太径ストランドの実用化に関する研究 - 大成建設

大成建設技術センター報 第40号(2007)
太径ストランドの実用化に関する研究
竹崎 真一*1・是永 健好*1・萱嶋 誠*2・村田 勤*3
Keywords : pretension system, prestressing, bond behavior, seismic load, 19-wire strand, compression grip
プレテンション方式,プレストレス,付着性状,地震荷重,19本より線,圧着グリップ
1. はじめに
上記の状況を鑑み,19 本より 21.8mm を用いたリラク
セーション試験,要素実験および,実大大梁実験を実施
プレテンション方式 PCaPC 梁は,PC 鋼材とコンク
し,19本より線のプレテンション方式PCaPC梁への適用
リートの付着力により梁にプレストレスを導入するもの
性を検討した。
であり,
梁中央付近では偏心モーメントによる大きな吊
本報告では,
これらの実験概要およびその結果につい
上げ力が期待できるため,
大スパンに対応可能な構造と
て述べる。
なっている。
この偏心モーメントは緊張力と偏心距離に
比例するため,太径の 19 本より線を使用すればより大
2. リラクセーション試験
容量のプレストレスの導入が可能になるとともに,
施工
の合理化にもつながる。一方,19 本より線は,図 -1 に
2 . 1 試験概要
示されるように,より線を構成する素線が 3 層構造と
リラクセーション試験片は19本より21.8mm 2本であ
なっているため,
プレテンション方式においては素線間
り,そのパラメータは圧着グリップの有無である。
でのすべりが生じ,
その緊張力を十分に利用できないと
図-2にリラクセーション試験方法を示す。試験は,構
いう問題点がある。このため,19本より線はくさび定着
造実験棟の反力壁を利用し,その一端に支圧板,ロード
されるポストテンション方式で主に用いられている。
ま
セル,アンカーヘッドを,他端に支圧板,アンカーヘッ
た、
プレテンション方式で一般に使用されているより線
ド,緊張ジャッキセットし,この緊張ジャッキにより所
としては素線が 2 層構造の 7 本より線までである。この
定の緊張力を導入した後,試験片を反力壁に定着した。
ような状況を改善すべく,
19本より線の所定の位置に圧
また,素線間でのすべりの有無を確認するため,中央位
着グリップを設ける方法を考案した。
この圧着グリップ
置の素線(以下,心線)に対する変位測定を実施した。
により,
19本より線の外側から内側に向けて効果的に拘
導入緊張力及び,試験期間は文献1 )を参考に設定し
束力を与えることで素線間でのすべりを防止するととも
た。
に,この圧着グリップが定着板としても機能するため,
コンクリートとの付着性状も改善される。
反力壁
(断面図)
アンカーヘッド
素線
素線
緊張ジャッキ
アンカーヘッド
支圧板
19本より21.8
支圧板
圧着グリップ
7本より線
19本より線
圧着グリップ
250
圧着グリップ
250
図-1 PC鋼より線の構成
Fig.1 Composition of prestressing strand
1000
*1 技術センター建築技術研究所建築構工法研究室
*2 技術センター建築技術開発部建築生産技術開発部
*3 建築本部技術部
1500
3500
図-2 試験方法
Fig.2 Test set-up
17-1
ロードセル
1000
大成建設技術センター報 第40号(2007)
図 -3 にリラクセーション値の推移を示す。試験は PC
せい方向はPCaPC部材せい
(600mm)
により設定した。
No.2
規準に示される 1000 時間を超える,1400 時間にわたり
は中心圧縮(正方形断面)試験体であり,PC 鋼より線位
実施した。その結果,最終的なリラクセーション値は,
置でのプレストレス力が No.1 とほぼ等しくなる断面形
圧着グリップ有りで約 3.5%,無しで約 5% であり,圧着
状(350mm × 350mm)とした。緊張力の導入は,その一
グリップの設置によりリラクセーション値が小さく抑え
端を反力壁に固定した後,他端を緊張ジャッキにより
られることを確認した。また,PC 規準に示される 1000
0.85Py(Py:規格降伏荷重,421kN)まで載荷した。使
時間後のリラクセーション値は,
圧着グリップ有りで約
用するコンクリートは Fc42 とし,コンクリート強度が
3%,無しで約 4.5% であった。
30N/mm 2以上であることを確認した後,プレストレスを
図 -4 に心線のめり込み変位の推移を示す。心線のめ
導入した。試験体に使用した材料の試験結果を表 -2 に
り込み変位量は,圧着グリップ無しで大きくなってお
示す。
こと,
グリップの設置により素線間でのすべりが抑止で
きることを確認した。
4,500
300
3. 要素実験
図-5 試験体形状(No.1)
Fig.5 Dimensions of specimen(No.1)
3.1 実験概要
表-1 試験体一覧
Table 1 List of specimen
要素試験体はコンクリート断面内に 1 本の 19 本より
*1
幅×せい 偏心距離
導入緊張力 コンクリート応力
PC鋼より線
(mm)
(mm)
(kN)
(N/mm 2 )
21.8mmを配置した2体であり,そのパラメータは偏心距
離の有無である。図 -5 に試験体の形状寸法(No.1)を,
表 -1 に試験体一覧を示す。No.1 は PCaPC 梁での偏心圧
縮状態を模擬した長方形断面であり,その断面寸法は,
No.1
300×600
125
No.2
350×350
0
250
コンクリート(Fc42)
1250
圧縮強度
1500
0.0
3.44
2.0
19本より21.8mm(SWPR19L)
ヤング係数
2
2
降伏点
*1
2
直径 * 1
周長
ヤング係数 * 2
(mm)
(kN/mm 2 )
96.0
210
(N/mm )
(kN/mm )
(N/mm )
(mm)
36.7
23.9
1796
21.96
注)*1:ミルシート記載値
*2:緊張時の荷重とひずみから算出
4.0
7000
6.0
グリップ有り
グリップ無し
8.0
図-3 リラクセーション値の推移
Fig.3 Time-dependent relaxation value
6000
導入直前
400kN
300kN
200kN
100kN
導入終了
5000
4000
3000
2000
1000
定着長さ1200mm(55d)
定着長さ1500mm(69d)
0
0
500
1000
1500
緊張側
0.15
2000
2500
3000
長さ方向位置(mm)
3500
4000
4500
固定側
(a)No.1(偏心圧縮)
0.12
7000
0.09
0.06
グリップ有り
グリップ無し
PC鋼より線ひずみ(μ)
心線めり込み変位(mm)
3.56
421
(0.85Py)
表-2 プレストレス導入時の材料試験結果
Table 2 Material property at prestressing
PC鋼より線ひずみ(μ)
リラクセーション値(%)
0
19本より
21.8mm
注)*1:PC鋼より線位置でのコンクリート応力
幅方向はPC鋼より線のかぶり寸法(片側150mm)により,
経過時間(hr)
500
750
1000
600
175 125 300
り,
グリップが無い場合には素線間でのすべりが生じる
0.03
6000
導入直前
400kN
300kN
200kN
100kN
導入終了
5000
4000
3000
2000
1000
定着長さ1950mm(89d)
定着長さ1850mm(85d)
0
0
0.00
0
250
500
750
1000
経過時間(hr)
1250
500
緊張側
1500
1000
1500
2000
2500
長さ方向位置(mm)
3000
3500
4000
4500
固定側
(b)No.2(中心圧縮)
図-4 心線めり込み変位の推移
Fig.4 Time-dependent displacement of center wire
図-6 PC鋼より線のひずみ分布
Fig.6 Strain distribution of prestressing strand
17-2
大成建設技術センター報 第40号(2007)
い,コンクリートの圧縮ひずみは徐々に大きくなり,プ
3.2 PC 鋼より線のひずみ分布
プレテンション方式では,予めPC鋼より線に緊張力を
レストレス導入終了時における試験体中央域でのひずみ
与えておき,コンクリートを打設し,コンクリートが硬
量は両試験体とも平均で約 145 μであった。
化した後に、
緊張力を徐々に解除してコンクリートにプ
図 -8 に No.1 における,試験体中央位置での高さ方向
レストレスが導入される。
このプレストレス導入完了ま
ひずみ分布を示す。図中には,平面保持を仮定し,PC 鋼
での各荷重段階におけるPC鋼より線のひずみ分布を図-
より線とコンクリートの弾性ひずみは等しいとして,
材
6 に示す。両試験体ともプレストレスの導入に伴い,ひ
軸方向力の釣合いから求めた計算値も示している。
プレ
ずみが減退する定着領域が拡がった。
両試験体の必要定
ストレス導入後のひずみ分布は,
計算値のそれとほぼ同
着長さは,偏心圧縮の No.1 で約 1200mm ~ 1500mm(55d
様な形状を示すものの,
その値は素線間でのすべりに起
~ 69d,d:PC 鋼より線径)
,中心圧縮の No.2 で約 1850
因する緊張ロスの影響により,幾分小さくなっている。
~ 1950mm(85d ~ 89d)となり,文献 2)に示される 7 本
ただし,本実験では端部がくさび定着されているため,
より 12.7mm の定着長さ(約 700mm:55d)と比べ長くなっ
顕著な緊張ロスは確認されなかった。
た。また,偏心圧縮状態と中心圧縮状態では異なる付着
3.3 付着応力 - すべり関係
文献 3)に示される,付着応力(τ)とすべり量(S)
性状を示した。
の算出方法を図 -9 に示す。付着応力は PC 鋼より線のひ
3.2 コンクリートのひずみ分布
図-7にプレストレス導入時におけるコンクリート表面
ずみ測定位置間の応力差により求め,すべり量は PC 鋼
のひずみ分布を示す。なお,表面ひずみ測定位置はPC鋼
より線ひずみ分布と PC 鋼より線位置のコンクリートひ
より線のそれと同じである。プレストレスの導入に従
ずみ分布より,
各位置におけるPC鋼より線とコンクリー
トの伸び量の差として求めた。
0
500
1000
1500
2000
2500
3000
3500
4000
付着応力算定式を式(1)に示す。
4500
コンクリートひずみ(μ)
0
導入直前
400kN
300kN
200kN
100kN
導入終了
-50
-100
τ i=(Δ Ti- Δ Ti+1)/(Δ x・φ)
(1)
ここに,τ i:i 位置での付着応力
-150
Δ Ti:i 位置での緊張材減少張力
Δ x:ひずみゲージ間隔
-200
長さ方向位置(mm)
緊張側
固定側
φ:緊張材周長
(a)No.1(偏心圧縮)
Δ x= 300
0
500
1000
1500
2000
2500
3000
3500
4000
300
300
4500
コンクリートひずみ(μ)
0
導入直前
400kN
300kN
200kN
100kN
導入終了
-50
-100
-150
長さ方向位置(mm)
緊張側
Δ T2
固定側
Δ T1
(b)No.2(中心圧縮)
τi
τ3
図-7 コンクリートの材軸方向ひずみ分布
Fig.7 Strain distribution of concrete
τ2
τ1
cε i
600
高さ方向位置(mm)
Δ Ti+1
Δ Ti
Δ T3
-200
c ε i+1
500
導入直前
400kN
300kN
200kN
100kN
導入終了
計算値
400
300
200
S1
Δε 2
-150
-100
-50
0
Δε i
Δ ε :緊張材の減少ひずみ
S 1:1位置でのすべり量(薄墨部面積)
150
-200
Δε 3
c ε:コンクリート圧縮ひずみ
Δε1
100
0
-250
=Δ ε i+1
300
300
50
コンクリートひずみ(μ)
図-9 付着応力とすべり量の算出方法
Fig.9 Calculation method of bond stress and slip
図-8 コンクリートの高さ方向ひずみ分布
Fig.8 Strain distribution of concrete
17-3
大成建設技術センター報 第40号(2007)
19本より線の付着性状および,
地震時における荷重-変
端部からの距離が 150,450,750,1050mm の 4 点から
形関係等の構造性能を検討した。表 -3 に試験体諸元を,
得られたτ -S 関係を図 -10 に示す。同図中には文献 4)
図 -11 に試験体断面を,図 -12 に圧着グリップ設置位置
に示されるτ -S モデルも示している。なお,文献 4)の
を示す。
試験体は大梁端部を取り出した片持ち梁形式の
τ -S モデルは引抜き試験から得られたものであり,本
3 体であり,その断面形状は幅 600mm,せい 800mm(PCa
試験体とは付着抵抗機構が異なるが,
参考までに示して
部材せい 550mm)である。試験区間長さは 3.1m とし,実
いる。
状の梁スパンより短くすることで,
梁端部での損傷を助
両試験体のτ- S 関係は最大付着応力(τ max)までほ
長させた。試験パラメータは圧着グリップの有無およ
ぼ比例関係を保ちながら増加し,その剛性はτ -S モデ
び,PC 鋼より線のあき寸法(1.5d,3.0d:d=PC 鋼材径)
ルより幾分大きくなっている。実験でのτ max は No.1 で
である。なお,あき寸法 1.5d は PC 規準に示される最小
約 4N/mm ,No.2 で約 3N/mm であった。τ max 以降,実験
2
2
表-3 試験体一覧
Table 3 List of specimen
から得られたτ -S 関係はモデルのような明確な負勾配
は見られず,
すべり量の増加とともに付着応力も緩やか
に増大した。
これはプレテンション方式では緊張材断面
圧着グリップ PC鋼材
の有無
あき寸法
導入緊張力 平均プレストレス * 2
緊張鋼材
が拡大しながら付着抵抗するのに対し,
引抜き試験では
断面が縮小しながら付着抵抗するという,
付着抵抗機構
の違いによるためである。
No.1
有
1.5d * 1
No.2
有
3.0d
No.3
無
3.0d
4-19本より
21.8mm
∑P(kN)
σ ave(N/mm 2 )
1680
(0.85Py)
4.07
*1 d:PC鋼より線径(21.8mm)
*2 0.8×∑Pにより算出
250
80
4. 実大大梁実験
4.1 実験概要
5-D38(SD490)
5-D38(SD490)
175
80
4.0
2
τ(N/mm )
5.0
5-D38(SD490)
217.5 55 5555 217.5
80 80 140 140 80 80
600
3.0
2.0
550
5-D38(SD490)
169.5 87 87 87 169.5
80 80 140 140 80 80
600
図-11 試験体断面
Fig.11 Longitudinal section of specimen
1.0
0.0
0.0
4-φ21.8
100
L=150
L=450
L=750
L=1050
文献4)
800
4-φ21.8
圧着グリップ付
6.0
275
640
275
実大大梁試験体による正負交番繰返し載荷を実施し,
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
スタブフェース
S(mm)
負載荷
後打部
(a)No.1(偏心圧縮)
PCaPC部
圧着グリップ
19本より21.8mm
圧着グリップ
6.0
L=150
L=450
L=750
L=1050
文献4)
4.0
2
τ(N/mm )
5.0
正載荷
800
3130
30
400
図-12 圧着グリップ設置位置
Fig.12 Compression grip set-up
3.0
2.0
表-4 コンクリートの材料試験結果
Table 4 Material property of concrete
1.0
0.0
0.0
2300
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
S(mm)
No.1
(b)No.2(中心圧縮)
No.2
図-10 付着応力-すべり関係
Fig.10 Bond stress- slip relationships
No.3
17-4
PS導入時
加力時
PS導入時
加力時
PS導入時
加力時
圧縮強度
2
(N/mm )
24.5
45.5
37.4
61.2
29.8
54.3
ヤング係数 ポアソン比
2
(kN/mm )
20.7
0.24
27.3
0.25
25.0
0.24
30.0
0.24
23.1
0.24
31.1
0.27
割裂強度
2
(N/mm )
2.18
2.87
2.56
3.34
2.43
2.74
大成建設技術センター報 第40号(2007)
値(3.0d)の半分の値である。圧着グリップは梁ヒンジ
リップの存在により必要定着長さは短くなった。
領域を避けた,梁付根から 1D(D:梁せい,800mm)内側
4.3 荷重 - 変位関係
図 -14 に荷重 - 変位関係を示す。図中には曲げひび割
位置に設置した。
使用したコンクリートの材料試験結果
れ発生,主筋降伏,圧壊開始時および,曲げ終局強度計
を表 -4 に示す。
加力は片持ち梁形式による,変位漸増の正負交番繰返
算値(0.9 × at ×σ y × d)も示している。各試験体と
し載荷とした。載荷履歴は,部材角(R)=1/500radで1回,
も R=1/500rad 載荷時に曲げひび割れが発生し,R=1/
1/200rad,1/100rad,1/50rad で各々 2 回,1/30rad で 1
100rad 付近で主筋の降伏,R=1/100 ~ 1/50rad で梁付根
回繰返した後,正側の 1/20rad まで載荷した。
に圧壊が生じた。各試験体の最大耐力は,No.3 が No.1,
4.2.プレストレス導入時付着性状
No.2より幾分大きくなっているものの,
いずれも終局強
図-13にプレストレス導入完了までの各荷重段階にお
度計算値を上回っている。
また,
各試験体ともR=1/20rad
ける PC 鋼より線のひずみ分布を示す。各試験体ともプ
の大変形時においても耐力低下することなく,
そのルー
レストレスの導入に伴い,
定着域となる梁端部でひずみ
プ形状は紡錘形の良好な履歴特性を示した。
が減少した。プレストレス導入終了時でのひずみ分布
は,圧着グリップ無しの No.3 では直線的であったのに
対し,圧着グリップを有するNo.1,No.2では圧着グリッ
1000
プ前後でのひずみ勾配が鋭角となった。
各試験体の必要
800
定着長さは,No.1,No.2 で約 1450mm(約 67d)
,No.3 で
○:曲げひび割れ
△:主筋降伏
□:圧壊開始
600
200
1.5d と 3.0d 間で有意は差は見られないものの,圧着グ
0
-100
▲曲げ終局強度
400
約 2250mm(約 103d)となり,PC 鋼より線のあき寸法が
-150
荷重(kN)
-50 -200
変位(mm)
0
50
100
150
200
-400
3 ,100
-600
負載荷
R(rad)
250
-800
1/100
1/50
1/30
1/20
175 100 275
-1000
(a)No.1:あき=1.5D、圧着グリップ有り
1000
正載荷
荷重(kN)
PC鋼より線ひずみ(μ)
スタブフェース
No.1:グリップ有り、1.5d
7000
6000
導入直前
400kN
300kN
200kN
100kN
導入終了
5000
4000
3000
2000
定着長さ1450mm(67d)
1000
○:曲げひび割れ
△:主筋降伏
□:圧壊開始
500
1000
1500
2000
2500
-150
-100
-50 -200
3000
PC鋼より線ひずみ(μ)
4000
3000
2000
定着長さ1450mm(67d)
1500
2000
2500
3000
PC鋼より線ひずみ(μ)
6000
4000
3000
2000
定着長さ2250mm(103d)
500
1000
1500
2000
2500
200
1/30
1/20
荷重(kN)
800
600
▲曲げ終局強度
400
変位(mm)
0
-150
-100
-50 -200
0
50
100
150
-600
R(rad)
1/100
1/50
1/30
1/20
-1000
3000
(c)No.3:あき=3D、圧着グリップ無し
スタブフェースからの距離(mm)
図-13 プレストレス導入時のPC鋼より線ひずみ分布
Fig.13 Strain distribution of prestressing strand
図-14 荷重-変位関係
Fig.14 Load-displacement relationships
17-5
200
-400
-800
0
0
1/50
200
導入直前
400kN
300kN
200kN
100kN
導入終了
5000
1/100
1000
No.3:グリップ無し、3.0d
1000
150
-1000
スタブフェースからの距離(mm)
7000
100
(b)No.2:あき=3D、圧着グリップ有り
○:曲げひび割れ
△:主筋降伏
□:圧壊開始
0
1000
50
R(rad)
-800
導入直前
400kN
300kN
200kN
100kN
導入終了
5000
500
0
-600
6000
0
変位(mm)
-400
No.2:グリップ有り、3.0d
1000
▲曲げ終局強度
400
0
スタブフェースからの距離(mm)
7000
600
200
0
0
800
大成建設技術センター報 第40号(2007)
①19本より21.8mmの1000時間後のリラクセーション値
4.4 PC 鋼より線のひずみ分布
図-15に負加力除荷時でのPC鋼より線のひずみ分布を
は,圧着グリップを設置した場合で3.0%,設置しない場
示す。なお,荷重ピーク時でのひずみ分布は除荷時のそ
合で 4.5% であり,圧着グリップを設置することでリラ
れとほぼ同様であった。各試験体とも R= ± 1/200rad ま
クセーション値を低減することができる。
で PC 鋼より線のひずみ分布は加力前とほぼ同様である
②圧着グリップの設置は素線間でのすべり抑止に効果が
ものの,その後の加力によるひび割れの進展とともに,
ある。
定着領域が梁の内側へと拡大した。R= ± 1/100rad 載荷
・要素実験
後の必要定着長さは,圧着グリップを有するNo.1,No.2
①プレストレス導入時の必要定着長さは偏心圧縮で約
で約 2250mm(約 103d)
,No.3 で約 2650mm(約 122d)で
1200~1500mm(55d~69d)
,中心圧縮で約1850~1950mm
あり,圧着グリップの設置により,梁中央域で有効に緊
(85d ~ 89d)となり,7 本より線での定着長さより長く
なるとともに,
偏心圧縮状態と中心圧縮状態で異なった
張力が保持された。
付着性状を示した。
②プレストレス導入後のコンクリートのひずみ分布は平
3 ,100
負載荷
250
面保持を仮定して得られた計算値とほぼ同様な形状を示
175 100 275
すもののその値は,緊張ロスの影響により小さくなる。
③プレテンション方式による緊張鋼材の付着応力-すべ
正載荷
り関係は最大付着応力まで比例関係を保ちながら増加
スタブフェース
7000
し,最大付着応力以降には明確な負勾配はみられない。
No.1:グリップ有り、1.5d
PC鋼より線ひずみ(μ)
6000
5000
・実大大梁実験
加力前
-1/500
-1/200
-1/100
-1/50
-1/30
4000
3000
2000
1000
①圧着グリップの有無が荷重-変位関係に与える影響は
なく,そのループ形状は紡錘形の履歴特性を示す。
②部材角R=±100rad経験後の必要定着長は,
圧着グリッ
0
0
500
1000
1500
2000
2500
3000
プを有する No.1,No.2 で約 2250mm(103d)
,圧着グリッ
スタブフェースからの距離(mm)
7000
プがない No.3 で約 2650mm(122d)であった。
No.2:グリップ有り、3.0d
PC鋼より線ひずみ(μ)
6000
5000
加力前
-1/500
-1/200
-1/100
-1/50
-1/30
4000
3000
2000
1000
今後は、大容量のプレストレスが必要となる、長大
スパン架構、倉庫などの重積載荷重対応架構、PCa部材
の軽量化に本技術を展開していく予定である。
0
0
500
1000
1500
2000
2500
3000
スタブフェースからの距離(mm)
7000
謝辞
No.3:グリップ無し、3.0d
PC鋼より線ひずみ(μ)
6000
5000
加力前
-1/500
-1/200
-1/100
-1/50
-1/30
4000
3000
2000
1000
本研究の実施に際し、日本大学理工学部浜原正行教授には貴
重なご指導を頂きました。深く謝意を表します。
0
0
500
1000
1500
2000
2500
参考文献
3000
スタブフェースからの距離(mm)
図-15 負加力除荷時でのPC鋼より線ひずみ分布
Fig.15 Strain distribution of prestressing strand
5.まとめ 19 本より線の実用化を目的に,リラクセーション試
験,要素実験,実大大梁実験を実施し,19 本より線のプ
レテンション方式 PCaPC 梁への適用性を確認した。
以下,得られ知見を試験項目ごとに列記する。
・リラクセーション試験
1 ) 日本建築学会:プレストレストコンクリート設計施工規
準・同解説
2 ) 森田仁彦,浜原正行,是永健好他:プレテンション方式
PCaPC大梁の地震時構造性能(その3 ロングスパン大梁試
験体のPS導入時付着性状),日本建築学会大会学術講演梗
概集(東海),pp.1031-1032,2003.9
3)森英明,浜原正行,是永健好他:プレテンション方式PCaPC
大梁の地震時構造性能(その5 プレストレス導入時におけ
る緊張材の付着性状),日本建築学会大会学術講演梗概集
(北海道),pp.969-970,2004.8
4)是永健好,渡辺英義:PC鋼より線とグラウト材の付着特性
評価,日本建築学会大会学術講演梗概集(中国),
pp.1083-1084,1999.9
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