東野町合同庁舎空調設備のリニューアル工事 - エネルギー有効利用のご

―― 実 施 例 ――
東野町合同庁舎空調設備のリニューアル工事
!中電工 竹原営業所 亀 井 康 雄
■キーワード/
■キーワード/氷蓄熱・リニューアル
工 期 平成11年8月∼平成12年3月
1.はじめに
設 計 ・ 監 理 ㈱K構造研究所
東野町は広島県の中南部,瀬戸内海のほぼ中央の大崎
建 築 ・ 施 工 ㈱中電工
上島の東部に位置し,竹原からフェリーで20分ほどの
空調設備施工 ㈱中電工
古い歴史と自然が調和する人口3,100人余りの町である。
給排水設備施工 ㈱中電工
今回,設備機器などの老朽化に伴って空調設備のリニ
電気設備施工 ㈱中電工
ューアル工事を行い,熱源機器に氷蓄熱式ヒートポンプ
(エコ・アイス)
を採用し,省エネルギー化と運転および
3.空調設備概要
保守メンテナンスの簡易な設備システムへの改修を行っ
3−1 主要機器
た。これによって電気エネルギーの有効活用をはかり,
<改修前>
地球環境にやさしい施設として完成することができたの
冷房 水熱源式パッケージエアコン
冷房能力
で,以下にその概要を紹介する。
240,000kcal/h×1台
150,000kcal/h×1台
2.建物概要
5,000kcal/h×1台
建 物 名 称 東野町合同庁舎
4,000kcal/h×1台
所
在
冷却塔
地 広島県豊田郡東野町白水
80RT×1基
60RT×1基
建 物 用 途 事務所
暖房 温水ボイラ
(A重油焚き)
建 築 面 積 1,355.6㎡(増築棟 76.2㎡)
定格出力
延 床 面 積 2,759.0㎡(増築棟 142.9㎡)
構 造 増築棟 S造
349,000kcal/h×1基
250,000kcal/h×1基
地上3階
既存棟 RC造 地上3階
写真−1 建物外観
― 19 ―
ヒートポンプとその応用 2000.
11.
No.53
―― 実 施 例 ――
トの低減を図っている。
<改修後>
運転操作は集中リモコンおよび個別リモコンを設置す
氷蓄熱式ヒートポンプビルマルチエアコン
ることによって,中央一括および各室個別の運転制御を
(高ピークシフト形・耐塩害仕様)
室外機 冷房能力
行うことができ,運転管理面の省力化を図っている。
56.0kW× 4台
暖房能力
図−1に空調設備系統図を示す。
56.0kW
暖房 300MJ× 4台
3−3 熱源設備の特長
室内機 天井カセット形
5.0∼11.2kW×29台
① 電力負荷の平準化
床置形
4.5kW× 2台
蓄熱ユニット
冷房 450MJ
夜間蓄熱運転を行うことによって,電力需要を昼間か
非蓄熱式ヒートポンプビルマルチエアコン
ら夜間にピークシフトするとともに,ピーク時間帯の調
(耐塩害仕様)
整(ピークカット)によって最大需要電力量の抑制を図る
78.4kW× 1台
ことができる。
暖房能力
88.0kW
② ランニングコストの低減
冷房能力
61.5kW× 1台
暖房能力
69.0kW
上による熱源機器容量の圧縮によって,ランニングコス
冷房能力
72.4kW× 1台
トの低減を図ることができる。
暖房能力
81.5kW
③ 環境問題への寄与
室外機 冷房能力
冷房能力
16.0kW× 1台
暖房能力
18.0kW
室内機 天井カセット形
5.0∼11.2kW×26台
床置形
4.5kW× 2台
安価な夜間電力の利用および蓄熱利用運転時のCOP向
電力負荷の平準化によって,総合的に発電コストの低
3−2 リニューアル工事の内容
① 空調システム
本空調システムは,温水ボイラ+水熱源式パッケージ
エアコン方式から,氷蓄熱式ヒートポンプエアコンおよ
び空気熱源式ヒートポンプエアコンへのリニューアル工
事であり,空調系統は大きく分けて非蓄熱および蓄熱の
2系統に系統分けをしている。氷蓄熱式空調系統は,事
務室・教育委員会室・玄関ホールなど常時使用されてい
て空調負荷変動の少ない部屋に使用し,非蓄熱式空調系
統は,会議室・大ホール・議場など常時使用されること
がなく負荷変動の大きい部屋に使用し,ランニングコス
蓄熱槽
J450
蓄熱槽
J450
写真−2 室外機外観
(新館)
J615
J728
J450
J160
旧館へ
RFL
2FL
J50×1,J56×3,J71×2,J90×3
議員控室・委員会室・電話交換室・廊下
J50×1,
J90×1
事務局・議長室
J56×1,J80×7
事務室・収入役室
J80×6,J112×1
事務室・印刷タイプ室
1FL
図−1 空調設備系統図
ヒートポンプとその応用 2000.11.No.53
J80×4,J200×2
会議室・議場
― 20 ―
J80×2
応接・会議室・町長室
―― 実 施 例 ――
1.概要 隣地境界線における目標騒音値を45dB
(A)とし,騒音計算
を行う。
2.計算式 距離減衰 20Log
(r/A) r=機側 R=受音点までの距離
=1m =23m
3.対象機器 室外機:ICE
吐出音:ICE−D 周囲音:ICE−S
4.騒音源 室外機3台分の合成音による。
(騒音値はメーカー資料による)
No.
(dB
(A)
)
オクターブバンド中心周波数
(Hz)
SPL
項 目
OA
63
125
250 500 1,000 2,000 4,000 8,000
1 ICE r = 1 dB(C)
70.3 66.0 66.0 63.0 56.0 53.5 52.0 38.0 37.0
r = 1 dB(A)
60.0 40.0 50.0 54.0 53.0 53.5 53.0 39.0 36.0
5.周囲状況
A=25.0m
Am
写真−3 玄関ホール
ICE
減を図るとともに,CO2の排出量を抑制することが可能
隣地境界線
となる。通産省資料によると,わが国における平成10
6.検討
(a)吐出音
年度の電力負荷率は58.3%となっており,負荷率を1%
No.
改善することによって,炭素換算で約20∼30万t程度
(dB
(A)
)
オクターブバンド中心周波数
(Hz)
SPL
項 目
OA
のCO2排出抑制効果が期待できる。
3−4 検討事項
63
125
250 500 1,000 2,000 4,000 8,000
1 CT−1D r = 1.0m
60.0 40.0 50.0 54.0 53.0 53.5 53.0 39.0 36.0
2 補正値
10
10
10
10
10
10
10
10
10
3 距離減衰 25.0m −27.2 −28 −28 −28 −28 −28 −28 −28 −28
境界線でのSPL
① 空調機設置スペースおよび重量の検討
氷蓄熱式空調機を設置するには同等容量の非蓄熱式に
42
22.0 50.0 54.0 53.0 53.5 53.0 39.0 36.0
(b)周囲音
比べて,保守点検スペースを含め約3倍のスペースを必
No.
(dB
(A)
)
オクターブバンド中心周波数
(Hz)
SPL
項 目
OA
要とするため,その設置スペースを屋上に確保した。
また,氷蓄熱式空調機を屋上に設置するにあたっては,
63
125
250 500 1,000 2,000 4,000 8,000
1 CT−1D r = 1.0m
60.0 40.0 50.0 54.0 53.0 53.5 53.0 39.0 36.0
2 補正値
10
10
10
10
10
10
10
10
10
3 距離減衰 25.0m −27.2 −28 −28 −28 −28 −28 −28 −28 −28
境界線でのSPL
空調機重量(10.4t)と架台重量(0.5t)に基づき建築構
造計算を行い,梁上に分散して荷重がかかるよう配置計
42
22.0 50.0 54.0 53.0 53.5 53.0 21.0 18.0
7.検討結果
画を行った。
No.
(dB
(A)
)
オクターブバンド中心周波数
(Hz)
SPL
項 目
OA
② 騒音対策の検討
境界線での合成SPL
氷蓄熱空調機の夜間運転による騒音値の検討を行い,
63
125
250 500 1,000 2,000 4,000 8,000
45.0 25.0 35.0 39.0 38.0 38.5 38.0 24.0 21.0
8.考察 隣地境界線における騒音値は45dB(A)となり,消音装置を
設置しなくても目標騒音値を満足する。
隣地境界での騒音値が45dB(A)以下となるよう距離減
衰により解決する方向で室外機の配置を計画し運転騒音
図−2 騒音計算値
についての検討を行った。
この結果,隣地境界線における騒音値は45dB(A)と
なり,消音装置を設置しなくても運転音を目標の範囲内
ても作業エリア・立ち入り禁止区域を明確に表示するこ
に抑えることができ,完成後の測定結果も満足できるも
とによって,第三者災害の防止に努めた。
のであった。
4.おわりに
図−2に騒音計算値と完成後の測定値を示す。
③ 作業工程の検討
現在,電気エネルギーの有効活用を図るため,電力負
工事は庁舎の日常業務を行いながら進める必要があ
荷平準化対策である夜間電力の有効活用が国策事業とし
り,平日の業務時間帯は作業ができないため,業務終了
て重要視されており,官民一体となり普及展開中である。
後の6時以降および土・日曜日の休日での作業となっ
氷蓄熱空調システムは,ランニングコストの低減化とと
た。作業工程を計画するにあたっては,業務に支障のな
もに,CO2排出を抑制し,地球温暖化防止に対しても効
いように詳細な工程計画を立案する必要があった。また
果のある,環境にやさしい省資源循環形の都市づくりに
使用中の建物であるため,庁舎内の執務者および外来者
有効な空調設備として注目をあびている。今後も氷蓄熱
に対して危害を及ぼすことのないように安全対策を行う
式空調システムの普及拡大に注力し,地球環境負荷の低
とともに,建築物ならびに事務機器・備品などの養生お
減に寄与したいと考える。
よび作業後の片づけ・清掃にも細心の注意を払い,作業
を行う必要があった。工程管理に際しては詳細な週間工
おわりに本工事施工にあたり,ご指導,ご協力をいた
だいた関係各位の皆さまに厚くお礼申しあげます。
程表に基づき工程管理を行うとともに,安全対策につい
― 21 ―
ヒートポンプとその応用 2000.
11.
No.53