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腸内細菌解析用 T-RFLP キット
取扱説明書 ver.1
目次
ページ
1:キット概要
2
2:使用上の注意
2
3:キット構成
3
4:保存
3
5:本キット以外に必要な主な試薬、機器など
4
6:プロトコル
5-7
7:Q&A
8-10
1
1:キット概要
本 キッ トは 便 から 腸内 細 菌の 16S rDNA を対 象 とし た T-RFLP(Terminal Restriction
Fragment Length Polymorphism) 解析を行うためのサンプルを調製するキットです。
特別な組成の抽出液により、便を洗浄することなく DNA 抽出、PCR 増幅が可能となりま
す。また便を採取後、抽出液中で 1 ヶ月程度室温保存しても T-RFLP 解析結果は変わらない
ことを確認しています。
この抽出液とジルコニアビーズによる物理的な破砕、フェノールによる DNA 抽出を組み
合わせることにより、腸内細菌の中で優占している強固な細胞壁を持つグラム陽性菌から
の DNA 抽出効率を向上させています。
北海道立食品加工研究センターおよび株式会社テクノスルガ・ラボとの共同研究により
独自開発されたプライマーと制限酵素の組み合わせにより、ヒト腸内細菌の各系統分類群
(およそ属レベル程度)毎におおまかな相対比を表すことができるため、手軽に腸内の細菌群
集を推定し、その変化を視覚化・数値化することが可能です。
細菌群集を推定するためのヒト腸内フローラデータベースは当社ホームページ内(URL:
http://www.tecsrg.co.jp/t-rflp/)にてご覧頂くことができます。
2:使用上の注意
・ 本キットに含まれる試薬は、全て研究用試薬です。診断・臨床用試薬としては使用しな
いでください。本キットの使用に当たっては、実験室での一般の注意事項を厳守し、安
全に留意してください。
・ プロトコル記載内容と異なった取り扱いによるトラブルに関しましては、弊社では責任
を負いかねます
・ 本キットにはフラグメント解析以降の説明は含まれません。フラグメント解析以降の操
作につきましては、ご利用のフラグメント解析装置メーカーにご相談下さい。
・ 本キットに含まれるプライマーと制限酵素の組み合わせにつきましては、株式会社テク
ノスルガ・ラボ、北海道立食品加工研究センターが特許を共同申請中であり、本キット
にはライセンス使用権利が含まれています。本キットを使用せずに同様の手法を用いる
場合、使用目的により株式会社テクノスルガ・ラボ、北海道立食品加工研究センターの
許可が必要になる場合がありますのでご注意ください。
2
3:キット構成(50 回分)
常温保存品
DNA 抽出試薬
試薬名
容量
Beads Tube (ジルコニアビーズ入り)
50 本
10% SDS
5 ml
PCI(フェノール・クロロホルム・イソアミルアルコール混液(25:24:1))
25 ml
3M 酢酸ナトリウム
2.5 ml
イソプロパノール
25 ml
70% エタノール
50 ml
TE (pH8.0)
5 ml
‐20℃保存品
20℃保存品
DNA 抽出試薬
試薬名
容量
RNaseA(10 µg/ml)
25 µl
PCR 試薬
試薬名
容量
25µM 516fFAM 標識プライマー
20 µl
25µM 1510rプライマー
20 µl
制限酵素処理試薬
試薬名
容量
d.d.H2O
0.35ml
10×H Buffer
50 µl
BslⅠ
50 µl
4. 保存
RNaseA(10 µg/ml)以外の DNA 抽出試薬は 4℃で、RNaseA(10 µg/ml)・PCR 試薬・制
限酵素処理試薬は-20℃で保存してください。
10%SDS 中に結晶が析出する場合がありますが、品質に問題はありません。このような
場合には、60℃程度でインキュベートし、結晶を完全に溶解させてからご使用ください。
3
5:本キット以外に必要な主な試薬、機器など
<試薬・消耗品>
・ 便採取キット(テクノスルガ・ラボ)
・ 滅菌済み 15 ml 容遠心チューブ
・ 滅菌済み 1.5 ml 容パッキン付き遠心チューブ、または滅菌済み 1.5 ml 容スクリューキャ
ップ付き遠心チューブ
・ 滅菌水
・ 滅菌済み 1.5 ml 容のチューブ
・ 0.2 ml 容 PCR チューブ
・ CI(クロロホルム・イソアミルアルコール混液(24:1))
・ DNA 精製キット(推奨:High Pure PCR Template Preparation Kit(Roche)等)
・ PCR キット(推奨:HOT Goldstar(ニッポンジーン)、HotStarTaq(QIAGEN)等)
・ dNTPs (HotStarTaq(QIAGEN)を用いる場合必要となります)
・ PCR 産物精製キット(推奨:GFX PCR DNA and Gel Band Purification Kit
(GE ヘルスケア)、
QIAquick PCR purification kit(QIAGEN)等)
・ アガロース
・ CI(クロロホルム・イソアミルアルコール混液(24:1))
<機器>
・ ボルテックスミキサー
・ 細胞破砕装置(ミニビートビーター、FastPrep 等)
・ 遠心機(温度調節機能付)
・ 振とう培養機
・ デシケーター(乾燥用)
・ 分光光度計
・ サーマルサイクラー(推奨:GeneAmp PCR System9600 等)
・ 電気泳動装置(Mupid 等)
一般に会社名、製品名は各社の日本および各国での商標または登録商標です。
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6:プロトコル
Ⅰ
(
下線の試薬はキットに含まれます、注意点を太字で示します。
注意点を太字で示します。)
注意点を太字で示します。
糞便からの DNA 抽出
1)採便キットにより採取した糞便約 20mg~200mg を攪拌して均一になるまで懸濁します。
2)懸濁液 800 µl を Beads Tube に移します。
3)細胞破砕装置を用い振とうします(ミニビートビーターでは 5,000 rpm、180 秒間、
FastPrep では 5 m/S、180 秒間)。その後、氷上で 5 分間冷却します。
4)2,300×g (ローター半径 80 mm の場合、約 5,000 rpm)
注1
で 1 分間、4℃で遠心します。
5)上清の 500 µl を 1.5 ml 容パッキン付きチューブに取り、100 µl の 10% SDS 、500 µl
の PCI を加えます。(PCI を取り扱う際にはドラフト内で作業を行ってください。また
振とうの際に
振とうの際に PCI が漏れる可能性がありますので必ずパッキン付き、またはスクリュ
ーキャップ付きチューブを使用してください。)
ーキャップ付きチューブを使用してください。
6)60℃で 10 分間、振とう培養器等で激しく振とうします(シェイキングインキュベーター
SI-300(アズワン)の場合、2000rpm)。
7)20,000×g (ローター半径 80 mm の場合、約 15,000 rpm)で 3 分間、20℃で遠心します。
8)上清を 1.5 ml 容パッキン付き遠心チューブに取り、等量の CI を加えます。(中間層を吸
中間層を吸
わないよう注意してください。)
わないよう注意してください。
9)ボルテックスミキサー等を用いて 1 分間激しく振とうします(デルタミキサーSe-04(タ
イテック)等)。
10)20,000×g (ローター半径 80 mm の場合、約 15,000 rpm)で 1 分間、20℃で遠心します。
11)上清を回収し、50 µl の 3M 酢酸ナトリウム、500 µl のイソプロパノールを加え転倒混
和します。
12)20,000×g (ローター半径 80 mm の場合、約 15,000 rpm)で 10 分間、4℃で遠心します。
13)上清を捨て、チューブに 1 ml の 70%エタノールを加え、20,000×g で 5 分間、4℃で遠
心します。多くの場合、白い沈殿物が確認できますが確認できない場合も、チューブの
底に DNA が沈殿しているものとして注意深く上清を捨てます。)
14)エタノールを除去し、乾燥させます。(この時に完全に乾燥させると
この時に完全に乾燥させると DNA 沈殿物が TE
に溶解しにくくなる恐れがあります。)
に溶解しにくくなる恐れがあります。
15)DNA 沈殿物に 100 µl の TE 、0.5 µl の RNase A を加え溶解します。
16)37℃で 60 分間インキュベートします。
17)市販の DNA 精製キット(推奨:GFX PCR DNA and Gel Band Purification Kit(GE ヘル
スケア)、High Pure PCR Template Preparation Kit(Roche)等)で精製します。操作
については付属のプロトコルに従ってください。
18)DNA 量を分光光度計で測定し、滅菌水で 10 ng/µl 注 2 に調製します。
注1
換算式:rpm=1000×√g/1.12r (r=ローターの半径、mm)
注2
DNA 濃度(ng/µl)=ABS (260nm)×50
5
II
PCR による細菌の 16S rRNA 遺伝子の増幅
1)下の試薬を試料本数分+1 本分(陰性対照)をよく混合し、氷上に置いておきます。
(ここでは PCR キット HotStarTaq Polymerase(QIAGEN))の場合を示します。
1 試料当たり
17.4 µl
滅菌水
2.5 µl
10×PCR バッファー(15mM の MgCl2 を含む)
dNTPs(各 2mM)
2.5 µl (最終 0.2 mM)
注1
1.5 µl (最終濃度 3 mM)
25mM MgCl2
0.2 µl (最終 0.2µM)
注2
25µM 516fFAM 標識プライマー
25µM 1510r プライマー
0.2 µl (最終 0.2µM)
注2
0.2 µl (1 ユニット)
Taq DNA ポリメラーゼ(5 ユニット/µl)
2)0.2 ml 容 PCR チューブに 1)で混合した反応液を 24 µl ずつ分注します。
3)糞便 DNA 抽出液 1 µl(10 ng)を加えます。反応液の容量は全体で 25 µl になります。
4)PCR チューブを指ではじき混合液を良く混合し、スピンダウンし、氷中に置きます。
5)サーマルサイクラーにチューブをセットし、以下のサイクルをスタートさせます。
95℃
15 分
95℃
30 秒
50℃
30 秒
72℃
2分
72℃
10 分
4℃
ホールド
30 cycles
7)PCR 反応物の 2 µl を 2.0%アガロースゲルで電気泳動します。標的とする DNA 断片長
が得られた場合、約 1,000 bp 位置にバンドが確認されます。バンドが確認できない場合、
鋳型 DNA の量を 1 ng あるいは 20 ng に変更し、再度 1)~5)を行ってください。
注1 HotStarTaq Polymerase(QIAGEN)の場合、dNTPs が付属されないため別途ご用意い
ただく必要がありますのでご注意下さい。
注2 プライマーの塩基配列
516fFAM 標識プライマー:TGC CAG CAG CCG CGG TA
1510r プライマー:GGT TAC CTT GTT ACG ACT T
6
III
PCR 増幅産物の精製
PCR 産物精製キットで精製します。操作については Kit 付属のプロトコルに従ってくだ
さい。
IV
制限酵素処理
1
以下の反応液組成(10µl)で制限酵素処理を行います。試薬の混合は氷中で行います。
1 試料当たり
2 µl (約 100 ng)
精製 PCR 産物
10×H Buffer
1.0 µl
Bsl I
1.0 µl
up to 10 µl
d.d.H2O
2
サーマルサイクラー等を用い 55℃で 3 時間反応します。
3
氷冷します。
7
7.Q&A
Q1.どのようにサンプリング、保存したら良いですか?
A1.以下に糞便採取箇所による T-RFLP プロファイルの違いを示します。便の表面と内部で
は T-RFLP のプロファイルが異なります。そのため便の中央部分から数点サンプリングする
ことをお奨めいたします(図中黄色で示した Site)。採取した便は-20℃で保存するか、便採取
キット(テクノスルガ・ラボ)で採取後、保存した試料では室温で 1 ヶ月間、4℃で 6 ヶ月間
は T-RFLP プロファイルが変わらないことを確認しています。
糞便採取箇所の検討
糞便採取箇所の検討
糞便
Site 1
Site 2
Site 3
Site 4
Site 5
Site 6
Q2.ヒト以外の動物にも使用できますか?
A2.ヒト以外の動物、例えば実験動物(マウス、ラット等)、家畜(牛、豚、鶏等)にも使用でき
ます。ただし、当社ホームページ内で公開しております腸内フローラのデータベース(URL:
http://www.tecsrg.co.jp/t-rflp/)はヒトの腸内細菌を対象としているため、推定結果は異なるこ
とがあります。
Q3.推定される分類群の菌数が分かりますか?
A3.菌数は分かりません。DNA 抽出、PCR 増幅のバイアスを含めた上での各分類群の相対
比を算出することが出来ます。DNA 抽出のバイアスは菌種によって DNA の抽出効率が異
なることに起因します。PCR 増幅のバイアスは、菌種によって 1 細胞に含まれる 16S rDNA
のコピー数が異なること、PCR プライマーに対する一致度が異なることなどに起因します。
8
Q4.培養法に対して利点はなんですか?
A4.培養法ではサンプリング後、直ぐに試験が必要ですが、本手法では一定期間保存後も再
現性の高い解析が可能になります。また培養法では嫌気培養技術、数多くの培地、菌種を
推定するための知識等が必要であるのに対し、本手法では分子生物学の実験を行った経験
のある方であれば、簡便迅速に結果を出すことができます。加えて未だ培養できていない
腸内細菌(全菌数の 50~80%程度)も検出することが可能です。
Q5.検出限界はどのくらいですか?
A5.全菌数に対して 0.1~1%程度だと考えられています。
例えば全菌数が 1010 であった場合、
107~108 程度の存在量の細菌群は検出が可能となります。
Q6. 細胞破砕装置がないのですが、代用できるものはありますか?
A6.ボルテックスミキサー等でも同様の効果を得ることは可能です。ただし安定したデータ
を得るために常に同じ処理をしていただくことをお奨めいたします。
Q7.どのくらいの DNA 量、純度が得られますか?
A7.通常のヒト糞便の場合、糞便 20mg~200mg から得られる DNA 量は約 0.2~2 µg となり
ます。以下に分光光度計で測定した時のスペクトルを示します。DNA 純度 A260/A280 は約
1.7~2.0 となります。
サンプルによって A230 の値が A260 よりも高くなることもあります。
Q5. PCR 増幅が確認されないのですが・・
A5.サンプルによっては PCR 増幅が困難となる場合があります(例えば血便、腸管粘膜等)。
その場合は PCR 反応液に添加する鋳型 DNA の濃度を変更することによって、改善する場
合がほとんどです。それでも改善しない場合には採取する便量を増やして再度 DNA 抽出す
ることをお奨めします。
9
Q6.比較したいサンプル群で異なる機種のサーマルサイクラーを使用したいのですが・・
Q6.厳密にはサーマルサイクラーの機種毎に T-RFLP のプロファイルはすこし異なります。
比較したいサンプル群では、同一の機種のサーマルサイクラーを使用することをお奨めい
たします。
Q7.フラグメント解析装置で上手く解析できないのですが・・
A7.蛍光標識を検出できるフラグメント解析装置をご使用ください。フラグメント解析装置
はアプライドバイオシステムズ社製の Genetic Analyzer (310、3100、3130xl 等)をお奨めいた
します。機種によって最適な泳動条件が異なりますので、装置メーカーにお問い合わせく
ださい。
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販売元及び問合せ先
株式会社 テクノスルガ・ラボ
〒424-0065 静岡市清水区長崎 330 番地
TEL 0543-49-6155
FAX0543-49-6121
E-mail:[email protected]
Website:http:// www.tecsrg-lab.jp/
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