北陸型混合物(FH)における改質再生アスファルト混合物の検討

D-4
北陸型混合物(FH)における改質再生アスファルト混合物の検討
石川県
津幡土木事務所
㈱NIPPO北信越支店
○垣内
試験所
〃
陽一郎
戸谷
賢智
吉田
満
1.はじめに
我が国では循環型の社会形成を目指し、3R(発生抑制・再利用・再生利用)に取り組んでいる。
再資源化率は、平成 20 年度において身近な紙では 63.1%、建設系の建設汚泥では 69.8%となってい
る。そのような中、アスファルトコンクリート塊は、全国集計において平成 12 年度に 98.0%という
高い再資源化率を記録し、以降、平成 14 年度 99.7%、平成 17 年度 98.6%、平成 20 年度 98.4%と一
定の高い水準を維持してきた。石川県においても平成 20 年度におけるアスファルトコンクリート廃
材の再生利用率は、99.7%と高い再資源化率を示している。
この高い再資源化率を維持している一因として、石川県において平成 5 年より採用している再生加
熱アスファルト混合物(以下、再生混合物)の舗装工事への適用が挙げられる。しかし、重交通路線
(交通量区分N5 以上)の表層へ採用しているポリマー改質アスファルトⅡ型(以下、改質Ⅱ型)混
合物について、石川県では再生混合物の適用を見送っているのが現状である。しかし、公共事業が縮
減される中、高い再資源化率を維持するためには、表層で使用している改質Ⅱ型混合物へも再生骨材
を使用する必要がある。そのため、再生骨材を利用した再生混合物が過酷な交通条件下において、新
規材料のみで製造される改質Ⅱ型混合物と同等の品質を確保できるかを確認する必要がある。そこで、
本検討は従来の改質Ⅱ型新規混合物と再生骨材を配合した改質Ⅱ型再生混合物を室内において混合物
性状を比較した結果、所要の品質が確保される再生骨材配合率を見出した。さらに、現道への適用性
検討のための試験舗装の概要について報告するものである。
2.検討混合物と検討事項
本検討における再生混合物は北陸型混合物の密粒度アスファルト混合物(新 20FH)を対象とし、
表-1 に示す配合を検討した。
室内においては、検討混合物ごとにマーシャル安
定度試験による配合試験を行い、最適アスファルト
表-1 検討対象混合物一覧
アスファルト種類
再生骨材配合率
プレミックス
改質Ⅱ型
プラントミックス
改質Ⅱ型
量(OAC)を求める。次に OAC における混合物性
0%
ⅰ)○※
―
状として、マーシャル安定度、動的安定度およびラ
10%
ⅱ)○
―
ベリングによる耐摩耗性について評価を実施した。
30%
ⅲ)○
ⅳ)○
※事前審査認定混合物
3.室内配合試験結果と OAC における混合物性状
3.1
室内配合試験結果
本検討における再生混合物の使用材料は、石川県津幡町内にあるアスファルトプラントで使用して
いる新規の砕石 5 号、6 号、7 号、天然砂、石灰岩石粉、再生骨材およびプレミックス改質Ⅱ型、ス
トレートアスファルトと再生用添加剤、プラントミックス用改質材である。検討混合物ⅰ)~ⅳ)の
合成粒度とマーシャル安定度試験から求められた OAC および OAC におけるマーシャル性状は、表-2
に示すとおりである。また、合成粒度の粒度曲線は、図-1 に示すとおりである。
表-2 検討混合物の合成粒度とマーシャル性状
混合物種
ⅰ)再生0%
プレミックス
100.0
99.1
87.0
55.3
43.4
28.7
17.1
9.3
7.3
5.4
項目
26.5 (mm)
通 19.0
過 13.2
質 4.75
量 2.36
百 0.60
分 0.30
率 0.15
(%) 0.075
OAC (%)
3
基準値
密粒度アスファルト混合物
新20FH
20(参考)
100
100
95~100
95~100
75~095
75~090
45~065
45~065
30~050
35~050
14~035
18~030
08~024
10~021
05~013
06~016
04~011
04~008
密粒度アスファルト混合物(新20FH)
ⅱ)再生10% ⅲ)再生30% ⅳ)再生30%
プレミックス
プレミックス
プラントミックス
100.0
100.0
100.0
99.1
99.1
99.1
86.9
86.7
86.7
55.4
55.7
55.7
43.4
43.6
43.6
28.9
28.8
28.8
17.3
18.0
18.0
9.0
9.5
9.5
7.1
7.2
7.2
5.2
5.2
5.6
5.2~6.2※
―
密度 (g/cm )
空隙率 (%)
2.367
2.373
2.374
3.4
3.5
3.4
3.5
3~5
3~6
飽和度 (%)
78.5
77.4
77.9
78.5
75~85
70~85
安定度 (kN)
17.2
9.1
9.1
8.7
6.86以上
4.90以上
38
27
27
32
20~40
20~40
フロー値(1/100cm)
2.357
5~7 ※
―
※)基準値欄の数値は、標準的なアスファルト量の範囲を示す。
注)表中のプレミックスおよびプラントミックスは、改質材の添加方式を示す。
100
90
3.2
OAC における混合物性状結果
配合試験によって求められた OAC における、
ホイールトラッキングによる動的安定度と変形
通過質量百分率(%)
80
70
60
再生0%
50
再生10%
40
再生30%
30
20
率およびラベリングによるすり減り量の結果は、
10
0
図-2 および図-3 に示すとおりである。
0.15
0.075
0.30 0.60 2.36
4.75
13.2
ふるい目(mm)
26.5
19.0 図-1 混合物ごとの合成粒度曲線図
9,000 6,380 7,480 9,550 1,000 10 0.1
0.005
0.007
0.006
0.004
1 0.01
0.001
再生0%
プレミックス
再生10%
プレミックス
再生30%
プレミックス
0.4
10
1
100 0.5
100
再生30%
プラントミックス
図-2 OAC における動的安定度と変形率
すり減り量(cm2)
動的安定度(回/mm)
10,000 変形率
変形率(mm/min)
動的安定度
100,000 0.3
0.23
0.25
0.21
0.19
0.2
0.1
0
再生0%
プレミックス
再生10%
プレミックス
再生30%
プレミックス
再生30%
プラントミックス
図-3 OAC におけるすり減り量
配合試験における合成粒度は、再生骨材配合率に関係なく大きな違いはない。しかし、動的安定度
の結果は、プレミックス改質Ⅱ型へ再生骨材を配合することで数値がやや小さくなる傾向が見られた。
これは、OAC の中に再生骨材の旧アスファルト分が含まれるⅱ)およびⅲ)の混合物では、ⅰ)に比
べて改質成分である SBS などの量が相対的に少ないためと考えられる。
しかし、検討対象とした混合物の変形率を比較すると 0.003(mm/min)の違いであり、耐流動性
としてはそれぞれの試験値に大きな有意差はないと言える。つまり、本検討におけるすべての改質Ⅱ
型再生混合物の耐流動性は新規の混合物と同等と考えられる。
次にすり減り量の結果より、いずれの混合物もすり減り量が 0.3(cm2)未満であることから、改質
材の添加方式の違いや再生骨材の有無による耐摩耗特性における差は見られなかった。
4.試験練り
本検討では、検討混合物のうち事前審査認定混合物ではない再生骨材を配合した3混合物について、
アスファルトプラントにおける試験練りを実施した。それぞれの混合物の OAC におけるマーシャル
性状値および動的安定度は、表-3 に示すとおりである。
表-3 OAC における試験練り結果一覧表
再生10% プレミックス
混合物種
項 目
密度
ー
マ 空隙率
フロー値
動的安定度
再生30% プラントミックス
室内試験
試験練り
室内試験
試験練り
室内試験
試験練り
(g/cm )
(%)
3
2.373
2.377
2.374
2.378
2.357
2.359
3.5
3.3
3.4
3.2
3.5
3.4
(%)
15.5
15.3
15.4
15.2
16.3
16.2
(%)
77.4
78.4
77.9
78.9
78.5
79.0
(kN)
9.1
9.3
9.1
9.5
8.7
9.5
ャ
性
骨材間隙率
状シ
飽和度
値
ル 安定度
再生30% プレミックス
(1/100cm)
(回/mm)
27
29
27
29
32
29
6,380
6,680
7,480
7,730
9,550
10,310
表-3 の試験練り結果から、再生骨材を配合した改質Ⅱ型再生混合物は、各混合物とも室内配合試験
と同等な数値を示し混合物性状として問題ないことが確認された。
なお、再生骨材を配合しない新規混合物については、事前審査認定混合物であることから試験練り
対象から除外した。
5.試験舗装
5.1
至宝達志水町
試験舗装箇所の選定
試験舗装箇所の選定としては、石川県津幡土木事務
所が管理する路線のうち当該道路が交通量区分でN5
以上であることを条件とした。
そこで、図-4 に示す国道 159 号押水バイパスの宝達
志水町免田から国道 8 号津幡北バイパスの津幡町加茂
試験舗装箇所
を結ぶ主要地方道高松津幡線の内高松地先を試験舗装
箇所として選定した。当該路線は、金沢と能登を結ぶ
幹線道路の一つとして、1 万台/日を超える交通量で
あることから改質Ⅱ型再生混合物の試験舗装箇所とし
て適していると考えた。なお、図-4 に示す地図は国土
地理院の電子国土ポータルサイトより引用した。
至津幡町
図-4 試験舗装箇所
5.2
試験舗装内容と追跡調査項目
本試験舗装箇所は、上層路盤である加熱アスファルト安定処理層および基層、表層の打換え工法に
よる補修であり、その表層に検討混合物を使用した。試験舗装箇所における工区割り平面図は、図-5
に示すとおりである。また、各工区共通の調査項目と調査位置は、図-6 に示すとおりである。
試験舗装は、平成 23 年 12 月に実施し、施工直後に初期値として測定した各工区の調査項目ごとの
測定値は表-4 に示すとおりである。
3.25m
44m
44m
1工区 密粒度アスコン(新20FH)
再生材なし(プレミックス改質Ⅱ型)
44m
2工区 密粒度アスコン(新20FH)
再生材30%(プラントミックス改質Ⅱ型)
44m
3工区 密粒度アスコン(新20FH)
再生材10%(プレミックス改質Ⅱ型)
4工区 密粒度アスコン(新20FH)
再生材30%(プレミックス改質Ⅱ型)
至津幡町
至宝達志水町
図-5 試験舗装箇所工区割り平面図
0.50m
22m
12m
【凡例】
表-4 工区別調査結果一覧表
1.50m
1.00m
3.25m
44m
調査項目
22m
20m
12m
:わだち掘れ量測定
:平たん性測定
:すべり抵抗測定(OWP)
:ひび割れ率測定
全面
工区別
:目視観察
:すべり抵抗測定(BWP)
図-6 測定位置詳細図(各工区共通)
わだち掘れ量 (mm)
ひび割れ率
(%)
平たん性
(mm)
すべり抵抗※ (BPN)
1工区
再生0%
プレミックス
0.0
0.0
1.76
OWP BWP
74
74
2工区
再生30%
プラントミックス
0.0
0.0
0.99
OWP BWP
75
75
3工区
4工区
再生10%
再生30%
プレミックス
プレミックス
0.0
0.0
0.0
0.0
1.26
1.78
OWP BWP OWP BWP
74
74
73
73
※)すべり抵抗値は、路面温度を 20℃に補正した数値を示す。
施工直後の調査結果のうち、平たん性については
工区ごとに差が見られる。特に 1 工区と 4 工区にお
いて、他の 2 工区と比較してやや大きな数値を示し
た。これは、工区の施工延長が短いこと、さらに、
1 工区および 4 工区が工事の起点および終点に位置
する工区であるため、人力施工となった範囲が含ま
れていることが要因として考えられる。なお、試験
舗装箇所の工事完成写真は、写真-1 に示すとおりで
試験舗装車線
ある。
写真-1 工事完成写真
6.おわりに
本検討では、石川県でこれまで採用してこなかった北陸型の表層用混合物に再生骨材を配合し、室
内配合試験から試験舗装までを行った。再生骨材を配合した再生混合物は、室内試験や試験舗装にお
いて新規混合物との大きな性状の違いが見られなかった。今後、試験舗装箇所において改質材の添加
方式と再生骨材の配合率の違いによる路面性状の経年変化を調査し、石川県に適した改質Ⅱ型再生混
合物を見出す一助としたい。
舗装ストックが増加し、将来的に舗装の維持補修が多くなると予想されるなか、日本における人口
比率と同様に石川県においても少子高齢化が進むことで、今後、維持修繕費用が縮減される可能性が
ある。このような状況において、本検討が、舗装の長寿命化とともに、これまで石川県で維持してき
たアスファルトコンクリート廃材の高い再資源化率の維持に貢献できることを期待する。