タワークレーンの起伏・旋回方向の制御 (実験による検証) - 日本機械学会

' タワークレーンの起伏・旋回方向の制御
(実験による検証)
&RQWURO RI $ 7RZHU &UDQH IRU 8SDQGGRZQ $QG 5RWDWLRQDO $QJOHV
([SHULPHQWDO 9HULnFDWLRQ
〇 木 清志(千葉大院)
正 西村 秀和(千葉大)
.L\RVKL 7$.$*,&KLED 8QLYHUVLW\<D\RLFKR,QDJHNX&KLED +LGHND]X 1,6+,085$ LELG
$ FUDQH PRXQWHG RQ D WRZHUOLNH oH[LEOH VWUXFWXUH FDOOHG WKH 7RZHU FUDQH
KDV D SUREOHP WKDW D IDVW WUDQVIHU RI
WKH ORDG FDXVHV WKH VZD\ RI WKH ORDG DQG WKH YLEUDWLRQ RI WKH oH[LEOH VWUXFWXUH 2QO\ RQ WKH GLUHFWLRQ RI XSDQGGRZQ
ZH KDYH DOUHDG\ VKRZQ WKDW LW LV SRVVLEOH WR FRQWURO ERWK WKH VZD\ DQG WKH YLEUDWLRQ E\ WKH FRQWURO RI WRUTXH WR WKH
ERRP ,Q WKH DFWXDO RSHUDWLRQ KRZHYHU WKH PRWLRQ RI WKH URWDWLRQDO GLUHFWLRQ LV QRW QHJOLJLEOH 7KLV SDSHU PDNHV LWV
WKUHHGLPHQVLRQDO PRGHOV IRU VLPXODWLRQ DQG UHGXFHGRUGHUPRGHO LQ RUGHU WR GHVLJQ D GHFHQWUDOL]HG FRQWURO V\VWHP
7KHQ ZH GHVLJQ WKH GHFHQWUDOL]HG +
FRPSHQVDWRU DQG YHULI\ WKH HpFLHQF\ E\ VLPXODWLRQV DQG H[SHULPHQWV
.H\ZRUGV 3RVLWLRQLQJ &RQURO 9LEUDWLRQ &RQWURO 7RZHU &UDQH )OH[LEOH 6WUXFWXUH 5REXVW &RQWURO +
'HFHQWUDOL]HG &RQWURO 6\VWHP
まえがき
z
ビル,ダム建設などで使用されるタワークレーンは,ブー
ムの土台となるタワー部を剛体とすることは困難である.その
ため,ブームの起伏や旋回,吊り荷ロープの巻き上げと巻き下
げなどのクレーンの運動によりタワー部の振動を励起し,荷ぶ
れに加えてタワー部の残留振動が操縦者の作業効率を悪化させ
ることになるという問題があり,振動を抑えるという部分のみ
でもクレーン操作の自動化のための制御技術に関する研究は高
まりつつある >@.
これらの問題に対して,著者らはクレーンの本来有する操作
力のみにより,吊り荷ロープ長変動を伴った起伏方向のみのク
レーンのブーム自体の位置決め制御,吊り荷の制動制御,タワー
部の振動制御の同時制御を行った >@.
しかし,実際のタワークレーンの作業順序は, 吊り荷ロー
プを巻き上げ, 旋回と同時にブームを起伏させて位置を決め,
吊り荷ロープを巻き下げる,となるため旋回方向の運動は無
視できない.前報 >@ ではこの問題に対して吊り荷ロープ長変動
を考慮したシミュレーションを行ったが,本報ではそれに加え,
吊り荷ロープ長を一定とした実験を行う.
本研究ではこの問題に対して,起伏方向と旋回方向の連成は
少ないと考え,起伏方向と旋回方向について別々の制御器を用
いる分散制御系の実現を行う.また,そのことにより,起伏方
向の制御器は先行研究 >@ の設計手法をそのまま用いることが出
来る.まず,タワークレーンの起伏方向の運動に加えて旋回方
向の運動を考慮する, 次元空間モデルを作成し,つぎに,分
散制御器設計のための低次元化モデルを作成する.起伏方向の
低次元化モデルは文献 >@ で示したモデルを用い,新たに旋回方
向の低次元化モデルを作成する.そして起伏方向および旋回方
向の制御器設計モデルを用いて + 制御器を設計する.そして,
設計した分散制御系によりクレーンの本来有する操作力のみに
より, 次元空間でのブーム自体の位置決め制御,旋回角度の
位置決め制御,タワー部の振動制御,吊り荷の制動制御の 自
由度の同時制御が行えることをシミュレーションおよび実験に
より検討する.
L
ν Q
b
x1
日本機械学会
ν
l
L
1234567
12345678
1234567
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12
yr
kt
x2
y2
ψ θ
x3
y3
Wo
x4
y4
1234567890123456789012345678901
1234567890123456789012345678901
1234567890123456789012345678901
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y
x
l
ct
ζ
ψ
Wo
D GLPHQVLRQV
y
E 5RWDWH GLUHFWLRQ
)LJ 7RZHU FUDQH PRGHOV
タワークレーンのフルオーダモデルを )LJDに示す.記
号を以下のように定義する.
:吊り
[L :タワー各部の [ 方向絶対変位,y:ブームの角度,t
荷の起伏方向振り上がり角度,/:ブーム長,O:吊り荷ロープ
長,D:ブーム下端と原点との距離,/W:タワー部長,:E:ブー
ム質量,:R :吊り荷質量,0E :タワー部1次モードに対する
等価的質量,NW:タワー部1次モードに対する等価的ばね定数,
FW:タワー部1次モードに対する等価的減衰係数,X:ブーム起
伏方向入力トルク,5E:ブーム支持ロープ巻き上げモータ巻胴
半径,tE:ブーム支持ロープとブームとの角度,J:重力加速度
\L :タワー各部の \ 方向絶対変位,r:旋回角度,‚:吊り荷の
旋回方向振り上がり角度,-U:タワー最上部の慣性モーメント,
OP[:タワー最上部の原点から重心までの [ 方向の距離,OP\:タ
ワー最上部の原点から重心までの \ 方向の距離,OPU:タワー最
上部の原点から重心までの [ 方向の距離(低次元化モデル用),
[U :タワー最上部の起伏方向の変位,\U :タワー最上部の起伏
方向と直角方向の変位,XV :旋回方向入力トルク,
[\] 座標の原点はタワー最上部にとる.フルオーダモデルに関
しては以下のように仮定をする.
>1R@ '\QDPLFV DQG 'HVLJQ &RQIHUHQFH z
y1
ζ
Lt
モデリング
123456789012345678901234567890121234
123456789012345678901234567890121234
123456789012345678901234567890121234
123456789012345678901234567890121234
12345678901234
123456789012345678901234567890121234
12345678901234
123456789012345678901234567890121234
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x
&RPSHQVDWRU
ロープ質量は考慮しない.
タワー部のねじり振動は微少なものと考え無視する.
タワー部を [\ 面内並進方向のみの 質点系のモデルとする.
ブームは剛体とする.
講演論文集 9RO$
>
千葉@
入力トルクがブーム支持ロープを介さず,直接ブーム先端
に掛かるとする.
また,旋回方向の吊り荷振れによりタワー部に加わる等価的な
[ \ 方向の力 4O[ 4O\ は,
と仮定して運動方程式の導出を以下に示す.
ブーム下端よりzなる位置でのブームの変位 [E \E ]E は
E
\E
]E
[
>
>
[ zVLQ y
D FRV r
\ zVLQ y
D VLQ r
zFRV y
EW
\EW
]EW
>
>
D FRV r
\ / VLQ y
D VLQ r
/ FRV y
9
=/
E
E
:
E
: J
[
B
/
E
E \B E
=/
E
]
B Gz
R
\R
]R
G
GW
EW J]EW
R
>
>
\ / VLQ y
D O VLQ t
VLQ r
>
>
R [B \B ]B R
R
R
> P[
> P[
[
\
W
O
O
E EG
0 [
B
9
R
R R
: J]
W[
/
W
E[
>
P\ VLQ r
VLQ r OP\ FRV r
FRV r
\
B
EG
X FRV r
/
> P[
O
4E\
|
O
4
W\
/
W
E
|
J E
: /
:E J /
>
0E J
:E /
}
4O[ 4E[ 4W\ 4O\ 4E\ }
y
ƒ
.F T
VLQ tE / XV 4
>
R
: J/ VLQ y
O
>
0E J
/W
:R J / VLQ y
VLQ r [
B WG
7
@
t
FRVt
VLQ‚
FRV‚
‚
y
c
y
v v y
FRVy
FRVy
y
c
y
GHJ
OP\ 0E J
/W
D VLQ r
>
B r r
B ‚ ‚
B O O
B ƒ
$WG y
y
B t t
O[WG
B r r
B ‚ ‚
B O O
B ƒ
%WG y y
B t t
O >X
[WG
XV @
7
>[ \ y t r ‚ [ [ [ \ \ \ 7
B r
B ‚
B [
[
B \B y
B t
B [B [
B \B \B \B @
となる.観測量\ WG は以下の出力方程式で表される.
\ WG
> P\
D
と変形し,状態方程式を求めると,
X VLQ r
FRV r
.W Z
VLQy
D
y
ƒ
VLQ y
/W
>P
O
E
VLQy
U
0
9R
>[ [ [ [ \ \ \ \
VLQt
B
- r
: J/ VLQ y
W
9E
とし,また
となる.ブームおよび吊り荷による起伏方向のモーメントによ
りタワー部に加わる等価的な [ \ 方向の力 4E[ 4E\ は
4
4W[
Z
となる.しかし,)LJDの 次元モデルは,タワー部の曲げが
考慮されていない.そのため,クレーン部の起伏面内での回転
運動によりタワー部に曲げが起こり,タワー最上部がその曲げ
により変位するという現象が全く現れない.そこで,タワー部
曲げに関する等価力の導入を行う.タワー部に加わる入力トル
ク X による等価的な [ \ 方向の力 4W[ 4W\ は,
4
[ \ y
t
r ‚
4L
となり,式 と共通の変数 [ \ で結合し,吊り荷ロープ振
れ角を微少と考えて
で,タワー最上部の持つ運動エネルギ 7W は,
7
TL
0W Z
ƒ &W Z
B
となる.タワー最上部の重心の座標 [EG \EG は
EG
\EG
7
#7
#7
#9
# TBL
# TBL # TBL
7E 7R 7W 9
0F T
ƒ &F TB
O VLQ ‚ FRV r
O FRV ‚ FRV t
[
b c>
つぎに,タワー部を等価な 質点バネマスダンパ系とす
ると
D O VLQ t
FRV r O VLQ ‚ VLQ r :
X
4E
で,吊り荷の持つ運動エネルギ,位置エネルギ 7R 9R は
7
5E
4L
EW [B \B ]B EW
EW
EW
[ / VLQ y
/ FRV y
となる.吊り荷の位置 [R \R ]R は
[
VLQ ‚ FRV r
より求めると,以下の非線形微分方程式が得られる.
E
] Gz P
/
P
:R J O
となる.そして,運動方程式をラグランジュの方程式
/W
VLQ ‚ VLQ r
となる.
仮定 よりブームに加わる外力 4E は
で,ブームの持つ運動エネルギ,位置エネルギ 7E 9E は,
7
>
4E
[ / VLQ y
:R J O
/W
4O\
ブーム先端の変位 [EW \EW ]EW は
[
4O[
>[ \ y t r ‚@
7
\ WG
&WG [WG
次に,本研究では起伏方向と旋回方向の分散制御としてい
るため,起伏・旋回各方向に対する制御器設計用の低次元化モ
デルを導出する必要がある.起伏方向低次元化モデルの導出は
すでに文献 >@ で行われているので省略する.)LJEの旋回方
向用低次元化モデルは,さらに次の仮定
タワー部を等価的な 質点系とし,起伏方向の直角方向に
のみの変位を考慮する. 吊り荷の振れは旋回方向のみを考慮する.
D
FRV r
をして同様に運動方程式をラグランジュの方程式 より求め,
式 式 より同様に変形すると,状態方程式,観測量およ
び出力方程式は,
W1 (s)
w2
w1
W2 (s)
+
+
+
Bs
+
Cs
I/s
+
40
z2
20
y
0
+
Gain (dB)
u
Dw
60
z1
As
W
s1
W
s21
Ws23
−20
∆ sp
Ws22
−40
−60
−80
)LJ *HQHUDOL]HG SODQW
−100
[
BV
B ‚ ‚
B O O
B ƒ
B ‚ ‚
B O O
B ƒ
$V \U r r
O[V %V \U r r
O XV [I
B ‚
B @7
>\U r ‚ \B U r
7
\V
&V [V
[
\U
|
b b FDO \FDO FRVr
[
FDO \FDO VLQr
\
WDQ
[
>
|
|
N
O [U %U O XV o
u /y
s r
us/ζ
u /ψ
10
−1
0
1
0
1
10
10
Frequency (Hz)
2
10
10
3
10
−1
10
10
Frequency (Hz)
2
10
10
3
)LJ %RGH GLDJUDP RI FRQWUROOHU
とする.また,ブーム起伏角度はy GHJ としている.一
般化プラントは,)LJのように構成し,
*]Z
3
0
−500 −2
10
N
10
500
本研究では制御系は,起伏方向と旋回方向の同時制御を行
う際に,旋回方向と起伏方向に別々の制御器を用いる分散制御
系とする.本研究で分散制御系を採用しているのは, タワー
クレーンは吊り荷振れ角を微少と考えると,起伏方向の運動と
旋回方向の運動に連成が少ない, 先行研究として行われた起
伏方向の低次元化モデルおよび制御器の設計の手法をそのまま
用いることが出来る,などの理由からである.制御系設計に用
いる低次元化モデルは, 次元モデルに対して無視したタワー部
の高次モードが入っていない.また,実験装置は吊り荷の回転
運動による振動や吊り荷ロープとブーム支持ロープの横振動や
装置のがた,旋回モータ支持部のモードなど 次元モデルにも
モデリングされていない振動モードを持っている.そこで,制
御系設計においてロバスト制御理論の適用が必要になる.その
ため本章では,吊り荷ロープ長を一定とし線形ロバスト制御理
論である + 制御理論をもとに制御器を設計する.
起伏方向の制御器については,文献 >@ で述べているので,以
下に旋回方向の制御器の導出を示す.式 の旋回方向低次元化
B ‚ ‚
B O O
B ƒ
モデルのマトリックス $V %V は,\U r r
O の関数となる
B ‚ ‚
B O
B ƒ
が,吊り荷ロープ長 Oは O P に固定し,\U r r
O
は,それぞれ とおき
$V 2
10
s
制御器の設計
[
BV
1
0
−40 −2
10
に変換して与える.
0
10
10
Frequency (Hz)
−20
Phase (deg)
[U
−1
20
となる.また,分散制御器にはタワー部最上の変位を旋回角度
に関する相対座標
S
S
b
10
)LJ *DLQ RI ZHLJKWLQJ IXQFWLRQ
Gain (dB)
>\U r ‚@
\
−120 −2
10
となるような制御器を求める.)LJに乗法的誤差c V3 と各重み
関数の周波数応答を示す.乗法的誤差c V3 は式 の 次元モ
デルの入力 XV から出力 \U r ‚までの伝達関数と式 の旋回
方向低次元化モデルとの誤差である.:V :V :V は,そ
れぞれタワー部,旋回角度,吊り荷に対する重み関数とする.
旋回角度に関しては,実験装置に旋回用モータ接続部の摩擦力
と配線によるばね力が働くために,サーボ系による位置決め制
御を行うこととし,:V には積分特性を含ませる.また,:V
は乗法的誤差c V S を十分におおっていないが,+] と +] は
それぞれ吊り荷とタワー部 次モードの固有振動数であるため,
制御性能を重視し,タワー部 次モードよりも低い周波数域で
は誤差はないものとして設計している.)LJに求められた +
制御器のボード線図を示す.制御器の次数は 次である.
シミュレーション
次元モデルに対して,ブーム起伏角度および旋回角度に目
標値を与えた場合の応答を示す.ただし目標値は,制御入力の飽
和を防ぐためと急激な旋回による吊り荷振れを防ぐために,ス
テップ状ではなくランプ状の目標値とする.)LJに 7DEOHに
示すような目標値を与え,ブーム起伏および旋回の同時運動を
行ったときの応答を示す.ただし,ブーム角度に関しては,モ
デリング時に定義した ] 軸からの角度とせず,[ 軸から反時計方
向を正とする角度yQ y GHJ とする.
{
実際のタワークレーンでは,操縦者が速度制御されたモータ
に適当な目標速度を与えることにより,クレーンの操作を行っ
ている.そこで,本研究で提案する制御法との比較として,ブー
ム起伏角度と旋回角度のみのPI角速度制御器による制御結果
を示す.前節で求めた制御器での応答が実線で,破線は比較の
ための起伏角度および旋回角度だけのPI角速度制御器での応
答である.また,旋回角度に与える目標値を一点鎖線で示す.本
制御法では起伏角度および旋回角度は目標値に追従し,タワー
部の振動,吊り荷振れ共に収束できているのがわかる.PI角
速度制御はブーム起伏角度,旋回角度に対する追従性能は優れ
ているが,タワー部および吊り荷の振動は制振できない.
b c
実験
実験装置のタワークレーンの概略図を )LJに示す.制御器
は 節で求めた制御器をサンプリング時間 PV で離散化して用
7DEOH 5HIHUHQFHV RI VLPXODWLRQ
,QLWLDO YDOXH
O3
H
%RRP DQOJH
5RWDWH DQJOH
GHJ
GHJ
9DULQJ VSHHG
2E MHFWLYH YDOXH
GHJV
GHJV
GHJ
GHJ
4
0
−3
8
−4
−4
−8
0
2
4
6
8
10
Time (s)
12
14
16
x 10
−3
4
4
1
0
1
1
4
x 10
Displacement of y1 (m)
−3
Displacement of x (m)
x 10
Displacement of y (m)
Displacement of x (m)
8
0
2
4
6
8
10
Time (s)
12
14
16
60
−8
0
2
4
6
8
10
Time (s)
12
14
4
6
8
10
Time (s)
12
14
16
2
4
6
8
10
Time (s)
12
14
16
2
4
6
8
10
Time (s)
12
14
16
12
14
16
60
55
10
4
6
8
10
Time (s)
12
14
16
20
10
40
0
Reference
2
30
45
20
35
0
40
50
30
40
Rotate angle of ζ (deg)
n
40
45
50
Boom angle of νn (deg)
Rotate angle of ζ (deg)
Boom angle of ν (deg)
50
50
Reference
0
2
4
6
8
10
Time (s)
12
14
16
0
Reference
35
0
2
4
6
8
10
Time (s)
12
14
16
3
0
−2
2
1
0
1
0
−1
−1
−3
Swing angle of ψ (deg)
4
2
Swing angle of θ (deg)
3
3
Swing angle of ψ (deg)
4
2
1
−2
−2
−3
−4
−5
0
−4
0
−5
0
6
8
10
Time (s)
12
14
16
0.2
2
4
6
8
10
Time (s)
12
14
16
0.2
1
0
−2
−3
4
2
−1
−4
2
−3
2
4
6
8
10
Time (s)
12
14
−4
0
16
0.2
0.2
0.05
0
−0.05
0.05
(N ⋅ m)
0.1
2
4
6
8
10
Time (s)
12
14
――― 3URSRVHG WRUTXH FRQWURO
)LJ 6LPXODWLRQ UHVXOWV
16
0
0.05
0
−0.05
0.05
−0.1
0
0
0.1
s
0.15
0.1
Control input u
0.1
0.15
Control input u (N ⋅ m)
Control input us (N ⋅ m)
0.15
0.15
Reference
0
3
−1
Control input u (N ⋅ m)
2
60
55
Swing angle of θ (deg)
0
−8
0
16
60
−0.1
2
4
6
8
10
Time (s)
12
14
16
&RQYHQWLRQDO VSHHG FRQWURO
O GHJ H GHJ
0
0
2
まとめ
タワークレーンについて起伏・旋回方向を考慮した 次元
モデリングの導出を行った.また,起伏・旋回方向の分散制御
系設計のための制御器設計用低次元化モデルを作成した.そし
て,起伏・旋回方向についてそれぞれ分散制御系を設計しシミュ
レーションおよび実験を行った.その結果,クレーンの本来有
する操作力のみにより,ブーム自体の位置決め制御,旋回角度
の位置決め,タワー部の振動制御,吊り荷振れ制御の 自由度
の同時制御が行えることを示した.
4
6
8
10
Time (s)
12
14
16
)LJ ([SHULPHQWDO UHVXOWV
0
2
4
6
8
10
Time (s)
O GHJH GHJ
θ
ψ
Servo Motor
いている.
前節のシミュレーションと同様の目標値を与えた応答を )LJ
に示す.本制御法での応答を実線で,ブーム起伏角度および旋
回角度に与える目標値を一点鎖線で示す.応答より,本制御法
ではブーム起伏角度および旋回角度は目標値に追従し,タワー
部の振動,吊り荷振れ共に収束できているのがわかる.また,
実験の本制御法での応答が前節のシミュレ−ション結果とほぼ
一致している.実験装置は旋回角度をロータリーエンコーダに
より検出しているため,旋回角速度が精度良く検出されず,シ
ミュレーションに用いたPI角速度制御器を使うことができな
い.そのため,比較のためのPI角速度制御は行っていない.
−3
−4
−4
−8
0
x 10
ν
ζ
Servo Motor
Potentiometers
x
Motor
Drivers
D/A
Strain Gauge
y Strain Gauge
Computer
Counter
Board
AMPs
A/D
)LJ 6FKHPDWLF GLDJUDP RI H[SHULPHQWDO VHWXS
参考文献
>@ 日野順市,藤田邦彦,芳村敏夫,旋回および起伏操作時のトラッククレーンの吊
り荷ファジイ制御,日本機械学会論文集,C編, 巻 号, >@ 種村英朗,西村秀和,高木清志,タワークレーンの制御 ブーム起伏方向に
関する制御),日本機会学会論文集,C編, 巻 号,,
>@ 高木清志,西村秀和,タワークレーンの吊り荷ロープ長変動を考慮したゲイ
ンスケジュールド制御,日本機械学会論文集,C編, 巻 号,,
>@ 高木清志,西村秀和,タワークレーンの起伏・旋回方向の制御,日本機械
学会講演論文集,9RO%,,