高 分 子 ナ ノ シー トに よ り量 子 ドッ トを 集 積 した 波 長 サ イズ の 共 振 器 ― 金 属 回 折 格 子 上 で 1000倍 の 発 光 増 強 を低 エ ネ ル ギ ー で 実 現 ― 格子基板上に作製 した高分子ナノ構造体による CdSeナ ノ粒子の発光制御 (東 北大多元研)森 田晋平、○三ツ石方也、宮下徳治 (産 総研)田 和圭子、 (北 大電子研)西 井準治 [lPB30] (Teユ 022‐ 217‐ 5638) 東北大学多元物質科学研究所 の森 田晋平大学院生、 三ツ石方也准教授 、宮下徳治教授、産業技術総 合研 究所 の 田和圭子博 士 、北海道大学電子科学研究所 の西井準治教授 らの研 究 グループは、われ われ が感 じることのできる光 の波長 (400∼ 800 nm)と 同程度 の 大 き さの構造 体 をナ ノスケールで周期 的 に作製す ることで 、量子 ドッ トと呼ばれ る数 nmサ ィ ズの半導体 (CdSe)ナ ノ粒子 の発光 を 1000倍 以上 に増強す ることに成功 した。 この成果 は、高分子 材料 を単分子 レベ ル で精密 に集積 してい くこ と で実 現 され、 半導体 ナ ノ粒子 に限 らず他 の 多 くの発光材料 に も適用 できる。 この発光増強 によ り、デ ィスプ レイや レー ザ な どの発 光デ バ イ スの性能 向上が期待 でき 、 さ らに低 エ ネル ギーで高強度 な発光 を得 られ るこ とか ら省 エ ネ の観点 か らも注 目され る。 ピッチ幅=480 nm (光 の波長サイズ)深 さ=30 ロ ロ縮 子 CdSeナ ノ粒子 …i/.` nm 1吟 吟 │ Ⅲ 高分子ナノシー ト 単分子 レベルで 厚さ制御可能 単分子膜を1層 ずつ累積 士 .゛ ... 吟 光の半波長サイズの膜厚 (共 振構造) \ \ 光励起による発光 現代では、「光」は単 に照明 としてだけではな く、デ ィスプ レイや 情報通信 、さらに医療や材料加 工 に も用 い られ る。光 を有 効 に活用す るこ とで既 存 のデ バ イ スの 高性能化や ま った く新 しい機能 の発現 が期待 できる。そ のため光 を制 御す る技術 は極 めて重要で あ り、 これ まで盛んに研究が行 なわれ多 く の成果 が 挙げ られ て きた。光は物質 との相 互 作用 によ り反射 、屈折や 回折 といった現象 を起 こ し、 こ れ らの現象 は光 を活用す る上で大変重要 となる。光 と物質 の相 互 作用 を効率的に利用す るためには光 の波長 と同程度のサイズで構造体 を設計 し、正 確 に作製す ることが必要 となる。 従来 この よ うな構造体 はシ リコ ン をベ ー ス とした無機 材料 の微細加 工によ り作製 されてきたが 、 こ ﹁! の方法 では使用可能 な材 料や作製できる構造 に制限がある。 これ に姑 し、我 々の研究 グル ー プでは 高 分子材料 を積 み木 の よ うに積み上げてい く (ボ トムア ップ集積 )こ とです ノ構造 体を作製 した。 この ボ トム ア ップ 的な集積 法 を用いることで 、有機材料 、無機材料 を問わず様 々 な材料 を 自在 に組み 合 わ せ た構造 体 の作製 (ハ イブ リッ ド集積 )が 可能 とな り、量子 ドッ トな ど優れた特性 を持 ってい なが ら 従来 の微 細加 工で は使 用できなかった材料 も用 い ることができるよ うになる。 我 々 は、ナ ノイ ンプ リン ト法 によ り格子状 の 凹凸構造 を光 の波長 ス ケ ール の周期で作製 し、 この上 に銀 を蒸 着 した 回折格 子 を作製 した。 さらに 、水面 に浮 かべ たア ク リル ア ミ ド系高分子 の 単分子膜 を 一層ず つ 、銀回折格子の上 に積み重ねて い くことで 、3次 元 にナ ノスケール で制御 された構造体 を作製 した。 この水面上 に形 成 した単分子膜 を基板 に移 し取 る集積方法 は Langmuir‐ B10dgett(LB)法 と呼ば れ、分子一つの大 きさ (1∼ 2nm)で 膜厚 を制御 した極 めて均質 な高分子 薄膜 の作製 が可能 にな る。半 導体ナ ノ粒子 は高 分子薄膜 の累積過程で、単分子膜の 間に静電的な引力 を利用 して 吸着 した。 この よ うなナ ノ構造 を作製 し、半導体ナ ノ粒子 を励起 す るための レー ザ光 を照射 す る と、 レー ザ光 が高分子ナ ノシー ト中に 閉 じ込 め られ、 よ り効率的に半導体ナ ノ粒子 を発光す るよ うになる。銀 回折 格子上で生 じた半導体ナ ノ粒子 の発光は、格子表 面 で反射す る際に回折 が生 じ強め合 い 、 さらに半導 体 ナ ノ粒 子 は高分子ナ ノシー ト内に挟み込まれてい るため 、生 じた発光 は銀回折格子 、空気 との 両界 面 で反射 を繰 り返 し、高分子ナ ノシー ト内に閉 じ込 め られ る。 高分子ナ ノシー トの膜厚 は光 の 半波長 程 であるため に、反射 を繰 り返す波 同士が互い に重 な り合い共 振す るこ とで発 光は増強 され る。 これ らの効果 が組み合 わ され る こ とで 、平坦な基 板上で の 半導体ナ ノ粒子 を発光 に比 べ 、1000倍 以上 の発 光増強 を実現でき、発光す る波長 幅 も レー ザ光の よ うに 27 nmか ら 6nmと 細 くな っ た。市販 の レー ザポイ ンタの 1/1000の 強度の励起で も発光 を取 り出す ことが 可能である。同様 の現象が半導体ナ ノ粒 子 に 限 らず、他 の発光体 において も実現 され 、発光材料 に制限 され ず発光制御 が可能であるこ とが示 唆 され た。 これ らの成果 に よ り LED、 レー ザな どの発光素子 の性能 向上が期待でき、また駆動 エ ネ ル ギーの 強 度 に依存 せ ず極 めて低 いエ ネル ギー において も発光 増強 が実 現 で きた こ とか ら、省 エ ネ の効果 も期待 され る。 さらに共振器 の わずかな構造変化 が発光特性 に大 き く影 響 を及 ぼす ことか ら高感度 なセ ンサ ー に も応 用できる。 ボ トム ア ップ集積 を用い ることで 、 よ り複雑 なナ ノ構造の作製や、量子 ドッ トに 限 らず多種多様 な材 料 をハ イブ リッ ドして使用できるため、今後期待 され る成果 は今 回実現 した発 光 制作,に とどま らず 、太 陽電池や 、 さらには光 スイ ッチ、量子 コ ン ピュー ター な ど、光 に関わ る技術全 般 へ の応用がター グ ッ トとして 考 え られ る。 ― 1000荏 子 斃ヨ ]陰 `こ ―― ― / CdSeナ ノ粒子の単粒子層 銀回折格子上に作製 した共振器 <適 用分野 >レ ー ザ発光素子 、LED、 セ ンサ ー 、太陽電池、光 スイ ッチ素子、量子 コンピュー ター 2
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