1998年度 下水道新技術研究所年報〔1/2巻〕 マンホールポンプ運転監視システム に関する共同研究 1.1 マンホールホンフ施設の採用 下水の収強は自然流下方式を原則としているが, 複雑な地形や住膚が点在している胤吊魚柑都等で は,小規模な圧送施設が自然流下管路と併用して採 用される場合も多い。これらの施設の中で流入ゲー ト及び除じん(勝)設備がなく,組立式マンホ…ル の中に水中汚水ポンプを設置したマンホ…ルポンプ 施設が全国で普及しつつある。マンホールポンプ施 設の採用推移を図−1に示す、〕 7 ,0 0 0 − グ ム 6 、0 0 0 畢ー 21 5 , 000 芦 ト 4 . 0 0 () ′ \ 半 三 H ) () (1 黄 2 , 000 , \ 卜 刷 り0 0 9 2 9二 ∼ 9 4 9 5 年 9 6 9 7 98 度 図−1マンホールポンプ施設の採用推移 1.2 マンホールポンプ施設の運転管理 マンホールポンプ施設の設置当初は,制御盤にパ トライト等の表示灯を設け,パトロールにて故障対 応や管理を行っていた。その後,台数の増加に伴っ て,故障時に電話回線を使って音声通報する通報装 置が採用されてきた。通報装置は,ポンプの故障や 状態を伝送する装置で各マンホールポンプ施設の制 御盤に収納され.ている。現在では,通報装置はマン ホールポンプ施設の約60%に採用されている。 近年,さらにマンホールポンプ施設の設置台数が 増加しており,従来の音声のみの通報装置だけでは 保守・管理が錐しくなってきており,複数の通報装 置の惰部橘十十伍して管理する運転監視システムの導 入が進められている。 運転監視システムは,図−2に示すように各マン ホールポンプ施設の通報装置と,それを監視する中 央監視装置及びこれらを結ぶ通信回線網等により構 成されている。通信プロトコルは,通報装置から公 衆電話回線を通じて送信される情報を,中央監視装 置で適正に処理するための約束ごとをまとめたもの である。通報装置の情報は,公衆電話回線を通じて 中央監視装置,管理者宅の電話,FAX,ポケベルに 伝達される。それぞれのマンホールポンプ施設の情 報は,中央監視装置で確認できる。中央監視装置は, マンホールポンプ施設の異常監視を行うだけでな く,日常の運転記録の収集,運転状況のモニタリン グなどが可能なシステムであり,マンホールポンプ 施設の維持管理の効率化に寄与している。 69− 1998年度 下水道新技術研究所年報〔l/2巻 図一2 マンホールポンプ運転監視システムの構成図 1.3 現状の課題 マンホ…ルポンプ運転監視システムに関して,以 下の課題がある。 〔1)複数メ…カの運転監視システムが混在する管理 区域では,日常の運転記録などの監視項目がメ… カにより異なるため,デ}夕の比較が困難な状況 にあり,効率的に管理できない。 笠.)公衆電話回線による通報装置と中央監視装置で 正常に通信を行うための約束事(通信プロトコル) がメーカにより異なるため,中火監視装置で、㌦括 監視できないという場合も生じている。 (図−3参照) 今後は,マンホレ・ルポンプ施設の増加や,異なる メいカの機器の導入が見込まれることから,現状の 課題を解決するため,早期にマンホールポンプ施設 の監視項目や通信プロトコルなどの標準化を図る必 要があった。 管理事傍所など り監視装置 ̄(A社製) 2.1研究日的 本研究は言離酌相律中央監視装置の機能,監視 項目や通信プロトコルの標準タイプを提案し,これ らの内容を公開することによりメ世力闘の互換性の 向上を促し,より効率的な維持管理が図れることを 目的とした。 2.2 研究体制 本研究の体制は,本機構と下記のメーカとの共同 研究により実施した。 株式会社粟村製作所 株式会社荏原製作所 株式会社クボタ 新明和工業株式会社 太平洋機工株式会社 株式会社鶴見製作所 株式会社電業社機械製作所 株式会社酉島製作所 ユ 研究内容 本研究は図一4に示すフローで検討を行った。 通報装置 図−3 通信プロトコルに関する課題 ー701 1998年度 下水道新技術研究所年報〔1/2巻〕 管理形態−Ⅲ:中央監視装置を複数設ける場合や総 合管理を行う場合 最適な運転監視システムを検討するため,メーカ が管理者から得た情報や過去に本機構で実施した自 治体を対象としたアンケートをもとに問題点を抽出 した。(図−6参照)これらの問題点を整理し,ま とめると以下のように集約された。 ① 故障時の発見が遅れ,迅速な復旧対応ができ ない。 ② 人為ミスを含め通報ミス・機器故障がある。 ③ 導入コストがかかりすぎる。 ④ 保守コストがかかりすぎる。 l⑤ 高度な管理ができない。 図一4 研究のフロー ・通報嚢常が音声通報のみで電話通報の内容を聞 き逃した時,どこの機場で故障が磯生している のかわからなくなる。 3.1運転監視システムの現状 各社の運転監視システムは,ニーズの多様化と技 術開発の進歩により,マンホールポンプ施設を管理 する形態が変化し,通報装置,中央監視装置の機能 も変化してきている。通報装置は,メーカの監視項 目の考え方の違いにより,各社の通報装置の入力点 数 監視項軋 通報先などが異なっている。 管理形態は,中央監視装置で複数の通報装置の情 報を一括管理する傾向にある。システム構成は,機 場数,維持管理体制,地理的条件等により,一概に 決定できるものではないが,‘般的に下記のように ・携静電詣で管理していたが,間違って鳴瀬を儀 としてしまった。 ・通報装置の漉倍プロトコル及び監視牒目がメ… カごとに風なり互換性がないので,監視システ ムは別々のソフト射作る必腰があり.導入費が 商くなる。 ・通報装置が故障通報のみでポンプの運転時間、 運転頻度がわからずメンテナンス時期がはりき りしないためメンテナンス計画が立てられない ・不明水の管理がしたい。 ・通報装置の紋定を変更するのに機場に行かなけ ればならない 分けられる。,(図−5参照) 管理形態−…工:中央監視装置を設けない場合 管理形態−Ⅲ:中央監視装置を設ける場合 図−6 間溝点の抽出 醸す恩∴沙諷斎患構成例 −71− 1998年度 下水道新技術研究所年報白/2巻〕 表−1 最適な運転監視システムに必要な機能 標 準化の [ 」的 票 票 必要 な機能 胤霊 塑 復旧対応 を行 状態確認 う 忘 料 一 一 通報装置 と中央監視 装置の機 能 」 音声, ポケベ ル,FA X , 中央監視装置等への 長 通報種 類を多様化 し,多 くの箇所 に通報す る 南 前 効 果 面 一 一 ・ 一 一 故 障発生時 に通報装 置か ら現在 の状態 を確 認 敏速 な復 旧対応がで きる 一 する (テ レモニ タ機能 ) 復 旧時 間を短縮 で きる 運転 履歴,故 障履 歴等を保持す る ノ音声 ,ポケベル,F A X ,中央監視装置等へ の 信頼性が 向上す る 通報種類を多様 化 し,多 くの箇所に通報 する す 機器故障 ③ 導入 コス トを 監視項 目の標準 化 信 頼性 が向 L L ,保 守時間が短縮 で きる 一定時通報 用 報,月報な ど) を行 う 必要 な監視項 目の標準 タ イプ に対応す る 経済性 の向上 輔滅 する 通信プロトコルの標準化 通信 プロ トコルの標準 タイプ に対応す る l塞 保守 コス トを 最少 人員で的確 な保 廿雑, 月報 などの 自動帳票言運転履歴,故障 各棟デ∴ タの採取 による管理時間 を短縮 縞滅する 守 を行 う ②管理の高度化 流 入量の演算 に対応す る 広域サ …ビス綱 〔 オブシ三 両 紺 〕1 ・ 履歴の 各種のデ … 夕を送信 ・保守す る で きる 流量 の演算,保存 を行 う 不明水の管理がで きる テ㌦椒夕保存機能 , リモ… トメンテナ ンス機能 維持管理が向上す る げ レモニ タ機能 ,遠剛 射 乍 経 済性が 向 L. する 伝送するため,通信プロトコル(通信規約)を作成 した。通信プロトコルの作成にあっては下記の条件 3.2 最適な運転監視システムの検討 現状の課題から,使いやすさ,保守費の低減など 管理者の立場を前提として,標準化の目的を以下の を基本とした。その伝送例について図−7に示す。 (ま〕lからl:′ノ灘の項巨‖こ整理し,必要な機能射衆討した。, また,これ.らの・(鴬lからlC$接での項巨=こついて,その 載要度より標準的な機能とオプション的機能に分類 した。 表−2 必要な監視項目 柚目 した根拠 ここ′童:)故障時の早期発軋 迅速な復旧対応を行う。 l標準機能」 C窒)通信ミスをなくす㌦い際準機能】 l:識 導入コストを縮滅する。」標準機能1 (遠)保守コストを縮滅する。[標準機能1 (勤 管理の高度化に対応する。[オプション機能1 これらの項[封こ対して通報装置と中央監視装置に 必要な機能を検討した。また,これらの機能で得ら r 日 句 容 可 L′ J 名 称 巨 力・ り. 町 品の紬 11㌢= 五㍍軒机常時 に い事ンブ骨品臣ハ有無 ボン” フ他日l lJr J llr lニ . l . J 国の 判 トンゾij lt‘ 碇 ボンゾ 小 ンソ遡熱 通 知し陵樟履 =】 こ う多剃 i k 1塞帝 の似合 と . 娘心 !子 JVl l i 複 =川帖l ′ ノ の成定 Iか ホ ンゾk 水 1 l ド ニ : ミンナ吐出小冊廿、㍗間一 三 ・ LJ H (ホ ン ソ j l 川 一 倍 、 i ′ ニ ・ U ノ ク l 沈 1 村木 輿骨‘ 流人 4・ こ f 廿常高水位 l lLL l 勧甘毒源停電 l 通 裾出精 出射畑 l れる効果も検討した。(表−1参照) 通 侶裳やー : l 一 個・ ト ノ . , し池 lllノ バ l 1射榊 招描出い メモリ電池朝端 . その他 わ 日旧山裾故障 1 rR A S f雛 巨こ 4雄 3.3 マンホールポンプ施設の必要な監視項目 最適な運転監視システムで通報装置と中央監視装 置の機能を満たすため,マンホールポンプ施設に必 要な監視項目を抽出した。つ これらの監視に必要な項 目について,故障,運転状況,制御の区分に分け整 l 故障H H ㍊′ ムー い ’ 】 線 梱1 ニ 」 1 機爪 の運転状態 をl こ 一 こ ∴視する りlデータの保高㌧ 苫持す完 達 1 異常のル 校外射 Il ・ ∴メンテナンスの計画 漣 水 }不明木骨 理 !緊急 時の対応の柚助 I二 ホンプ運転 1 =1 日運転ノ Iくく 1 l l ノ、ツクア ノブ水位二 t 】 ホ ンゾ運か・ 購 女 水 位_ 4 ・ J Jr ̄ 態 その他 岨i正 H 水沈 人品 欄 鼎 1二 、 軸 心を行 う ・ ノ ニ 日常点検 対応 l J f r U 廿lヨ ノ 三 水f、 . ・ 待 て ) :ニ ナ てン7 運転時間 再射早発J主時の緊 斗蓄櫨 可能 llト の把握 ポンプ遠隔綱倒 刷 ホン ̄ ノインター1「ノク 榔 警報回抑 制祝日 リセ ッ ナノクl 標準コ  ̄ ̄ノンヨン Ⅷi奥 は佃lする機音詩・仕様∴よる −72− 1 什ニl上水位 JU 理した。(表−2参照) また,各項目は重要度に より標準とオプションにランク分けを行った。 3.4 通信プロトコルの検討 マンホールポンプ施設に必要な監視項目を正常に 1 1 [ 】 l 1998年度 「水道新技術研究所年報〔1/2巻〕 どの通報ミスがなくなり,確実な故障通報が ① 中央監視装置のハード(コンピュータ)は, 汎用品で対応可能であること。 ② 公衆電話回線との接続モデムは汎用品で対応 できること。 ③ ソフトウェアに関しては一般的な言語および OSで対応可能であること。 できる。 3)通信プロトコルの標準タイプを採用すること で,各メーカの通報装置が1台の中央監視装 置に接続できるため,導入コストの低減がは かれる。 4)マンホールポンプ機場に出向くことなく各種 ④ 通報装置は,本研究で検討した通報装置の機 能や必要な監視項目に対応する機能を有するこ データの採取が可能となり,定期巡視などの 維持管理費が縮減できる。 と。 5)不明水管理のためのデータをモニタリングで ⑤ オプション機能等使用しない項目については データを入力しないことで支障なく機能するこ き,高度な管理システムの構築が可能となる。 と。 ⑥ 秘密保持および安全のためID番号を使用す ること。 今後はこれらの内容をパンフレットなどで各自治 ② 通報装置の設定に関してはメーカ独白とし, 中央監視装置から設定可能とすること。 体,メーカなどにPRして,経済性に優れ,かつ効 率的なマンホールポンプ運転監視システムの導入が できるように推進していきたい。また,標準化した 通信プロトコルは,要求があれば全てのメーカに公 本研究により,監視項目の標準化及び標準プロト コルがまとめられた。このことにより,以トのよう な効果が見込まれる。 1)桟敷メ…カの運転監視システムが混在する管 理区域でも異常や故障など横並びで管理で き言迅速な復旧対応が可能となる。 2)緊急時には,電話,FAX,ポケベル,中央監 視装置へ一斉に送信することで,聞落としな 0 1 り 3 4 5 6 7 8 9 開していく予定である。 =「∼ 1 , 0 23 10 [ S T X ( バ イ ト) テ㌦一夕部 I. D 番 号 送 信 バ イ ト数 制 御 コト… ドl 表 2 の 監 視 項 目 に対 す る デ ー タ E T X BCC (芸芸篭露詰コニ 慧鵠詣呈テ霊議の豊‡ニーこ:データの形式を摘しているコ中) 図一7伝送例 研究第二部研究員 小林 研究第二部研究員 久保 73− 弘聡矢央 康 卓善 ●この研究に関する問い合わせは 研究第二部長 篠田 研究第二部総括主任研究員 渡遵 C R
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