鉄筋コンクリート造柱梁接合部の CFRP による新耐震補強 - 塩原研究室

鉄筋コンクリート造柱梁接合部の CFRP による新耐震補強工法
正会員
同
鉄筋コンクリート
炭素繊維
柱梁接合部
終局モーメント
○楠原 文雄*1
田尻 清太郎*3
正会員
同
塩原 等*2
福山 洋*4
耐震補強
1. はじめに
近年,鉄筋コンクリートの高層化に伴う高強度材料の
限られており,実用的な工法はまだないとされている[3]。
利用により断面サイズの縮小化の傾向が進み,また,腰
用いた実用的で新しい柱梁接合部の耐震補強工法を考案
壁,垂壁,袖壁のような二次部材が構造部材の間に完全
し,その有効性を実験的に確認したので報告する。
本研究では,このような困難を克服するために CFRP を
スリットが設けて切り離されることで,相対的に柱梁接
合部が弱点となる設計が生じる可能性が高くなってきた。 2. 耐震補強工法の概要
そのため,日本建築学会は靭性保証型耐震設計指針[1]な
柱梁接合部の耐震補強は,柱接合部の終局強度と部材
どを示して柱梁接合部の耐震規定を導入し,2007 年の改
端力の相互作用の理論[4][5][6]に基づいて,柱梁接合部の
正建築基準法施行令の施行により柱梁接合部の耐震設計
柱軸方向の受動拘束効果を増加させることにより接合部
の必要性がより明確にされた[2]。その結果,既存鉄筋コ
の終局抵抗モーメントを大きくできるとする考え方によ
ンクリート建物の一定規模以上の増改築では柱梁接合部
る。これは図 1 に示すように,ひび割れに分割された 4
も現行法令に適合することが求められることとなり,柱
つの三角形の部分が相互に回転移動して生じる接合部の
梁接合部の合理的で実用的な耐震補強工法の開発が急務
変形に対して,上下の柱を弾性材でつないで拘束するこ
とされている。
とで,接合部の変形の増大に伴って生じる拘束力により
柱梁接合部の耐震補強には,既存柱の外側に柱断面を
抵抗モーメントを大きくするものである。
増して柱主筋を配置し,柱の有効な断面を増大させる方
補強材料には,施工が比較的容易な CFRP を用いる。ま
法があるが,建築意匠上の変更を伴う大掛かりな工事と
た,接合部域では直交梁も含む梁を避ける形で炭素繊維
なる上,これらの補強方法の有効性や補強による性能向
を束ねて柱断面 4 隅に配し,端部は扇状に広げて柱上の
上の定量的評価方法についての知見はきわめて少ない。
炭素繊維シートに貼り付ける。具体的には,本実験では
また,梁主筋を切断するなどして柱梁接合部への入力せ
CF アンカーを用いた。また,炭素繊維を束ねることでス
ん断力を減らす方法が考えられるが,架構の強度が減少
ラブがある実構造物でもスラブに穴を開けることで容易
する上その補強効果の有効性に関する定量的評価方法は
に適用が可能となっている。補強工事手順を図 2 に示す。
ない。柱や耐震壁では CFRP(炭素繊維補強プラスチック
ための柱梁接合部へのアクセスは一般に困難であり,ス
3. 実験概要
3.1 試験体概要
試験体は 1/3 スケールの平面十字形部分架構とし,梁幅
ラブや直交梁の影響で可能な補強材の配置方法は極めて
の異なるもの(柱と同幅および柱幅の 1/2)を各 2 体ずつ,
ス)を用いた耐震補強工法が実用化しているが,柱梁接
合部の場合にはスラブや直交梁が接続しており,工事の
CFࠕࡦࠞ࡯
拘束ばね
CFࠕࡦࠞ࡯
ഀࠅⵚߌ㒐ᱛ↪
ࡄࠗࡊ
ᩇ๟ᣇะਅ⾍CFࠪ࡯࠻
ᩇᦛߍ⵬ᒝ↪CFࠪ࡯࠻
図 1 接合部の変形と
モーメント抵抗機構
図2
CFࠕࡦࠞ࡯೸㔌㒐ᱛ↪
ࠬ࠻࡜ࡦ࠼
CF アンカーを用いた補強手順
New Seismic Retrofit Scheme for Reinforced Concrete Beam-Column Joints
using CFRP Composites
KUSUHARA Fumio, SHIOHARA Hitoshi,
TAJIRI Seitaro and FUKUYAMA Hiroshi
計 4 体製作した。同一試験体のうち 1 体は耐震補強試験
は加えていない。層せん断力はロードセルにより測定し
体,他方は比較の無補強試験体とした。
た PC 鋼棒の引張力から求めた。
試験体の諸元を表 1 に,形状・寸法を図 3 に示す。試
加力は正負交番漸増振幅繰り返し載荷とし,梁端の曲
験体 C02,C04 が補強試験体である。柱断面は共通で,引
げひび割れ発生荷重計算値の 1/2 で正負に加力した後,無
張主筋比は 1.22%である。試験体 C01,C02 の梁幅は柱と
補強試験体は層間変形角 3.0%まで,補強試験体は層間変
同幅とし 240(mm),試験体 C03,C04 では柱幅の 1/2 であ
形角 4.0%まで変形制御により加力した。載荷履歴を図 6
る 120(mm)とした。梁の他の諸元は共通とし,引張主筋
に示す。
比は 1.31%(試験体 C01,C02)および 2.62%(試験体
C03,C04),有効せいの断面せいに対する比は 0.84 であ
る。使用するコンクリートと鉄筋は普通強度とした。材
料試験結果を表 2 に示す。
材料試験結果を用いると,梁が柱と同幅の試験体 C01,
4. 実験結果
4.1 破壊状況
写真 1 に層間変形角 3.0%のサイクル終了時の破壊状況
を示す。
C02 の主筋降伏時の接合部せん断力は学会靭性保証型設計
いずれの試験体も層間変形角 0.25%の加力サイクルで梁
指針の接合部せん断強度に対して 0.91 倍(せん断余裕度
端の入隅部から斜め方向にひび割れが発生した後,梁幅
1.10),梁幅が柱幅の 1/2 である試験体 C03,C04 の梁主筋
降伏時の接合部せん断力は接合部せん断強度の 1.23 倍で
ある。また,平面保持を仮定した断面解析による柱の曲
げ終局強度の梁曲げ終局強度に対する比は,試験体 C01,
0.76 本分に相当する。
3.2 加力方法
加力装置を図 5 に示す。試験体は PC 鋼棒により加力フ
レームに緊結する。載荷は両端ピン接合の柱により支持
された上部加力梁の南端の油圧ジャッキにより水平力を
加え,加力フレームの水平変形により地震時の架構内で
C03
120×240(mm)
3+2-D13(SD345)
同左
pt =1.31(%)
pt =2.62(%)
b×D=240×240(mm)
柱 断面
引張主筋
5-D13(SD345)
,pt =1.22(%)
炭素繊維シート
-
300g/m2×2 層 -
表2
使用材料の特性
コンクリート
鉄筋
圧縮強度
種別
引張割裂強度
(MPa)
(MPa)
31.0
2.47
D13(SD345)
降伏強度
引張強度
(MPa)
(MPa)
378
D6(SD295A) 399※
※ 0.2%オフセット耐力
⵬ᒝ⹜㛎૕(C02,C04)㕙ขࠅ
R2
24
0
5-D13(SD345)
240
192
5-D13(SD345)
240
ធวㇱᮮ⵬ᒝ╭
2˜‫غ‬-D6(SD295A)
(න૏:mm)
700
240
24 36 120 36 24
700
230
ᩇᢿ㕙(౒ㅢ)
CFࠕࡦࠞ࡯
24Kࠬ࠻࡜ࡦ࠼˜96ᧄ
500
24
700
ᩇ࡮᪞ߖࠎᢿ⵬ᒝ╭
‫غ‬-D6@50(SD295A)
3+2-D13
(SD345)
3+2-D13
240
120 (SD345)
C01,C02 C03,C04
᪞ᢿ㕙
ᩇ๟ᣇะCFࠪ࡯࠻
ਅ⾍
300g/m2˜1ጀ
ᩇゲᣇะCFࠪ࡯࠻
300g/m2˜2ጀ
700
図 3 試験体の形状・配筋
300g/m2×2 層
(軸方向)
接 横補強筋
2×□-D6(SD295A),pw=0.33[%]
合 炭素繊維ストランド
-
96-24K ストランド
-
96-24K ストランド
部
(鉛直方向)
×4 箇所
×4 箇所
b:幅,D:せい,pt:引張主筋比,pw:せん断補強筋比
の変形に相当する変形を試験体に生じさせる。柱に軸力
タ⩄ὐ
C04
b×D=240×240(mm)
りの繊維量は,3400MPa 級の 24K ストランドを 96 本とし
効ひずみ 0.7%に相当する引張強度),ヤング率換算では
C02
梁 断面
試験体 C02,C04 に対する耐震補強の概要を図 4 に示
素繊維の強度はヤング率を 230(GPa)とした炭素繊維の有
C01
梁スパン×柱スパン=1400×1400(mm)
引張主筋
た。柱主筋に用いた鉄筋に対して強度換算で 2.8 本分(炭
試験体の諸元
反曲点間距離
C02 で 1.03,試験体 C03,C04 で 1.10 である。
す。接合部域での柱 4 隅のストランドのうち 1 箇所あた
表1
図4
試験体の補強の概要
551
530
2850
500kNᴤ࿶ࠫࡖ࠶ࠠ
෻ജࡈ࡟࡯ࡓߦធ⛯
ടജ᪞
ࡠ࡯࠼࠮࡞
Pv2
⽶
ᱜ
᳓ᐔജ
dh1
਄ᩇ
Pv4
4.0 Qc㧦ᩇ࡮᪞┵ㇱᦛߍ߭߮ഀࠇ⊒↢ᤨ
3.0 ‫ޓޓ‬ጀߖࠎᢿജ⸘▚୯
dv1
Lb=1400
ർ᪞
⃿㕙ᐳ㊄
Lc
PC㍑᫔
Lc=1400
2000
ࡇࡦ
ർ᪞
ධ᪞
⹜㛎૕
ධ᪞
dv2
ਅᩇ
dh2
ጀ㑆ᄌᒻⷺߩ᷹ቯᴺ
Pv1
N
㧔න૏:mm㧕
Pv3
෻ജᐥ
図5
ጀ㑆ᄌᒻⷺR(%)
⃿㕙ᐳ㊄
2.0
1.0
0.0
-1.0
0.5Qc
1/400
-2.0
-3.0
1/200
1/100˜2
1/50˜2
1/33˜2
-3.0
ጀߖࠎᢿജ㧦
{(Pv1-Pv2)+(Pv4-Pv3)}Lb
Qs =
Lc
dh1+dh2
ጀ㑆ᄌᒻⷺ㧦 R=
Lc
1
2
3
4
図6
加力装置
1/25˜2
9 10 11
⵬ᒝ⹜㛎૕ߩߺ
ടജࠨࠗࠢ࡞No.
5
6
7
8
載荷履歴
が小さく無補強の試験体 C03 を除いて同サイクルで対角
線方向に斜めひび割れが発生した。試験体 C03 では層間
変形角 0.5%のサイクルで対角斜めひび割れが発生した。
その後,層間変形角 2.0%の加力サイクルで接合部中央
でコンクリートの圧壊が始まり,3.0%の加力サイクルで
圧壊が顕著となり,補強試験体においても変形が大きく
なると接合部パネル中央での圧壊が進行した。
4.2 層せん断力と層間変形角の関係
図 7 に層せん断力と層間変形角の関係を,表 3 に実験
(a) 試験体 C01
(b) 試験体 C02
(c) 試験体 C03
(d) 試験体 C04
結果一覧を示す。図 7 には,平面保持を仮定した断面解
析で圧縮縁のコンクリートのひずみが 0.3%に達したとき
の曲げ終局モーメントを梁端から反曲点までの距離で除
して求めた梁曲げ終局時層せん断力計算値も示す。また,
図 7 中,補強試験体については無補強試験体の包絡線を
あわせて示した。
無補強の試験体 C01,C03 では,層間変形角 1.0~1.5%
写真 1
で接合部横補強筋,梁主筋,柱主筋が降伏した後,層間
変形角 1.5%および 2.0%で最大耐力に達した。最大耐力は
表3
梁曲げ終局時層せん断力計算値に対して試験体 C01 では
8%,試験体 C03 では 12%小さかった。
補強試験体では,接合部のひび割れ発生後の剛性が無
C01
C04
7.6
7.3
6.1
割れ
(梁端)
-6.6
-10.6
-4.3
-3.4
接合部対角
降伏
梁 1 段目
梁 2 段目
計算値まで達した。最大耐力が生じる層間変形角は試験
体 C02 の負側を除いて 3.0%と大きかった。
履歴特性はいずれの試験体もエネルギー吸収能力に乏
柱
しいスリップ形だったが,補強試験体ではややふくらみ
が大きかった。図 8 は実験により得られた層せん断力と
層間変形角の関係から求めた等価粘性減衰定数で,特に
なった。
C03
10.4
小さかった。最大耐力はほぼ梁曲げ終局時層せん断力の
補強の効果により等価粘性減衰定数も 1.3 倍程度に大きく
C02
接合部入隅
じたが,降伏時の層間変形角は無補強試験体のそれより
同振幅の加力サイクルのうち 2 回目の加力サイクルでは
実験結果一覧
ひび
補強試験体より大きく,それぞれ無補強試験体とほぼ同
じ層せん断力で接合部横補強筋および梁主筋の降伏が生
破壊状況(層間変形角 3.0%)
接合部
横補強筋
最大
24.5
14.1
19.9
17.9
-14.9
62.5
(1.00)
-61.4
(-0.95)
72.0
(1.30)
-64.0
(-1.15)
72.0
(1.30)
-64.0
(-1.15)
57.8
(0.90)
75.3
(1.50)
-73.4
(-1.50)
-12.6
67.5
(1.00)
-62.4
(-0.80)
73.0
(1.21)
-75.1
(-1.92)
75.5
(1.71)
-75.1
(-1.92)
-56.7
(-0.70)
80.5
(2.92)
-77.8
(-1.53)
-29.4
61.4
(1.41)
-62.1
(-1.40)
63.1
(1.75)
-56.8
(-1.20)
57.7
(1.30)
-56.8
(-1.20)
-49.4
(-0.90)
67.4
(2.00)
-65.8
(-2.01)
-16.1
61.5
(1.16)
-58.9
(-0.95)
67.3
(1.35)
-67.7
(-2.33)
55.1
(2.60)
-67.7
(-2.33)
48.7
(0.76)
76.4
(3.01)
-74.2
(-3.01)
上段:層せん断力(kN),下段:層間変形角(%)
100
ᦨᄢጀߖࠎᢿജ75.3kN
ᩇਥ╭㒠ફ
᪞2Ბ⋡ਥ╭㒠ફ
᪞1Ბ⋡ਥ╭㒠ફ
᪞2Ბ⋡ਥ╭㧘ᩇਥ╭㒠ફ
60
᪞1Ბ⋡ਥ╭㒠ફ
0.3
ធวㇱᮮ⵬ᒝ╭㒠ફ
40
ጀߖࠎᢿജ(kN)
0.4
ᦨᄢጀߖࠎᢿജ80.5kN
20
0
-20
ή⵬ᒝ⹜㛎૕(C01)൮⛊✢
╬ଔ☼ᕈᷫ⴮ቯᢙ
80
᪞ᦛߍ⚳ዪᤨጀߖࠎᢿജ⸘▚୯ 80.5kN
-40
0.1
᪞1Ბ⋡ਥ╭㒠ફ
ᩇਥ╭㒠ફ
᪞2Ბ⋡ਥ╭㒠ફ
-60
-80
-100
C01
ᩇਥ╭㒠ફ
⽶஥ᦨᄢጀߖࠎᢿജ-73.4kN
-4
-3
-2
-1
0
1
2
3
C01(1st)
C01(2nd)
C02(1st)
C02(2nd)
ធวㇱᮮ⵬ᒝ╭㒠ફ
᪞1Ბ⋡ਥ╭㒠ફ
C02
᪞2Ბ⋡ਥ╭㒠ફ
4
-4
-3
0.0
0.0
⽶஥ᦨᄢጀߖࠎᢿജ-77.8kN
-2
-1
ጀ㑆ᄌᒻⷺ(%)
0
1
2
3
2.0
3.0
ጀ㑆ᄌᒻⷺ(%)
4.0
ጀ㑆ᄌᒻⷺ(%)
0.4
ᦨᄢጀߖࠎᢿജ76.4kN
ᦨᄢጀߖࠎᢿജ67.4kN
80 ᪞ᦛߍ⚳ዪᤨጀߖࠎᢿജ⸘▚୯ 75.4kN
᪞2Ბ⋡ਥ╭㒠ફ
60
᪞1Ბ⋡ਥ╭㒠ફ
᪞2Ბ⋡ਥ╭㒠ફ
᪞1Ბ⋡ਥ╭㒠ફ
ᩇਥ╭㒠ફ
0.3
ធวㇱᮮ⵬ᒝ╭㒠ફ
20
ᩇਥ╭㒠ફ
0
ή⵬ᒝ⹜㛎૕(C03)൮⛊✢
-20
ធวㇱᮮ⵬ᒝ╭㒠ફ
ᩇਥ╭㒠ફ
᪞1Ბ⋡ਥ╭㒠ફ
C03
᪞2Ბ⋡ਥ╭㒠ફ
-40
-60
-2
-1
0
1
2
3
4
-4
-3
-2
-1
ጀ㑆ᄌᒻⷺ(%)
図7
C03(1st)
C03(2nd)
C04(1st)
C04(2nd)
C04
ᩇਥ╭㒠ફ
⽶஥ᦨᄢጀߖࠎᢿജ-74.2kN
⽶஥ᦨᄢጀߖࠎᢿജ-65.8kN
-3
0.2
0.1
᪞1Ბ⋡ਥ╭㒠ફ
᪞2Ბ⋡ਥ╭㒠ફ
-80
-4
╬ଔ☼ᕈᷫ⴮ቯᢙ
40
ጀߖࠎᢿജ(kN)
1.0
4
100
-100
0.2
0
0.0
0.0
1
2
3
4
1.0
2.0
3.0
ጀ㑆ᄌᒻⷺ(%)
4.0
ጀ㑆ᄌᒻⷺ(%)
図8
層せん断力と層間変形角の関係
等価粘性減衰定数
5. まとめ
CFRP を用いた柱梁接合部の耐震補強工法を提案し,そ
氏には多くのご助言,ご助力をいただいた。補強材料は
の補強効果を 2 組の十字形部分架構の補強・無補強試験
研究の一部は東京大学大学院今村真之君が修士論文とし
体の比較により検証した。靭性保証指針による接合部せ
てまとめたものである。ここに記して謝意を表します。
日鉄コンポジット株式会社より提供を受けた。また,本
ん断強度に対する余裕度は 0.8 および 1.1 とした無補強試
験体の破壊モードは梁主筋の降伏を伴う接合部破壊であ
り,層せん断力の実験値は梁曲げ終局強度の 88~92%と
引用文献
[1] 日本建築学会:鉄筋コンクリート造建物の靭性保証型耐震設計指
針・同解説,日本建築学会,1999
なった。これに対して補強した試験体は,(1) 最大耐力が
[2] 2007 年版建築物の構造関係技術基準解説書,2007.8
6~13%増加し,概ね梁曲げ終局強度時の層せん断力まで
[3] Engindeniz, Kahn and Zureick (2005) Repair and Strengthening of
増加した。(2) 無補強試験体・補強試験体いずれも,履歴
Reinforced Concrete Beam-Column Joints: State of the Art, ACI Structural
性状はスリップ形で,補強によりややエネルギー吸収能
Journal, Vol. 102, No. 2, March-April 2005.
[4] 塩原 等:鉄筋コンクリート柱梁接合部:見逃された破壊機構,
力の向上がみられた。(3) 耐震補強により降伏時の剛性は
日本建築学会構造系論文集,Vol. 73,No. 631,pp. 1641-1648,2008.9
8~22%増大した,(4) 最大耐力付近では,補強しても接
[5] 塩原 等:鉄筋コンクリート柱梁接合部:終局強度と部材端力の
合部の損傷を減らす効果は得られなかった。
相互作用,日本建築学会構造系論文集,Vol. 74,No. 635,pp. 121128,2009.1
[6] 塩原等:鉄筋コンクリート柱梁接合部:梁曲げ降伏型接合部の耐
謝辞
本研究は国土交通省建築基準整備促進補助金事業, 震設計,日本建築学会構造系論文集,Vol. 74,No. 640,2009.6(掲
架構靭性の確保に必要な鉄筋コンクリート造柱梁接合部
載予定)
の設計因子に関する調査(事業主体:塩原等)により行
われた。試験体の耐震補強工事は清水建設株式会社の協
力により行われ,同社技術研究所 塚越英夫氏,池谷純一
*1
*2
*3
*4
東京大学大学院工学系研究科 助教・修(工)
東京大学大学院工学系研究科 准教授・工博
独立行政法人建築研究所 研究員・博(工)
独立行政法人建築研究所 上席研究員・工博
*1
*2
*3
*4
Assist. Prof., School of Eng., The Univ. of Tokyo, M. Eng.
Assoc. Prof., School of Eng., The Univ. of Tokyo, Dr. Eng.
Research Engineer, Building Research Institute, Dr. Eng.
Chief Research Engineer, Building Research Institute, Dr. Eng.