労 働 者 の た め に 行 う 措 置 (2) 健康診断 安衛法第66条では,健康診断を以下の5種類に分け,その対象の拡大,検査項目の追加等,内容の 充実を図るとともに,これら健康診断の結果に基づく措置等について定めました。 ア 一般の項目についての健康診断(第1項) イ 有害業務に従事する労働者に対する特別の項目についての健康診断(第2項前段) ウ 一定の有害業務に従事した後,配置転換した労働者に対する特別の項目についての健康診断 (第2項後段) エ 有害業務に従事する労働者に対する歯科医師による健康診断(第3項) オ 都道府県労働局長が指示する臨時の健康診断(第4項) 労働者は事業主の行う健康診断を受けなければなりませんが, 事業主の指定した医師又歯科医師が行 う健康診断を受けることを希望しない場合は,他の医師,歯科医師の行う健康診断をうけ,その健康診 断の項目ごとに結果を記載した書面を事業主に提出しなければなりません。 (第5項) ア 一般の項目についての健康診断(第1項) (ア) 雇入れ時の健康診断(安衛則第43条) 常時使用する労働者の雇入れの直前又は直後に行う健康診断で適正配置及び入職後の 健康管理の基礎となるものであり,検査項目の省略は認められない。 ◎ a b c d e f g h i j k 実施すべき検査項目(11項目) 既往歴及び業務歴の調査 自覚症状及び他覚症状の有無の検査 身長、体重、視力、聴力(1000ヘルツ及び4000ヘルツの音に係る聴力)の検査 胸部エックス線検査 血圧の測定 血色素量及び赤血球数の検査(以下「貧血検査」という) GOT,GPT,γ−GTP,の検査(以下「肝機能検査」という) 血清総コレステロール及びHLDコレステロール、血清トリグリセライドの量の検査(以下「血中脂質検査」という) 血糖検査 尿中の糖及び蛋白の有無の検査(以下「尿検査」という) 心電図検査 (イ) 定期健康診断(安衛則第44条) 雇入時の健康診断の結果を基礎として,労働者の健康状態の推移を把握し,潜在する疾病を早 期に発見する目的として行うものである。1年以内毎に1回定期的に行わなければならない。 ◎ a b c d e f g h i j k 実施すべき検査項目(11項目) 既往歴及び業務歴の調査 自覚症状及び他覚症状の有無の検査 身長、体重、視力、聴力(1000ヘルツ及び4000ヘルツの音に係る聴力) の検査 胸部エックス線及びかく痰検査 血圧の測定 貧血検査 肝機能検査 血中脂質検査 血糖検査 尿検査 心電図検査 なお、医師が必要でないと認めるときは次の項目について省略できます。 (安衛則第44条第3項、平成10年労働省告示第88号) a 身長の検査 20歳以上の者 b かく痰検査 胸部エックス線検査によって病変の発見されないもの 同検査により結核発病の恐れがないと診断されたもの c 貧血検査,肝機能検査,血中脂質検査,心電図検査 35歳未満の者及び36歳以上40歳未満の者 (ウ) 特定業務従事者の健康診断(安衛則第45条) 安衛則第13条第1項第2号に掲げる業務に常時従事する労働者に対しては, 当該業務への配 置換えの際, 及び6か月以内毎に1回定期的に定期健康診断と同じ内容の項目について行わなけ ればならない。 ただし,胸部エックス線検査及びかく痰検査については年1回で足ります。 また,定期の健康診断に関しては,以下a∼cの場合で医師が必要でないと認めるときには当 該項目について省略でき,dは医師が適当と認める聴力の検査をもって代えることができます。 a 身長の検査 b かく痰検査 20歳以上の者 胸部エックス線検査によって病変の発見されない又は、同検 査により結核発病の恐れがないと診断された場合 c 貧血検査,肝機能検査,血中脂質検査,心電図検査 40歳未満の者(35歳の者を除く) d 聴力の検査 45歳未満の者(35歳及び40歳の者を除く),又は,前回 の健康診断で受診した場合 (エ) 海外派遣労働者に対する健康診断(安衛則第45条の2) 労働者を6か月以上海外派遣しようとするとき及び6か月以上派遣されていた労働者を本邦 の地域内で業務に就かせようとするときに次の項目について健康診断を行わなければならない。 a 定期健康診断の項目 b 労働大臣が定める次の項目のうち医師が必要と認めるもの (a) 腹部画像検査 (b) 血液中の尿酸の量の検査 (c) B型肝炎ウィルス抗体検査 (d) ABO式及びRh式の血液型検査(派遣前に限る) (e) 糞便塗抹検査(帰国後に限る) (オ) 結核健康診断(安衛則第46条) 雇入時,特定業務従事者,定期及び海外派遣労働者に対する健康診断の結果,結核の発病のお それがあると診断された労働者に対し,その後おおむね6月後に次の検査を行わなければなら ない。 (医師が認めるときは(b)について省略可) (a)エックス線直接撮影による検査およびかく痰検査 (b)聴診,打診その他必要な検査 (カ) 給食従業員の検便(安衛則第47条) 雇入時、 当該業務への配置換えの際に検便による健康診断を行わなければならない。 イ 有害業務に従事する労働者に対する特別の項目についての健康診断(第2項前段) 政令で定める有害な業務として次に掲げる業務を指定しています。 これらの業務に従事する労働者として雇い入れる際又は当該業務へ配置換えする際及び所定の 期間ごとに定期に健康診断を行わなければいけません。 この特別の健康診断において実施すべき項 目等についてはそれぞれ各規則において定められています。 (ア) 高圧室内業務及び潜水業務 (高気圧作業健康診断・高圧則第38条) (イ) 放射線業務 (電離放射線健康診断・電離則第56条) (ウ) 一定の特定化学物質を製造しもしくは,取り扱う業務又は,製造等禁止物質を試験研究のため 製造し,もしくは使用する業務 (特定科学物質等健康診断・特化則第39条) (エ) 鉛業務 (鉛健康診断・鉛則第53条) (オ) 四アルキル鉛等業務 (四アルキル鉛健康診断・四アルキル鉛則第22条) (カ) 有機溶剤業務 (有機溶剤健康診断・有機則第29条) ウ 有害業務の従事後、配置換えした労働者に対する特別の項目についての健康診断 (第2項後段) 有害業務のなかには, その業務に従事することにより生じる健康障害の発生までの潜伏期間が長い ものがあります。そのため,他の業務に配置転換された後も,当該有害業務に係る特別の項目につい ての健康診断をおこない健康障害の早期発見等,適切な健康管理を進める必要があります。安衛令第 22条2項で定められた物質を製造し又は取扱う業務を行う労働者はこの対象となります。 エ 特定の業務に従事する労働者に対する歯科医師による健康診断(第3項) 有害な業務のうち安衛令第22条第3項に規定する塩酸,硝酸など,歯又はその支持組織に有害 な物のガス,蒸気又は粉じんを発散する場所における労働者に対し,雇入れの際,当該業務への配 置換えの際及び当該業務についた後6月以内ごとに1回,定期に,歯科医師による健康診断を行わ なければならない。 オ 都道府県労働局長が指示する臨時の健康診断(第4項) 都道府県労働局長は特定の職業性疾病が多発したときなど労働者の健康を保持する必要がある と認められる時は,直ちに特別の項目の健康診断を実施したり,その職業性疾病を予防するための 適切な措置をとる必要があるときは,特別の項目を追加して健康診断を実施するなど必要な事項を 指示することができます。 (5) 自発的健康診断の結果の提出(第66条の2) 深夜業に従事する労働者(以下「深夜業従事者という」 。)の健康管理を図るため,自己の健康に不 安を有する深夜業従事者であって,事業主の実施する次の特定業務健康診断の実施を待てない者が自 らの判断で受信した健康診断の結果を事業主に提出した場合,事業主は特定業務健康診断の場合と同 様の事後措置等を講じることが義務付けられます。 (6) 健康診断を受けて事業主が行うこと ア 事業主は健康診断有所見者について当該労働者の健康を保持するために必要な措置について医師 又は歯科医師の意見を聴かなければなりません。 (安衛法第66条の4) イ 医師又は歯科医師の意見により,その必要があると認めるときには当該労働者の実情を考慮し,就 業場所の変更,作業環境測定の実施等,適切な措置を講じなければなりません。 (安衛法第66条の5) (「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」(平8.10.1公示第1号、平14.2.25最終改訂)) ウ 事業主は健康診断を受けた労働者に対し,当該健康診断の結果を通知しなければなりません。 (安衛法第66条の6) 第17表 健康診断を行うべき業務 健康診断の種類 一 般 定期健康 診断 常時使用する労働者(安衛則第13 1年以内ごとに1回 〃 条第1項第2号に該当する特定有 (毎年一定の時期であること) 安衛則44条 害業務を除く) 配置換え時 の健康診断 特定有害業務に常時従事する労働 者 当該業務への配置換えの際, 6か月以内ごと 〃 安衛則45条 海外派遣労働者 6ヵ月以上海外派遣をしよう とする者及び派遣されていた 者 〃 安衛則45条 の2 結核健康 診断 雇い入れ時健康,又は定期検診に おいて結核の発病の恐れがあると 診断されたとき 結核の発病のおそれがあると 診断されてから6か月後 〃 安衛則46条 給食従業員 の検便 給食従業員 雇い入れ時又は当該業務への 配置換えの際 〃 安衛則47条 受 診 対 象 者 実 施 時 期 根 拠 有機則 健康診断 屋内作業場,タンク,船倉又は坑 において第一種有機溶剤,第二種 有機溶剤を製造し又は取扱う業務 雇い入れ時,当該業務に配置 換えの際,6か月以内ごと 安衛法66条 2項 有機則29条 鉛則 健康診断 鉛業務に常時従事する労働者 雇い入れ時,当該業務に配置 換えの際,6か月以内ごと 〃 鉛則53条 特化則 健康診断 特化則業務に常時従事する労働者 雇い入れ時,当該業務に配置 換えの際,その後安衛令別表 3に掲げる期間以内ごと 〃 特化則39条 電離則 健康診断 放射線業務常時従事者で管理区域 立入者 雇い入れ時,当該業務に配置 換えの際,その後6か月以内 または3か月以内ごと 〃 電離則56条 四鉛則 健康診断 四アルキル鉛業務に常時従事する 労働者 雇い入れ時,当該業務に配置 換えの際,その後3か月以内 ごと 〃 四鉛則22条 高圧則 健康診断 高圧室内業務又は潜水業務に常時 従事する労働者 雇い入れ時,当該業務に配置 換えの際,その後6か月以内 ごと 〃 高圧則38条 配置換え後 の労働者に 対する特別 な健康診断 安衛令第22条第2項に定める発 ガン性物質を取り扱う業務 配置換え後,他の業務に配置 〃 転換してから引き続き,6ヵ 安衛則45条 月以内ごと又は1年以内ごと 歯科医師 による 健康診断 歯の支持組織に有害な影響を及ぼ す恐れのある業務 雇い入れ時,当該業務に配置 換えの際,その後6か月以内 ごと 健康診断の種類 特 殊 健 康 診 断 雇い入れ時 根 拠 常時使用する(しようとする) 労働者 海外派遣労 働者の健康 診 診断 断 実 施 時 期 雇い入れ時 の健康診断 健 康 受 診 対 象 者 安衛法 66条1項 安衛則43条 安衛法66条 3項 安衛則48条 (6) 病者の就業禁止 事業者は,伝染性の疾病等,一定の疾病にかかった労働者の就業をさせてはいけません。 (安衛法第68条) 就業を禁止すべき疾病の種類及び程度は,次のとおりです。 (安衛則61条) ア 病毒伝ぱのおそれのある伝染性の疾病にかかった者 これには,結核,梅毒,淋疾,トラコーマ,流行性角膜炎およびこれに準ずる伝染性疾患にかかっ ている者があります(昭47.9.18 基発601の1)。 ただし,伝染予防の措置をした場合は就業させてもよい。 イ 心臓,腎臓,肺等の疾病で労働の為病勢が著しく増悪するおそれのあるものにかかった者 ウ その他厚生労働大臣が定めるものにかかった者 なお,事業者が,これらの疾病にかかった労働者の就業の禁止をしようとするときは,あらかじめ 産業医その他専門の医師の意見をきかなければなりません。 (安衛則第61条第2項) (鉛中毒にかかっ ている者等(鉛則57) ,四アルキル鉛中毒にかかっている者等(四アルキル則26)及び減圧症等にか かっている者等(高圧則41)についても,それぞれの業務への就業が禁止されています。 ) (7) 健康教育,健康相談等(安衛法第69条) 事業者は,労働者に対する健康教育及び健康相談その他健康の保持増進を図るため必要な措置を,継 続的かつ計画的に講じるように努めなければならず, 労働者自身もこれらの措置を利用して健康の保持 増進に努めなければなりません。 また,厚生労働大臣は,事業者が講じるべき健康の保持増進のための措置に関して,その適切かつ有 効な実施を図るため必要な指針を公表し,また,その指針に従い,事業者に対し,必要な指導等を行う ことができます。 (安衛法第70条の2) (8) 体育活動等についての便宜供与等(安衛法第70条) 事業者は,労働者の健康の保持増進を図るため,体育活動,レクリエーション活動等についての便宜 を供与する等必要な措置を講じるよう努めなければなりません。
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