平成21年度課題研究セミナー 夏季プログラム - (大学院GP)-医療系

平成21年度課題研究セミナー
夏季プログラム
専攻
開催日
夏季
大講座
世話教授
機能制御学
7月27日
月 16時~
臨床第二講義室 筒井(研)教授
脳神経制御学
生体薬物制御学
7月16日
木 16時~
臨床第二講義室
千堂教授
病態機構学
7月17日
金
16時20分
臨床第二講義室
~
平松教授
生体制御科学
開始時間変更しました
病態制御科学
腫瘍制御学
7月29日
水 16時~
臨床第二講義室
佐々木教授
生体機能再生・再建学
7月23日
木 16時~
臨床第二講義室
大月教授
口腔・顎・顔面機能再生制御学
歯学部第一講義室
発表者不在のため中止となりました
7月28日
火 16時~
山城教授
国際環境科学
長寿・社会医学
7月22日
森田教授
機能再生・再建科学
社会環境生命科学
水 16時~
歯学部第一講義室
大学院医歯薬学総合研究科博士課程
発表日
発表順
発表開始予定時間
学生番号
7月16日
1
16:00
71418201
氏名
Sherin Elsayed
Mahmoud Shaaban
専攻分野
タイトル
コメンテーター
職名
コメンテーター
専攻分野
ページ
眼科学
Title: Chromosomes 4q28.3 and 7q31.2 as new susceptibility
Kenji Shimizu
loci for comitant strabismus.
Professor
Molecular Genetics
Department
1
助教
心臓血管外科
1
講師
放射線部
2
7月16日
2
16:20
71420007
柚木 佳
循環器内科学
2009/07/16急性冠症候群の責任病変におけるプラーク内出血
と酸化ストレス、ヘモグロビンスカベンジャーレセプターの 高垣 昌己
発現について
7月16日
3
16:40
39416034
吉田英統
精神神経病態学
早期認知症におけるFrontal Assessment Batteryの成績と脳血
流との関連
7月16日
4
17:00
71419010
石崎 裕美子
発達神経病態学
2009/07/16West症候群におけるACTH療法後の再発リスク因子
大守 伊織
としての脳波所見
准教授 細胞生理学
2
7月16日
5
17:20
71418023
松下博昭
細胞生理学
雄マウスの交尾行動ならびにシルデナフィルによる抗うつ効果は
西堀 正洋
オキシトシンがターゲットである
教授
薬理学
3
7月17日
1
16:20
71419029
山本 澄治
腫瘍・胸部外科学
ラット心停止後肺移植ドナーモデルを用いた分子レベルでの虚血
松川 昭博
再還流障害の検討
教授
病理学(免疫病理)
4
7月17日
2
16:40
小児医科学
乳児栄養とビタミンD
遠藤 文香
助教
小児神経科
4
7月17日
3
17:00
71418702
鈴木 英之
消化器・肝臓・感染
症内科学
潰瘍性大腸炎に合併したサイトメガロウイルス感染症の内視鏡的
特徴
小林 直哉
講師
消化器・腫瘍外科学
5
7月17日
4
17:20
71417707
東 玲治
消化器・肝臓・感染
症内科学
大腸腫瘍・非腫瘍性病変のNBI診断能およびその習得性
小林 直哉
講師
消化器・腫瘍外科学
5
7月17日
5
17:40
39413601
園山 隆之
消化器・肝臓・感染
症内科学
膵癌発症リスクに関する遺伝子多型の検討
小林 直哉
講師
消化器・腫瘍外科学
6
7月17日
6
18:00
71418040
宮本 聡
腎・免疫・内分泌代
謝内科学
糖尿病性腎症の成因におけるcholecystokininの役割の検討
那須 保友
准教授 泌尿器病態学
7月17日
7
18:20
71418053
荒木 大司
泌尿器病態学
膀胱癌に対する細胞膜透過性ペプチドを用いたD-isomer型p53
ペプチド導入治療法の試み
富澤 一仁
客員教授
細胞生理学
7
7月17日
8
18:40
39416072
高田 尚良
病理・病態学
十二指腸濾胞性リンパ腫の臨床病理学的、分子生物学的解析
岡田 裕之
准教授 消化器・肝臓内科学
7
7月22日
1
16:00
71417094
辻下守弘
衛生学・予防医学
座位作業を主体とする女性従事員の腰痛とその発生要因に関
汪 達紘
する疫学的研究
助教
公衆衛生学
9
7月22日
2
16:20
39416115
三橋 利晴
衛生学・予防医学
企業における健康管理の実施が従業員の健康状態に及ぼす影
汪 達紘
響
助教
公衆衛生学
9
7月22日
3
16:40
71418095
平井一行
平井
行
病原細菌学
コレラ菌およびコレラ毒素Bサブユニットに対するニワトリ抗体
(IgY)の有用性
有用性
苔口 進
苔口 進
准教授 口腔微生物学
10
7月23日
1
16:00
39416011
折田 左枝子
耳鼻咽喉・頭頸部外
科学
プロラクチンの雌性マウス嗅上皮に及ぼす影響
増山 寿
講師
産科・婦人科学
11
7月23日
2
16:20
71418088
鉄永 智紀
整形外科学
Mechanical Stretch Stimulate Integrin alphaVbeta3-mediated
Collagen Expression in Human Anterior Cruciate Ligament
廣畑聡
Cells
助教
分子医化学
11
7月23日
3
16:40
71417073
大橋 勝久
消化器・腫瘍外科学
最終糖化産物(AGE)はリンパ球混合培養下でAGE受容体発
現とサイトカイン産生を増強する。
吉野 正
教授
病理学(腫瘍病理)
12
7月23日
4
17:00
71418019
江木 盛時
麻酔・蘇生学
腹膜透析を要する小児心臓術後患者の術後血糖と患者予後と
和田 淳
の関係
講師
腎・免疫・内分泌代
謝内科学
12
7月27日
1
16:00
71418011
村上正人
循環器内科学
症候性Brugada症候群に対するBepridilの心室細動抑制効果に
高垣 昌己
ついての検討
助教
心臓血管外科
14
7月27日
2
16:20
71418006
木島 康文
循環器内科学
赤血球容積分布幅(RDW)の非虚血性心疾患患者における予後
高垣 昌己
予測因子としての検討
助教
心臓血管外科
14
7月27日
3
16:40
71418005
圓光 賢希
循環器内科学
冠動脈疾患患者におけるArterial stiffnessと運動耐容能及び運
動負荷時換気亢進の関係について
高垣 昌己
助教
心臓血管外科
15
7月27日
4
17:00
71419802
岩室雅也
消化器・肝臓・感染
症内科学
iPS細胞からの胚体内胚葉分化に関する基礎的検討
許 南浩
教授
細胞生物学
15
7月27日
5
17:20
71418027
田尻 直輝
神経病態外科学
パーキンソン病モデルラットに対する持続的な運動刺激を用いた
出口 健太郎
神経保護・修復効果の検討について
助教
脳神経内科学
16
7月27日
6
17:40
71417201
Mehmet Zeynel CILEK
分子医化学
Utilization of AHR (Acute hypoxia responsive element) in the
hypoxic cells
准教授 病理学(腫瘍病理)
16
7月27日
7
18:00
71417701
金川 文俊
麻酔・蘇生学
低濃度CO吸入は出血性ショック誘発急性肺障害に対して治療効
長野 修
果を示す
講師
救急部
17
7月29日
1
16:00
71418066
小林 孝一郎
血液・腫瘍・呼吸器
内科学
マウス慢性GVHDモデルにおけるPD-1/B7H1経路の関与の検討 片岡 幹男
教授
保健学研究科
検査技術科学科
18
7月29日
2
16:20
71419021
池田 宏国
腫瘍・胸部外科学
乳癌細胞株におけるmicrotuble assosiated protein-tau (MAPT)
前田 嘉信
についての検討
助教
血液・腫瘍・呼吸器内
科学
18
7月29日
3
16:40
39415061
津下 充
小児医科学
急性脳症における血液脳関門の障害とMMP-9,TIMP-1の動態
吉田 まり子
講師
病原ウイルス学
19
7月29日
4
17:00
71419047
矢野 修也
消化器・腫瘍外科学
癌幹細胞をターゲットとしたテロメラーゼ特異的制限増殖型腫瘍
融解アデノウイルスの治療メカニズムに関する研究
瀧川 奈義夫
助教
血液・腫瘍・呼吸器内
科学
19
7月29日
5
17:20
71418079
戸田 桂介
消化器・腫瘍外科学
胃癌におけるnetrin receptorのgenetic, epigenetic異常
市村 浩一
助教
病理部
20
7月29日
6
17:40
71418071
児島 克英
放射線医学
生体部分肺移植における術後呼吸機能予測のCTボリュームメ
山根 正修
トリーによる検討
助教
腫瘍胸部外科学
20
7月29日
7
18:00
71419015
塚本尚子
腎・免疫・内分泌代
謝内科学
コルチコトロープ細胞でのBMP-4によるACTH分泌の抑制と
ソマトスタチンアナログ作用への関与
助教
脳神経外科学
21
39414051 田淵 陽子
佐藤 修平
近藤 英作
安原 隆雄
(緊急時には小野助教)
6
タイトル
専攻分野
発表日 7/16/2009
時間 16:00:00
Chromosomes 4q28.3 and 7q31.2 as new susceptibility loci for comitant strabismus.
眼科学 学生番号 71418201 発表者 Sherin Elsayed Mahmoud Shaaban
緒言
Strabismus is the misalignment of the eyes and can be classified as comitant when a deviation
is constant in all directions of gaze, or incomitant when a deviation varies in different directions
of gaze. The prevalence of comitant strabismus in Japan is approximately 1 % to 2% of the population
and approximately 2% to 4% among Caucasian populations. Family, twin and population studies suggest
a strong hereditary background for comitant strabismus. To date, only two genome-wide linkage
studies of comitant strabismus have been published. A susceptibility locus on chromosome 7p22.1
was reported in a genome-wide linkage study of seven families with comitant strabismus. The second
study was our preliminary study analyzing data from 30 families with comitant strabismus.
This study was designed to localize chromosomal susceptibility loci for comitant strabismus among
Japanese families by genome-wide linkage analyses.
方法
Fifty-five Japanese families, with at least two members with comitant strabismus (esotropia and/or
exotropia), were subject to full ophthalmic examination, careful ocular history, and review of
medical records. DNA was obtained and genotyping was performed with PCR amplification of 400 micro
satellite markers. Parametric and nonparametric linkage (NPL) analyses scores were calculated.
Linkage analysis was performed for the whole set of families (55 families), and then a second
analysis was performed for two subgroups with the phenotypes, esotropia and exotropia.
結果
A multipoint parametric heterogeneity logarithm of the odds (HLOD) score of 3.62 was obtained
at marker D4S1575 under a dominant model, with a NPL score of 2.68 (P = 0.001). Testing under
different penetrances and disease allele frequencies revealed two other susceptibility loci at
7q31.2 under a recessive model (HLOD scores = 3.93 and 4.40 at 125.2 cM and 107.28 cM, respectively).
Analysis of the subgroups revealed new susceptibility loci for esotropia; one locus at 8q24.21
is worthy of further investigation.
考察
This study suggests multiple susceptibility loci for comitant strabismus. The loci at chromosomes
4q28.3 and 7q31.2 show a significant evidence of linkage.
発表日 7/16/2009
時間 16:20:00
タイトル 急性冠症候群の責任病変におけるプラーク内出血と酸化ストレス、ヘモグロビンスカベンジ
ャーレセプターの発現について
専攻分野 循環器内科学 学生番号 71420007 発表者 柚木 佳
緒言
ヒト冠動脈におけるプラーク不安定化の促進因子としては、マクロファージや好中球といった炎症細胞
のプラーク内集積、マクロファージの泡沫化、血栓形成が重要視されている。さらに最近の研究でプラ
ーク内出血もプラーク不安定化に寄与していることが分かってきた。脂質に富む赤血球膜や溶血した赤
血球から放出されたヘモグロビン、ヘモグロビン由来のヘムが炎症を惹起、酸化ストレスを増大させる
と考えられている。血液中に放出されたヘモグロビンは、速やかに血漿タンパクのハプトグロビンと結
合するが、このヘモグロビン・ハプトグロビン複合体はマクロファージに取り込まれ分解処理が行われ
る。この反応系は過剰な炎症に対する内因的な脈管防御系と推定されており、この複合体の認識・取り
1
込みを調整しているのがヘモグロビンスカベンジャー受容体といわれる CD163 で、これはマクロファー
ジや単球上に発現する膜タンパクである。今回、我々は、冠動脈アテレクトミーより得られた安定狭心
症(SAP:39 例)、不安定狭心症(UAP:35 例)の責任病変の組織標本を用いて、狭心症の新規責任病変
におけるプラーク内出血と酸化ストレスのマーカーである 4-HNE、さらにヘモグロビンスカベンジャーレ
セプター(CD163)の発現について免疫組織化学的に解析した。
方法
冠動脈アテレクトミーより得られた組織を凍結標本とし、連続切片を作製し免疫染色を行った。さらに
SAP 群と UAP 群の両群において赤血球、微小血管、4-HNE、CD163 の局在の程度を画像解析装置を用いて
統計学的に検定した。
結果
赤血球、微小血管、4-HNE および CD163 陽性マクロファージの局在の程度は SAP 群に比し UAP 群で有意に
高値であった(赤血球、 p<0.0001; 微小血管、p<0.0001; 4-HNE、p<0.0001; CD163、p<0.0005)。更
に、赤血球陽性面積は CD31 陽性微小血管、4-HNE 陽性マクロファージスコアと正相関を示し(微小血管、
R=0.59、p<0.0001; 4-HNE、R=0.59、p<0.0001)、CD163 陽性マクロファージスコアは赤血球陽性面積お
よび 4-HNE 陽性マクロファージスコアと正相関を示した(赤血球、R=0.58、p<0.0001; 4-HNE、R=0.53、
p<0.0001)。
考察
ヒト冠動脈の不安定プラークには、プラーク内出血が高頻度に認められ、脂質酸化の亢進、そして制御
反応としてのヘモグロビンスカベンジャー受容体の発現が高度に亢進していることが示唆された。
タイトル
専攻分野
発表日 7/16/2009
時間
早期認知症における Frontal Assessment Battery の成績と脳血流との関連
精神神経病態学 学生番号 39416034 発表者 吉田英統
16:40:00
緒言(Introduction) Frontal Assessment Battery(FAB)は前頭葉機能の簡便な検査として広く使われ
ている。しかしその検査成績が脳のどの部位の機能を反映しているかに関しての実証的な報告は少ない。
本研究では、早期認知症患者における FAB の総得点と SPECT で評価した局所脳血流量との関連を検討し
た。
方法(Methods) 岡山大学病院 精神科神経科のものわすれ外来を受診した 117 名(アルツハイマー病 51
例、前頭側頭型認知症 14 例、血管性認知症 13 例、レビー小体型認知症 7 例、精神疾患 7 名、軽度認
知障害 11 名、正常高齢者 14 例)を対象とし、FAB および脳血流 SPECT(核種は 99mTc-ECD、Patlak Plot
法で定量)を施行した。SPECT 定量値を局所脳血流量解析ソフトである 3DSRT に導入し、標準化された
ROI ごとの局所脳血流量を得た。
結果(Results) FAB 総得点は左側脳梁辺縁区域および左側中心前区域の局所脳血流量と中等度の正の相
関を示した(左側脳梁辺縁:r=0.425、左側中心前:r=0.468)。FAB 高得点群と低得点群の局所脳血流量
の比較では、両側脳梁辺縁区域および左側中心前区域の局所脳血流量は低得点群の方が有意に低値であ
った。
考察(Discussion) 本研究から FAB は主に脳梁辺縁および中心前区域、特に左側の機能を反映している
こと、および FAB が前頭葉機能検査として妥当であることが示唆される。
タイトル
専攻分野
発表日 7/16/2009
時間
2009/07/16West 症候群における ACTH 療法後の再発リスク因子としての脳波所見
発達神経病態学 学生番号 71419010 発表者 石崎 裕美子
緒言(Introduction)
合成 ACTH 療法後の West 症候群(WS)再発予測に対する脳波の有用性を検討する。
2
17:00:00
方法(Methods)
2003‐2006 年に岡山大学小児神経科に入院して初回の ACTH 療法を行った WS 28 人のうち、一度は発作が
抑制され、その後も定期的に詳細な脳波経過を 3 年以上追跡しえた 24 人(潜因性 5 人、症候性 19 人)
を対象とした。
ACTH 療法は 0.005~0.015mg (0.2~0.6 単位) / kg / 回を連日筋注し、2 週間目で再評価し一部の症例
では ACTH 1 回量を 0.01~0.025mg (0.4~1 単位) / kg / 回に増量した。発作およびてんかん発射の消
失を目安に効果がプラトーに達するまで 2.5-6 週間(平均 3.4 週間)投与した。ACTH 療法終了時、終了
後 2 週間、1 ヵ月、3 ヵ月、6 ヶ月時点の脳波所見と 1 年以内の早期再発の有無の関連について検討した。
ここで再発とは脳波上のヒプスアリスミアか発作の出現とした。
結果(Results)
24 例中 11 例が ACTH 療法後に早期に再発した。うち 3 例は脳波上の再発であった。脳波上の局在性てん
かん発射の残存に関しては、ACTH 療法終了時は再発群では 11 例中 8 例、抑制群では 13 例中 9 例、2 週
間後は再発群では 11 例中 11 例全例、抑制群では 13 例中 9 例で残存しており、両群に明らかな差はなか
った。一方、ACTH 療法終了 2 週間後にてんかん発射の全般化がみられた 4 例は全例 3 ヵ月以内の早期に
再発した。終了 1 ヵ月時点では再発群では全例にてんかん発射がみられたが、抑制群では 13 例中 6 例の
みにてんかん発射が認められた。終了後 3 ヵ月以降の棘波の残存部位は、3 ヵ月以降に再発した症例では
後頭部領域や多焦点性が多く、抑制されたままの症例では中心部領域が多かった。
考察(Discussion)
十分な ACTH 療法を行った場合には、終了時点での棘波の有無と再発には関連がなかった。終了後 1 ヵ月
時点の脳波における棘波の有無がその後の再発予測に有用と考えられた。また終了後 3 ヵ月以降の棘波
の出現部位と予後との関連も示唆された。
発表日 7/16/2009
時間 17:20:00
雄マウスの交尾行動ならびにシルデナフィルによる抗うつ効果はオキシトシンがターゲット
である
専攻分野 細胞生理学 学生番号 71418023 発表者 松下博昭
タイトル
オキシトシンは、女性の妊娠、出産、授乳時において多量に分泌され、子宮収縮、射乳を制御してい
ることが古くから知られている。最近の研究により、オキシトシンが長期記憶、うつ、不安、信頼など
の中枢神経機能に深く関係していることが明らかになった。例えば、オスのラットを用いた実験で、交
尾行動によって分泌されたオキシトシンに抗不安作用があることが明らかになった。また、勃起不全治
療剤として用いられているシルデナフィル(バイアグラ®)には、オキシトシンを分泌させる作用がある
ことがわかっている。
本研究は、雄マウスの交尾行動ならびにシルデナフィル投与により分泌されたオキシトシンに抗うつ
効果があるか明らかにすることを目的として実施した。うつ行動の評価には、強制水泳試験を用いた。
強制水泳試験は、強制水泳により生じる無動を動物のうつ行動とし、その時間の短縮をもって抗うつ効
果を測定する試験方法である。マウスを水槽に入れて水泳行動を 3 分間観察し、その後の 3 分間におけ
る無動時間を測定した。その結果、野生型マウスの非交尾行動後では、無動時間に差がなかったが、交
尾行動後では差が認められた。また野生型とオキシトシン受容体欠損マウスの交尾行動後では、差がな
かった。さらにシルデナフィルによって分泌されたオキシトシンの抗うつ効果を試験した。野生型とオ
キソトシン受容体欠損マウスにシルデナフィル 60 mg/kg を単回投与して1時間後に強制水泳試験を行い、
無動時間に差が認められた。以上の結果から、交尾行動ならびにシルデナフィルによる抗うつ効果が、
オキシトシンを介して起こることが示唆された。
3
発表日 7/17/2009
時間 16:20:00
タイトル ラット心停止後肺移植ドナーモデルを用いた分子レベルでの虚血再還流障害の検討
専攻分野 腫瘍・胸部外科学 学生番号 71419029 発表者 山本 澄治
緒言(Introduction)
心停止ドナー(NHBDs)はドナー不足の有効な解決法であるが、温虚血に起因する再灌流障害(IRI)が
重要な問題となりうる。本研究ではラット NHBDs肺移植モデルを用いて、温虚血の IRI に与える影響につ
いて、IRI 関連分子の発現と経時的な移植肺機能との関連性を検討し、考察した。
方法(Methods)
SD 系ラットによる左片肺移植モデルを用い、温虚血なし(0WIT 群、[CIT 群])、30 分温虚血(30WIT 群)、
180 分温虚血(180WIT 群、[WIT 群])に分け、全ての群で総虚血時間を 240 分とした。1 時間再灌流し動
脈血液ガスを測定。移植肺内の MAPK 活性化レベルをウェスタンブロットにて、IRI 関連遺伝子群の発現
量を RT-PCR にて評価した。さらに 4 時間再還流を追加し、経時的変化を検討した。
結果(Results)
1時間再還流後の PaO2 は、0WIT、 30WIT 群に比べ 180WIT 群で有意に低下した。MAPK は、0WIT、30WIT
群と比べ 180WIT 群で、ERK、JNK で有意な活性化を認めた。転写因子(Egr-1、ATF-3)も 180WIT 群で有
意な発現を認めた。サイトカインは IL-1β、IL-6、MCP-1 にて 180WIT 群で有意に発現し、TNF-α、MIP-2
で発現に有意差は認められなかった。再灌流 4 時間後、PaO2 は WIT 群において上昇し、CIT 群と同程度
まで改善した。このとき抗炎症因子(IL-10、HO-1)は WIT 群で再灌流 1 時間よりすでに高発現し 4 時間
まで維持し、呼気 CO 濃度、p38 活性化レベルも同様に推移した。
考察(Discussion)
温虚血による IRI は ERK、JNK 経路の活性化や Egr-1、ATF-3 の増幅によることが示唆された。しかし、
肺機能は再灌流 4 時間後には改善し、その回復には抗炎症性因子が強く関わっており、温虚血後再灌流
障害の抑制を目的とする際に重要なターゲットとなりうると示唆された。
発表日
タイトル 乳児栄養とビタミンD
専攻分野 小児医科学 学生番号
39414051
発表者
田淵
7/17/2009
時間
16:40:00
陽子
今日、栄養障害に起因する子供の成長障害は皆無の様に考えられている。しかし、肥満などの栄養過多
例もあれば、栄養障害も散見される。社会変化に伴い、育児状況の変化、食生活の変化があり、乳児の
摂取栄養の状況も多様化した。育児を考える上で、母乳の重要性が唱えられ、ほぼすべての児に母乳栄
養が推進されるようになったが、一方で改良を重ねて良質化してきた人工栄養と比較した場合に母乳の
質の良否もまた、注目されるところである。そこで乳児栄養としては、乳児の発育発達に対し最適量を
検討する必要がある。今回は、低出生体重児、早産児を含むものの他に基礎疾患を伴わない 7 ヶ月健診
に来院した乳児 112 人に対し、血中ビタミン 25OH-D を中心に栄養評価した。一見、大きな発育発達障害
を認めない対象としたが、ビタミン D 量は幅広い分布を認めた。不足群では時々1 日 1 回程度人工乳を足
している混合栄養児が 1 例含まれていた以外が全例母乳栄養時であった。母乳栄養児は全体 112 人中 72
人の 64%で、そのうち不足量以下が 34 人 47%に対し、正常群は 38 人 53%。両者に有意差は認められな
かった。母乳栄養群では明らかに不足群を認めるが、全例が不足するわけではない。両者を比較検討す
ることで、より良い乳児栄養を検証した。
4
発表日 7/17/2009
タイトル 潰瘍性大腸炎に合併したサイトメガロウイルス感染症の内視鏡的特徴
専攻分野 消化器・肝臓・感染症内科学 学生番号 71418702 発表者 鈴木 英之
時間
17:00:00
緒言(Introduction)
潰瘍性大腸炎(UC)の重症例や治療抵抗例にはサイトメガロウイルス(CMV)感染を合併する症例を認め
る。このような症例では抗ウイルス剤の投与など適切な治療を早期に行う必要があり、内視鏡所見によ
り感染の有無が判断できれば臨床上有用である。そこで UC 悪化時の内視鏡像を検討し、CMV 感染を予測
することが可能であるか検討した。
方法(Methods)
1999 年 1 月から 2007 年 8 月までに UC 症状悪化のため当科に入院し CMV antigenemia(CMVAg)を測定し
た 73 例を対象とした。C7-HRP、C10・11 のいずれか陽性でかつ抗ウイルス療法を要した症例を CMV 陽性、
C7-HRP、C10・11 いずれも陰性の症例を CMV 陰性とした。CMV 陽性群と陰性群に分け、両者の内視鏡像を
比較検討した。なお CMVAg 陽性であったが抗ウイルス剤を投与することなく軽快し UC の臨床経過に影響
を与えたとは考えられなかった症例、内視鏡検査未施行症例は除外した。内視鏡像は潰瘍の所見および
残存粘膜を検討した。潰瘍については、不整潰瘍の有無、打ち抜き潰瘍の有無、縦走潰瘍の有無、広範
粘膜脱落の有無、および深い潰瘍(深さおよそ 1 mm 以上)の有無でそれぞれ 2 群に分け検討した。残存粘
膜については血管透見、発赤、浮腫、易出血性、粘液付着、敷石状変化を軽度および高度の 2 群に分け
検討した。
結果(Results)
73 例中、CMV 陽性群は 15 例(男性 8 例、女性 7 例)、陰性群は 58 例(男性 26 例、女性 32 例)であっ
た。内視鏡像について両群で単変量解析を行ったところ、不整潰瘍(p=0.0015)、打ち抜き潰瘍(p =0.0002)、
縦走潰瘍(p =0.0004)、広範粘膜脱落(p <0.0001)、深い潰瘍(p =0.0069)、高度易出血性(p =0.011)、
高度敷石状変化(p =0.016)の 7 項目が CMV 陽性群で有意な所見であった。さらに多変量解析では、打ち
抜き潰瘍(オッズ比(OR)=15.3、p =0.014)、広範粘膜脱落(OR=23.7、p =0.011)の 2 項目が CMV 陽性を有
意に予測する因子であった。
考察(Discussion)
UC 悪化時の内視鏡検査上、①広範粘膜脱落、②打ち抜き潰瘍の所見が CMV 感染症の予測因子となる。
内視鏡所見より CMV 感染症を予測する事が可能となれば、早期診断・治療に結びけることができ臨床上
有用である
タイトル
専攻分野
発表日 7/17/2009
大腸腫瘍・非腫瘍性病変の NBI 診断能およびその習得性
消化器・肝臓・感染症内科学 学生番号 71417707 発表者 東 玲治
時間
17:20:00
緒言(Introduction)
大腸 NBI を標準化するために必要な診断能の習得性に関する報告は少ない。今回、NBI による大腸腫瘍・
非腫瘍性病変の鑑別診断能およびその習得性を明らかにすることを検討目的とした。
方法(Methods)
2008 年 9-10 月に当院と関連病院で、同意の得られた患者の大腸内視鏡検査時に発見された 5mm 以下の
病変に対して、通常、NBI(非拡大、拡大)、インジゴカルミン撒布下(非拡大、拡大)観察を行った後、内
視鏡切除又は生検を行った。検査法毎に最も明瞭な画像を 1 枚ずつ選択後、情報を知らない NBI 診断経
験 5 年以上の専門医群(A 群)、NBI・拡大観察未経験の消化器内科医群(B 群)、内視鏡検査未経験の研修
医群(C 群)各 4 人が無作為に提示された病変の鑑別診断を行った。さらに、B・C 群は専門医による講義
を 1 時間受けた後、再度同様の鑑別診断を行った。NBI および pit pattern 診断には、佐野分類と工藤分
類を各々用いた。病理診断を gold standard とし、B・C 群における講義の前後での正診率および講義後
での A 群との正診率の比較、各群間での診断の一致率(κ値)の比較を行った。
5
結果(Results)
37 症例・44 病変(腺腫 27、過形成性ポリープ 17)の計 220 枚の画像が得られた。B 群における受講後の正
診率は、通常を除く全ての診断法で有意に上昇し、A 群と同等であった。κ値は NBI 非拡大と同拡大で有
意に上昇し、A 群と同等となった。なお、正診率、κ値ともに NBI 拡大が最も高かった(講義後 B 群:90%、
0.79、A 群:93%、0.85)。一方、C 群の正診率は受講後に NBI 非拡大・拡大で上昇したが、正診率・κ値
共に他群よりも劣っていた。
考察(Discussion)
一般の消化器内科医は、短時間の講義により専門医と同等の NBI 診断能を習得できる可能性が示唆され
た。また、NBI 拡大は、その高い診断の一致率から、習得しやすい診断法であると考えられた。
タイトル 膵癌発症リスクに関する遺伝子多型の検討
専攻分野 消化器・肝臓・感染症内科学 学生番号 39413601
発表日
7/17/2009
発表者
園山
時間
17:40:00
隆之
【目的】膵臓癌は消化器癌において予後不良な代表的な疾患であり,早期発見,早期治療が求められて
いる.発癌に関与すると考えられる複数の遺伝子の一塩基多型(以下 SNPs)を調べ,膵臓癌発症とのリス
クを明らかにすることを目的とする.
【方法】岡山大学病院消化器内科,肝胆膵外科,岡山済生会総合病院にて集められた膵臓癌患者 227 人
と岡山大学分子遺伝学講座で保存されている健常者 446 人の DNA を用い,SNapShot(ABI)によって SNPs
の遺伝子型を判別した.また喫煙,飲酒,既往歴,家族歴などの疫学データの情報を収集し,主にロジ
スティック回帰分析を用いて詳細な統計解析を行った.
【結果】健常人と膵臓癌患者の遺伝子多型データを年齢,性別,喫煙歴,飲酒歴で補正し,統計学的解
析を行った.今回結果の一例として癌抑制遺伝子である p53 Arg72Pro の多型について報告する.男性に
おいて Pro/Pro を持つ人は Arg/Arg を持つ人と比較して調整オッズ比(OR)は 2.58 倍 (95%CI=1.30-5.13)
であった.女性においては有意な関連を示さなかった.(OR=0.85, 95%CI=0.36-2.00) また喫煙歴を有
す人(OR=2.40, 95%CI=1.15-5.02),飲酒歴を有す人(OR=2.56, 95%CI=0.99-6.54),癌の既往を持つ人に
おいても(OR=3.09, 95%CI=1.14-8.42)関連が示唆された.
【結論】p53 Arg72Pro の多型について膵臓癌発症リスクとの関連が示唆された.しかし今回の解析では
症例数が少ない為,規模を大きくした解析を行い,結果を再検証する必要があると考えられる.また単
独の SNP ではなく,複数のリスク SNP を用いることによって,より精度の高い発癌危険度予測ができる
のではないかと期待される.
タイトル
専攻分野
発表日 7/17/2009
糖尿病性腎症の成因における cholecystokinin の役割の検討
腎・免疫・内分泌代謝内科学 学生番号 71418040 発表者 宮本 聡
時間
18:00:00
【緒言】
糖尿病性腎症の腎組織には細胞接着分子とケモカインの発現やマクロファージの浸潤が認められ,腎症
の成因に炎症(microinflammation)の関与が示唆される.Wild type マウスと ICAM-1 KO マウスに
streptozotocin(STZ)で糖尿病を誘発し,腎臓の遺伝子発現プロファイルを DNA microarray で解析する
と,wild type では多くの炎症関連分子とともに cholecystokinin (CCK)の発現が増加する.一方,ICAM-1
KO マウスでは CCK の発現は抑制される.CCK は多様な作用を持つペプチドであり,A 受容体(AR),B 受容
体(BR)が存在する.
【目的】
CCK が糖尿病性腎症進展に関与するメカニズムを明らかにする.
【方法】
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1) Wild type マウス(W)と AR KO マウス,BR KO マウス,AR+BR double KO マウス(AR+BR KO)に STZ を用
いて糖尿病を発症させ 3 ヶ月間観察した.2) ヒト培養マクロファージ(PMA-treated THP-1 cells)に
sulfated CCK-octapeptide (CCK-8s)または control peptide を加え 24 時間培養し炎症関連分子の遺伝
子発現を検討した.3) STZ を用いて糖尿病を発症させた SD ラットに CCK-8s を持続皮下投与し 2 ヶ月間
観察した.
【結果】
1) 糖尿病 AR+BR KO では W に比べてアルブミン尿,メサンギウム基質が有意に増加し,腎組織における
炎症関連分子の mRNA 発現亢進を認めた.2) CCK-8s はヒト培養マクロファージに作用して炎症関連分子
の発現を抑制した.3) CCK-8s 投与群では対照群に比し,アルブミン尿,メサンギウム基質の増加が有意
に抑制され,腎組織における炎症関連分子の mRNA 発現が有意に抑制された.
【考察】
CCK は抗炎症作用を介して,糖尿病性腎症の進展に対して抑制的に働くことが示唆される.
タイトル
専攻分野
発表日 7/17/2009
時間 18:20:00
膀胱癌に対する細胞膜透過性ペプチドを用いた D-isomer 型 p53 ペプチド導入治療法の試み
泌尿器病態学 学生番号 71418053 発表者 荒木 大司
【目的】我々は、p53 蛋白質に細胞膜透過性ペプチド(11R-p53)を付加することにより、p53 蛋白質を
膀胱癌に特異的に導入することに成功し、11R-p53 に膀胱癌細胞増殖抑制効果があることを実証した。し
かし、半減期が短く、抗腫瘍効果を発揮するためには反復投与が必要である。本研究では、細胞内で分
解されにくい抗腫瘍性ペプチドを用いて膀胱癌への長期持続型 p53C 末端ペプチド導入法を開発し、その
膀胱癌への導入効率、抗腫瘍効果について検討した。
【方法】p53C 末端ペプチドに細胞膜透過性ペプチド(11R、FHV)を付加したペプチドを D-isomer で合成
し、膀胱癌細胞株 J82、T24 を対象にこの細胞膜透過性 D 型 p53C 末端ペプチドの細胞抑制効果について
WST-1 アッセイを用い、アポトーシス誘導効果については TUNEL 染色により検討した。In vivo では、J82
の腹膜播種モデルを作製し、細胞膜透過性 D 型 p53C 末端ペプチド投与で生存期間の延長を認めるか検討
した。
【結果】いずれの膀胱癌細胞株においても細胞膜透過性 D 型 p53C 末端ペプチド濃度 1μM 以上で癌細胞
増殖抑制効果を有意に認めた。また TUNEL 染色では癌細胞をアポトーシスさせる効果があることを認め
た。In vivo では細胞膜透過性 D 型 p53C 末端ペプチドを頻回投与することなく生存期間の延長を認めた。
【結語】細胞膜透過性ペプチドを用いた D 型 p53C 末端ペプチド細胞内導入法は、膀胱癌に対して革新的
治療法で言える。
発表日 7/17/2009
タイトル 十二指腸濾胞性リンパ腫の臨床病理学的、分子生物学的解析
専攻分野 病理・病態学 学生番号 39416072 発表者 高田 尚良
時間
18:40:00
緒言:
近年、節外性濾胞性リンパ腫として十二指腸濾胞性リンパ腫が発見される頻度が増加しており、それら
は節性のものと比較して臨床病期および組織学的悪性度が低い。我々は十二指腸濾胞性リンパ腫の臨床
病理学的および分子生物学的検索を行った。
方法:
30 例の十二指腸濾胞性リンパ腫において B 細胞の class switch に必要とされる activation-induced
cytidine deaminase(AID)の発現と follicular dendritic cell(FDC)の発現を免疫組織学的に検索し、PCR
法にて IgH の VH usage および ongoing mutation の有無を検索した。
結果:
7
30 例中 27 例において AID の発現および節性の濾胞性リンパ腫で必須とされる FDC 細胞が認められず、特
に FDC はあたかも MALT リンパ腫の colonization に類似したパターンを呈した。また、monoclonal band
が得られた 17 例については VH usage は VH3:9 例、VH4:5 例、VH5:3 例と偏りがみられ、15 例において
ongoing muatation が認められた。
考察:
十二指腸濾胞性リンパ腫は CD10, bcl-2 の発現、および ongoing mutation を認めるが、VH usage の偏り
と AID の発現および FDC の発現を欠く点において節性の濾胞性リンパ腫とは異なる点があることが判明
した。VH usage の偏り抗原刺激が発生に関わる可能性を示唆している。
8
発表日 7/22/2009
時間
タイトル 座位作業を主体とする女性従事員の腰痛とその発生要因に関する疫学的研究
専攻分野 衛生学・予防医学 学生番号 71417094 発表者 辻下守弘
16:00:00
緒言(Introduction)
本研究の目的は、座位作業を主体とする女性従事員の腰痛とその発生要因に関する疫学的研究として、
特に頸肩痛と生活習慣が腰痛の発生に及ぼす影響について明らかにすることである。
方法(Methods)
某公共遊技場にて座位作業を主体とした労務に従事する女性を対象に 1997 年(n=1324 名、以下第 1 回
調査)と 1999 年(n=1083 名、以下第 2 回調査)に腰痛と頸肩痛および生活習慣に関する質問紙調査を実
施した。第 2 回調査では、その全員が第 1 回調査を受けていた。その中で第 1 回調査において「腰痛な
し」と判定された者は 675 名(62.3%)であり、このデータを縦断研究の分析に用いた。なお、本研究で
は、
「最近1~2 ヶ月の間に腰が痛いと感じた頻度」についての質問に対して、
「いつもある」、
「ときどき
ある」のいずれかに回答した者を「腰痛あり」、それ以外を「腰痛なし」と判定した。また、頸肩痛の判
定も同様とした。質問紙調査は自己記入式とし、調査内容は、年齢、身長、体重、従事年数、腰痛およ
び頸肩痛の有無、そして運動習慣、飲酒習慣、喫煙習慣、睡眠習慣、食習慣、コーヒー・紅茶・日本茶
等の摂取(茶の摂取習慣)といった生活習慣であった。第 2 回調査において新たな「腰痛あり」判定者
は 148 名(21.9%)であり、この腰痛の有無を従属変数とし、第 1 回調査で得られた頸肩痛および生活
習慣と交絡因子(年齢、BMI 、従事年数)を独立変数としてロジスティック回帰分析を行った。
結果(Results)
第 1 回調査で頸肩痛「あり」が 301 名(44.6%)存在し、頸肩痛の「なし」に対する「あり」の粗オ
ッズ比が 1.51(95%CI 1.05-2.19)、調整オッズ比が 1.49(95%CI 1.03-2.16)と有意であった。また、
オッズ比が有意であった生活習慣は、睡眠習慣の「8 時間以下」に対して「9 時間以上」の粗オッズ比が
3.65(95%CI 1.04-12.78)
、食習慣の「規則的」に対して「不規則」の粗オッズ比が 1.58(95%CI 1.05-2.38)、
調整オッズ比が 1.15(95%CI 1.01-2.33)、そして茶の摂取習慣の「飲まない」に対して「飲む」の粗オ
ッズ比が 0.26(95%CI 0.11-0.58)、調整オッズ比が 0.25(95%CI 0.11-0.56)であった。
考察(Discussion)
以上の結果から頸肩痛の存在がその後の腰痛発生に関与することと、睡眠、食習慣、茶の摂取習慣な
どの生活習慣が腰痛の発生要因となることがわかった。これまでの報告において、腰痛の発生要因とな
る生活習慣は、運動習慣、飲酒習慣、喫煙習慣とされてきたが、本研究では有意な要因とは認められな
かった。
発表日 7/22/2009
タイトル 企業における健康管理の実施が従業員の健康状態に及ぼす影響
専攻分野 衛生学・予防医学 学生番号 39416115 発表者 三橋 利晴
時間
16:20:00
緒言
継続的な企業運営には適切に健康管理を行い、従業員の健康の維持する必要もある。本研究は、企業に
おける健康管理の実施具合が従業員の主観的健康に及ぼす影響について調査した。
方法
岡山県内に本社を置く企業を 3 層(50-99 人,100-299 人,300 人以上)に層別し、各層より 20 社を無作為に
選択した。60 社および各社内で無作為に選択された 30 名の従業員(総計 1800 名)に、それぞれ企業用・
従業員用の質問紙を配布した。46 社 1218 人から回答を得た(回収率 67.6%)。欠損値を除外し、43 社 1070
人を解析対象とした。曝露として各企業の人事労務担当者に健康管理の実施具合について回答を依頼し
た。質問紙で 5 種類の健康管理(健診、メンタルヘルス対策、過重労働対策、メタボリックシンドロー
ム対策、禁煙対策)の各々について実施具合を尋ねた。回答は、非常にできている・ややできている/
どちらでもない・あまりできていない・全くできていない、で 2 値化(実施/未実施)した。アウトカ
9
ムとして従業員には主観的健康について回答を依頼した。
「あなたの全体的な健康状態について一番よく
あてはまる番号をご記入下さい」と尋ね、最高によい・とても良い・良い/あまり良くない・良くない、
で 2 値化(主観的健康/不健康)した。
解析
各健康管理の未実施を曝露とし、主観的不健康に対するオッズ比(OR)と 95%信頼区間(95%CI)を求め
た。共変量は性別,年齢,喫煙状況,企業規模とした。結果:メンタルヘルス対策の未実施と主観的不健康
の間に有意な関係が認められた(OR 1.46 95%CI 1.12-1.89)。この関係は共変量を調整しても同様であ
った(OR 1.49 95%CI 1.14-1.94)。その他の健康管理での点推定値は1以上であった。
考察
職場における健康管理の未実施が、従業員の健康に悪影響を及ぼすことが示唆された。
発表日 7/22/2009
時間
タイトル コレラ菌およびコレラ毒素 B サブユニットに対するニワトリ抗体(IgY)の有用性
専攻分野 病原細菌学 学生番号 71418095 発表者 平井一行
16:40:00
緒言
コレラは途上国で未だに繰り返し発生する感染症である。予防方法はワクチンの接種がある。日本国内
で製造されているコレラワクチンは、接種後 60 日までの有効率が 63% と低く、有効期間が 6 ヶ月と少
ないのが問題である。また地球温暖化により我が国が感染地域になる可能性も高まっており、新たな対
策が望まれている。本研究において我々は地震や津波、洪水等により医療状況が劣悪な時でも使用でき
る予防法や治療法として、ニワトリの黄卵由来抗体 (IgY) に着目し有用性を検討した。
方法
コレラ菌に対する IgY とコレラ毒素に対する IgY の 2 種類の IgY を作製した。菌に対する IgY は
Vibrio cholerae O1 と V.cholerae O139 を加熱またはホルマリンにより不活化処理したものをニワト
リに免疫し作製した。毒素に対する IgY は腸管接着に関わるコレラ毒素 B サブユニットをリコンビナン
トで発現させたものを免疫し作製した。Chinese Hamster Ovary (CHO) 細胞にコレラ毒素を添加すると、
CHO 細胞の形態が円形から紡錘形に変化することを利用して、IgY の中和能力を調べた。また、生後 4
日の哺乳マウスに V.cholerae を投与すると感染し、死ぬ事が分かっている。 IgY を投与することによ
り、生存数に変化があるかを観察した。
結果
コレラ毒素と共に毒素に対する IgY を CHO 細胞に添加すると、紡錘形への変化を阻止することができ
た。マウスの実験では、当研究室保存株の V.cholerae O1 および O139 (OD600=1.0)を 50μl 経口投与
した場合は全匹 (n=10) が死亡した。しかし、O139 の場合は 2 時間ごとに菌に対する IgY を経口投与し
た群は投与期間中において全匹が生存し、投与終了後も 8 匹の生存を確認することができた。また、O1
の場合は菌に対する IgY および毒素に対する IgY を混合した IgY を投与した群は、投与終了後も 8 匹
の生存を確認することができた。
考察
コレラの治療は大量に喪失した水分と電解質の補給が中心で、WHO は経口輸液 (ORS) の投与を推奨して
いる。今回作製した IgY を ORS に添加することにより、治療期間を短くする可能性が示唆された。
10
発表日
タイトル プロラクチンの雌性マウス嗅上皮に及ぼす影響
専攻分野 耳鼻咽喉・頭頸部外科学 学生番号 39416011
発表者
7/23/2009
折田
時間
16:00:00
左枝子
緒言
嗅神経細胞は生涯幹細胞からの分化・再生を繰り返す特異な細胞であるが、耳鼻科日常診療において治
療に難渋する嗅覚障害の症例は少なくない。妊娠中には母体の嗅覚が鋭敏になり、ヒト母体も妊娠中に
ある種のにおいに過敏になったり不快に感じたりすることが良く知られ、妊娠中前頭葉神経前駆細胞の
増殖が活発になることが報告されている。今回我々はプロラクチンが嗅覚障害の治療の役に立つ可能性
があるのではないかと考え、妊娠、およびプロラクチン投与が嗅神経細胞に及ぼす影響を観察した。
方法
生後 6 週の BALB/c 系のバージンマウスおよび妊娠 7 日目のマウスを用いた。バージンマウスはプロラク
チン点鼻群と PBS 点鼻群にわけた。嗅上皮内の BrdU 陽性細胞をカウントし、それぞれのグループ間にお
いて陽性細胞数に有意差があるか解析を行った。
結果
Brdu 陽性細胞数はプロラクチン点鼻を施行した雌性マウスおよび妊娠 7 日目のマウスの方が、コントロ
ール雌性マウスのそれより有意に多かった。その一方で、プロラクチン点鼻雄性マウスとコントロール
雄性マウスの間には有意差は無く、プロラクチン点鼻雌性マウスと妊娠マウスの間にも有意差は認めな
かった。
考察
プロラクチン点鼻によって、妊娠初期と同様、少なくとも一時的には、雌性マウスの嗅神経細胞の増加
が促されることが観察された。プロラクチンは女性の嗅覚障害の治療薬の一つとしての可能性を秘めて
いると考えられた。
発表日 7/23/2009
時間 16:20:00
Mechanical Stretch Stimulate Integrin alphaVbeta3-mediated Collagen Expression in
Human Anterior Cruciate Ligament Cells
専攻分野 整形外科学 学生番号 71418088 発表者 鉄永 智紀
タイトル
緒言
生体力学的刺激は靭帯の維持、リモデリングにおいて重要な役割を担っており主にインテグリンなどの
細胞接着分子によって細胞内シグナルに変換され伝達される。今回我々はヒト ACL 細胞において未だ不
明であるメカニカルストレス誘導性のコラーゲン発現およびインテグリンとの関連について検討した。
方法
変形性膝関節症患者で人工膝関節置換術施行時に得られたヒト ACL から細胞を分離培養した。ACL の靭帯
-大腿骨•脛骨付着部、靭帯中間実質部より分離したものをそれぞれ Interface 細胞、Midsubstance 細胞
とした。ファイブロネクチンでコーティングしたチャンバー上にて単層培養し、ST140(STREX 社)にて
周期性伸張刺激(CTS)(0.5 Hz、7%)を 2 時間負荷した。CTS を加えず同様に培養したものをコントロ
ールとした。COL1A1、COL2A1、COL3A1、Integrin alphaVbeta3、alpha5、beta1 の発現を RT-PCR、real-time
RT-PCR にて検討し、免疫染色により CTS 後の細胞接着について検討した。
結果
CTS のない環境において、Midsubstance 細胞と比較して Interface 細胞では COL1A1、COL2A1、COL3A1、
Integrin alphaVbeta3 発現がいずれも減少した。
CTS により Interface 細胞と Midsubstance 細胞の COL1A1
発現はそれぞれ 14 倍、6 倍に増加した。CTS により両細胞において F-actin の染色性が増加し、Integrin
alphaVbeta3 が細胞辺縁に分布していた。
また抗 Integrin alphaVbeta3 ブロッキング抗体の添加により、
CTS 後の COL1A1 発現の上昇が抑制された。
考察
11
ヒト ACL 細胞においては Integrin alphaVbeta3 を介するストレス誘導性シグナルがコラーゲン遺伝子の
発現に重要であることが示唆された。
発表日 7/23/2009
時間 16:40:00
タイトル 最終糖化産物(AGE)はリンパ球混合培養下で AGE 受容体発現とサイトカイン産生を増強する。
専攻分野 消化器・腫瘍外科学 学生番号 71417073 発表者 大橋 勝久
【緒言】
最終糖化産物(AGE)には、AGE2/3/4/5 のサブタイプがあり、特に AGE2/3 はその特異的受容体(RAGE)
と結合することで、血管炎を背景とする糖尿病合併に関与するといわれている。また移植医療における
問題のひとつに移植後糖尿病(PTDM)の発生と拒絶反応が挙げられ、各種免疫抑制剤で治療されるもの
の、根本的治療にはいたらず移植片廃絶となることがある。そこで、AGE と拒絶反応との関係を、血液モ
デルである混合リンパ球反応(MLR)を用いて検討した。
【方法】
AGE2/3/4/5 を作成した。
異なるドナーから得た末梢血単核球細胞を混合し、AGE2/3/4/5 を加えることで、単核球上での RAGE 発現
を検討した。
単球上の接着分子(ICAM-1,B7-1,B7-2,CD40)の発現、サイトカイン(INF-γ,TNF-α)産生、Tcell 増殖
能([3H]-thymidine)を検討した。
anti-ICAM1,B7-1/2,CD40 antibody および anti-RAGE antibody(sRAGE)を用い、blocking effect につい
て検討した。
【結果】
AGE2/3 のみ、単球上に RAGE の発現を認めた。
AGE2/3 のみ、単球上での各種接着分子の発現、サイトカイン産生増強と Tcell proliferation の上昇
を認めた。
これらの反応は anti-ICAM1,B7-1/2,CD40 antibody および sRAGE によって用量依存性に抑制された。
【結語】
AGE2/3 が単球上に RAGE を発現させ、拒絶反応での免疫応答にかかわる可能性が示唆された。
発表日 7/23/2009
タイトル 腹膜透析を要する小児心臓術後患者の術後血糖と患者予後との関係
専攻分野 麻酔・蘇生学 学生番号 71418019 発表者 江木 盛時
時間
17:00:00
緒言
強化インスリン療法(目標血糖値;80ー110mg/dL)は、外科系 ICU 患者の死亡率を 43%低下させた。強
化インスリン療法の最大の効果は、重症の成人心臓術後患者に認められた(59%の死亡率減少)
。しかし、
小児の心臓術後患者(特に腎代替療法を要する重症患者)での血糖管理とその予後に関する情報は、ほ
とんど存在しない。
方法
2003 年 1 月から 2005 年 12 月の 3 年間でICUに入室した小児心臓術後患者 1103 名中、腹膜透析を要し
た患者 40 名を対象とした。ICU 滞在中・PD 施行中・PD 非施行中の平均血糖(GluAve)、栄養投与量および
インスリン使用量が ICU 死亡と関係するか検討した。ICU死亡群と生存群間の比較には、Mann
-Whitney あるいはChi-square test を用いた。
結果
対象患者のうち 22 名が死亡した(死亡率;55%)。本患者群では、平均 3.3 時間毎、計 9725 回血糖値が
測定された。
ICU 非生存群の ICU 滞在中GluAve は、
ICU生存群と比較して有意に高く(生存群: 131mg/dl
12
vs 非生存群 152mg/dl, p=0.004), PD 施行中でその傾向は強く観察された(生存群: 124mg/dl vs 非生
存群 152mg/dl, p<0.0001)。しかし、PD非施行中では、GluAve に有意な差は認められなかった(生存
群: 122mg/dl vs 非生存群 120mg/dl, p=0.492)。非生存群のPD施行中の栄養投与は生存群と比較して
有意に多かった。両群間でインスリン投与量に有意差はなかった。多変量解析を用いて患者重症度を調
整した後も、PD 施行中の GluAve と栄養投与量は患者死亡と有意に独立して関係した。
考察
PDを要する小児心臓手術患者において、PD施行中の平均血糖と栄養投与量はICU死亡と独立して
有意な相関関係にあった。PD 中の栄養投与量の減量や血糖制御により患者予後を改善できるか否かにつ
いては今後の研究が必要である。(published in Int J Artif Organs 2008; 31: 309-16)
13
タイトル
専攻分野
発表日 7/27/2009
時間
症候性 Brugada 症候群に対する Bepridil の心室細動抑制効果についての検討
循環器内科学 学生番号 71418011 発表者 村上正人
16:00:00
緒言(Introduction)
Bepridil は症候性 Bugada 症候群において心室細動(VF)の抑制効果が期待される薬剤であるが、報告は
少なく、効果、特徴については不明な点が多い。
方法(Methods)
VF が頻発する症候性 Brugada 症候群に対し、低用量 bepridil 100mg/日を投与した。効果不十分なとき
は高用量 200mg/日とし、VF 抑制効果を検討した。
結果(Results)
低用量 bepridil を投与した 7 例のうち 3 例(A, B, C)に SCN5A 遺伝子異常を認め、4 例(D, E, F, G)に
SCN5A 遺伝子異常を認めなかった。SCN5A(+)群では A 22 回/72 ヶ月、B 11 回/38 ヶ月、C 10 回/26 ヶ月
の VF 頻度であったが、低用量 bepridil にて A 0 回/27 ヶ月、B 1 回/32 ヶ月、C 1 回/31 ヶ月と著明な
VF 抑制効果を認めた。SCN5A(-)群においては低用量 bepridil 投与後、短期間に VF を認め、200mg/日へ
増量した。G でのみ増量が有効であったが、D、F には無効、E は催不整脈作用が疑われたため他剤へ変更
となった。SCN5A(+)群では加算平均心電図は改善したが、SCN5A(-)群では改善を認めなかった。
考察(Discussion)
bepridil は SCN5A(+)では低容量でも有効であり、この効果の違いは SCN5A 遺伝子異常の有無による病態
生理の違いを反映している可能性が考えられる。
発表日 7/27/2009
時間 16:20:00
タイトル 赤血球容積分布幅(RDW)の非虚血性心疾患患者における予後予測因子としての検討
専攻分野 循環器内科学 学生番号 71418006 発表者 木島 康文
背景:赤血球容積分布幅(RDW)は心不全患者における予後予測因子となり、また心血管事故の予測因子
となりうることが報告されているが、非虚血性心疾患患者における予後予測因子となりうるかは明らか
ではない。我々は非虚血性心疾患患者において血液生化学マーカーと総死亡などのエンドポイントとの
関連性について検討した。
方法と結果:1992 年 2 月から 2006 年 9 月までに岡山大学病院循環器内科に入院した 119 例について心臓
死・突然死と血液生化学検査値について検討した。入院時の病状に関わらず血液生化学検査は入院後初
回の検査値を採用した。平均観察期間は 55.3 月で観察期間中 18 例が突然死をきたした。RDW 値に基づい
て 4 群に分割[Q1(11.7-12.6%)、
Q2(12.7-13.1%)、Q3(13.2-13.9%)、Q4(14.0-20.6%)]すると
Kaplan-Meier curve において RDW 値の最も高い群(Q4)はその他 3 群に比べて有意にイベント発生率が高
かった(P<0.001)。単変量解析では RDW 値(P<0.001, HR 1.44)、Hb 値(P<0.001, HR 0.62)
、Na 値(P<0.001,
HR 0.82)が総死亡の強力な予測因子となった。また、Hb 値による補正後も RDW 値(P<0.01, HR 1.38)
は有意な予測因子であった。
結論:非虚血性心疾患患者において RDW が高値である患者群では貧血の有無とは独立して総死亡のイベ
ント発生率が高かった。RDW は非虚血性心疾患患者における予後予測因子となりうる可能性が示唆された。
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発表日 7/27/2009
時間 16:40:00
タイトル 冠動脈疾患患者における Arterial stiffness と運動耐容能及び運動負荷時換気亢進の関係に
ついて
専攻分野 循環器内科学 学生番号 71418005 発表者 圓光 賢希
緒言(Introduction)
運動耐容能の低下は、冠動脈疾患患者における臨床的な特徴とされている。一方 arterial stiffness は
冠動脈疾患患者において増加することが知られている。しかしながら冠動脈疾患患者において Arterial
stiffness と運動耐容能との関係については明確に検討されたことはなかった。
方法(Methods)
今回我々は、この研究で 62 名の冠動脈疾患患者(平均年齢 67±7 才、男性 49 名)について、arterial
stiffness と運動耐容能について検討した。すべての患者群に心肺運動負荷試験と arterial stiffness
の指標である pulse wave velocity(PWV)を施行した。そして、患者群を high-PWV 群(n=31)と low PWV
群(n=31)の 2 群に中央値(1622cm/sec)で分けた。
結果(Results)
運動負荷試験中の peak Vo2 は low PWV 群に比し high PWV 群で有意に低値であった。VE/Vco2slope は low
PWV 群に比し high PWV 群で高値であった。一方で ST 低下時間は有意に短い値となった。
多変量解析の結果では、PWV は性別と同様に peak Vo2 と有意な相関を認めた。また、PWV は VE/Vco2slope
と ST 低下時間においても有意な相関を示した。
考察(Discussion)
high PWV の患者は low PWV の患者に比して低い運動耐容能であった。high PWV の患者においては、運
動時の心筋虚血の閾値低下や換気亢進の増強が認められた。
タイトル iPS 細胞からの胚体内胚葉分化に関する基礎的検討
専攻分野 消化器・肝臓・感染症内科学 学生番号 71419802
発表日
7/27/2009
発表者
岩室雅也
時間
17:00:00
【目的】幹細胞は胚体内胚葉を経て肝細胞へ分化する。今回われわれは、iPS 細胞から効率的に胚体内胚
葉を作成する方法を確立したので報告する。また ES 細胞と iPS 細胞の胚体内胚葉への分化効率について
も比較検討した。
【方法】マウス ES 細胞およびマウス iPS 細胞について、胚様体の形成期間(2 日間または 5 日間)、アク
チビン A および塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)の有無が遺伝子発現に与える影響を検討した。また血
清培地および無血清培地の細胞増殖能を MTS 分析で評価した。
【結果】iPS 細胞の内胚葉マーカーの発現は、胚様体を 5 日間形成し、アクチビン A および bFGF を加え
た群で最も高かった。iPS 細胞の増殖は無血清培地でより良好であった。また iPS 細胞は ES 細胞に比し
内胚葉マーカーの発現が低い傾向にあった。
【結論】iPS 細胞の胚体内胚葉への分化効率は ES 細胞よりも低かったが、無血清培地を使用し、胚様体
を 5 日間形成、その後アクチビン A および bFGF を添加することにより、iPS 細胞から効率的に胚体内胚
葉を形成できることがわかった。この技術を応用することにより、将来的に患者由来の体細胞から肝細
胞を作成し、免疫抑制剤を用いない細胞移植治療を行える可能性がある。
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発表日 7/27/2009
時間 17:20:00
タイトル パーキンソン病モデルラットに対する持続的な運動刺激を用いた神経保護・修復効果につい
て
専攻分野 神経病態外科学 学生番号 71418027 発表者 田尻 直輝
(目的)脳の可塑性を利用した神経修復療法が注目されているが、特にリハビリテーションはシナプス
形成及びニューロン新生を促進すると報告されている。本研究では、パーキンソン病モデルラットに対
し、持続的な運動刺激を用いてその効果を検討した。
(方法)SD ラット線条体に 6-OHDA を投与し、片側パーキンソン病モデルを作成した。モデル作成から
24 時間後に、トレッドミルによる運動刺激を 1 日 30 分間、週 5 日の頻度で行った。シリンダーテストに
よる上肢の自発運動評価を毎週行い、アンフェタミン誘発回転運動による評価を 2, 4 週間後に行った。
チロシン水酸化酵素 (TH) 陽性細胞や新生神経前駆細胞の遊走能・ニューロン新生の程度を免疫組織学
的に評価し、神経栄養因子 (GDNF, BDNF) の発現を分子生物学的手法を用いて検討を行った。
(結果)運動群では非運動群に比べ、有意な行動学的改善が得られ、免疫組織学的には、運動群で有意
に線条体における TH 陽性線維の密度が高く、黒質における TH 陽性細胞数が多かった。また運動群では、
脳室下帯の新生神経前駆細胞が、病変側の線条体方向へ遊走および増殖を示した。さらに、運動群で線
条体における神経栄養因子 (GDNF, BDNF) の発現増加が認められた。
(結論)持続的な運動刺激はパーキンソン病モデルラットに対し、神経保護・修復効果を有することが
示唆された。このメカニズムとしては、内因性の神経栄養因子の誘導、ニューロン新生の活性化などに
より神経回路の再構築を促進させた可能性が考えられる。
タイトル
専攻分野
発表日 7/27/2009
時間 17:40:00
Utilization of AHR (Acute hypoxia responsive element) in the hypoxic cells
分子医化学 学生番号 71417201 発表者 Mehmet Zeynel CILEK
Recently, we have found an interesting gene that can be transiently induced in the endothelium
in myocardial infarction. Further data indicated that this gene may be a hypoxia-inducible gene
expressed by endothelial cells. In fact, its expression is limited to a few hours’ hypoxia (i.e.,
acute ischemia). The aim of this study is to test the key element for this induction (we named
this sequence as AHR (Acute hypoxia responsive element) can be used for detecting acute hypoxia.
We cloned promoter region of this gene and named as AHR (Acute hypoxia responsive element). To
determine which region is responsible for hypoxic induction of AHR, we prepared several different
constructs with different length of AHR. We performed luciferase assay driven by AHR in hypoxic
cells. From the results of luciferase assay, we identified the responsible AHR activated by hypoxia.
We made green fluorescence protein (GFP) expressing construct under the control of AHR. We
transfected GFP construct into human umbilical vein endothelial cells (HUVECs), and examined GFP
production under 30minutes, 1, 3, 6, or 24 hours of hypoxia. After incubation, cells were fixed
using 4% paraformaldehyde (PFA) and observed under the fluorescence microscope.
When GFP–transfected HUVEC was cultured in normoxic condition, GFP was very slightly observed.
In contrast, a considerable number of GFP-positive HUVEC was observed when exposed to 3h hypoxia.
GFP fluorescence and nearly returned to the normoxic level at 24h of hypoxia. In conclusion, we
concluded that AHR works under acute hypoxia.
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発表日 7/27/2009
タイトル 低濃度 CO 吸入は出血性ショック誘発急性肺障害に対して治療効果を示す
専攻分野 麻酔・蘇生学 学生番号 71417701 発表者 金川 文俊
時間
18:00:00
[目的]出血性ショック・蘇生(Hemorrhagic shock followed by resuscitation: HSR)には急性肺傷害(Acute
lung injury: ALI)が起こることが知られており、その病態には虚血再灌流に伴う酸化ストレスが関与す
ると考えられている。一酸化炭素(CO)は、内因性にはヘムの代謝産物により生成されるが、最近になり
低濃度の吸入により抗炎症効果、抗アポトーシス効果で細胞保護的に働くことが報告されている。今回
我々は、ラット出血性ショックモデルを用い、HSR 後の ALI に対する低濃度 CO 吸入の効果について検討
した。
[方法]雄性 SD ラットの大腿動静脈から脱血をおこない、平均血圧を 30±5mmHg になるように 60 分間維
持した後、返血・蘇生を施行し HS モデルを作成した。これを HS+Air 群(N=5)と HS+CO 群(N=5)に分け、
HS+CO 群は 250ppm の濃度で、ショック前 1 時間、ショック蘇生後 3 時間 CO を吸入させた。これに sham
群(N=5)を加え、吸入 3 時間後 Northern blot 法にて TNF-α、iNOS mRNA の発現を検討した。組織評価と
して HE 染色にて組織スコアを評価し、肺 wet/dry ratio と naphthol chloroacetate 染色による好中球
数を計測した。
[結果] HS で上昇した TNF-α、iNOS mRNA の発現は CO 吸入により有意に抑制された(P<0.05)。また、HS
で増加した肺障害スコア、肺 wet/dry ratio、浸潤好中球数は CO 吸入群で有意に低下した(P<0.05)。
[結論]HS 後の極低濃度の CO 吸入が肺の炎症抑制・組織障害改善効果を示したことから、CO 吸入は ALI
に対して保護効果を示すと考えられた。
17
タイトル
専攻分野
発表日 7/29/2009
マウス慢性 GVHD モデルにおける PD-1/B7H1 経路の関与の検討
血液・腫瘍・呼吸器内科学 学生番号 71418066 発表者 小林 孝一郎
時間
16:00:00
【緒言】同種造血幹細胞移植のおける慢性 GVHD(graft-versus-host disease)は、主要な移植後晩期の死
因の一つである。慢性 GVHD は自己免疫疾患や免疫不全様の病態を呈し、多臓器に障害が及ぶことが知ら
れている。慢性 GVHD のメカニズムにおいては、これまで Th1、Th2 サイトカインの関与などの報告があ
るが、近年同定された副刺激分子 PD-1 およびそのリガンドである B7-H1 と慢性 GVHD との関係について
の研究はない。そこで今回、我々はマウスモデルを用いて慢性 GVHD における PD-1/B7-H1 経路の関与に
ついて検討を行った。
【方法】ドナーに B10.D2、レシピエントに BALB/c を用いた慢性 GVHD 発症マウスモデルにおいて、移植
後、T リンパ球および陽性樹状細胞における PD-1、B7H1 の各々の発現の変化、ならびに GVHD 標的臓器で
ある皮膚における B7H1 の発現を経時的に検討した。また、移植後 14 日目より、抗 PD-1 抗体、抗 B7-H1
抗体を投与し、対象群と慢性 GVHD 発症の程度について比較検討を行った。
【結果】移植後 2 から 4 週にかけて、GVHD の発症に従う形で脾臓および末梢リンパ節における T リンパ
球の PD-1 発現ならびに樹状細胞における B7H1 発現の上昇が認められた。また、同時期に、皮膚には PD-1
陽性 T リンパ球が浸潤し、皮膚ケラチノサイトにおける B7-H1 発現の上昇が認められた。さらに、抗 PD-1
抗体、抗 B7-H1 抗体を投与したマウスは、対象群に比べ、有意に慢性 GVHD の悪化を来たした。
【考察】マウス慢性 GVHD モデルにおいて、PD-1/B7-H1 経路が関与している可能性が示唆された。今後、
PD-1 ノックアウトマウスや B7-H1 ノックアウトマウスを用いて更なる解析を進めていく予定である。
タイトル
専攻分野
発表日 7/29/2009
時間 16:20:00
乳癌細胞株における microtuble assosiated protein-tau (MAPT)についての検討
腫瘍・胸部外科学 学生番号 71419021 発表者 池田 宏国
緒言(Introduction)
タキサン系抗癌剤は乳癌治療において極めて有用な薬剤である.Microtubule-associated proteins Tau
(MAPT)はチュブリンに対し,タキサン系薬剤と同じ部位に結合し,タキサン系薬剤と拮抗,薬剤
効果を阻害するため,MAPT過剰発現はタキサン系薬剤への耐性化の重要な因子であると考えられる.
今回我々は,乳癌細胞株を使用し MAPT 発現と各種抗癌剤感受性の関連性,エストロゲンレセプター(ER)
と MAPT の関連性について検討した.
方法(Methods)
①乳癌細胞株 12 株で MAPT の mRNA,protein 発現を調べ,各種抗癌剤感受性との関連性を検討.②MAPT,
ER の同時発現株で ER knock down,17βestradiol 刺激を行い,
MAPTprotein の発現変化を検討.③Hormone
drug (ICI182,780,Tamoxifen)に暴露し MAPT の発現変化を検討.
結果(Results)
①mRNA では 6 株,protein では4株が MAPT 高発現であった.mRNA と protein の発現状況は必ずしも一致
しなかった.mRNA 発現状況とタキサン系薬剤耐性には相関性はなかったが,protein isoform 発現状況
は薬剤耐性に強く関与していた.siRNA で MAPT の knock down を行い薬剤感受性の増加を確認した.②
MAPT protein 発現は ER knock down により減少,17βestradiol 刺激により増加した.③MAPT protein
発現 は ICI182,780 暴露により減少,Tamoxifen 暴露により増加した.
考察(Discussion)
①MAPT 発現,特に MAPT protein isoform 発現はタキサン系薬剤耐性化に深く関与している.②ER は MAPT
発現に強い影響を与えている.
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タイトル
専攻分野
発表日 7/29/2009
急性脳症における血液脳関門の障害と MMP-9,TIMP-1 の動態
小児医科学 学生番号 39415061 発表者 津下 充
時間
16:40:00
緒言(Introduction)
インフルエンザ脳症は小児に多く発症し、神経症状が急速に進行し脳浮腫を起こす。その病態はウイ
ルス感染に伴う高サイトカイン血症によって引き起こされると考えられている。高サイトカイン血症に
よる血液脳関門の障害は、血液脳関門の基底膜を分解する matrix metalloproteinase-9(MMP-9)とその
抑制因子である Tissue inhibitor of matrix metalloproteinase-1 (TIMP-1)が深く関与していると考
えられている。本研究では TNF-αによる脳での MMP-9 と TIMP-1 の動態を中心に検討した。
方法(Methods)
C57BL/6 マウスに TNF-αを静脈内投与し、経時的に血液、髄液、脳組織を採取した。脳血管透過性は
エバンスブルー色素法を用いて定量した。また、MMP-9 の酵素活性はゼラチンザイモグラフィーを用いて
測定した。TIMP-1 の蛋白量は ELISA を用いて定量した。脳内での MMP-9 酵素活性の局在について免疫組
織化学染色を行なった。
結果(Results)
脳血管透過性は、TNF-αの投与後に有意に増加した。脳および髄液で投与 3 時間後に MMP-9 の酵素活
性が増加した。血清では投与 6 時間後に増加していた。脳内の TIMP-1 の蛋白量は投与 12 時間後に有意
に増加した。大脳皮質や海馬における神経細胞と、血管内皮細胞にゼラチナーゼ活性の増加を認めた。
考察(Discussion)
血液中の TNF-αの増加は、脳での MMP-9 の増加を早期に促し、血管内皮細胞や神経細胞で増加する。
このことはインフルエンザ脳症でみられる神経症状の早期発症の一因を担う可能性がある。また、脳内
で TIMP-1 の蛋白量が増加し、活性化した MMP-9 を抑制していると考えられる。インフルエンザ脳症でみ
られる TIMP-1 の増加不良は脳障害に強く関連すると考えられる。
発表日 7/29/2009
時間 17:00:00
タイトル 癌幹細胞をターゲットとしたテロメラーゼ特異的制限増殖型腫瘍融解アデノウイルスの治療
メカニズムに関する研究
専攻分野 消化器・腫瘍外科学 学生番号 71419047 発表者 矢野 修也
CD133 といった特殊な表面マーカーを発現する癌幹細胞は、腫瘍が形成・維持する上で必要不可欠な存在
であり、既存の治療法に抵抗性を示す.癌を根絶するには癌幹細胞をターゲットとした治療法の開発が
急務である.我々は hTERT プロモーターで増殖するテロメラーゼ特異的制限増殖型腫瘍融解アデノウイ
ルス製剤(テロメライシン)を開発し、癌への治療診断効果について報告してきた.今回テロメライシン
による癌幹細胞治療の新しいメカニズムについて発表する.まず癌幹細胞の確立とテロメライシンの治
療効果について検討した.癌幹細胞は非常に少ない集団である.そこで癌幹細胞が既存の治療法に抵抗
性があることを利用し、胃癌細胞株 MKN45 に放射線を照射し放射線耐性株を作製した.放射線耐性株は
親株と比較し有意に CD133 陽性細胞が増加していた.FACS を用い CD133 陽性、陰性細胞を分離し、各々
の特性を検討した.MKN45 CD133 陽性細胞は、不均衡分裂、スフェア形成能、腫瘍形成能といった癌幹細
胞の特性を有していた.CD133 陽性細胞は化学療法や放射線療法に対し CD133 陰性細胞に比べ有意に抵抗
性を示したが、テロメライシンは CD133 陽性、陰性細胞へ同等の抗腫瘍効果を示した.次に治療メカニ
ズムについて検討した.CD133 陽性細胞は hTERT mRNA を有意に多く発現したためテロメライシンは CD133
陽性細胞内でより多く複製が可能だった.これはテロメライシン自身が CD133 陽性細胞により大きな細
胞障害性を与えることを示す.また、テロメライシンは癌幹細胞が増殖、維持するために必要なタンパ
クを減少させ、その増殖を抑制した.マウス背部腫瘍に同等の抗腫瘍効果があるように治療すると、既
存の治療法では CD133 陽性細胞は増加したが、テロメライシンでは増加しなかった.以上からテロメラ
イシンは、ウイルス自身の破壊作用と分子標的薬としての作用を有しており、癌幹細胞の割合を増加さ
19
せることなく癌細胞一様に効果を示ことから、新規癌幹細胞治療薬になると期待できる.
発表日
タイトル
専攻分野
胃癌における netrin receptor の genetic
消化器・腫瘍外科学 学生番号 71418079
発表者
戸田
7/29/2009
時間
17:20:00
桂介
緒言(Introduction)
我々は netrin-1 dependence receptor である DCC と UNC5C の down-regulation が胃癌において重要な
成長調節因子となっているのではないかと考えた。
方法(Methods)
98 人 の 胃 癌 患 者 の 病 変 部 と 正 常 粘 膜 に お い て 、 UNC5C と DCC の そ れ ぞ れ に つ き 蛋 白 発 現 、
genetic/epigenetic 解析を行った。genetic/epigenetic 解析として LOH、遺伝子プロモーター領域のメ
チル化を解析した。
結果(Results)
UNC5C,DCC それぞれについて全体の 54%、77%に LOH または異常メチル化を認めた。Epigenetic mechanism
は UNC5C では不活性化の 1 次的な原因となっているが、DCC においては、LOHに伴うプロモーターのメ
チル化は second hit の仮説を支持していた。
解析可能胃癌患者の 48%(32/68)で、これら2つの dependence
receptor の累積する欠損が認められ、その頻度は病期の進行に伴い増加した。
考察(Discussion)
胃癌の多くでは netrin receptor の欠損が早い段階から起きており、これら欠損の頻度は胃癌の進行
とともに増加する。これら事実は、netrin receptor の異常が胃癌形成および進行の重要な役割を担って
いることを示唆する。
発表日 7/29/2009
時間
タイトル 生体部分肺移植における術後呼吸機能予測の CT ボリュームメトリーによる検討
専攻分野 放射線医学 学生番号 71418071 発表者 児島 克英
17:40:00
【目的】生体部分肺移植において術前にドナーとレシピエントの呼吸機能のマッチングは手術適応の決
定や予後予測に重要である。生体肝移植前の肝機能の評価 には CT ボリュームメトリー(以下 VM)法が
広く用いられているが、生体部分肺移植における報告はない。今回我々は、VM により術後の呼吸機能予
測を行った。
【対象と方法】現在、術後の呼吸機能予測は肺区域数率を用いて計算され、ドナーの努力肺活量に 右下
葉ドナーは 5/19、左下葉ドナーは 4/19 を掛けたものを合計している。ドナーの術前 CT をワークステー
ションを用いて肺 VM を行い、全肺体積と両側下葉グラフトの体積を計測した。
①生体部分肺移植ドナーの術前胸部 CT の DICOM データが得られた移植 26 症例のドナー50 例において、
肺区域数率と VM による体積比との比較を行った。
②両肺生体部分肺移植ドナー2 人の術前 CT の DICOM データが得られた症例のなかで、6 ヶ月後にレシピ
エントの呼吸機能が計測できた移植 23 例において、VM による体積比を用いて予測努力肺活量を算出した。
従来法・VM 法それぞれによる予測努力肺活量と術後 6 カ月の努力肺活量の相関を検討した。
【結果】
①VM による右下葉割合と 5/19 の t 検定を行い、p=0.01(95%信頼区間:0.249-0.261)であった。また、左
下葉割合と 4/19 では、p=0.00(95%信頼区間:0.215-0.230)であった。いずれも有意水準 5%で異なる割
合であった。
②予測努力肺活量と術後 6 カ月の努力肺活量の相関係数を算出した。従来法で相関係数 0..50(p=0.024)。
VM 法で相関係数 0.53(p=0.016)であった。有意水準 5%でいずれも相関していた。
【結 語】従来法と VM 法による下葉の容積比に両側とも有意差がみられた。予測努力肺活量はいずれも
20
有意に相関しており、差はみられなかった。
発表日 7/29/2009
時間 18:00:00
タイトル コルチコトロープ細胞での BMP-4 による ACTH 分泌の抑制とソマトスタチンアナログ作用への
関与
専攻分野 腎・免疫・内分泌代謝内科学 学生番号 71419015 発表者 塚本尚子
緒言
近年、下垂体に発現する BMP-4 がコルチコトロープ細胞の増殖と ACTH 分泌の抑制因子として作用するこ
とが報告された(Endocrinology 147:247,2006)
。今回我々は Cushing 病治療へ応用されるソマトスタチ
ン(SS)アナログの作用について、BMP-4 に着目しマウス AtT20 細胞を用いて ACTH 分泌抑制機序を検討し
た。
方法・結果
AtT20 細胞には、BMP-I, II 型受容体と転写因子 Smad1-8 および SS 受容体(SSTR)-2,3,5 の発現を認めた。
BMP-2,-4,-6,-7 の添加により 24 時間の ACTH 基礎分泌は濃度反応性に低下したが、その効果は BMP-4 に
おいて著明であった。CRH は AtT20 の ACTH 分泌を増加したが、BMP-4 は CRH 刺激による ACTH 分泌反応に
対しても強く抑制した。また BMP-4 は、CRH による POMC-promoter 活性・POMC mRNA の増加も ACTH 分泌
と同様に抑制した。興味深いことに、CRH 刺激による ACTH 分泌は BMP-binding protein である noggin の
存在下で増強されたことから、内因性の BMP は ACTH 分泌の制御因子として機能しており、また CRH によ
る cAMP の上昇は BMP-4 により抑制されないことから、BMP-4 は cAMP-PKA の抑制とは異なる機序により
ACTH 分泌を制御すると考えられた。SS アナログである octreotide (Oct)および pasireotide(SOM230)の
処理では、ACTH 基礎分泌への影響は微弱であったが、SOM230 の処理により CRH 刺激による ACTH 分泌に
対して有意な抑制効果を認めた。サイミジンアッセイでは BMP4、SOM230、Oct それぞれ単独では細胞増
殖に対する影響は少なく、さらに CRH 存在下でも影響がみられなかったが、BMP4 の共存下で SOM230/Oct
による細胞増殖抑制がみられた。また SOM230/Oct は AtT20 細胞での BMP-4 の BMP4 の key レセプターで
ある BMPRⅡや ALK3 の mRNA 発現を増加させ、抑制因子である smad6/7 の発現を抑制した。
考察
SS アナログによる ACTH 分泌の抑制機序において、内因性 BMP シグナルの活性化が関与する可能性が示唆
された。
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