木材の横圧縮時における細胞の変形挙動 B13-P-33 ~年輪内の細胞形状の違いに着目して~ (京府大生命環)○田井駿一,(京府大院生命環)宮内康平,井手友海,三好由華,古田裕三,大越 誠 【緒言】 背景 本研究では 詳細な変形挙動は明らかでない スギ、ヒノキなどの 比較的軟質な材の圧密加工に関して・・・ 圧 縮 圧 縮 スギ、ヒノキ材について・・・ 1年輪内の細胞形状を把握 工業的にも経験に基づいた加工法が用いられることが多い・・・ 詳細な圧縮変形挙動の解明 圧 縮 細胞の圧縮変形過程を段階的に観察 材全体の形状変化 既往の研究より 未圧縮のスギとヒノキで年輪内の細胞形状およびその分布が異なる 藤原 (1995) 細胞の形状が変化 →細胞の変形挙動との関係について検討 → 圧縮変形挙動に関係?? 【実験方法】 供試試料 段階的圧縮過程の観察 圧縮前の細胞形状の把握 気乾比重 0.38 のスギ (Cryptomeria japonica)および 未圧縮の試験片から無作為に5細胞列を選択 気乾比重 0.46 のヒノキ (Chamaecyparis obtusa) の辺材部 試験片木口面を電子顕微鏡で観察 2回目の観察以降 試験片作製 圧縮前後の年輪幅から 年輪の圧縮率 を測定 T方向 試験片の年輪幅 スギ 3.7 mm ヒノキ 2.6 mm 1年輪内のすべての細胞でT・R方向の寸法を測定 7 mm(T) 圧縮前後の 枠内の細胞を SEMで観察 5 mm(R) 早材側 (髄側) 油 圧 プ レ ス 10 mm(L) ミクロトームで木口面を整えた後 金を蒸着し実験に供試 年輪が1つ入るように切り出す R方向 R方向寸法 気乾状態の試験片を 200 ℃熱板中でR方向に約 50 μmずつ 圧縮 l0 :圧縮前の年輪幅 l0 ー lp 年輪の圧縮率(%) = × 100 lp :圧縮後の年輪幅 l0 晩材側 (樹皮側) T方向とR方向の寸法比(R/T)を計算 T 方 向 寸 法 R/T = R方向の寸法 T方向の寸法 細胞の形状の尺度として使用 10μm 【結果と考察】 未圧縮のスギの1年輪 段階的圧縮過程の観察結果 (写真の左上に年輪の圧縮率を示す) 圧縮方向 ※網掛け部分は新たに座屈した細胞 スギ スギ 0% (各色の矢印の範囲が下の写真と対応) スギ 55% スギ 50% スギ 34% スギ 18% スギ 3% 圧縮方向 晩材側 (樹皮側) 早材側 (髄側) 50μm ヒノキ ヒノキ 27% ヒノキ 16% ヒノキ 7% ヒノキ 0% ヒノキ 34% 晩材側 (樹皮側) 早材側 (髄側) 50μm 1年輪内において細胞の座屈変形が起こる順序 早材側の細胞 変形した細胞の周りの細胞 年輪内の各位置において 細胞の座屈が起こった時の年輪の圧縮率 難 上の写真の色に対応 早材側の 端の一細胞 形状 早材側の 端の一細胞 形状 1.6 0 スギ 0.8 0.6 100 0 0.4 1.6 ヒノキ 40 60 各プロットは 1年輪を20等分したそれぞれの区画を示す 100 早材側 (髄側) ヒノキ 1.4 R/T 20 ヒノキと比べて最大値がやや晩材側よりに 1.2 1 0.8 0.6 早材側の端の区画で 最大値をとる 各プロットは それぞれの区画内の細胞のR/Tの平均値を示す 0.4 圧縮方向 晩材側 (樹皮側) 早材側の最初期の区画 最初に座屈が起こる位置 スギ 初期早材部の2~3細胞が 座屈しにくい ヒノキよりもやや晩材側で 座屈が生じる ヒノキ 最初期の1細胞のみ潰れにくく スギより低圧縮率で座屈する 早材側の最初期の区画で 座屈が生じる 早材側 (髄側) 晩材側 (樹皮側) 20 40 1 60 0.8 0.6 80 0.4 1.6 100 0 ヒノキ 1.4 R/T R方向 スギ 1.2 1 80 0 1.4 R/T 60 スギ 1.2 R/T 40 潰れやすさ 1.6 1.4 T方向 20 80 左の2つのグラフを重ねると・・・ ×:R/T □:細胞の座屈が起こった 年輪の圧縮率 1.2 20 40 1 60 0.8 0.6 80 0.4 100 早材側 (髄側) 年輪内でR/Tの大きい部分の細胞ほど座屈しやすい傾向 圧縮方向 細胞の座屈が起こった時の 年輪の圧縮率(%) 易 細胞の座屈が起こった時の 年輪の圧縮率(%) 難 圧縮前の 年輪内における細胞形状(R/T)の分布 圧密部より晩材側の細胞 初期早材部の細胞 細胞の座屈が起こった時の 年輪の圧縮率(%) 易 細胞の座屈が起こった時の 年輪の圧縮率(%) 潰れやすさ 早材最初期の 一細胞 初期早材部の細胞を除く圧密部の周りの細胞 易 難 易 難 晩材側 (樹皮側) 今後は・・・ スギ、ヒノキに関して年輪内密度、壁厚など 形状以外の圧縮変形挙動に影響を与える 因子について検討を行っていきたい
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