新年のご挨拶 - Qualcomm

Vol.13 Jan.2004
新年のご挨拶
米国クアルコム社
CEO
アーウイン・M・ジェイコブス博士
クアルコムを含め、あらゆる無線
通信関係者が、日本で2003年に
起こった成功の数々を注意深くウ
ォッチしていました。
何故ならば名だたる3つのキャリア全てが、ユーザーに
対して「CDMA2000とWCDMA」という新しい3Gの
選択肢を与えたのです。これは世界でも前例がない、初
めての体験であり、我々もこの動向からずっと目が離せ
ずにいました。
1
その結果、日本での3Gは既に1,200万人以上の加入者
を獲得し、なお急速な伸びを示しています。そして、こ
れからの3G躍進の牽引となる要素の一つとして、間違
いなくKDDIのCDMA 1X WINが挙げられるでしょう。
CDMA 1X WINでは、データ通信速度を上げながら、
パケット通信のコストを格段に下げました。
QUALCOMM NEWS Vol.13 JAN. 2004
クアルコム ジャパン株式会社
代表取締役社長
松本 徹三
昨年は、KDDIが「第三世代(3G)」
の端末とサービスを本格的に展開
した年でした。 これによって、
「iモード」と「写メール」が主導
してきた「これまでの流れ」が代わりつつあることを、多
くの人達に印象づけました。画面がきれいになっても、
新しいアプリを頻繁に使っても、auなら月末の請求書を
見てショックを受けることはありません。
「低価格で多量
のデータががんがん送れる」という3Gのネットワーク
の強みが遺憾なく発揮されているからです。
R
今年は、ドコモがいよいよ本気で「FOMA 」に比重を
移し、KDDIを猛追することになるでしょう。KDDIは、
満を持していた「CDMA1X WIN」を、いよいよ
2003年末に投入しました。VodafoneもWCDMA端末
を本格的に売り出すことが期待されているので、3Gの
端末とサービスが、次第に市場を埋め尽くしていくでし
ょう。「さ、世代交代」というわけです。
これにより、KDDIは月4,200円の定額で、「EZwebと
メールが使い放題」という従来の携帯電話では考えられ
なかった画期的なサービスをユーザーに提供することが
できたのです。
現在各キャリアの大きな収益源となっているデータダウ
ンロードサービスの開拓者は、NTTドコモです。 彼らが
i モードを旗揚げして市場を切り開いていったストーリー
は、多くの人たちの目を見はらせました。一方、KDDI
では、BREWTMのサービス拡充を進め、2004年にはほぼ
全ての端末をBREW対応にすることを予定しています。
gpsOneTMを利用した位置情報サービスや、デジタルカ
メラの搭載が、携帯電話に大きな付加価値を与え、それ
が爆発的にヒットしている日本の状況は、今や世界中の
通信キャリアの考え方に大きな影響を与えています。彼
らは日本市場に自らの将来像を見ているのです。
クアルコムは、日本という独特で多様性のあるマーケッ
トを、あらゆる面でサポートすることをお約束します。
我々は2004年も引き続き、日本発の新しいニュースが
出てくることを楽しみにしています。
しかしながら、このようなサービスの急速な高度化は、
「端末コストの増大」と「電池寿命の縮小」という深刻
な問題を同時にもたらします。せっかくきれいな画面で
魅力的なアプリを楽しんでいても、肝腎な時に電池切れ
で電話が出来なかったり、大切な電話が受けられなかっ
たりしたら、ケータイとしては失格です。私達は今、こ
の問題に全力をあげて取り組んでいます。
欧米の人達は、まだ「携帯電話の高機能化」という現実
を体験していないために、PDAと携帯電話を単純に一緒
にしたようなものを「スマートフォン」と称して、ここに
将来の可能性を見出そうとしております。しかし、その
ために、高性能CPUをいくつも力まかせに投入したり、
パソコンの思想を引きずった重いOSを使ったりしてい
ては、早晩大きな壁に突きあたることになるでしょう。
「日本のケータイ市場で揉まれたクアルコムのソリュー
ションだけが、正しい対応を考えていた」と評価される
ことこそが、我々クアルコムジャパンの目標です。この
為には、世界の一歩先を行く日本の端末機メーカー様、
デバイスメーカー様から、懇切なご指導とご鞭撻を頂く
ことがどうしても必要です。今年も何卒よろしくお願い
申し上げます。
QUALCOMM NEWS Vol.13 JAN. 2004
クアルコム ジャパン株式会社
専務(執行役員)
山田 純
チップセットとアプリケーションの
柔軟な融合を目指して
今やケータイは情報へのパーソナル・ゲートウェイ
◆メガピクセル・カメラの信号を直接MSMに取り込み、
日本をはじめとする多くの国で、携帯電話の使われ方が
ハードウェア・エンジンで処理すること
単なる電話を超えてきていることは言うまでもないこと
◆カメラからの信号を液晶パネルに表示するルートを です。特に日本は世界的にも最も進んでいる国のひとつ
ハード化したこと
であり、各種の情報提供サービスが花盛りで、加入者一
◆動画コーデックやグラフィックス処理機能の一部を 人がデータサービスに支払う通信費の割合が全通信費の
ハード化したこと
20%に達する勢いです。日本では、およそ考えられ得
るありとあらゆるデータサービスが提供されており、そ
等が挙げられます。いずれも、積極的にハードウェアを
の種類や内容は日々増えています。 今や、 携帯電話は
用い低消費電力化を図りながら処理能力を向上させ、ワ
「ケータイ」と呼ばれ、電話を超えた情報端末であるこ
ンチップで あ り な が ら 、 秒 間 1 5 フ レ ー ム 以 上 の
とが一般にも強く認識されています。
Q G V A 動 画 (MPEG4)の録画・再生を可能としてい
ます。
ニュース
位置情報
クアルコムMSMチップの動画・カメラ機能強化
CDMA2000
1X/1x EV-DO対応
2
着メロ・着うた
娯楽番組
スポーツ
対戦ゲーム
プレストーク
写真交換
Eメール
QCIF 動画
1.3Mピクセルカメラ
MSM6100
(既に出荷済み)
MSM6500
(2003年6月ES出荷)
QCIF 動画
2Mピクセルカメラ
QVGA 動画
4Mピクセルカメラ
UMTS/WCDMA対応
MSM6250
(2003年9月ES出荷)
MSM6150/6550
(2004年半ばES予定)
MSM6275
(2004年後半ES予定)
ビデオ
ワンチップソリューションにまい進
「ケータイ」がこれだけ複雑化してきた現在、アプリケ
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ーションと無線通信を別々のチップで処理する携帯電話
聴覚から視覚へ
も登場しています。しかしクアルコムでは、結局のとこ
そのような流れの中で、「ケータイ」の心臓部を司るク
ろ一つのCPUが「ケータイ」全体を制御する形に集約し
アルコムチップセットに対しての要求も大きく変わって
てくるだろうと見ています。その時、そのCPUは各種ア
きています。具体的には、ユーザーとのインタフェース
プリケーションを実行するのみならず、ハードウェアと
が、聴覚に留まらず視覚に大きく依存し始めたというこ
協調して無線通信も制御するというように端末全体のマ
とです。大画面にきれいな映像を表示することや、風景
スター・コントローラの役割を果たすと考えています。
を高解像度で撮影する、といった使い方が「ケータイ」に
「ケータイ」の制御を複数のCPUに分散するよりも一つ
強く期待されているのです。
のCPUに集中させた方が、オーバヘッドが少なく、低消
費電力化に向けたきめ細かい対応が可能になると考えて
このニーズへの対応は決して容易ではありません。なぜな
いるからです。
ら、携帯電話という商品の制約から、小型かつ低消費電
力でありながら低コストでなければならないからです。
もっともクアルコムとしても、どうしても1つのCPUだ
クアルコムでは、かねてよりこの課題に積極的に取り組ん
けに頼りきれない市場分野が「ケータイ」の世界の一部
できましたが、次世代製品であるMSM 6150/6550
にあることは認めており、このため、2004年頃をめど
では更に対応を強化しました。その目玉は、
にMSM7000シリーズの開発を企画しています。この場
TM
合、一つのCPUであらゆる種類の通信処理と極めて厳重
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前ページよりつづく
なセキュリティー管理を必要とする仕事をこなし、もう
BREW用アプリケーションはPC上のSDKで開発が可能
一つのCPUでより柔軟性を求められるアプリを専門でこ
です。ダウンロードアプリの開発にSDKをお使いただく
なすというのが基本構想です。2つのCPUは1つのチッ
だけでなく、ブラウザ・メーラといった「ケータイ」の
プの中に統合され、1つのソフト体系の中で動くことに
基本機能の開発にもお使いいただくことにより、今最も
なります。
問題となっている端末の開発効率化に寄与できると考え
ています。
「ケータイOS」へ進化するBREW
クアルコムのMSMがこのマスター・コントローラとしての
柔らかいクアルコム
役割を担う際の重要な要素として、BREWがあります。
最後に、「柔軟性」というテーマに触れたいと思います。
既にBREWはダウンロードアプリの実行環境として
「ケータイ」の進化は止まる所を知りません。新しいア
KDDIをはじめ世界の主要キャリアで採用されていますが
プリケーションやサービスが次々と登場しています。こ
クアルコムではそれを更に進化させ、「ケータイのOS」
のような市場環境で使われる弊社チップセットは、すみ
として活用いただけるよう、機能拡張を継続的に行って
やかに新しい使い方に対応できる必要があります。
います。
例えば、従来は電話にだけ使われていたボコーダをIPベ
User
Interface
Email
Photo Position Push to
Talk
Sharing Location
Browser
Video
Player
Java
Applet
ースのプレストーク・サービスに使おうという動きがあ
ります。また、そもそも加入者情報を保持する目的で
3
導入されたR-UIMカードですが、クレジットカードや電
子マネーカードのようなスマートカードとしても使おう
BREW
Other
Extension
VM
Extension
チップセット
という動きがあります。このような場合、既にMSMには
ボコーダやカードインタフェース機能が含まれているの
で、それらを新しいアプリケーションでも利用できれば
それに越したことはないわけです。
クアルコムとしては、MSMに搭載される要素機能を新し
「ケータイ」がPC/PDAに勝るとも劣らないコンピュー
いアプリケーションが活用できるようなインタフェース
タとなった現在、「ケータイ」に搭載されるアプリケー
を積極的に提供して参ります。上のボコーダの例では、
ションの開発にはOSが必須と言っても過言ではありませ
IVocoderというBREW APIを通じてアプリがボコーダ
ん。そのOSは、スタティックに組み込まれるアプリでも
を利用することが可能になりました。また、BREWとい
ダイナミックにダウンロードされるアプリでも統一的に
うフレームワークを活用することにより、MSMに接続さ
れる新しいデバイス(例えばFMラジオのチューナなど)
ユーザの指示や外来のイベントを契機に切り替える機能
もBREWアプリから制御できるようになりました。
や、アプリケーションのタイプ毎にメモリー空間を切り
分けて保護する、などの機能も求められます。更に、サ
クアルコムが自社のチップセットの機能を充実強化させ
イズが小さくなければなりません。
ることは当然重要ですが、それと同時に、いかにスムー
ズに新しいデバイスを融合できるかも重要なテーマであ
BREW3.0はそれら要求に応えるべく開発された実行環
ると認識しています。特に日本市場はモバイル・サービ
境です。弊社では、MSMをマスター・コントローラとし
スのメッカとして世界をリードしており、一年前には想
て活用いただく際の基本プラットホームとしてBREWを
像もしなかったようなサービスを開発・導入することが
位置付け、従来は別々にリリースしていたBREWと
日常茶飯事です。この厳しい 市場でも十分に通用する
DMSS /AMSS を統合して提供するように致しました。
チップセットを提供すべく、「柔軟な」クアルコムを目
TM
TM
指して尽力していく所存です。
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制御できる必要があります。複数のアプリケーションを
アプリケーションの海外進出をサポートするBREW TM
世界に広がるBREW
BREW JAPAN .COMサイト
世界初のBREWサービスが2001年11月に韓国のKTF
で始まり、約2年が経過しました。現在、21の端末メー
カーが、100機種、1600万台を超えるBREW端末を提
供すると共に、米国のVerizon Wireless、ALLTEL、
Cellular One、MetroPCS、Midwest Wireless、U.S.
Cellular、中国の中国聯合通信(チャイナ・ユニコム)、
日本のK D D I 、韓国のKTF、タイのHutchison CAT、
オーストラリアのTelstra、ブラジルのVIVO、イスラエル
のPelephone、コロンビア、エクアドル、パナマ、チリ、
ペルーのBellSouth International、プエルトリコの
Verizon Wireless、ドミニカのCODETELなど、20社
のキャリアがBREWサービスを提供しています。
(2003年12月現在)
2003年4月にBREW JAPAN SEMINAR 2003の一
環として開始したBREW関連サイトを、2003年9月25
日にBREW JAPAN .COMサイトとしてリニューアル
しました。このサイトはパブリックなBREW情報源とし
て、技術情報Q & A 、海外キャリア動向等のビジネス情
報、アプリケーション・関連会社情報、BREWラボ申し込
み、コラム等、幅広くBREWに関する情報を提供するほ
か、今後は技術公開討論など、様々な情報発信を続けて
いく予定です。 http://www.brewjapan.com
BREW JAPAN .COMサイト
グローバルBREW通信事業者
4
Launched commercial BREW services
Announced intent launch BREW services
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BREWアプリケーションの流通
BREWサービスが早くから始まった韓国、米国等では国
を越えてのBREWアプリケーションの流通が既に盛んに
なっていますが、日本でも海外で開発されたアプリケー
ションが日本のプロバイダーによって、輸入・カスタマ
イズされ提供されている他、日本で開発されたアプリケ
ーションの海外進出も始まりました。2003年にサンデ
ィエゴやソウル、北京で開催されたBREW Developers
Conferenceには様々な国のディベロッパーが最新情報
を求め参加されました。クアルコムではこの動きをサポ
ートするため、弊社内に設置しているBREWラボに海外
端末を用意する他、担当者が各国のアプリケーション商
用化手続きなどの説明を行っています。海外の最新状況
は http://www.brewjapan.com をご覧ください。
2004年の活動
BREW技術を学ぶBREW JAPAN SEMINAR 2003を
昨年開講しましたが、2004年も引き続きカンファレン
スやセミナーを開講する予定です。また、今年4回目と
なるBREW Developers Conference(各キャリアのプ
レゼンテーションやBREWロードマップのプレゼンテー
ション等最新情報発信の場)は、6月7日から9日にサン
ディエゴで開催されます。BREW採用通信事業者が19
社となった現在、去年以上の参加者が集まることを期待し
ています。カンファレンス情報は以下を参照ください。
http://www.qualcomm.com/brew/brew_2004/
BREW2003-Seoul
(7月4日)
※記載されている社名および製品名は、
クアルコムもしくは各社の商標・登録商標です。
※記事の内容は予告なく変更することがあります。
※クアルコムの承諾のない転載・転用を禁じます。
BREW2003-Beijing
(11月18-19日)
発行:クアルコムジャパン株式会社
〒107-0062
東京都港区南青山1-1-1 新青山ビル西館18階
Tel. (03)5412-8900(代表)
Fax.(03)5412-8956
http://japan.qualcomm.com
編集責任者:山口敦子