Creative Marketing 急成長する米国の CtoC サイト「Etsy」(エッツィー

Habitus EYE
VOL.29
2013/5/23
くらしの変化とマーケティング・トピックス
ハビトゥス(Habitus)とはラテン語で、習慣、行動様式、ものの見方、 感じ方などを意味しています。
魅力的な新事業を創造するには、これまでとは異なる新しい発想、アプローチが必要です。
Creative Marketing では、イノベーションや新事業開発に関連のある題材をとりあげます。
《今月のコンテンツ》
■Creative Marketing
急成長する米国の CtoC サイト「Etsy」(エッツィー)
ハンドメイド品を取り引きする CtoC サイト....................................................................................................... 1
急成長した背景には3つのポイント ................................................................................................................. 2
日本でも利用者が増えるハンドメイド品の CtoC サイト..................................................................................... 3
■ Creative Marketing
急 成 長 す る 米 国 の Ct oC サ イト 「 E t s y 」( エッツ ィ ー )
ハンドメイド品を取り引きする CtoC サイト
スマホやタブレットなどの普及により、EC(電子商取引)市場が急速に拡大しています。BtoC(企
業と個人)間の取り引きはもちろんのこと、CtoC(個人と個人)間での取り引きも拡がっています。
CtoC 取り引きというと中古品などをやりとりするオークションサイトを思い浮かべることが多いと思
いますが、最近注目されているのは、ハンドメイド品の取り引きを行っているサイトです。ハンドメ
イド品といっても、絵画や陶芸などのアート作品から、オリジナリティのあるアクセサリー、雑貨、
家具、ビンテージ品に至るまで、幅広い分野があります。
2005 年にスタートした米国の「Etsy(エッツィー)」
( www.etsy.com )は、ハンドメイド品専用
CtoC サイトの草分け的な存在です。創業者のロブ・カリン氏は、絵画や家具などを制作するアーティ
ストで、以前は自分の作品を eBay などのネットオークションサイトに出品していました。しかし、あ
らゆるものを取り扱う巨大サイトでは、自分の作品になかなか目を向けてもらえない。そこで、ハン
ドメイド品に特化したサイトを思いつきました。友人たちと一緒に、アーティストやクリエイターな
どのハンドメイド品のみを取り扱う会員制サイトを数か月で立ち上げました。初年度の売上はわずか
17 万ドルでしたが、その後、5 年で会員数(売り手と買い手双方)は 300 万人に増え、売上は 3 億ド
ルを突破しました。12 年に英語版サイトに加え、フランス語、ドイツ語、イタリア語版などのサイト
をオープンしたこともあり、いまでは世界各国で取り引きが行われ、会員数は対前年比 2 倍以上の
2,500 万人、売上高は7割増の 8 億 9,510 万ドル(約 900 億円)に達しています。
サイトの利用方法は簡単で、まず売り手と買い手ともに無料の会員登録を行います。売り手は出品
する際に1件につき 20 セント(約 20 円)の費用を支払い、商品が売れた場合、その価格の 3.5%を手
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数料として支払う仕組みになっています。通常の商品取り引きサイトにある、月決めの出店料などは
不要で、売り手にかかる費用は出品料と取引完了後の売買手数料のみ、と簡単かつ低コストで出店で
きる点が支持されています。
一方、買い手にとっても利用しやすい仕組みになっています。売り手である作家のプロフィールや
ブログを見たり、SNS でやりとりをしたりして、作品に込められた思いを確認しながら、大量生産品に
はない魅力あるハンドメイド品を選ぶことができます。また、アート作品、アクセサリーなどといっ
た商品分野、色味、価格帯、出店者の国籍や地域など、ジャンル別に見ることもでき、好みの作品を
自在に選ぶことができます。決済もクレジットカード、ペイパルなどの多様な選択肢があり、安全に
購入できる仕組みになっています。
売り手、買い手の双方にとって、利用しやすい仕組み、これが同サイトの人気の最大の理由になっ
ているようです。
急成長した背景には3つのポイント
同社のビジネスモデルは、ハンドメイド品という分野において、個人間で取り引きがしやすいプラ
ットフォームを提供したことです。その急成長の背景には、3つのポイントがあります。
1 つは、会員同士の距離を縮めるための様々な仕組みで、同社が最も力を入れているポイントです。
ネット上だけでなく、リアルの場の両方で、売り手と買い手、また、売り手である作家同士のコミュ
ニケーションを促す仕組みを提供しています。売り手と買い手のコミュニケーションについては、実
際に作家のアトリエを訪問して制作の様子を動画で配信したり、各地域に会場を借りて、売り手によ
る作品作りのワークショップなどを開催しています。作家同士は、ネット上に専用コミュニティ設置
したり、同社のオフィスを解放して、直接交流ができる場を設けています。特に作家同士のコミュニ
ケーションは、お互いの作品に刺激を受けたり、作品作りに関する技術や情報を交換することで、よ
りよい作品を制作してもらうという意図があります。この他、ネット上にはテーマ別にいくつものコ
ミュニティがあり、同社の社員が中心となって会員間のやりとりをフォローしながら交流を支援して
います。
2 つ目は、売り手である作家の育成と作品の販売支援です。売り手は、登録すると、分野やテーマ別
のネットのコミュニティや動画配信などを通じて、作品の作り方、商品企画、商品の見せ方、配送に
至るまで、きめ細かなアドバイスを受けることができます。アドバイザーは同社の社員、成功してい
る他の売り手、コミュニティに参加している買い手などで、様々な視点からのアドバイスを受けられ
ます。リアルの場では、
「Etsy Labs(エッツィーラボ)」と呼ばれるスペースが、本社のある米国のブ
ルックリンと、ドイツのベルリンに常設されているうえ、ロンドン、パリ、アムステルダムなどの各
地域ごとにも定期的に作家を支援する場が設けられています。
3 つ目は「Etsy(エッツィー)
」のブランディングです。同社は、自らを“Etsy is the marketplace
we make together”(エッツィーは、みんなでつくるマーケットプレイス)であると宣言しています。
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これには「Etsy(エッツィー)」の売り手と買い手は対等な立場にあり、ハンドメイド品、人の手で作
る温かみのある作品を大切にする人の集まりであるという意味合いが込められています。この思いを
会員間で理解、共有してもらうために、同社は出店作品、会員間でのやりとり、各コミュニティでの
発言などについて具体的な指針・ルールを設けています。これらにより一貫したブランドイメージを
保っています。「Etsy(エッツィー)」の活動を広く知ってもらうためにリアルの場でも積極的なプロ
モーションを行っていて、昨年末のギフトシーズンには、米国のソーホーで期間限定の店舗をオープ
ンして話題を呼びました。
日本でも利用者が増えるハンドメイド品の CtoC サイト
日本でもハンドメイド品を取り扱う CtoC サイトが、増えています。11 年にオープンした「tetote(テ
トテ)」をはじめ、12 年 10 月には NTT コミュニケーションズが立ち上げた「Creaco(クリエーコ)」
、
13 年 4 月からは、東急ハンズの「ハンズ・ギャラリーマーケット」がスタートするなど、国内でも 20
以上のサイトが立ち上がっています。100 万人の会員登録を目指す「Creaco(クリエーコ)
」は、作品
を取り引きする場の提供だけでなく、将来的に同サイトでの取り引きデータを蓄積し、属性別に売れ
筋傾向を分析し、そのデータをアパレル等の企業に提供するといったビジネスも考えているそうです。
ネットやソーシャルメディアの普及にともない、誰もが、情報を入手したり、発信できるようにな
った今、新たな価値を提供するビジネスは、企業を中心とした活動ではなく、企業と個人、個人と個
人など、
「共創」により生まれると言われています。1千億円企業に成長しつつある「Etsy(エッツィ
ー)
」のような CtoC サイトから生まれたビジネスも、その一つと言えるでしょう。今後も CtoC サイト
から、どのような新しいビジネスが生まれるか、注目していきたいと思います。
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【新井
佳美】
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