米軍再編の意義と課題 早稲田大学日米研究機構・安全保障研究会 09年7月17日 毎日新聞 古本陽荘 1 米軍再編・米国の視点 RMA(Revolution in Military Affarirs) ↓ トランスフォーメーション ↓ GPR(Global Posture Review)、世界規模 での兵力構成の見直し ↓ 在日米軍再編 2 RMA、Revolution in Military Affairs 「新技術の軍事システムへの大規模な利用が、革新的な運 用コンセプトと組織への運用と結びつき、戦争の性質とあり 方を根本的に変える」 Andrew .Krepinevich, ”Cavalry to Computer: The Pattern of Military Revolution,”The National Interest, N0.37(Fall 1994) 「革命は民間の情報技術の発展による」 Eliot A. Cohen,”A Revolution in Warfare,”Foreign Affarirs” Vol.75, No2,(March/April 1996) 3 トランスフォーメーション 「新たな技術、兵器システム、作戦のコンセプト、部 隊の編成全般を速やかに開発し、これらを総合 化する戦略が必要」(97年12月)『国防を変革す る:21世紀の国家安全保障』 Transforming Defense, National Security in the 21st Century, Report of the National Defense Panel(国防協議委員会) December 1997 4 Governor George W. Bush “A Period of Consequences” The Citadel September 23, 1999 ∼ブッシュ知事の公約 陸:重い兵力は軽くならなければならない。軽い兵力 はより殺傷能力を高めなければならない。すべての 兵力の輸送を容易にしなければならない。そして、兵 力はより小さく、柔軟に動ける体制に変えなければな らない。 海:はるか彼方から標的を攻撃する長距離ミサイルを 搭載したステルス艦船のような戦艦のアイデアを推 進する必要がある。 空:我々は、世界中でピンポイントの正確さで攻撃す る能力を持たなければならない。飛行距離の長い航 空機によって、あるいは無人機のシステムによってだ。 5 ブッシュ政権下でのトランスフォーメーション 2001年11月、国防省トランスフォーメーション局設 置=各軍のトランスフォーメーションを統括する部署。 2003年3月 トランスフォーメーション計画指針 ①戦力の強化(情報化、ハイテク化、ステルス化。戦 闘能力の強化) ②国防省内の業務改革(官僚業務を簡素化。意思決 定の迅速化) ③他省庁との協力=テロ対策 6 トランスフォーメーショナルな装備 7 GPR、Global Posture Review 世界規模での兵力構成の見直し 2001年9月30日 QDR 「脅威ベース」から「能力ベース」へ GPR基本方針(04年8月大統領声明) 「今後10年間で、米国は より機敏でかつ柔軟な軍を展開する」 ○ 冷戦型の兵力を本土に帰還させる一方、柔軟かつ迅速展開 可能な能力を世界中の戦略的地点に配置 ○ 同盟国との協力を強化するとともに米国の同盟国防衛能力を 強化;侵略を抑止する能力を強化 ○ 今後10年間に数百箇所の在外米軍施設を閉鎖、6∼7万人 の米軍人及び約10万人の米軍家族を本土に帰還。米軍人が本 土に滞在する期間を増し、異動の回数を減少することによって、家 庭の安定を図る。施設閉鎖により納税者の負担を軽減 8 在外米軍の位置づけ 主要作戦基地(MOB) 同盟国内、友好国内で家族も含め米軍が恒常的に住む。 指揮系統のインフラもあり、ある程度の訓練が可能。 前方作戦拠点(FOS) 平時には最小限の部隊と事前集積。 有事には展開拠点 となる。 協力安全保障地点(CSL) 普段は米軍は配備されていないが、協力が得られる。 9 「不安定の弧」と在日米軍の位置づけ 10 米軍再編、日本の視点 日米同盟強化: 日米安全保障関係を中核とする日 米同盟は、日本の安全及びアジア太平洋地域の平和と安 定にとって不可欠の基礎であり、地域における米国の安 全保障政策の要 ※2004年防衛大綱 多機能で弾力的な実効性のある 防衛力=能力ベース・アプローチ採用 「抑止力の維持」「負担の軽減」 在日米軍の抑止 力を維持しつつも、沖縄の初めとする基地負担を軽減す る。 11 「負担の軽減」を優先した日本 「沖縄の基地負担を軽減するなら本土のどこ に持っていくかを考え、その自治体に事前に 相談しなければならないことがあるかもしれな い」 「自治体がOKした場合には米国と交渉 する」 小泉純一郎首相 2004年10月、東 京都内の講演で 12 日米の意識のズレ 2003年11月、ラムズフェルド国防長官が普 天間飛行場を視察。「こんなところで事故が起 きない方が不思議だ 」 Forget the region. Deal with it worldwide ラムズフェルド国防長官。200 3年11月 グアムに向かう飛行機内で行われ た記者会見で 13 アーミテージ国務副長官による仕切り直し 「キャンプ座間とか言い始めたことは順番が間 違っていた。理念から始めた方が良かったか もしれない」 アーミテージ国務副長官、2004 年10月、来日時の記者会見で →個別の基地問題を後回しにし、日米同盟の戦 略的目標についてまず協議。 14 日米協議の三段階 15 共通戦略目標(第1段階) 2005年2月、抜粋 六者会合を通じた朝鮮半島の非核化の達成 中国の責任ある国際的なステークホルダーと しての行動、軍事分野における透明性向上、 表明した政策と行動との間の一貫性の維持 安全保障および防衛の分野を含め、地域およ び世界における日本、米国および豪州の三国 間協力のさらなる強化 インドとのパートナーシップ強化 より広範な日本とNATOとの協力の達成など 16 日米の役割・任務・能力(第2段階) 2005年10月 第1段階において特定された戦略目標を達成するため、 日米、特に自衛隊および米軍の役割・任務・能力につい て検討 。 15項目の協力分野 ●防空 ●弾道ミサイル防衛 ●拡散阻止活動 ●テロ対策 ● 海上交通安全維持 ●捜索・救難活動 ●無人機(UAV)や哨戒 機含めた、情報、監視、偵察(ISR)活動 ●人道救援活動 ●復 興支援活動 ●平和維持活動及び平和維持のための他国の取組 の能力構築 ●在日米軍施設・区域を含む重要インフラの警護 ●大量破壊兵器による攻撃への対応 ●補給、整備、輸送など相 互の後方支援活動。●非戦闘員退避活動(NEO)の輸送、施設 の使用、医療支援その他関連する活動 ●港湾・空港、道路、水 域・空域及び周波数帯の使用 17 在日米軍などの兵力態勢の再編 (第3段階)2006年5月 18 課題(1) 司令部統合 座間に配置されたのは、第一軍団司令部の 前方司令部 横田基地の「共同統合運用調整所」の意味 ※日米一体化の重点を変えるべき 「物理的な一体化」 → 「オペレーショナル な一体化」 19 課題(2)安全保障環境の変化: 中国をどう見るか 2004年当初の日米双方の脅威認識はどう変 わっているか。日米にズレの可能性 共通戦略目標(2005年2月) 台湾独立を封じ込めようとした反国家分裂法 の制定(2005年3月成立) 2009年中に策定される防衛大綱、QDRでの 調整が焦点 20 課題(3) 普天間移設 現状 キャンプ・シュワブ環境アセスは最終段階。来年、政府側 が工事のための埋め立て申請をして、知事が許可するか 防衛省が4月微修正案を提示、①東側100m移動②南側 50m移動③南側100m移動④西側100m移動⑤西側 200m移動⑥南西側移動(名護市試案) 21 課題(3) 普天間移設 民主党政権でも合意通り進む可能性 ・沖縄だけでなく、本土もパッケージ ・グアム移転経費すでに予算化 ・日米協定(条約)をすでに承認 ・着々と進むキャンプ・シュワブ内の工事 ・知事の前向き姿勢 ・民主党の姿勢の軟化 22
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