Signal Extraction and Noise Removal Methods for Multichannel

KURENAI : Kyoto University Research Information Repository
Title
Author(s)
Citation
Issue Date
Signal Extraction and Noise Removal Methods for
Multichannel Electroencephalographic Data( Abstract_要旨 )
Kawaguchi, Hirokazu
Kyoto University (京都大学)
2014-03-24
URL
http://hdl.handle.net/2433/188593
Right
許諾条件により本文は2014-04-01に公開
Type
Thesis or Dissertation
Textversion
ETD
Kyoto University
京都大学
論文題目
博士(工学)
氏名
川口 浩和
Signal Extraction and Noise Removal Methods for Multichannel Electroencephalographic Data
(多チャネル計測された脳波データからの信号抽出とノイズ除去に関する研究)
(論文内容の要旨)
近年、非侵襲的に脳機能を計測・解析・可視化する脳機能イメージング技術が基礎
科学研究に留まらず臨床現場においても広く用いられるようになって来ている。この
脳 機 能 イ メ ー ジ ン グ 技 術 に は 機 能 的 磁 気 共 鳴 画 像 法 (fMRI)、脳 磁 図 (MEG)、脳 波 (EEG)、
近 赤 外 分 光 法 (NIRS)な ど 、計 測 原 理 の 異 な る 様 々 な モ ダ リ テ ィ が 存 在 す る 。そ の 中 で も
脳波は、空間分解能が低いという欠点がある一方でミリ秒単位の高時間分解能を有し
ており、さらに最もコンパクトで計測方法も簡単であることから精神神経科を中心と
した臨床の現場においても日常的に用いられている。
脳波信号の発生機構には未解明の部分も残されているものの、脳内における活動電
位はミリ秒単位でニューロンを伝搬すると考えられていることから、脳波信号から高
次脳機能障害の診断や病態進行観察に役立つ生体指標を抽出することが期待されてい
る。しかし、脳波の計測データには信号と共に脳由来もしくは脳以外を由来とする雑
音 が 多 く 混 在 す る た め 、脳 波 計 測 デ ー タ は 一 般 的 に 信 号 対 雑 音 比( SNR)が 低 い と い う
短 所 を 有 す る 。そ こ で 、本 論 文 で は 脳 波 信 号 の SNR向 上 を 目 指 し 、多 チ ャ ネ ル 計 測 さ れ
たデータに対する信号抽出ならびに雑音除去に関する新たな手法の提案を行ってい
る 。 さ ら に 提 案 手 法 の 有 効 性 を 示 す 事 を 目 的 と し て 、 実 際 に 統合失調症患者から得られた
臨床脳波計測データに適用し,提案手法の臨床データに対する有用性を検討している。
本 論 文 は 8章 か ら な っ て お り 、 そ の 構 成 は 次 の 通 り で あ る 。
第 1 章は序論であり、本論文における一般的な導入と従来の研究の概要について述
べている。
第 2 章では、研究背景、本論文で対象とする脳波計測の原理、経験的モード分解を
始 め と す る 時 間 領 域 解 析 手 法 、Hilbert-Huang Transform を 始 め と す る 時 間 - 周 波 数 解 析
手法、多変量経験的モード分解を始めとする多変量解析手法に加え、脳波計測データ
における「信号」と「雑音」について述べている。
第 3 章では、特定の脳神経活動に伴って発生し、頭皮上に配置された電極において
計 測 さ れ る 電 位 変 動 を 「 信 号 」、 そ れ 以 外 の 体 内 外 を 発 生 源 と し て 信 号 に 重 畳 し て 計 測
さ れ る SNR 低 下 を ま ね く 電 位 変 動 を「 雑 音 」と し て 扱 い 、
「 雑 音 」の 中 で も 特 に 眼 球 運
動アーティファクトを対象として、多変量解析手法である独立成分分析、時間領域解
析 手 法 で あ る カ ル マ ン フ ィ ル タ と 経 験 的 モ ー ド 分 解 を 組 み 合 わ せ る こ と で 、「 信 号 」 の
損失を極力抑える工夫を施した雑音成分除去法を提案した。また、頭部を模した球モ
デルと眼球を模した電流ダイポールから計算された模擬脳波を用いて提案手法と先行
研究との定量的な比較を行った。その結果、提案手法が先行研究と同等の眼球運動ア
ーティファクト除去性能を有しているだけでなく、先行研究と比較して信号の損失を
有意に抑制することが出来ることを示した。
第 4 章 で は 、 事 象 関 連 電 位 ( Event-related potential: ERP) を 「 信 号 」、 脳 波 律 動 ( α
波と β 波)を「雑音」として扱い、多変量解析手法である主成分分析と経験的モード
分 解 を 組 み 合 わ せ る こ と で ERP の 損 失 を 抑 え つ つ 脳 波 律 動 を 除 去 す る 手 法 を 提 案 し
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京都大学
博士(工学)
氏名
川口 浩和
た 。 第 3 章 と 同 じ く 、 頭 部 を 模 し た 球 モ デ ル と ERP を 模 し た 電 流 ダ イ ポ ー ル か ら 計 算
さ れ た 模 擬 脳 波 を 用 い て 、 ERP の SNR 向 上 を 目 指 し た 提 案 手 法 と 先 行 研 究 と の 定 量 的
な 比 較 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 提 案 手 法 は 先 行 研 究 と 比 較 し て ERP を 保 持 し つ つ 大 幅 に
背景脳波を除去出来ることを示した。さらに、認知課題として一般的に用いられる
oddball 課 題 遂 行 時 に 2 人 の 被 験 者 か ら 計 測 し た 脳 波 計 測 デ ー タ に 提 案 手 法 を 適 用 し た
結 果 、 模 擬 脳 波 適 用 時 と 同 様 に 、 脳 波 律 動 を 除 去 し つ つ ERP 波 形 を 保 持 可 能 で あ る こ
とが示唆された。
第 5 章 で は 、 手 首 の 屈 伸 運 動 に 基 づ く α 波 の 変 動 ( 事 象 関 連 同 期 : Event-related
synchronization; ERS, 事 象 関 連 脱 同 期 : Event-related desynchronization; ERD)を「 信 号 」、
α 波 以 外 の 脳 波 律 動 を「 雑 音 」と し て 、多 変 量 解 析 手 法 で あ る 多 変 量 経 験 的 モ ー ド 分 解
を 用 い て ERS/ERD の 高 精 細 な 抽 出 を 試 み た 。実 際 に 5 人 の 被 験 者 か ら 計 測 し た 左 手 運
動時の脳波計測データを用いて、提案手法と従来の時間-周波数分解手法である短時
間 フ ー リ エ 変 換 ( Short time Fourier transform; STFT) と ウ ェ ー ブ レ ッ ト 変 換 ( Wavelet
transform; WT)に 基 づ く 手 法 を 比 較 し た 。そ の 結 果 、従 来 の STFT や WT で は 捉 え る こ
と の 出 来 な か っ た α 波 の ERS/ERD の 微 細 な 周 波 数 変 動 を 提 案 手 法 で は 捉 え る こ と が 出
来た。
第 6 章 で は 、 第 3 章で提案した雑音成分除去手法を実際に統合失調症患者から計測された脳波
に適用することで、統合失調症の初期患者群 10 人、前駆期患者群 10 人、健常者群 10 人の間におけ
る γ 波帯の活動の違いを取得しようと試みた。まずは第 3 章と同様に眼球運動アーティファクトを
含んだ模擬脳波を作成し、眼球運動アーティファクト除去に伴う γ 波帯の信号の除去量を提案手法
と先行研究で比較した。その結果、提案手法は先行研究よりも γ 波帯の信号の損失を有意に抑制す
ることが出来ることがわかった。次に、提案手法を各群の実測脳波に適用したところ,提案手法を
適用することにより、解析可能な試行数(アーティファクトが含まれていないと考えられる試行数)
を約 2 倍に増やすことができた。さらに各群で γ 波帯の同期活動を比較した結果、健常者群と各患
者群で一部に有意な違いを見出すことが出来た。
第 7 章 は 検 討 で あ り 、 第 3~ 6 章 で 述 べ た 研 究 成 果 に 関 す る 総 括 的 な 考 察 お よ び 今 後
の発展について述べている。
第 8 章は結論であり、本論文で得られた成果について要約している。
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氏
名
川 口
浩 和
(論文審査の結果の要旨)
ヒ ト 脳 機 能 の 非 侵 襲 的 計 測 法 の 中 で ,本 論 文 が 研 究 対 象 と し た 脳波(EEG)は,装置がコ
ンパクトかつ計測も容易であり臨床現場を始め広く用いられている.しかし,計測が容易である
反面,脳波の信号対雑音比(SNR)は十分高いものではなく,その向上が課題となっている.そ
こで本論文では、多チャネル計測された脳波データからの信号抽出とノイズ除去に関して新手法
を提案し SNR 向上に関する検討を行い、主に以下に示す 4 つの知見を得ている。
(1) “信号”である脳波に対して、眼球運動によるアーティファクトが“雑音”となるケースについて、
雑音成分の除去量のみに着目していた従来の眼球運動アーティファクト除去法とは異なり、本
論文では雑音成分除去に伴う信号の損失量に着目した。独立成分分析・経験的モード分解・カ
ルマンフィルタを組み合わせることで、信号の損失を抑えながら眼球運動アーティファクトを
局所的に除去する新たな手法を開発し、その有用性を示した。
(2) 事象関連電位(ERP)が“信号”、α 波、β 波などの脳波律動が“雑音”となるケースについては、
主成分分析・多変量経験的モード分解を組み合わせることで、試行数によることなく脳波律動
のみを除去し、ERP の SNR 向上を可能とする雑音除去法を提案し、従来法に対する優位性を
示した。
(3) 一方、脳波律動である α 波が“信号”、それ以外の脳波が“雑音”と見なせるケースについては、
非定常かつ非線形信号の解析を可能とする多変量経験的モード分解を用いた時間-周波数解析
手法によって、従来は捕捉出来なかった α 波の微細な変調を抽出することを可能とした。
(4) 最 後 に (1)で 述 べ た 眼 球 運 動 アーティファクト除 去 法 を 実 際 に 統合失調症患者から得ら
れた臨床脳波データに適用し、提案手法の臨床データに対する有用性を示した。
以上のように、本論文で提案された新たな脳 波 解 析 手 法 は 、 雑 音 成 分 除 去 に 伴 う 信 号 損
失 に 関 す る 問 題 を 軽 減 し 、SNR や 時間-周波数解析の時空間分解能の向上を可能とするもの
であり、計測・解析技術や脳科学の進歩に貢献することはもとより、精神疾患や神経疾患などの
診断支援といった臨床にとっても役 立 つ こ と が 期 待 で き る も の で あ り 、学 術 上 、実 用 上 寄
与するところが大きい。
よって、本論文は博士(工学)の学位論文として価値あるものと認める。また、平
成 26 年 2 月 21 日 、 論 文 内 容 と そ れ に 関 連 し た 事 項 に つ い て 試 問 を 行 っ て 、 申 請 者 が
博士後期課程学位取得基準を満たしていることを確認し、合格と認めた。
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