ボイラ高温蒸気配管最大損傷部位特定手法の開発 Development of the

ボイラ高温蒸気配管最大損傷部位特定手法の開発
Development of the method
to particularize maximum damage
parts for high-temperature steam pipes in boilers
○正
西田
秀高
永久
堅也(中国電力株式会社)
Hidetaka NISHIDA, Kenya NAGAHISA ,Chugoku Electric Power Co., Inc.
Kagamiyama, Higashihiroshima 739-0046, Japan
For high accuracy residual life assessments, and prolongation periodical inspection for high-temperature parts in
boilers,there are a lot of needs finding maximum damage parts for high-temperature steam pipes in boiler.
We developed method that measuring by laser instrument , using elastic analysis by FEM and creep damage
analysis by FEM, and observed cross section cut scrap in service plants. Result of this FEM Analysis and this section
microstructure are very similar. Our created method is accuracy and and simple.
Key Words: maximum damage parts ,Residual Life Assessment Method, prolongation periodical inspection
1.緒言
累積運転時間が 10 万時間を超えるボイラの定期事
業者検査時期を延長する場合,余寿命診断に関する指針
(1)
Fix Point
に基づき,大径管等を対象として,設計条件で高熱負
荷部・高応力作用部の中から最も過酷と考えられる代表
Support
箇所(以下,最大損傷部位)を選定し,クリープ破断寿
命を対象とした余寿命診断を行う必要がある。しかし経
Displacement
年劣化したボイラでは,管の変形や補修工事等を経て配
管系統の荷重バランスが変化しており,建設時の設計条
件をもとに選定した
最大損傷部位
とは異なる部位が
損傷する場合があることが,経験上わかってきた。
そのため,ボイラ起動過程における実際の大径管系統
の動きを反映させた有限要素解析により高精度に最大損
Loading Place
Stopping PL.
Marking
傷部位を特定する手法を開発した。
Place
Laser Instrument
2.開発概要
2-1 配管系統の変位量計測
Fig.1
Measurement of Pipe displacement
ボイラ起動過程における配管系統の変位量計測には,
土木工事等で使用される高精度レーザー測距器を用いる。
実機では保温材が取り付けられており運転中に配管表面
を直接見られないため,配管系統内に点在する支持具に
目印を取付け,その点の変位量を 3 次元的に計測し
(Fig.1),幾何学的な位置関係から配管断面中心の変位
量に換算する。
他,信頼性の高い配管変位データを入力して弾性解析を
行う。これにより,コールド起動過程における配管系統
全体の変形状況(Fig.2)や応力分布等を把握できる。母
材よりもクリープ損傷の進行が懸念される溶接熱影響部
(HAZ)に相当する部位に着目して高応力順に順位付けし,
クリープ解析対象部位を選定する。
2-2 弾性解析
配管系統図面をもとに,弾性解析に用いる蒸気配管
系統の 3 次元シェル要素モデルを作成する。作成したシ
ェル要素モデルに対し,配管材料の物性値,ボイラ出口
やタービン入口での拘束条件,実機配管の温度・内圧の
なお,本稿で紹介する有限要素解析は,後述するクリー
プ解析を含め,MSC.MARC を用いて計算した。
Boiler
Loading
Stoppinng
Outer Surface
Turbin
Maximum Damage
Fig.2
Displacement of Pipe started from cold
condition
2-3 クリープ解析
配管を構成する溶接金属・母材・HAZ では材料物性値
やクリープ強度が異なるため,予め実験等によりそれぞ
れの物性値やクリープ変形挙動を記述する構成式をもと
めておく。作成した詳細解析モデルに対して,これらの
解析条件の他,弾性解析からもとめたエルボ両端部の変
形量を与え,実機運転を模擬したクリープ解析を最大数
十万時間まで行う。クリープ開始前ではエルボ腹側の配
管断面における応力分布は配管内表面から外表面に向か
って次第に高くなる傾向であるが,30 万時間経過後には
クリープ損傷の蓄積によって応力分布が変化し,エルボ
腹側外表面から少し板厚内部に入った HAZ 細粒域に局所
的な高応力部位が出現している。また,最大応力レベル
はクリープ変形に伴う応力緩和の影響で低下している。
2-4 クリープ損傷評価
Fig.3 は,実機運転時間 30 万時間相当の間に,エルボ
腹側配管断面内に蓄積するクリープ損傷率の分布を示し
ている。図中で損傷率が 1 を超える範囲は,配管外表面
から少し内部に入った HAZ 細粒域に集中しており,局所
的に応力が高くなっていた箇所と対応がある。ここで,
Fig.4 に解析対象とは別のボイラで 10 万時間以上使用後
に廃却された主蒸気管エルボ長手溶接線断面の HAZ 細粒
域におけるクリープボイド発生状況を示す。蒸気条件や
溶接線断面形状等が解析モデルと同一ではないものの,
クリープボイドの発生量が最も多いのは,外表面から少
し内部に入った HAZ 細粒域であり,解析結果でクリープ
損傷率が高かった部位に比較的近い場所であった。この
ことから,本解析手法により実機配管断面のクリープ損
傷状態を再現できることが判った。
3.結言
ボイラ起動過程における大径管系統の動きを反映さ
せた有限要素解析により最大損傷部位を高精度に特定
する手法を開発し,実機配管の余寿命診断対象部位の
選定に適用できる見通しを得た。
Innner
内表面
Fig.3
Surface
Distribution of Creep damage at inside of the
elbow after 300 thousands hours
Cutting
point
Fine HAZ
On the surface
Fine HAZ
2mm depth from the
surface
Fine HAZ
10mm depth from
the surface
Fig.4
Circumstance of damage at cutting section of
the elbow in the service plants
4.参考文献
(1) 平成17・03・01原院第1号「火力設備における電気事業
法施行規則第94条の2第2項第1号に規定する定期事業
者検査の時期変更承認に係る標準的な審査基準例及
び申請方法等について,別紙3:余寿命診断に関する指
針」