AM-FPD 09 に参加して

特集
学生の研究活動報告−国内学会大会・国際会議参加記 11
AM-FPD 09 に参加して
松 木 邦 晃
Kuniaki MATSUKI
電子情報学専攻修士課程
2009 年度修了
待されています.この様な ploy-Si を作る技術の一
1.はじめに
つがレーザー結晶化であり,多種多様な技術が日
奈良県のなら 100 年会館にて 2009 年 7 月 1 日∼3
夜,研究されています.実時間測定など,いくつか
日にかけて開催された国際会議 AM−FPD 09 に参加
の先進的な調査が報告されていますが,結晶化のメ
しました.私はこの学会で「Three-Dimensional Tran-
カニズムは詳細には分かっていません.これは,レ
sient Simulator of Laser Crystallization」というテー
ーザー結晶化が 1 μ s 以下の速いプロセスである事
マでポスター発表を行いました.
と極度の非熱平衡で行われることに起因します.こ
れまで,結晶化のプロセスを解析するために,レー
2.研究内容
ザー結晶化の 1 次元過渡シミュレーション,2 次元
現在,poly-Si は液晶ディスプレイや携帯電話な
過渡シミュレーションと行ってきました.
どの小型有機 EL ディスプレイなどに用いられ,今
そして今回,結晶化プロセスの更なる解析のため
後もシステムオンパネルなど,さまざまな応用が期
に,レーザー結晶化の 3 次元シミュレータを開発し
シミュレーションアルゴリズム
部分結晶化モデル
温度特性
核発生確率
結晶成長速度
図1
シミュレーション方法
― S-77 ―
図2
シミュレーション結果
図3
Poly-Si 膜断面
ました.このシミュレータでは核発生確率,熱平衡
の poly-Si 膜断面の一例を示す.これは膜に対して
状態の結晶成長速度,潜熱の吸収と放出,部分結晶
垂直に切った断面ですが,このシミュレータでは,
化モデルなどを考慮し,相転移と熱伝導を計算して
膜に対して任意の方向,任意の点で切る事が可能で
います.図 1 は,シミュレータに用いた核発生確
あり,膜内の結晶の観測が可能です.今後としまし
率,結晶成長速度などを示しています.
ては,3 次元の特性を活かした μ -CZ 法の解析を行
図 2 に 3 次元過渡シミュレーション結果の一例を
示します.ここでは,膜厚 50 nm・計算領域 50×50
×50 nm3 とし,下層は SiO2 としています.基板に
いたいと考えています.
3.終わりに
堆積させたアモルファス Si にレーザーを 1 回照射
本学会には 3 年連続の参加ということもあり,過
し,Si 膜を完全融解させた状態からシミュレーシ
去の経験を基に落ち着いて発表することができまし
ョンを行っています.レーザー照射から 6 ns 後に
た.しかし,質疑応答の中でまだまだ多くの課題と
最初の核が発生し,9 ns 後ではランダム核発生が起
未熟な点があると感じ,この日頂いた意見,または
こっています.15 ns 後に全ての結晶化が完了しま
発表の経験を今後の研究に役立てていきたいと思っ
した.この様に結晶化プロセスを観測することが可
ています.
能です.ここでは,タイムスケールは最適化がなさ
最後に,この様な貴重な経験を与えて頂いた木村
れていないため,実験データに比べ少し早くなって
睦先生に,深く感謝します.また,日頃より有益な
います.
御討論,御協力をいただいた木村睦研究室の皆様に
3
図 3 に膜厚 50 nm・計算領域 500×500×50 nm
深く感謝します.
― S-78 ―