梗概 - 八島研究室 - 千葉工業大学

オブジェクト削除を伴う非線形画像縮小に関する研究
1032065 佐瀬 敏暁 (指導教員 八島由幸教授)
1.研究の目的と背景
近年,スマートフォンなどの爆発的な普及により,リサイズ
技術に求められる収縮サイズが増大すると予測できる.しか
し,Seam Carving では,画像内の重要領域の大きさや数
によって収縮後サイズが制限されてしまう.そこで本研究で
は,画像内の重要領域に注目し,縮小の妨げとなる重要領
域を故意に削除することで,縮小サイズが制限されてしまう問
ことなどが考えられる.
[参考文献]
[1] Shai Avidan, Ariel Shamir, "Seam carving for
content-aware image resizing", ACM Transactions on
Graphics, Vol.26, No.3, Article 10, Jul. 2007
[2] 竹内綾香,“顕著性マップを用いた非線形画像縮小に関
する研究”2011 年度千葉工業大学情報科学部情報ネッ
トワーク学科卒業論文,2012.2
題を緩和することを目的とする.
2.オブジェクト削除を伴う Seam carving
Seam Carving は重要領域の低い所を優先的に削除して
いく性質をもつ[1].そこで,その性質を利用して,削除したい
領域の重要度を故意に低い値に設定することを考える.処
理手順としては,まず原画像に対する重要度マップとマスク
画像を作成する.マスク画像とは,図 1 に示すように,原画
像において,削除するオブジェクトを白で塗りつぶし,それ以
外を黒で塗りつぶした 2 値画像のことである.そして,図 2
に示すように,重要度マップとマスク画像を重ねあわせ,マス
ク画像の白い領域と同じ座標の重要度を-10000 に設定し,
Seam Carving を行うことで削除を図った.設定値を-10000
図 1.マスク画像の作成手順
にするのは,オブジェクトの削り残しを防ぎ,確実に削除する
ためである.
3.実験結果と考察
実験では,削除する Seam 数を変化させ,従来手法と提案
手法の処理結果の画質を比較した.処理結果を図 3 に示す.
これを見ると,従来手法では,オブジェクトが歪み,視覚的に
違和感のある画像となってしまっているが,提案手法ではオ
ブジェクトは保持され自然な画像になっていることが分かる.
このことから,オブジェクト削除により違和感を伴うことなく縮
図 2.オブジェクトの削除手順
小後のサイズをより小さくできることがわかった.また,削除す
るオブジェクトの数を増やすことで,更に収縮後のサイズを小
さくすることができることも分かった.
4.まとめ
縮小サイズが制限されてしまう問題に対して,オブジェクト
削除は有効である.今後の課題としては,オブジェクト削除
後に違和感が残った場合に,その領域を補間する最適な方
法の模索や,収縮によってオブジェクトが,どの程度密集し
た時にオブジェクト削除を行うかの判定方法と,その際に指
標とする値などを導き出し,オブジェクト削除の自動化を図る
図 3.処理結果の比較(左:従来手法,右:提案手法)