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NRI KNOWLEDGE INSIGHT
4
2013 APR. VOL.29
激動の時代を
生き抜く自動車産業
自
動車産業は、今まさに空前の変革期の渦
中にある。新興国におけるモータリゼー
ションは類を見ないスピードで進展し、先進国
に集中していた市場が新興国に分散している。
パワートレインの電動化も猛烈な勢いで拡張し
メカトロニクスを部品メーカーの
競争力向上に活かす
小林敬幸
Noriyuki Kobayashi
自動車の軽量化の進展と
自動車産業の変化
藤田誠人
Akihito Fujita
開発機能現地化の要諦
岡崎啓一
Keiichi Okazaki
韓国自動車部品メーカーの
事業変革の展望
金キョン煥/尹 明洙
ている。環境対応や燃費改善のために、多くの
kyoung-hwan kim / myungsoo yoon
プレイヤーが多種多様なパワートレインを開発
顧客のトータルカーライフ視点による
統合マーケティングの中国での展開可能性
するようになった。また、クルマの情報化・電
子化(テレマティクス)も看過できない新潮流
である。
こうした構造変化は、
業界の競争ルールを変え、
趙 ケイ
Zhao Qiong
では、こうした問題意識のもと、自動車産業、部
インドを活かした
サプライチェーン構築
品産業の生き残りにかけた取組みに着目した。
Ryohei Sakamoto
関連するプレイヤーの淘汰・再編を促す。本特集
前半の 3 本では、
「エレクトロニクス」
「軽量化」
「開発機能」をキーワードに、
日本の自動車産業、
部品産業の進むべき方向性を示した。後半の 3
本は、アジア新興国に焦点を当て、韓国部品メー
カーの事業変革の展望、中国におけるディー
ラーマメジメントのあるべき姿、世界大のサプ
ライチェーンを構築する上でのインド拠点の活
用法について論考した。
本誌に掲載されているあらゆる内容の無断転載・
複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権
法および国際条約により保護されています。
Copyright ⓒ 2013 Nomura Research Institute,
Ltd. All rights reserved. No reproduction or
republication without written permission.
坂本遼平
NRI K NOWLEDGE INSIGHT
2013 APR. VOL.29
当レポートに掲載されているあらゆる内容の無断
転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の
著作権法及び国際条約により保護されています。
メカトロニクスを部品メーカーの
競争力向上に活かす
小林敬幸
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4
グローバル製造業コンサルティング部 グループマネージャー
ども加わる。
は良く使われるが、単純にハード部品単
域展開の効率化は、部品メーカーにとっ
以上のような自動車メーカーの経営効
社は、欧州のみならず日本や米国の自動
このように、車のブレーキ、動力、ス
品を組み合わせただけでは部品メーカー
てみれば、制御領域までの取込み、企業
率化のニーズが、結果として部品メー
車メーカーに対して様々なシステムの外
テアリングなどの複雑化するシステムを、
の取り得る付加価値は減少してしまう。
規模拡大のチャンスとなる。
カーにとっては自社部品に付加価値を付
販を成功させている。
メカトロニクスとは古くからある言葉
電子技術によって制御するニーズが今一
良くてモジュール全体での部品点数削減
「開発の効率化」もまた効率化の重要
ける(メカトロニクスとして制御部分ま
である。メカニクス(Mechanics)とエ
層高まってきている。
によるコストダウン止まりだ。大切なの
な要素である。環境・燃費規制の強化は
でを担う)機会に繋がっている。先述し
はモジュール化する際に、そこに機械と
各国ともに力を入れているが、各地域の
たように、力をつけた部品メーカーは更
電子部品、それをつなぐソフトウェアの
特性や規制に合せたエンジン適合開発は
に他自動車メーカーに拡販を始めて影響
5
3点セットが揃っているかだ。
多くの開発工数を費やす。様々な燃料(ガ
力を拡大するので、一度この流れが出来
以上のように、欧州では電子部品を
ソリン、ディーゼル、天然ガスなど)に
たら止めることは難しい。
扱っていなかったメーカーがM&Aなど
1
自動車システムにおけるメカト
ロニクスの重要性の高まり
レクトロニクス(Electronics)を組合せ
た言葉で、元々は和製英語だそうだ。安
新興国の部品メーカーへの差
別化手段としてのメカトロニクス
次の10年を視野に入れた
体制構築の必要性
登録商標を取っている。その後、一般化
2
して、現在では広く世界中で使われるよ
さらに、今メカトロニクスに注目する
うになった。
理由として、中国、インド、台湾などの
今改めてメカトロニクスが注目される
新興国における新たな競合が台頭してき
3
背景として、燃費規制や環境規制、安全
たことがあげられる。これら部品メーカー
自動車に関する制御は、自動車メー
れる。他に、安全分野も同様である。こ
4
規制などへの対応に際し、自動車に求め
の多くは、段階的には単品部品を低コス
カーが主に担ってきた領域である。部品
ちらは欧州や日米が先行する形となるが、
メカトロニクスの実力を付け、自動車
カトロニクスという観点から自社の競争
られる制御が複雑になってきた点が挙げ
トで作る段階にあるが、自動車メーカー
発注者という観点から考えると、できる
前述のようにカメラ、センサーなどを活
メーカーに積極的な提案を行っている部
力向上を検討する必要があるのではない
られる。例えば安全分野でみると、障害
との擦合せの経験が少ない上、自社で
だけ付加価値を取り込もうと考えるのは
用した外部環境認識からプリクラッシュ
品メーカーの例がドイツに本社を持つコ
か。部品メーカーが、自社の部品をベー
物を検知して緊急ブレーキをかけるシス
ハード、ソフトウェアのいずれの面で幅
自然であり、自動車メーカーが可能な限
セーフティ(予防安全)や緊急ブレーキ
ンチネンタルだ。コンチネンタルは元々
スとして、どのような付加価値を付けら
テムがある。従来はドライバーの判断で
広く技術者を抱えるには至っていないの
り単品で発注しようとしてきたのは理解
などの開発が求められ、開発工数が膨ら
タイヤメーカーであったが、1995年に自
れるのか、ノウハウを制御/ソフトウェ
ブレーキを掛けることが基本で、それに
が現状である。これら台頭する新興部品
できる。ところが最近では、自動車メー
む傾向となっている。
動車システム事業を手掛けるAutomotive
アという形で如何にブラックボックス化
制動距離を短くするためのABS(アンチ
メーカーと単品のコスト面での競争を始
カーの「経営の効率化」という観点から、
このような開発工数の拡大を抑える方
System 部門を設立し、その後は大型の
して組み込むことが出来るのか等を検討
ロック・ブレーキ・システム)といった
めると、日本の部品メーカーにとっては
部品メーカー側にメカトロニクス領域、
法として自動車メーカー間の提携が模索
M&Aを繰り返すことでメカトロニクス
する必要性が高まっていると考える。
川電機が最初に使い、1972年に同社が
自動車メーカーの経営効率化と部品
メーカーのメカトロニクス技術集積の機会
応じたエンジン開発が必要になることに
加え、ハイブリッド、電気自動車、燃料
電池車など様々な動力源の開発も求めら
を通して電子技術を手に入れ、メカトロ
欧州メガサプライヤーの事例
と日系部品メーカーへの示唆
ニクスを活用したビジネスに手を広げて
いる。
今後は日系部品メーカーも、再度、メ
電子部品が追加される程度であったが、
収益面で厳しくなるため、部品単品から
つまり、コアとなる制御領域までを任せ
されているが、自動車部品メーカーへの
技術を獲得していった* 。2011年の同社
その際に技術者に求められるスキルも
今や、車周辺にカメラやセンサーを取り
メカトロニクスを活用した部品の組合せ
る流れが出てきている。
開発委託も行われている。自動車メー
の非タイヤ部門の売上高は71%に至り、
変わってくる。必要なスキルは、従来の
付け、外部情報を分析した上でブレーキ
へと戦い方を変えていくことが日系部品
効率化の1つとして「地域展開の効率
カーの開発の効率化もまた、部品メー
売上高は2006年から2011年の5年間で、
ような単に単品部品の知識だけに留まら
をかけるという複雑な判断・制御を行う
メーカーにとっては重要である。
化」がある。現在は新興国市場の拡大に
カーにとっては事業拡大を実現する大き
その規模を2倍に拡大させている。現在、
ない。部品を組み合わせた際に、どのよ
システムが実現している。その先には、
メカトロニクスは、機械と電子部品の
よって、従来のような先進国に自動車市
な契機になる。
走行安全システムの需要が高まる中、同
うな機能を発揮させられるのか、どのよ
外部情報を分析しながらブレーキだけで
単純な足し算ではなく、その間にソフト
場が集中していた段階から、分散した自
なくステアリングやアクセルを制御する
ウェアという制御部分があり、まさにこ
動車市場が形成されるようになった。そ
自動走行の研究も始まっている。
れが重要な要素となる。その時々の状況
こでは、コスト競争力の観点から、本国
もう一例挙げると、車の電動化がある。 (入力信号)に合わせ、どのようなロジッ
からの完成車輸出ではなく、現地での生
車の価格に占めるエレクトロニクスの割
クで機械を制御するのか、これは言わば
産に切り替えられる。その際、自動車メー
合は、従来のガソリンエンジン車の15%
メーカーのノウハウそのものだ。このノ
カーとしては、あらゆる地域で開発・生
❿ྙ㒂ဗ䝥䞀䜯
に対し、ハイブリッド車は47%に達す
ウハウは目には見えないため、ブラック
産・サポートができる部品メーカーに一
るという報告もある(出所:2012年版
ボックス化し易い。機械部品単体やセン
括して任せたいというニーズが出てくる。
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ものづくり白書)
。ハイブリッド車は、モー
サー、カメラ、モーター部品単体を組み
一括して任せることで、コストダウンが
ターとガソリンエンジンという2つの動
合わせ、その上にソフトウェアという無
期待できるほか、地域毎に異なる部品メー
力源を持ち、電子制御によってスムーズ
形のノウハウを組み込むことで、他のサ
カーと付き合い、品質保証をしていかな
に連携させる必要がある。また、バッテ
プライヤーが真似し難くなる。
ければならないという煩雑な手間からも
リーを効率的に充電・放電をする制御な
自動車部品のモジュール化という言葉
解放されるからだ。自動車メーカーの地
02
1
うな制御が求められているのか、といっ
図表:なぜ今、部品メーカにメカトロニクスが求められるか
た構想力も重要となる。
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これら領域のまたがる技術・部品群と、
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新たなスキル獲得に向けては、従来の組
織の延長ではなく、組織の在り方の見直
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しやM&AやJV設立によるノウハウ獲得
も視野に入れ、次の10年に向けた取組
みが必要となるのではないだろうか。
*1 同社は、2001年にダイムラーの子会社でエレクトロ
ニクス部門のTemicを買収、2006年にはモトローラの車
載エレクトロニクス事業を買収、2007年にはシーメンス
の自動車電子部品部門VDOを買収と大型買収を繰り返し
ている
03
NRI K NOWLEDGE INSIGHT
2013 APR. VOL.29
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自動車の軽量化の進展と自動車産業の変化
藤田誠人
グローバル製造業コンサルティング部 副主任コンサルタント
②軽量化で先行する欧州勢
1
自動車の軽量化に伴う事業機会
日系OEMにおいても欧州勢との提携により、
但し、 欧 州OEMとの取 引では、日系
化技術を、中国やブラジルなど新興国にも
関係を構築するための拠点として、日本を「ド
欧州では、厳しい燃費規制をクリアする
欧州の進んだ軽量化技術を取り込もうとい
OEMとの取引に比べて商慣習が異なる場
展開している。日系サプライヤーが今後、拡
アオープナー」と位置づけている。日本で
という理由だけでなく、「走る・曲がる・止
う動きが活性化している(図表2)
。
合が多く見られる。例えば、製品開発のサ
大する新興国で軽量化の事業機会を獲得す
スペックインし、中東の安い原料を活用して
①軽量化の位置づけと重要性
まる」という自動車の基本性能の向上とい
イクルが早い、仕様が明確である、サプライ
るためにも、まずは欧州において先進OEM
アジアで日系OEMに入り込もうとしているケー
近年、ハイブリッド車や高効率エンジン
う点からも軽量化が注目されている。とくに
図表2:CFRP*4を巡る提携関係
ヤースイッチが頻繁に起こる、といった点で
に認められ、関係を構築することが重要に
スもあり、コスト競争という点でも今後、日
車の人気の高さが示す通り、燃費性能がク
車の重心から遠い部分を軽量化すると、運
ある。このような点をいかに克服していくか
なる。例えば、米系OEMのFordは、CFRP
系素材メーカーの大きな脅威となる可能性
ルマの差別化要因として、自動車メーカー(以
動性能・運転性能が向上すると言われて
が日系サプライヤーの課題となろう。
の開発を、本拠地の米国ではなく、欧州拠
がある。素材メーカーと同様、欧州系部品
下、OEM* )の競争力を大きく左右する時
おり、
「走り」に拘るドイツ系OEM(Daimler、
②「いい旦那」仕様のモノづくり思想から
点が主導しアーヘン工科大学等との共同研
メーカーも欧州で培った軽量化実績を武器
代になった。燃費向上がOEMにとって最も
BMW、Volkswagen)を筆頭に、軽量化
究において実施している(図表3)
。欧州で
に日系OEMに対する攻勢を強めており、
大きな課題の1つとなる中で、そのための
技術の採用に積極的である。
日系サプライヤーはこれまで日系OEMか
開発した技術を数年後に米国市場で投入す
既に個別に交渉が行われている。
有力手段として、ハイブリッド車や電気自動
例えばDaimlerでは、各モデルについてホワ
らのオーダーに対して地道に対応していくこ
べく、軽量化に関する先端的な技術開発を
③欧州系サプライヤーとの連携も選択肢の
車などパワートレインの「電動化」
と並んで「軽
イトボディ(車の骨格構造)を先代より最大
とで成長を遂げてきた歴史がある。そのため、
欧州で先行しようとする戦略と見られる。
量化」に注目が集まっている。
10%軽量化するという軽量化目標を掲げている。
欧米サプライヤーと比較してマーケティング
欧州では「世界初」の軽量化技術がこ
日系サプライヤーには「まずは自前開発
一般的に、新車設計で100kgの軽量化
また、Volkswagenを筆 頭 に 各OEMが
材料開発のみ、または加工技術の開発
の必要性が少なかった。
れまで多く搭載されてきた。欧州危機の影
でやれるところを見極める」という考え方・
に成功したとすると、モデルにもよるが、
推進しているモジュール戦略* においても、
のみで劇的なブレークスルーを起こすことは
また、日系OEMとの擦り合わせに根気よ
響を受けて自動車販売市場は停滞している
風土があるが、軽量化に向けた技術開発
CO2排出量に換算して7.5~12.5g/kmの削
モジュールをできるだけ多くの車種で共有す
難しく、今後は材料技術と加工技術をセット
く応えてきた結果として、サプライヤーの型
ものの、軽量化の技術革新に関しては、今
のスピードが速いことを勘案すると、残され
減につながると言われており* 、これは数%
るため、設計段階から「軽量化」
「強度化」
で進めることが求められることから、OEM同
番数はその管理がままならないほど膨れ上がっ
後もDaimler、BMW、Audiなどプレミアム
た時間はそれほどあるわけではなく、自前
の燃費向上に相当する。2020年に向かっ
には徹底的に拘る傾向がある。モジュール
士の提携だけでなく、素材メーカーや部品メー
ている。例えば、欧州ではサプライヤーによ
OEMを筆頭に、欧州企業が先導するとみ
主義の限界を認識すべきである。
ては、燃費規制が、先進国だけでなくグロー
化の進展とともに、鉄からアルミ・樹脂へ
カーとの連携もさらに加速すると見られる。
る標準化が進んでいるためPPグレード* は
られる。軽量化関連テーマの事業拡大を狙
そのため、場合によっては、日系OEM
バルワイドで強化されようとしている。多くの
の代替を含め、根本的な構造見直しが行
うサプライヤーにとって、欧州における開発
を攻略したいと考えている欧州系サプライヤー
OEMは、その規制値をクリアするのに必要
われつつある。
上のPPグレードが存在し、管理負担が大き
活動(OEMとの関係構築)
は、技術面で実
とのパートナリングを梃子に、欧州OEMへ
な燃費向上分のうち、1/3~1/2を軽量化
また、欧州で普及しているホットプレス技
2
5つしか存在しないが、日本では10種類以
くなっている。
績を作るだけでなく、ひいては新興国に展
の足がかりを得るという発想も必要になるだ
によって達成しようと考えており、数百kg単
術が国内でも広がる兆しが見えてきたほか、
①日系OEM依存からの脱却
まとまった量が約束される日系OEMに対
開する上でも重要な役割を果たすと言える。
ろう。実際のところ、欧州系サプライヤーの
位での軽量化が求められている。
樹脂の活用の動きも加速している。
これまで、素材メーカーや部品メーカーな
しては、このビジネスモデルは成立してきたが、
とくに、欧州では2020年までに達成しな
③軽量化で求められる「協調と競争」
ど日系サプライヤーの顧客は日系OEMが中
この延長線上で海外で戦っていくには無理
ければならない燃費規制が厳しいため(図
これまで見てきたように、軽量化はOEM
心であった。しかし近年は、日系OEMは
があることは明白である。これに対しては、
表1)
、軽量化に対して積極的な取組みが
が本腰を入れて取り組むべき重要なテーマ
高い技術力を持つ海外グローバルサプライ
ある種、大胆に製品を「プラットフォーム化」
行われている。
であるが、一口に軽量化と言っても、材料
ヤーの活用を真剣に検討し始めている。ま
し、自社で数社のグレードをシリーズ品とし
(高張力鋼板・ホットプレス材・アルミ・樹
た、国内の自動車生産台数は減少の一途
て予め用意し、その標準化された自社製品
脂等)や適用部位(外板・ 内装・ 構造
を辿ることが予想され、日系サプライヤーが
により顧客側のインターフェースを変える提案
部材等)や工法で、多くの軽量化テーマが
得意としてきた日系OEM向けの国内事業も
をすべきではないか。
存在する。これらの全てをOEMが単独で
今後は縮小する可能性が高い。
また、新たな顧客を開拓するにあたっては、
開発することはリソースの観点から現実的で
こうした厳しい状況の中、日系サプライヤー
マーケティングコストを積極的にかけ、顧客を知
②日本に攻め込む欧米系サプライヤー
ないため、外部企業との連携・協調が必
においては、今後、海外OEMを顧客とす
り、需要を創造することが重要であると考える。
一方、日系サプライヤーの競合である欧
要不可欠になっている。
る事業を拡大させることが喫緊の課題と言
欧州OEMの軽量化を巡る開発状況を振
える。技術的な観点からも、軽量化で先行
り返っても、大学との連携やOEM間の共
する欧州OEMに外販することで、サプライヤー
3
同開発を積極的に活用している。さらに、
自身が日系OEMに依存せず自力で技術力
①「ドアオープナー」としての欧州
している。Dupont、Dow、Basfなどの 欧
トヨタとBMWの提携に代表されるように、
を向上させることが可能となる。
欧州OEMは、欧州本国で開発した軽量
米素材メーカーは、日系OEMとの密接な
1
2
図表1:日米欧中での燃費規制
30
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25
20
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5
0
2011ᖳ
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2020ᖳ
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出所:公開情報を基にNRI作成(一部NRI推計)
04
3
OEM
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BMW
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GM
Ford
SGL Group
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8.18%ฝ㈠䚮භྜྷ㛜Ⓠ
Volkswagen
Daimler
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51%
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භྜྷ㛜Ⓠ
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Dow Automotive
Systems
出所:公開情報を基にNRI作成
日系サプライヤーが事業機会を
獲得するためのハードル・課題
の脱却とマーケティング力強化
5
軽量化事業の鍵は欧州を
軸とした協調と競争
図表3:Fordが参加する“Hightech.NRW research
project”のパートナー企業
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Evonik
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Composite Impulse
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⅛⣪⦼⥌
出所:アーヘン工科大学資料等よりNRI作成
米サプライヤーの動向を見てみると、日系
OEMに対して「日本でスペックインして海外
での製品供給を狙う」という方針を打ち出
1つに
中には、資本提携を含め、日系サプライヤー
との協業に前向きな企業も多い。
今後拡大する軽量化の事業機会を獲得
するためにも、自前開発のみに縛られるの
ではなく、必要に応じて、柔軟に外部との
協調を探ることが必要である。
*1 OEM:Original Equipment Manufacturer(自動車製
造者)の略。部品メーカーと区別する意味において最終製品
製造会社と位置付けられている。
*2 Mercedes-Benz の発表資料より。
*3 モジュール戦略:効率よく多数の車種を投入するため、
車両セグメントを跨いでモジュールを共有し、その組合せで車
両開発を行う戦略。
*4 CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics。 強 化 材
に炭素繊維を用いた繊維強化プラスチック。金属材料に比べ
比強度・比剛性が高く、成型性に優れることから、次世代の
軽量化材料として注目を集めている。
*5 PPグレード:自動車に使用されるプラスチック材料の半
分以上を占めるポリプロピレン(PP)のグレード。
05
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開発機能現地化の要諦
岡崎啓一
グローバル製造業コンサルティング部 グループマネージャー
造業各社が目指しているステージは、グ
体的な議論ができないと、成果が得られ
成する(ステージアップさせる)には、
(商品企画、売価決定)
、②開発遅延・市
形で成功した背景には、『意思決定にお
ローバル化が進んでいる企業でもステー
ないどころか、現場で混乱が生じたり、
少なく見積もっても3年程度はかかるこ
場投入遅延の撲滅、③製品の市場ニーズ
ける絶対君主制』と『徹底した成果主義』
ジ2(地域完結型)であり、現地化の究
いつまで経っても日本からの支援がない
とを覚悟しなければならない。
適 合 の3つ の 戦 略 を 上 記 の 優 先 順 位 に
という企業風土が、上記の形態での現地
製造業において、
「現地化」
「グローバ
極形であるステージ3(ネットワーク型)
と運営できないといった依存心の蔓延を
沿って位置付けているが、これらがここ
化と相性が良かったためであり、自社の
ル化」というテーマは、多くの企業で方
までを志向・実現しているケースは稀有
引き起こしたりすることになる。
②業務を横睨みで機能分担の議論
で言う目的関数となる。また、同社では
風土を十分に理解した上での展開だと解
針・課題として打ち出されている。しか
である。
業務ベースで検討するためには具体的
現地化を検討する際に、結論を急ぐあ
業務の問題点として、①人材・スキルの
釈できる。
し、実際に、それら企業に話を聞くと、
以降、ステージ展開にあたって要諦と、
に何を意識すべきか、その要諦として次
まり、機能分担の議論を組織論先行で進
問題(キーマンの数/偏在)、②業務プ
うまく検討が進んでいると回答する企業
成功企業が取り組んだ具体的な取組みに
の5点を整理した。
めてしまったことを、複数の企業が問題
ロセスの問題(非効率、重複、地域性)
、
は少ない。本稿では、成功・失敗を問わ
ついて、言及する。
点として指摘している。マザー開発拠点
③意思決定構造の問題(ハンコの数)の
の組織をもとに議論する場合は、確かに
3点を指摘しており、これらがすなわち
3
共通認識が得られやすく、意思決定まで
制約条件となる。
真の現地化を実現するための一つの方
1
開発機能配置の
ステージ定義
①業務が定着するまでに必要な期間(3~
ず種々の先行事例から得られる現地化の
要諦と対応策の一部について整理してみ
となると、論点が多岐に亘るため、今回
2
は、近年、最も話題となる「開発機能」
5年)への覚悟
開発機能の現地化の要諦
課題解決策
~プラットフォームの構築~
当たり前だが、いずれの企業も、初期
の時間は短縮化されるように見える。し
段階の開発スタイルは、中央集権型のス
かし、物理的に「組織の箱」を作って、
④業務に紐付いたキーパーソンの配置
考える。ここで言うプラットフォームと
現地化の推進にあたって、失敗企業が
テージ0が起源となる。中央集権型のス
業務を現地化しようとしても、結果的に
現地化のステージ2や3の段階であっ
は、上記の5つの要諦を織り込み、あら
に焦点を絞っている。
陥っている罠に共通点が見られる。それ
タイルで長らく業務を進めていると、業
は現場での調整に時間を要するだけで、
ても、ローカル人材に現場業務の遂行・
ゆる側面(製品、体制・フォーメーショ
まず、開発機能配置は、現地化の進展
は、業務ベースでの議論がなされていな
務遂行のクセ、風土ができ上がり、組織
検討開始から安定稼動までをトータルで
マネジメントを完全に委ね、日本人出向
ン、業務プロセス、人材、IT等)につ
度合いに応じて、4段階にステージ分類
いことおよび、成果が出るまでの時間を
の中で暗黙知が成立する。全社的にも、
見ると、余分に時間がかかることになる。
者の役割をゼロにするという状況は未だ
いて、共通化・可視化した仕組みである。
できる(図表1)
。ステージは、ローカ
辛抱できないことである。
この暗黙知をベースに業務が進むことに
組織ありきではなく、各現場の業務内容
成立しづらい。特に、ステージが上がる
特に、進出地域が拡大し、多岐にわた
ル拠点が担う機能・業務、マザー開発拠
現地化は、ローカル人材を登用する、
なるため、現地拠点において、ローカル
をもとに、少なくとも機能レベルで一つ
タイミングにおいて、「出向者の役割≒
る 場 合、 複 数 拠 点 で 共 通 言 語・ 共 通
点との業務連携の形で分類される。
それもステージが進展するほどローカル
人材を活用しようとした途端にマザー開
一つをどこに配置するのかを議論する必
業務」が変わることが多く、この組織・
フォーマットに沿って業務を進めること
ステージ0(一極配置型)以外の3つ
人材への依存度が高くなるという背景か
発拠点に蓄積されたナレッジの移管が必
要がある。
業務改革を企画・実行できるような「キー
が肝要になる。日系製造業では、往々に
のステージでは、ステージが進むにつれ、
ら、期待される成果をローカル拠点が創
要となり、そのために時間が取られてし
パーソン」を配置できるかどうかが現地
して、組織設計の考え方、業務プロセス、
ローカル拠点に求められる機能・業務や
出するまでには時間とコストがかかる。
まう。業務の進め方、風土までを含めて
③目的関数と制約条件の整理
化を深化させる鍵となる。どんな綺麗な
人材マネジメントのあり方などに関して
人材は高度なものとなる。現状、日系製
これを前提とした上で、業務ベースで具
移管し、それをもとにローカル拠点を育
現地化の検討には長い時間を要するこ
業務フローを書いたとしても、キーパー
は、拠点進出時のトップの意向が反映さ
とが多く、ラインから本社を説得するこ
ソンが配置できなければ、ステージ進展
れるため、結果的に、拠点ごとに独自ス
とも必要になる。検討の過程で、議論が
時にスタックするケースが多い。
タイルを形成していることが多い。どの
た。ただし、製造業の経営から機能全般
図表1:開発機能配置の展開ステージ
ステージ0
本国集中フェーズ
<一極配置型>
概要
●
●
開発機能配置
マザー
ローカル
主要課題
●
●
ローカルに開発リソースを配
置
ローカルの業務は、マザー拠
点の支援を受けつつ新製品開
発、既存製品モデルチェンジ
/ローカライズ
ステージ2
地域開発フェーズ
<地域完結型>
●
●
ローカル拠点がマザー拠点と
ほぼ同じ機能・業務を担う
当該地域/カテゴリ向けの新
製品開発を上流から下流まで
行う
ステージ3
グローバル分業フェーズ
<ネットワーク型>
●
●
マザー拠点の開発組織と並列
の位置付けで、ローカルが独
自ミッションを担う
グローバル向け製品の開発を
行う
商品企画から詳細設計・量産開発まで
配置しない
(もしくはデザイン機能のみ)
●
●
06
マザー開発拠点に開発リソー
スを集中
マザー開発拠点からグローバ
ル製品の一括供給源
ステージ1
地域支援フェーズ
<分散配置型>
ローカルモデルのマーケティ
ング・商品企画
外部リソース活用
詳細設計・量産開発
詳細設計・量産開発
(マザー拠点からの支援が前提) (製品カテゴリによる分担)
外部リソース活用
● ローカルでの開発体制立上げ
●
●
標準化/グローバルプラット
フォーム開発(製品、業務等)
商品企画から詳細設計・量産開
発まで
(製品別に分担)
●
●
開発拠点間の全体最適/開発
効率の最大化
グローバル開発管理
策が『プラットフォーム構築』であると
横道に逸れそうになることも少なくなく、
元に戻すために拠り所となる基準を設け
ることが必要となる。
範囲で、どの解像度で共通化を行うかは
⑤企業文化・風土を念頭に置いた現地化
の展開
企業特性に依存するが、何らかの形での
「共通化=プラットフォーム化」が課題
ここで言う目的関数とは、現地化を推
意思決定や業務を遂行する際のクセは
解決には必要であろう。
進するにあたって、何を目指すべきか、
企業ごとに異なる。それを一切無視した
プラットフォームの具体的なイメージ
目指すべき事項が複数あるなら、その優
設計は最終的に損失をもたらす可能性が
を思い描いてもらうために、ここでいく
先順位をどうするかを規定することであ
高い。
つか事例を紹介する。
り、すなわち戦略そのものである。
現地化に関しては、韓国のSAMSUNG
また、制約条件とは、目的関数を達成
がベストプラクティスとして、業界を越
①体制・フォーメーション
しようとした際に、現状の業務が包含す
えてベンチマークされることが多い。同
責任を担うものが意思決定やマネジメ
る問題点である。
社の現地化は、「中央集権の形を残しな
ントを行い、担当者は委ねられた守備範
電機業界の開発機能の現地化を例にと
がらの分散配置」という一見中途半端な
囲において自らの業務を確実に遂行する
れば、ある企業では①意思決定スピード
形態となっている。しかし、同社がこの
という、当たり前の“Job description”が
07
NRI K NOWLEDGE INSIGHT
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肝要である。その際に実際に起こりうる
体のうち、95%を受け、そのうち70%
業務手順書の作成にあたっては作成者
問題としては、組織的な上位者が下位者
を孫会社a’社に再委託している(図表2)。
が実際の作業者でないと、視点・作業内
の業務フォローに回り、本来業務が滞る
容の抜け漏れが発生するリスクがあるた
ケースがある。そもそも日系企業では厳
②業務プロセス
め、作業者には、日常業務を遂行する上
密にJob denigrationを規定する文化・風
前述の体制・フォーメーションとも関
で、このテンポラリーな業務が必須課題
土が希薄であり、暗黙知・経験知で動く
係するが、分業体制を徹底するためには、
となる。それに対するインセンティブと
傾向が強い。これでは、現場にリソース
インターフェースとなる共通言語・ルー
して、A社では、業績評価項目に「手順
がいくらあっても足りないし、人材育成
ルが必要となる。具体的には、各階層の
書作成・更新」を加えるなどの工夫がな
も進まない。
人材がグローバル大で共有し、かつJob
されている。
こうした問題に対する一つの解決策は、
descriptionに沿った業務を行うためのテ
業務手順書を実際に作成すると、作業
分業体制を敷き、業務区分を徹底するこ
ンプレートである。
者の業務に対する理解やものの見方が深
とで、上位者が的確に難易度の高い業務
前述のA社では、子会社・孫会社との
まるため、業務遂行の効率性があがった
に携わることのできる状態を作り上げる
業務連携のために、単位業務ごとに、
「業
り、新規業務に取り組む際の立ち上がり
ことである。例えば、日系自動車メーカ
務手順書」を作成し、データベースによっ
が早まったりといった人材育成面での副
A社では、詳細設計工程における単純定
てグローバル大で共有している。業務手
次的効果も期待できる。
型業務を上位者から切り離すために、国
順書には、①業務名、②業務目的、③作
内の子会社a社および更にASEANに専
成者、④業務フロー、⑤各業務段階にお
③人材マネジメント
門の海外孫会社a’社を設立し、完全分業
けるインプット・アウトプット情報、評
ローカル人材の能力評価ができていな
制度を敷いている。子会社a社では親会
価設備、規制・法規ガイドラインなどの
いと、どこまでの機能・業務を現地に移
社A社のCADデータ作成・解析業務全
詳細情報が記載されている。
管できるのかが判断できないだけでなく、
図表2:事例 日系自動車メーカA社の開発分業体制
4
図表3:事例 日系電機メーカにおけるローカル開発要員のリソース評価表
技術者総数
備考
■
ソフト
ハード(基盤)
機構
電気
8名
5名
5名
8名
うち、3名はハード開発能力も
有する
■
うち、3名はソフト開発能力も
有する
(要件) ■ 複数プログラムを取りまとめ、 ■ PJTを取りまとめることができる ■(2-1)金型の立会い検証がで ■(2-1)システム配線図が描ける
<Level 2>
■(2-2)
システムが組める
きる
機構・ソフトとのつなぎ
システム構築能力
■ 外注ソフト開発会社のQCD管
■(2-2)
込みができる
金型メーカーの指導が
・複数タスクを取りま
理ができる
できる
とめ、マネジメント
できる
(人数)
2名
1名
2-2:3名
2-1:2名、2-2:2名
・他の専門領域とのつ
なぎができる
I氏
N氏、O氏、P氏
(2-1)S氏、T氏
・社内外調整ができる (氏名) A氏、B氏
(2-2)U氏、V氏
(要件) ■ コーディングができる
<Level 1>
(C 言語/Assembla)
基礎タスク能力
・当該分野の専門知識
を有する
(人数)
6名
・図面描写、プログラ
ム設計ができる
(氏名) C氏、D氏、E氏、F氏、G氏、H氏
・ツールが使える
■
基盤設計ができる
(1-1)2D-機構図面が描ける
(1-2)3D-CADが使える
■
■
■
4名
J氏、K氏、L氏、M氏
(1-1)個別配線図が描ける
(1-2)設計・検証できる(シン
クロが使える)
■
1-2:2名
Q氏、R氏
1-1:2名、1-2:2名
(1-1)W氏、X氏
(1-2)Y氏、Z氏
いつまで経っても日本人出向者が業務マ
できるはずである。
に、あるメーカの欧州開発拠点を訪問し
ネジメントを行うことになるといった状
フォーマットとしては、例えば図表3
たが、その際にお話しを伺った開発担当
況からも抜け出せない。
のようなものでも良い。これは、日系電
者は、5年前に実施したASEAN拠点で
「経営の現地化」を推進するにあたっ
機メーカで実際に使われているものであ
のインタビューに応じていただいた方と
て「経営人材データベースの構築」を課
るが、この程度のフォーマットならば、
同一人物であった。話を伺うと、更にそ
題として掲げるメーカの方々と議論した
準備にも、実際の作成にも時間がかから
の前は、米州での開発拠点立上げに携
際にも、開発現場においても同様に、現
ないはずである。
わったとのことであった。
地スタッフの能力を可視化することが必
この場合は、開発拠点の立上げであっ
要であるとの指摘を受けた。
たが、海外に関する知見は、特定の経験
ている企業においては、どうしても開発
4
現場でのスタッフ能力の可視化に取り組
プラットフォームについて、いくつか
な域から出られない暗黙知の世界から、
む優先度は低くなりがちである。しかし、
の事例をもとに考え方を整理したが、各
“可能な範囲”での形式知の世界へ転換す
簡易で構わないので、マザー開発拠点で
企業の置かれている状況に応じて、必要
ることを基本方針として必要となりそう
そのことを把握しておくことが、グロー
となるプラットフォームのレベル感は異
だ。繰り返しになるが、
『プラットフォー
バルでの開発効率を向上させることに繋
なる。自社の状況に応じて、部分的にで
ム構築』は、その方針に則った一方策と
がる。実際、ローカル拠点の日本人スタッ
も参考にしてもらいたい。
して有効であると考える。
フは現地スタッフの能力を独自に把握し
各社の状況と言えば、一昨年こんな事
ており、簡単なフォーマットさえ準備す
象に出くわす機会があった。開発機能の
れば、人材データベースのようなものは
現地化についてインタビューを行うため
既に現地進出して10年超の年月が経っ
08
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最後に
者の暗黙知として形成されている企業が
意外に多い。これを踏まえると、属人的
09
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韓国自動車部品メーカーの
事業変革の展望
キムキョンファン(金キョン煥)NRIソウル マネージャー
ユンミョンス
(尹明洙)NRIソウル コンサルタント
1
韓国自動車部品メーカーの
飛躍的な成長
金キョン煥
の経営環境は一変した。世界経済に対す
4
尹明洙
韓国部品メーカの
戦略方向性の展望
今後の主要戦略
主な内容
格参入した。同社は、ESC(Electronic
車OEM*1 間の競争が激化したことに加
3
1998年 にHyundai自 動 車 がKIA自 動
え、各国の環境規制及びエコ製品に対す
現時点で、韓国部品メーカー各社が展
車を合併し「Hyundai・KIA」が誕生し
る補助金強化策が矢継ぎ早に実施され
開しようとしている戦略は、グローバル
たが、その後、Hyundai・KIAの飛躍的
た。そのなかで自動車OEMは、今後高い
OEMメーカーへの顧客の多様化、エコ製
な成長とともに、韓国自動車部品メー
成長性及び収益性が期待されるハイブ
品のポートフォリオ拡張、新成長エンジ
カ ー も 業 績 を 大 き く 伸 ば し て い る。
リッド/電気自動車を新規事業アイテムと
ンとして自動車電装製品の育成の3つに
Hyundai Mobisは、Hyundai・KIAの専
して育成させようとする動きを見せた。
集約できる。
属サプライヤーとして売上高を伸ばして
また、自動車産業の競争が激しくなるに
①グローバルOEMメーカへの顧客の多
きたが、最近は供給先を広げることによ
つれ、製品の差別化及び収益性確保のた
り、売上高のさらなる増加を図ってい
めに、IT/機械/電子技術の融合によるス
Hyundai Mobisは、先進市場に加えて
張し、販売先の多角化を図っている。
非メモリー半導体を全て含む部品総合
三星電子もまた、新成長エンジンとな
る。Mandoもまた、Hyundai・KIA向け
マートカーを次世代自動車として育成さ
新興市場を営業エリアとするTwo-Track
Mandoは、既存の9箇所の海外工場(中
セットを提供していくという戦略を明示
る事業の一つとして自動車電装に注目し
の供給を増やすことで、今では、Hyundai
せるための研究開発にも注力した。
戦略を標榜している。Hyundai Mobisは、
国4箇所、インド2箇所、アメリカ、マ
している。同社の副会長であるリー・ジェ
ており、車両用システム半導体及び各種
Mobisに次いで国内第2位の部品メー
このような自動車OEMの変化に対応す
今まではヨーロッパと日本の完成車メー
レーシア、トルコの各1箇所)を展開し
ヨン氏は、グローバル自動車OEMの代表
センサー、カーインフォテイメントシス
カーとなった。
るため、自動車部品メーカーにも戦略の
カーを対象に、海外先進市場への輸出を
ており、現在は南米や東欧での拠点展開
と積極的に会談し、協力方策に関する具
テム、車両用ソフトウェア、LEDヘッド
Hyundai・KIAは、製造の効率性及び品
修正が必要になった。本稿では、自動車
集中してきたが、新興市場の成長の勢い
に注力している。南米ではブラジルに、
体的な検討が進んでいる。
ランプを主な事業アイテムとして、系列
質向上のために、部品のモジュール化を
部品メーカーを下記の2軸で分類し、そ
が加速するに伴い、現地市場のニーズを
カヤバ工業(日本)と50:50の割合のJV
③新成長エンジンとしての自動車電装製
会社である三星電機、第一毛織、三星トー
徹底して推進していることが特徴である
の後、各セグメントで売上げが最も大き
反映した戦略製品をもってインドなどの
を展開中であり、最近では自社工場も別
が、Hyundai MobisとMandoは、この方
いHyundai Mobis,Mando,三星電子を
新興市場へと販売先を多様化させている。
途建設したところである。東欧ではポー
Hyundai Mobisは、 未 来 知 能 型 及 び
針を踏まえ、機械部品のモジュールを柱
代表的な企業として選定し、韓国自動車
そうすることで、同社は、Hyundai・KIA
ランドに工場を建設して2013年から生産
カーインフォテイメントシステムのため
の電装部品を次世代成長エンジンとして
る不確実性が拡散したことをうけ、自動
●
グローバルOEMメーカー
への顧客の多様化
●
エコ製品の
ポートポリオ拡張
●
新成長エンジンとしての
自動車電装製品の育成
Hyundai・KIA寄りの売上構造から脱皮し、グローバル自動車OEMへと顧客を拡張
–(Hyundai Mobis)先進市場のみならず、新興市場まで顧客の範囲を拡張するTwo-Track 戦略
–(Mando)直接進出、もしくは JVによる生産拠点の拡大を基盤として、多変化した海外メーカー
を対応
エコカー部品に対する製品ポートポリオの拡張
–(Hyundai Mobis)LG化学との合弁会社である HL Green-powerを通してリチウム・イオンバッ
テリー事業へ参入
–(三星電子)電力、非メモリー半導体を全て含むハイブリッド車・プラグイン・電気自動車用部
品総合セットの供給計画
機械と電子技術を融合した自動車電装製品を新しい成長エンジンとして育成
– (Hyundai Mobis) グループ内の電装部品生産メーカーであるHyundai Auto-netを吸収合併
し、未来知能型自動車及びカーインフォテイメントシステムに使用される部品に対する研究
開発を進行
– (Mando) Hellaとの合弁会社である Mando Hella Electronicsを通して電装部品強化及び知
能型安全性部品での技術力を強化
– (三星電子) 新成長動力事業の一つとして、自動車電装事業を発表
変化
Stability Control)を世界で4番目に、
ASCC(Advanced Smart Cruise Control)
を世界で3番目に量産に成功してきたよ
うに、知能型安全性部品での技術力を蓄
積してきたが、合弁会社設立を機に、2010
年からはECU(Electronic Control Unit)
やセンサーモジュールの生産を開始し、
Mandoは、今後、これをベースにスマー
トカーの部品事業をリードしていく予定
である。
品の育成
タルと共に、グループ単位で自動車電装
部品の事業を強化しようとしている。
の売上依存度を2010年90%から2015年
を開始する予定である。Mandoは、この
進めてきた。例えばHyundai Mobisは、
70%に下げる計画である。
ように海外生産拠点を積極的に拡張し、
選定した。このため、2009年7月にグ
2000年 に コ ン テ ナ ー 事 業 を 終 了 さ せ、
Mandoは、積極的に海外生産拠点を拡
取引先を多角化することにより、2011年
ループ内の電装部品生産メーカーである
4
には57%に達していたHyundai・KIA売上
Hyundai Autonetを吸収合併し、電装部
韓国では、自動車産業の戦略転換に伴
依存度を2015年には40%まで下げる方針
品及びシステム半導体の開発を推進して
い、自動車部品産業もまた、既存のバ
である。
いる。同社は、その後、2012年に、電装
リューチェーンの改革に加え、新興国を中
②エコ関連のポートフォリオの拡張
制御装置とその核心部品であるシステム
心にグローバル事業の拡大が余儀なくされ
Hyundai Mobisは、LG化学との間で合
半導体などのソフトウェアの研究開発部
ている。韓国の主要部品メーカーは、今見
弁会社HL green-powerを立ち上げ、リチ
門をHyundai Autoloanに手放したが、ス
てきたように、今後5年間で世界の先頭グ
とする事業ポートポリオの構築を急速に
2001年には重機/プラント事業をHyundai
Rotemへ売却した。このように非部品事
業を整理するなかで、総合自動車部品専
部品メーカーの動向を予測したい。
図表1
70.5
༟న ඗࢚ࢗࣤ
60.0
門企業としてモジュール生産及び核心部
品事業を主とする事業ポートフォリオを
構築している。Mandoも、自社の強みを
最大限に活かして、国内市場で優位性を
有するブレーキ、ステアリング、サスペ
ンションのモジュール生産をメインとす
る事業ポートフォリオを強化した。
2
自動車産業トレンドの変化
2008年金融危機以降、韓国自動車産業
10
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Ltd. All rights reserved. No reproduction or
republication without written permission.
29.0
2.0
'00
34.9
3.0
36.7
4.1
37.8
5.3
42.7
43.4
6.4
7.5
'01
'02
'03
'04
'05
44.8
46.6
48.6
9.4
8.2
8.5
'06
'07
'08
Hyundai・KIA
50.3
10.6
13.7
15.9
Hyundai
Mobis
Mando
ウム・イオンバッテリー部門へ進出して
マート駐車システム、ヘッドアップディ
ループへ飛躍すべく、事業戦略の大いなる
いる。新規の売上源を確保することが狙
スプレイ(HUD)などの便宜装置、車線
変革を進めている。日本の部品メーカー及
'09
'10
'11
いであり、HL green-powerで製作した
離脱防止システムなどの安全装置等は残
び完成車OEMにおいては、こうした変革
バ ッ テ リ ー パ ッ ク をMobisが 開 発 し た
留させ、引き続き核心部品として開発及
の動向に注目すべきではないか。
バッテリー関連システムに組み込み、自
び生産を行う予定である。
動車OEMに供給している。
Mandoは、電装システムの核心部品の
三星電子は、先導的な電子技術を基盤
内製化を行うため、2008年11月にドイツ
に、ハイブリットカー、プラグインハイ
のHellaとの合弁会社であるMando Hella
ブリッドカー、電気自動車向けに、電力・
Electronicsを設立し、電装部品事業に本
図表2
Captive
Non-Captive
⮤ິ㌬㒂ဗᑍ⏕
⮤ິ㌬㒂ဗ௧አࡡ஥ᴏ࡛඾⏕
Hyundai Mobis, Hyundai Power tech,
Hyundai Dymos, Kefiko, Hyundai Wisco ࡝࡜
Hyundai Hysco, Hyundai Wia, Samwoo ࡝࡜
Mando, Halla ✭ㄢ, Kyungsin ᕝᴏ,
Sungwoo Hitech, Duckyang ⏐ᴏ ࡝࡜
最後に
୔᫅㞹Ꮔ, ୔᫅SDI, LG㞹Ꮔ, SK Innovation,
᮶Ὂჹ㞹, S&T㔔ᕝᴏ ࡝࡜
*1 OEM:Original Equipment Manufacturer(自動車製
造者)の略。部品メーカと区別する意味において最終製品
製造会社と位置付けられている
11
NRI K NOWLEDGE INSIGHT
2013 APR. VOL.29
顧客のトータルカーライフ視点による
統合マーケティングの中国での展開可能性
趙 ケイ
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4
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このように、中国の自動車市場は、北
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能性と投入産出比率(収益性)に基づき、
調整することで、全般的な従業員の質に
京などの大都市では成熟化しつつあり、
日本モデルのコア・コンセプトは、収
管理、その他の関連する販売後のサービ
下図のような5つのタイプに分類される
求められる条件を低減させる方策があげ
中国における自動車の保有は今や全土
既に、新車販売の大幅な減退や成長の減
益性の高いビジネスを得るためにあらゆ
スの責任を負う。
に広がっている。2011年における人口
速に直面している。現在は発展途上また
る努力を不断に提供するということであ
さらに、日本のディーラーでは、顧客リ
その中で、最も注力すべきビジネスエ
各ビジネスプロセスにおけるKPIが設
1000人あたりの自動車保有台数の全国平
は未発展である他の都市もまた、遅かれ
り、その努力は以下の2つの重要なタス
テンション* を向上させ、サービスの社内
リアは、高い管理可能性と高い投入産出
定され、詳細な業務基準が策定されるこ
均は69台であったが、北京、杭州、深川
早かれ、成熟への道を歩むことが予測さ
クに向けられる。すなわち、来店客数を
管理を徹底させるために、サービス工程管
比率を持つ「タイプⅠ」である。中国で
とにより、人事管理が強化されることに
といった大都市ではすでに150台を超え
れる。
増やすことと、顧客満足度を高めること
理表や顧客アポイントメント管理表をはじ
は、ディーラーが予測可能なビジネスに
なる。同時に、サービス工程管理表やア
ている。例えば北京では、2011年に自動
自動車市場の成熟化は、中国のディー
である。
めとする管理ツールが利用されている。こ
分類される事業として、主要メンテナン
ポイントメント管理表、防御率(ディフェ
車登録台数は約500万台あり、人口1000
ラービジネスの事業構造の変革を促進す
ディーラービジネスは、制御可能性の
のことも、日本のディーラービジネスの優
スと自動車保険業務があげられる。これ
ンスレート)促進管理表といった管理
人あたりの自動車保有台数は全国平均の
る契機になると筆者は考えている。具体
視点に基づき、3つのタイプに分類され
位点といえる。特に、一部の高い利幅を持
らは事故車の修理、中古車の廃車、新車
ツールを導入し、共通のルールのもとで
3倍となる233台であった。
的には、新車販売のウェイトが下がり、
る。①予測可能なビジネス(日本では車
つビジネスや予測可能なビジネスを管理す
の販売といった関連する高収益ビジネス
運用を徹底させることで、一連のプロセ
全国の新車販売台数は安定成長をして
アフターサービス、中古車販売、その他
検が典型例)、②予測不可能であるが事前
るために用いられる「防御率(ディフェン
を促進できる可能性がある。この「タイ
スを、視覚的に管理することが可能にな
いるにもかかわらず、これらの大都市に
の派生ビジネスが利益に貢献するように
に推測できるビジネス、③予測不可能な
スレート)表」は注目に値する。
プⅠ」の位置づけに基づき、ディーラー
り、最終的には高い業務効率を実現する
おいては成長の鈍化が見られる。自動車
なるだろう。既に米国や日本のような先
ビジネス、である。日本のディーラービ
ことになる。
所有の拡大に起因する交通渋滞と環境汚
進国では、新車販売の利益総額に占める
ジネスでは、上記の①と②に様々な工夫
標値(KPI)が定められ、相関するビジ
このように、ディーラービジネスのポー
染に対処するため、いくつかの都市では
割合は1/3以下でしかなく、中国の全国平
と努力を組み込むことにより、③を極小
4
はそれぞれ異なるビジネスプロセスの目
ネスの組合せが構築される。
トフォリオを見直し、日本流のビジネス
自動車保有の規制対策を開始しているこ
均60%を大きく下回っている。
化させようとしていることが大きな特徴
以上、日本のディーラービジネスの統合
このように新たなビジネスプロセスが
モデルを導入することにより、中国ディー
とが主たる原因である。上海における自
ディーラービジネスの今後の成長を勘
になっている。例えば、低価格や無料の
マーケティングの特徴は、以下の3つに要
組み合せられ、設計されたら、その仕事
ラービジネスは、自動車市場が成熟しつ
動車ナンバープレートの競売、北京にお
案すれば、特に大都市のディーラーは、
サービスを提供することで顧客を店舗へ
約することができる。
量の増加に対処することが必要になる。
つある中においても、まだ成長できる余
ける自動車ナンバープレートの抽選、広
新車の販売のほかに、アフターサービス、
引き寄せ、その集客力をもとにして高価
①ビジネスの相互連動性の向上
その際も人件費を抑制しながら、プロセ
地は大いにある。
州におけるこの両者の複合方式の導入な
中古車、派生サービスからいかにして新
で収益性の高いサービスの販売を促進す
予測可能なビジネスを活用して予測不
ス効率を向上し従業員の職務を調整する
どが典型例としてあげられる。具体的な
たな利益成長源を見つけ出すかというこ
る戦略があげられる。
可能なビジネスを有機的に推進し、高利
方策を講じることが重要である。例えば、
影響をみると、2010年末に自動車ナン
とが重大な課題になってこよう。
ビジネスはそれぞれの利幅とは関係な
益率なサービスを促進する。
中国では従業員の質が低く流動性が高い
く相互に関連しているため、ディーラー
ビジネス相関性に基づき相関KPIを構
ことを考慮すると、標準的ビジネスプロ
は来店客数を増やし顧客満足度を高める
成し、プロセス(来店客数および顧客満
ことで、全体収益を最大化することがで
足)を管理し、収益目標(サービス、買
1
バープレート抽選方式を導入した北京で
日本のディーラービジネスのベンチマークから得られた示唆
~顧客のトータルカーライフ視点による統合マーケティング~
1
中国における統合
マーケティングの可能性
40万4千台となった。
アジアにおける先行市場である日本の
きる。こうした全体収益最大化の考え方
い替え、中古車)を達成する。
ディーラービジネスを見ると、新車販売
や、そのための仕組みづくりもまた、日
②全体収益最大化
に依存した単純なビジネスモデルから、
本のディーラービジネスの特徴といえる。
ビジネス間の相関性を考慮して、事業
新車販売、サービス、中古車事業を統合
日本の多くのディーラーでは、サービ
内容の調整、基準の一貫性、部門間協力
これらの大都市では、自動車販売の落
した広範なマーケティングモデルへと転
ス業務は、自動車修理・メンテナンスに
を推進することで、ビジネスの相乗効果
ち込みに伴い、ディーラーの収益性も減
換している。こうした統合マーケティン
関係する部分と顧客に関係する部分に分
を達成させ、全体収益の最大化を図る。
少している。北京における典型的なディー
グの背景には、顧客のトータル・カーラ
けられ、セールスコンサルタントとフロ
③管理ツールの徹底
ラーの財務諸表によると、こうした制限
イフサイクル重視の視点があげられる。
ントマンとに別々に割り当てられる。ま
一連の管理ツールを使って工程管理と
策の影響によって、売上総利益が2010年
カーライフサイクルは、自動車の購入ま
た、両者は密に連携を取っており、セー
目標管理を統合するとともに、工程にお
2
大都市における自動車
ディーラーの収益性の変化
の1,417万元から2011年には974万元まで
たは買い替え、自動車の使用、中古車の
ルスコンサルタントは定期的な訪問によっ
けるキーポイントを管理・可視化するこ
減少した。新車販売は最も利益に貢献す
廃車という3つの局面に分けることがで
て顧客とのつながりを構築し、顧客のニー
とにより、最終目標が確実に達成される
る事業であるため、その落ち込みによる
き、それぞれディーラーの新車販売、ア
ズや購入意欲を見出だす。一方でフロン
ようにする。
12
られる。
*1 顧客を引き留め、再購買を促進すること。
図表:ビジネスの分類と位置付け
〈タイプⅠ〉
〈タイプⅣ〉
強
関係維持の
ためのビジネス
顧客関係を
維持し、
収益性の高い
ビジネスを推進
管理可能性
台であったが、翌2011年は実に56%減の
3
は、2010年の自動車販売台数は91万5千
(図表参照)
。
小規模な
定期メンテナンス
自動車
ローン
中
大規模な
定期メンテナンス
保険
一般的な修理
使用済み
自動車の処分
事故の修理
〈タイプⅤ〉
標準的に
維持される
べきビジネス
標準的に維持
重大な整備
タイヤや
付属品と
いった
予測可能な
ビジネス
弱
低
中
投入産出比率
高
重点的に
保持されるべき
ビジネス
積極的に推進
および保持
〈タイプⅡ〉
積極的に
推奨されるべき
ビジネス
顧客との接触を
活かして積極的に推進
〈タイプⅢ〉
細心の注意が
払われるべきビジネス
細心の注意を払い、
高い管理性を持つ
他のビジネスと
連動して推進
13
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4
インドを活かしたサプライチェーン構築
坂本遼平
NRIインド 副主任コンサルタント
を除く)
。これらの政策にもとづき、輸
南アジア、中東アフリカ、中欧・東欧地
出向けの工業団地の建設や輸出向け投資
域の輸入台数を足しあげると300万台に
最近では、こうした精神に目
に対する減税措置も設定されている。
上り、インドの国内乗用車販売台数を上
をつけたGEが、インドにお
インドの国内自動車販売台数は、343
このようにインドは、新興国向けのモ
回る市場が視野に入るのである。
いて一般的なものに比べて価
万台(2011年度、乗用車及び商用車の
ノづくりを実現し、グローバルなサプラ
最新のSIAM(インド自動車工業会)
格10分 の 1、 重 さ 5 分 の 1
合計)である。うち乗用車が262万台、
イチェーンを構成する起点となりうるポ
のデータによると(最新年度は2009年
の携帯型心電図計を発売して
商用車が81万台である。一方で、イン
テンシャルを持っている。本稿では、グ
度)
、仕向け地は欧州諸国が23%、中東
注目を集めた。このように世
ドからは約50万台の乗用車、約9万台
ローバルサプライチェーンの中にインド
アフリカが32%、南米が11%と続いている。
界的な企業のモノづくりにお
の商用車が輸出されている。乗用車につ
を組み込む可能性について議論したい。
具体的には、現代、日産、Fordは、チェ
いても、
「ジュガード」の考
いては、実に国内販売台数の19%が輸出
ンナイ港から、マヒンドラはムンバイか
えを取り入れようとする動き
されている計算となる(図表1)
。特に
らSUV等の車種を欧州地域に輸出して
が活発化している。
いる。現在、販売台数首位のマルチスズ
しかしながら、安全性等の
キはグルガオンが中心であり、輸出を行
要件が高く、高関与型な耐久
1
グローバルサプライチェーンに
おけるインドのポテンシャル
インドから欧州等の地域にi10、i20等の
2
車種を合計24万台(2011年度)輸出し
まず、インドの地政学的な位置が1つ
うためにはムンバイへの輸送が必要となっ
消費財である自動車では、そ
ている。
の利点としてあげられる。周辺には、ス
ているが、グジャラートの生産拠点が完
うした考えがなかなか浸透し
インドが輸出拠点として注目される理
リランカやネパールなどの、いわゆる南
成すれば、更に輸出に向けた地理的優位
ないと考えられる読者も多い
由は、生産を行う際のコスト優位性や豊
アジア亜大陸の諸国に加え、東に行くと
性が高まると言われている。
だろう。特に、高い品質が強
富なサプライヤーの存在以外にもいくつ
中国や東南アジア、西へ行くと中東アフ
かある。国家全体として製造業の育成に
リカア、更に欧州といった輸出市場が視
力を入れる「国家製造業政策」が発表さ
野に入る(図表2)
。最も、東南アジア
れた他、貿易収支の改善のために輸出を
は日系を中心に一大生産拠点が形成され
3
国をあげて奨励していることもその理由
ており、殆ど完成車の輸入が行われない
更に、歴史的に部品サプライヤーが多
としてあげられる(鉄鉱石等の一部製品
が、それでもインドからカバーできる東
いことも、インドの優位性として挙げら
動車部品工業会)の登録状況をみると、
ノづくりを加速する拠点になりうる要因
リング」との理念を提唱*1しているが、
れる。以前は外資規制
非常に多数の部品メーカーが存在するこ
として、インド製造業のメンタリティが
同社は、実際にインドの商用車メーカー・
があったため、インド
とが見てとれる。
あげられる。それは「JUGAAD(ジュガー
Ashok&Leylandと 提 携 し、Dostと い う
現代自動車はインドを輸出拠点として、
地政学的な優位性
み の 日 系OEMメ ー カ ー に
(%))
(%
(༐ྋ)
4,000
16.3%
16.5%
3,500
3,000
14 0%
14.0%
12.6%
11.8%
14.9%
12.0%
は「フルーガル・エンジニア
/
お家芸ともいえるエンジン分野におい
ド)
」という考えに代表される、新興国
小型トラックを約40万ルピー(約60万
様な分野の産業におい
て現地サプライヤーが多いことはもとよ
初の“リバースイノベーション・アプロー
円*2)という競争力のある価格で発売す
16.0%
て、質はともあれサプ
り、ポンプ等の機能部品においても多く
チ”である。この考えについては、2012
ることで、TATA Ace等の強力な競合車
14.0%
ライヤーが豊富に存在
のサプライヤーが存在することに驚かれ
年に“JUGAAD Innovation”が出版されて
種がある中、2011年度に3万台強を売
し、製造業としてのバ
るOEMメーカーも多い。
以降、多方面から注目されており、エコ
り上げている。同社は、日産とプラット
リューチェーンは一通
また、その価格については、他地域で
ノミスト誌に取り上げられた他、各種ビ
フォームを共有しながら、開発コストを
り完結していた。特に、
の調達に比して20%〜60%割安になる
ジネススクールのケーススタディーにも
抑えた車種開発をさらに進めようとして
鉄鉱石が多く産出され
ケースがある。これら現地サプライヤー
取り上げられている。
いる。生産ラインの共有なども通じて、
8.0%
1,500
Nissanのカルロス・ゴーン氏
では自動車を含め、多
10
0%
10.0%
2,000
る。 し か し な が ら、Renault
18.0%
12.0%
2,500
とってはなおさらのことであ
インドならではの
新興国モノづくり
図表1:近年のインド国内生産・輸出台数の推移
6.0%
ることから、伝統的に
はインド系メーカーへの納入実績は豊富
元々は、ヒンディー語で「応急処置」
こうした現地企業の新興国におけるモノ
1,000
4.0%
キ ャ ス テ ィ ン グ、
だが、日系メーカーへの納入については、
や「とりあえずの間に合わせ」といった
づくりのノウハウ吸収が加速されつつあ
500
2.0%
フォージングといった
日系メーカーの品質基準に照らし合わせ
意味の言葉であるようだが、経営の現場
るように見える。
0
0 0%
0.0%
分野で強みがあり、エ
ると採用が難しい場合があり、現時点で
では「限られたリソースで、目的や機能
以前にインドの商用車メーカーに、開
ンジン部品に限って
は限定的である。
を達成する革新的なアイディアを導き出
発効率向上の秘訣を伺ったことがある。
も、ACMA(インド自
インドが日本企業の新興国におけるモ
す」といった、エンジニアリングや経営
その会社は商用車メーカーでありながら
2005
出所:SIAM
14
姿勢を指すようになっている。
図表2:近隣諸国への輸出ポテンシャル
2006
2007
2008
2009
2010
2011
䟺ᖳᗐ䟻
15
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4
乗用車セグメントに参入した企業であっ
が、先述したジュガードは「制約条件」
例えば、現代自動車は、i20等の車種
また、GM は、ロッカーアーム等のエ
カなどの近隣諸国に広がる印僑ネット
たが、短期間で新車種を開発・上市する
を起点として考える。このようなメンタ
で国内販売と同数程度の輸出を行ってい
ンジン部品等を、サプライヤーから直接
ワークについて触れておきたい。彼らは
ことに成功した。具体的には、安全要件
リティの共通性を、うまく融合させるこ
る。こうしたコンパクトカーは欧州でも
南米等の地域に輸出している。なぜこの
Non-Resident Indian(NRI)と呼ばれ、
6
等の重要要件を満たした後、製品として
とができれば、日本企業の中に新興国に
売れ行きが好調で、今後も追加の生産投
ような遠隔地への部品輸出が成り立つの
中東・アフリカを中心に、2,000万人強
インドを輸出向け拠点として位置付け
は70〜80%の完成度で上市をするという
おけるモノづくりの考え方を組み込んで
資を計画している。更に、欧州での販売
かといえば、インド政府が遠隔地への輸
の規模で海外に居住している。東南アジ
ていく上では、変動要因をどう緩和する
いくことは決して難しくない。
を意識してか、国内販売モデルにもサン
出を促進する
「Focus Market Scheme
(FMS)
」
ア諸国では、輸出入の領域はもとより、
かということと、国内市場と輸出市場向
ルーフ装着のオプションを設定する等、
を設定しているからである。これは、
南米、
自動車部品、関連部品等の販売ネット
けの製品ポートフォリオをどう設計する
インド市場の現地ニーズへの適合と同時
アフリカ等の遠隔市場に輸出する企業に
ワークの中にも華僑が深く入り込んでい
かが重要になる。短期的には、為替動向
に、輸出市場を意識した製品づくりをも
対して、物流費がかかる分、減税措置を
ると言われている。同様に、中東アフリ
や各種政策、輸出促進スキームの内容、
並行して行っている好例と見てとれる。
講ずることによって輸出を促進するとい
カでは印僑のプレゼンスが高いことが特
国内販売とのバランス等を見極める必要
「in- Market Testing」というアプローチ
を採用した。つまり、低価格で発売し、
市場でのボリュームを獲得した後、市場
しなやかなサプライチェー
ン構築の必要性
留意すべき点
のブラッシュアップを行う方法である。
4
これも、インドにおけるモノづくりの姿
グローバルサプライチェーンの構築を
完成車のみならず、部品レベルでの輸
うスキームである。グローバルサプライ
徴である(図表4)
。
がある。
勢を表す興味深いストーリーである。
検討するには、生産地と仕向地市場にお
出に取り組む企業も多い。例えば、Ford
チェーンの構築を検討するには、このよ
インドでは、先述した市場ボリューム
更に、こうしたメリットを享受するた
もちろん、こうした日本企業のものと
けるボリュームを軸に、関税、政策、為替、
は25万台/年のディーゼルエンジン工
うなスキームを活用することも重要な視
やコストといった経済的要素に加え、人
めには、現地サプライヤーをフルに活用
は大きく異なるモノづくりの姿勢をどの
生産地における品質・技術レベルといっ
場 を チ ェ ン ナ イ に 建 設 し て い る が、
点となる。
脈というソフト面での優位性を踏まえる
しながら低コストなモノづくりを実現し
ように取り込んでいくかは難しいテーマ
た各種要因を、重層的に検討することが
2012年に追加投資をしたことで、キャ
必要がある。例えば、中東・アフリカで
ていくことが必要である。そのためには、
ではある。ところで、この姿勢の真髄を
必要である(図表3)
。その際、政策や今
パシティを34万台に拡大させている。
設計開発機能の現地化をどこまで進めら
考えてみると、日本企業がコストを抑え
後の為替等については将来動向が見通し
Fordはこういったエンジン部品やFigo等
からこれら地域を管掌するという体制整
れるかがカギとなる。関連する部隊を現
ながら革新的な製品を多数開発してきた
にくいものの、FTA等の中長期的な関税交
の完成車を近隣30カ国に輸出しており、
5
の現地生産が本格化するまでは、インド
備も検討の余地があるのではないだろうか。
地に配置するだけでなく、ノンコア部品
手法でもある「Value Engineering」に通
渉のように、ある程度は将来動向の見通
新聞報道によると、輸出先を50カ国程
インドの優位性として、中東・アフリ
じ る 面 も あ る の で は な い だ ろ う か。
しがつきやすい要因については、想定さ
度に引き上げる考えのようである。まさ
Value Engineeringでは既存の製品を起点
れるいくつかのシナリオを織り込みながら、
に、インドを近隣諸国への輸出拠点とす
柔軟に最適地生産を考える必要がある。
る代表的なケースといえるだろう。
からのフィードバックを受けながら製品
として革新と顧客価値の創造を考える
印僑ネットワーク
図表4:世界に広がる印僑のネットワーク(華僑との比較)
に関しては、現地での部品採用承認が出
来るように権限委譲を進め、こうした活
動をスピードアップすることが重要であ
る。先進例として、現代自動車は18.4億
ルピーを投資し、300名の現地人スタッ
図表3:最適なサプライチェーン構築に向けたフレームワークの例
フからなる小型車の開発拠点をハイデラ
バードに建設している。i10やEONといっ
た車種もこの拠点で開発されている。そ
れにより、インドを中心としたサプライ
チェーンを構築し、その利点をフルに引
き出すことに成功している。
グローバル大で開発・調達・生産といっ
た一連のバリューチェーンの最適配置を
検討する上で、インドの位置づけを再考
するタイミングが来ているといえるだろう。
*1 同社の社長・カルロス・ゴーン氏が発明した言葉で
あるといわれている
*2 1ルピー=1.5円換算
出所:Ministry of Overseas Indian Affairs等より作成
16
17
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2013 APR. VOL.29
4
Vol.18 2011年初夏特別号
「“エッジ産業”への期待2」
イスラム金融の台頭
~グローバル金融市場の新潮流~
部品メーカにおける開発機能のグローバル化
古賀龍暁
日本流ディーラー・サービスの中国展開
張翼
PHEV台頭を見据えた技術戦略の再構築
野呂瀬和樹
風間智英/鈴木一範
新たな成長ステージを迎える健康食品市場
~通信販売で戦う戦略的意義と克服すべき課題~
レアアースクライシスは今後も続く
~資源調達の多様化と中国市場攻略への挑戦~
笠井 洸
岩間公秀/張 鼎暉
民間企業による保育サービス事業の展望
~待機児童の解消に向けた民間の力への期待~
新社会インフラとしての超小型電動モビリティの可能性
齋藤貴成
栗原一馬
美容家電による脅威と新たな事業機会
~化粧品メーカーの新たな成長ドライバー~
川元麻衣子
Vol.21 2011年11月号
「新たな金融事業モデル構築に向けて」
第一号案件が上場した「プロ向け市場」TOKYO AIMの今後
Vol.19 2011年7月号
「官民による都市インフラ事業の海外展開」
《水道(1)
》
三位一体の収益モデルと企業間連携・官民連携
向井 肇
《水道(2)
》
コンセッション方式を活用した展開基盤づくり
河野 愛
ダイレクト時代の金融対面チャネルの提供価値
片平希望
東日本大震災を踏まえた地震保険制度の再構築
神澤太郎
《鉄道》
コンセッション方式による鉄道運行ビジネスへの参入
片桐悠貴
《空港運営》
日本の経験をベースとした海外実績の積み上げ
新谷幸太郎
《サプライチェーン》
貨物動静の「見える化」実現のための仕組みづくり
「インフラ関連業界の動向」
次世代電力システムの鍵を握るデマンドレスポンス
冬の時代を耐え忍び、攻めに転じるノンバンク業界
中島芳徳
Vol.22 2012年1月号
「これからのICT・メディア市場で何が起こるのか」
モバイル市場
~スマホ普及の機会と脅威~
米国におけるデマンドレスポンスアグリゲータの現状と今後
佐藤仁人/滝雄二朗
急拡大する国内デマンドレスポンスの事業機会
加福秀亙
電力子会社改革のあり方
樋詰伸之
荒木康行
Branch Insight
韓国の5大グループの2012年における経営戦略
Vol.24 2012年5月号
「ヘルスケア産業を取り巻く環境変化と事業機会」
ヘルスケア産業を取り巻く環境変化
山田謙次
製薬産業を取り巻く環境変化と事業機会
松尾大輔
介護サービス市場の現状と市場参入時のポイント
梅澤幸平
ヘルスケア産業の新興国展開に関する政策動向
清瀬一善/小松康弘
ASEANの経済発展とHealth & Beauty市場の事業機会
Branch Insight
三星電子の次世代成長目標「グローバルB2B市場攻略」
《官による支援策(1)
》
バングラディシュにおけるBOP ビジネスを例として
寺田知太
八代 拓
《官による支援策(2)
》
中東湾岸諸国への進出支援を例として
野呂瀬和樹
Vol.20 2011年9月号
「自動車産業、次の10年のチャレンジ」
分散化する世界自動車市場と日系自動車メーカの課題
肥後盛史
18
ビッグデータビジネスの興隆と課題
鈴木良介
医療情報化に関する戦略・施策動向と期待領域
工藤憲一
Branch Insight
インド市場への進出
~バイイングパワーの弱いマスマーケットに集中せよ~
金星樹(キム・ソンス)
中川隆之/中島崇文
EMS の活用による新興国向けモノ造りの課題と改革の方向性
海外BtoB ビジネスにおける直販営業機能の確立
向井 肇
Vol.27 2012年11月号
ソーシャルメディア市場の隆盛
ポストアナログ放送時代の映像サービス市場展望
マテリアルでグローバル競争に勝ち残るためには
張朱希(ジャン・ジュヒ)
《都市開発》
都市開発技術の商品化とリスク分担の必要性
北崎朋希
岸本隆正/藤浪 啓
池幡 諭
高藤直子
杉山 誠
変革が求められる日本の電機産業
日系デベロッパーにとっての中国不動産開発の課題
~商業施設開発への対応~
前原孝章
小林一幸
「構造変革に立ち向かう製造業」
赤木 斉
新興国のヘルスケア市場での参入・成長戦略
電子書籍市場
Vol.26 2012年9月号
日本企業がイノベーティブな開発現場をとり戻すための引き算改革
ECの新潮流
三宅洋一郎
韓 相薫
小口敦司
高沢美恵子
コンテンツ配信市場の変化と影響
注目すべきラテンアメリカの発展
スマートコミュニティ
~巨大都市開発市場の攻略に向けて~
北 俊一
田中大輔
M&Aによる事業拡大が本格化するインド
中島久雄
伊藤 剛
野崎洋之
福田健一郎
《太陽熱発電》
実証実績の獲得と提案スタイルの転換
Vol.23 2012年3月号
安重寅(アン ジュンイン)
「先駆的な取組みからみた金融機関の可能性」
プライベートバンカーの信頼を取り戻すために
米村敏康
OKINAWA J-Adviser「地域型」上場スキームを活用した地元経済振興
飯野正文
地域の構造変化に対応が求められる金融機関
~エリアマーケティングアプローチの必要性~
堀内隆明
Vol.28 2013年1月号
「ICT 市場に新たな変革を創出するエンジン」
BtoC EC 市場
田中大輔
O2O(Online to Offline)市場とO2Oソリューション
伊部和晃
ビッグデータの活用が期待される5つの領域
鈴木良介
プライバシー保護法制の展望とパーソナルデータ活用の方策
Vol.25 2012年7月号
「新興国の変化を捉える~事業機会の獲得に向けて~」
台湾を活用した海外展開の優位性と課題
小林慎太郎
“3Dプリンタ”は、日本に「21世紀の産業革命」をもたらすか?
寺田知太
張 正武/田崎嘉邦
韓国5 大グループの新事業推進戦略
崔 創喜
製造業の進出先として再評価されるフィリピン
水野兼悟
中国内需獲得のための経営戦略
皿田 尚
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コンサルティング事業本部のご紹介
常務執行役員 本部長
此本臣吾
執行役員 副本部長
村田佳生
パートナー
青嶋 稔
パートナー
雨宮正和
パートナー
太田一郎
パートナー
三崎冨査雄
グローバル事業企画室
室長
松井貞二郎
コンサルティング事業推進室
室長
中島 済
名古屋オフィス代表
奥田 誠
大阪オフィス代表
武井基純
業務管理室
室長
鳥谷部史
経営コンサルティング部
部長
西川義昭
業務革新コンサルティング部
部長
森沢伊智郎
経営情報コンサルティング部
部長
村上勝利
IT 事業推進部
部長
高野裕康
グローバル製造業コンサルティング部
部長
近野 泰
インフラ産業コンサルティング部
部長
松本 哲
ICT・メディア産業コンサルティング部
部長
桑津浩太郎
消費サービス・ヘルスケアコンサルティング部
部長
中川 理
金融コンサルティング部
部長
宮本弘之
公共経営コンサルティング部
部長
立松博史
社会システムコンサルティング部
部長
神尾文彦
野村総合研究所ソウル
社長
崔創喜
野村総合研究所(上海)有限公司
薫事長(会長)
葉華
総経理(社長)
皿田 尚
同 北京支店
負責人(支店長)
梅松林
野村総合研究所台湾有限公司
社長
張正武
マニラ支店
支店長
高岡真紀子
野村総合研究所タイ
社長
水野兼悟
ノムラ・リサーチ・インスティチュート・インディア
社長
中島久雄
モスクワ支店
支店長
岩田 朗
ロシア代表
大橋 巌
理事・副センター長
松野 豊
コンサルティング事業本部
清華大学・野村総研中国研究センター
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2013 APR. VOL.29
NRI KNOWLEDGE INSIGHT 2013年4月号 Vol.29
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グローバル事業企画室
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