技 術 資 料(1) - 松尾電器産業

温度パワーセンサー
TPS技術資料 1/2
技 術 資 料(1)
負荷別内部発熱について
リレーやサーモスタット、スイッチのよ
うな接点を開閉する電気部品において、A
負荷容量は接点部の発熱によって制約を
受けます。特にサーモスタットは温度に
よって動作するスイッチですから、接点
部の発熱は動作温度やDIFF.に影響を与え
ます。温度パワーセンサーの接点容量表
示は右表に示すように発熱に対して、余
裕をもって表示されています。
A B C D の高さはディファレンシャルを示します。
温度パワーセンサーの機械的寿命は200
万回をクリアーしますが、重負荷で使用
される場合は接点の消耗によって、寿命
が制約されます。寿命の表示は定格負荷
時10万回を基準にしていますので、定格
負荷以下で使用された場合は、寿命は更
に長くなります。
右図をご参照ください。
A B C D の高さはディファレンシャルを示します。
D ランク
12
11
10
9
8
温 7
度 6
上
昇 5
︵ 4
℃
︶ 3
↑ 2
1
D ランク
10± 2
12
11
10
9
8
温 7
度 6
上
昇 5
︵ 4
℃
︶ 3
↑ 2
1
C ランク
6.5±1.5
B ランク
4.5±1.5
A ランク
熱
3±1
発
内
ース
のケ
ット
タ
モス
サー
A B C ランク用スイッチ
D ランク用スイッチ
0.5A
1A
1.5A
2A
→負荷電流(AC125V)
負荷別寿命について
負荷電流/内部発熱/DIFF.相関図
(5Amp.シリーズ)
負荷電流/内部発熱/DIFF.相関図
(2Amp.シリーズ)
2.5A
3A
10± 2
A B C ランク用スイッチ
C ランク
6.5±1.5
サーモスタットのケース内発熱
B ランク
4.5±1.5
A ランク
3±1
D ランク用スイッチ
M2・M2F 型
1A
2A
3A
4A
→負荷電流(AC125V)
5A
6A
機械寿命/負荷電流表(2Amp.シリーズ)
機械寿命/負荷電流表(5Amp.シリーズ)
1,000万
1,000万
700万
500万
700万
500万
100万
100万
50万
50万
A
10万
B
C
D
B
C
D
寿
命 5万
︵
回
︶
↑
1万
A
10万
寿
命 5万
︵
回
︶
↑
0.5A
1A
1.5A
2A
→負荷電流(AC125V)
2.5A
3A
1万
1A
2A
3A
4A
5A
6A
→負荷電流(AC125V)
サーモスタットをDC電圧回路で使用するときの問題点
①基本的には各カタログの(電圧/DIFF.ランク別の接点容量一覧表)
に記載の通りです。
(
⒞接点間距離が0.1mmまで瞬時にして離脱すればアークは切れ易
いが、接点がゆっくり離れるときは、アークが切れるギャップ
つまり AC125VとDC12Vは例えば5A
AC250VとDC24Vは例えば3A
に達するまで接点が過熱され続けるので、接点は短期間で傷ん
でしまいます。
というようにそれぞれ、同一電流まで使用可能です。
②アークによって接点が傷むメカニズムは下記の4つの要素から成
り立っています。
⒟ 接点が傷んできて左図のような円錐突起ができると、
アークが切れにくくなるという悪循環に陥ります。
③既に御高承とは思いますが、DCはACと異なり接点が開離すると
⒜電圧の大きさ
⒝電流の大きさ
きのアークが、継続し易く接点の熔着事故が起こり易いのです。
ACでは1/50〜1/60秒ごとに電圧の位相が交替するので、アークを
⒞接点の離脱速度、投入速度
⒟接点の材質と接点表面の状態
温度パワーセンサーは小型ですから、接点ギャップ(接点間の距
引く事故は起こりません。DCでは電流の流れは常に一方向です
から、アークは切れにくいのです。
④接点が傷むとは、何を指すのでしょうか。
離)は余り大きくはできません。基準は0.1mmです。しかし、切
れ味のよい速断機構を有し、瞬時で0.1mmのギャップを確保します。
⒜接点ギャップは主として電圧の大きさに対向する要素で、当社
はAC250VまたはDC48Vまでを保証します。DC75Vまでの保証
⒠接点材料の熔解
熔けた接点が閉成すれば、即熔着につながるのは当然ですが、
を要請されれば、接点ギャップを大きくして作ることができま
すが、DIFF.の小さなA, Bランクは作れなくなります。DC100V
は、当社サーモスタットの構造では対応不可能です。
⒝電流の大きさは主として、アークが切れるか切れないかではな
く、アークによって接点が、どれくらいダメージを受けるかに
関係があります。大電流のアークでは接点の熱上昇が短時間で
起きるので接点が早く融けるとか、接点の表面酸化が早くなる
とかの、悪現象を引き起こすのです。
松尾電器産業株式会社
そのほか、合金接点では溶解によって、各元素が析出して接点
表面の性質が変わってしまったり、アークの流れに伴って一方
の材料が他方に転位して、片方が凸、片方が凹形になり、次の
閉成時にロックするような事故も起こります。
⒡接点の動作時に起こる火花やアークによって発生するカーボン
によって、接点表面や周囲が黒く汚れることはよく見られます。
カーボンが発生するとまず接点間の接触抵抗が大きくなります。
抵抗値が大きくなると当然発熱が大きくなるので、熔着の可能
性が大きくなります。また流れる電流量が減少するので、負荷
のヒーターの熱が上がりにくくなる等の不具合も生まれます。
〒140-0002 東京都品川区東品川1-34-20 TEL.03(3472)9011 FAX.03(3472)9015
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温度パワーセンサー
TPS技術資料 2/2
技 術 資 料(2)
温度パワーセンサーの熱時定数
実用的な熱容量測定法
サーモスタットが、どれ位の速さで周囲温度に、馴染んでいくかは気
になるところです。物体はすべて、それ自身が熱容量を持っており、
一般的には大きいものは周囲の温度に同化し難く、小さいものは周囲
温度に馴染み易いのです。また熱伝導性のよいものは馴染み易く、熱
伝導性のわるいものはなかなか馴染みません。馴染みの善し悪しは熱
時定数で表します。
温度パワーセンサーのMQT8シリーズの熱時定数を測定してみました。
MQT8H
の熱時定数(条件:恒温空気槽で風速1〜1.5m/sec.)
M2
M3
はMQT8H
はM2
はM3
M2
熱時定数
160秒
100
ºC
M3
MQT8H
90
熱時定数
102秒
熱時定数
195秒
70
70º(100-25)の60%の線
58
50
58º(80-25)の60%の線
46
40
常温25℃の線
20
100秒
200秒
ºC
9
8
で表します)左表に示
すように、温度変化巾
7
熱
の
馴
染
み
の
遅
れ
300秒
400秒
500秒
↑
1.5mの空気中で測定
した熱時定数は102秒、
M2は160秒、M3は195
46º(60-25)の60%の線
ºC
熱時定数は(温度変化
巾の60%に達する時間
値を示します。MQT8
シリーズを風速1〜
60
0
サーモスタットの簡易な熱容量比較
10
が大きくても小さくて
も、物体が同じで測定
条件が同じなら同じ数
80
30
熱時定数は正確に、その物体の熱容量を掴む方法としては判ります
が、日常の実務上のやり方としては、少しアカデミックに過ぎます。
実務上の目安としては下表が便利です。(周囲温度の変化速度に対
して、サーモスタット自身の温度が、どの程度馴染んでいけるのか)
を(サーモスタットの簡易な熱容量比較)という表にまとめました。
600秒
秒です。
空気と水では水の方が
物体から熱を奪い易い
ので水中で測定した熱時定数は小さくなります。
→到達時間/秒
6
5
M3
4
M2
3
MQT8H
2
1
0
0.2ºC/1分 0.5ºC/1分1ºC/1分
1ºC/2分
1ºC/3分
1ºC/4分
1ºC/5分
(変化速い)←周囲温度の変化速度→(変化遅い)
周囲温度の変化速度が速ければサーモスタットの熱馴染みは遅
れますが、周囲温度の変化速度が遅ければ、サーモスタットは
充分に温度変化についていけることが判ります。
クロスバー接点(微少容量接点)について
普通の接点は最高使用電流を2Amp./5Amp.max.のごとく表示しますが、最小電流はどれ位なのでしょうか。一般的には50mA〜100mA位ま
でとし、それ以下は微少電流用の特殊接点の守備範囲に任せます。
当社の2Amp.5Amp.シリーズも普通接点の最小電流を50mAまでとし、それ以下はK接点と呼ぶクロスバー接点を使います。クロスバー接点
は1mA〜100mAを守備範囲と決めていますので、50mA〜100mAの間が普通接点と微少容量接点の共有範囲になります。勿論、この使用範
囲はあくまでも確率論です。普通接点でも20mAで使うことは可能ですが、接触不良が発生する可能性は増えるでしょう。クロスバー接点
の守備範囲は1mA〜100mAと表示していてもそれ以上/それ以下で全く使えなくなるわけではないのです。100%導通を満足する範囲が
1mA〜100mAだとお考えください。
さてクロスバー接点の構造は台形の貴金属接点を、クロス状に接触させるのです。この方式の優れてい
る点は、接触面積が小さくできるので単位面積当たりの押し圧が大きくなり、確実な導通が得られるこ
とです。また、接触面積が小さいので、微少ゴミが接点内に挟まって、接触不良を起こす確率が少ない
ことを挙げることができます。
接点構成の表示方法
当社はコントローラーとして使用するサーモスタットを製造している関
↑
高
温
X
Y
YZ
バ
ッ
主 ク
接 接
点 点
係上、表示方法がプロテクターの場合より複雑になります。図で表すと、
右記説明図の様になります。文章にしますと、以下の様になります。
低
温
●温度上昇で開になるものをX、上昇で閉になるものをYとし、温度上
↓
X
Y
主 バ
接 ッ
点 ク
接
点
高温動作点
応差
(ディファレンシャル)
低温動作点
YZ
(
実線は接点閉を示す
破線は接点開を示す
)
昇時(高温側)の動作温度を示します。同じものでも温度下降時(低
_ _
_
_
温側)の動作温度を重視する場合にはX、Yの記号を用います。下降で閉になるものがX、下降で開になるものがYです。
_
Zはトランスファー接点を示し、温度上昇時に主接点が、開になるものXZ、下降で閉になる表示がXZです。
●ランク表示はX接点ではCが標準、Y接点ではBが標準で省略できます。
ランク表示のない場合は、XはCランク、YはBランクとお考え下さい。
型式の表示方法
クロスバー接点を使用する時はMQT8H K35XCの様に書きます。
(Kはクロスバーの接点を示す。)
5Aシリーズのバック接点付の場合は M3 70XZB のように書
きます。Zはバック接点付です。
松尾電器産業株式会社
MQT8H
35 X C
DIFF.のランク表示
接点構成
動作温度
一字あける
型式名
〒140-0002 東京都品川区東品川1-34-20 TEL.03(3472)9011 FAX.03(3472)9015
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