消化ガス有効利用に関する民間発案 審査講評 (pdf, 178.70KB) - 大阪市

消化ガス有効利用に関する民間発案
審査講評
平成 20 年 8 月
大阪市建設局 PFI 事業検討会
はじめに
本審査講評は、消化ガス有効利用に関する民間発案(以下、「本発案」という。)について、大阪
市建設局 PFI 事業検討会(以下、「本検討会」という。)におけるこれまでの検討の過程と、優秀提
案の選定結果について公表するものである。
本検討会は、大阪市建設局(以下、「本市」という。)の民間資金等の活用による公共施設等の
整備等に関する事業 (以下「PFI 事業」という。) の発案に係る募集、評価、公表等に関す
ることを行う委員により構成され、平成 20 年 1 月 23 日に開催された第 1 回検討会以降、
本発案に係る募集、評価を行った。
本発案の募集においては、民間の創意工夫や技術的能力が活用できるように、関心表明
者に対するヒアリングや関心表明者を対象とした現地調査の実施など、より質の高い事業
を提案頂けるよう工夫を行った。
また、優秀提案の選定にあたって、提案内容を吟味し、厳正かつ公平な評価を行った。
今回頂いた提案は、民間事業者ならではの創意工夫が随所に活かされたものであり、本
発案の目的を実現するものであった。
本発案は、大阪市初の取り組みであり、今後の民間発案に基づく PFI 事業の実施にあた
り、重要な意味を持つものと考えられる。
本発案の経験を活かし、今後の民間発案の募集においても、民間事業者より実現可能性
の高い提案を頂けるよう、一層の取り組みが求められる。
最後に、短い検討期間にも関わらず意欲的かつ高い水準の提案を頂いた4民間事業者の
方々に敬意を表する次第である。
平成 20 年 8 月
大阪市建設局 PFI 事業検討会
委員長
2
貫上佳則
1. 募集名
消化ガス有効利用に関する民間発案
2. 選定提案
本発案の優秀提案を次のとおり選定した。
優秀提案者
次点
グループ名
日本燃料電池
関西バイオリサーチ
代表企業
日本燃料電池株式会社
関西電力株式会社
構成企業
丸紅株式会社
日本上下水道設計株式会社
株式会社関電エネルギーソリューション
3. 検討会
本発案の検討会は、次の委員で構成した。
氏名
所属等
委 員 長
貫上 佳則
大阪市立大学大学院工学研究科
教授
副委員長
西村 伸也
大阪市立大学大学院工学研究科
教授
委
植田麻衣子
公認会計士
員
4. 検討経過及び評価方法
本発案の検討経過及び評価方法は、次のとおりである。
(1)検討会開催経過
開 催 日
議
題
第 1 回検討会
平成 20 年 1 月 23 日(水)
募集要項等について
第 2 回検討会
平成 20 年 3 月 26 日(水)
優秀提案の選定について
第 3 回検討会
平成 20 年 6 月 30 日(月)
優秀提案の確認、公表について
(2)提案概要
優秀提案の概要は次のとおりである。
日本燃料電池グループ
(大野下水処理場)
常用発電設備:溶融炭酸塩形燃料電池
システム
構
成
マイクロガスエンジン発電機
300kW×2台
25kW×20 台
(住之江下水処理場)
常用発電設備:溶融炭酸塩形燃料電池
マイクロガスエンジン発電機
300kW×2台
25kW×15 台
※上記、発電設備の規模は、定格出力での表記。
-1-
(3)評価結果
評価は、「消化ガス有効利用に関する審査基準」に基づき、実現性(検討の具体性・事業の安
定性・採算性)、環境性(温室効果ガスの削減量・消化ガスの有効利用量)
、経済性(市の財
政コストの削減額)、その他(有益な提案)の4項目について評価を行い、優秀提案を選
定した。
5. 審査講評
(1)審査の経緯
提案の募集に先立ち、募集要項および審査基準等について、平成 20 年 1 月 23 日の第 1 回
検討会において審査した。
平成 20 年 2 月 12 日に 6 社より関心表明書の提出を受け、関心表明者を対象として、平成 20
年 2 月 18 日に発案の対象となる下水処理場において現地説明会を開催した。また、提案に関
する質問・意見について、関心表明者を対象として平成 20 年 2 月 22 日~29 日の期間に市との
面談の機会を設けた。
平成 20 年 3 月 17 日に 4 社より提案書の提出を受け、提案書の内容確認のために、平成 20
年 3 月 18、19 日に各提案者に対してヒアリングを実施した。
平成 20 年 3 月 26 日に実施した第 2 回検討会において、各提案に対して、実現性・環境性・
経済性等の観点から総合評価により順位付けを行い、最も総合評価の高い提案を優秀提案とし
て選定し、事業化に向けて改善が必要とされる事項について、提案者に対して修正して提出
するように求めた。また、優秀提案に選定されなかった提案者に対しては、本検討会において評
価された点並びに事業化に向けて改善等が必要とされる点を記載した審査結果を交付し
た。
平成 20 年 6 月 30 日に実施した第 3 回検討会において、修正提案について実現性・環境性・
経済性等の観点より再度評価を行い、優秀提案として決定した。
(2)提案の評価
本発案においては、消化ガスを発電設備の燃料として活用する発電事業と、消化ガスを精製
し、外部に供給するガス供給事業についてそれぞれ2つずつ、計 4 つの提案がなされた。
本検討会として、提案の具体性・事業の安定性・採算性を考慮し、事業化が有望な提案につ
いて適切な評価となることを勘案し、実現性を重要な評価項目とした。
優秀提案は、大野・住之江の各下水処理場内に電力及び熱供給を行う事業である。電
力及び熱の供給先が本市下水処理場であり、需要変動の少ない事業スキームを提案して
おり、発電設備として溶融炭酸塩形燃料電池という新技術を積極的に採用するなど、民
間発案の趣旨に沿った優れた提案となっている点が評価された。
また、事業開始当初からグリーン電力証書による収入を官民で分配するといった官民
-2-
のパートナーシップの趣旨に則った優れた事業提案であり、他の提案と比較して、消化
ガスの有効利用量、温室効果ガスの削減量が大きいとともに、低廉な電力を本市に供給
することが可能なため、本市の財政支出の縮減の点においても優位性があった。
6. 所感
本発案は、大阪市初の取り組みであったが、提案者は事業を提案できる技術力を有し
ており、新技術や新しい事業スキームの提案など、創意工夫に富んだ事業の提案がなさ
れた。
本評価は、一定の仮定の下で行った現時点のものであり、現行制度の課題、社会情勢
の変化等による影響などを勘案の上で、事業として実施するかを判断する必要がある。
また、本検討会では、優秀提案として発電事業を選定したが、優秀提案に選定されな
かった発案についても事業化が不可能であるわけではなく、他の下水処理場などでは優
秀提案に選定される可能性がある。
今回の民間発案を出発点とし、消化ガスの有効利用がさらに進められることを望んで
いる。
以
-3-
上