抄録集

第 11 回ひびき薬剤耐性菌シンポジウム
日時: 2014 年 5 月 17 日(土)12:00~24:00
2014 年 5 月 18 日(日) 9:00~14:00
場所: 民営国民宿舎ひびき
〒811-3512 福岡県宗像市鐘崎 79-6 TEL.0940-62-1288
第 11 回学術集会会長 永原 千絵
ひびき臨床微生物研究会
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会場までのアクセス
民営国民宿舎ひびき
JR 赤間
ゼンリンいつも NAVI より転載
JR 鹿児島本線赤間駅、東郷駅より鐘崎行きバスで 30 分、鐘崎車庫前下車徒歩 10 分
5 月 17 日(土)JR 11:00 JR 赤間駅に送迎バスを準備します。
(送迎バスご利用の方は詳細を事務局までお問い合わせください。[email protected])
5 月 18 日(土)11:30 より、民営国民宿舎ひびきで受付を開始します。
2014 年 5 月 17 日(土) 12:00~ (11:30 受付開始)
2014 年 5 月 18 日(日) 9:00~14:00 (8:50 受付開始)
〒811-3512 福岡県宗像市鐘崎 79-6 TEL.0940-62-1288
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第 11 回ひびき薬剤耐性菌シンポジウムプログラム
1 日目 5 月 17 日(土)
総合司会 木戸 直徳
時間
プログラム
座長/司会
11:30~
受付 (記名後、名札と部屋割りを取る)
セルフ受付
12:00~
開会の辞
12:05~12:50
ランチョンセミナー1
第 11 回会長
永原千絵
木戸 直徳
L1 β-lactamase の種類と鑑別方法 -Class Cβ-lactamase の鑑別方
法と報告意義13:00~13:50
村谷 哲郎
教育講演
E1 血液培養検査を活かすには
13:50~14:05
大城 健哉
長崎 雅春
企業セミナー
C1 Imipenem 感受性 Meropenem 耐性 Klebsiella pneumoniae の検出 本田 雅久
における改良ライサス迅速法の有効性
日水製薬 富永 桂
14:05~14:20
C2 レジオネラ症について
アリーアメディカル株式会社 原 哲郎
14:30~15:10
基調講演
P1 血液培養のベストプラクティス 吉田 武史
15:10~16:30
永原 千絵
シンポジウム
S0 それぞれの施設における血液培養の実態
シンポジウム企画の意図について
永原千絵
15:20~15:35
S1 頴田病院での試み
長崎 雅春
15:35~15:50
S2 産業医科大学病院
本田 雅久
15:50~16:05
S3 検査センター
小林 とも子
16:05~16:20
S4 那覇市立病院の状況
大城 健哉
16:45~17:00
企業セミナー
永原 千絵
/村谷 哲郎
C3 血液培養自動分析装置 新機種 BD バクテック TMFX40 システ 芳賀 由美
ムのご紹介
17:00~17:15
C4
日本 BD(株) 黒板 政司
MALDI バイオタイパー導入により微生物検査室にもたらす影響
シーメンスヘルスケア・ダイアグノスティクス(株)宮田 浩
17:15~17:30
C5 カルバペネム耐性腸内細菌(CRE)の検出
シスメックス(株) 藤吉
~17:45 写真撮影
玉置ゆう子
17:45~18:15
ひびき臨床微生物研究会総会
白濱 智美
18:30~
懇親会
白濱 智美
21:00~24:00
ナイトセミナー
次期会長挨拶、参加者自己紹介
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21:10~
N1 カンジダカテーテル感染症の話題とアムビゾーム®の位置付け
村谷 哲郎
大日本住友製薬 村岡 正浩
21:45~
N2 CLIS が寒天平板希釈法を推奨している菌種の薬剤感受性測定に
ついて-淋菌、偏性嫌気性菌(Bacteroides fragilis group 以外)-
村谷 哲郎
22:30~
N3
MLST の耐性菌解析における有用性
宮崎 博章
2 日目 5 月 18 日(日)
時間
プログラム
座長/司会
9:00~9:30
企業セミナー
篠崎 久輝
C6 ドライプレート‘栄研’を使用した第 6 回 EQCS-MIC(九州)精度管
理の結果
9:30~10:10
栄研化学株式会社 光岡 聰
会長講演
大久保 孔平
当院における血液培養検査の解析
10:15~10:30
永原 千絵
一般演題
G1 メタロβ-lactamase 検出法に関する検討
芳賀 由美
10:30~10:45
G2 当院の過去 3 年間における血液培養検出状況 川上 洋子
10:45~11:00
G3 当院で経験した壊死性筋膜炎を伴った Edwardsiella tarda による
敗血症の 1 例
11:00~11:30
重高 正高
篠崎 久輝
サーベイ結果報告
永原 千絵
S2 第 7 回ひびき臨床微生物研究会サーベイ結果報告
村谷 哲郎
11:30~12:00
G4 分子生物学的手法をもちいた、全自動尿中有形成分分析装置 村谷 哲郎
UF-1000i と尿定量培養法による細菌計数乖離例についての検討
和田淳
12:00~
弁当配布
12:20~
ランチョンセミナー2
白濱 智美
L2 細菌検査室における同定の Golden Standard について 村谷哲郎
~13:50 閉会の辞
永原 千絵/白濱 智美
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第 11 回ひびき薬剤耐性菌シンポジウム開催にあたって
村谷哲郎 (ひびき臨床微生物研究会 会長)
ひびき臨床微生物研究会の学術集会 「ひびき薬剤耐性菌シンポジウム」は第 11 回を迎えることとなりま
した。今回は第 1 回は健和会大手町病院の大久保孔平技師の会長をお願いしましたが、第 11 回は一回り
して健和会大手町病院の永原千絵技師にお願いしております。一昨年より鐘崎にあります民営国民宿舎
ひびきで開催しておりますが、本会場は、懇親会と会場が同じ施設で実施可能なため、運営サイドはタイム
スケジュールも含めて効率よく執り行うことが出来るという大きなメリットがあり、本年も同会場にいたしました。
今回は、会場の都合および日本化学療法学会が 6 月の 3 週目に福岡で開催されるため、日程調整が難し
く、5 月開催といたしました。しかしながら、日本検査医学会総会(新潟)と日程が重なってしまい、会員のみ
なさま、特に企業のみなさまにはご迷惑をおかけし、申し訳なく思っております。来年からは元に戻し、6 月
の第 3 週 (6/20-21) を予定しております。毎年、6 月開催に慣れていたため、プログラム委員の方々、特に
永原会長は大変だったことと思います。
また、本会の運営は、有馬純徳会計責任者、プログラム委員の皆様の努力によるものであります。また、
第 1 回から準備に関しては山田忠明氏には個人として、多大なご協力をいただいており、家入氏が卒業し
たこともあり、本年は大変だと思いますが、よろしくお願いいたします。また抄録集作成は、キューリン検査
部微生物検査課の小林とも子技師の多大なご協力によるものであります。この場をかりて感謝を表します。
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参加者の皆さまへ
本学術集会は、全員参加でディスカッションを行いやすいフランクな会を目指しておりますので、カジュア
ルな服装を原則とさせていただきます。ヨーロッパの学会のようなスーツ姿はめったにみないような会にした
いと考えておりますので、企業の方も含めてご協力ください。しかし、スーツ禁止というわけではありません。
土曜日は軽食、日曜日はお弁当(天むす弁当を予定)をご用意しますので、ご利用ください。
発表者の皆さまへ
機材は、Windows 7/Powerpoint 2010 を用意します。
5 月 17 日(土)の 11:45 までに USB フラッシュメモリーなど USB 対応媒体で持ってきてください。この時
間に間に合わない場合は、自分の発表前の休憩時間などを利用して準備をお願いします。CD の場合
は、読み込めない場合があります。その他のメディアの場合は、事前にご相談ください。
一般演題・企業セミナー
質疑応答を含めて1人 15 分です。通常の学会発表より時間はありますので、方法などを解説的にプレゼ
ンテーションしてください。時間が短い分には構いません。無理に長くする必要はありません。PC 切替機を
使用しますので、PC の持ち込みは可ですが、自分の発表の 2 演題前には接続してください。
質問などをされる場合
質問のある方は、マイクのところに立って手を挙げてください。複数の場合は後ろに並んでください。
会費
完全事前登録制です。準備の都合がありますので、なるべく早くお申し込みください。
原則として当日参加費は集めません。受付に人を割かずに、全員が会に参加できるようにするためですの
で、ご理解とご協力をお願いいたします。事前に下記口座へ振込みをお願いします。不明な点はメールで
事務局までお問い合わせください。
参加のみ ¥5,000 (ひびき臨床微生物研究会 個人正会員は ¥3,000)
宿泊参加 (夕食を含む) ¥12,000 (ひびき臨床微生物研究会 個人正会員は ¥10,000)
懇親会まで参加(宿泊せず) ¥10,000 (ひびき臨床微生物研究会 個人正会員は ¥8,000)
参加費割引は、個人正会員のみとさせていただきます。ご了承ください。
銀行名:西日本シティ銀行 湯川支店
種別:普通
口座番号 3006510
口座名
第 11 回ひびき薬剤耐性菌シンポジウム 会計担当 有馬純徳
名札について
記名式といたします。ネームフォルダーは回収しますので、ご協力ください。領収書付きですが、他の書式
の領収書が必要な場合は、有馬 純徳(北九州総合病院)までお申し出ください。
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1 日目 5 月 17 日(土)
ランチョンセミナー1
β-lactamase の種類と鑑別方法 -Class Cβ-lactamase の鑑別方法と報告意義)
村谷哲郎
ペニシリンの発見以降、様々な抗菌薬が開発され実用化されてきたが、今もなおβ-lactam 剤が最も多く
使用される抗菌薬であり、治療抵抗性という意味でも、院内感染菌という意味においても、β-lactam 耐性が
もっとも重要視される耐性菌である。緑膿菌をはじめとする NFGNR ではカルバペネム耐性は既に珍しくは
ないが、腸内細菌科では稀である。しかしながら、欧米では既に、KPC typeβ-lactamase や NDM-1 を獲得
したカルバペネム耐性腸内細菌科の菌種、すなわち CRE (Carbapenem-Resisatnt Enterobacteriaceae)が問
題となっている。本邦においても、腸内細菌科で metallo-β-lactamase を獲得した株は 1990 年代前半より
Serratia marcescens を中心に報告されているが、Escherichia coli や Klebsiella pneumoniae では多くの場合
カルバペネムの MIC は高くならず、IMP-1 を獲得した Klebsiella pneumoniae に対して MEPM が有効であ
ったとの報告もある。しかしながら、外膜の欠損などを伴うと、カルバペネム高度耐性株となるため、この高
度耐性化を防ぐためにも早期発見、厳重な感染拡大防止対策が重要な耐性菌であることは言うまでもな
い。
治療上および感染対策上問題となる広域β-lactamase としては、セファロスポリンを分解可能な ESBL、カ
ルバペネムを分解可能な、KPC、IMP-1 を代表とする Metallo-β-lactamase などの外来遺伝子を獲得した
株がある。さらに外来性のセファマイシンも分解可能な AmpCβ-lactamase も感染対策上重要な耐性株で
ある。これらのβ-lactamase を鑑別し、早期に報告することが細菌検査室に求められる使命であり、鑑別の
方法を熟知しておく必要がある。また、これら広域β-lactamase を複数獲得した株も出現しており、その場合
の鑑別方法も重要である。
ClassCβ-lactamase の代表である AmpC typeβ-lactamase は、グラム陰性桿菌の多くが染色体上に有して
おり、ペニシリン、セフェムの誘導耐性を担っている。すなわち菌種の同定と AmpCβ-lactamase を保有して
いるかどうかは同じ意味となるので、わざわざ報告していないのが現状である。また、AmpCβ-lactamase は
カルバペネムを効率は悪いながらも分解可能であり、大量産生変異株かつ外膜透過性低下株では、カル
バペネム耐性となり得る。もともと透過性の悪い Pseudomonas aeruginosa では影響を受けやすい。少なくとも
感染対策上問題としなければいけないのは、プラスミド化した外来性 AmpCβ-lactamase を獲得した株であ
り、染色体上に AmpCβ-lactamase を保有していない菌種とプロモーターの構造上通常は AmpCβ
-lactamase を産生できない Escherichia coli については、検出法および報告の方法を確立しておくべきであ
る。検出の為の市販品も上市されており、特定することは容易となったが、ルチンで使用するかどうかは、施
設の事情によるので、フェノタイプからの推定で十分かもしれない。
各種β-lactamase の検出方法、特に AmpCβ-lactamase の検出方法について述べるとともに、報告の必
要性について考察する。
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教育講演 E1
血液培養検査を活かすには!
那覇市立病院 医療技術部 検査室 大城 健哉
【はじめに】血液培養検査は感染症診療に必要不可欠な検査であり,検出菌の情報は患者の予後に重大
な影響を与えるとされている。臨床的に重要な血液培養検査について,より有意義な検査とするために,よ
り活かすには!と考え,これまで実践してきた事例を中心に述べる。
【血液培養陽性検出率向上への取り組み】血液培養の陽性検出率向上には適切なタイミングでの採取や
採取回数,採取量が重要とされており,発熱初期に 1 セット(1 回の静脈穿刺)につき 20ml 採血の 2 セット
採取(最大で 4 セット採取)が推奨されている。なお,今年度(平成 26 年度)の診療報酬改定では 2 セット
採取が算定できるようになり,医療制度上でも重要性が認められるようになった。
当院における複数セット採取率は小児科を除くと 90.3%あり,複数セット採取がほぼ達成されていると考え
られる。しかし採取量については,2011 年まで成人採血 1 回あたり 10ml 採取し,好気用・嫌気用ボトルにそ
れぞれ 5ml ずつ接種となっていた。そこで 2012 年に,採血 1 回あたり 10 ml から 20 ml へ増量させる採血
量アップキャンペーンを展開した結果,達成し定着させることができた。採血量アップに伴い,陽性検出率
の向上も認められた(図 1)。キャンペーン成功の秘訣として,院内感染対策委員会の実動組織である ICT・
リンクナース合同会議にて,部署別の採取セット数と採血量(中央値,箱ひげ図 ;図 2),陽性検出率,コン
タミネーション率などの各データを毎月集計し報告したことが,部署ごとの取り組みへの意識付けに繋がっ
たと考えられる。このように,血液培養陽性検出率を向上させるには,単に採取を呼びかけるだけではなく,
実施状況を示す各種データを定期的に部署別に集計報告することで,全職員の意識付けに繋がると考え
られた。
【血液培養陽性検出時の迅速報告への取り組み】我々検査室内での取り組みも重要である。提出していた
だいた貴重な検体について,時間外も含めた受付体制や陽性検出時の報告体制についても微生物検査
担当者として取り組まなければならないと考える。検出菌の有意菌判断の情報提供や,微生物検査非担当
者を巻き込んだ時間外報告体制の確立,そのトレーニングやバックアップのポイント,検出菌の従来法を用
いた迅速報告の実践例や,それらを推し進めるための“コツ”などについて私見を述べたい。また研究会当
日は,参加者とのディスカッションを通し,さらなる発展に繋がればと考える。
採血量アップキャンペーン(2012年1月~)
部署別に採血量をフィードバック
採血量と陽性検出率の推移
9.6
18
採血量中央値
コンタミ率%
真の陽性率%
16
14
12
検
出 10
率 8
(%)
6
10.8
5.0
2
9.0
9.7
9.7
9.9
14.0
14.9
13.4
12.0
5.4
13.1
11.4
12.0
10.2
8.5
7.9
4
9.9
7.2
6.4
9.7
9.7
9.3
3.1
1.8
2.2
2.3
2.4
2.5
1.1
2.0
1.5
1.1
後7
後8
1.6
2.3
0
前
後1
後2
後3
後4
後5 後6
期間
10 好
9 気
用
8
ボ
7 ト
6 ル
の
5
採
4 血
3 量
2 中
央
1 値
0 (ml)
箱ひげ図を用い、部署別採血量の推移を月例ICT・リンクナース合同
会議にてフィードバックした
後9 後10 後11
(データ:那覇市立病院2011年10月~2012年12月)
採血量の増加により真の陽性率は「後10」で 7.0ポイント(88.6 %)向上した
図 1.採血量アップキャンペーン時の採血量と陽性検出率の推移
連絡先:[email protected]
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図 2.箱ひげ図を用いた部署別採血量のフィードバック
企業セミナー C1
Imipenem 感受性 Meropenem 耐性 Klebsiella pneumoniae の検出における
改良ライサス迅速法の有効性
日水製薬株式会社 研究部
○富永 桂、岩脇 研次
【目的】広島県を中心に 2008 年以降分離された blaIMP-6 を保有する腸内細菌科細菌は Imipenem に感受性、
Meropenem に耐性(Imipenem susceptible meropenem resistant(ISMR 形質))を示す特徴的な表現型を有
する。第 23 回日本臨床微生物学会において ISMR 形質を示す Klebsiella pneumoniae がライサス迅速法で
は検出できないことが報告された(P-059)。今回、ISMR 形質を示す K. pneumoniae 向けにライサス迅速法
を改良したので報告する。
【方法】対象菌株は blaIMP-6 を保有し、ISMR 形質を
示す K. pneumoniae 11 株及びカルバぺネム感性
K. pneumoniae 23 株。薬剤感受性試験はライサス
(日水製薬株式会社)の 18 時間法(CLSI M7 に準
拠)及び迅速法により実施した。薬剤プレートは
IPM、MEPM を含む RSCN3 を使用した。
【結果と考察】ISMR 形質を示す K. pneumoniae 11
株全てで 18 時間法・迅速法共に IPM の MIC 値は
≦1μg/mL で感性を示した。MEPM の 18 時間法
は>8 μg/mL で耐性を示した。一方、ライサス旧
迅速法では、何れの株も MIC 値は≦1 μg/mL で
あったのに対して、ライサス改良迅速法では、判定
終了まで平均 5 時間半を要し、MIC 値は全株≧4
μg/mL で耐性であった。カルバぺネム感性 K.
pneumoniae 23 株は、迅速法と 18 時間法の MIC
値が一致し、偽耐性は認められなかった。以上の
結果から、ライサス改良迅速法の有効性が示唆さ
れた。
【まとめ】ISMR 形質を示す菌株を正確且つ迅速に
検出することは、カルバペネム薬を誤って治療薬と
して選択するリスクを抑え、早期の抗菌薬適正使
用を可能とするものであり、ライサス改良迅速法は
有用な試験法の1つと考えられる。
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企業セミナー C2
レジオネラ症
アリーアメディカル株式会社 原 哲郎
Ⅰ.肺炎
肺炎とは肺実質の急性の感染性の炎症であり、罹患率・死亡率ともに高い極めて重要な疾患である.
患者の背景や環境で原因菌の種類・耐性菌の頻度に違いがあり、それらが治療法や予後に大きく影響す
る. そのため肺炎は市中肺炎(CAP)、院内肺炎(HAP)、介護・医療関連肺炎(NHCAP)に分けられる. 日
本呼吸器学会のガイドラインにおいて、肺炎患者の生命予後を反映させるということで重症度を分類してお
り CAP では A-DROP、HAP では I-ROAD が用いられている. 肺炎は種々の微生物が起因菌となるが、そ
の中でも肺炎球菌とレジオネラはとくに早期に重症化するということで、早期診断が求められている. 本セミ
ナーでは、レジオネラ症について述べる.
Ⅱ.尿中抗原測定法
1917 年 Dochez らが肺炎球菌に特有な莢膜抗原をウサギの尿中に見出し、また 1979 年には Berdal らがレ
ジオネラ肺炎の患者尿に特異的な抗原を発見した. 2004 年 2 月に「BinaxNOW レジオネラ」、同年 6 月に
「BinaxNOW 肺炎球菌」の体外診断用医薬品の承認を取得し、それぞれ 2004 年 7 月、2005 年 1 月に保険
収載された. また、「成人市中肺炎診療ガイドライン」および「成人院内肺炎診療ガイドライン」において初
期治療に役立つ微生物検査として喀痰のグラム染色とともに尿中抗原検査が記載されている.
Ⅲ.「BinaxNOW レジオネラ」
レジオネラは細胞内寄生性のグラム陰性の好気性桿菌で、水系・土壌など自然界に広く存在する細菌であ
る. レジオネラ感染で最も多く分離されるのは Legionella pneumophila で現在 15 種類の血清型に分けられ
ており、そのうちで Legionella pneumophila serogroupⅠがレジオネラ感染例の 70~80%を占めている. レ
ジオネラは 1976 年、米国フィラデルフィアで開催された米国在郷軍人会(American Legion)でホテルの宿
泊客や通行人 221 名に感染し、このうち 34 名が死亡するという集団肺炎を引き起こしたことで注目された.
当初、原因菌が判明されなかったが 3 年後の 1979 年、新しい菌名 Legionella pneumophila が命名された.
その後ビルの空調システムや循環式風呂、温泉などによる大規模な集団発生が起こり関心を集めている.
レジオネラ肺炎の確定診断法は、従来、培養法(実際には検査室で実施している施設はほとんどない)およ
び血清抗体価測定法が用いられていたが、両者とも感度が低く、また判定までに時間がかかるため、早期
に劇症化しやすいレジオネラ肺炎迅速診断法としては満足のいく検査法ではなかった. 近年は、PCR 法や
尿中抗原検出法の有用性が明らかとなり、特に尿中抗原検出法は尿検体を用いるため検体採取が容易で
患者負担が軽く、さらに高い感度、操作の簡便性から優れた検査法として知られるようになった. このため
尿中抗原検出法は 1997 年の米国 CDC 診断基準にも採用され、本邦でも 2000 年の日本呼吸器学会にお
いて発表された「呼吸器感染症に関するガイドライン」においても原因微生物検査項目に尿中抗原検出が
記載されている.
「BinaxNOW レジオネラ」は尿中の Legionella pneumophila serogroupⅠの内毒素(LPS:Lipopolysaccharide)
抗原を特異的に認識するポリクローナル抗体を利用したイムノクロマト法を原理とする検査キットであり、15
分で迅速・簡便に検出が可能なキットである. 申請時使用したデータでは本キットの感度は 88.9%、特異度
は 95.9%である. 2004 年 2 月に承認取得し 1500 施設以上において利用されている. 現在は 233 点の保険
適応(症状および所見からレジオネラ症が疑われる患者に対して、ELISA 法または免疫クロマト法により実
施した場合に限り1回を限度に算定することができる)を受けている. 細菌培養同定検査と併用は可能であ
る.
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基調講演 P1
血液培養のベストプラクティス
日本ベクトン・ディッキンソン株式会社
ダイアグノスティックシステム事業部
吉田 武史
日本における血液培養検査は 2000 年代に入ってから、徐々に様相が変化してきたように思われます。
2005 年に米国で出版された「Cumitech 1C Blood Cultures Ⅳ」が、2007 年に「CUMITECH 血液培養ガイ
ドライン」として日本語で出版され、同じ年に米国では CLSI が「M47-A Principles and Procedures for Blood
Cultures;Approved Guideline」を出版しました。これらにより日本においても血液培養の方法論に対する認
識が高まるきっかけとなりました。同時に実臨床の現場でも、適切な感染症診療を行うためには、血液培養
が重要であることが再認識されてきました。昨年は臨床微生物学会から「血液培養検査ガイド」が出版され、
今年 4 月からは厚生労働省の診療報酬改定により 2 セットの血液培養が保険請求で算定可能になりました。
これらにより、血液培養検査の重要性あるいは臨床的有用性が医療行政上でも認識されていると理解する
こともできます。
血液培養検査は単なる検体検査というより、むしろ一群の診療行為と見なすことができるかもしれません。
患者さんに対して血液培養を実施するかどうかを判断するところから始まり、採血のタイミング、採血部位の
選択と消毒、採血量、採血セット数、採血後のボトルの取り扱い、培養方法、培養期間、陽性ボトルの取り
扱い、コンタミネーションの判別、検出菌に対する考察、適切な抗菌薬と投与法・治療期間の決定など、多
くのプロセスによって構成されています。これらはどれも重要で欠かすことのできないものです。なぜなら、
その究極の目的が、敗血症の患者さんに最適な治療を施し、救命することにあるからです。そのため、それ
ぞれのプロセスのレベルを向上させることが肝要になります。これこそが「血液培養のベストプラクティス」で
はないかと考えています。
本日は、各種のガイドラインが推奨している考え方や実践方法から血液培養の品質保証などについても
紹介したいと思います。すべてを同時に推進することは無理かもしれませんが、できることを、優先順位をつ
けながら実行していくことがベストプラクティスへの道ではないかと思います。
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シンポジウム それぞれの施設における血液培養の実態
S0
シンポジウム企画の経緯
健和会 大手町病院 臨床検査部 病理科
永原 千絵
血液培養検査は感染症診療において正確な診断
と適切な抗菌薬選択のための重要な検査です。その
ため適切なタイミングと適切なセット数の採取が必要
となります。
2014 年度の診療報酬の改定により、血液培養の 2
セット目にも算定が認められました。これにより、今後
は血液培養検査が増加していくものと考えられます。
自施設の血液培養検査の状況を把握しておくこと
は、今後他施設間での様々な比較・精度管理の指標
として使用可能なものと考えられます。
感染管理に携わるにあたり、細菌検査結果での統
計だけではなく、手指衛生や標準予防策・針刺し防
止などのベストプラクティスを作成する機会がありまし
た。その中には残念ながら適切な検体採取に関して
の項目はありませんでしたが、私たちは適切な採取
方法や保存方法、運搬方法などの問い合わせに対
応出来る力量をつけておく必要があると考えます。こ
れらを含め、血液培養の採取方法や診療への活用
などをご講演いただきました。そして、実際に他施設
での血液培養検査がどのように行われ、菌が検出さ
れてからどのように報告されるのかを知り、自施設で
の報告に活かせていただければ幸いです。
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シンポジウム それぞれの施設における血液培養の実態
S1
血液培養検査の現状 頴田病院での試みについて
頴田病院 臨床検査部 長崎 雅春
【はじめに】当院は,認可病床数 96 床のケアミックス型の小規模病院である。2008 年 4 月に経営破綻した
飯塚市立頴田病院から,麻生グループの医療法人博愛会に委譲され現在に至っている。細菌検査は,当
初外注であったが,2013 年より迅速報告を目的として一部を院内検査に切り替えた。今回,血液培養の現
状を主に報告する。
【検査法】当検査室は,自動機器を有さないため,血液培養ボトルは目視での確認が可能なシスメックスビ
オメリュー社のヘモリンシリーズを使用し,検体採取後,通常の孵卵器にて培養し,毎日目視にて菌の発育
を確認している。
写真
左 好気用ボトル:ヘモリンパフォーマンスデファジック
右 嫌気用ボトル:ヘモリンパフォーマンスアナエロビー
観察項目 液体培地の混濁
寒天培地のコロニー形成
菌の発育が疑われたら,グラム染色にて確認
分離培養,同定・感受性は他検体と同様に行う。ただし,寒天培
地に単独コロニーが得られたら,直接,同定・感受性検査が可能である。
【件数の推移及び 2013 年度の分離菌】
N=18
E. coli
CNS
Entercoccus sp.
Streptococcus sp.
E. cloacae
P. aeruginosa
A. baumanii
B. caacae
anerobic GPC
【まとめ】当院は,外来,入院ともに 65 才以上の患者がほとんどを占めており,肺炎や尿路感染症を基礎と
した全身感染症も増加傾向にある。また,当院は飯塚・頴田家庭医療プログラムという家庭医を養成する後
期研修医の施設でもあり,全身感染症が疑われた症例に関しては,抗菌薬投与前に必ず血液培養を実施
することが遵守されていることも件数増加につながっているものと推測される。
小規模病院の多くが,細菌培養検査を外注しているようであるが,院内で血液培養検査を実施することに
より,検体採取後,ただちに検査がスタートできるため,迅速な報告につながるものと考えられる。
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シンポジウム それぞれの施設における血液培養の実態
S2
当院の血液培養検査状況について
産業医科大学病院 病理・臨床検査・輸血部
本田雅久
当院は 678 床(一般病棟 638 床,精神科病棟 40 床)、19 診療科よりなる大学病院である。現在、病院の
自主運営に向け急性期医療への転換を図っており、手術室の増設、救急体制の強化を目標に掲げ運営さ
れている。検査部スタッフは 45 名(正職 39 名)で、微生物検査担当は 3 名(5 名の、技師でシフト体制:微
生物検査、一般検査、免疫・遺伝子検査、感染制御業務)、微生物検査の年間検体数は約 27,000 である。
微生物検査のなかで最も依頼が多いのは培養検査であり全体の 55%を占める、その中でも血液培養検
査は年々増加傾向にあり、平成 24 年度は培養検査総数の 20%となった。
しかしながら、血液培養検査数、2 セット採血率、汚染率は目標値を大幅に下回っているのが現状であ
る。
シンポジウムでは、2009 年~2013 年の血液培養検査状況、陽性検出時の報告体制と問題点、感染制御
部との連携等について報告する予定である。
A
D
C
CMZ
APB
CAZ
MPA
APB
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MPA
シンポジウム それぞれの施設における血液培養の実態
S3
血液培養の実態
(株)キューリン検査部
小林とも子
検体数について
2012 年4月以降の血液培養検体数は、2セット採取が当たり前とのことや、クリニックからも依頼がでるように
なったり、増加してきた。2013 年 9 月から、血液培養の培養期間は、6 日間培養から、現在 5 日間培養に変
えた。
検査方法
日本ベクットンデッキソンの BATEC9240 を使用している。
陽性時の対応
キューリンでは緊急報告の対象としているので、陽性時は塗抹、培養同定、薬剤感受性検査の結果と 3 回
FAX で報告をしている。菌検出が 3 日以内である場合は起炎菌である可能性が高く、菌検出が 5 日以降の
場合で、S. epiderumides, P. acnes が検出された場合は血液採取時のコンタミネーションの可能性が高いが、
すべて緊急報告の対象としている。
休日は交代で出勤し、塗抹陽性時は結果を FAX している。病院と違い、報告時が休日や、時間外であれ
ば、ユーザーとの取り決めがあり、せっかく菌陽性時の際にも、FAX をしない、着信確認の電話をしてはい
けないとうユーザーもある。また、FAX 報告書に病棟まで持ってあがってくださいと一言、言ってほしいとか、
血液培養陽性は 1 番、抗酸菌陽性時は 2 番とか、報告内容により番号まで報告してほしいとのユーザーの
要望がある。このため休日対応一覧表を作成し、休日当番は対応している。休日対応一覧表には、FAX を
していいユーザー、FAX をしてはいけないユーザー、FAX の着信確認をしてはいけないユーザー、かけた
時に、電話で病棟まで持ってあがってくださいという要望が書かれている。検査センターならではの対応で
ある。また、ユーザーの要望を勘違いして、休日に電話で病棟まで持ってあがってくださいといい忘れるとク
レームになったりする。時間外は午後 5 時からの対応であり、午後 5 時を過ぎると休日と同じ扱いをしてい
る。
しかし、休日検査室が休みで連絡がとれないユーザーにでも、血液培養から、Streptococcus pyogenes,
Vibrio vulnificus 検出時は、検査室ではなく、直接ユーザーさんや病棟へ電話をかけて菌の説明を行い、
主治医に連絡を取ってもらったり、メールで直接医師に連絡し、キューリンに電話をかけて頂いたりして連
絡をしたこともある。
耐性菌の対応方法
通常の報告と同じで、MRSA,ESBL,MDRP,VRE,など、通常報告している内容と同じである。血液培養だか
ら、特別にすることはしていない。
特別なこと
薬剤感受性検査において、FOM については、CLSI では尿路の E. coli や腸球菌にしかカテゴリーがつか
ないので、血液培養では MIC 値のみ報告し、カテゴリーは報告していない。また、酵母様真菌が分離され
た場合は酵母様薬剤感受性検査をお勧めする、コメントを付記して、検査をお勧めしている。また薬剤感受
性検査をつけていないユーザーもあり、薬剤感受性検査をお勧めしますというコメントを付記してる。
最後に血液培養は病院と違い、検査センターに搬送し、それから培養機器に入れるので、最初の処理が
病院よりは半日、もしくは 1 日遅れることなるので、患者およびユーザーにとって不利益であると考えてい
る。
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シンポジウム それぞれの施設における血液培養の実態
S4
那覇市立病院の状況
那覇市立病院 医療技術部 検査室 大城 健哉
那覇市立病院(病床数 470 床,病床稼働率 90.1%,平均在院日数 11.9 日,一日平均外来患者数 809.6
名,年間のべ入院患者数 154,650 名,年間新入院患者数 11,928 名;各データは 2013 年)における血液培
養の実態として,実施件数などの統計データ,採取方法,受付報告方法について述べる。
1. 統計データ(2013 年)
(1) 血液培養件数
① 件数:11,627 件(1 回の穿刺で採取されたものを 1 件とする)
② 100 病床数あたり:2,473.8 件
③ 1000 患者・日あたり(推奨値:103~188):75.2 件
④ 1000 新入院患者あたり(推奨換算値: 587.1~1071.6):974.8 件
(2) 複数セット採取率の推移(右図参照)
① 内科: 90.4%(2006 年), 90.2%(2013 年)
② 外科系: 51.2%(2006 年), 90.7%(2013 年)
③ 小児科: 1.0%(2006 年), 1.2%(2013 年)
(3) その他
① エピソード数:5,012 件(30 日以内の重複を除く,
ただし,異なる菌種が検出された場合は別エピ
ソードとする)
② 陽性エピソード数:662 件
100
90
複
数 80
セ 70
ッ 60
ト 50
採 40
取 30
率 20
(%)
10
0
90.7 %
90.3 %
90.2 %
全体
(小児科除く)
内科
外科系
小児科
1.2 %
2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年
・2011年は東日本大震災の影響により低下
・外科系が上昇傾向
・研修医に2セット採取が定着し実践されている
図.那覇市立病院における複数セット採取率の推移
③ 陽性率:13.2%
④ コンタミネーション率:2.4%(2 セット採取に占める,2 セット中 1 セットのみで検出された Bacillus,
Corynebacterium,CNS,Micrococcus,Propionibacterium,viridans Streptococcus の割合。1 セッ
トのみ採取では評価しない。)
2. 採取方法
おもに看護師によって採取されている。夜間休日等も医師の指示のもと,悪寒戦慄,発熱初期,低体温
時など適切なタイミングを看護師が判断し採取されている。消毒方法は 70%アルコール消毒後に 10%ポビ
ドンヨード 2 回にて実施されている。なお今年度は 10%ポビドンヨードに代わり 1%クロルヘキシジングルコ
ン酸塩アルコール製剤(ヘキザック®,吉田製薬)の導入を予定している。採血量は,成人の場合 1 セットに
つき 20ml採取し,好気用・嫌気用ボトルにそれぞれ 10ml ずつ接種している。
3. 受付報告方法
24 時間体制で血液培養ボトルを受け付けており,陽性ボトルについては休日等時間外の午前中当直 2
名体制の時間帯に,すべての当直者によってサブカルチャー,グラム染色が実施され,グラム染色結果が
報告されている。血液培養は BACTEC FX STACK(日本 BD)にて 5 日間のプロトコールで実施している。
連絡先:[email protected] 大城健哉
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企業セミナー C3
血液培養自動分析装置 新機種 BD バクテック TMFX40 システムのご紹介
日本ベクトン・ディッキンソン株式会社
西日本営業部 黒板 政司
血液培養検査は診療報酬の改定でも反映されている通り、感染症診療・検査において非常に重要な役
割を担っており、患者さんのために、採取された血液培養は速やかに培養を開始すべきです。そういった
背景の中で血液培養検査には今までとは違った様々なニーズが生まれてきており、それらに応えられる新
機種の開発が必要でした。それら新たに生まれた様々なニーズにいち早くお応えできる血液培養システム
BD バクテック TMFX40 システムの特徴や運用例などをご紹介させていただきます。
【血液培養装置に求められる新たなニーズ】
□ICU や ER、その他の病院セクションでの速やかな培養開始。
□夜間・休日の血液培養検査の受付。(細菌室の施錠、セキュリティの問題)
□感染制御部門との培養状況の情報共有。
□増加する検体数への対応。
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企業セミナー C4
MALDI バイオタイパー導入により微生物検査室にもたらす影響
シーメンスヘルスケア・ダイアグノスティクス株式会社
宮田 浩
近年、MRSA や緑膿菌に代表される薬剤耐性菌は多くの院内感染発生と感染症治療への大きな問題と
なっています。患者治療の重要な情報となるべき細菌検査結果はこれまで生化学反応を中心に細菌同定
を行う測定機器が主流であり、結果報告までに 3 日~5 日を要し、抗菌薬の選択や投与の継続および変更
に対して多大な時間を要してきました。
2011 年に質量分析装置が医療機器として登録され、微生物同定検査に新たな測定法が登場しました。
弊社では 2011 年 8 月に BURKER 社と販売契約を結び、同年 11 月より MALDI バイオタイパーの発売を
開始、現在では 40 を超えるご施設が質量分析機器を導入されています。MALDI バイオタイパーを導入さ
れている各ご施設により、運用方法の違いはありますが、ルーチン業務に質量分析装置を使用し結果報告
を行っている状況です。
質量分析装置の最大のメリットは迅速性、正確性、経済性です。微生物検査室において MALDI バイオ
タイパー導入後の上記 3 点の変化に加え、将来的に想定される応用についてご案内いたします。
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企業セミナー C5
カルバペネム耐性腸内細菌(CRE)の検出
藤吉 章雄(シスメックス株式会社)
近年、日本国内でも腸内細菌科の薬剤耐性菌が増加傾向にあります。ESBLsを始めとするプラスミド性
AmpC 型βラクタマーゼやカルバペネム耐性腸内細菌(Carbapenem-Resistant Enterobacteriaceae)の検
出が報告されています。新型のカルバペネム耐性菌として NDM-1 型や KPC 型、OXA 型については世
界的に問題となっているが、国内での検出はほとんど稀であり多く検出されるのは IMP 型のメタロβラクタ
マーゼ産生菌である。この IMP 型では「ステルス型」と呼ばれるカルバペネム薬が薬剤感受性試験をして
も MIC が 1μg/ml 以下を示し、CLSI M100-S21 以降のブレイクポイントを使用しても感性となる耐性菌が
検出されています。よって薬剤感受性試験でカルバペネム系薬だけを目安にして判断することにより見落と
す危険性があります。
2014 年 3 月には近畿地方で過去数年にさかのぼり調査した結果メタロβラクタマーゼ産生腸内細菌が
110 名の患者から検出された報告もあり注意が必要となる。カルバペネム系薬に耐性を示さないCREにつ
いて、何を指標としてどのような確認試験をすればよいかが課題としてあります。今回、腸内細菌の薬剤感
受性検査をもとに確認試験をした結果から耐性機構をみたいと考えております。
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ナイトセミナー N1
カンジダカテーテル感染症の話題とアムビゾーム®の位置付け
大日本住友製薬(株)西日本地域本部 村岡正浩
易感染患者における侵襲性/播種性真菌症では、治療開始の遅れが予後不良をもたらす可能性が
ある。そのなかでもカンジダは、日和見感染症の原因真菌として重要である。皮膚や消化管、上気
道、膣などの粘膜に定着しており、宿主の状態により多彩な感染症を起こすことが知られている。
生体の防御バリアである皮膚や粘膜が破綻し、カンジダが体内へ侵入すると、初期免疫細胞とし
て好中球、単球、マクロファージによる貪食・殺菌が開始され、この過程の障害が、カンジダ感染
のリスク因子となる。
カンジダは、血流感染症のなかでも頻度の高い原因菌であり、その発生頻度は増加しており、死
亡率も高いことから臨床的に重要な疾患である。
発症後早期の診断が極めて重要となり、画像診断や血清診断などに基づいた適切な“経験的治療”
の開始と、その後の確定診断による“標的治療”への流れをスムーズに実施することが強く求めら
れている。
カンジダ症の診断において、補助診断に有効な検査として積極的に行われている血清検査、そし
て、確定診断には欠かすことが出来ない真菌学的検査を含め、カンジダの培養検査法と薬剤感受性
試験法について、学術映像を交えて紹介する。
治療において、予後を左右する臨床的課題のひとつにバイオフィルムが挙げられる。バイオフィ
ルムとは、微生物が自ら産生した菌体外マトリックスを纏い、集落を形成したものであり、薬剤や
宿主の感染防御機構など周囲環境からの抵抗性を獲得する。そして、カンジダは、各種カテーテル
の他、人工関節、ステント、心血管系デバイス、シャント、尿カテーテル等、多くの医療機器にバ
イオフィルムを形成することが知られている。
カンジダによるカテーテル関連血流感染症(CRBSI:Catheter related bloodstream infection)は、
易感染状態患者に発症し治療に難渋することが多いことから、治療困難なバイオフィルムを作るこ
とを念頭に置きながら、感染異物の抜去、適切な薬剤選択を行い、難治かつ重篤な合併症併発に留
意しながら治療を継続することが、予後の改善につながると考える。
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ナイトセミナー N2
CLIS が寒天平板希釈法を推奨している菌種の薬剤感受性測定について
-淋菌、偏性嫌気性菌(Bacteroides fragilis group 以外)-
村谷 哲郎
抗菌物質の各種微生物に対する感受性測定に使用する培地、大気条件、温度は、その目的によりいろ
いろな組み合わせで使用される。すなわち、感受性測定は対象とする菌種が発育可能であれば、どんな方
法でも可能であるということである。
検査室で行う薬剤感受性測定は意味合いが異なる。その薬剤を患者に使用した時に有効であるかどう
か、投与量をどう設定すべきかを決める根拠となるからである。日本の薬剤感受性測定法は HIA または
MHA の使用を認めるなど独自のものであったが、現在では USA の標準法である CLSI とほぼ同じ方法に
統一されてきた。測定法については、少なくとも CLSI のブレイクポイントを使用するのであれば、CLSI の標
準法を使用しなければならない。測定条件を示してブレイクポイントを使用しない、すなわちカテゴリーを付
さないのであれば、異なる方法を使用しても構わないであろう。CLSI のブレイクポイントはすべての菌種に
設定されているわけではないし、すべての薬剤に設定されているわけではない。また、実際に検査室で実
施可能な測定法は微量液体希釈法と KB ディスクを用いたディスク拡散法である。E-test も有用な方法であ
るが、現実には特殊なケースのみで実施しているのが現状である。
CLSI の標準法を使用する上での問題点
1.測定条件、ブレイクポイントが設定されていない菌種、薬剤が存在する。
2.ディスク拡散法が認められていない菌種における感受性パネルにない薬剤の対処法
3.寒天平板希釈法のみが認めらえており、微量液体希釈法が認められていない菌種がある。
4.血液添加が必要な菌種におけるディスク拡散法の実施は Mueller Hinton base の血液寒天培地を用
いなければならない。
5.この 5 年間大きな改訂が繰り返されている。
微量液体希釈法
ディスク拡散法
寒天平板希釈法
腸内細菌科,
CAMHB/35℃/大気
MHA/35℃/大気
MHA/35℃/大気
Pseudomonas aeruginosa
18±2 hr
17±1 hr
18±2 hr
Acinetobacter spp.
CAMHB/35℃/大気
MHA/35℃/大気
MHA/35℃/大気
Burkholderia cepacia
22±2 hr
22±1 hr
22±2 hr
その他非腸内細菌科グラ CAMHB/35℃/大気
×
ム陰性桿菌
18±2 hr
Haemophilus influenzae
HTM/35℃/大気
HTM/35℃/5%CO2
22±2 hr
17±1 hr
Streptococcus pneumoniae
18±2 hr
×
CAMHB+LHB/35 ℃ / MHA+ 羊 脱 繊 維 血 液 S22 で復活?
大気/ 22±2 hr
その他 Streptococcus spp.
MHA/35℃/大気
/35℃/5%CO2 /22±2 hr
CAMHB+LHB/35 ℃ / MHA+ 羊 脱 繊 維 血 液 S22 から注釈つき
大気/ 22±2 hr
/35℃/5%CO2 /22±2 hr
寒天平板希釈法が推奨されている淋菌と Bacteroides fragilis group 以外の偏性嫌気性菌を中心に考察
する。
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ナイトセミナー N3
MLST の耐性菌解析における有用性
MLST とは Multi Locus Sequence Typing の略であり、菌種毎に種特異的に保有する House keeping gene
7 種類以上の 400 塩基程度の配列を決定し、菌株ごとに配列の差異をパターン化し、解析する手法である。
株の同一性を検討する目的では、染色体遺伝子の全塩基配列を決定し、比較することが Golden standard
であるが、現実には不可能であるため、種々の方法が提唱されてきた。その中でも DNA 全体を表現できる
ため精度およびコスト面でも群を抜いて優れているのが PFGE (Pulse Field Gel Electrophoresis)であり汎用
されてきた。MLST 法は PFGE に取って代わろうとしている菌株のタイピング法であるが、地域的な流行等の
大きな分類には適しているが、院内感染などを考えるうえでの同一クローンの伝播という解析には必ずしも
適している方法ではない。もちろんどの House keeping gene を選択するかによっても変わってくる。優れた
点は、遺伝子配列での分類の為、誰がどこでどの方法で実施しても、同じ結果で比較できるという点であり、
簡単に標準化できるという点である。
安価で簡便と記載している文献も多数見かけるが、まだまだコストと手間がかかる方法である。しかしながら、
有用であることは間違いなく、特定の耐性菌のルーツを探る上では有用な方法である。身近なところでは、
既に広がってしまった北部九州地区における VRE や ESBL 産生株の解析には有用な方法と思われる。ひ
びき臨床微生物研究会で収集した株についても解析したいところであるが、コスト面に大きな壁がある。
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企業セミナーC6
ドライプレート‘栄研’を使用した第 6 回 EQCS-MIC(九州)精度管理の結果
栄研化学株式会社 マーケティング推進室 MKT3 部1課
光岡 聰
栄研化学では毎年ドライプレートを使用した感受性試験サーベイを各地域で実施しており、九州地区で
は第 6 回を迎えています。今回は non-ESBL 株である Klebsiella pneumoniae A および ESBL 株である
Klebsiella pneumoniae B の 2 株を使用しサーベイを実施しました。
Klebsiella pneumoniae A においては、ほとんどの薬剤で 90%以上の正解率となっており、 良好な成績で
したが、PIPC (正解率 82.9%)に関しては施設間で 2 ~>64μg/mL と MIC 値のばらつきが見受けられま
した。 この株を弊社で試験したところ、接種菌量および培養時間によって MIC 値が他薬剤に比べて大きく
変動した結果が得られました。
この株の各ご施設での MIC 値の測定結果を見ると、PIPC の MIC 値は 2 ~>64μg/mL とばらつきが見ら
れましたが TAZ/PIPC の MIC 値は 4/2μg/mL 前後と低値を示し、CEZ,CAZ,CMZ,IPM などの MIC 値も低
値を示していることから、この株はクラス A 型 βラクタマーゼ (ペニシリナーゼ) の産生株と推測されます。
このように接種菌量および培養時間によっては、結果にばらつきが生じやすい菌株と薬剤の組み合わせも
考えられますので、検査方法および判定のとり方について再度ご確認をお願いいたします。
Klebsiella pneumoniae B においては全ての薬剤で 95%以上の正解率と良好な成績でした。 CAZ と
CAZ/CVA、CPDX と CPDX/CVA を使用した ESBL 産生の確認試験において、ほとんどのご施設で判定基
準である 3 管差の結果が得られており ESBL 産生株と判定できましたが、CAZ だけでは MIC 値に 3 管の
差がなく ESBL 産生株と判定できないご施設がありました。 このことから、ESBL 確認試験におきましては複
数薬剤による測定を推奨致します。
今回は上記報告と併せまして弊社新製品「ドライプレート’栄研’(192 プレート)」および微生物感受性分
析装置「DPS192iX」のご紹介を最後にさせていただきます。
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会長講演
当院における血液培養検査の解析
健和会 大手町病院 臨床検査部病理科
永原 千絵
血液培養検査(以下血培)は感染症診断において重要な検査であり、近年は複数セット採取が推奨され
ています。当院においても複数セット採取が推奨され検体数も増加傾向です。
近年、学会等においても血培のコンタミネーション率や採取率等の報告がなされています。すでに定期
的にデータを取られている施設もあるとは思いますが、当院で集計した結果を説明したいと思います。

使用統計
1.
病院の規模(病床数),年度ごとの平均在院日数,年度ごとの新入院患者数,各年度の在院
患者延べ数。
2.
細菌検査室のデータベースより,血液培養検査検体数(入院・外来,小児科・それ以外の科,
の別),血液培養陽性検体数,陽性症例数,陽性菌種,陽性エピソード数とエピソード別の菌
種。

定義
1.
血培1セットとは,1回の血管穿刺により得られた検体。 “血液培養の複数セットでの提出”は,
同じ日付内に複数セットの血液培養が提出された場合。 “血液培養の1セットでの提出”は,
同日付内に1セットのみ血液培養が提出されている場合。
2.
陽性エピソードについては,菌種にかかわらず,1セットから血液培養が陽性になった場合を1
エピソードと定義。また同一検体から複数菌が検出されている場合はそれぞれ独立したもの。

血液培養の各種指標の定義
1.
採取セット数
2.

100ベッドあたり(各年度の全採取セット数÷ベッド数×100)

1,000 patient-daysあたり( 各年度の全採取セット数÷ 在院患者延数×1000)

新入院数1,000人あたり(各年度の全採取セッ数÷新入院数×1,000)
複数セット採取率

3.
血液培養の陽性率

4.
(合計採取セット数-合計1セット数)÷合計採取セット数×100(%)
陽性「セット数」/総セット数
汚染菌率

コアグラーゼ陰性ブドウ球菌,Propinonibacterium acnes, Micrococcus 属,緑色連鎖球菌,
Corynebacterium 属,Bacillus 属陽性例において,同日2セット以上血液培養が提出された症
例における“1セットのみ陽性検体数”/ “2セット以上提出検体数の合計”
以上を用い集計しました。(参考文献:日本の病院における血液培養採取状況および陽性率の実態調査、
大曲貴夫他)この文献では、30 日以内は1エピソードとしていますが、当院では30日以内の採取が必ずし
も1エピソードとは限らない症例も存在しました。
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一般演題 G1
メタロβ-lactamase 検出法に関する検討
九州病院
芳賀 由美
【背景および目的】 IMP-1 をはじめとするメタロ β-lactamase はモノバクタムは分解できないもののカルバペ
ネムを含む β-lactam を分解可能な広域 β-lactamase である。したがって、メタロ β-lactamase を獲得した菌は、
治療薬選択に難渋するだけでなく、感染対策上も重要な耐性菌である。CAZ をはじめとするセファロスポリ
ン系だけでなく、ESBL に安定であるセファマイシン系の薬剤も高度耐性となることから、スクリーニングは容
易であるが、Class C β-lactamase、KPC type や OXA type の一部などのカルバペネム分解活性を有する広
域スペクトルを有する β-lactamase の鑑別のための確認試験が必要である。確認試験の方法としては、メタ
ロ β-lactamase 阻害剤を用いたディスク拡散法、Cica β テスト、E-test の他に改良ホッジテスト、PCR による遺
伝子の有無をみる方法などがある。今回イムノクロマト(IC)を原理とした IMP 型メタロ β-lactamase 検出キット
クイックチェイサーIMP、阻害剤の併用効果、PCR による遺伝子の検出結果を比較したので報告する。
【材料と方法】1999 年以降ひびき臨床微生物研究会共同研究として収集された以下の基準を満たす株を
使用した。腸内細菌科は CAZ ≧16μg/ml かつ CMZ ≧16μg/ml を満たす 126 株、緑膿菌を含むブドウ糖
非発酵グラム陰性桿菌(NFGNR)は CAZ ≧32μg/ml を示した 74 株の計 200 株を使用した。CAZ 0.03~
256μg/ml 単独および 2-mercaptopropionic acid (MPA) 128μg/ml 併用により、MIC が 8 倍以上低下したも
のを陽性とし、CAZ >256μg/ml で MPA 併用時に≧128μg/ml の場合は判定不能、CAZ ≧128μg/ml で
MPA 併用時に 8 倍以上低下し、≧16μg/ml の場合はディスク拡散法で判定が難しい株であるので、別途表
示した。
【 結 果 】 腸 内 細 菌 科 の Metallo-β-lactamase 産 生 株 54 株 は す べ て 、 PCR の 結 果 、 IMP-1 type
Metallo-β-lactamase 産生株であった。これら 54 株は、PCR とクイックチェイサー®IMP は陽性となった。阻害
剤併用で 8 倍以上 MIC が低下した株は 90.7%(49/54)であった。阻害剤との併用効果を認めなかった株は
5 株存在し、ESBL 産生 Klebsiella pneumoniae 1 株と Enterobacter cloacae 4 株であった。Enterobacter
cloacae 1 株の MIC は、CAZ > 256 μg/ml, CAZ+阻害剤 256 μg/ml であり阻害剤の効果は判定不能であっ
た。Metallo-β-lactamase 非産生株 72 株はすべて、PCR およびクイックチェイサー®IMP は陰性であった。
NFGNR の Metallo-β-lactamase 産 生 株 60 株 の う ち 、 染 色 体 上 に metallo-β-lactamase を 有 す る
Stenotrophomonas maltophilia 2 株、Chryseobacterium indologenes 1 株の計 3 株は、CAZ と阻害剤との併
用のみ陽性となった。その他 54 株中、52 株は PCR にて、IMP-1 type 陽性、1 株は IMP-2 type 陽性、もう 1
株はいずれも陰性であった。この株は Metallo-β-lactamase TMB-2 産生 Acinetobacter baumannii であり、ク
イックチェイサー®IMP と阻害剤の併用は陽性となった。 Metallo-β-lactamase 非産生 14 株は PCR、クイッ
クチェイサー®IMP、阻害剤併用とも陰性であった。
【考察】阻害剤の併用効果と IC 法で異なる結果となった株については、IMP-1 の PCR で説明できるものも
存在した。IMP-1 はもちろん、IMP-2, IMP-6, TMB-2 産生株も IC 法陽性となった。日常検査では、CAZ な
どの感受性を指標に選択し、阻害剤の併用効果の有無を指標に判定している。しかしながら、ESBL や
AmpC 過剰産生株がメタロβ-lactamase を獲得すると阻害剤の併用効果を判定できないケースがあり、判
定不能となってしまう。メタロβ-lactamase 産生菌は増加蔓延防止のために早期検出、早期報告が重要な
耐性菌であり、菌株から 15 min で判定できる IC 法は有用であると考えられた。
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一般演題 G2
当院の過去 3 年間における血液培養検出状況
国立病院機構熊本医療センター 臨床検査科
川上 洋子、林 秀幸
国立病院機構沖縄病院 臨床検査科
香月 耕多
【はじめに】血液培養は重篤な全身感染症の起因菌を効率よく検査できる重要な感染症検査である。今回
我々は当院における血液培養の現状を把握し評価するために、過去 3 年間の血液培養検査について検
討を行ったので報告する。
【対象】2011 年 1 月~2013 年 3 月の 3 年間に当院血液培養を依頼された 15,348 検体を対象とした。検査
は BACT/ALERT 3D(sysmex)を使用し(好気用血液培養ボトル:SA 培養ボトル、嫌気用血液培養ボトル:
SN 培養ボトル、小児用血液培養ボトル:PF 培養ボトル)、最大 5 日間培養した。検討項目は①依頼件数、
②患者一人あたりの血液培養採取セット数、③陽性率、④検出菌内訳の 4 項目とした。なお、「血液培養の
1 セットでの提出」(solitary blood culture:SBC)は、「同一患者から 24 時間以内に 1 セットのみ血液培養が
提出されている場合」と定義し、患者一人あたりの血液培養採取セット数は(合計採取セット数-合計 SBC
セット数)÷合計採取セット数×100(%)で算出した。
【結果】
① 2011 年からの依頼件数は 2011 年 4,578 検体、2012 年 5,080 検体、2013 年 5,690 検体であった。
② 患者一人あたりの血液培養複数セット 表 1 2011~2013 年検出状況まとめ
採取率の平均は 2011 年 47.9%、2012
患者一人あたりの血
血液培養
年 67.1%、2013 年 72.2%であった。
液 培 養複 数セ ッ ト採
総検体数
SBC セット数の診療科別内訳は血液
取率
内科 49.8%、救命救急部 13.3%、呼吸
4,578
47.9%
2011 年
器内科 6.0%であった。
5,080
67.1%
2012 年
③ 血液培養陽性率は 2011 年 16.0%、
5,690
72.2%
2013 年
2012 年 15.1%、2013 年 16.6%であった。
陽性率
16.0%
15.1%
16.6%
また、月単位で陽性率を調べた結果 8.1%~23.1%で推移しており、平均値は 15.9%であった。
④ 血液培養から 2011 年 831 株、2012 年 881 株、2013 年 1062 株が分離された。検出菌内訳の上位 3
菌種はコアグラーゼ陰性ブドウ球菌、Escherichia coli 、Staphylococcus aureus であった。耐性菌は
MRSA 59 株、ESBLs 産生腸内細菌 90 株、ペニシリン中等度耐性 Streptococcus pneumoniae (PISP)
10 株、メタロ―β―ラクタマーゼ産生グラム陰性桿菌 4 株が分離された。
【考察】
今 回 の 解 析 か ら 当 院 の 陽 性 率 は 15.9% と 高 い 傾 向 に あ っ た 。 血 液 培 養 の American Society for
Microbiology(ASM)のガイドラインでは血液培養の陽性率が 5%以下か、逆に 15%を超える場合には、原
因を検索する必要があると指摘している。陽性率の推移を監視し、原因を追究する必要がある。また、今後
は血液培養の精度管理の一環として、1000 patient-days あたりの血液培養採取セット数算出や採血量の管
理を行っていく必要があると思われる。
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一般演題 G3
当院で経験した壊死性筋膜炎を伴った Edwardsiella tarda による敗血症の 1 例
小倉記念病院検査技師部
篠崎 久輝
【はじめに】
Edwardsiella tarda は腸内細菌科に属するグラム陰性桿菌であり、ヘビなどの爬虫類の腸内常在細菌で、ヒ
ラメやウナギなどの病原菌として知られている。Edwardsiella tarda の人への感染は稀であり、その多くは胃
腸炎症状を伴う患者の便より分離される。腸管以外での感染では敗血症や壊死性筋膜炎をきたすことがあ
り、致死率が高い病態として知られている。今回、肝細胞癌を合併した肝硬変症患者において、壊死性筋
膜炎を伴った敗血症を経験したので報告する。
【症例】
69 歳男性。肝細胞癌にて当院加療中の患者。2,3 日前より歩行困難。一昨日より 39.2℃の発熱。左殿部に
発赤あり。ショック状態で当院に救急搬送された。その後、CT にて膿胸を認め、敗血症ショックが疑われ当
院に入院となった。その後、左殿部の発赤が、大腿、腰部にかけて暗紫色に変化。一部水泡形成しており
壊死性筋膜炎と診断された。MEPM、CLDM 投与による治療が行われたが、翌日に死亡された。
【細菌学的検査】
提出された血液培養、胸水、水泡内容液よりグラム陰性桿菌を検出。BD フェニックスにて同定感受性検
査を行い、Edwardsiella tarda と同定された。
【考察】
今回、Edwrdsiella tarda による壊死性筋膜炎を伴った敗血症という稀な 1 症例を経験した。肝細胞癌、肝硬
変患者のような免疫低下による易感染状態である場合は注意が必要である。
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結果報告
第 7 回ひびき臨床微生物研究会 サーベイ 結果報告
実施要綱
本サーベイの目的:耐性機序の明確な現在問題となっている耐性菌、およびこれから問題となると考えられ
る耐性菌を配布し、同定・感受性、報告方法について解析を行う。各施設の状況を見ることにより、自施設
の検査に活かしてもらうことが目的である。また、原則個人参加とし、施設で複数人参加可能であり、個人差
などの参考としてもらう。本サーベイは個人や施設で活かしてもらうために企画するものであり、強制や参加
をお願いするものではない。また、結果を匿名でひびき薬剤耐性菌シンポジウムで公開するが、結果につ
いて解説するが個々の結果を採点したり、評価することが目的ではなく、自由意志参加を原則とする。
検体数:4 形態:チャコール含有スワブ
15 施設に配布し、5/12 現在 14 施設の回答を得た。今回は時間がなかったこともあり、耐性菌は 1 株のみ
で、あとの 3 株は同定を問う問題となってしまった。
A:55 才男性 馬肉生産業者。肺炎の診断にて入院。 血液培養を実施したところ翌日に陽性となった。
コロニーのグラム染色所見と同定菌名を答えなさい。
グラム陽性球菌、グラム陽性球桿菌、グラム陽性桿菌のいずれも正解とする(p13 参照)。
Rhodococcus equi
VITEK-2 では同定できず、BBL クリスタル GP、VITEK-MS では同定な可能であった。
球菌のはずであるが、コリネ様に見えるので、桿菌としてしまうかも。ただし、BBL クリスタルで同定する時に
桿菌を選んでしまうと誤同定される。?または球菌を選択しなければならない。この菌種に限らず、コリネ様
に見える場合は、とりあえず球桿菌として同定を進めていく必要がある。
B:1 歳女児。 発熱、下痢、腹痛により、受診。発熱を認めたたため、血液培養を行ったところ、2 日目に陽
性となり、本菌が分離された。同定菌名を答えなさい。
Yersinia pseudotuberculosis 14/14
あまり分離されない菌であるが、全施設正解であった。
C:60 歳男性 回腸直腸吻合術(セフメタゾール投与)後、発熱を認め、血液培養を実施した。6 時間後に陽
性となった。同定および薬剤感受性試験を実施しなさい。
Escherichia coli 構成型 DHA-1 産生株
誘導型 DHA-1 産生株を出題したつもりであったが、構成型に変異していた。
14/14 全施設 AmpC 産生株と回答していた(p13 参照)。
D: 5 才女児。下痢、発熱を主訴に受診。血液ボトル装填 2 日後に陽性となり、鏡検したところ、グラム陰性ら
せん桿菌が認められた。同定および薬剤感受性試験を実施しなさい。
Campylobacter fetus subsp. fetus
42℃で発育した施設と発育しない施設があった。42℃を少し下回ると十分な発育を認める株であったため
であると考える。1 施設馬尿酸加水分解+としていたが、-のはずです。
CLSI は Campylobacter jejuni と Campylobacter coli の感受性測定法とカテゴリーは示しているが、
Campylobacter fetus については記述がない。
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一般演題 G4
分子生物学的手法をもちいた、全自動尿中有形成分分析装置 UF-1000i と
尿定量培養法による細菌計数乖離例についての検討
和田 淳1、村谷哲郎 2、小林とも子 2
1
シスメックス株式会社 学術本部セルアナリシスセンター
2
株式会社キューリン検査部
【緒言】全自動尿中有形成分分析装置 UF-1000i はフローサイトメーター型の尿中有形成分分析装置であ
る。一般的にフローサイトメーターは液体中の粒子成分を計数する能力に優れているが、UF-1000i による
細菌計数値は時に定量培養法による計数値に比べ、二桁以上多く乖離することがある。今回我々はこの乖
離の原因について、分子生物学的手法による検討を試みた。
【方法】(株)キューリンに 2012 年 11 月 26 日から 12 月 13 日までに培養同定検査を依頼された尿検体のう
ち、UF-1000i で 105 個/ml 以上の菌が検出され、かつ、ドリガルスキー寒天培地(通常大気)および血液寒
天培地・チョコレート寒天培地(5%CO2 )による尿定量培養法(以下、定量培養法)で計数した菌数が
UF-1000i BACT チャンネルによる計数(以下、UF-1000i 法)の値よりも二桁以上少なかった細菌尿検体 35
例を検討対象とした。また対照として、UF-1000i 法と定量培養法での菌数の差が一桁以内に収まった 8 検
体を用いた。検体 1 ml を分取し、12,000 xg、5 分間遠心して上清を除いた沈渣を凍結保存後、ゲノム DNA
を抽出した。これをテンプレートとして、16S rDNA の共通配列プライマーと SYBR Green I を用いた定量的
PCR 法により 16S rDNA の部分配列の増幅をモニターし、濃度既知の大腸菌ゲノム DNA をテンプレートと
して作製した検量線を用いて、もとの検体中に含まれていたおおよその菌数を推定して(以下、定量的
PCR 法)、UF-1000i 法および定量培養法によって計数した菌数と比較した。さらに、16S rDNA の別の共通
配列プライマーを用いたエンドポイント PCR を行い、増幅した約 1300bp の配列を解析して、尿沈渣中に含
まれていた細菌を同定した。
【結果】乖離検体 35 例のうち、定量的 PCR 法と UF-1000i 法との菌数が相関した検体は 27 例(77%)であっ
た。定量的 PCR 法が UF-1000i 法よりも二桁以上少なく計数されたものは 5 例(14%)存在し、うち 3 例は培
養法と二桁以内に収まっていたが、2 例は培養法が UF-1000i 法よりもさらに二桁以上少ない値を示してい
た。また、定量的 PCR 法による菌数が UF-1000i 方よりも二桁以上多く計数されたものは 3 例(9%)あった。
なお、対照として用いた UF-1000i 法と定量培養法の非乖離検体 8 例では、UF-1000i 法と定量的 PCR 法と
の菌数はすべて相関する値を示し、二桁以上乖離した例はなかった。さらに 16S rDNA 配列解析の結果、
特に定量培養法での菌数が 103 個/ml 以下となった検体の多くには、通常の定量培養法では増殖が困難と
思われる菌が多く含まれていたことが示唆された。
【考察】フローサイトメトリーは増殖によるバイアスがかからないこと、画像法よりも大量の試料を感度良く計
数できること、UF-1000i で用いられている染色試薬は細菌と菌以外のデブリスを染め分けるため特異度が
高いこと、等を考慮すると、これらの結果は、UF-1000i が標準好気培養法で増殖できない菌や、患者への
抗菌剤投与により増殖できなかった菌をも検出していることを示唆していると考えられる。検出された菌が尿
路感染症の起炎菌であるかどうかについては今後の検討課題である。
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ランチョンセミナー 2
L2
細菌検査室における同定の Golden Standard について
村谷哲郎
臨床検査における臨床分離株の同定方法はいろいろな方法があり、菌種によりこの方法でないといけな
いと決められているわけではない。また、どこまで菌名を報告するかについても決められているわけではなく、
グラム陽性球菌、腸球菌属、Enterococcus faecium のいずれで報告しても保険点数の算定は同じである。ど
こまで同定を行うべきかについても決められているわけではなく、咽頭検体からコリネ型菌が発育することは
なんら珍しくないが、同定する必要があるだろうか?呼吸器由来α溶血を示すグラム陽性球菌については、
Streptococcus pneumoniae が否定できれば、Streptococcus sp. (α溶血)としてよいのか?いずれにしても決
まりがあるわけではないので、それぞれの検査室の方針に委ねられている。
生化学性状試験で、菌名を同定する方法が主流であるが、この方法は結果をコード化し、その確率論で
決められている。API シリーズや BBL クリスタルのように用手法のキットは判定までに一晩かかるが、
VITEK-2 などの自動機器の場合最短 4 時間で同定終了となるが、糖などの遅分解株の場合には誤同定の
可能性が高くなる。OF 試験管培地を用いた糖からの産生試験は 48~96 時間までの観察が必要とされてい
る。これらのことを踏まえると、同定キット特に自動機器が出した結果をそのまま鵜呑みにしてはいけないこ
とは明白である。グラム染色所見、コロニー性状(形状、臭い、色)、血液寒天培地とドリガルスキー寒天培
地またはマッコンキー寒天培地での発育の違いに矛盾がないか、その他結果を指示するものはないかなど
は、最低押さえておかなければならない。オプトヒン耐性 Streptococcus pneumoniae, コアグラーゼ陰性
Staphylococcsu aureus の存在も知っておく必要がある。
質量分析器も上市されたが、この方法はあくまでもパターン分析であり、精度向上や同定し得る菌名の増
加などはあるものの、絶対的なものではない。この方法は、真菌か細菌かの区別だけできれば、同定名が
出てくる方法であるが、グラム陰性菌であるのにグラム陽性菌の菌名が出てくることやその逆もあるので、前
述の確認方法はより重要である。もちろん、コンタミネーションや菌の取り違いなどを含めてルチン作業で起
こり得るミスを含めて考える必要があるという意味であり、質量分析器があてにならないという意味ではな
い。
それでは菌種同定に関して Golden Standard とすべきものはなんであろうか?16S rDNA の塩基配列約
1,500bpsを決定し、信頼できるデータベースと比較することにより、ほとんどの菌種は確実に同定できるわ
けであるが、通常の検査室で実施できる方法ではない。我々の実施している同定法を紹介するとともに耐
性菌に関するコメント付加の現状を紹介する。
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第 11 回ひびき薬剤耐性菌シンポジウム
学術集会会長 永原 千絵
主催
ひびき臨床微生物研究会
http://www.geocities.jp/hibiki_hrgcm
会長 村谷 哲郎
事務局 北九州総合病院 臨床検査部内
〒800-0257 北九州市小倉南区湯川 5-10-10
有馬 純徳
[email protected]
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