルで競技復帰できる
ことを目指す。スポーツ医歯学に
関わる診療科や日本最大の高気圧
酸素治療など、東京医科歯科大学
の強みを発揮する体制で取り組む。
一方のスポーツサイエンスセン
ターでは、動作解析研究、トレー
ニングプログラムの開発やアスレ
ティックトレーニングを行う。室伏氏
のオリンピック金メダリストとして
の経験や理論を実践し、高いレベ
ルでのパフォーマンスの実現をサ
ポートする。
東京医科歯科大学は、東京オリ
ンピック・パラリンピックに向けて
全国の大学・短大による「大学連携
協定」にも参加。オリンピック教育
の推進を図りつつ、診療体制の整備
を行っていく。
「スポーツサイエンス機構による
科 学 的 なメンタル・フィジカルト
レーニングには、アスリートのケア
のみならず、高齢者の運動機能向
上、QOLの維持や予防医学の観
Bloom! 医科歯科 No.17
点からも期待しています」と、医
療・国際協力担当の田中雄二郎理
事は話す。スポーツ分野での成果
を活かし、国民の健康増進にも貢
献することになる。
15
プレス発表にて。左から、柳下和慶(スポーツ医歯学センター長)、田中雄二郎(医療・国際協力担当理事、機構長予定者)
、吉澤靖之学長、室伏広治氏、
木原和徳(医学部附属病院長)
、神田和明(副理事、病院事務総括担当)
。
2
2014年6月に開催された「2020年東京オリンピック・パラリンピック
競技大会大学連携協定締結式・記念シンポジウム」。東京医科歯科
大学をはじめ全国の大学・短大552校が締結した。
Bloom! 医科歯科 No.17
14
髙田和生教授
の結果として、今日、国際的キャリア志向の
学生が多く入学してきます。本学の役目は、
志の高い彼らが、適切なゴールを早期に設
定し、ロールモデルを見つけ、長いキャリア
医療分野におけるグローバル化とは、医療における国際標準化、そして医療の革新・医療政策・
医療産業という分野での日本の貢献度を高めることだ。その実現のために、今年5〜6月に東京
しまず、ゴールに到達する―― それをサポー
形成期間中、常に未来を見つめ、努力を惜
トすることです。
「グローバル人材」
という言葉
学科1年次の学生を対象に
「 国際医療問題に関する英語
Global
ローバルリーダーを目指す
東 京 医 科 歯 科 大 学 の 学 生、
ような真の「グローバル人材」が、本学から多
く巣立っていくことを期待してサポートします。
ダーシップスキルなど、
「ソフトスキ
ティカルシンキングスキルやリー
力が必要となる。それには、クリ
ダーシップを発揮して実行に移す能
るソリューションを見い出し、
リー
を予測したうえで、最良と思われ
その原因を分析して、効果・可 能 性
抱 え て い る 問 題 を 正 し く 理 解 し、
ない。様々なステークホルダーが
将来は国際的な舞台で活躍した
医になりたい」「具体的ではないが
設は少ないので、対応できる歯科
「 障害を持つ方
参加者からは、
や外国語を話す方を治療できる施
加した2年次の学生も参加した。
リテーターとして昨年GCWに参
して本学の大学院留学生、ファシ
模擬交渉には、ステークホルダーと
「 学生時代の海外経
岡講師は、
験を通して貧困に関する問題の根
迎え、座談会形式で行われた。
ルエンザ対策推進室)をゲストに
省健康局結核感染症課新型インフ
このイベントは、医療分野でネッ
トワークを広げる貴重な機会とし
ながっているのです」
と語った。
政策とフィールドとは一直線でつ
た。一 見 遠 い よ う に 見 え ま す が、
多様な価値観を持つ人たちのなかで
自分の意見を表明する
ディスカッション・カフェ
て、毎月開催されている。
ことも目の当たりにしてきまし
世界の保健政策にも影響を与える
での政策が、WHOなどを通じて
分かりました。また日本や諸外国
い」などの声が寄せられた。
方 法 を 学 び、模 擬 交 渉 を 行 っ た。
とを目的として、英語で議論する
GCWでは、参 加 者一人 ひとり
が、自身の今後のゴールを定めるこ
初めは相手の反応を見ながら少しずつ英語を口にしていた学生たちも、
題材をよく理解し自分の果たすべき役割が明確になるにつれて、積極的
に議論に参加するようになった。
ル」
と称される資質が要求される。
グローバルな舞台で活躍する
医療人を目指して
国 際 医 療 問 題に関 する英 語 模 擬 交 渉ワークショップ
グ
研究者、若手教職員が、実際に医
学・医療分野でグローバルに活躍
している人材と交流するイベント
「 “ Find-Your-Role-Model ”session
」
は、参加者が自身のキャリア形成
―「global citizen」
としての自覚とミッション
シッププログラム
(HSLP)の学生
大 学 のヘルスサイエンスリーダー
センター( ICC)と東京医科歯科
は、早稲田大学の国際コミュニティ
議論する「ディスカッション・カフェ」
大学と早稲田大学の学生が英語で
題をテーマに東京医科歯科
康・医療に関する国際的問
京医科歯科大学に移し、
「 日本の
大学で行われ、2回目は会場を東
1回目は「グローバリゼーション
と医療・医学」をテーマに早稲田
目標を掲げている。
全学生の海外留学派遣という高い
ち、留学生受け入れ1万人および
派遣数ともに国内1位の実績を持
健
【3】
のために必要なロールモデルとな
る人材を見つけることを目的とし
ている。
6月は、スイスにあるWHO本
部 で 新 型・ 季節性インフルエンザ
の疫学・サーベランスに携わった
経験を持つ岡邦子講師( 厚生労働
を持ち、弛まぬ努力を続ける人間です。その
源が、その国の政策にあることが
自分のキャリアプランを見い出し
実現するために
ファインド・ユア・ロールモデル・セッション
のは、医学知識や英語力だけでは
台で活躍するために必要とされる
生命科学研究や国際保健、医療
産業などの分野で、グローバルな舞
リア支援室の主導で開催された。
)
Communication Workshop; GCW
が、国際交流センターグローバルキャ
模擬交渉ワークショップ」(
全
【1】
地球規模の課題解決のために果敢に挑む ―
大学と包括協定を結んでいる。早
る連携を主な目的として、早稲田
東京医科歯科大学は、2013
年よりグローバル人材育成におけ
る。
が主体となって企画・運営してい
寄せられた。
て楽しかった」というコメントが
について包括的な話し合いができ
持ち、社会・文化的な問題の背景
ションした。参加した留学生から
低出生率」をテーマにディスカッ
は、
「 日本人学生と交流の機会を
稲田大学は、
留学生の受け入れ数・
16
Bloom! 医科歯科 No.17
Bloom! 医科歯科 No.17
17
医科歯科大学で行われたグローバル人材育成のための3つの取り組みについて取り上げる。
がちまたにあふれていますが、グローバル社
会が必要とする人間は、単に英語を話すだ
けでなく、クリティカルシンキングスキルな
世界で活躍する医療人に
なるためのグローバル教育
ら果敢に教育の国際化を進めてきました。そ
本学はこれまで、医療系総合大学でありなが
【2】
どのソフトスキルを持つのでも十分ではなく、
健康・医療をテーマに学ぶ
「自分のキャリアを築いていく
には、常に興味を広く持って
おくことと、関心のある分野
に注力することが重要」と岡
講師は語る。
グローバルキャリア支援室室長
全体でのブリーフィングの
後、OREなどの議論におけ
る意見表明フレームワーク
を学び、各学生が異なるス
テークホルダー役を担って
6〜7人程度で英語による模
擬交渉を行った。
早稲田大学からは国
際 教 養 学 部・ 社 会
学 部・ 法 学 部・ 政
治 経 済 学 部 の11人
が参加した。
【フォーカス・オン】
N
M
U
L
O
C
N
o
w
o
f
G
r
a
d
u
a
t
e
附属病院 ◎ 診療科訪問
まつだ・かずゆき
1999年東京医科歯科大学医学部保健衛生学科検査技術学
専攻卒業。2001年同大学院保健衛生学専攻修了。同年信
州大学医学部附属病院臨床検査部入職。2007年同大学院
医学研究科病体解析診断学(臨床検査医学)修了。医学博士。
2013年日本臨床検査医学会学会賞(検査・技術賞)受賞。
歯学部附属病院
歯科衛生保健部
全
卒業生の今
身
の
健
康
活躍する医科歯科人
の
た め に
口
腔
内
環
境
歯磨き指導 ◎ 口腔ケアの基本である
歯磨き指導にはかなり時間をかける。
「それぞれの歯を20回ずつは磨くよう
なイメージで」
(足達部長)。
「検査」
と
「研究」
の両輪で
先端医療に貢献する
往診チーム ◎ 火曜日と
木 曜日の 午 後 は 外 来 受
診が困難な患者の口腔
ケアのため病棟に行く。
往 診 は 歯 科 医 師と歯 科
衛生士数人のチーム体制
で行う。周術期口腔ケア
を必要とする患者は、全
身管理とともに精神面で
のケアも重要になる。
信州大学医学部附属病院
臨床検査部 副技師長
松田和之氏
Matsuda Kazuyuki
を
改
善
歯ブラシ ◎ ブラシの軟らかさ
や形、力の入れ加減に合わ
せたブリッジの硬さなど、そ
の人に合った歯ブラシの選び
方も指導する。歯ブラシを新
調する目安は1カ月とのこと。
医病往診件数
先端医療の進展と相まって、そ
の重要性が高まっている臨床検
査。信州大学医学部附属病院臨床
検査部に所属する松田和之さん
は、生理機能検査や検体検査など
多様な検査の中でも、特殊領域で
ある染色体・遺伝子検査に従事し
ている。研究にも力を注ぎ、
「 医療
人」と「 研究者」の両輪で進んでき
た。実は、学生時代からこの形態
を目指していたという。
「 大 学 進 学 に あ た り、
医療系を志す中で臨床
検査に関心を持ち、国立
大学検査系のパイオニ
アである東京医科歯科
大学に入学しました。そ
して、当時の恩師から検
査技師もその気があれ
ば、 学 会 発 表 や 論 文 な
どを発信できると聞き、俄然やる
気になったのです」
全国の大学病院の中でも技師が
働きながら研究できる場所として
恩師が薦めたのは、松田さんの地
元でもある信州大学医学部附属病
院。迷わず入職した同病院の臨床
検査部は研究への意欲に満ちてお
り、松田さんも現場から見い出し
た 課 題 を 研 究 し 始 め た。し か し、
研究は通常業務ではないため、研
究に費やせるのは業務外の早朝や
夜、休日のみ。自身が望んだこと
とはいえ、厳しさは並大抵ではな
い。それでもモチベーションを保
てるのは学生時代に芽生えたある
思いだという。
「 検査技術学の仲間は非常に意
識が高く、将来について熱く語り
合ったり、読んだことのない学術
雑誌や本を貸してくれ
た り と、 常 に 刺 激 を 与
えてくれる存在でした。
そ の 経 験 か ら、 自 分 も
周囲に刺激を与える人
間でありたい、と思 うよ
うになり、それが自分の
姿勢を貫く支えになっ
ています」
そして、精力的に取り
組んできた「 白血病診断における
遺伝子変異特異的PCR法による
微小残存病変評価と再発リスク」に
関する研究が実を結び、日本臨床
検査医学会学会賞など数々の賞を
受賞。しかし、これは「 あくまで
も通過点」と語る松田さん。後進
の教育という新たな目標を掲げつ
つ、今後も先端医療に寄与する臨
床検査と研究を続けていく。
信州大学医学部附属病院 長野県松本市旭 3丁目1番1号 0263-35-4600
診療科目:内科、精神科、小児科、皮膚科、放射線科、外科、整形外科、脳神経外科、特殊歯科・口腔外科、泌尿器科、眼科、
耳鼻いんこう科、産科婦人科、麻酔科蘇生科、形成外科、救急科、総合診療科
病 床 数:707床(一般病床 667床、精神病床 40床)
スタッフ:1,744人(2014年8月現在)
「信州から世界へ」をスローガンに患者さんへより安全で高度な先進的医療を提供し、次代を担う医療人を育成する。
19
Bloom! 医科歯科 No.17
ICU
循環器内科
頭頸部外科
血液内科
呼吸内科
40
30
医病往診件数 ◎ 周術期
口 腔 ケアを 始 めてから
年々往診数は増加。特に
多いのは、誤嚥性肺炎の
リスクがある患者をはじ
めとした老年病内科。食
道胃外科や血液内科など
がん患者も多い。入院中
でも自分で歩ける患者は
外来を受診する。
老年病内科
胆肝膵外科
脳神経外科
食道胃外科
小児科
20
足達淑子部長 ◎「診断などは歯科医師が行
いますが、歯科衛生士が主体となって口腔
ケア計画を決め、実行できるのは東京医科
歯科大学ならでは。これからは摂食嚥下機
能に障害がある患者さんの口腔機能の向上
にもかかわっていきたいと思っています」
口
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0
1月 2
2013年
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10 11 12 1月 2
2014 年
腔内の健康状態をチェックし、そ
「周術期口腔ケア」にも力を注いでいる。
の人のライフスタイルに合った口
化学療法や放射線の治療中はひどい口
腔ケア方法を指導する歯学部附属病院
内炎やドライマウスが起こる。また、認
の歯科衛生士。各配属外来でも指導を
知症患者や脳神経疾患患者では口腔内
行っているが、口腔ケア外来では日常
環境の悪化から誤嚥性肺炎などのリス
のセルフケアの指導と併せて、歯石除
クが上がる。このような患者に対して、全
去や歯面研磨などの専門的なプロ
身状態を管理しながら口腔ケアを行う。
フェッショナルケア、さらに、歯学部
「病棟に行くと、看護師さんから日々の
附属病院および医学部附属病院の入院
ケアについて相談されることもありま
患者の口腔ケアがメイン業務となる。
す。体位が変えられない患者さんの口
「 むし歯や歯周病などの治療後、他
腔ケアは特に難しいので、病棟看護師
科から紹介されて受診する人もいます
さんたちと協力しながら行っています」
が、予防のために定期的に受診する人
がん患者に口腔機能管理を行い、感
が増えています」
とは足達淑子部長。
染症の発症率や入院日数が下がったと
口腔ケア外来では、医学部・歯学部
いうデータもある。今後ますます口腔
両附属病院に入院中の患者を対象とした
ケア外来の重要度は増すだろう。
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6
診療科DATA
口腔ケア外来
診療科長 ◎ 吉増秀實
診療スタッフ ◎
歯科衛生士 9人(小児歯科外来と兼任)
歯科ユニット ◎
6台(1日の外来患者数は30〜40人)
主な処置 ◎
口腔内診査・問診、歯周組織検査、歯科
保健指導、歯石除去・歯面研磨(クリーニ
ング)
、フッ化物塗布・洗口剤処方、ペリ
オチェック
周術期口腔機能管理 ◎
口腔清掃指導、舌運動、口腔周辺筋や唾
液腺のマッサージなどの口腔機能維持・
向上のための指導、口腔内乾燥への指導、
歯石除去・歯面研磨、フッ化物塗布
Bloom! 医科歯科 No.17
18
[3]
東京医科歯科大学の過去から現在までの
どを参考にしています。自分で一
攻3年の石井修平さんも、大学に
医学部保健衛生学科検査技術学専
もうれしいです」
そのときに先輩から褒められるの
本が取れたこともうれしいですが、
入学してから本格的に剣道を始め
剣道に打ち込む一方、3年にな
り、学業も忙しくなってきた。血
東京医科歯科大学の剣道部は、
人の部員のうち6人が初心者。
た。中学、高校時代は陸上部だっ
ですが、最近では少し心電図を読
液検査や免疫検査など、本物の検
「 剣道は高校の体育の授業で少
し経験したことがある程度でした
めるようになりました。わずかな
たが、大学では新しいことに挑戦
が、東京医科歯科大学の剣道部は、
波形の違いから心臓のことや病気
体を使った実習も増えた。
人数は少ないけれど面白い人が多
を読み取ることのできる心電図が
したいと思い、剣道部に入部した
く、一方で練習のときは真剣に取
とても面白いです」
という。
り組む姿勢を持っていることに魅
「 特に興味を持っているのが心電
図検査です。まだまだ勉強が必要
力を感じ入部を決めました」
興味を持ったテーマを深めるべ
く、進学も視野に入れている。
らなかったという石井さんだが、
どうやって勝敗が決まるのか分か
「一本」となる 。試合を見ていても、
一連の流れがそろってはじめて
たり具合、声、打ち終わ りといった
査の研究を行ってみたいです」
が、最も興味のある心臓の生理検
は別の分野になるかもしれません
したいと思っています。最終的に
「 せっかく 東 京 医 科 歯 科 大 学 に
入学したからには、大学院に進学
剣道では、面、胴、小手のいずれ
かを打つ、または突くときの、当
練習を重ねる中で自分でも一本 を
夏にはラオス研修に参加し、途
上国の医療を自分の目で見てくる
取れるようになっていった。
「 海外へ行くのも初めてなのです
が、学生のうちにできることを精
という石井さん。
目標です。練習中や試合中はとに
一杯がんばりたい」と、忙しくとも
「 自分と同じように初心者から
始めて、すごく強くなった先輩が
かく先輩たちをよく見て、打つま
臨床検査技師として
たくさんの人の
健康を守りたい
日本サッカーミュージアムがある御茶ノ水・本郷・湯島周辺で
充実した毎日を送っている。
2014年 5〜7月
電車の中からも見えるほどの大きさで、多くの人々の目を引いた。
合計約300㎡のM&Dタワーのシティドレッシングは
SAMURAI BLUEの勇姿を活用したシティドレッシングが登場。
本学のM&Dタワー、8号館南、外周柵には、
「 夢 を 力 に 2 0 1 4 〜 日 本 最 大 級 の シ ティ ド レッ シ ン グ 〜 」が 行 わ れ た 。
東京医科歯科大学の剣道部は、千葉大学や順天堂大学の剣道部と合同で練習を行う
など他大学との交流の機会も多く、常に和気あいあいとした雰囲気が魅力である。
※超大型グラフィック等を掲出して街全体を装飾すること
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Bloom! 医科歯科 No.17
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M & Dタワーのシティドレッシングはひときわ目を引く
(左)。
外周柵約50メートルがSAMURAI BLUE 一色に(上)。
M & Dタワー内の様子。窓の外に本田圭佑選手の眉と目が見える
(下)。
※
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でのせめぎ合いや体の動かし方な
日本最大級のシティドレッシング
夢を力に2014
石井修平さん
トピックス、
エピソードをピックアップして紹介します。
No.008
自ら問い、
自ら導く学生たち
f ile
医科歯科大生
看護師として働く母親を見て育ち、自分も医療
の道に進んで人の役に立つ仕事をしたいと思っ
たという石井さん。
「性格的に人前に出るのは
苦手ですが、高校生のときに医療を支える臨床
検査技師という仕事があると知り、この道に進
もうと決めました」
と話す。検査技術学の勉強
は、医学の知識も必要で、学ぶことの多い専
攻だが、やりがいも大きいと石井さんは語る。
医学部保健衛生学科検査技術学専攻 3年 ◎ 剣道部所属
TOPICS
[トピックス]
2014年2月から7月の主な出来事
2月
3月
4月
5
月
6月
7月
23
3日 *プレスリリース「糖尿病で血管再生能力が衰える原因
を解明」澤田直樹特任教授
5日 【留学生交流】餅つき大会
(東京医科歯科大学×順天堂大学)
14日 東京医科歯科大学テニュアトラックシンポジウム
17日 *プレスリリース「ゲノムインプリント消去には能動的
脱メチル化が必要である」石野史敏教授
28日 本学がチュラロンコーン大学と歯学の合同博士課程
(JDコース)開設に向けて覚書(MOU)に署名
18日 本学が台湾国防医学院と学術交流協定書を締結
25日 卒業式
26日 学位記授与式
28日 医学部附属病院 臨床栄養部 厨房リニューアル
30日 歯科技工士学校閉校式
31日 生体材料工学研究所(IBB)オープンキャンパス
31日 大山学長退任式
1日 吉澤学長就任式
1日 公式ウェブサイトをリニューアル
5日 共同災害看護学専攻開講式
歯科技工士学校 閉校記念
パーティーの様子。
7日 学部入学式
8日 大学院入学式
10日 新入生オリエンテーション
於:箱根(〜11日)
15日 烏山一理事・副学長が科学技術
就任の挨拶をする吉澤学長。
分野の文部科学大臣表彰におい
て科学技術賞(研究部門)を受賞
23日 *プレスリリース「胎生期の造血幹細胞の維持に関与
する分子Sox17の発見」信久幾夫准教授
28日 医学部がオーストラリア国立大学(ANU)医学部と学術
交流協定書を締結
28日 *プレスリリース
「PQBP1遺伝子変異が関与する知的
障害の原因を解明」岡澤均教授
Campus Information
01
[キャンパス・インフォ]
デジタルサイネージと
キオスク端末を設置
2014年度より、防災情報システムが始動しました。こ
のシステムは、災害発生時に自動的に緊急地震速報や
避難経路が表示されるデジタルサイネージ(電子掲示板)
と現在地から避難場所までの経路を確認できるキオスク
端末(タッチパネル式情報端末)から成ります。平時のデ
ジタルサイネージはイベントのポスター掲示や広報誌の
16日 スポーツサイエンス機構設置記者会見 ☞P14参照
17日 高大連携〈都立日比谷高等学校(〜18日)〉
18日 奈良信雄センター長が医学教育日野原賞を受賞
22日 *プレスリリース「小頭症モデル動物の人為的脳サイ
ズ回復に成功」岡澤均教授
28日 *プレスリリース「関節リウマチの発症リスクを決定す
るHLA遺伝子のアミノ酸配列を同定」岡田随象講師
Bloom! 医科歯科 No.17
FD研修を実施
6月7日、吉澤学長が就任して初となる教職員FD研修が
演が行われました。続いて、各理事からそれぞれの担当
行われました。吉澤学長の「大学運営方針について」と題
分野における取り組み方針についての説明がありました。
した、大学運営の方針と個別課題についての講演でスター
当日の参加者は教職員合わせて635人。メイン会場となっ
ト。世界に冠たる医療系総合大学を目指すこと、大学の
た鈴木章夫記念講堂のほか、2つの共用講義室も席が足
全構成員が愛校心を持つことの大切さなどが語られまし
りなくなるほどで、教職員の職場に対する意識の高さがう
た。次に、外部講師としてお招きした歴史作家の関裕二
かがえました。本学の目指すところを知る、有意義な研修
氏が登壇。
「日本の成り立ち・日本人の信仰」
と題した講
となりました。
紹介、学生への連絡事項など、設置場所に即した情報を
発信しています。キオスク端末は日本語と英語に対応し
ており、タッチパネルでキャンパスマップ、フロアマップ、
交通や食堂の案内、本学ホームページなどの閲覧が可能
です。フロア検索機能もあるため、利用者は必要な情報
を得ることができます。デジタルサイネージは7 5カ所、
キオスク端末は9カ所、キャンパスおよび病院に設置さ
れており、本学関係者や本学を訪れた方の安全性と利便
性を高めています。
地震発生時の表示(デモ画面)
。
キオスク端末(左)とデジタル
サイネージ(右上)。
8日 *プレスリリース
「難治性スキルス胃がんの治療標的候
補となる活性化遺伝子変異を同定」石川俊平教授
10日 体育祭
2日 中島友紀准教授が2014年度ノバルティス・リウマチ
医学賞を受賞
3日 *プレスリリース「赤血球からミトコンドリアが除かれる
メカニズムを解明」清水重臣教授
3日 大学院医歯学総合研究科大学院説明会
3日 難治疾患研究所オープンキャンパス
7日 教職員FD研修
9日 医学部が国立台湾大学医学部(NTUCM)
と学術交流協
定書を締結
11日 大学院保健衛生学研究科大学院説明会
12日 記者懇談会
22日 歯学部がナレスワン大学歯学部
と学術交流協定書を締結
23日 2020年東京オリンピック・パラリ
ンピック競技大会大学連携協定締 記者懇談会で講演する宮﨑
快眠センター長。
結式
02
吉澤学長による講演。
未来の医療人育成に向けた
ご支援のお願い
本学は病気やケガに苦しむ人を一人でも多く救うため、
様々な病気に対する治療法や治療薬の開発につながる
03
関氏の講演を聴く学長と理事。
烏山理事が
文部科学大臣より表彰
2014年度科学技術分野の文部科学大臣表彰科学技術賞
育課程「共同災害看護学専攻」開講式が高知県立大学で
(研究部門)を受賞し、4 月15日に文部科学省の講堂に
行われました。5 年一貫制の博士課程に、本学への3人を
て表彰式が行われました。烏山理事は、生体内での機能
含む計11人が入学しました。世界で求められている災害
が謎のままであった極少血球細胞の好塩基球が、アレル
看護に関する多くの課題に的確に対応・解決し、学際的・
ギーの発症に重要な役割を果たしていることを明らかに
国際的指導力を発揮し、人々の健康社会構築と安全・安
するとともに、好塩基球の本来の存在意義が寄生虫感
心・自立に寄与する
「災害看護グローバルリーダー」
とな
染に対する生体防御であることを突き止めました。
るべく学びます。
Information
ホームページをリニューアルしました
2014年 4 月より、本学のホームページをリ
ニューアルしました。今回のリニューアルで
は、研究情報サイトの新設、サイトデザイ
附および基金を企業や個人の皆様に募っております。医
ンやタブレット端 末 に
う、お願い申し上げます。詳細は下記にお問い合わせ
サイトとなりました。
ください。
●東京医科歯科大学基金 東京医科歯科大学募金室
T E L:03-5803- 5009
災害看護の
リーダーを目指して
4月5日、国内初の国公私立 5大学による大学院共同教
ン変更による視認性・利便性の向上、英語
療の発展のために、皆様のご理解とご支援を賜りますよ
共用講義室1の様子。
免 疫アレ ル ギー 学 分 野 の 烏 山 一 理 事・ 副 学 長 が、
研究および、世界中で活躍できる医療人の育成に尽力
しています。これらの人材育成や研究活動を支えるご寄
04
歴史作家の関裕二氏による講演。
版サイトの充実化を行いました。スマートフォ
も対応し、より身近な
使いやすさを追求しデザ
インを一新。スマートフォ
ンにも対応した(左)
。
News
公式Facebookページを
開設しました
広 報 部 で は 公 式
Facebookページを開
設しました。学内イベ
ントやメディア掲載情
報 など、
「医 科 歯 科 大
の今」を配信していま
す。ぜひご覧ください。
PC版、
スマフォ版
ともに開設。
http://www.facebook.com/tmdu.public
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