(№ 60) 糖 ○多糖類 糖……… Cm(H2O)nの一般式で表される化合物 ○単糖類 C6H12O6 ……… 加水分解で多数の単糖類を生じる糖類 デンプン,デキストリン,グリコーゲン,セルロース …… ・還元性なし ……… 糖類の最小単位、加水分解しない。 アミロース (20 ~ 25 %) 溶けやすい 分子量(数十万) 直鎖状 アミロペクチン(75 ~ 80 %) 溶けにくい 分子量(数百万) 枝分れ デンプン グルコース(ブドウ糖),フルクトース(果糖),ガラクトース 希硫酸 → 加水分解 デンプン グルコース(ブドウ糖) n C6H12O6 - n H2O (α-グルコース) → アミラーゼ ・デンプン (C6H10O5)n デンプン マルターゼ → マルトース(麦芽糖) → グルコース(ブドウ糖) (C6H10O5)n α形とβ形は①の炭素に結合している水素原子-H とヒドロキシル基-OH の向きが互いに 逆になっている。水溶液から結晶化させるとα-グルコースが得られ、これを水に溶かすと、 25 ℃では、(a)か 37%、(b)が微量、( c)が 63%の平衡状態になる。 ヨウ素デンプン反応 デンプン溶液に、ヨウ素ヨウ化カリウム水溶液を加えると、青紫色になる。 (KI 水溶液+ I 2) セルロースでは呈色しない。 グリコーゲンは、赤~褐色に呈色。 ・デキストリン……デンプンを部分的に加水分解して得られる多糖類の総称 ・単糖類には還元性がある。 グルコース,ガラクトースには、-CHO フルクトースは、-C-CH2OH 構造により、還元性を示す。 ∥ O ○二糖類 C12H22O11 ……… 加水分解で2分子の単糖類を生じる糖類。 ○セルロース ……綿,パルプの主成分 希硫酸 ・セルロース β-グルコース → 加水分解 ・セルロースは、[Cu(NH3)4]2+ 水溶液に溶ける。 シュバイツアー 溶液 スクロース(ショ糖),マルトース(麦芽糖),ラクトース(乳糖) ○ニトロセルロース(トリニトロセルロース,硝化綿) C12H22O11 + H 2O → エステル化 2 C6H12O6 (C6H10O5)n + 3n HNO 3 → 希硫酸 or 塩酸 [C6H7O2(ONO2)3]n ニトロセルロース インベルターゼ ・スクロース(ショ糖) + H2O → 転化 ……綿火薬の原料 グルコース(ブドウ糖)+ フルクトース(果糖) 転化糖 混 [C6H7O2(O H )3]n + 3n HO NO 2 + 3n H 2O 酸 → [C6H7O2(ONO2)3]n + 3n H 2O マルターゼ ・マルトース(麦芽糖)+ H2O → グルコース(ブドウ糖)+ グルコース(ブドウ糖) ※ニトロセルロースは、エステルである。 H2CONO2 ラクターゼ ・ラクトース( 乳糖 )+ H2O → グルコース(ブドウ糖)+ ガラクトース ・スクロース(ショ糖)には還元性はないが、マルトース(麦芽糖)・ラクトース( 乳糖 )には還元性あり。 H O O H ONO2 H H ONO2 H O トリニトロセルロース (№ 61) ・アミノ酸はペプチド結合を作って結合する。(縮合反応) タンパク質とアミノ酸 ・アミノ酸…………分子中にアミノ基(-NH2)とカルボキシル基(-COOH)をもつ化合物 H | R -C- COOH | NH 2 H- グリシン R CH 3- R | H - N -C- C - OH | | ∥ H H O R | H - N -C- C - OH | | ∥ H H O アラニン R R | | H - N -C- C - N -C- C - OH | | ∥ | | ∥ H H O H H O 天然タンパクを加水分解すると上記のようなα-アミノ酸が得られる。 α-アミノ酸……- NH 2と- COOH が同じ C に結合しているアミノ酸 + H2O ・単純タンパク質……α-アミノ酸だけから構成されているタンパク質 ペプチド結合(酸アミド結合 - CONH -) ・複合タンパク質……色素や糖類などを含むタンパク質 ニンヒドリン反応 ・アミノ酸は、塩基性の- NH 2と酸性の- COOH をもつ両性化合物であり、酸とも塩基 とも反応して塩を生成する。 H | R -C- COOH | NH 2 + H | R -C- COOH | NH 2 H | R -C- NH3+Cl - | COOH HCl + NaOH → → H | R -C- NH3+ | COO - ← HCl H+ タンパク質 H | R -C- COOH | NH3+Cl - H | R -C- COO -Na | NH 2 → NaOH OH - タンパク質……アミノ酸がペプチド結合してできた高分子化合物 ( 分子内塩……分子内で 中性溶液 (分子内塩) - COO - ,- NH3+ アミノ酸 Ê ジペプチド Ê ポリペプチド Ê タンパク質 ) タンパク質の変性……熱・強酸・強塩基・アルコールなどでタンパク質の立体構造が壊れて 凝固し、もとに戻らなくなる。 変性タンパク質(例 ゆで卵) + + H 2O ビウレット反応 ポリペプチド(タンパク質)+ (NaOH + Cu SO 4 水溶液) 青紫 希 NaOH 水溶液を加えアルカリ性にして、CuSO 4 水溶液を少量加えると、 青紫~赤紫色になる。 ビウレット反応は、ペプチド結合検出反応である。 H | R -C- NH 2 | COO -Na + + H 2O 酸性溶液 アミノ酸は、ニンヒドリン溶液によって赤紫色を呈する。 アルカリ性溶液 のようにイオン性を示し、塩類と類似する。 キサントプロテイン反応 加 タンパク質 + conc HNO 3 熱 → concentrate アンモニア or 水酸化ナトリウム 黄色 → 橙色 〈液体を〉凝縮[濃縮]する。 集める。 集中する。 (№ 62) 核酸……核酸は、DNA と RNA の二種類に大別される。遺伝子の本体である DNA は、真核 生物の核などに含まれ、RNA はおもに細胞質に含まれる。 DNA も RNA も、四種 類の塩基(アデニン、チミン、グアニン、シトシン)がいろいろな順序で多数配列し た巨大分子である。二本の鎖の方向は、たがいに逆方向であり、鎖の間を結びつけ る力は、水素結合である。 タンパク質溶液に濃硝酸を加え、加熱すると黄色になり、冷却後アルカリ性にすると 橙色になる。 ニトロ化された物質の色。ベンゼン環をもつタンパク質について起こる。 ・重金属イオン(Cu2+,Ag+ ,Hg 2+ ,Fe 3+ )で沈殿する。 ・水酸化ナトリウムと加熱すると、アンモニアを発生する。 加 熱 タンパク質 + NaOH(固体) ・タンパク質中のイオウが、Pb 2+ → NH 3↑ と反応し、硫化鉛(黒沈)を生じる。 加 熱 タンパク質 + NaOH aq + Pb2+ → PbS ↓(黒沈) Pb(CH3COO)2 ・酵素(生体触媒)もタンパク質が主成分である。酵素の働きは、pHや温度の影響を受け やすい。 ・最適温度……酵素が最もはたらく温度範囲がある。その温度を最適温度といい、最適温度 が 35 ~ 40 ℃の酵素が多い。 酵素は、タンパク質であるから高温では変性して失活する。 ・最適 pH ……酵素には最もよくはたらく pH 範囲があり、その pH を最適 pH という。 最大の酵素活性を与えるpH条件。最大反応速度(V max)をpHに対してプロットする と、釣鐘型の曲線を描くことが多い。この型の曲線は、酵素の活性部位に二種類の解離基が 存在することを意味する。酵素はタンパク質を主体とした物質で、生体内で起こる化学反応 の触媒としてはたらく。酵素は、生物体内の細胞の中や消化液(胃液・すい液・腸液・だ液な ど)、酵母の中などに存在する。 (酵素番号、酵素命名法) ・国際生化学連合(IUB)による命名規則に従って表記する。 EC1 群:オキシドレダクターゼ(oxidoreductasae)、酸化還元酵素 EC2 群:トランスフェラーゼ(transferase)、転移酵素 EC3 群:ヒドロラーゼ(hydrolase)、加水分解酵素 EC4 群:リアーゼ(lyase)、除去付加酵素 EC5 群:イソメラーゼ(isomerase)、異性化酵素 EC6 群:リガーゼ(ligase)、合成酵素 酵素番号 第一番目の数字は、触媒する化学反応の形式 第二番目の数字は、基質の形式 第三番目の数字は、基質の種類 第四番目の数字は、群内での通し番号 DNA も RNA もともに基本構造は共通で、塩基とペントースからなる単位がリン酸によっ て連なったいる。アデニンとグアニンは、プリン骨格をもつプリン塩基、一方、シトシン、 チミンは、ピリミジン骨格をもつピリミジン塩基である ・二重らせん構造…… 通常 DNA は、二本の鎖がねじれ合った二重らせん構造をとる。この 二本の鎖の方向はたがいにに逆方向で、鎖を結び つける力は、 A-T、 G-C の間にはたらく水素結合 である。この二本の鎖は遺伝子の複製や遺伝子の 発現のさいに中心的役割を果たす。 炭水化物 単糖類、アミノ酸、ヌクレオチドなどが単位となって縮合重合すると生体高分子がで きる(それぞれ、多糖類、タンパク質・ペプチド、核酸など)。これらは生命の維持に 不可欠な物質である。 デンプン、セルロースをはじめとする多糖類及びそれらを構成する最小単位が単糖類 である。なお、糖類を炭水化物と呼ぶのは、それらの組成が炭素と水からできているよ うに表せるからである。一般に、単糖類は CnH2nOn = Cn(H2O)n と表す。しかし、DNA の構成成分であるデオキシリボースは C5H10O4 であり、この一般式にあてはまらない。 代表的な糖類 糖類には、グルコースやフルクトースなどの単糖類、スクロースのように加水分解す ると 2 個の単糖類になる二糖類、デンプンやセルロースのように加水分解すると多数の 単糖類を生じる多糖類がある。 糖類には、加水分解を受けるものが多いが、普通の条件ではこれ以上小さな単位に加 水分解されないものを単糖類という。 天然の単糖類には、炭素数が6個のものが多く、ヘキソースとよばれる。ヘキソース には、グルコース、フルクトース、ガラクトースなどがある。いずれも C6H12O6 であら わされ、互いに異性体である。 炭素数5のものはペントースとよばれる。ペントースには、リボースなどがあり、 C5H10O5 であらわされる。グルコース(ブドウ糖)は、動植物の体内に広く存在している だけでなく、スクロースやデンプン・セルロースなどの構成成分の一つである。直鎖構 造の末端はアルデヒド基が存在し、還元性を示する(還元末端)。還元末端にアルデヒド 基が存在する糖をアルドースという。グルコースは6炭糖なので、アルドヘキソースに 分類される。グルコースは、水溶液中では直鎖状のアルデヒド型グルコースと環状のヘ ミアセタール構造をとるα-及びβ-グルコースの合計3種の異性体混合物となる。 結晶中ではα-グルコースとして存在する。 C H C O H H H C C C HO CH2OH CH2OH CH2OH OH H C C H OH OH α - グ ル コ ー ス( α - ブ ド ウ 糖) HO C OH H H H C C O OH H C OH H OH H C C C C H OH H OH O グ ル コ ー ス( ブ ド ウ 糖) ペントースとヘキソースの例 単糖類は、炭素数により、ペントース、ヘキソー スなどに分類される。ヘキソースは、炭素数が6個。 グルコース、フルクトース、ガラクトースなどがそ うであり、 C6H12O6 であらわされ、互いに異性体で ある。ペントースは、炭素数が5個、リボースなど があり、C5H10O5 であらわされる。結晶中でリボー スは五角形の構造に、ガラクトースは六角形の構造 になる。 HO H β - グ ル コ ー ス( β - ブ ド ウ 糖 ) (№ 63) 二糖類 単糖2分子が脱水縮合した形の化合物を二糖類という。二糖類には、マルトー ス、スクロース、ラクトースなどがある。これらは互いに異性体である。なお、単糖2~ 10で構成される糖類はオリゴ糖またはショ糖と総称される。これらを酸や酵素により加 水分解すると、構成する単糖を生じる。 1)マルトース(麦芽糖) マルトースは水あめの主成分で甘味料として使われる。マルト ースは、グルコース 2 分子が縮合した形の構造をもつ。スクロースと異なり、還元性を示 す。デンプンにアミラーゼという酵素を作用させると、デンプンが加水分解されマルトー スが生じる。 マルトースにマルターゼという酵素や希酸を作用させると、加水分解して グルコースが生成する。 マルトース(麦芽糖)の構造 CH2OH O C H CH2OH H C HO H C H H H C C OH O C HH C OH H C C C OH H OH O OH マ ル ト ー ス( 麦 芽 糖) 2)スクロース(ショ糖) スクロースは、グルコースとフルクトースから H2O がとれた構造をもっている。 グルコースとフルクトースの分子の還元性を示す構造のところで結合しているので、 還元性を示さない。結晶は氷砂糖である。日常用いる砂糖はショ糖の製品である。 スクロースはサトウキビの茎やテンサイの根の中に 18 ~ 20 %含まれる。スクロー スを希酸または酵素インベルターゼ(スクラーゼともいう)によって加水分解する とグルコースとフルクトースになる。この混合物を転化糖といい、ハチミツの主成 分である。転化糖は還元性を示す。転化糖はスクロースの約 1.3 倍の甘さをもつ。 スクロース(ショ糖)の構造 CH2OH C O O CH2OH H H H H C HO C OH H C C H OH C C C C H OH OH H O ス ク ロ ー ス( シ ョ 糖) CH2OH
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