[三多摩腎疾患治療医会] 第66 回研究会 プログラム および 演題要旨 *当日、参加費壱千円を徴収させて頂きます。 平成25 年 12 月 8 日(日) 於:杏林大学大学院講堂 三多摩腎疾患治療医会 [第 66 回研究会 プログラム] 2013 年 12 月 8 日(日) 13:30~16:55 於:杏林大学大学院講堂 <開会の辞> Ⅰ. 一般演題 理事長 (発表 10 分 長 澤 俊 彦 討論 5 分) 13:30-13:35 13:35-15:20 座長:吉田雅治 13:35-14:05 1.『当院における緊急透析を要した救急患者 CKD 症例の検討』 杏林大学医学部第一内科:高橋孝幸、清水英樹、要伸也、片岡郁穂、前園 知宏、 中島瑛里子、宮澤さやか、櫻井仁子、小林昌史、 村上華奈子、磯村杏耶、遠藤彰子、窪田沙也花、 齋藤督芸、川嶋聡子、池谷紀子、早川哲、小路仁、 駒形嘉紀、有村義宏、山田明 2.『高カルシウム・腎不全で発症、腎サルコイドーシスと考えた一例』 立川相互病院内科:鈴木創、大石学、形山憲誠、小泉博史 病理科:布村眞季 座長:小泉博史 14:05-14:35 3.『腎移植後高用量ミゾリビン投与におけるサイトメガロウィルス抑制効果について』 東京医科大学八王子医療センター消化器外科・移植外科:今野理、岩本整、 横山卓剛、木原優、中村有紀、河地茂行、島津元秀 4.『外来透析患者を対象にしたサルコペニア調査』 東久留米クリニック:和泉維、古屋徹 小平北口クリニック:小澤尚 座長:副島昭典 14:35-15:20 5.『腹膜透析(PD)患者におけるカルニチン欠乏の実態』 東京医科大学八王子医療センター腎臓内科:廣瀬剛、吉川憲子、小松秀平、 藤澤まどか、大島奉斗、小島糾、須藤泰代、冨安朋宏、山田宗治、吉田雅治 6.『当院における腹水濾過濃縮再静注法(CART)の現状』 武蔵野赤十字病院透析センター 腎臓内科:山本和俊、島﨑雅史、河内直樹、 釜谷英治、大場博、安藤亮一 7.『血液透析における実血流量測定法に関する実験的研究』 杏林大学大学院保健学研究科:五十嵐友、菊田雅宏 杏林大学保健学部臨床工学科:山内大輔 杏林大学保健学部:須田健二、鈴木祥史、副島昭典 ∞∞∞ Coffee Break ∞∞∞ 15:20-15:35 15:35-15:50 Ⅱ. 情報提供 座長:杉崎弘章 『本会の一般法人化について』 法人化検討委員会委員長:要伸也 Ⅲ. 15:50-16:50 特別講演 座長:安藤亮一 『院内感染症―どうして起こり、いかに防ぐか』 杏林大学医学部総合医療学教室 感染症科 教授 <閉会の辞> 副理事長 山田明 河合伸 先生 16:50-16:55 【演題要旨】 1.『当院における緊急透析を要した救急患者 CKD 症例の検討』 杏林大学医学部第一内科:高橋孝幸 【背景】CKD は AKI や心血管イベントの危険因子であり,救急診療部門において急性血液浄化 などを要する疾患である. 【目的】当院に緊急入院となった CKD 症例の実態調査のため,基礎疾患と入院理由,緊急透析 の有無を検討した. 【対象】2012 年 4 月 1 日から 2013 年 3 月 31 日までの 1 年間で,緊急入院となり経過中に血液 透析を必要とした CKD 症例 152 例のうち,緊急透析を要した 43 例を対象とした. 【結果】症例の平均年齢は 69.2±14.2 歳で男女比は 29:14 であり, 糖尿病患者は 24 例 (55.8%). 維持透析患者は 23 例(53.5%),新規透析導入は 18 例(41.9%),一時的な透析は 2 例(4.7%)にす ぎなかった.急性冠症候群による入院は 9 例(21.0%),感染症は 6 例(14.0%)であった.緊急 透析理由は,心不全 22 例(51.2%),電解質異常 10 例(23.3%)であった. 【考察】緊急透析となった CKD 症例の多くは循環器疾患であった.緊急入院となりやすい特徴 については今後さらに検討していく. 2.『高カルシウム・腎不全で発症、腎サルコイドーシスと考えた一例』 立川相互病院内科:鈴木創 <症例>55 歳男性 <主訴>倦怠感 <現病歴>高血圧・腎不全があり当院外来通院中。誘因なく肩関節痛を発症、原因はっきり せず。 定期内科外来受診時低血圧・倦怠感みとめロサルタンを減量。しかし改善しないため 2 日後 再診し、Cre=12.9mg/dL,K=7.8mEq/L と腎不全・高 K 血症認め緊急入院。 <経過>入院後補液・ラシックスを開始したが尿量少なく、血液透析を開始した。徐々に尿量 が増えてきたため透析は計 7 回で離脱した。 入院時 CRP 高値であり 37.0℃前後の微熱が続いた。入院時より補正 Ca=11.3mg/dL と高 Ca 血 症があり、iPTH は 15pg/ml と抑制されていた。ACE=36.2U/L,リゾチーム=35.4μg/ml と高く、 ツベルクリン反応は陰性、Ga シンチでは肺門・腎への集積はみられなかった。NAG,α1MG が 高く尿細管問質病変が高度と考え腎サルコイドーシスを疑ったが、腎萎縮が強いため腎生検は 行えず、入院時より胆道系酵素の上昇を認めていたため肝生検を実施。小型の類上皮細胞肉芽 腫が門脈域および小葉内に散見され、乾酪壊死は認められなかった。組織所見で肉芽腫が証明 され診断基準を満たすことからサルコイドーシスと診断、PSL30mg/日を開始したところ肩関節 痛・微熱が消失、Cre,CRP 低下も得られた。 <考察>サルコイドーシスは教科書的には ACE・Ca 高値を示すとされるが本邦では高 Ca を示す 症例は数が少ない。慢性腎不全末期では Ca 低下を示すのが通例であり、高 Ca となる場合には 基礎疾患に注意を払う必要があると考えた。 3. 『腎移植後高用量ミゾリビン投与におけるサイトメガロウィルス抑制効果について』 東京医科大学八王子医療センター消化器外科・移植外科:今野理 ミコフェノール酸モフェチル(MMF)の導入に伴い、腎移植後のサイトメガロウィルス(CMV) や BK ウィルスなどの感染症が新たな問題となっている。免疫抑制作用と抗ウィルス作用を有す るミゾリビン(MZR)を高用量(6mg/kg/day)で導入し、今回 CMV 感染症を中心に MMF 群と比較 検討した。 2010 年 1 月〜2012 年 12 月に当科で施行した腎移植症例で MZR 群 13 例と MMF 群 12 例であった。 術後免疫抑制剤はメチルプレドニゾロン、カルシニューリン阻害剤、代謝拮抗剤(MZR or MMF) および Basiliximab の 4 剤併用とした。MZR 投与量は 6mg/kg/day とした。移植後の CMV viremia は MZR 群 5 例(38.5%)、MMF 群 8 例(66.7%)であった。急性拒絶反応(AR)は MZR 群 4 例(30.1%)、 MMF 群 3 例(25.0%)であった。生着期間および直近の血清クレアチニン値は MZR 群が 575±222 日、1.18±0.44mg/dl、MMF 群が 676±371 日 1.56±0.44mg/dl であったが有意差は認められな かった。現在、全例生存で良好な腎機能を維持している。 MZR 群では MMF 群と同等に AR を抑制しつつ、CMV viremia を抑制していることが示唆された。 4. 『外来透析患者を対象にしたサルコペニア調査』 東久留米クリニック:和泉維 【はじめに】当施設および関連施設の外来透析患者を対象にサルコペニア調査を行い、一定の 見解を得たので以下に報告する。 【対象と方法】65 歳以上の患者 39 名。18~39 歳の健常者 45 名。 右大腿直筋厚を超音波診断装置にて測定し、他、握力と自由歩行速度を測定した。透析患者 移動動作評価表(小澤ら、2010)を用い自覚的困難感を聴取した。筋厚のカットオフは健常者の 筋厚の平均値‐2SD とした。 【結果】サルコペニアと判定されたのは 29 名(74%)。そのうち、重症サルコペニアが 14 名。 重症サルコペニアで自覚的困難感が悪化していた。サルコペニアの有無を規定する因子は、 大腿直筋厚と年齢であった。また、大腿直筋厚と GNRI に弱い相関が認められた。 【まとめ】今回の調査より、サルコペニアの重症化防止策の重要性がより明らかになった。 5. 『腹膜透析(PD)患者におけるカルニチン欠乏の実態』 東京医科大学八王子医療センター腎臓内科:廣瀬剛 【背景と目的】PD 患者におけるカルニチン欠乏及びカルニチン代謝についての報告は少ない。 今回、PD 患者におけるカルニチン欠乏の実態を調査した。 【対象と方法】当院で PD 施行中の 23 名。平均 PD 期間は 33.5±25.2 ヶ月。PD 患者の総カルニ チン(TC)、遊離カルニチン(FC)、アシルカルニチン(AC)及び AC/FC 比を測定した。カルニチン 濃度に影響する因子(年齢・PD 期間・BMI・nPCR・Alb・トランスフェリン・weekly Kt/V・WCrCL) を調べた。FC40μmol/L 以上を正常群、40μmol/L 未満をカルニチン欠乏群とし、カルニチン欠 乏の影響を ESA 製剤使用量(C.E.R.A.換算)・Hb・BNP・LVMI・体組織組成(体脂肪率・骨格筋量)・ BMI・筋症状アンケート結果 にて比較した。 【結果】FC が期間と有意な負の相関を認めた(P<0.05)。カルニチン欠乏群は ESA 製剤使用量が 有意に増加した(0(0-75)μg/月:100(36-200)μg/月・P<0.05)。 【考察・結語】カルニチンは PD でも除去され経年的に低下した。カルニチン欠乏は赤血球寿命 の短縮を介し ESA 低反応性の原因となる可能性があり、今後カルニチン補充を介し、病態の 変化を観察する。 6.『当院における腹水濾過濃縮再静注法(CART)の現状』 武蔵野赤十字病院透析センター 腎臓内科:山本和俊 <目的>腹水濾過濃縮再静注法(CART)とは腹水中の有用な物質を保持し再静注可能な状態に 濾過、濃縮を行う方法である。当院でも CART の需要は高まってきており、この度 CART の現状 を検討した。 <方法>1000U/L のヘパリンを添加したバッグに患者腹水を貯留する。病棟から届いた腹水 バッグを臨床工学技士が受取り CART を施行する。 CART の回路は透析用の血液回路、コンソールを用いる。濾過は自然落差による濾過で、腹水 濾過器より得られた腹水の重量を再度測定し 10 倍濃縮を行う。 <結果>H24 年 1 月から平成 25 年 10 月までに 5 症例 14 件の CART を施行した。貯留腹水は 4093 ±845g、濃縮後腹水は 364±130g であった。腹水再静注によるショックや重症感染などの重篤 な有害事象の発生は認められなかった。 <結論>現体制、手法により安全に CART が行えることが確認された。腹水の濾過、濃縮の際、 患者の顔が見えないため、事故防止として CART は 1 日 1 件とし患者の取り違いが起こらないよ う対応している。 7. 『血液透析における実血流量測定法に関する実験的研究』 杏林大学大学院保健学研究科:五十嵐友 【背景・目的】透析効率に影響を与える重要な因子の一つに血液流量がある。血液流量は患者 監視装置で設定を行うが、これはローラーポンプの回転数を流量に換算したものであり、実際 の血液流量(以下、実血流量)とは異なる。本研究では、脱血不良時の実血流量のモニタリン グを行い、フィルム状圧電素子(以下、ピエゾフィルム)を用いた実血流量測定法について 検討した。 【方法】血液ポンプ一次側にニードルバルブを接続して脱血不良状態を模擬し、脱血圧と実血 流量を測定した。同時に、ピエゾフィルムを血液回路外部に装着して、出力電圧値の解析を 行った。 【結果・考察】脱血圧が陰圧になると実血流量は低下し、ピエゾフィルムによる出力電圧値に は上昇が認められた。この出力電圧値と脱血圧および実血流量との間には、それぞれ高い相関 が得られた。これらのことから、脱血圧、実血流量の連続モニタリングにピエゾフィルムが 有用であることが示唆された。
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