エネルギーキャッシュシステム用高速回転形フライホイールの定常損失評価 ◎村井 啓介 春名 順之介 伊東 淳一 山田 昇 (長岡技術科学大学) 1.はじめに 近年,新エネルギー導入を機運としてエネルギー貯蔵技術が 注目されている。エネルギー貯蔵にはバッテリー,フライホイ ール(FW),電気二重層コンデンサなどが有力である(1)が,著者 らは耐環境性,メンテナンス性に優れる FW を短時間のエネル ギー補償,エネルギーキャッシュシステム(ECS)へ適用すること を検討している。本論文では,ECS への適用を目的とした高速 回転形 FW を製作し,基礎実験として真空引き状態での定常損 失について実験的に評価したので報告する。 2.フライホイールの構成 Fig. 1.Flywheel structure. 図 1 に今回製作した FW の概略図を, 表 1 にその仕様を示す。 本装置の目標は,低コストで製作することにある。そこで,慣 Table 1. Specification of Flywheel unit. Outward form 58.25×34×35.3cm 性体を横向きに取り付けた横形の構成を採用した。横回転形は Diameter of FW 30cm 縦回転形と比較すると構造が簡単化できる。また,近年ベアリ Weight of FW 110kg ング技術の向上に伴い,高速回転時における耐久性が高く損失 Rated speed of rotation 15,000r/min が小さいベアリングが登場している。本機は 15,000r/min である Accumulated energy 1.53MJ が軸受にはボールベアリングを使用している。将来高速化を検 Motor capacity 43.4kVA 討しているが,30,000r/min 程度までは本ベアリングを適用でき 12 る。これにより,磁気軸受のような複雑な制御・装置を必要と Inverter and Motor 10 Power [kW] しないため,装置の小型化とコスト低減が可能となる。FW を駆 動するモータには誘導機を,電力変換器には汎用インバータ (FRENIC5000G11S 富士電機)を使用し,補機として冷却用のオ イルポンプと,風損を低減するための真空ポンプを取り付けて 8 All system 6 4 Accessories 2 いる。真空度は 30kPa に設定している。以上の構成により,FW 0 の慣性負荷を真空中で動作することができるため,風損を低減 0 できる。 200 400 600 Time [s] 800 1000 Fig. 2. Acceleration experimental results. 3.実験結果 図 2 に加速試験時の測定結果を示す。本実験では真空ポンプ, 6 オイルポンプを動作させた後,FW を回転する。インバータの制 5 御には V/f 制御を使用し,定格速度 15,000r/min までの加速時間 4 を 680sec に設定している。図 2 に示すように,補機の出力は 3 1.0kW で加速,定常にかかわらず,ほぼ一定である。インバー 2 タは加速に伴い出力電力が増加し,定格回転時で 9.9kW に達す 1 る。インバータの消費電力は定常時では 5kW であることから, 0 この条件では加速電力は最大 5kW であることがわかる。加速途 中,出力電力に上下する点が存在するが,これは,機械系の共 Fig. 3. Steady loss experimental results. 振により電力が変動したものと考えられる。 図 3 に定常時における各装置の損失を示す。定常時のインバ ータの出力電力が 5.4kW,補機の出力電力は 1.0kW となり,本 タと誘導機の損失が大きいため,マトリックスコンバータと PM 機では定常状態を維持するための損失が大きいことがわかる。 モータを適用することで高効率化が可能である。また,オイル 一方,風損・機械損は,定格回転時からインバータを停止して ポンプでの損失については冷却系を見直し低減をはかる。 FW をフリーランし,FW の回転が停止するまでの時間を測定す 参考文献 ることで計算できる(2)。 定格回転から停止まで9575sec を要した。 (1) 従って,風損と機械損の合計は 160W となる。 (2) 以上より,本機の定常損失が解析できた。本機ではインバー 黒崎他「普及版環境と省エネルギーのためのエネルギー技術大系」 エス・ティ・エス 田爪他,電子情報通信学会総合大会講演論文集,p657,(1999)
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