山田町 地域新エネルギービジョン 概 要 版 この事業は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の平成21年度「地域新エネルギー・省エネルギ ービジョン策定等事業」の補助により実施したものです。 なぜ、新エネルギー? その1 化石燃料の枯渇 私たちの生活を支えているエネルギーはそのほとん 42年 どが化石燃料(石油・石炭・天然ガスなど)です。 60年 世界のエネルギーの使用量は年々増加しており、日 133年 本を含む全世界が、現在のペースで化石燃料を使い続 けると、石油が約42年、天然ガスが約60年、石炭が 100年 約133年で枯渇すると予想されています。 (年) 図 世界のエネルギー資源確認可採年数 持続可能なエネルギー資源が求められています。 (資料:「日本のエネルギー2009」(資源エネルギー庁)) その2 日本の低いエネルギー自給率 日本のエネルギー自給率は、原子力を入れても 19%、原子力を除けば4%しかありません。 また、日本のエネルギー需要量は近年一貫して増 加を続けており、石油への依存量が約5割と他の 国に比べて高くなっています。 国際的な安全保障の観点からも、自給可能なエ ネルギー資源の開発が求められています。 (%) 200 180 160 140 120 100 80 60 40 20 0 180% エネルギー自給率(原子力を国産とした場合) 153% エネルギー自給率(原子力を輸入とした場合) 93% 71% 39% 15% 15 19% 50% 62 20% 4 2 27 77% 81% 174 143 76 91 72 7 図 主要国のエネルギー自給率(2006) (資料:「日本のエネルギー2009」(資源エネルギー庁)) その3 進む地球温暖化 「地球温暖化」が進み、地球の平均気温の上昇による異常 気象などの様々な影響が表れています。 「地球温暖化」の最も大きな要因は、化石燃料の使用に伴 って排出される二酸化炭素などの「温室効果ガス」の増加で す。温室効果ガスは、太陽から受ける熱を大気中に閉じ込め る効果を持つため、気温が上昇するといわれています。この まま地球温暖化が進むと、異常気象や生態系の破壊など取り 返しのつかない悪影響が起こることが心配されています。 地球上の二酸化炭素を増やさない化石燃料に代わる新たな エネルギー資源が求められています。 図 温室効果ガスの作用 (資料:(財)省エネルギーセンター) 「新エネルギー」の特徴・・・ 1. 再生可能で持続的に利用できます 2. 自給型のエネルギーです 3. 自然界から得られるエネルギーで地球上の二酸化炭素を増やしません これらの特徴により、「新エネルギー」が注目されています! 1 新エネルギーとは? 「新エネルギー」とは、太陽光や風力などのように、自然界から得られるエネルギーで、化石燃料 と違って地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量が少ないエネルギーのことです。「新エネルギ ー利用等の促進に関する特別措置法」では「技術的に実用段階に達しつつあるが、経済性の面での制 約から普及が十分でないもので、石油代替エネルギーの導入を図るために必要なもの」とされ、10 種類が指定されています。 1 再生可能エネルギー(自然エネルギー) 今まであまり使われていなかった太陽の光や熱、風の力など自然界のエネルギー全体のことです。 新エネルギーのほか、大規模な水力や海洋エネルギーなども含む幅広い概念です。 2 新エネルギー 「再生可能エネルギー」のうち、エネルギー問題や地球温暖化問題の解決のために、特に普及が求 められているものを指します。繰り返し利用できて、温室効果ガスの排出が少なく、輸入に頼らない エネルギーという特徴があります。 3 革新的なエネルギー高度利用技術 再生可能エネルギーの普及、エネルギー効率の飛躍的向上、エネルギー源の多様化に役立つ新技術で、 その普及を図ることが特に必要なものとされています。燃料電池やクリーンエネルギー自動車などが該当 します。 ・ 実用段階 ・ 競争力あり ・ 十分普及している 革 新的 なエ ネ ルギ ー 石油 石油代替エネルギー 石炭・天然ガス・原子力 再生可能エネルギー 水力発電・地熱発電 ・ 実用段階 ・ 制約あり ・ 十分普及していない 新エネルギー 発電分野 ・太陽光発電 ・風力発電 ・バイオマス発電 ・中小規模水力発電 *1 ・地熱発電 *2 熱利用分野 ・太陽熱利用 ・バイオマス熱利用 ・雪氷熱利用 ・温度差熱利用 ・実 用 化 さ れ ていない バイオマス燃料製造 波力発電・海洋温度差熱発電 *1 中小規模水力発電は、1,000kW 以下のもの。 *2 地熱発電はバイナリー方式のものに限る。 *3 新エネルギーとされていないが、普及が必要なもの。 2 高度利用技術 *3 再生可能エネルギー の普及、エネルギー効 率の飛躍的向上、エネ ルギー源の多様化に 資する新規技術であっ て、その普及を図るこ とが特に必要なもの。 ・クリーンエネルギー 自動車 ・天然ガスコージェネレ ーション ・燃料電池 など 山田町のエネルギー消費状況、町民の意識は・・・ 1 エネルギー消費量と二酸化炭素排出量 本町の年間エネルギー消費量は約110万ギガジュールとなっており、原油に換算すると約2万9千 キロリットル(200リットルドラム缶で14万5千本)に相当します。エネルギー種別では、電力によ るエネルギー消費の割合が最も大きくなっています。部門別では、運輸部門が最も大きくなっていま す。 本町における年間の二酸化炭素排出量は約8万2千トンとなっており、エネルギー種別では電力消 費からの、部門別では運輸部門からの排出量が最も大きくなっています。 ガソリン 23% 民生家庭 24% 電力 25% 運 輸 43% LP ガス 7% A重油 9% 軽油 21% 図 2 民生業務 18% 灯油 15% 産 業 15% 山田町のエネルギー種別消費内訳 図 山田町の部門別エネルギー消費内訳 新エネルギーに関する町民の意識 本町で利用したら良いと思う新エネルギーは、「太陽光発電」が75%で最も多く、次いで「太陽 熱利用」が59%、風力発電が44%となっています。 また、新エネルギーに期待することについては、「地域の自然環境保全・生活環境の改善が図られ ること」が最も多いほか、経済的なメリットや新産業創出を期待する回答が多くなっています。 0% 20% 40% 60% 1.太陽光発電 20% 1.住民の地域づくりへの積極的な参加が図られる こと 40% 60% 80% 25% 59% 3.風力発電 2.地域の自然環境保全・生活環境の改善が図られ ること 44% 4.バイオマスエネルギー 8% 5.バイオディーゼル燃料 8% 6.廃棄物発電 58% 3.エネルギー・環境問題に対して教育・啓発効果 が得られること 34% 4.新エネルギー導入による経済的なメリット(収 益など)が得られること 17% 7.小水力発電 48% 10% 8.雪氷熱利用 2% 9.温度差エネルギー 2% 5.新産業創出・雇用創出などの経済効果が得られ ること 10.波力エネルギー 36% 6.環境・エネルギー問題に取り組むことによる町 のイメージアップが図られること 24% 11.クリーンエネルギー自動車 34% 7.地域内外の交流の活性化など、地域の活性化が 図られること 15% 13% 11% 12.燃料電池 図 0% 100% 75% 2.太陽熱利用 13.天然ガスコージェネレーション 80% 8.その他 1% 図 山田町で考えられる新エネルギー(複数回答) 3 1% 新エネルギーの導入に期待すること(複数回答) 100% 山田町が目指す新エネルギービジョン 1 導入が期待できる新エネルギー 本町の新エネルギーの潜在賦存量、利用可能量などと現在の利用状況から、次の新エネルギーの導 入が期待できると考えられます。 太陽エネルギー バイオマスエネルギー 太陽光発電・太陽熱利用 木質バイオマスなど クリーンエネル 風力エネルギー 小水力エネルギー ギー自動車 ハイブリッドカー 2 新エネルギー導入のポイントと方針、導入プロジェクト 本町には、太陽エネルギーや木質バイオマスエネルギーなどの自然エネルギーが豊富にあります。 今後、それらの資源を有効に活用していくことで、自然環境との調和と地域の活性化を目指します。 ~新エネルギーを活かし、豊かな自然と調和するまちづくり~ 基本方針とプロジェクト 1.【自然】豊かな自然を活用した新エネルギーの導入 1.1 太陽エネルギーの利用 1.2 木質バイオマスエネルギーの利用 1.3 その他の自然エネルギーの活用 2.【まちづくり】住みよいまちづくりに活かす新エネルギー 2.1 リサイクルエネルギーの活用 2.2 新エネルギーを活かしたまちづくり 3.【地球温暖化】まちぐるみでの地球温暖化防止への取り組み 3.1 各家庭での取り組みの推進 3.2 普及啓発と教育 3.3 地球温暖化対策 4.【産業】新エネルギー活用による産業と雇用の活性化 4.1 新規事業における活用 4.2 各種施策との連携 4.3 研究開発への取り組み 4 新エネルギー導入促進プロジェクト 太陽光発電が導入されている公共施設としては、町立山田中学校と県立山田病院があります。アンケ ート調査の結果、太陽光発電に対する関心が高かったことから、導入の際の補助金などが充実すれば、 将来的に事業所や一般家庭においても広く普及することが期待されます。風力や小水力による発電は技 術的には確立されているものの、設置場所などについての課題があり、導入には慎重を期する必要があ ります。 ●太陽エネルギーの導入・普及 公共施設への太陽光発電・熱利用の導入と住宅や事業 者への普及促進を図ります。公共施設に導入すること で、環境・エネルギーに対する意識の向上を図ることが できます。また、指定避難場所に設置することで、災害 時のライフラインの確保に大きな力となることが期待 できます。 県立山田病院の 太陽光発電パネル ●風力発電の活用 公園や街路に小型の 風力発電を設置し街路 灯などに電力を供給す ることで新エネルギー の普及啓発やPRが期 待できす。 太陽光発電と太陽熱利用が 行われている山田中学校 ●小水力発電の活用 町内を流れる川から 取水し、マイクロ水力 発電を行い周辺施設で の利用が期待できま す。 織笠川 木質バイオマスエネルギー導入促進プロジェクト ◇森林保全と木質バイオマスの利用 森林は、適切に保全・管理、利用されな ければ荒れてしまいます。 ペレット 木質バイオマス利用を推進することに 家庭用ストーブなど よって、森林整備と同時に、漁業環境の保 全を図ります。 森林の保全・管理から発生する木材は、 バイオマス燃料として地域で暖房用など チップ 産業用ボイラーなど 液体 汎用燃料利用 に有効利用する仕組みを構築します。森林 をバイオマス燃料生産の場とすることで、 木質バイオマス原料 林業の活性化が期待できます。 5 その他の新エネルギーをまちづくりに活かす 廃食油から軽油代替となるバイオディーゼル燃料(BDF)を製造する技術は確立されています。 ポイントは、家庭や事業所などからの廃食油の安定的な収集であり、そこでの廃食油の発生動向を踏 まえた上でBDF化することが考えられます。 また、クリーンエネルギー自動車については、エコカーに対する補助金などの支援があり、個人や 事業者の導入に対する関心も高いことから、町が率先的に導入することで普及が図られると考えられ ます。 ハイブリッド型街路灯(太陽光・小風力)を通学路や街中に設置することで、景観を活かしたまち づくりや防犯対策に活用することができます。 ●廃食油の利用 廃食油から軽油代替となるBDF の製造が可能です。本町では、運 輸部門のエネルギーの消費量が 大きい傾向があります。自動車に おける対策が有効です。 ●クリーンエネルギー自動車の普及促進 ハイブリッド車や電気自動車 が注目されています。本町でも 公用車等として環境負荷の少な いこれらのクリーンエネルギー 自動車の導入を推進します。 ●ハイブリッド型街路灯の設置 小型風力・太陽光のハイブリ ッド型の街路灯を設置すること で、自然界のエネルギーを有効 活用しながら生活の安全・安心 向上が図られます。 まちづくりに活かす新エネルギー ◇木質バイオマスエネルギー利用の展開 本町には豊富な森林資源があります。こ のバイオマス資源を化石燃料代替のエネル バイオマス燃料の 生産と利用 林業復興 広葉樹の植林 水産資源の 保全・増殖 漁業発展 ギー原料として利用することで、農林漁業 が連携し、持続的な自然共生型のシステム を構築できると考えられます。 伐採後の森林を広葉樹林の森にし、森林 生態系を健全化することで、水産資源の保 全が図られます。 また、漁業系廃棄物のカキ殻を木質バイオ マスエネルギーを利用して処理。土壌改良 農業再生 剤などとして有効活用し農産物を特産品化 することで、農業の活性化が期待できます。 6 地域活性化 森林伐採 ビジョンの実現に向けて… 新エネルギービジョンの実現のためには、行政・町民・事業者などの各主体がそれぞれの役割を 果たし、必要に応じて連携を図ることが必要です。各主体が参加する「地域協議会(仮)」を立ち 上げ、この組織を中心にして、ビジョンの啓発・広報活動や具体的な計画づくり、その実施、進ち ょく状況の管理を行います。また、新しい技術分野や事業枠組の構築については、国、県や研究機 関などの協力や支援を受けていくことが重要です。 新エネルギーの導入を生活環境の整備、教育施策、観光振興など町の施策と効果的に連携させる ため、庁内委員会を設置し本ビジョンの推進にあたります。 パートナーシップの構築 町民・事業者・行政が、それぞれ役割分担すると同時に、連携を取り合いながら推進します。 地域一体となって、新エネルギーを活かし、豊かな自然と調和するまちづくりに向けて取り組み ます。 地域協議会 町 町民 事業者 関係団体 新エネルギービジョンの啓発・広報活動 新エネルギービジョンの実施計画作成・実施推進 新エネルギービジョンの進ちょく状況の把握・評価 導入プロジェクトの見直し・展開 庁内委員会 庁内ワーキンググループ 組織・施策連携によるビジョンの推進・フォローアップ 町民 事業者 山田町 ●各家庭での省エネルギー推進と 新エネルギー導入の積極的検討 ●行政の主催する新エネルギー関 連イベントへの参加 ●新エネルギー導入に関する行政 への協力と情報や意見の提供 ●新エネルギー導入の積極的検討・ 省エネルギー対策の推進 ●行政への協力と情報や意見の提供 ●地域社会との協力 ●推進体制の整備 ●公共施設への新エネルギーの 率先的導入 ●町民や事業者への新エネルギ ーの啓発活動 ●国・県・研究機関などと連携 山田町地域新エネルギービジョン 概要版 平成22年2月発行 発 行:山 田 町 企画・編集:山田町企画財政課 〒028-1392 岩手県下閉伊郡山田町八幡町3番20号 TEL:0193-82-3111/FAX:0193-82-4989 7
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