配電線解析と通信可否判定支援ツール - 三菱電機

特集論文
配電線解析と通信可否判定支援ツール
北山匡史* 泉井良夫**
安部淳一*
田邉信二**
河野良之***
Distribution Network Analysis and Service Provisioning Support Tool
Masashi Kitayama, Yoshio Izui, Junichi Abe, Shinji Tanabe, Yoshiyuki Kono
要 旨
アクセス系向けの高速の電力線通信
(Power Line Com-
ミュレーションを行うコンポーネントベースシミュレーシ
munication:PLC)システムでは,中圧・低圧配電線を通
ョン(Component−based Simulation:CBS)によって使用
信ネットワークとして用いるが,PLCで用いる周波数帯域
する周波数帯域での信号の減衰やジッタ特性のシミュレー
における信号伝送特性は考慮されておらず,インピーダン
ションを行い,変復調方式やドライバ・レシーバ特性など
ス不整合による反射など伝送特性の劣化が発生する。
を考慮して伝送速度を推定する機能を持っている。
通信の可否をある程度机上で検討することができれば,
伝送路設備回路モデルは,配電線解析技術をベースとし
伝送困難と推定される場所の抽出及び信号中継装置やバイ
て,配電系統におけるPLC伝送路回路の等価回路モデルを
パス装置による対策検討など,PLCネットワークの設計及
作成し,配電線のモデル系統又はフィールドでの伝送特性
び運用の支援,また,サービス加入希望者へのサービスレ
実測値と比較することによってモデル精度の検証を行い,
ベルの情報提供を実現することが可能となる。このような
コンポーネントモデルを作成する。
背景から,筆者らは,PLCシステムの通信可否の推定を行
う通信可否判定支援ツールの開発を行っている。
通信可否判定支援ツールは,信号注入位置から信号取出
本稿では,配電線解析技術を適用したコンポーネントモ
デルの作成方法とシミュレーションの考え方,及び通信可
否判定支援ツールの機能構成について述べる。
位置までのコンポーネントを組み合わせることによってシ
データ管理機能
伝送路設備
回路モデル
データベース
伝送路設備
データベース
伝送特性実測
データベース
通信可否判定支援機能
PLCモデム特性
減衰特性(dB)
コンポーネントベース
シミュレーション(CBS)
PLCネットワーク
設計/運用
注入位置∼取出位置
減衰特性推定
0
∼6MHz
Mbps
6∼12MHz
Mbps
12∼18MHz
Mbps
18∼24MHz
Mbps
24∼30MHz
Mbps
−20
−40
−60
−80
−100
5
10
15
20
25
30
推定伝送速度
ユーザー
(ISPサービス加入者)
周波数(MHz)
通信可否判定支援ツールの機能構成
通信可否判定支援ツールは,機器又は機器群の回路特性を模擬した伝送路設備回路モデルデータベースと,PLCネットワークの接続状態を格
納する伝送路設備データベース及び伝送路の実測値を格納した伝送特性実測データベースを用いて,信号注入位置から信号取出位置までのコン
ポーネントを組み合わせることによってシミュレーションを行うCBSによって使用する周波数帯域での信号の減衰特性のシミュレーションを
行い,PLCモデムの動作モードに応じた特性を考慮して伝送速度を推定する機能を持っている。
*
先端技術総合研究所 **同研究所(工博)
***
社会 eソリューション事業所(工博)
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