効果が上がらないERPが蘇る! 真の“データベース統合

SOAで可変性を確保せよ
効果が上がらないERPが蘇る
!
真の“データベース統合”を実現する方法
SOAで可変性を確保せよ
効果が上がらない
ERPが蘇る!
真の データベース統合 を
実現する方法
企業経営における ERP の重要性は認知されているが、実際に導入しても、「意外と成果が上がらなかった」という
企業が多いのも確かだ。その理由はなぜか。そして 死に体 の ERP を経営に役立つよう蘇らせるために、どの
ような対応を図るべきなのだろうか。
通じた、企業データの一元化である。これ
ERPの
背景と課題
により、
個々の業務システムで分散管理され
ていた業務データが集約され、迅速な経
営判断や現場での重複した業務の効率化
などが実現される。経営的な観点では、全
体最適な意思決定を実践するための 切り
札 と考えてもいい。
ERP(Enterprise Resource
ERP は登場当初は大企業向けの製品
Planning)の登場は企業経営において
であり、導入にあたっては数十億円ものコス
必然 とも言える。企業では、情報化によ
ト負担が必要とされた。しかし、2000 年代
る業務生産性の向上を掛け声に、1990 年
に入ると会計や生産・在庫管理といった、モ
代から大企業を中心にシステム導入が進
ジュール単位での提供を通じた低価格が
められてきた。財務における会計システム、
急速に進み、中堅・中小企業でも手の届く
人事における人事・給与システム、工場に
存在となった。これを受け、今や利用の裾
おける生産・在庫管理システムなどが代表
野は大企業のみならず、中堅・中小企業に
的なものである。
まで広がっている。
ERP の登場以前、企業システムには致
例えば、あるチェーン店。板前は魚には
命的とも言える問題が存在した。それが、シ
最大限に気を遣うものの、ツマの材料となる
ステム間での連携が不十分なために、企業
大根の仕入れなどには意外と無頓着であっ
全体を俯瞰したかたちでの経営資産の把
た。しかし、ERP の導入を機に、仕入れ
握が困難であったことである。決算におい
データが蓄積されるようになったことで、各店
て、多大な時間と労力が必要とされたのも、 での野菜の仕入れコストが明確化され、仕
2
まさにこのためであり、その時代の経営層は
入れ先の選別を通じたコスト削減が実現さ
自社の実態を把握できないまま、経営の舵
れている。情報の一元化のメリットは中堅・
取りを行わざるを得なかったのである。
中小企業でも小さくないことは、このケースか
このような課題を解決するERP は企業
らも理解できるだろう。
経営において必須の要素と言えるだろう。そ
もちろん、今まで以上にビジネスの動きが
の基本概念は、あらゆるシステムとの連携を
速い昨今、変化に対する素早い対応が企
業に求められており、大企業では次なる成
システムを残しつつ行われるが、そのことに
長に向けたERPによる新ビジネスの創出が
よって、新たなつぎはぎが生じることは避けら
さらに加速している。
れない。一方で、レガシーシステムは夜間
しかし、現実に目を向けると、ERP を導
バッチでデータを処理することも少なくない
入してDB 統合を図っても十分な成果が上
が、構成の複雑化とシステム自体の老朽
がっていない企業は多いという。それはなぜ
化、さらに、近年のデータ量の増大とによっ
なのか。
て、時間内での作業完了が極めて困難に
なりつつある。これらの結果、一元化しきれ
ERPの
導入効果はなぜ
上がりにくいのか?
なかったデータの信頼性は著しく下がってし
まい、ERP 導入の目的を果たせず、デー
タの活用が進まないという負のスパイラルを
招いているのだ。これでは、経営管理レベ
ルの底上げは到底、期待できない。
さらに ベストプラクティス という言葉に
対する誤解もある。ERP のメリットの 1 つとし
よく言われるのが、
「データの信頼性」と
て、成功した企業の業務プロセスを取り込
いう問題である。
める点が挙げられており、その支援のため、
ERP の狙いの本質は経営データの一元
ベンダー各社は業種・業態ごとのベストプラ
化にある。多様なシステムとの連携を図り、
多
クティスを反映させたテンプレートを充実さ
数のシステムとDB 統合を行うことで、導入メ
せてきた。
リットを最大限に享受できる。しかし、そうした
しかし、「企業の業務プロセスが千差万
統合を同時に行うことは現実的に極めて困
別で、
パッケージソフトでは対応しにくい」の
難だ。そこで「販売」や「会計」といった
は事実である。せっかくERP パッケージを
モジュールごとに段階的な導入プロセスを経
導入しても、
自社の業務に合わせるためのカ
るケースが多いのだが、
そうなるとシステム間に
スタマイズが必要となり、その結果、導入に
いわゆる つぎはぎ ができやすい。
必要な工数とコストが増して、 投資に見合
この、
つぎはぎが生じる要因の 1 つに挙げ
うだけの効果が上がらない という事態に陥
られるのが、機能強化を繰り返しながら長
りがちなのだ。
年にわたって継続利用されてきたレガシー
また、ベンダーロックインに陥りやすいこと
システムである。業務変革の歴史が刻みこ
も、ERP の悩ましい点である。実際に、最
まれたレガシーシステムは、いわば企業に
新機能を利用するためには、継続的なアッ
とっての 強み そのものといっていい。ただ
プデートが求められ、コスト負担からアップ
し、その歴史から、システム構成は極めて
デートを諦めた場合には、その時点で最新
複雑化しており、システムに手を加えることは
環境の利用を断念しなくてはならない。ERP
IT 部門にとってリスクの大きな作業である。
は基幹システムであり、容易にリプレースで
不用意に手を加えた場合には、最悪の場
きるものではなく、
その点で ERP の導入は企
合、システム、さらに業務の停止を招きか
業にとってリスクでもある。
ねない。
一方で、競争力強化という目的から考え
そこで、ERP の導入は一般的にレガシー
れば、
自社のより優れた業務はカスタマイズ
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で取り込むことが当然の在り方だ。その認識
が不十分な場合、ERP 導入によって逆に
自社が培ってきた強みが失われる可能性も
否定できない。
これら以外にも問題点は数多く指摘でき
る。例えば、ERP の導入における明確な
次なる成長に向け、
ERPが抱える
問題への対応を
目的意識が欠如しているケースが存在する
こと。ERP は企業経営を支える、主に経
植松氏が必要性を強く訴えるのが「シス
営層のためのシステムである。リアルタイム
テム面での可変性の確保」である。ERP
でのあらゆるデータを把握するとともに、そ
パッケージが抱える問題の根本には、業務
れらの中から特に経営に大きな影響を与え
とシステムが密接につながっているため、シ
そうなデータを KPI(Key Performance
ステムの見直しが極めて困難という事情が
Indicator)に設定することで、経営環境
ある。段階的に新システムを導入すれば、
さ
の変化や自社の立ち位置などを迅速に把
らに構成が複雑化してしまう。その解決策が
握することなどが可能だ。だが、競合他社
必要なのだ。
が導入したとの焦りから、自身によるデータ
「部門ごとに DB がいくつも存在しながら、
の活用策を練る間もなく導入に至るケースも
それらが ERPと連携していないという話を至
中堅・中小企業では散見される。これでは、 るところで耳にします。それもかなりの部分が
導入を終えても、次の活用のステップに進む
固定化されたERPと新規導入したシステム
ことは極めて困難だ。
との連携の難しさがネックになっている。
しか
しかも、日本企業の多くは、顧客の声に
し、システム自体の可変性を確保できれば、
応えるために業務、さらにその基盤であるシ
DB 統合も促される。すると問題が必然的に
ステムにも継続的に手を加え続けてきた。そ
解決され、真の意味で経営に役立つ 全
のため、システムと業務が不可分なものとな
体最適 なシステムが生まれるわけです」
り、
事前に対策を講じることなくERP パッケー
インターシステムズジャパン
代表取締役社長
植松裕史 氏
4
(植松氏)
ジに乗り換えた場合には、現場に混乱が生
そこでポイント
となるのが「変化への迅速な
じる可能性を拭い切れない。
対応」と「ERP によるコア業務の効率化」と
インターシステムズジャパンで代表取締
いう2 つの視点でのシステム刷新である。具
役社長を務める植松裕史氏は「ERP の利
体的には、まず SOA(Service Oriented
用にあたって考慮すべきことは多岐にわたり
Architecture)にのっとったシステム連携基
ます。例えば、
カスタマイズによってシステム
盤を整備し、システムの柔軟性を高いレベ
の複雑さ、ひいては管理コストも増し、戦略
ルで確保する。その上で、経理や会計など
的な IT 投資のための予算確保が困難に
普遍性が高い業務には ERP を適応すると
と
なることも挙げられるでしょう。しかし、
ERP は
もに、連携基盤を介して他システムと接続す
迅速な経営判断のために不可欠な存在で
ることで業務の効率化を目指す。
あることも事実。そこで、次なる成長軌道を
このアプローチのメリットは、カスタマイズ
描くためにも、諸問題に対する方策を講じる
が必要な場合でも、連携基盤上へのサブ
ことが企業に強く求められているのです」
と力
モジュールの追加によって、ERP 自体にほ
説する。
ぼ手を加えることなく対応できるようになる点
だ。その結果、
システムの複雑性という問題
に接続されるため、複雑化せざるを得ません
も抜本的に緩和され、システムへの追加変
でした。それに対して SOA では、構成が
更やアップグレードなどの作業も格段に行
大幅に簡素化され、粗い結合性によってシ
いやすくなる。必然的にベンダーロックイン
ステム同士を容易につなぎ直せるようになり
の問題も解消を見込むことができる。
また、
複
ます。ひいてはシステムの継続的な改善を
数の ERP パッケージのうち、自社に適した
通じ、
経営力の底上げを目指せるわけです」
モジュールのみを導入して連携させる、
いわ
(インターシステムズジャパン シニアテクノ
ゆる 良いとこ取り の導入も、従来と比べ
ロジーアドバイザー 佐藤比呂志氏)
はるかに容易に行えるようになる。
一方で、ERP の刷新には人的な面での
さらに SOA は重層化による高い拡張性
対策も必要となる。それが経営者や社員の
も担保されているため、最終的には、中央
意識改革である。データをいかに活用すべ
に配置された連携基盤を介し、ERP をはじ
きかは企業によってそれぞれ異なる。そのた
めとする各種システムが相互に連携する
「ハ
め、具体的な活用法について経営層とのす
ブ・アンド・スポーク型」のシステムを構築
りあわせを行い、ERP の導入目的の明確
できる。
化を促すことが必須となる。これにより、企業
「従来型の密結合なシステムでは、ERP
としてERPの導入目標が明確になれば、
トッ
と既存システム、新規システムが網の目状
プダウンでの刷新作業が可能となり、経営
インターシステムズジャパン
シニアテクノロジーアドバイザー
佐藤比呂志 氏
● SOA は重層化による高い拡張性も担保されているため、中央に配置された連携基盤を介して各種システムが相互に連携する「ハブ・アンド・スポーク型」の
システムを構築できる
システムA
システムE
システム
連携基盤
システムD
システムA
システムB
システムE
システムC
システム
連携基盤
システムD
システムB
システムC
システム
連携基盤
システムA
システムE
システム
連携基盤
システムD
システムC
システムA
システムB
システムE
システム
連携基盤
システムD
システムB
システムC
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層の支援を受けているだけに従業員から
供していることから、他社のツールよりも圧倒
ERP に対する理解も得やすくなる。
的に使いやすく、それだけ高い開発生産性
も見込める」(佐藤氏)という。
加えて、Ensemble はリレーショナルデー
「Ensemble」が
注目される
理由とは?
タベース(RDB)より高速に SQL クエリを
処理するオブジェクトDB「InterSystems
Caché®(Caché)」を実装している点も見
逃せない。システム連携基盤における最も
大事な要素はデータの高速かつ柔軟な処
理だ。この要件をどこまで満たせるかで、シ
SOA のアプローチに沿った連 携 基盤
ステムの連携レベルは大きく左右される。
ツールは、すでに数多くのベンダーから提供
その点「Ensemble はデータエンジンを
されている。こうした中、
とりわけ注目を集めてい
搭載した唯一の SOA 基盤」
(植松氏)で
るのがインターシステムズの「InterSystems
あり、データ処理の高速性において他製品
®
Ensemble (Ensemble)
」である。
との抜本的な差別化が図られているのだ。
その理由としてまず挙げられるのが、シス
一方で、一般的な連携基盤はシステム
テム統合に必要な機能のすべてを独自開
間のメッセージ交換のみに主眼を置いて開
発することで得た一貫性の高い技術だ。連
発されており、ログの管理などを目的にメッ
携基盤が満たすべき機能要件は「メッセー
セージを蓄積する場合、その仕組みを別に
ジ」や「バッファ」のみならず、
インタフェー
整備する必要があった。しかし、事前の設
スの違いをデータ変換などで調節する「メ
計作業には少なからぬ手間と時間を割く必
ディエーション」、法制面対応のための「ガ
要があるうえ、思わぬ見落としにより、正常
バナンス」など多岐にわたる。
に稼働しないケースも散見される。
そのため、市場に出回る連携基盤ツー
Ensemble では Caché によって、データ
ルは複数のベンダーが開発した技術を
交換の定義作業だけで各種メッセージを
寄せ集めることで構成されることが多く、機
容易に蓄積可能だ。オブジェクトDB の特
能ごとにスキルを習得する必要が出るな
性から、RDB では取り扱いが困難な複雑
ど、利用に際してのハードルも高かった。
な構造のデータにも対応している。
「Ensemble は技術のすべてを当社が提
「各種メッセージを Caché に貯めることで、
● InterSystems Ensemble で構築した日本通運の物流システム
モニタリング
DB
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メッセージ
ウェアハウス
輸出入業務
システム
Ensembleユニバーサル統合プラットフォーム
DB
通関業務
システム
DB
保税倉庫業務
システム
DB
物流サービス
システム
…
● PetroBras ワークフロー例
注文
顧客チェック
配送プラン等
ポンプ管理
ルート管理等
Webポータル
自動処理
業務担当
SAP/R3
契約
交渉管理
Ensemble
注文
顧客チェック
配送プラン等
CRM
(People Soft)
顧客情報更新
製品情報更新など
自動注文
システム
旧来システム
管理者
それらを組み合わせたデータ分析に乗り出
していたが、各システムの連携で大きな問題
すことが可能になります。そこで必要とされる
を抱えていた。Ensembleでそれらシステムを
手間はデータの定義作業だけ。一方で、
統合し、さらに新たに Web ポータルで受注
Ensemble ではデータとビジネスロジックを
システムを構築した。これにより、社内システ
記述することで、連携基盤上でデータ変換
ムの統合と同時に、顧客の注文処理、配送
を実施でき、ファイル出力から抽出という
計画、ルート管理などを効率的に行うことがで
ETL の効率化も実現できます。ひいては、
き、顧客サービスを向上させた。
業務システムと分析システムの一体運用に
Caché への外部機関の評価も高い。米
よる、リアルタイムなデータ分析の仕組みを
ガートナー* 1 は Caché に対して「オブジェ
確立できるのです」(佐藤氏)
クト、SQL など広範なデータをサポートし、
かつデータベース管理の自動化によってメ
企業も
「Caché」を
DBMSとして
最も高く評価
ンテナンス要員が少なくて良く、さらに全般
的な性能の高さから、顧客は Caché を
DBMSとして最も高く評価している」とのコメ
ントを寄せている。
同社は今後、新たな用途開拓を通じて
Ensembleの拡販につなげる考えだ。
そこで
同社が期待を寄せるのが、リアルタイム分
こうした高い性能から、Ensemble の採
析のさらなる活用である。
用企業は国内外で数多い。
その1 社である
「従来はシステムが発したアラートの原
日本通運は、国際海上輸送物流システム
因究明に数週間をかかることもありました。
の刷新プロジェクトでの段階的な移行策と
Ensembleでは全メッセージの蓄積によりシ
してEnsemble の採用を決断。Ensemble
ステムのプロセスを保管でき、データの種類
にシステムの各種テーブルを内在させ、既
や時間軸などを検索の条件にして、原因を
存システムと新システムとでデータを同期さ
即座に突き止めることができる。業務品質向
せるというのが具体的な使い方である。
上の観点から、あらゆる企業でアラート対応
プロジェクトは 現 在も進 行 中 だ が、
の迅速化ニーズが高まっている。テクノロ
Ensemble に関しては、利用決定から実稼
ジーパートナーとしてその実現に協力すること
働までに要した期間はわずか 3 カ月足らず
で、売り上げ拡大につなげる計画だ」(佐
であったという。
藤氏)
また、ブラジル最大の石油採掘会社ペト
インターシステムズの Ensemble によっ
ロブラスは、大手の ERP システム、CRM シ
て、
ERP は従来の姿から大きく変わりつつあ
ステム、
レガシーな流通システムを多数運用
る。
* 1 ガートナー・マジッククワドラント2014:オぺレーショナルデータ管理システム(Donald Feinberg, Merv Adrian, and Nick Heudecker 共著、2014 年 10 月 16 日発行)
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インターシステムズジャパン株式会社
160-0023 〒 東京都新宿区西新宿 6-10-1 日土地西新宿ビル 15F
InterSystems.com/jp/
この記事は ITmedia エンタープライズに掲載(2015 年 2 月)されたコンテンツをもとに再編集したものです。
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1502/23/news004.html