都立高校入試 調査・改善委員会 報告書 - 東京都

都 立 高校入 試
調査・改善委員会
報
告
書
平成26年8月
都立高校入試 調査・改善委員会
はじめに
平成25年度及び平成24年度に実施した都立高校入試における学力検査に採点誤りが
あったことが、学校及び東京都教育委員会の調査により判明しました。平成26年6月3日
の公表時点で、採点誤りは、学力検査を実施した学校のうち、8割を超える学校で見つかり、
その件数は、各年度とも1,000件を超えていました。また、この採点誤りの結果、2か
年で18人の受検者が本来合格であったにもかかわらず、不合格とされていたことが明らか
になりました。
こうした調査結果が公表される中、
「都立高校入試 調査・改善委員会」
(以下「本委員会」
という。)は、採点誤りの原因を徹底的に究明し、その上で、実効性のある再発防止・改善
策を構築するため、当初、4名の外部有識者と3名の都立高校の学校代表専門員で構成する
形で設置し、その後 1 名の外部有識者と 1 名の保護者代表、3名の区市立中学校の学校代
表専門委員を加えることとしました。
本委員会は、平成26年5月14日の第1回を皮切りに、同年8月22日までの間に、全
8回の委員会を開催し、議論を重ねました。その間、ヒューマンエラーの発生メカニズム等
について委員相互の共通理解を図るとともに、学校の実態を把握するための学校訪問を行う
など、再発防止・改善策を検討する上での情報収集に精力的に取り組んできました。
本報告書では、まず、東京都教育委員会が聞き取った採点誤りが発生した状況や誤りの内
容をたどり、そこから見えてきた採点誤りの原因・課題を抽出するとともに、調査・分析結
果も踏まえ、再発防止・改善の方向性と具体的な再発防止・改善策を提案しています。提案
は、再発防止・改善に向けて、今考え得る効果的な方策を具体的に示しており、次回の学力
検査に直ちに取り入れるべきもの、一定の時間をかけて取り入れるべきもの、引き続き導入
の是非について検討が必要なものが含まれています。
また、都立高等学校長で組織する東京都公立高等学校長協会(以下「校長協会」という。
)
から、現場の視点に基づく改善策についての提言がありました。本報告書の取りまとめに当
たっては、より実効性のある再発防止・改善策を構築するために、その提言の内容を積極的
に取り入れています。
この提案を踏まえ、東京都教育委員会としての再発防止・改善策を一刻も早く構築し、そ
れを果敢に実行に移すことで、大きく損なわれた信頼が速やかに回復されることを願ってや
みません。
目 次
はじめに
Ⅰ
本委員会設置の理由
1
Ⅱ
調査結果からみた誤りの内容
3
Ⅲ
誤りの原因と課題の考察
4
Ⅳ
1
入試日程・採点時間
4
2
環境
4
3
出題形式、解答用紙、正答表、採点基準
4
4
採点・点検方法
5
5
採点・点検等に関する規定
6
6
その他(答案の廃棄について)
6
再発防止・改善の方向性と具体的改善策
7
1
採点・点検に専念できる十分な時間と環境を確保する
7
2
マークシート方式を導入する
8
3
採点・点検方法を抜本的に見直す
8
4
採点誤りを起こしにくい仕組みをつくる
11
5
採点・点検に対する意識を高める
13
Ⅴ
セーフティネットの構築
14
Ⅵ
再発防止・改善策の効果検証
15
参考資料
1
都立高校入試 調査・改善委員会設置要綱 2
都立高校入試 調査・改善委員会委員名簿
3
都立高校入試 調査・改善委員会審議経過
4
都立高校入試 調査・改善委員会議事要旨
(1) 第三回議事要旨
(2) 第四回議事要旨
(3) 第五回議事要旨
(4) 第六回議事要旨
(5) 第七回議事要旨
(6) 第八回議事要旨
参考データ
18
20
21
23
27
31
35
39
43
Ⅰ
本委員会設置の理由
平成26年4月10日、都立荻窪高校において新入生の学力を把握するため、既に終了し
た同校の入学者選抜における学力検査の答案を確認していたところ、採点誤りが見つかった。
この事実を受け、都立高校と東京都教育委員会では、平成25年度及び平成24年度に実施
した都立高校入学者選抜における学力検査の不合格者の答案について再点検を実施した。そ
の結果、学力検査を実施した8割を超える学校で採点誤りが見つかり、その件数は各年度に
おいて1,000件を超えるとともに、採点誤りにより本来合格であったにもかかわらず、
不合格とされていた受検者が両年度合わせて18人いることが明らかになった。
このことは、既に公表(下表参照)されており、東京都教育委員会は、現在、平成25年
度及び平成24年度に実施した学力検査の合格者の答案を点検するとともに、平成23年度
に実施した学力検査の答案の再点検も加えて、その結果を取りまとめているところである。
平成25年度及び平成24年度に実施した学力検査における採点誤りの状況
(平成26年6月3日公表分)
区
分
平成 25 年度実施分
学
点検実施校数・答案枚数
校
点
175 校 約 220,000 枚
127 校 約 139,000 枚
誤りのあった学校数
137 校
103 校
誤りの件数
864 件
9校
988 件
4校
9人
4人
約 67,000 枚
120 校 約 42,000 枚
53 校
275 件
33 校
84 件
学校数
3校
2校
人
3人
2人
146 校
109 校
1,139 件
1,072 件
学校数
10 校
6校
人
12 人
6人
学校数
検
追加合格
都
教
委
点
検
点検実施校数・答案枚数
人
数
誤りのあった学校数
誤りの件数
追加合格
数
誤りのあった学校数
計
平成 24 年度実施分
誤りの件数
追加合格
数
168 校
※平成24年度実施の点検実施校数が少ないのは、文書保存期間の経過により答案を廃棄
している学校があるためである。
※「計」欄の「誤りのあった学校数」
「追加合格の学校数」について、学校点検と都教委点
検の数を足したものが計の数と一致していないのは、重複する学校があるためである。
※「学校点検」欄の点検実施校数と「都教委点検」欄の点検実施校数が一致していないの
は、点検対象校が相違しているためである。
(学校点検対象校:答案を廃棄した学校48校を除き、学力検査を行った全ての学校)
(都教委点検対象校:不合格者がいるか、又は学校点検で誤りがあった学校)
東京都教育委員会は、前記の再点検の過程において明らかになった事実から、入学者選抜
の根幹を揺るがす事態と重く受け止め、一刻も早く採点誤りの原因を徹底的に調査・究明し、
実効性のある再発防止・改善策を構築するため、再点検結果の公表を待たずに、平成26年
5月14日に4名の外部有識者に都立高校の学校代表専門委員3名を交えた本委員会を設
置した。さらに、再点検結果を踏まえ、より幅広い視点から検討を行うため、本委員会の委
員として、外部有識者1名、中学校の学校代表専門委員3名と保護者代表1名を加えるとと
もに、会議を非公開から公開に変え、全8回にわたる委員会を通じて、議論を重ねることと
した。
Ⅱ
調査結果からみた誤りの内容
先に掲げた平成25年度及び平成24年度に実施した都立高校入学者選抜における学力
検査の答案の再点検で明らかになった採点誤りの内容は、下表のとおりである。
2か年分の採点誤り約2,000件のうち最も多かった誤りは、記号選択式問題において
正答を誤答、誤答を正答としていたもので、1,000件を超えている。次に多かった誤り
は、合計点を算出する際の計算に関するもので、500件を超えている。こうした、いわゆ
る単純ミスが7割を超える状況であった。また、残りの3割については、部分点を誤って与
えていた(与えていなかった)、部分点を与える基準が統一されていなかったなど、部分点
に関する誤りであった。
平成25年度実施分
(平成26年6月3日現在)
教 科
教 科
国語
誤りの内容
数学
英語
社会
総計
理科
誤答を正答として採点した。
86
56
70
109
31
352
正答を誤答として採点した。
48
34
69
35
45
231
部分点を与えていなかった。
7
4
10
5
3
29
誤って部分点を与えた。
22
20
50
0
3
95
部分点の基準等が統一されていなかった。
14
14
36
31
1
96
合計点の算出に誤りがあった。
77
8
52
177
22
336
254
136
287
357
105
1,139
総計
平成24年度実施分
(平成26年6月3日現在)
教 科
数学
英語
社会
教 科
誤りの内容
国語
総計
理科
誤答を正答として採点した。
98
64
40
27
40
269
正答を誤答として採点した。
47
51
52
20
37
207
部分点を与えていなかった。
2
13
9
0
2
26
誤って部分点を与えた。
39
20
26
0
1
86
部分点の基準等が統一されていなかった。
46
10
35
1
123
215
合計点の算出に誤りがあった。
39
13
68
142
7
269
271
171
230
190
210
1,072
総計
※ 平成24年度実施分の社会の誤りの内容の分類について精査した結果、誤りの内容ごとの件数
は、6月3日に公表した件数と異なる。ただし、総計の190件は変わらない。
平成25年度及び平成24年度実施分の国語と平成24年度実施分の社会にあった「その他」
について内容を精査し、分類しなおした。ただし当該教科の総計の件数は変わらない。、
Ⅲ
誤りの原因と課題の考察
当初、採点誤りが発生した原因は、「例年どおり」という採点・点検に対する「慣れ」や
誤りは起きないという「思い込み」など、答案を採点する教員の意識の問題が主な要因であ
ると捉えられていた。
しかし、本委員会で調査を進めていく中で、採点誤りの発生状況が明らかになり、その発
生原因についても分析を進めた結果、採点誤りの原因は、教員の意識の問題をはじめ、様々
な要因が絡み合った構造的なものであることも明らかになってきた。
採点誤りの原因と課題について、本委員会は、次のように整理した。
1
入試日程・採点時間
現行の都立高校入試において、各学校は、第一次募集・分割前期募集の学力検査翌日から
合格発表日の前日までの3日間を合格発表に向けた様々な作業に充てている。しかし、この
間に採点・点検に加え、合格候補者を決定するための選考業務、合格発表準備等を行う必要
がある。そのため、多くの学校では、学力検査の翌日までには、採点・点検を終え、学力検
査の得点を確定しなくてはならない状況にあった。
こうした限られた時間で採点・点検を完了させなくてはならないことが、時間的圧力(タ
イムプレッシャー)となって、採点者と点検者に多大な影響を与えたと考えられる。タイム
プレッシャーにより、焦りが生じたこと、連続して採点・点検を行うことにより、集中力が
持続しなかったこと、疲労から注意力が散漫になることなど、採点誤りを起こす原因になっ
ていたと考えられる。
2
環境
学力検査の翌日は、約9割の学校で授業や行事が採点・点検と並行して行われており、生
徒が登校していることが分かった。それらの学校では、授業のための教員の出入りや生徒へ
の対応があり、集中して採点・点検を行うことができる環境になかったと考えられる。
また、生徒が登校していることから、採点・点検会場として使用できる場所が限られてい
た。そのため学校によっては、同一会場で複数教科の採点・点検が行われることもあり、集
中して採点・点検を行うことができなかったと考えられる。さらに、このことは、他教科の
進捗状況が気になり、前述のタイムプレッシャーを生む原因の一つにもなっていたと考えら
れる。
3
出題形式、解答用紙、正答表、採点基準
「ア → エ → イ → ウ」のように、複数の記号の順番が正しい解答をもって一つの正答
として点数を与える完全正答を求める問題においては、他の問題に比べ、採点誤りが多く発
生している。また、各教科の小問題1問当たりの得点は5点又は4点となっている。例えば
社会科は5点であるが、この得点5点を3点と2点に分け、1問当たり3点の問題と2点の
問題を設定している。これらの問題においては、合計点を算出する際の誤りが多く発生して
いる。
こうしたことから、限られた時間で採点・点検を行う必要がある入試においては、東京都
教育委員会が定めた出題形式や配点の方法が、採点誤りの原因の一つになっていると考えら
れる。
次に、受検者が使用する解答用紙と採点・点検者が使用する正答表の様式が異なっている
ため、正答表をそのまま使用した場合、見誤りが起きやすいと考えられる。また、各学校に
おいて正答表にある正答を解答用紙に書き写した後に採点した場合であっても、書き写す際
に写し間違いが生じる可能性がある。あわせて、書き写しに要する時間、書き写した内容の
点検に要する時間が、限られた採点・点検時間を圧迫していると考えられる。
また、一部の記述式問題(国語の作文、数学の証明、英語の作文並びに社会及び理科の論
述)では、部分点の与え方が各学校に委ねられており、各学校では当該教科の学力検査終了
後、学校が採点基準を作成する必要がある。各学校では、受検者の答案を一通り確認した後
に、採点基準を作成するが、この作成に要する時間が採点・点検時間を圧迫していると考え
られる。また、採点途中で、作成した採点基準の調整が必要となる場合がある。調整した結
果を教科内で周知する工夫は板書するなど各学校で行われているが、周知が不十分であるこ
とが、部分点の取扱いにおける採点誤りの原因となっていると考えられる。
4
採点・点検方法
現行では、採点後、3人の点検者により3回の点検を行っている。また、得点を確定する
際にも、各問題の得点を合計して得点を算出し、算出後、3人の点検者により3回の点検を
行っている。また、記号選択式問題の採点・点検については多くの学校で他教科の教員も含
めて実施しているが、記述式問題の採点は当該教科の教員が行っている。
そのため、点検者に、記述式問題については、教科担当者が採点しているのだから誤りは
ない、ましてや、単純な記号選択式問題において誤りはない、という思い込みがあり、採点
結果をそのまま追認するだけで、十分な点検が行われていなかったと考えられる実態が見受
けられる。また、2回目、3回目の点検者については、自分の前に点検が行われているのだ
から誤りはない、という思い込みがあり、前の採点・点検結果に引きずられている可能性が
あると考えられる。特に3回目の点検においては、タイムプレッシャーから形式的な点検に
陥っている場合もあると考えられる。
また、採点・点検は、採点者が単独で受検者の答案と正答を見比べて行っているが、記号
選択式問題については、採点・点検を進める中で、正答と見比べることなく、採点者自身の
記憶のみで採点している可能性がある。しかし、こうした「短期記憶」は持続することが困
難なことから、採点誤りを起こしていると考えられる。併せて、単独で単純作業を長時間行
うことにより、集中力が途切れたり、注意力が散漫になったりすることが、採点誤りにつな
がっていると考えられる。
学力検査終了後、答案は検査会場ごとに、東京都教育委員会が予め配布している「解答用
つづ
と
紙綴り」を表紙として一冊に綴じられる。採点・点検に当たっては、責任をもって業務を行
つづ
わせるため、採点委員は、自分の業務終了後、「解答用紙綴り」の所定の欄に押印すること
になっている。しかし、押印者と実際の採点・点検者とが違っていた実態もあったことが調
つづ
査の中で明らかになった。また、現行の「解答用紙綴り」では、どの問題を誰が採点・点検
したか明確に分かる様式になっておらず、事後に誰がどの問題を採点・点検したのか確認す
ることができない。このことが、採点・点検業務に対する責任の所在を曖昧にしていると考
えられる。
5
採点・点検等に関する規定
都立高校入試の実施における出願方法や合格者の決定方法、出願書類の取扱いなどの具体
的な手順等については、
「東京都立高等学校入学者選抜実施要綱」
「東京都立高等学校入学者
選抜要領」「東京都立高等学校入学者選抜事務取扱要領」などにより規定されている。
しかし、採点・点検については、東京都教育委員会は、採点後に点検を3回行うように各
学校に対して指示している以外には、具体的な手順等を示した規定を定めてこなかった。各
学校は、その上で、学力検査当日の実施体制、選考業務等に関することを各学校で作成する
実施要領に規定して実施している。そのため、採点後、3回の点検を行うことは共通の方法
として東京都教育委員会から周知されているが、その具体的な方法は、これまでの各学校に
おける経験則に頼っているのが実情であり、実施要領に記載する内容に学校間で差異がある。
この差異が、今回の採点誤りの発生状況に反映していると考えられる。
また、1割を超える学校で、採点・点検を規定する要領そのものが定められていない。こ
のことも大きな課題であると考えられる。
6
その他(答案の廃棄について)
採点誤りとは直接の因果関係はないが、東京都教育委員会から各学校に答案の点検を指示
している状況下で起きた答案廃棄について言及する。
各学校で平成24年度実施分の答案について点検を行った後、東京都教育委員会において
答案を回収し点検することを平成26年4月18日に周知した。その間、学校での点検によ
り誤りの有無を確認した6校が平成24年度実施分の答案を廃棄してしまい、これらの学校
については、東京都教育委員会による答案の点検が実施できなかった。
学力検査の答案については、「東京都教育委員会文書管理規則」により、その保存期間が
1年と定められている。したがって、平成24年度実施分の答案については、平成25年度
末まで保存し、平成26年度になってから速やかに廃棄されるべき文書である。保存期間が
経過した文書を廃棄すること自体は、問題ないと考えることもできる。しかし、今般の事故
の重大性から、答案の点検を行っている状況下で、答案を廃棄した学校の判断に対しては、
都民の理解は、得難いと言わざるを得ない。
Ⅳ
再発防止・改善の方向性と具体的改善策
これまで述べた採点誤りの原因と課題を浮き彫りにした結果、本委員会としては、再発防
止・改善の方向性として次の五つに整理し、それぞれの方向に沿った具体的改善策を提案す
る。
○
○
○
採点・点検に専念できる十分な時間と環境を確保する
マークシート方式を導入する
採点・点検方法を抜本的に見直す
○
○
採点誤りを起こしにくい仕組みをつくる
採点・点検に対する意識を高める
なお、具体的改善策は、現在考え得る効果的な方策を示したものである。今後、例えば、
学力検査の採点において、マークシート方式を全校に導入すれば、採点期間の延長について
は改めて判断することが必要である。また、採点・点検方法の抜本的見直しはマークシート
方式導入までは、必要な対策である。したがって、以下に提案するそれぞれの具体的改善策
をその時々の状況に応じて、適切に組み合わせて採用すべきである。
1
採点・点検に専念できる十分な時間と環境を確保する
学力検査終了後、学力検査の採点・点検を行い、その後、選考業務を行い、合格候補者を
決定する。これら一連の入学者選抜業務を合格発表日までの限られた時間の中で、正確かつ
迅速に行わなければならないことから、採点・点検に専念できる十分な時間と環境を確保す
ることが必要である。
そのため、次の三つの方策を提案する。
方策1
学力検査翌日から合格発表日の前日までの日数を現行の3日間から4日間とする。
なお、学力検査当日は、各学校で採点基準の作成等の採点・点検の準備に専念する。原
則、採点・点検は学力検査翌日から行う。
方策2
採点・点検を行う学力検査翌日と翌々日の2日間については、生徒は自宅学習とし、採
点・点検に専念できる環境と場所を確保する。
【現行】(多くの学校の状況)
学力検査日
1日目
【改善後】
学力検査日
(一部教科で採点)
採 点
点 検
採点基準作成
得点確定
1日目
採 点
合格決定
2日目
点 検
点 検
2日目
選考業務
3日目
合格発表準備
3日目
選考業務
合格発表日
合格発表
4日目
合格発表準備
合格発表日
合格発表
得点確定
自生
宅徒
学は
習
合格決定
方策3
採点・点検の際は、連続作業による採点者と点検者の集中力や緊張感の減衰を避けるた
め、校長協会の提言も踏まえ、作業50分ごとに10分間の休憩をとる。
2
マークシート方式を導入する
採点誤りが記号選択式問題で正答と誤答を取り違える単純ミスとして発生していること
から、採点・点検に当たってのヒューマンエラーを防止する方策が必要である。また、記述
式問題の部分点においても採点誤りが発生していることから、教員の専門性が必要とされる
記述式問題の採点・点検に専念できる方策も併せて考える必要がある。
そのため、次の方策を提案する。
方 策
採点・点検に当たってヒューマンエラーを防止する観点から、記号選択式問題の解答方
式についてはマークシート方式を導入する。
なお、一斉導入によるリスクが考えられることから、平成27年2月に実施する入試に
おいてはモデル校に試験的に導入し、効果と課題について検証することが望ましい。全校
導入に当たっては、検証結果を踏まえることが必要である。また、新しい仕組みを導入す
ることで受検者に負担が生じないように、解答用紙の様式は、現行の様式と大きく変えな
いようにするなどの配慮が必要である。
3
採点・点検方法を抜本的に見直す
現行の教員単独による採点・点検方法では、採点誤りや点検ミスが発生する可能性が極め
て高い。また、採点誤りは、基本的に採点の段階で防止する必要がある。このため、採点の
段階から複数人数で共同して作業する必要がある。
そのため、次の四つの方策を提案する。
方策1
記号選択式問題及び記述式問題(国語の作文、数学の証明、英語の作文並びに社会及び
理科の論述を除く。)については、記憶による採点・点検に伴う誤りを防ぐため、録音等
を用いた読み上げ方式による採点・点検を行い、点検は採点者と異なる者が行う。なお、
採点・点検は①から⑤までの手順により2系統で行い、点検後、点数の照合を行う。照合
そ ご
の結果、点数に齟齬のある場合は、当該答案について再度、採点・点検を行う。
方策2
記述式問題(国語の作文、数学の証明、英語の作文並びに社会及び理科の論述)につい
そ ご
ても、2系統で採点・点検を行い、点検後、点数の照合を行う。照合の結果、点数に齟齬
のある場合は、当該答案について再度、採点・点検を行う。
記述式問題
改 善 後
答案
(正本)
採 点
採
点
者
1
点 検
1
点
検
者
1
再採点
照 合
4
答案
(正本)
採 採
点 点
者 者
2 1
5
2
齟齬があった場合
3
齟齬がなかった場合
答案
(写し)
採
点
者
2
’
1
点
検
者
2
’
2
答案
(写し)
点
検
者
1
6
4
’
得点確定
方策3
校長協会の提言も踏まえ、合格発表日までに、合否のボーダーラインの上下の一定の範
囲にある受検者の答案を再度点検する。
方策4
東京都教育委員会は、採点・点検業務の詳細を定めた「採点・点検実施要項」を新たに
作成する。また、各学校においては、この要項を遵守して具体的な採点・点検体制や各担
当者の役割分担を明記した「採点・点検実施要領」を作成する。
【発表日までの流れ(例)】
9:00
学力検査日当日
10:00
11:00
12:00
午前(例)英語
学力検査
1:00
午後(例)英語
(例)
英語
午後
(例)
英語
(例)
英語
正
本
写
し
正
本
写
し
1:00
記
号
記
述
記
号
記
述
正
本
写
し
(例)
英語
正
本
写
し
記
号
記
述
記
号
記
述
採点
採点
午前
5:00
1:00
採点
3:00
再採点・点検
採点
照合
再採点・点検
採点
採点
照合
照合
採点
採点
照合
照合
5:00
再採点・点検
点検
再採点・点検
点検
10:00
11:00
12:00
点検
点検
照合
点検
点検
点検
照合
2:00
照合
1:00
採点
4:00
点検
3:00
4:00
1:00
5:00
再採点・点検
合計点算出・入力
照合
2:00
合否判定点検
1:00
採点
採点
9:00
午前
12:00
採点
採点
照合
判定資料点検
4日目(発表準備)
11:00
採点
判定資料作成
午後
10:00
2:00
9:00
3日目(選考)
午後
4:00
採点基準の作成
9:00
記
号
記
述
記
号
記
述
1:00
午後
3:00
9:00
記
号
記
述
記
号
記
述
2日目(採点日)
午前
2:00
答案(写)の準備
1日目(採点日)
午前
1:00
2:00
ボーダー点検
再採点・点検
10:00
判定資料作成
3:00
11:00
判定資料作成
4:00
判定資料点検
10:00
合否判定点検
3:00
ボーダー点検
12:00
1:00
判定資料作成
5:00
合否判定
11:00
合格発表準備
4:00
ボーダー点検
12:00
合格発表準備
5:00
1:00
4
採点誤りを起こしにくい仕組みをつくる
学力検査問題の出題形式、解答用紙の様式、正答表の様式などにある採点誤りを起こす要
因を解消する必要がある。
そのため、次の四つの方策を提案する。
方策1
複数の答えが全部合ってはじめて点数を与える、いわゆる完全正答を求める問題の出題
形式を変更する。
【改善後】
【現行】
1
次の各問に答えなさい。
1
(問1) 次のAからDを時代の古い順に並べ
替えなさい。
〔正答〕
次の各問に答えなさい。
(問1) AからDを時代の古い順に並べ替えたものとして正しいのは、次の
アからエのうちでは、どれですか。記号で答えなさい。
ア
ウ
A → D → B → C
A → D → B → C
A → C → B → D
〔正答〕
イ
エ
B → C → D → A
B → A → D → C
ア
方策2
解答用紙に問題ごとの点数を記入する小計欄を設け、点数の計算誤りを防止する。
【現行】
解 答 用 紙
英 語
〔問題A〕
1
<対話文1>
ア
<対話文2>
エ
<対話文3>
<Question 1>
He is a baseball player.
<Question 2>
One hour.
ウ
8
〔問題B〕
【改善後】
解
〔問題A〕
1
答
用
紙
<対話文1>
12
英 語
ア
<対話文2>
エ
<対話文3>
ウ
4 4 4
<Question 1>
He is a baseball player.
4
<Question 2>
One hour.
4
〔問題B〕
方策3
正答表の様式を解答用紙の様式と同一の様式に改める。また、部分点を与える問題を限
定し、部分点を与える際の基準例を東京都教育委員会が示す。
【現行】
【改善後】
英 語
英 語
問題番号
A
正 答
配点
<対話文 1>
ア
4
<対話文 2>
エ
4
1
ウ
<対話文 3>
B
2
4
<Question 2> One hour.
4
1
ウ
4
2
エ
4
(1)
イ
4
(2)
(省 略)
12
ア
<対話文1>
エ
<対話文2>
<対話文3>
ウ
4
4
<Question 1>
He is a baseball player.
4
<Question 2>
One hour.
4
4
〔問題B〕
4
<Question 1> He is a baseball player.
3
〔問題A〕
1
1
ウ
3
I like English.
I am now more interested in
English than before.
I went to America last year.
2
(2)
エ
2
3
イ
(1)
4
<部分点の基準例>
・綴りの誤り -1点
・文法の誤り -1点
・語法の誤り -1点
4
4
12
方策4
つづ
つづ
採点・点検の責任の所在を明確にするため、答案を綴る際に用いる「解答用紙綴り」の
様式を改め、採点・点検を行った問題番号を明記する欄を設ける。
【現行】
採点者及び点検者押印欄
1
2
採 点
都庁
池袋
1
目白
要町
2
駒込
千川
3
巣鴨
大塚
点
検
3
4
5
6
7
8
9
10
8
9
10
得点
新宿 花子 新宿
採点責任者 氏名
【改善後】
採点者及び点検者押印欄
大問番号
小問番号
1
2
3
4
1
1
2
2
1・2
3(1)
問題A 問題B
採 点
都庁
池袋
点 検
目白
要町
照 合
駒込
千川
5
6
7
得点
再採点
再点検
採点責任者 氏名
新宿 花子
新宿
5
採点・点検に対する意識を高める
採点・点検に係る要領を定めている学校においても、採点・点検の意義の重要性等に関
して明文化している学校は2割に過ぎない。採点・点検の意義の重要性等は、教員にとっ
て自明の理であるが、その自明の理が十分に認識されていない現状がある。そのため、意
義等について毎年、再認識する必要がある。本委員会で検討してきた再発防止・改善策が
その効果を発揮するには、採点・点検を実際に行う教員の意識に負うところが極めて大き
く、学校の果たす役割は重要であると考える。
そのため、校長協会からの提言も踏まえ、次の四つの方策を提案する。
方策1
東京都教育委員会が新たに作成する「採点・点検実施要項」に採点・点検業務の意義の
重要性について明記する。また、各校において作成する「採点・点検実施要領」にも明記
するとともに、管理職自らが採点・点検業務の意義の重要性について教員に対して周知徹
底する。
方策2
教員研修における初任者研修、職層研修等のプログラムにおいて入学者選抜に関する内
容を研修項目として組み込む。
方策3
採点・点検業務における休憩時間を利用して、各教科の採点責任者が校長に対し、誤り
の事例や業務の進捗状況の報告などを行う。また、採点・点検に当たる教員の適度な緊張
感を保つよう、校長が副校長や教務主任等と採点・点検会場を巡回して作業状況を確認す
る。
方策4
採点・点検方法や出題内容等に関する課題や改善策等について、学校現場の教員と東京
都教育委員会とが定期的に意見交換する場を設ける。
Ⅴ
セーフティネットの構築
これまで述べてきた再発防止・改善策を講じることにより、採点誤りを生じさせないよう
に尽力することが何よりも求められる。しかしながら、ヒューマンエラーの発生を完全に防
止し続けることは極めて困難であるということに鑑みると、念のための最後の救済策を講じ
ておくことが必要である。
4月の入学時期を迎えるまでの間に、本来合格していたにもかかわらず、採点誤りにより
不合格とされた受検者に対する救済措置を講じることが、まずは大前提である。また、入学
後、高校在学期間中に、合格していた事実が明らかになった場合の救済策も併せて検討する
必要がある。
このための方策として次の三つを提案する。
方策1
受検日以後、自己点検が行えるよう、速やかに問題と正答を公表することに加えて、合
格発表日以降、受検者からの自己の答案を確認したい旨の申出があれば、採点済みの答案
の写しを交付し、当該受検者から採点について疑義の申出があれば、改めて学校で再点検
を行う。併せて、再点検を行う際に、学校以外の第三者が、点検を行う仕組みについても
検討するべきである。
なお、受検者全員に対して、中学校を通じて、採点済みの答案の写しを交付することで
受検者自らが自己の答案について正しく採点されているかどうかの確認を行う仕組みに
ついては、そのメリット・デメリットを慎重に考慮しつつ、実施の是非を引き続き検討す
べきである。
方策2
採点・点検の適正な実施を客観的に確認するため、校長協会からの提言を踏まえ、他校
教員が点検を行う相互点検を実施する。その際、万一の場合にも入学式に間に合うよう、
年度末までに全答案の相互点検等を完了する。
方策3
答案の保存期間を現行の1年間から3年間に、4年を修業年限とする定時制課程におい
ては4年間に延長するとともに、答案の保存期間中に受検者から自己の答案を確認したい
旨の申出があれば、採点済みの答案の写しを交付する。
Ⅵ
再発防止・改善策の効果検証
今後、東京都教育委員会として構築する再発防止・改善策の実施効果を検証するために、
例えば全受検者の20%の答案を抽出して再点検を行うなど、効果検証の仕組みを講じるこ
とが必要である。併せて、再発防止・改善策の実効性を一層向上するため、事後に学校から
意見等を聴取する機会を設け、東京都教育委員会と学校とが一体となって採点誤りの再発防
止に取り組んでいくことが必要である。
また、マークシート方式の導入に関しても、全校導入を視野に入れ、導入効果を検証する
とともに、導入に伴う課題等が明らかになった場合は、その改善策を速やかに講じるべきで
ある。
最後に、都立高校を目指す中学生が安心して受検することができるように、本委員会の提
言を踏まえ、東京都教育委員会と学校とが、検証結果に基づき、更なる改善に向けた不断の
努力を重ねていくことを望む。
参
考
資
料
(参考資料 1)
都立高校入試 調査・改善委員会 設置要綱
(設置)
第1
都立高等学校入学者選抜(以下「入学者選抜」という。)の確実性及び信頼性を高めるため、
入学者選抜における採点及び点検業務について検討を行うとともに、現行の採点及び点検業務
について検証し、確実に入学者選抜を実施するための方策を定める機関として、都立高校入試
調査・改善委員会(以下「委員会」という。)を設置する。
(検討事項)
第2
委員会は、次の事項を所掌し、その結果を東京都教育委員会教育長に報告する。
(1) 入学者選抜における事故内容の調査分析と事故発生の原因究明のとりまとめ
(2)
現行の入学者選抜において採点の誤りの防止を徹底し、適切かつ確実な入学者選抜を実施
するための方策の策定
(3) 入学者選抜における採点及び点検業務の検証及び検討
(4) その他教育長から指示のあった事項
(調査部会の設置)
第3
事故に関する事実関係の調査及び分析を行うため、委員会の下に調査部会を設置し、次の事
項を所掌する。
(1) 入学者選抜の事故内容の調査分析と事故発生の原因究明
(2) その他委員会から指示のあった事項
(構成)
第4
委員会は、別表に掲げる者をもって構成する。
2
委員会に委員長を置き、教育庁教育監の職にある者をもって充てる。
3
委員長は、委員会を招集し、主宰する。
4
委員会に副委員長を置き、総務部長の職にある者をもって充てる。
5
副委員長は、委員長を補佐し、委員長が不在のときは、その職務を代理する。
6
調査部会に部会長を置き、教育庁都立学校教育部高等学校教育課長の職にある者をもって充て
る。
7
部会長は、部会を招集し、主宰する。
8
調査部会に副部会長を置き、都立学校教育部入学選抜担当課長の職にある者をもって充てる。
9
副部会長は、部会長を補佐し、部会長が不在のときは、その職務を代理する。
(設置期間)
第5
委員会の設置期間は、委員会が設置された日から平成27年3月31日までとする。
(意見聴取)
第6
委員会は、必要に応じて関係者から意見を聞くことができる。
(会議の公開)
第7
委員会は、原則として公開とする。
(議事録)
第8
議事録を作成し、これを公開する。
なお、内容により非公開となった会については非公開とする。
(傍聴人)
第9
傍聴人(報道関係者で委員長が認めるものを除く。)は、20名をもって定員とする。
(守秘義務)
第 10 委員会及び調査部会に関係する者は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を
退いた後も同様とする。
(庶務)
第 11
委員会の事務を処理するため、事務局を都立学校教育部高等学校教育課に置く。
(その他)
第 12 要綱に定めるもののほか、委員会の運営に関し必要な事項は委員長が、調査部会の運営に必
要な事項は部会長が別に定める。
附則
この要綱は、平成26年5月14日から施行する。
附則
この要綱は、平成26年6月10日から施行する。
附則
この要綱は、平成26年7月16日から施行する。
(参考資料2)
都立高校入試 調査・改善委員会委員名簿
区
分
外部委員
学校代表
専門委員
保護者代表
庁内委員
委員氏名
上野
淳
鵜川
正樹
小田原
榮
所
属
備
考
首都大学東京 理事
青山学院大学大学院会計
プロフェッション研究科 特任教授
八王子市教育委員会委員長
近藤
麻紀
弁護士法人ベリーベスト法律事務所 弁護士
宮崎
志郎
ANAビジネスソリューション株式会社
営業部本部 人材・研修事業部 主席部員
榎本
智司
新宿区立新宿中学校長
石井
良典
杉並区立阿佐ヶ谷中学校長
神田
正美
小金井市立緑中学校長
大野
弘
宮本
久也
東京都立西高等学校長
守屋
一幸
東京都立武蔵高等学校長
岩田
暁
高野
敬三
教育監(委員長)
松山
英幸
総務部長(副委員長)
平成 26 年 5 月 14 日から
平成 26 年 7 月 15 日まで
堤
雅史
総務部長(副委員長)
平成 26 年 7 月 16 日から
金子
一彦
指導部長
加藤
裕之
人事部長
堤
雅史
都立学校教育部長
平成 26 年 5 月 14 日から
平成 26 年 7 月 15 日まで
早川
剛生
都立学校教育部長
平成 26 年 7 月 16 日から
東京都立戸山高等学校長
東京都公立中学校PTA協議会
(オブザーバー)
オブザーバー
松山
英幸
次長
平成 26 年 7 月 16 日から
(参考資料3)
都立高校入試 調査・改善委員会審議経過
回
開催日
検討事項
第1回
5月14日(水)
○事故の概要
○採点及び点検業務の現状について
○ヒューマンエラー対策について
第2回
6月
9日(月)
○今後の進め方について
第3回
7月
2日(水)
○ 実態調査に基づく原因分析について
第4回
7月14日(月)
○ 採点誤りの原因分析
第5回
7月22日(火)
○ 原因分析に基づく課題の整理について
第6回
7月30日(水)
○ 課題の整理と課題解決の方策①(案)
第7回
8月
○ 課題の整理と課題解決の方策②(案)
第8回
8月22日(金)
8日(金)
○ 東京都公立高等学校長協会からの提言
○ 都立高校入試 調査・改善委員会 報告書(案)
※
第 2 回目までは非公開で実施
都立高校入試 調査・改善委員会委員による学校訪問
訪問日
午前/午後
訪問先
訪
問
委
員
午前
狛 江 高 校
上 野 淳 委 員
午後
松 原 高 校
近藤麻紀委員
午前
豊多摩高校
小田原榮委員
鵜川正樹委員
午前
文 京 高 校
上 野 淳 委 員
宮崎志郎委員
午後
北 園 高 校
近藤麻紀委員
宮崎志郎委員
午前
永 山 高 校
上 野 淳 委 員
午後
小 岩 高 校
近藤麻紀委員
6月17日(火)
午後
広 尾 高 校
小田原榮委員
6月18日(水)
午後
八王子北高校
小田原榮委員
6月
9日(月)
6月11日(水)
鵜川正樹委員
石 井 和 宏 氏
(宮崎志郎委員代理)
6月12日(木)
6月16日(月)
宮崎志郎委員
第三回 都立高校入試 調査・改善委員会
議事要旨
1
日時
平成26年7月2日(水)午後6時から午後8時まで
2
場所
東京都庁第二本庁舎31階 特別会議室27
3
議事
実態調査に基づく原因分析について
4
出席者
高野敬三委員長、松山英幸副委員長、上野淳委員、鵜川正樹委員、小田原榮委員、
近藤麻紀委員、 宮崎志郎委員、岩田暁委員、 石井良典委員、
大野弘委員、
宮本久也委員、守屋一幸委員、金子一彦委員、
堤雅史委員
神田正美委員、
加藤裕之委員、
5 発言要旨
(1) 日程・採点時間について
○ 採点の誤りの原因として日程的な厳しさが考えられる。採点中は時間的な圧力を受
けており、行動のエラーが起きて当然である。
○
採点にかけた日数として、訪問した学校では学力検査日の翌朝から始めて、その日
のうちに得点データの入力まで終わらせるという学校があった。つまり、採点が始ま
って1検、2検、3検を経て、教科ごとに得点をコンピュータに入力するまでを1日
で終わらせている実態がある。
○
検査の翌日の1日のみが採点に許された日程で、しかも、その1日でさえ授業など
により集中できていない学校が結構あるのではないか。採点から得点入力まで1日で
終わらせるという状況は打開しないといけないと思う。
○
採点の集計結果を電卓等で点検する作業を合理化して短縮できれば、時間に余裕も
生まれ、教員の疲労も軽減すると思う。
○
授業時間の確保の問題もあるが、検査の翌日は休業日として、授業は別の期間に行
った方がよい。
○
採点日に学校行事を組み込んで、教員の採点時間を確保するのは場当たり的な対応
であり、そのような体制で採点しているのは保護者として到底理解できない。
(2) 検査問題について
○
記号問題で、ア・イ・カ・キのように全部そろっていて正解という問題は、非常に
間違いが起こりやすいものである。これは極めて簡単に直せることなので改善してほ
しいと思う。
○
記号問題のような単純な採点の場合は、集中力が低下して注意が散漫になり、間違
いを起こしやすくなるため、様々な視点から改善を検討する必要がある。
○
数学の証明問題が3題あると、採点基準を定める上では時間がかかり、多くても2
題ではないかという発言が学校からあった。
(3) 解答用紙について
解答用紙と採点基準の様式が異なるために採点がしづらい。解答用紙に採点基準を
○
写して採点に当たっている学校もあるが、その写す段階でのエラーもあったと聞いて
いる。
○
点数の合計ミスというのが多くあるので、採点は大問ごと、小問ごとに点を書き込
む欄を作って点数を足し上げられるよう、フォーマットを考え直すべきだと思う。
(4) 採点基準について
○
高校での聞き取りの内容から、学校では、採点基準の作成に相当神経をすり減らし
ている事実があると受け止めている。
○
記述問題の採点基準をつくるのに、各学校では相当な苦労をしている実態があるが、
そもそも学校によって採点基準が異なることに疑問を感じる。
○
学校によって採点基準が異なっていることについて、中学校としては認識をしてい
なかった。
○
学校では採点基準の設定を慎重に行っていながら、加点すべきところを加点しなか
ったり、減点すべきところを減点しなかったりという事実がある。十分に意見交換を
したり情報交換をしたりしながら、納得がいくまで採点できるという体制や時間の確
保が、採点の誤りをなくすための大事な一つのファクターだと感じる。
○
高校はそれぞれ自分たちの受検生のレベルに合わせて採点基準を、時間をかけ、神
経を集中させて設定している。しかし、そこで典型的な単純なミスが出たということ
があるので、都立高校全体の標準的な採点基準を都教委が提示できたらよいと思う。
○
採点者には、受検者の合否を判定するに当たり、自分たちに採点基準の作成を任せ
てほしいという希望がある。
(5) 採点等に関する規定について
○
88%の学校が採点に関する要項を定めているが、これは 10%を超える学校で要項を
定めていないという事実があったと受け止めるべきである。
○
2検、3検までは正確に適切な手順で行われていなかった様子もうかがえる。2検、
3検が事実上機能していたかどうか疑いがある。点検方法について真剣に見直した方
がいいのではないか。
○
採点の要領について、点数の集計の要領は十分に整備されているが、あまり細かい
規定がないと思う。
○
教科の教員以外全員が、記号問題の採点を行うような人員配置にも問題があると思
う。
○
点検の回数は別にしても、従来にはない点検の仕組みを導入するということは採点
の誤りを防ぐ一つの方法になるのではないか。
○
誰がどこの箇所を採点し、点検したのかを記録で確認できないことに、保護者とし
て不信感を抱いている。
○
3回目の点検を行う者が最終的な責任をもって点検できるように、必要な時間と人
を確保する必要がある。
○
受検者の記述した場所と「○」を実際に付ける場所が離れていることが、採点誤り
の原因の一つではないかと考える。
(6) その他
○
5教科以外の教員が記号問題の採点に当たることは、採点に対する責任感や使命感
といった点でやや不安が残る。
○
解答用紙の受検番号が採点者に見えることは、不正に結び付く可能性があるため検
討すべきだと思う。
○
記号問題の採点誤りの原因の分析と記述問題の採点誤りの原因の分析はそれぞれ
分けて行う必要がある。
○
問題作成者であり、都立高校全体の入学者選抜を管理している都教委と、実際に採
点している学校現場との意見交換をする必要がある。
○
合否のボーダーライン、上下15点の受検者の解答用紙等を自主的に点検している
という真摯な姿勢をもつ学校もあることが分かった。
○
パソコンで入力作業や合格発表の準備をしている最中に採点の誤りを発見したと
いう話もあると聞いた。
○
ある学校で採点の誤りが発見され、全校が採点の再点検を行ったにもかかわらず、
採点の誤りが発見できなかった原因は何かということを分析していく必要がある。
○
都教委で学校が発見できなかった採点の誤りを発見できたのは、点検の方法が違っ
ていたからではないか。都教委での点検方法は、一人が正答を読み上げて、別の人が
読み上げられた正答を聞いて点検する方法であった。そして、得点についても、設問
ごとに点数を書き、合計点を計算した。これは数字の点検ではよく行われる手法であ
る。
○
採点業務は都立高校の教員が行う業務なのかということを再検討する必要がある
のではないか。
○
3人の教員で3回点検をしたにもかかわらず、多くの採点誤りが生じたのは不思議
である。
○
採点を含めて4回確認しているということで安心してしまい、認識の甘さが校長を
はじめ教職員の中にあったと認めざるをえず、高校としては厳しく受け止めて反省を
しなければならない。
○
各学校が合否判定の資料を作成する際に、表計算ソフトで独自にプログラムを作成
しているとのことだが、そのプログラムに不具合があると基本的なところが揺らいで
しまうので、プログラムが適切に機能しているか一度調べる必要があるのではないか。
第四回 都立高校入試 調査・改善委員会
議事要旨
1
日時
平成26年7月14日(月)午後6時00分から午後8時00分まで
2
場所
東京都庁第二本庁舎31階 特別会議室27
3
議事
採点誤りの原因分析
4
出席者
高野敬三委員長、松山英幸副委員長、上野淳委員、
近藤麻紀委員、 宮崎志郎委員、
大野弘委員、
宮本久也委員、
鵜川正樹委員、小田原榮委員、
岩田暁委員、 石井良典委員、神田正美委員、
守屋一幸委員、加藤裕之委員、堤雅史委員
5 発言要旨
(1) 採点期間における採点以外の業務について
○ 参考資料として提示された、学校が2月から3月にかけて作成する書類を見る限り、
従前どおりであり、近年になって増えたようには感じない。しかし、学校からの聞き
取りでは、作成する書類は年々増えているとの回答があった。これらの書類の提出に
ついて、入選の時期を外すことは可能か、あるいは、業務の軽減を図ることは可能か
を明確にする必要がある。
○ 学校が2月から3月にかけて作成する書類は、教務部の一部の教員が担当している
ものであって、全ての教員が関わっているということではない。そのため、これらの
書類の作成が、採点業務を直接圧迫しているということではない。
○ 東京都は、他県に比べると入試の時期が早く、様々な行事の準備と重なっているこ
とは確かであるが、過去も同じ状況であり、近年になって入試と様々な行事の時期が
重なったわけではない。
○ 入試との関連で言えば、調査書の数値の打ち込みや、調査書点を算出する準備時間
を確保するために、球技大会等の行事を入れて授業を空けている。
○ 業務量が多いのではないかという指摘に対し、業務縮減の検討委員会を7月に立ち
上げ、この委員会において、4月から3月までの業務について精選を図っていく。も
し都教委が行う調査の時期が集中しているのであれば、これを平準化していく必要が
あると考える。
(2) 3回の点検が機能しなかった理由について
ア 日程について
○ 3回の点検はどこの学校でも行われている。きちんと機能していたかという点にお
いて、誤りのなかった高校と、誤りのあった高校でどのような違いがあったのか確認
する必要があるが、この一つには、2検と3検の間に時間があることが考えられる。
○ 採点と点検に3日取れる学校と2日しか取れない学校がなぜ生じるのか、また、ど
のような理由から学校による違いが生じるのか、について確認する必要がある。採点
と点検に2日取った学校は、2日しか取れなかったのか、2日しか取らなかったのか
を検証する必要がある。
○ 都教委で決めているのは発表日だけであり、学力検査終了後から発表日まで、どの
ように業務を進めるかは学校に委ねられている。多くの学校は、学力検査翌日の夕方
又は夜までには得点を確定する。その後に選考業務に入るのが一般的である。
○ 採点日の扱いについては、学力検査の翌日は採点と1検だけとし、2検及び3検は、
翌々日に日を改めることで気分をリフレッシュさせ、気を引き締めて点検すること、
さらに、その両日は生徒を休業日にすることが大事なのではないかと考える。
イ 採点・点検の環境について
○ 都教委点検では、読み上げ方式という従来の点検とは別の方法で点検を行ったこと
で誤りを多数発見したということであるが、一度採点してから時間が十分に経ってい
るにもかかわらず、学校の再点検で誤りを発見できなかったのはなぜか。再点検をき
ちんとやっていたのかということをもう一度聞いてみたい。
○ 本校では、改めての点検で誤りが見付かったが、これは、他教科の教員が見付けた。
慣れがミスを誘発するということは、やはりあると思う。そういう意味では、全く新
しい目で点検をすることで、誤りが見付かることは実際にある。
○ 今回の採点問題で課題の一つになると思うことに、時間的な制約がある。学校は基
本的に限られた人が採点・点検を行っている。会計の場合は、外部でチェックしてい
く方法を取るが、それは、根本的に人間は間違うものだという考えが前提になってい
る。その間違いをどこかで正すような仕組みをつくるという考え方を取っている。
○ 最終的には、人間の意識の問題になるが、リスクのあるところを重点的に見ていく
こと、そして点検方法を見直すことが必要ではないか。先ほどの読み上げ方式の方法
もあるが、外部の人間が点検する方法も考えられる。そうすることで、かなりのリス
クを抑えることができる。
○ 教員への聞き取りで、3検で誤りを見付けても指摘しにくいという意識が教員にあ
るということが印象に残っている。また、担当教科の教員の判断を尊重するというよ
うな話も聞いた。実際に間違えている箇所を間違えていると指摘できる環境があった
のかどうか疑わしい。
○ 教科単位で教育活動を行っているので、声に出しづらいことやチームのムードが、
採点や点検作業の中で出てくることがあると思う。職場やチームの人間関係やムード
などに左右される部分はあるかもしれない。
ウ 教員の意識について
○ 人、環境、機械(採点の仕組み)、管理の四つの視点からみる特性要因図の中で、
特に問題になることは、人と環境と管理であり、このことについて、もう少し深く掘
り下げていかないと、原因の核心には迫れない。今までの情報を整理すると、3検が
機能しなかった理由の矛先が、日数の問題、解答用紙と正答の問題、小計欄などに行
きがちであるが、何が教員にとって問題になっているのかをまだ見切れていない。
○ 思い込みや集中力の欠如などは、人間の特性的な部分で、特に今回の採点誤りに限
った問題ではない。思い込み、集中力の欠如も含めて、どこに問題があるのかをまだ
絞り切れていないため、より詳細を詰めていく必要がある。
〇 タイムプレッシャーに係る時間と誤りの件数には、一般的には明確な相関がある。
時間だけでなく、環境、点検方法やその点検方法が機能していたのかを複合的に見て
いく必要がある。
○ 思い込みや集中力の欠如はどこにでも起こり得る人間のミスである。ただ、入学者
選抜というのは子供たちの将来を左右するという重要な任務であり、重要性の認識不
足ということが一番の問題である。管理職にしても、担当の教務主任にしても、その
重要性に対する認識が足りないのではないか。再点検を教員が行わないから、校長と
副校長とで行ったという話も聞こえてくる。採点誤りを犯したことについて、教員は
どのように思っているのかを聞きたい。
○ 入学者選抜の重要性については、一般の教員に聞いても、その重要性を認識してい
ると考える。採点や点検作業に入った途端、その重要性を認識せず、ア、イ、ウとい
った記号だけが頭の中に残り、さらに連続してその単純作業を行っていくことで、ミ
スが入り込む要因が生じてしまうのではないか。
○ 先入観や慣れのほか、採点に加えて3検もしているのだから大丈夫だという思い込
みが、3検が機能しなかった理由になったのではないか。その思い込みが、誤りがあ
るのではないかという感覚を妨げていたのではないかと考える。
○ 校長は、検査や採点の前に、入試は、中学生にとって人生に関わる大事なことだか
ら、誤りのないように実施しようという話を必ずしている。その内容をどこまで真摯
に捉え、集中して業務に当たるよう教員に伝えることができたのか、私自身反省して
いる。また、教職員についても、これらのことに関して、十分ではなかったと反省し
ている。
○ 様々な点から学校を見たところ、採点作業に対する重要性の認識ということが、本
当に教員にあったのかということが一番大きな課題ではないか。
○ 焦りや見誤りの原因として、採点にかける日数が短いことがあるが、それだけでな
く、集中力の欠如に関しても、分からないことを質問に来た生徒の対応に時間がかか
るため集中できないという状況もある。
○ 採点誤りはあってはならない、ないだろう、あってほしくない、ないというように、
教員に思考の変化が起こる。
○ 都教委の聞き取り調査を読むと、今回の採点の誤りは、車の運転でいえば「だろう
運転」で、いつ事故を起こしてもおかしくないような意識で運転している状況になっ
ている。これを変えていくことは相当力のいる作業だと思う。
○ 間違いを起こしているのは現場の教員であるから、現場の教員がどう考えているの
か、どう捉えているのか、どう改善しようと思っているのかということから考えてい
かないと、改善策を学校に実施するように伝えてもトップダウンでは、教員は納得し
ないので、誤りがまた起きるのではないか。
〇 教員全員で自分の学校に入れる生徒をしっかりと見るのだという認識をもてば、先
入観や他の教員に頼るといった感覚は払拭できるのではないかと思う。
エ 解答用紙等について
○ 教員が採点、点検を行った後、解答用紙綴に確認印を押印するが、今回学校に行っ
て確認したところ、採点を誤った教員が誰なのかということを明確に特定するのが難
しく、責任の所在が明確になっていない。採点者と点検者の人数が多いこともあり、
誤りがあったとしても、自分一人だけが誤ったとして責任を問われる立場ではなく、
責任の所在が明確でない体制になっていることが課題である。
第五回 都立高校入試 調査・改善委員会
議事要旨
1
日時
平成26年7月22日(火)午後3時から午後5まで
2
場所
東京都庁第二本庁舎31階 特別会議室22
3
議事
原因分析に基づく課題の整理について
4
出席者
高野敬三委員長、 堤雅史副委員長、 上野淳委員、
小田原榮委員、 近藤麻紀委員、
宮崎志郎委員、
榎本智司委員、
神田正美委員、 大野弘委員、
宮本久也委員、
守屋一幸委員、 岩田暁委員、
金子一彦委員、 加藤裕之委員、 早川剛生委員、
松山英幸オブザーバー
5 発言要旨
(1) 3回の点検が機能しなかった理由について
○ 採点を行った教員への聞き取りでは、点検が機能しなかった理由として、時間が足
りないことによる焦りや疲労感を挙げる教員が多かった。
○ 実際に採点を行った教員が理由として挙げた「思い込み、先入観」、「注意力不足」
などを再発防止のために解消していくことが大切である。
○ 時間的なプレッシャーによって焦りが生じ、その結果、注意力や集中力が不足する
と思う。採点委員の聞き取りで原因として挙がった「集中力、注意力不足」、
「疲労感」、
「焦り」は時間不足から生じるものだと考えられる。
○ ヒューマンエラーの原因に、時間不足から生じる行動過程のエラーであるスリップ
現象があると考える。
○ 管理職や教務・入学選抜担当の教員に比べ、採点を行う教員が時間不足や疲労感、
集中力がもたないことを強く感じていることを受け止める必要がある。
○ 学校の管理職は、最初に採点や点検に要する時間、全体の採点のスケジュールとい
った計画を実現可能と考えて設定する。一方、採点を行う教員は、その計画について
実現することは厳しいと考えており、そこに差がある。
○ 採点の誤りの外的要因の中で、ヒューマンエラーの重層階層についてよく整理して
いる。内的要因には、3検の形骸化と採点・点検についての規定の不十分さがあると
思われるが、採点者という人的要因について更に追求する必要がある。
(2) 入試日程や採点時間について
○ 採点時間を確保する場合、どの程度の時間が確保できるのか、検討する必要がある。
○ 採点者や時間を確保することが抜本的な防止策にならないのであれば、学校の教員
以外を採点者として加えることも対策の一つとして検討してもよい。
○ 採点期間中、授業や学校行事などの生徒対応を入れなければ、丁寧に時間をかけて
2日間採点に当たることが可能かどうか、また不可能なら何が障害になるのか調査・
分析を行ってほしい。もし2日間の採点が実現可能なら、採点期間を変える必要はな
いと考える。
○
採点・点検業務を必ず午後5時までに終わらせなければならないのか。そうだとす
ると1日で終わらせなければいけないという意識に加えて、午後5時までに終わらせ
なければならないという意識もプレッシャーになっていると考える。
○ 学校には勤務時間内に終わらせたいという思いがある。採点業務には、教員だけで
なく非常勤教員も携わっており、全体の採点作業としては、午後5時が目安になる。
(3) 採点基準について
○ 採点基準をそれぞれの学校で議論し、かなり苦労して作っている実態がある。
○
都教委が作文の正答例を提示したとしても、学校で自校の採点基準を検討する時間
は必要である。
○ 部分点の与え方についても基準を都教委が提示したほうがよい。
○ 記述式問題の採点基準が学校によって異なるのは当然である。中学校の定期考査で
採点基準を作るときも、定期考査前にある程度の案は作るが、定期考査後に全ての答
案を確認して改めて採点基準を作り直して採点を行っている。高校の教員も労力を惜
しまずに一連の作業を行い、受検者の力を評価してほしい。
○ 都教委で示す正答以外を不正解とすることで、新たな課題や議論が生まれると思う。
記述式問題で子供たちの表現力などを評価するのであれば、明らかな間違いは別とし
て、学校で採点基準を設け、受検者の実態に応じた採点を行うべきである。
○
問題作成者である都教委が、実際の答案を見ないで採点基準を作れるのかを議論し
ていく必要がある。また、学校間で受検者層が異なるため、全ての学校に一律に適用
する採点基準が本当に作れるのかも議論していく必要がある。
○ 各学校が、実際の答案を見て採点基準や部分点の与え方を検討する中で疑問などが
生じた場合、都教委が相談に応じることや、各学校が採点基準に差が生じないよう採
点基準についての情報を学校間で情報共有することも考えられる。
(4) 採点・点検に関する規定について
○ 学校が再点検を行ったにもかかわらず、都教委の再点検によって更に誤りが見付か
ったことの原因についても検討していかなければならない。
○
学校が行った点検と都教委が行った点検とでは、正答を読み上げて点検する点に大
きな違いがある。正答を聞くことで、点検の視点がぶれず、聞き逃しても一巡してき
たところから始められるので自分のテンポで点検が行えたと思う。
○ 点検作業における2検や3検では、誰がどこからどこまでを担当したかという責任
や役割分担が曖昧なまま行われている実態がある。最後に点検を行ったことの確認の
ために押す印鑑が点検者と一致していないという問題もある。責任や役割を明確にす
るマニュアルや体制が作れるかどうかについても検討してほしい。
○ ある都立高校で合格者決定前に校内点検で行っていると聞いた、合否のボーダーラ
インの上下15点の受検者を、もう一度答案に戻って点検するといった、これまでの
3検とは異なる仕組みを入れることが可能かどうか検討してほしい。
(5) 国語の記述式問題について
○ 国語の記述式問題で統一した採点基準を設けることは難しい上に、統一した採点基
準で採点することが採点する教員への新たなプレッシャーになるのではないか。統一
した採点基準にするよりも、記述式の文字数を少なくする方向で考えた方が良いので
はないか。
○ 中学校の教育は、都立高校入試に 200 字の作文が出題されたことで、根拠が明確で
分かりやすい意見を書かせることを重視した授業を行うようになり、子供たちの言語
能力が身に付いてきている。逆に、200 字の作文をなくすことは、言語能力の育成を
重視しようとする中学校の教育にブレーキをかけることにならないか。
○ 子供たちの思考力や表現力を評価するには 100 字では不十分であり、ある程度の字
数が必要である。
(6) 記号選択式問題について
○ 記号選択式の採点の誤りについては、単純な見誤りというような印象がある。教員
の聞き取りからは、受検生の筆跡が読めない字だから誤答と判断したり、書こうとし
た字を推測して採点したりと教員によって異なる対応で採点している実態がある。
○ 記号選択式の場合、受検者が慌てて書いたために、「ア」が「マ」や「ヤ」に見え
ることがある。その場合、多くの教員は選択肢の記号にある「ア」と解釈すると考え
る。
○ 記述式問題は学校の当該教科の教員が採点する必要があるが、記号選択式問題につ
いても当該教科の教員が採点を行う必要があるのか。記述式問題は継続したままで、
単純な採点誤りが多くある記号選択式問題をマークシート形式にすることも案とし
て考えられる。
(7) その他
○ 答案の内容を一番理解している受検者自身が外部チェックとして機能するような
手続等のシステムを整備する必要がある。
○
全受検者に答案を返却し、受検者自らが点検することが、採点誤りの発見につなが
り、セーフティネットになると考える。
○ 学校によって採点基準や部分点の与え方が違うので、受検者本人も採点結果を確認
できないのではないか。
○ 採点誤りの防止策として、答案を開示するということが、抜本的な解決策となるか
疑問である。
第六回 都立高校入試 調査・改善委員会
議事要旨
1
日時
平成26年7月30日(水)午後6時から午後8時まで
2
場所
東京都庁第二本庁舎31階 特別会議室27
3
議事
課題の整理と課題解決の方策①(案)
4
出席者
高野敬三委員長、 堤雅史副委員長、鵜川正樹委員、 小田原榮委員、
宮崎志郎委員、 榎本智司委員、 石井良典委員、 神田正美委員、
守屋一幸委員、 岩田暁委員、
金子一彦委員、加藤裕之委員、
松山英幸オブザーバー
5
近藤麻紀委員、
大野弘委員、
早川剛生委員、
発言要旨
(1) 採点誤りの要因について
○ 採点業務に対する意識や慣れは、採点業務だけでなく、全ての業務に共通すること
だと思う。採点の誤りを防ぐどんなによい仕組みを作ったとしても、業務に当たる人
間が納得して行動しないと実現することは難しい。採点業務への意識や慣れに対して、
採点を行う教員の行動を支えるモラルやモチベーションが必要である。
○
採点業務に対する意識を高めるために、全教員対象の研修が必要だと思う。
○
入試の採点に限らず、授業で行う小テストや定期考査など、子供たちの成果を測る
テストについても決して採点ミスはあってはならないという意識を醸成していく必
要がある。
○
各学校の教員が、普段の授業や期末考査などに、しっかりと向き合い、誤りを起こ
さない意識を育てる必要がある。
(2) 点検・採点方法の見直しについて
○
複数の教員による読み上げ方式の採点・点検という方策案は、記号選択式の問題に
おいて、非常に機能すると思う。
○
読み上げ方式の採点・点検を実施するとなると、作業環境が課題になる。学校を訪
問したとき、読み上げ方式の採点・点検に対して、教員からは、部屋を複数用意でき
ない、同一会場での実施となると他教科の読み上げる声が採点の妨げになる、という
意見があった。
読み上げ方式の採点・点検について、必要な人数の教員が確保できるかが心配であ
○
る。
○
採点・点検を行う会場が限られる学校は多いが、時間帯を分けることで教員全員で
やることは可能である。また、人間が読み上げると、読み間違える可能性があるので、
録音した音声を再生した方が確実である。
○
読み上げ方式の採点・点検を行う場合、どのような課題が考えられるかが分からな
いので、読み上げ方式だけを繰り返して作業を行うことに少し不安を感じる。
○
教科で1教室ずつ使用すれば、少なくとも5教室は作業場所を確保する必要がある。
各教科の採点・点検日程を調整できれば5教室は確保できる。また、読み上げ者は一
つの教室で一人にする必要があると思う。
○
読み上げ方式による点検後に、2系統の採点した結果を照合・点検する作業になっ
ているが、2系統で採点するなら、照合・点検作業を早い段階で行ってもよいと思う。
○
読み上げ方式によって二人で採点・点検する方法は非常に良い方法だと思う。また、
採点と読み上げ方式による点検で、十分な確認ができ、さらに責任の所在もはっきり
すると思う。
○
採点・点検のスタイルが一つできたとしても、その形のまま継続してできるかは、
非常に難しい問題だと思う。今までのように採点者がいて、1検、2検、3検という
形でやってきたのであれば、その範囲の中で、読み上げ方式による採点・点検を導入
し、責任の所在を明確にさせる方向で検討するのがよいと思う。
○
全体像、全体の流れがどのようになるか、イメージ図を示してほしい。それから、
方策案に示された採点・点検業務に要する総時間があればもっと分かりやすい。
(3) 解答用紙の様式変更等について
○
中学生の中には、過去問を解いている子供が数多くいる。答案用紙に点検欄を設け
る場合は、それが得点記入欄であることが分かるように工夫し、学力検査当日に受検
者が混乱しないようにしてほしい。
○
得点の小計に誤りがあったことから、得点記入欄を設けて、得点記入欄ごとの点検
をするか、得点記入欄に加えて小計欄を設けて点検する方法がよいと思う。
○
得点記入欄を設ける方法は、記入した得点を全て読み上げて計算するため、間違い
が非常に少ないと思う。それに対し、小計欄に点数を入れると、各問題の得点に加え
て小計まで足す誤りを誘発し、合計での誤りがあると思う。
(4) 答案の写しの受検者への返却について
○
中学校を介して返却するということは、中学校の仕事が増えるということである。
それは中学校の教員にとって大きな負担となることから行うべきではない。
中学校としては、受検生が救済される可能性があるのであれば、答案返却を行うこ
○
とは構わない。しかし、記述式の問題は学校ごとに採点基準が異なるため、答案の返
却によって、その違いが明らかになると、高校に対して問い合わせが多くなると思う。
その説明に苦慮することになるのではないか。
○
答案の写しを開示することは、抜本的な解決策として考えた方がよいと思う。答案
の写しを返却することは、他の委員の話を聞いても、デメリットの方が大きいように
思える。開示請求があれば開示するという形をとるとともに、受検者本人であると確
認できれば、合格発表の時点から開示を行う形がよいと思う。
○
請求があったときに答案の写しを開示するという方法であれば、答案の確認の徹底
が困難であること、入学者選抜の責任の一部を受検者に転嫁するように見えること、
結果を知りたくない受検者がいるため無理に教えることになることの三つのデメリ
ットを解消できると考える。
○
答案の開示について、東京都の開示の方法を変更することが、他府県あるいは大学
に影響があるとしても、それぞれの道府県あるいは大学の主体性に任せれば良いと考
える。
○
答案の写しを受検者に返却する方法は、非常に開かれた民主的な案であり、理想形
に近いものだと思う。しかし、この方策をとるよりも、採点の誤りの改善策や対策を
立て、確固たる採点の仕組みを作って選抜を行うことの方が大切である。
○
答案の写しを受検者に返却することにより、教員に緊張感をもって採点させること
ができ、画期的である。しかし、各高校で採点基準が異なることにより問合せが多く
なるなどのデメリットもあると思う。時間を要さないなら、問題ごとの採点結果を開
示して、内容に疑問があれば、受検者から答案の開示請求を受け、情報提供に対応す
る方法も考えられる。
○
採点の誤りの対応策ではなく、結果に対する開示説明と考えて、全員に返却するの
ではなく、開示請求があれば対応する。採点は、高校が責任をもって行うもので、生
徒の知る権利に対する説明と捉えた方がよい。
○
会計士試験のように、「5点足りませんでした」、「10点足りませんでした」とい
った不合格だった理由を結果として示す方法もあると思う。
(5) 答案の保存期間の延長について
○
子供たちが3年間その高校に通うことを考えれば、入学者の情報として持っている
ことに差し支えないことだと考える。
○
保存期間を延長するならば、情報の管理を徹底することで実現してほしいと思う。
○
答案の保存期間の延長については、情報開示に対する備えを趣旨に、保存できるの
であれば3年間が良いと思う。
(6) 合格ボーダーラインにいる受検者の答案再点検について
ボーダーラインの上下何点かの受検者を、徹底的に点検するならば、総時間を考え、
○
照合・点検作業は、もう少し早く行っても高い精度でできると思う。
○
ボーダーラインから一定の範囲内にいる受検者の答案を再点検することは、誤って
不合格になった受検者を救える可能性あるので、大切なことだと思う。
○
答案を再点検を自校で行うのではなく、第三者機関が行うようにすれば、非常に実
効性があると思う。また、この再点検は、合格発表前に行うことが理想だと考える。
○
合格ボーダーラインから一定の範囲内にいる受検者の答案を再点検することは、非
常に有効だと思う。また、この再点検は合格発表前に、可能ならば外部が良いが、例
え内部であっても行うべきである。
○
合格発表後に追加合格を出すことは、絶対に防がなければならないことである。合
格ボーダーラインから一定の範囲内にいる受検者の答案再点検は、合格発表前に行い
たい。
(7) その他
○
記号選択式の採点方法には、読み上げ方式による採点のほかにマークシートという
選択肢もあるのか。
○
マークシート方式や電子採点は、東京都の採点期間の中で実施することができるか。
○ グループ合同選抜制度のときには、他の学校の教員が見ているから、採点を間違え
たら恥ずかしいとか、2検、3検のときに間違いを見付けてやろうとかというような
意識があったと思う。周囲を意識していたので、緊張が切れたり、疲れたりしている
様子も見え、休憩を勧めることもできた。
○
採点の誤りの改善策として、自校による採点ではなく、複数の高校による合同の採
点ということは考えられないのだろうか。採点業務に対する意識や慣れに対し、第三
者の立会いなど、他の目を意識することも必要だと考えられる。
○ 採点業務の様子を管理職が見に行くと、同じ学校の教員でも、よい意味での緊張感
が生まれる。疲れている様子であれば、休憩を取らせることもできる。進行管理を行
うことは管理職の責任である。
○
採点者が読みづらい字を受検者が書いた場合、どのように判断していくかが課題で
ある。
○
国語の 200 字の作文等について、問題は同じでも、学校によって採点基準が異なる
現状がある。採点者の主観的な部分を全く排除して採点することは難しく、一つ一つ
を緻密に揺れがないように時間をかけて行う必要がある。
第七回 都立高校入試 調査・改善委員会
議事要旨
1
日時
平成26年8月8日(金)午後5時30分から午後7時30分まで
2
場所
東京都庁第二本庁舎31階 特別会議室21
3
議事
課題の整理と課題解決の方策②(案)
4
出席者
高野敬三委員長、 堤雅史副委員長、 上野淳委員、
鵜川正樹委員、 小田原榮委員、
近藤麻紀委員、
石井和宏氏(宮崎志郎委員代理)、
石井良典委員、 神田正美委員、
大野弘委員、
宮本久也委員、
岩田暁委員、
加藤裕之委員、 早川剛生委員、
5
守屋一幸委員、
金子一彦委員、
松山英幸オブザーバー
発言要旨
(1) 採点・点検方法の抜本的な見直しについて
○
合否のボーダーラインにいる受検者の答案再点検については、セーフティーネット
という観点から、合格発表後の追加合格を防止するために、発表前に実施すべきであ
る。
○
記号選択式問題について、記号がカタカナでは、受検者の文字の癖によって「ア」
と「イ」、「イ」と「ウ」の区別が難しく、採点や点検で誤りやすいと思う。また、問
題の(1)から(3)までの答えを「アエウ」と記憶して採点しているうちに、「アウエ」
と記憶がすり変わってしまう可能性がある。
採点・点検の時間を確保するために、学力検査当日から合格発表までの期間を延ば
○
すのは大切なことだと思うが、その分合格発表が遅くなる。受検生や保護者としては、
合格発表が遅くならないように考慮していただきたい。また、検査日を2月24日よ
りも前に設定することについて検討いただきたい。
○
読み上げ方式による採点では、得点記入欄に点数を記入することが難しいのではな
いかと思う。また、読み上げ方式だけで採点と点検を実施したときに、読み上げを聞
き間違えたり、読み上げを無視して採点・点検を行ったりするなど、新たな課題が生
じる場合もあって不安がある。
○
従来の点検が機能しなかった理由の一つに、同じ方法による点検を繰り返したこと
があると思う。提案にある採点と2回の点検も、読み上げという作業を繰り返してお
り、十分に機能しないのではないか。
○
読み上げ方式のみで採点・点検を行うのではなく、従来の目視による採点・点検と
読み上げ方式による採点・点検と異なる方法を併用するのがよいと思う。
○
同じ方法を繰り返し行う点検について誤りの傾向を調べる実験の結果として、3回
同じ方法で点検したときに、1回目よりも2回目の点検の方が間違いが多いというデ
ータが出ている。ほかに様々な条件が絡んでくるが、2回目の点検は、1回目の点検
とは異なる方法を用いることが効果的であると言える。
○
従来の目視による採点を行う場合、模範解答を透明シート等に印刷し、受検者の解
答と重ねて比べることで解答の正誤を確認する方法もあると思う。
○ 1回目の点検について、単純な記述問題と作文などのような比較的採点に時間がか
かる記述式問題の点検のそれぞれに、どの程度の時間を要するのかを考えておく必要
がある。
○
聞き取りを行った都立高校の教員の話によると、採点は時間をかけて行うものの、
点検は採点委員の教員が確実に採点していると思い、あまり時間をかけずに行ってい
る。このことが採点の誤りの原因の一つだと考えている。そのため、採点と点検に同
程度の時間をかけた方が良いと考える。
記述式問題においても語句を書くような問題については、二系統で採点・点検を行
○
い、突き合わせることで十分に確認ができると考える。作文のような幅広い解答ある
問題については、二系統の採点結果を突き合わせ、採点結果に差がある場合、採点の
根拠を協議するのがよいと考える。ただし、ある程度の採点基準を都教育委員会が示
す必要はあると思う。
○
1系統の採点・点検の場合、採点した後、読み上げ方式で点検を先に行った採点結
果に引きずられてしまい、効果が上がらないと思う。それに比べて、2系統の採点・
点検は、4人がそれぞれ解答用紙を確認するため点検を4回することと同じであり、
その結果を突き合わせて同じ採点結果になれば、ほぼ間違いはないと考えてよいと思
う。
○
採点・点検は、丁寧に行うことに越したことはないが、方法の改善に伴って、教員
を疲れ果てさせ、緊張感がなくなるようなことがないようにする必要がある。
○
2系統の採点とその突き合わせでの点検という方法を行えば、採点の誤りを大分防
げると思う。2系統の採点・点検に要する時間と、更に点検を1回入れることが時間
的に可能かどうか試算してほしい。
(2) マークシート方式とデジタル採点の導入について
○ 記述式問題については、コンピュータ上で採点を行うよりも、従来どおり解答用紙
に教員が一つ一つチェックして採点する方がよいと思う。
○
マークシート方式で記号選択式問題を採点することは賛成である。記号選択式の採
点に割いていた労力がなくなる分、記述式問題の採点に集中でき、採点の精度は向上
すると思う。
デジタル式の採点は、点数の集計作業と記号選択式問題の採点がいらないため、効
○
率的で、正確な採点が行えると思う。
○
記述式問題の採点をデジタル式で行えば、複数の採点者が同時に同じ画面を見て採
点したり、持ち点方式によって採点したりするなど、様々な工夫ができると思う。
○
マークシート方式、デジタル採点共に、採点や点数の集計の誤りが少ないという点
で非常に良い案だと思う。デメリットとして、多額な導入経費が挙げられるが、記号
選択式問題だけマークシートを導入し、記述式問題は従来どおり教員が採点すること
で経費が抑えられないか。
○
マークシート方式を導入するのであれば、受検生にとって分かりやすい形式の答案
用紙を作成し、混乱がないようにしていただきたい。
○
マークシート方式を導入することにより記述式問題の採点に専念できることは、教
員にとってありがたいことだと思う。
○
マークシート方式、デジタル採点の導入に当たっては、教員に改正の趣旨を丁寧に
伝え、入学者選抜を良い方向に変えていく改善であることを理解してもらうことが必
要である。
○
マークリーダーが、入学者選抜のときだけに使用する機器であるならば、経費等を
考えると一般企業では導入しない。導入するのに多額の経費が必要ならば、入学選抜
以外の有効な活用方法や、外注することも考えた方がよいと思う。
(3) その他
○
採点者が受検番号を見られることについて、解答用紙の右上に受検番号の記入欄を
設け、上部3か所ぐらいをステープラでとめると採点者が受検番号を見ることなく採
点することができる。
○
入学者選抜制度について、教育庁と都立高校、学力検査問題作成者と採点者という
立場で、意見交換や情報交換を行うとともに、採点・点検業務で時間をどのぐらい要
したかなどの実態調査を定期的に行っていくとよい。
第八回 都立高校入試 調査・改善委員会
議事要旨
1
日時
平成26年8月22日(金)午後3時から午後5時まで
2
場所
東京都庁第二本庁舎31階 特別会議室27
3
議事
東京都公立高等学校長協会からの提言
都立高校入試 調査・改善委員会報告書(案)
4
出席者
高野敬三委員長、 堤雅史副委員長、 上野淳委員、
鵜川正樹委員、 小田原榮委員、
近藤麻紀委員、
宮崎志郎委員、
榎本智司委員
石井良典委員、 神田正美委員、
大野弘委員、
宮本久也委員、
守屋一幸委員、 岩田暁委員、
加藤裕之委員、 早川剛生委員、
5
金子一彦委員、
松山英幸オブザーバー
発言要旨
都立高校入試 調査・改善委員会報告書(案)について
(1) 第Ⅰ章
○
本委員会設置の理由
について
追加合格となった生徒の中には、本来合格であったにもかかわらず不合格とさ
れていた生徒と、合格者の中に本来不合格であった生徒がいたことにより、繰り
上がりで合格となった生徒がいる。その内訳を明らかにする必要はないか。
○
平成23年度実施分の答案を点検した第三次調査の記載があるが、合格者の答
案を東京都教育委員会が点検した第二次調査も行っている。このことを追記する
必要はないか。
(2) 第Ⅱ章
特になし
調査結果からみた誤りの内容
について
(3) 第Ⅲ章 誤りの原因と課題の考察 について
つづ
○ 「解答用紙綴り」の押印欄の押印についてだが、採点、点検した教員が他の教
員の印を押印しているなど、運用面で適正に実施されているかどうかについても
問題があった。このことについて触れておく必要があると思う。
○ 「短期記憶の入れ替わり」という表現があるが、短期記憶の特徴としてあげら
れるのは、短い時間しか脳に記憶できないということである。
「入れ替わり」とい
う表現が適切であるかどうか確認する必要がある。
○ 冒頭にある「答案を採点する教員の意識の問題」について、本委員会で議論し
た教員の意識に関する具体的な内容を追記する必要がある。
○ 「その他(答案の廃棄について)」が、今回の採点誤りに対する教員の意識を象
徴的に示していると思う。調査途中の答案を校長の判断で廃棄したという認識の
甘さが、教員の意識にも影響しているのではないか。
○ 教員の意識に関しては、非常に気になっていた。報道等でマークシート方式が
大きく取り上げられたが、現場から機械に頼るのではなく、我々に任せてほしい
という声は出なかったと聞く。教員のプライドの問題も一方ではあるのではない
か。
(4) 第Ⅳ章
○
再発防止・改善の方向性と具体的改善策
について
採点・点検に専念できる十分な時間と環境を確保することから再発防止・改善
策を構築しているが、新たに2系統で採点・点検を行うことやボーダー点検を行
うことが時間を圧迫することにならないか。実施可能なのであれば、時間を確保
しつつ、2系統の採点・点検とボーダー点検が可能であることを記載する必要が
あるのではないか。
○
記述式問題の採点基準作成がタイムプレッシャーの発生要因となっていたこと
から、部分点の与え方についても言及した方がよい。
○
マークシート方式の導入に当たっては、解答用紙の様式例などを示す必要がな
いか。また、マークシート方式の解答用紙を作成するときには、受検者の負担に
ならないように、受検者の立場に立った改善が大切であることも明記した方がよ
い。
○ 採点者と点検者が異なることもイメージ図だけではなく明記した方がよい。
○
今後の検討課題として、答案全体をデジタル化して採点する方式について触れ
た方がよい。特に、記述式問題に関して、デジタル採点の可能性について今後の
課題として入れたほうがよい。
○
2系統の採点・点検のイメージ図にある採点後の点検は、2系統で行った場合
必要ないのではないか。
○ 採点・点検期間中の時間割のようなイメージ図があった方がよい。
つづ
○ 「解答用紙綴り」の改善後のイメージ図があるが、3回の点検を行うようにな
っている。今回の採点・点検方法の改善に合わせてイメージ図も変えた方がよい。
○
報告書の本文中に「校長協会の提言を踏まえた」という記述が何か所か出てく
るが、必要だろうか。入れるべきかどうかについて検討していただきたい。
○ 再発防止・改善策の視点として「採点・点検に対する意識を高める」とあるが、
このことが今後重要になってくると考える。再発防止のための仕組みはかなり精
査されてきた。あとは、実際の採点・点検を行う教員に内容等を十分理解しても
らう手立てが必要となる。
○
改善の趣旨などの周知方法について、方策としては盛り込めないかもしれない
が、採点・点検者の意識を高めていく上では、一番重要な点であると考える。
○
教員研修の内容については、入試の採点・点検に絞るのではなく、日常の教育
活動における子供たちに対する評価の重要性など、広い視点からの内容にすべき
である。日常の教育活動におけるテストなどを通して行う評価をきちんと実施し
ていくことが、入試における採点・点検に結び付くのだということを伝えていく
べきである。
○
東京都教育委員会が作成する「採点・点検実施要項」に明記された入試におけ
る採点・点検業務の重要性について、各学校で作成する実施要領においても明記
し、全教職員に周知することが大切である。
(5) 第Ⅴ章
○
セーフティネットの構築について
受検者から採点について疑義があった場合、学校における再点検は必要である
が、東京都教育委員会も関与する形をとった方が、自己検証の公正さが担保され
ると考える。
(6) 第Ⅵ章
○
再発防止・改善策の効果検証
について
この先2年間か3年間は、オンサイトで高校現場におけるヒアリングを行い、
再発防止・改善策の実効性及び効果についてモニタリングをする必要がある。そ
の結果に基づき、さらに改善する努力を継続してほしい。
○
効果検証に言及することは大変よい。効果検証を実施する主体を明確に示した
方がよりよい。
参
考
デ
ー
タ
東京都教育委員会が定める採点・点検に関する規定
【東京都立高等学校入学者選抜実施要綱における規定】
第2-9 採点
学力検査に基づく選抜を実施する各都立高校の全日制課程及び定時制課程に、採点委員会を置く。
(1) 採点委員会に委員長を置く。委員長は、当該都立高校長とする。
(2) 採点委員会は、当該都立高校長並びに当該都立高校長が指定する副校長、主幹教諭、主任教諭、教
諭及び日勤講師をもって組織する。
(3) 採点委員会は、当該都立高校で実施した検査の答案等の採点を行う。
(4) 委員長は、委員を指揮監督し、採点についての責任を負う。
(5) 委員長は、検査教科ごとに採点委員のうちから教科の採点責任者を命ずる。
【東京都立高等学校入学者選抜要領における規定】
入学者選抜業務を行うに当たっては、以下の事項について特に配慮する。
Ⅰ 選考のための組織及び実施計画等
各都立高等学校の校長は選考委員会を置き、職務内容を明確にした運営要領等を作成し、業務を遂
行する。
校長は入学者選抜業務を管理、監督する。副校長は選考業務を統括し、経営企画課(室)長は受付
業務を統括する。
2 実施計画の作成
各都立高等学校の校長は、募集区分ごとの入学者選抜業務の実施計画を作成する。
例 校長は、平成26年度東京都立高等学校入学者選抜実施要綱・同細目(以下「実施要綱」と
いう。)に基づき、募集区分ごとの選考委員会の日程、職務内容、担当教職員氏名等を明記し
た「推薦選抜実施要領」、「学力検査実施要領」、「集団討論・個人面接実施要領」、「小論文
実施要領」、「作文実施要領」、「実技検査実施要領」、「面談実施要領」等を作成し、これら
の各要領に沿って業務を進める。
【東京都立高等学校入学者選抜学力検査における採点等の注意について】
3 採点の正確さ・公平さの確保について
(1) 採点は、全て採点基準に従って行う。
(2) 採点に先立って、採点委員長と採点責任者及び採点委員は、採点の細部についての打合せを行い、
正確で公平な採点が行われるよう共通理解を図る。
(中略)
(4) 採点は、結果の転記を含め、各段階とも3回以上の点検を確実に行い、正確さを確保する。
採
点
誤
り
の
要
因
他道府県の検査翌日から合格発表までの期間
12
10
他道府県の数
10
9
8
6
6
5
4
4
3
2
2
2
2
0
0
9
10
1
1
12
13
0
1
2
3
4
5
6
7
8
11
検査翌日から合格発表までの日数
※
非公表の県があるため、合計は46道府県にはならない。
採
点
誤
り
の
発
生
採点日(2月25日)の状況と誤りの発生件数
状
況
3回の点検が機能しなかった理由について
聴き取り調査より(誤りのあった学校の管理職、教務・入選担当(複数回答可)
)
聴き取り調査より(誤りのあった学校の採点委員(複数回答可)
)