繍 遡 - SEIKEI University Repository

成 瞑 大 学 理 工 学 研 究 報 告
J.Fac.Sci.Tech.,SeikeiUniv.
Vo1.51No.1(2014)pp.57-60
(研 究 速 報)
コス トと消 費 電 力量 の 両 方 を考 慮 したサ ー バ 集 約 方 式 の 基 礎 検 討
瀧
寛 人*1,栗
林
伸 一*2
Serverconsolidationmethodconsideringbothcostandpowerconsumption
HirotoTAKI*1,Shin-ichiKURIBAYASHI*2
(Mar.7,2014)
1.は
じめ に
〈サーバ 集約 実施 前 〉
集約拠点A
サ ー バ集 約 は 企 業 の 持 つ 実 サ ー バ 数 を削 減 す る こ とで
拠点B
コス トや 消 費 電 力 量 を 削 減 す る手 法 と して 広 く実 施 され
て い る[11。従 来,サ ー バ 集 約 の評 価 は集 約 に伴 う コス ト,
消 費 電 力 量 そ れ ぞ れ 個 別 に 考 慮 され る こ とが 多 く,ま た
集約する側
集約される側
コス トと消 費 電 力 量 の 関係 も十 分 に 明 らか に され て い な
〈サー バ集 約実 施後 〉
い。
[=コ
… ネ・トワーク部
集約拠点A
本 論 文 は,簡 易 な モ デ ル を用 い て サ ー バ 集 約 に伴 うコ
拠点B
ス トと消 費 電 力 量 の 関係 を 評 価 し,そ れ に基 づ い た サ ー
とめ た もの で あ る。
、 軸一
、
、
論 文 は成 瞑 大 学 理 工 学 部 の 卒 業研 究[2]を拡 張 し,と りま
マ 鑑
繍遡
バ集 約 指針 を 明 らか に す る こ と を 目的 とす る。 な お,本
'
N:削減 できるサ ーバ数
W=追 加される帯域
2.サ ー バ 集 約 に お け る コス トと消 費 電 力 量 の 関 係
図1サ
ー バ 集 約 の イ メー ジ
評価
は別 に評 価 す る必 要 が あ る。
2.1基
本的な考え方
一般的に
,サ
ー バ 集 約 は コ ス ト削 減,セ
含 む 維 持 管 理 の 容 易 化,消
2.2評
キ ュ リテ ィ を
費 電 力 削 減 な ど を 主 目的 に 実
施 さ れ る。 図1は,AとBの2拠
価 モデル
今 回 は コス トと消費 電力 量 の 関係 を お お ま か に 把握 す
点 か らな る シス テ ム で 拠
る こ と を 主 目 的 とす る た め,現
実 の サ ー バ構 成 や ネ ッ ト
点Bの サ ー バ を 拠 点Aに 集 約 す る イ メ ー ジ を 示 す 。 な お,
ワ ー ク 構 成 を 厳 密 に 反 映 し た モ デ ル で は な く,以
削 減 さ れ る サ ー バ 数 をN,追
明 す る 簡 易 な モ デ ル を 想 定 す る。
加 さ れ る 帯 域 をW[Mbps]と
す る。 こ の 図 か ら わ か る よ うに,サ
ー バ 集 約 に よ りサ ー
バ の コ ス ト と 消 費 電 力 量 は 削 減 で き る が,集
加 さ れ る ネ ッ ト ワ ー ク(帯
増 加 す る。 従 っ て,コ
域)の
ま ず,評
・サ ー バ の 消 費 電 力 量(1台
ス ト削 減 は サ ー バ と ネ ッ トワ ー ク
Cs,Psは
報 科 学 科4年
*2:情
報 科 学 科 教 授(kuribayashi@st
,1ヶ
の1時
ー タル コス トと
そ れ ぞ れ サ ー バ 価 格,サ
月 分):Cn
間 分):Ps
,1時
生
々 の ネ ッ トワ
算 出 す る の は 困難 で あ り
今 回 は 料 金 を ベ ー ス に 算 出 す る。 同 様 に,Pnに
以 下 の 式 を 用 い て 簡 易 に 算 出 す る。
.seikei.ac.jp)
一57一
間 分):Pn
ー バ仕 様 をべ 一 ス に
算 出 で き る 。 様 々 な ネ ッ ト ワ ー ク構 成,個
ー ク 装 置 を 全 て 想 定 し てCnを
*1:情
月 分):Cs
・ネ ッ ト ワ ー ク の 消 費 電 力 量(1Mbps
ー タ ル コ ス トが 削 減 さ れ れ ば トー タ ル の 消 費 電
力 量 も 必 ず 削 減 さ れ る わ け で は な く,ト
の1ヶ
・ネ ッ ト ワ ー ク コ ス ト(IMbps
コ ス トと 消 費 電 力 量 は
を 合 わ せ た トー タ ル の コ ス トで 判 断 す る 必 要 が あ る 。 さ
ら に,ト
価 で 使 用 す るパ ラ メ ー タ を 以 下 に 示 す 。
・サ ー バ コ ス ト(1台
約 に伴 い 追
下に説
,
ついては
成 践 大 学 理 工 学 研 究 報 告
由 す る コ ア ル ー タ 台 数*コ ア ル ー タ 消 費 電 力 量+
経 由す る エ ッ ジ ル ー タ 台 数*エ ッ ジ ル ー タ消 費 電 力 量+
イ ッ チ 台 数*L3ス
イ ッ チ 消 費 電 力 量}
の 中で 企 業
ー バ 集 約 に 伴 う トー タ ル コ ス トTc(1ヶ
20
以 上 か ら,サ
40
求 め る。
\
60
業 に 按 分 され る 割 合 は
80
Y/Xで
ー D弐 ,什ゆ 拘 昌 四
な お,ル ー タ や ス イ ッ チ の 最 大 性 能 をX,そ
が 使 用 す る 性 能 をYと す る と,企
∞
ユ
*企 業 に 按 分 され る 割 合(1)
Zc大
20
ユ
経 由 す るL3ス
40
ゐ
W (a﹄Σ )野 喪
Pn={経
Vol.51No.1(2014.6)
\ 角
0
月 分)と
トー タ ル 消 費 電 力 量Tp(1時
間 分)は
以下の式
012345678910
で 算 出 で き る。
Tc=一{削
削滋できるサーバ台数1台}N
減 で き る サ ー バ 台 数N}*Cs+
図2サ
ー バ 集 約 に よ り トー タ ル コ ス トを 削 減 で き る
{増 加 す る 帯 域W[Mbps]}*Ns(2)
Tp-一{削
範 囲(Tc<0)
減 で き る サ ー バ 台 数N}*Ps+
(3)
{増 加 す る 帯 域W[Mbps]}*Ps
W
な お,Tc,Tpが
む ロ
負 に な る 場 合 は トー タ ル で 削 減 され,
正 に な る場 合 は 増加 す る こ とを 意 味 す る。
ll淫
炉
180'小
2.3評
価 結 果 と考 察
杵
ミ
(1)評 価 条 件(値 は あ く ま で も 一 例)
ぽ40a角
昌20・
Cs:40,000[円/H],Ps:160[Wh],Pn:15[Wh]
Cn:9,450[円/.月](Wが10以
/月](Wが11以
下),2,450*{W-10}+94,500[円
0・
上)
な お,こ
012345678910
削 減できるサーバ台数1台lN
れ ら値 は 市 販 サ ー バ や ネ ッ トワ ー ク機 器 の 価
格 と仕 様,ネ
図3サ
ッ トワー クサ ー ビス の 料 金 な ど を参 考 に仮
に 設 定 した 値 で あ る[3]'[5]。
ま た,Pnの
イ ッ
W
の
ら算 出 し た 。
l:li
お
is。
回 は そ れ ら を コ ス ト比Zc(-Cs/Cn)と
Tc負 ●
消費電
α
新 た に 導 入 し,傾
向 を評 価 す る。
価結果
域 を 示 し た も の が 図2で
ー タ ル コ ス トが 負 に な る 領
軸 は 増 加 す る 帯 域Wを
図4サ
そ れ ぞ れ 示 す 。 図3は
り,逆
ー タル 消 費 電 力 量 が 負 にな る
領 域 を 示 し た も の で あ る。 横 軸,縦
よ び 図3に
軸 は 図2と
同 じで あ
ヨ
る う
ち
フ ヨ ね
の ケ ー ス
図3の
り,Zcが
り,サ
トが 相 対 的 に 安 く な る と)コ
ス ト削 減 範 囲 が 広 く な る こ とが わ か る 。Zp
同 じで あ
ーバ 当 た りの 消費 電 力 が相 対 的 に 大 き くな る と消
費 電 力 量 削 減 が 可 能 な 範 囲 が 広 が る こ と が わ か る。
縦 軸 の 値 は 上 記(1)を 前 提
上 記 か ら,サ
そ の もの に特 別 な
小 さ く な る と(サ
ー バ コ ス トが 相 対 的 に 高
に よ る 消 費 電 力 量 削 減 可 能 範 囲 の 変 化 もZcと
示す斜線部がサーバ集約 によ り ト
と し た 時 の あ く ま で も 一 例 で あ り,値
意 味 は な い 。 図2よ
ユ ユ
派できるサー
バ台蜘台〕N
ー バ 集 約 の4つ
にZcが 大 き く な る と(サ
く な る と)コ
ー タ ル コ ス トま た は トー タ ル 消 費 電 力 量 が 削 減 可 能 な 範
囲 で あ る。 ま た,図2と
あ る。 横 軸 は 削 減 で き るサ ー バ
Zpを パ ラ メ ー タ と し て,ト
る。 図2お
ユ ヨ ニ う ら ア ら ヨ ニ
酬温(・
き
るサー,治
蜘劃N酬
Zcを パ ラ メ ー タ と して,ト
台 数N,縦
α
o
(2)評
●
l・e●v
力 比Zp(=Ps/Pn)を
Tp負
だ
1`o
こ の た め,今
V
●
も
s6。
調 電 力 な どの 影 響 も把 握 して お く必 要 が あ る。
δ●
お
用 費,人
●δ
I P き 什" 衿足 僑
件 費,空
回 考 慮 し て い な い 保 守 費,運
…1β
り,条 件 や 今 後 の 技 術 革 新 に よ り大 き く 変 動 す る 可 能 性
β●
む
回 想 定 す る コ ス トや 消 費 電 力 は 一 例 で あ
が 高 い 。 ま た,今
一
ポ ﹄ひ 響 轡
と こ ろ で,今
き る 範 囲(Tp<0)
算 出 に お い て は,
ッ ジ ル ー タ 数:2,L3ス
前 提 に,式(1)か
ー バ 集 約 に よ り トー タ ル 消 費 電 力 量 を 削 減 で
W
経 由 す る コ ア ル ー タ 数:3,エ
チ 数:2,を
、。.
ー バ 集 約 に よ り 以 下 の4つ
の ケ ー ス(α,
β,γ,δ)が 発 生 す る 可 能 性 が あ る と 言 え る(図4参
ー バ コス
<ケ
ー ス α>Tcく0&Tp<0
ス ト削 減 可 能 範 囲 が 狭 く な
<ケ
ー ス β>Tc≧0&Tp≧0
一58一
照)。
成 践 大 学 理 工 学 研 究 報 告
<ケ
ー ス γ>Tc≧0&Tp<0
<ケ
ー ス δ>Tc<0&Tp≧0
こ れ は,必
参考文献
ず し も"コ
ス ト削 減=消
費 電 力 量 削 減"と
は な ら な い こ と を 意 味 す る 。 つ ま り,実
か ど うか は コ ス ト,消
Vol.51No.1(2014.6)
[1]ネ
際 に集 約 を行 う
統 合 で,約130台
費電力量の両方の観点で企業の シ
の サ ーバ を
ル ー プ 全 体 の サ ー バ
「VMwarevSphere4」
に 集 約"
http://www.networld.co.jp/news/press2009/0909.htm
信 デ ー タ量 が 多 い サ ー
[2]瀧,"コ
ス トと消 費 電 力 の 両 方 を考 慮 した サ ー バ集 約
バ よ り も 少 な い サ ー バ を 集 約 す る 方 が よ り コ ス ト,消 費
方 式",2013年
電 力 量 を 削 減 で き る 。 ま た,ス
(2014.1)
に デ ー タ を 保 管 す る サ ー バ は,集
ド社"JBCC,JBグ
仮 想 化 ソ リ ュ ー シ ョ ン で10台
ス テ ム 構 成 と そ の 利 用 状 況 お よ び 企 業 の 集 約 目的 を み て
判 断 す る 必 要 が あ る 。 例 え ば,通
ッ トワール
トレー ジ サ ー ビス の よ う
約 す る と 転 送 す る トラ
度
成 瞑 大 学 理 工 学 部 卒 業 論 文
[3]J.Baliga,R.W.A.Ayre,K.HintonandR.S.Tucker,
ヒ ッ ク 量 が 大 量 と な りそ の 消 費 電 力 量 も 増 大 す る た め,
"GreenCloudComputing:BalancingEnergyin
特 に 意 識 し て お く 必 要 が あ る。
Processing,StorageandTransport",Proceedingsofthe
IEEE,Vol.99,Issuel,Jan.2011
3.サ
ーバ集約指針
[4]NTTCommunications``ArcstraUniversalOneバ
ー ス ト
プ ラ ン"
2.3節 で 整 理 した サ ー バ 集 約 の4ケ ー ス にお い て,サ
ー バ集 約 を ど う実 施 す べ き か そ の 指 針 を以 下 に整 理 す る。
・ケ ー ス α:例 え ば ,コ ス トま た は 消 費 電 力 量 が も っ と
ー タ 経 営 研 究 所"IT機
ht唾)://www.meti.go.jp/meti
・ケ ー ス γ:集 約 の 狙 い が 消 費 電 力 量 の 削 減 で あ れ ば ,
コス トを 増 や さず に 消 費 電 力 量 を最 も削 減 で き る条 件 で
集 約 す る(具 体 的 な例 は 要検 討)。 狙 い が コス ト削 減 で あ
れ ば集 約 しな い。
・ケ ー ス δ:集 約 の 目的 が コス トの 削 減 で あ れ ば ,消 費
電 力 量 を 増 や さず に コス トを最 も削 減 で き る条 件 で 集 約
す る。 狙 い が 消 費 電 力 量 の 削 減 で あ れ ば集 約 しな い 。
す び
簡 易 な モ デ ル を 用 い て サ ー バ 集 約 に 伴 うコス トと消 費
電 力 量 の 関係 を 評価 し,必 ず し も"コ ス ト削 減=消 費 電
力 量 削減"と
[5]NTTデ
器 の エ ネ ル ギ ー 消 費 量
に 係 る 調 査"
も削減 され る条件 で集 約 す る。
・ケ ー ス β:集 約 す べ き で は な い 。
4.む
httP://www.ntt.com/vpn/burst/
は な らな い こ と を明 らか に した 。 ま た,装
置価 格 の 変 動 や 今 回 考 慮 して い な い 条 件 に よ る影 響 も把
握 す るた め,サ ー バ とネ ッ トワー クの コス ト比,消 費 電
力 比 を 導 入 し,そ の 比 の 値 が コス ト削 減 範 囲 ま た は 消 費
電 力 量 削減 範 囲 に 及 ぼ す影 響 を示 した 。 さ ら に,サ ー バ
集 約 で想 定 され る4ケ ー ス 毎 にサ ー バ 集 約 指 針 を示 した 。
な お,今 回 の 評価 で使 用 した 「
削 減 で き るサ ー バ 数 」
な どは,様 々 な 条 件 を 考 慮 して 決 定 され る もの で あ り,
実 際 の サ ー バ集 約 判 断 は別 途 詳 細 な 計 算 が 必 要 で あ る。
一59一
_lib/report/2013fyAEOO2741.1)df