58伊勢神宮と句碑めぐり 古くから日本人にとって憧憬の地でありつづけた伊勢には 文人墨客がしるした数多くの句碑が残る。 個人邸や餅屋の庭先に、寺社の境内の一角に ひっそりと残るいにしえの名句をたずねよう。 コース 旧豊宮崎文庫。春にはオヤネザクラが美しい。 ●全行程…約7. 6㎞ ●所要時間…約2時間15分 伊勢市駅 8分 500m 伊勢神宮(外宮) 2分 100m 5分 300m 旧豊宮崎文庫 1時間 4㎞ すがすがしい外宮参道。森林浴気分で歩こう。 赤福本店 3分 200m 茜社・豊川茜稲荷神社 15分 12分 寿厳院 900m 700m 15分 12分 如雪園(神宮会館) 700m 伊勢神宮(内宮) バス 祖霊社(霊祭講社) 外宮の神秘を詠んだ俳聖 伊勢市駅を起点に、まずは外宮へお参り 3分 200m 春秋園 伊勢市駅 ている。 バラの園に俳祖の句碑 しよう。いつ訪れても清々しい空気、天へ 祖霊社から三浦樗良の句碑がある寿厳院 そびえる神宮杉のすき間からこぼれる陽射 を経て、倭町にある山口誓子(1901∼1994) しがまぶしい。ぐるりと神域をめぐったら、 の句碑へ。かつては春秋園とよばれ、季節 茜社・豊川茜稲荷神社を経て、東隣にある の花が咲き誇る風流な個人邸の庭だったが、 旧豊宮崎文庫(国指定史跡)へ。 慶安元年 今はマンションに変わってしまった。入口 ごん ね (1648)、外宮の権 中庭に山口誓子の句碑がある赤 福本店。誓子は毎年初詣には伊 勢を訪れたという。 ぎ 宜で国文学者でもあっ に「日本がここに集る初詣」という有名な のぶよし (度会延佳) の主唱で創設された、 た出口延佳 いわば図書館兼学校のような存在で、今は 築地塀のみが残る。 句碑がひっそりと残されている。 御幸道路を通り、内宮方面へ。おはらい 町の赤福本店にも山口誓子の句碑がある。 文庫跡より東に旧道を進むと祖霊社(霊 五十鈴川に面した庭に、赤味をおびた自然 祭講社) がある。伊勢では土地がら死穢を忌 石があり、「巣燕も覚めゐて四時に竈焚く む風習があったため、明治時代、神職のた 誓子」とある。赤福に代々伝わるもてなし めの祖霊社祭舎が建てられた。ここに出口 心に心動かされて作った句と言われている。 かまど あ じろひろのり 延佳の碑や国学者・足代弘訓の碑、また俳 おかげ横丁の西に神宮会館がある。会館 聖・松尾芭蕉の句碑「何木塚」がある。 裏の高台にある如雪園には、昭和34年(1959) 「何の木の花とはしらずにほひかな」 に建立された俳祖・荒木田守武(1473∼1549) もりたけ 芭蕉45歳の作で、西行の「何事のおはし の「元日や神代のことも思はるる」の句碑 ますかは知らねども かたじけなさに涙こ がある。園内は春と秋、バラが咲き乱れる ぼるる」という歌をふまえて詠んだとされ、 名所でもあり、花のシーズンにはカメラを うっそうと茂る外宮の杜に漂う神秘的な雰 〝 〝 囲気を にほひ で象徴した句と伝えられ ぜひお忘れなく。 146 如雪園に建つ荒木田守武の句碑。 守武は約束ごとの多い連歌から庶 民の愉しみとなる俳諧を独立させ る機運をつくり、俳祖と仰がれる。 147
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