コンクリート工学年次論文集 Vol.32 - 日本コンクリート工学協会

コンクリート工学年次論文集,Vol.32,No.1,2010
論文
コンクリート解体材からの 6 価クロム溶出の特性,簡易試験法および
抑制対策に関する検討
森濱
和正*1・渡辺 博志*2・片平
博*3・新田
弘之*4
要旨:コンクリート解体材は,そのほとんどが路盤材として再利用されているが,6 価クロムの溶出が懸念されている。
そのため,コンクリート解体材から溶出する 6 価クロムの溶出特性を環境庁告示 46 号(環告 46 号法)によって検討し
た。環告 46 号法は試験時間,コストなどに問題があるため,簡易な溶出試験方法(簡易法)についても検討した。さら
に,解体材が安全に使用できるように溶出抑制対策について検討した。その結果,6 価クロムの溶出は,中性化の進
行,粒度が小さくなるとその濃度が高くなること,簡易法は環告 46 号法と相関関係が高い結果が得られること,還元材
に高炉徐冷スラグを用いることは溶出抑制効果が高いことが明らかになった。
キーワード:コンクリート解体材,6 価クロム,溶出試験,溶出特性,簡易溶出試験,溶出抑制対策,還元材
1. はじめに
おり,解体材を有効にしかも安全に利用するには,6 価クロム
コンクリート解体材(以下,単に解体材と呼ぶ)を路盤材な
の溶出抑制対策を検討する必要があるものと考えられる。
どに使用すると,6 価クロムが溶出することが報告されている
1),2),3),4)
。解体材を 6 価クロムの溶出に対して安全に使用する
以上のような問題認識の下で,本研究では,次の検討を
行なった。
(1) 溶出特性実験
に当たって,次のような問題がある。
文献 1)~4)より,6 価クロムの溶出は,解体材の粒度や,
解体材からの 6 価クロムの溶出特性を調べるため,水セメ
中性化の進行状態などが影響するといわれている。解体材
ント比の異なる試料について,破砕後からの材齢や粒度を
が再生骨材などに有効に利用されるまでには,さまざまな種
変化させた溶出試験を行なった。
類の解体材が中間処理施設に運び込まれ,破砕され,現場
(2) 簡易法の検討
に出荷するという過程をとるが,そのような過程のもとで 6 価
環告 46 号法などよりもコストが安く,早期に結果が得られ
る簡易法 5)の検討を行なった。
クロムの溶出がどのように変化するのかという検討は少ない。
6 価クロムの溶出試験は,土壌を対象とした環告 46 号法
(3) 溶出抑制実験
(試料の粒度が 2mm 以下),産業廃棄物を対象とした環告
13 号法(試料の粒度が 0.5~5mm),解体材あるいは再生骨
環境基準を超える溶出が検出された解体材を安全に使用
するために,溶出抑制対策の方法 6),7)について検討した。
材などの状態(有姿)で行うタンクリーチング試験(TL 法)(土
これらの検討結果について報告する。
木学会規準 JSCE G575-2005)が行われている。溶出試験は
粒度の影響が大きいといわれているにもかかわらず,粒度が
2. 使用材料
定まっていないという問題がある。また,これらの方法は,コ
2.1 溶出試験に用いた試料
ストが高く,長時間を要するという問題があり,さまざまな状態
6 価クロムの溶出に関する各種実験に用いる試料を作るた
の解体材を対象とした溶出の管理への適用性に問題があ
めのベースとなるコンクリートおよびモルタルは,水セメント
る。
比(W/C)30,50,70%の 3 種類である。コンクリート
解体材のごく一部に,溶出試験方法によっては土壌環境
の配合は表-1 のとおりである。セメントは普通ポルトラ
基準(0.05mg/L 以下)を上回る場合があることが報告されて
ンドセメントを使用した。モルタルは,コンクリートか
表-1 コンクリートの配合
単位量(kg/m3)
配合
№
最大寸法
(mm)
空気量
(%)
水セメント
比 (%)
細骨材
率 (%)
水
セメント
細骨材
粗骨材
AE 減水剤
AE 剤
1
20
4.5
70
46
165
236
856
1032
589 mL
2.4 mL
2
20
4.5
50
46
165
330
823
988
825 mL
3.3 mL
3
20
4.5
30
46
165
550
740
888
2750 mL
16.5 mL
*1 (独)土木研究所
材料地盤研究グループ基礎材料チーム総括主任研究員
*2 (独)土木研究所
材料地盤研究グループ基礎材料チーム上席研究員
博(工)
*3 (独)土木研究所
材料地盤研究グループ基礎材料チーム主任研究員
(正会員)
*4 (独)土木研究所
材料地盤研究グループ新材料チーム主任研究員
-1505-
博(工)
(正会員)
(正会員)
表-2 スラグの組成分析結果
スラグの種類
高炉徐冷スラグ
転炉スラグ
電気炉スラグ A
電気炉スラグ B
CaO
41.0
46.6
3.5
6.1
SiO2
34.2
12.4
10.4
16.8
Al2O3
14.8
4.2
33.5
22.9
(単位
MgO
7.2
5.5
3.9
5.0
MnO
0.4
2.3
9.4
9.2
P2O5
0.034
1.85
<0.005
0.014
%(ただし,塩基度を除く))
T.Fe
0.6
17.6
25.5
25.7
M.Fe
0.2
1.9
2.1
2.2
塩基度
1.84
4.54
3.93
2.02
表-3 モルタル試料の粒度分布と変化させた粒度
ら粗骨材を除いた配合とした。
100×80×400mm の供試体を作製し,4 週まで湿布養生
した。その後,試料から 6 価クロムが溶出しやすくなる
粒径の範囲
(mm)
ように,ほぼ 2mm 以下になるように破砕し,2mm ふる
いを通過したものを溶出試験用の試料とした。
試料は,室内で薄く広げて保管し,所定の材齢時に実
破砕後の粒度(W/C)(粗)(%)
粒度変化(%)
30
50
70
中
細
2.0-1.2
32.5
30.1
31.3
15
10
1.2-0.6
24.0
23.5
23.1
35
20
0.6-0.3
16.1
16.5
17.3
35
30
0.3 以下
27.4
29.9
28.3
15
40
験に用いた。一部のモルタル試料は,二酸化炭素濃度 5%
100
の雰囲気で 4 週間促進中性化を行なった。室内保管場所
と促進中性化槽には,中性化深さを測定するためにφ50
80
6 価クロム溶出抑制のために用いた還元材は,高炉徐冷
スラグ,転炉スラグ,塩基度の異なる A,B の 2 種類の電気炉
スラグの計 4 種類である。還元材は,試料を作製するための
不溶残分(%)
×100mm 供試体も置いた。
2.2 還元材
モルタル
コンクリート
60
40
20
コンクリート,モルタルの打込みとほぼ同じ時期に産出された
ものを使用した。その組成は表-2 のとおりであった。
0
還元材の保存は,破砕する前まで表面水を保持する状態
W/C
1
30
でビニル袋の中に入れておいた。還元材の破砕は,用いる
2
50
3
70
図-1 不溶残分
前日に,試料と同様に,ほぼ 2mm 以下になるように破砕
し,2mm ふるいを通過したものを用いた。
表-4
W/C
3. 溶出特性実験
3.1 実験方法
30%
コンクリート試料およびモルタル試料から 6 価クロム
の溶出特性を把握するため,破砕直後(1 日)と,8 週
50%
まで 2 週ごとと,1 年後(モルタルのみ)に溶出試験を
行なった。試験は環告 46 号法により,6 価クロム濃度の
70%
測定は JIS K 0058 の 65.2 の吸光光度法によった。
1 年後には,モルタルについて粒径ごと(2-1.2mm,
中性化深さ結果
試験材齢
4週
9週
16 週
4週
9週
16 週
4週
9週
16 週
室内
0.01
0.02
0.05
0.52
1.15
1.51
1.48
2.36
3.44
(単位
mm)
促進
1.34
-
-
5.75
-
-
11.57
-
-
1.2-0.6mm,0.6-0.3mm,0.3mm 以下)
,破砕後の粒度(粗)
に対して粒度を変化させ(表-3),細かい(細)
,その中
面 5 点ずつ中性化深さを測定し,その平均値を求めた。
間(中)の粒度ごと,W/C の異なる試料を 2 種類ずつ 1:
3.2 溶出特性実験結果
1 混合したものと,3 種類を 1:1:1 混合したものにつ
3.2.1 含有量,不溶残分,中性化深さ
いて,溶出試験を環告 46 号法に準じ,濃度測定は吸光
(1) 含有量
光度法によった。
6 価クロムの含有量は,3 種類のモルタル試料とも定
そのほかに,6 価クロムの含有量を環告 19 号法に準じ
量できる下限値の 10mg/kg 以下であった。環告 19 号法
て求めた。コンクリートも併せて不溶残分を,0.1N の塩
は,固液の比率が小さいため定量できなかったものと考
酸に 24 時間溶解した後に求めた。
えられる。今後,固液の比率を変化させた測定を行う予
保管場所に置いた中性化深さ測定用のφ50×100mm
定である。
供試体は,4,9,16 週時に,促進中性化槽の供試体は 4
(2) 不溶残分
週時に,割裂してフェノールフタレインを噴霧し,両側
不溶残分の結果は図-1 のとおりである。W/C,モルタ
-1506-
0.20
0.20
30%
50%
70%
0.15
6価クロム溶出濃度( mg/L)
6価クロム溶出濃度( mg/L)
コンクリート
0.10
環境基準
0.05
モルタル
30%
50%
70%
0.15
注) 測定値を結
んでいる線から
外れている記号
は,促進中性化
後の結果
0.10
環境基準
0.05
0.00
0.00
1
10
100
1
1000
10
100
1000
破砕後の材齢(日)
破砕後からの材齢(日)
図-2 破砕後からの材齢と溶出濃度の関係(コンクリート)
図-3 破砕後からの材齢と溶出濃度の関係(モルタル)
ル,コンクリート試料にかかわらずほぼ一定であった。
30
(3) 中性化深さ
W/C 30%はほとんど中性化していないが,50%は 4 週で
中性化している可能性がある。促進中性化は,室内のほ
ぼ 10 倍であった。
20
変動係数(%)
0.5mm,70%で 1.5mm であり,試料のほとんどは全体が
W/C 30%
W/C 50%
W/C 70%
25
中性化深さ結果は表-4 のとおりである。室内では,
15
10
3.2.2 材齢の影響
5
破砕後からの材齢と溶出濃度の関係は図-2(コンクリ
ート)および図-3(モルタル)のとおりである。0.05mg/L
0
の一点鎖線は,環境基準を示している。
2週
4週
6週
コンクリート,モルタルとも溶出濃度はほぼ同じであ
8週
1年
試験材齢(週)
り,材齢とともに溶出濃度は高くなっている。コンクリ
図-4 溶出濃度の変動係数
ートとモルタルの不溶残分はほぼ同じであった(図-1)
0.2
ことから,溶出濃度もほぼ同じになったものと考えられ
溶出濃度( m g /L )
る。また,水セメント比が大きいほど溶出濃度は高くな
っている。W/C 30%は環境基準程度が上限になっている。
50%以上は,破砕直後は環境基準以下であるが,それ以
後は基準値を上回っている。50%は 6 週以後わずかな増
加にとどまっているが,
70%は 1 年でも増加傾向にあり,
0.15
0.1
0.05
コンクリートの種類や,構造物の解体から再生骨材など
の製造,利用(施工)までの過程に応じて溶出濃度は大
0
0.6- 1.2- 2粒径 <0.3
1
2
3
4
きく異なることが考えられる。
0.3
図-3 の促進中性化した後の溶出は,W/C 30,50%は室
W/C
内とほぼ同じであったが,70%は室内の 2 倍近くであっ
0.6
1.2
5
<0.3 0.6- 1.2- 2<0.3 0.6- 1.2- 26
7
8
9 10 11 12 13 14
0.3 0.6 1.2
0.3 0.6 1.2
30
70
50
図-5 粒径ごとの溶出濃度
た。W/C 30%でも試料の全体が中性化していることが考
えられることから(表-4),1 年の結果と比較すると,
ので,単純な比較はできないが,材齢,W/C が大きいほ
50%はやや少なかったものの,30,70%はほぼ近い結果
ど変動係数も大きくなる傾向があるようである。
が得られている。
3.2.3 粒径,粒度の影響
材齢 2~8 週,1年の測定では,2~4 回の繰返し試験
(1) 粒径ごとの溶出濃度
をしている。2 週,4 週,1 年は 2 回,6 週は 3 回,8 週
粒径ごとの溶出濃度結果は図-5 のとおりである。粒径
は 4 回である。その場合の変動係数は図-4 のとおりであ
が大きくなるほど溶出濃度は低下している。粒径が大き
る。試験回数が少なく,材齢ごとの回数も異なっている
くなるほど比表面積が小さくなるためと考えられる。
-1507-
(2) 粒度分布ごとの溶出濃度
0.20
粒度分布ご との溶出濃度
( m g /L )
表-3 のように破砕後の粒度(粗)と粒度分布を変化さ
せた(中,細)ときの溶出濃度と,図-5 の粒径ごとの溶
出濃度から粒度分布を考慮して溶出濃度を計算した結
果の比較を図-6 に示す。W/C 70%は図-4 のように 1 年
後のばらつきが大きかったため,
図-6 の結果も W/C 70%
のばらつきが大きかったものの,ほぼ粒径ごとの溶出濃
度から計算した結果とほぼ一致しており,粒度を考慮す
0.15
0.10
W/C 30%
W/C 50%
W/C 70%
0.05
ることにより溶出濃度のおおよその予測はできそうで
0.00
ある。
0.00
(3) 混合の影響
0.05
0.10
0.15
0.20
粒径から計算した溶出濃度( m g /L )
W/C の異なる試料を混合したものの溶出濃度と,(2)
図-6 粒度分布ごとの溶出濃度と
と同様に粒度分布から計算した溶出濃度の結果の比較
粒度分布から計算した結果の比較
は図-7 のとおりである。この場合も W/C 70%を混合し
たときのばらつきが大きくなったが,コンクリート種類
0.20
混合した再生骨材からの溶出濃度
( m g /L )
の異なる試料が混合された場合も,粒度を考慮すること
により溶出濃度のおおよその予測はできそうである。
4. 簡易法の検討
4.1 検討方法
3.の実験のすべてについて,簡易法による溶出濃度試
験を行なった。簡易法は,200mL サンプル瓶の中に,サ
ンプル 15g と純水 60mL を入れて行なった。これまでの
検討結果 5)を参考にして検液の濃度を高くしている。試
0.15
0.10
0.05
0.00
験は,1 つのサンプルに対し 1~3 回行なった。
0.00
溶出の手順は,1)サンプル瓶を手で激しく上下に 5 分
0.05
0.10
0.15
0.20
粒径から計算した溶出濃度( m g /L )
間振る,2)固液が分離するように静置し,3)上澄みをシ
図-7
リンジで吸引し,4)シリンジの先端に孔径 0.45μm メンブ
W/C の異なる試料を混合したものの溶出濃度
と粒度分布から計算した結果の比較
ランフィルターをセットしたろ過器を取り付け,5)シリ
ンジを押してろ過することによって,ろ液を作製した。
溶出濃度は,表-5 に示すように,ジフェニルカルバジ
ド系の試薬を用い,簡易な分光光度計を利用して溶液の
斜めの線は等値線,縦と横の一点鎖線は環境基準を示し
ている。
濃度を測定するタイプ(分析 1 および 2)
,色見本による
分析 1 は,図-8 のとおり環告 46 号法よりもわずかに
目視(分析 3)の比較的安価なものを 3 種類使用した。
大きく測定される傾向があるものの,ほかの 2 方法より
分析番号が大きくなるほど簡易な方法となっている。
も高い相関関係を有している。環境基準に対する判定の
4.2 簡易法の検討結果
観点からみると,右上の第一象限は環境基準を上回って
簡易法(分析 1~3)による溶出濃度の試験結果と,環
おり,分析 1 と環告 46 号法の結果は「不合格」で一致,
告 46 号法の結果の比較は,図-8~10 のとおりである。
左下の第三象限は「合格」で一致していることを示して
いる。左上の第二象限は,環告 46 号法では合格にもか
かわらず,分析 1 では不合格という判定となっており,
表-5 6 価クロム濃度の簡易分析
試薬
分析 1
分析 2
分析 3
「安全側の誤判定」といえる。右下の第四象限は,環告
分析器
分光光度計
46 号法では不合格にもかかわらず,分析 1 では合格とい
ジフェニルカ
0.02mg/L 以上の Cr6+が測定可能
う判定になり,
「危険側の誤判定」となる。
ルバジド系,
携帯型の分光光度計
各象限の測定数は表-6 のとおりとなっている。太線に
pH 緩衝剤入
0.05mg/L 以上の Cr6+が測定可能
よって各象限が区切られている。第一および二象限の上
り
色見本と目視で比較し判定
段は 0.05mg/L を超える場合は不合格,第三および四象限
0.05mg/L 以上,0.05mg/L きざみ
の 0.05mg/L 以下は合格となる測定数を示している。
-1508-
分析 1 の場合,測定数 40 に対して,環告 46 号法と一
0.30
分析1
簡易法(分析1)の溶出濃度
(mg/L)
致して簡易法も合格となる測定数は 11,不合格 26,安全
側の誤判定 3,
危険側の判定 0 であることを示している。
分析 2,分析 3 の結果は図-9,10 のとおりである。た
だし,両図の 0.05mg/L 未満のデータは,測定できないた
め示してはいないが,表-6 に 0.05mg/L 未満の測定数を
示している。図の見方は図-8 と同様であり,分析 1 より
もばらつきが大きく,しかも環告 46 号法の結果よりも
かなり大きくなる傾向がある。判定結果は表-6 のとおり,
分析 1 の場合と比較すると,合格,不合格の一致する数
0.25
0.20
0.15
0.10
0.05
0.00
が減り,安全側の誤判定が増えている。さらには,危険
0.00
0.05
0.10
0.15
環告46号法(mg/L)
側の誤判定が,
分析 2 は 2 つ,
分析 3 は 4 つ生じており,
分析番号順(より簡易になるほど)に判定精度は低下し
0.20
図-8 簡易法(分析 1)と環告 46 号法の比較
ている。
0.60
以上の結果より,簡易法は,分析 1 の方法が適用でき
分析2
簡易法(分析2)の溶出濃度(mg/L)
る可能性が高い。
5. 溶出抑制効果確認実験
5.1 実験方法
還元材の溶出抑制効果を把握するため,モルタル試料
の破砕 4 週後と,還元材が長期間効果を発揮するのかを
確認するために破砕 1 年後にも,還元材を添加して溶出
濃度を測定した。添加率は,試料質量の 1.5,3.0,4.5,
6.0,8.0,10.0%とした。ただし,転炉スラグと電気炉ス
ラグは,4 週時の抑制効果が明確ではなかったことから,
0.50
0.40
0.30
0.20
0.10
0.00
0.00
1 年後は 10,20,30%添加した。
還元材の混合は,6 価クロムの還元反応を進めるため
0.05
0.10
0.15
環告46号法(mg/L)
0.20
図-9 簡易法(分析 2)と環告 46 号法の比較
に試料と還元材がほぼ表乾状態になるように,両者を所
0.60
定量ビニル袋に入れ,水を質量の 5%になるまで徐々に
分析3
簡易法(分析3)の溶出濃度(mg/L)
加えながら激しく振った。
溶出試験は,混合した 24 時間後に,2.2 と同様の方法
で行なった。
5.2 溶出抑制効果確認実験結果
4 種類の還元材を添加したときの 6 価クロムの溶出濃
度の測定結果は,図-11~14 のとおりである。4 週時の
結果は実線,1 年後は破線で結んでいる。高炉徐冷スラ
グは,図-11 のとおり 4 週,1 年後とも溶出抑制効果は
高く,W/C 70%の試料でも 5%程度添加すれば環境基準
0.50
0.40
0.30
0.20
0.10
0.00
を満足することができている。
0.00
0.05
転炉スラグの抑制効果(図-12)は高炉徐冷スラグよ
りも小さく,10%添加しても W/C 50,70%の試料は環境
0.10
0.15
環告46号法(mg/L)
0.20
図-10 簡易法(分析 3)と環告 46 号法の比較
表-6 環告 46 号法と簡易法の判定結果の比較
環境基準(環告 46 号法)
簡易法
0.05mg/L≧
0.05mg/L<
分析 1
分析 2
分析 3
分析 1
分析 2
分析 3
簡易法に
0.05mg/L<
3
7
6
26
24
22
よる判定
0.05mg/L≧
11
7
8
0
2
4
-1509-
0.15
0.15
転炉スラグ
6価クロム溶出濃度 (mg/L)
6価クロム溶出濃度 (mg/L)
高炉徐冷スラグ
0.12
4週
●
0.09
W/C
30
50
70
+
○
1年
●
+
○
0.06
0.03
0.12
凡例は図-11に同じ
0.09
0.06
0.03
0.00
0.00
0
0
2
4
6
8
10
5
10
12
15
20
25
30
35
スラグ添加率 (%)
スラグ添加率 (%)
図-11 高炉徐冷スラグの添加率と溶出濃度の関係
図-12 転炉スラグの添加率と溶出濃度の関係
0.15
0.15
電気炉スラグB
0.12
6価クロム溶出濃度 (mg/L)
6価クロム溶出濃度 (mg/L)
電気炉スラグA
0.09
凡例は図-11に同じ
0.06
0.03
0.00
0.12
凡例は図-11に同じ
0.09
0.06
0.03
0.00
0
5
10
15
20
25
30
35
0
5
10
スラグ添加率 (%)
15
20
25
30
35
スラグ添加率 (%)
図-13 電気炉スラグ A の添加率と溶出濃度の関係
図-14 電気炉スラグ B の添加率と溶出濃度の関係
基準を満足することはできていないが,20%添加すれば
参考文献
満足することができている。
1)
今回使用した 2 種類の電気炉スラグの抑制効果(図-13,
る現状と課題,コンクリートライブラリー111,
pp.56-63,2003.3
14)は少なく,スラグ添加による希釈効果程度しか確認
2)
できていない。
土木学会:コンクリートからの微量成分溶出に関す
廣嶋裕晃ほか:解体コンクリートからの六価クロム
溶出に関する研究,建築学会大会梗概集,pp.609-610,
6. まとめ
2006.9
3)
以上の検討の結果,次のことが明らかになった。
(1)
(2)
(3)
片平博ほか:再生クラッシャランの六価クロム溶出
解体材からの 6 価クロムの溶出は,粒径・粒度,中
試験,
第 62 回セメント技術大会講演要旨,
pp.170-171,
性化などの影響を受ける。
2008.5
簡易法による溶出濃度の試験は,分析 1 によって環
4)
黒田泰弘,輿石直幸:解体コンクリートからの六価
告 46 号法とほぼ同じ判定が可能である。
クロム溶出に関する研究,日本建築学会構造系論文
還元材による溶出抑制効果は,スラグの種類によっ
集,Vol.74,No.646,pp.2155-2161,2009.12
5)
て異なる。高炉徐冷スラグの抑制効果が高い。
新田弘之ほか:セメントコンクリート再生骨材の六
価クロム溶出判定の簡易方法の検討,土木学会第 64
【謝辞】
回年次学術講演会第Ⅴ回,pp.45-46,2009.9
本実験を行うにあたり宮城大学の北辻教授,JFE スチ
6)
特許 3299174 号,11998.12
ールの高橋氏,前田道路の河田氏にご協力いただきまし
た。ここに記して感謝いたします。
松永久宏ほか:クロム酸化物含有物質の処理方法,
7)
小菊史男ほか:コンクリート廃材の路盤材への使用
方法およびその路盤材,
特許公開 2005-240313,2005.9
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