簡易な水路目地補修作業の手引き 平成19年11月 鳥取県農業試験場 Ver.2 目次 1 はじめに p 2 2 補修作業について 1)補修方法の内容・特徴 p3 2)留意点 p4 3)補修の効果 p4 3 補修作業手順 1)使用する資材、道具 p 5‐6 2)補修作業手順 p 7-10 参考 水の処理例 p 10 (水路の水を止められない場合 ) 1 1 はじめに 鳥取県は、昭和 38 年度の圃場整備事業の創設以来、圃場整備事業に積極的に取り組み、水田の 圃場整備率は約 80 %であり、中国四国地方では第一位となっています。圃場整備後 30 年以上経つ圃場 が半数以上を占め、水路の老朽化により様々な問題が発生しています。 コンクリート二次製品水路では目地のモルタルが劣化したことにより(事例1)、底部分の土が吸出しを 受けることや漏水によっておこる土の移動によって(事例2、3)、水路の不等沈下が発生し通水機能に障 害をもたらしている事例がみられます(事例4)。 営農の面では水路の漏水によると思われる排水不良がみられる圃場もあります。そのような圃場では明 渠等の対策が採られていますが、水路に対しては根本的な解決に至っておらず、一時的な圃場内の対 処にとどまっています。そのため年々状況が悪化すると考えられます。 しかし、水路の補修作業についてはあまり行われていない状況です。農業者自らが水路の補修を行う 場合、参考となるような情報(作業方法、コスト等)は、整理されていません。そのため補修方法がわから ない、効果が低い等の問題があります。 これらのことから、農業者自らが行える簡易な補修方法が求められています。この手引きは農業者自ら が補修作業を行うことを考慮し、防水モルタルを使用したコンクリート二次製品水路の簡易な目地補修方 法を解説しています。 事例2 事例1 目地が開いている 側壁外側の土が吸出しを 受け流されている 事例3 水路底の空洞化 事例4 水路の不同沈下 2 2 補修作業について 1)補修方法の内容・特徴 ガラス繊維入りモルタルを使用した補修方法は、劣化した目地を剥がし清掃した後、プライマーを塗り モルタルを充填するもので、農業者自らが行うことができます。 作業工程 (約半日~1 日) 作業内容・使用機器等 準備作業(清掃等) 使用機器等:草刈り機、たわし、高圧洗浄機(動力噴霧器)、カマ 作業内容:補修作業の前に、目地カッター切り、布テープ貼り の支障にならないように水路を清掃する。 (約 3 分/ヶ所) 目地カッター切り 使用機器等:ディスクグラインダー(刃はコンクリート用)、発電機、 防護用ゴーグル、マスク 作業内容:モルタルを充填する隙間を開け、接着できるように 悪くなった目地を除去する。 (約半日) 水路清掃 使用機器等:高圧洗浄機(動力噴霧器) 作業内容:モルタルの接着を阻害する目地部分の泥等をきれいに 除去する。 (約半日) 水路乾燥 作業内容:水路を乾燥させる。 事前準備 補修に際して「事前準備」が最も重要です。 補修作業 (約 3 分/ヶ所) 布テープ貼り 使用機器等:布テープ、(バックアップ材) 作業内容:バックアップ材(必要に応じて)を目地に詰め、布 テープを貼る。 (約 2 分/ヶ所) プライマー塗布 使用機器等:プライマー、はけ、バケツ等 作業内容:モルタルの接着を良くするためにプライマーを塗る。 (約 5 分/ヶ所) モルタル充填 使用機器等:コテ、コテ板、おけ、モルタル 作業内容:目地にモルタルを押し込んで充填する。 布テープを剥す (約半日) 作業内容:モルタルが固化する前に布テープを剥がす。 モルタル乾燥 注)記載している機器は一例。他の機器でも作業可能。 完成 3 2)留意点 ............... ①モルタルを使用した補修作業は水路の乾燥が必要です。乾燥できない場合、作業を行うことは困難で す。 .......................... ②凍結の恐れがあるときには補修作業を行わないでください。 ③洗浄時に多量の水を使用しますので水を確保してください。 ④作業時間は水路周辺の状況によって異なります。水路の水が止められない場合等、補修作業ができ る状況作りに時間がかかる場合があります。 ⑤水路の漏水は、漏水個所に隣接する圃場だけでなく、下流にある圃場にも影響があると推察されます。 作業にあたっては水路単位等ある程度のまとまりを持って行うことが望ましいと思われます。 ⑥作業によって排出されるゴミ等の処理には留意すること。 3)補修の効果 補修により、水路の漏水を防止する効果がある(図1)。また、補修後約 1 年経過後の農業者へのアン ケート調査では圃場が補修前よりも乾くようになったという意見が多かった(表1)。このことから補修作業 は水路の漏水を防止し、営農作業においても効果が認められる。 (L) 60 53.9 50 40 32.2 30 20 10 1.9 1.8 A補修後 A 1年後 1.5 2.6 B補 修後 B 1年後 0 A補修前 B補修前 図1 補修後 1年経過後の1時間当たりの減水量の比較 (鳥取市O地区) *試験日:補修前 平成18年11月20日、補修後 平成18年11月25日、 補修1年後 平成19年11月20-22日 *区間=7.2m 目地12ヶ所 L型水路 w=83-85 h=40 L=60 *底版及び目地の補修 表1 ほ場の状況関する感想(補修前と補修後を比較して) ほ場の乾き 春の耕耘作業時 中干し作業時 ①非常によく乾く 2 ①非常に入りやすい 2 ①非常によく乾く ②よく乾く 6 ②入りやすい 4 ②よく乾く ③変わらない 1 ③変わらない 3 ③変わらない ④乾かない 0 ④入りにくい 0 ④乾かない ⑤非常に乾かない 0 ⑤非常に入りにくい 0 ⑤非常に乾かない 計 9 9 1 8 1 0 0 10 稲刈り作業時 ①非常に入りやすい ②入りやすい ③変わらない ④入りにくい ⑤非常に入りにくい *防水モルタルによる補修 4 2 6 1 0 0 9 3 補修作業手順 1)使用する資材、道具 ・事前準備に必要な機器、道具・・・・(①準備作業、②目地カッター切り、③水路清掃) 機器等 発電機 用途等 ディスクグラインダー電源 高圧洗浄機(動力噴霧機) 圧力が高いものが良い タンク 洗浄、モルタル等調整用 ディスクグラインダー 目地除去(刃はコンクリート用) コードリール 道具等 用途等 カマ 目地のコケや泥を除去する 金タワシ モルタル接着部分表面を清掃する マスク カッター使用時の防塵 防護用ゴーグル カッター使用時の目の保護 タガネ 目地除去 ハンマー 目地除去 ・補修作業に必要な道具・・・・(⑤布テープ貼り、⑥プライマー塗布、⑦モルタル充填) 道具等 用途等 布テープ カップ プライマー入れ容器 刷毛 プライマー塗布 コテ モルタル塗工 コテ(目地用) モルタル塗工 コテ板 洗面器 モルタル小分け、モルタル練り用 バケツ 使用道具洗浄、水入れ 移植ゴテ モルタル練り用 ・その他 道具等 用途等 新聞紙 ボロ布 ゴミ袋 角スコップ 注)機器、道具は一例。他の機器でも作業可能。状況や作業に応じて選択すること。 5 ・資材(試験に使用した資材の一例を示します。) ガラス繊維入りモルタル、プライマー、(バックアップ材) 資材は土木系の商社で取扱っています。 ガラス繊維入りモルタル プライマー 25kg 1袋 約 7,000 円 1.2kg 1缶 約 3,000 円 ・強度を高め、亀裂を防止するためモルタルに ・モルタルとコンクリートの接着を良くするための糊。 ガラス繊維を配合したもの。 ・モルタルを練るときにも混和します。 繊維モルタル混練り ⅰ)プライマーとして使用する場合の配合例(体積比) プライマーをモルタルに混合し、塗りや 配合 プライマー : 水 すい硬さに調整してください。 割合 1 : 2 ⅱ)モルタルに混入する場合の配合例(体積比) 注)加水が多いと柔らかくなります 配合 が、亀裂が入りやすくなり、側面や 割合 多量のモルタルを塗りこんだ場合、 プライマー 1 : 水 : 4 たれやすくなります。 注)モルタルの保管には地面に直接 置かない等、湿気が入らないよう十 分注意してください。 ・砂を混合する場合、モルタル スコッ プ 2 杯につき 砂 1 杯までを目安にし て下さい。 ガラス繊維モルタル ・最初にモルタルと砂を空練りし、十 分混合後 使用資材例 調整してください。 注)砂を混合すると強度は低下します。 メーカー希望は重量比 0.4 を標準。 6 プライマー 2)作業方法 ①準備作業 <水路周辺の草を刈り、目地の状態がわかるようにコケなどを取り除いてください。目地周辺の水路の 肩の部分に土や草等があると、次の作業に支障がありますので除去してください。洗浄機の圧力が不 足する場合、目地周辺のコケ、泥はカマ等でこすり落としてください。> :草刈り機、たわし、高圧洗浄機(動力噴霧器)、カマ ②目地カッター切り <モルタルが接着しやすくするために悪くなった目地を除去し、幅約 1 cm、深さ約 1 cm の切り込みを 入れ、モルタルを充填しやすくします。> :ディスクグラインダー(刃はコンクリート用)、タガネ、ハンマー、発電機、コードリール、防護用ゴーグル、 マスク 古い目地の上に新しいモルタルで補修すると古い目地の状態が悪ければそ の部分から剥がれてしまいます。また、接着面が汚れていると、モルタルがはが れやすくなります。 注意! グラインダーの取扱には注意してください。硬いものに当たるとグライ ンダーがはじかれ、けがをする危険性があります。粉塵が飛びますので、目や 顔を保護してください。 ディスクグラインダー ③水路清掃 <目地部分に泥等のゴミがないよう除去します。> :高圧洗浄機 新しいモルタルを塗る部分に泥等があると、接着が悪くなるのできれいに清 掃してください。特に底の部分は泥が溜まりやすいので注意してください。 7 ④乾燥 <目地を乾燥させます。> プライマーを塗布出来るような状態(布テープが貼れる状態)にま で乾燥させてください。 水路に水が流れている場合、土嚢を積んでポンプで水をくみ出 す等の水を止める処理(参照:p10 参考 水の処理例)を行なってく ださい。 ⑤布テープ貼り <目地から 1~1.5cm 程度、間を開けて布テープを貼ります。> :布テープ、(バックアップ材) バックアップ材 布テープを貼ることで、モルタル充填作業をするときの目印となり、資材の無駄を省きます。 最初に水路の肩の部分に布テープをつけます。次に水路の底の角で部分的に止め、次の角に進み同様に止めます。 最後に全体を水路に接着させます。貼りにくい場合は、角の部分でテープを足で押さえる等してください。 目地の開きが大きいところや、切り込みが深い場合にはバックアップ材を入れてください。新しいモルタルを塗るときに裏 側に抜けてしまわないようにバックアップ材で止めをつくり、泥などで接着面が汚れることを防ぎます。 浅いところでは十分にモルタルを充填する深さ(1cm 程度)が取れないので使用しないでください。充填したモルタルが 剥がれやすくなります。 8 ⑥プライマー塗布 <プライマーをハケやローラーを使って塗ります。> :プライマー、はけ、カップ等(プライマーを入れる容器)、 プライマーはコンクリートとモルタルをより良く接着させる糊のような役目を果たします。新しくモルタルを塗る部分には切 り込みの内側も含めてすべて塗ってください。 使ったはけ等は長時間放置すると固まりますので、固まる前に布等でふき取り洗って下さい。 ⑦モルタル充填 <モルタルを、切り込みを入れた部分にしっかりと入るように押しつけながら塗り込みます。十分にモル タルを充填してください。ゴム手袋をした手で塗ることも出来ます。> :コテ、コテ板、洗面器(モルタルを練る容器)、モルタル 目地用コテ 塗る厚さは水路面から数ミリです。 テープの上にはみ出した余分のモルタルは、コテを使って掬い取ると材料の無駄を少なくすることが出来ます。 1 時間程度で固まり始めますが半日程度は水を流さないでください。 目地用のコテを使うと目地の中にモルタルを充填しやすいので使用することを勧めます。 9 ⑧布テープを剥がす <モルタルが固まる前に布テープを剥がします> 剥がさずに放置するとモルタルが固まり、きれいに布テープを 剥がせなくなります。 参考 水の処理例(水路の水を止められない場合) <補修には、プライマー、モルタルの乾燥作業が必要です。水路に水が流れ、乾燥させることができな い場合の処理例を示しています> ポンプを使って水をくみ出し、枡から先の 湧水処理のパイプにホースをつなぎ水路 水路に水が流れないようにしている に水が流れないようにしている 他の処理例として土嚢等で水を堰き止めポンプでくみ出す、一時的に水を圃場に流し、その先の水路の補 修を行った例もあります。 鳥取県農業試験場 鳥取市橋本260 TEL 0857-53-0721 農業試験場 ホームページ http://www.pref.tottori.lg.jp/dd.aspx?menuid=47767 10
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