いよいよ動き出したG450C 米大統領が製造力強化に言及

最前線
米韓台の 450mm戦略
《米韓台の450mm大口径化戦略》
いよいよ動き出したG450C
米大統領が製造力強化に言及
服部コンサルティング・インターナショナル
代表 服部 毅(本誌編集顧問)
米ニューヨーク州立大学と米韓台の世界先進半導体メーカーによる450mmウェーハ大口径化
コンソーシアム、Global 450 Corsortium(G450C)がいよいよ始動し、組織やスケジュールが
固まりつつある。Obama米国大統領は、5月にG450Cの舞台となるクリーンルーム棟を視察し、
全米に向けて国内製造力を強化する政策を発表した。
●先進5社とCNSEとでG450Cの初会合
米国ニューヨーク州の首都AlbanyにあるState
University of New York(SUNY)- College of Nanoscale Science and Engineering(CNSE)キャンパス
(図1)を舞台に、世界の最先端半導体メーカー5社
(米Intel、米IBM、米Globalfoundries、Taiwan Semiconductor Manufacturing:TSMC、韓国Samsung Electronics)が450mmウェーハ大口径化装置評価・プロ
セス開発・フルフロー試作を行うためのコンソー
シアム、Global 450 Consortium(G450C)が活動準
備をしていることは、本誌2012年2∼4月号1)∼3)でレ
ポートしたが、今回は、いよいよ始動したこのコ
ンソーシアムについて詳細に報告する。
この活動のいわば大家と言うべきSUNY-CNSEと
G450Cのメンバー5社との施設・設備利用、その他
様々な契約の締結が2012年2月までに完了し2)、3月
20日に第1回G450 Management Council Meetingが
AlbanyのNanoFab Eastビルで開催された。そこで、
各社経営トップが一堂に会して顔合わせをした。
CNSEからはKaloyeros上席副学長兼CEOをはじめ
10名、IntelからはBrunk Corporate Vice President(VP)
をはじめ5名、TSMCからはLin Executive VP兼COO
をはじめ3名、SamsungからはChung Executive VPを
はじめ3名、IBMからはFarrar VP含め2名、GlobalfoundriesからはBennett VP含め2名の合計25名が出
席した。SEMATECH/ISMI(International SEMATECH Manufacturing Initiative)は、G450Cメンバー
ではないため参加していない。会議は非公開で、
その内容も明らかにされていない。
●450mmフルプロセス試作は2015年に
G450Cの今後の暫定的スケジュールは、図2に示
すように、テストウェーハを用いたオペレーショ
ン(装置デモ、個別プロセス検討)を2013年末ま
で行い、2014年末までにはすべての450mm装置を
揃えたデモを行う。具体的には、2013年から2014年
にかけて50種類の製造装置をそれぞれ異なるベン
ダー2社ずつから調達し、合計100台のデモを行う。
納期が間に合わない一部の装置に関しては、2015
年にずれ込む可能性が高い。2015年には、CNSEで
450mmフルプロセスが行えるようにする計画であ
る。
これらの成果
2012年
2013年
2014年
2015年
を、各社は持ち
G450C
インプリント
(リソグラフィの選択)
193i
EUV(未定)
活動開始
帰って各自の450
テストウェーハ・デモ(期間延長)
mm工場を稼働
(第1段階)
全450mm装置デモ
納期遅れ装置?
させることにな
(第2段階)
っている。昨年
(テストウェーハ・
450mmフルフロー
次の計画策定
装置デモ以降の目標)
プロセス(CNSEにて)
9月27日のCuomoニューヨーク
図1 NanoFab X(写真上部の白い建物) 図2 G450Cの暫定スケジュール
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Electronic Journal 2012年6月号
最前線
米韓台の450mm戦略
統括管理者・調整役
(CNSE)
内部・運用担当統括責任者
(TSMC)
業界・戦略担当統括責任者
(Intel)
450mm
集積
図3
プログラム
調整
露光/
エッチ装置
CMP/酸化
洗浄装置
CVD/PVD
イオン注入装置
450mmファブ
オペレーション
図4 NanoFab X 内で演説するObama大統領
G450C暫定組織図
州知事の声明 1)は、将来、投資額100億ドル(8000
億円)を超える450mm量産工場がニューヨーク州
内に建設される可能性を示唆しているが、これは州
の願望ということだろう。
G450Cの組織体系を図3に示す。家主のCNSEが
全体の調整役を務め、戦略立案や業界対応など渉
外を担当するゼネラルマネージャーにはIntel出向者
が、内部オペレーション担当ゼネラルマネージャ
ーにはTSMC出身者が、それぞれ就任することにな
っている。先に触れた知事声明1)の中に引用されて
いた各社首脳コメントでも、IntelやTSMCは450mm
に関して意欲的な発言をしており、また具体的な
450mm工場の展開計画を持っており、このことと
上記の人選とは無関係ではなかろう(表1)。
表1 Globl 450 Consortiumメンバー5社の450mmに対するスタンス
New York知事声明(2012/9/27)に引用さ
G450C
れている各社首脳コメントの450mm言及
メンバー
カンパニー 発言
各社内部における
400mm Fabの準備状況
Intel
G450Cは、半導体産業が次世代ウェーハ ・試作用D1X
サイズへ移行するための重大な役割を負 (米国オレゴン州)建設中
っている。この新技術で、コスト削減、 ・量産用Fab42
生産性向上、1チップ当たりの環境負荷 (米国アリゾナ州)建設中
ともに“450mm-compatible”
を低減する
300mmライン
TSMC
450mm製造を実現することは、生産性の ・試作用Fab12(台湾・新竹)
向上と革新をもたらすという意味で業界 2013∼2014年頃稼働計画中
・量産用Fab15 (台湾・台中)
にとって重要な節目となろう
2015∼2016年頃稼働計画中
Samsung
ウェーハ大口径化は半導体および電子業 未定
会にインパクトを与えよう。当社は世界 (ただし、近い将来、李会長
的な半導体企業と積極的に手を携えて の鶴の一声で即決するだろう)
450mmウェーハを導入するつもりだ
Globalfoundries
言及せず
未定
IBM
言及せず
未定
ような異様な雰囲気だった(図4)。大統領が、わ
●Obama米国大統領がCNSEを視察
ざわざ、G450Cの舞台となるクリーンルーム棟を、
G450Cが、450mm装置を並べて試作ラインを構
米国製造業復権の演説会場に選んだ意義は計り知
築するのは、CNSEのキャンパス西側に建設中の
れないものがあろう。
NanoFab Xという巨大な建物(図1)だが、ここを
G450Cの活動に関しては、昨年9月末にニューヨ
Barack Obama大統領が、去る5月8日に視察した。
ーク州知事が声明を発表して以来、本稿執筆時点
Obama大統領は、大統領専用機でAlbanyにやって来
までに公式な発表や情報開示は一切ない。すべて
てCNSEのナノテク施設の300mmクリーンルームを
関係者だけで非公開で進められており、誰も多く
視察した後、外観がほぼ完成したばかりのNanoFab
を語ろうとしない。
Xで、「海外へ出て行った製造業を今こそ国内に呼
従って、本稿記載の内容の多くは、著者が関係
び戻し、米国の製造力を強化し、雇用拡大を図る。
者に取材して得た時点での最新の非公式情報に基
当地は、まさにその象徴的存在だ。製造を海外か
ら国内に戻した企業には法人税を減税するなど、 づいている。その後も、時々刻々と事態が進展し
ていると思われるので、いずれ公式に発表される
雇用促進のための法案を議会に提出する」(Obama
(かも知れない? )内容とは、細部で異なっている
氏)という趣旨の演説を行った(図4)。
可能性があることを最後にお断りしておく。
ニューヨーク州で稼働が一部開始したGlobalfoundriesのFab 8(投資額46億ドル、雇用予定者数
1600人)についても具体的に言及して賛美した。 参考文献
1)服部毅:Electronic Journal (2012.2)pp.60-61
大統領が演説会場に選んだNanoFab Xは内装工事が
2)服部毅:Electronic Journal (2012.3)pp.58-59
始まったばかりで、クリーンルーム天井吊り下げ
3)服部毅:Electronic Journal (2012.4)pp.40-41
用の多数のボルトが垂れ下がった、まるで倉庫の
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