害虫の知識と対策 (殺虫剤の知識) - 日本家庭用殺虫剤工業会

家庭用殺虫剤の正しい使い方
2011年2月5日
川崎市「化学物質と環境」市民向けセミナー
日本家庭用殺虫剤工業会
日本家庭用殺虫剤工業会
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目次
1.家庭用殺虫剤の変遷
2.害虫の知識
3.家庭用殺虫剤と法律の関係
4.家庭用殺虫剤の安全性について
5.家庭用殺虫剤の正しい使い方
6.終わりに
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用途による殺虫剤の分類
・家庭用殺虫剤
家庭内での害虫駆除(ハエ・蚊・ゴキブリ等)
・防疫用殺虫剤
プロの害虫駆除業者がビル等で使用
・木材用殺虫剤
シロアリ業者などプロの業者がシロアリ駆除などに使用
・農業用殺虫剤
農家が農作物につく害虫駆除に使用
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3
家庭用殺虫剤の起源
・古代からは「蚊帳」(奈良時代に中国から)、
「蚊遣火」
・古くから、タバコ等植物の中に殺虫活性を持つ
ものが知られており、その中で、約300年前
にセルビア原産シロバナムシヨケギク(除虫
菊)に殺虫活性があることが知られていた。
・除虫菊を乾燥させて「蚤取粉」など
で使用
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除虫菊は何時頃日本に来たか?
除虫菊は明治18年(1885年)日本に入ってくる
・上山英一郎氏がアメリカから種子を持ち帰り有田地
方で栽培。日本でも蚤取粉として使われだす
・明治23年に「棒状蚊取線香」が世界で初めて誕生
・明治35年に更に渦巻き型蚊取線香に改良
(渦巻き型線香の長さは約80cm)
日本の家庭用殺虫剤の始まり
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5
殺虫成分の変遷
・明治∼太平洋戦争(~1950年頃まで) →除虫菊の全盛
和歌山→瀬戸内各県→北海道まで普及
最盛期は昭和初期の1万トン収穫
蚊取線香製造会社が増加
・太平洋戦争後、メーカーも統合され、厳しい統制経済と物資不足
が除虫菊から食用食物の栽培へと変化した。
・戦後はGHQが持ち込んだDDTやBHC(有機塩素系殺虫剤)が
使用される。
・有機塩素系殺虫剤の安全性(長期残留性)が問題になる。
・現在は、合成ピレスロイドが主流である。
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(合成)ピレスロイドとは?
・除虫菊の殺虫有効成分:ピレトリンetc
・・・1900年代に入り、化学構造が明らかに
CH3
O
R1
H3C
O
H3C
菊酸部分
CH3
R2
O
アルコール部分
→ ピレトリンの化学構造をお手本にして化学的に合成
した化合物
アレスリン、プラレトリン、フラメトリン、トランスフルトリン、
メトフルトリン、フタルスリン、イミプロトリン
フェノトリン、レスメトリン、ペルメトリン
エンペントリン、プロフルトリン
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ピレスロイドの特徴
„
速効性
・ノックダウン効果に優れる
・フラッシング効果、忌避作用に優れるものがある
„
哺乳動物には極めて低毒性
・体内で速やかに分解し排泄される
„
自然界で分解が早い
・紫外線や土壌中の微生物等により速やかに分
解し残留しない
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目次
1.家庭用殺虫剤の変遷
2.害虫の知識
3.家庭用殺虫剤と法律の関係
4.家庭用殺虫剤の安全性について
5.家庭用殺虫剤のただしい使い方
6.終わりに
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昆虫とは?
・生物学上の分類
動物界、節足動物門、昆虫綱に属する生物
全世界の生物種の60%以上(約90万種)を占める
甲虫目(コガネムシの仲間、37万種)
双翅目(ハエ、蚊の仲間、10万種)
鱗翅目(蝶、蛾の仲間、12万種)
膜翅目(ハチ、アリの仲間、13万種)
その他30ほどのグループ(目)が含まれる
(例)双翅目→カ科→イエカ属→アカイエカ(種)
*ダニ、クモの仲間は同じく節足動物であるが近縁な別
のグループ。
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害虫とは? その区分は?
1.健康上(公衆衛生上)悪影響あり
吸血・咬む・刺す →伝染病の媒介
→ ハエ・蚊・ゴキブリ・ダニ等
衛生害虫
2.食品に害 →カツオブシムシ等
食品害虫
3.木材・建物に害 →シロアリ等
木材害虫
4.不快感を与える →アリ等
不快害虫
5.恐い、襲われそう →ムカデ・ハチ等
不快害虫
6.農作物に被害 →ウンカ等
農業害虫
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昆虫が媒介する主な病気
病原体
疾病名
媒介昆虫
原虫
マラリア
ハマダラカ
リューシュマニア
症
サシチョウバエ
51,134
12,000
ねむり病
ツエツエバエ
47,774
400
シャーガス病
サシガメ
14,470
217
デング熱
ヤブカ
18,561
50,000
日本脳炎
コガタアカイエカ
13,957
不明
2
不明
40,000
ウイルス
フィラリア オンコセルカ症
バンクロフト糸条
虫症
ブユ
イエカ、ヤブカ、
ハマダラカ
年間死亡者 年間感染者数
(x 1000)
863,000
243,000
418
出典:WHO統計資料、2002年、マラリアのみ2008年
ウエストナイル熱、チクングニヤ熱も蚊が媒介
ウエストナイル熱、チクングニヤ熱も蚊が媒介
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害虫の変遷
50年前
ハエ・蚊
ノミ・トコジラミ
20年前
ハエ・蚊
ゴキブリ
現在
蚊・ゴキブリ
ダニ・アリ
トコジラミ
???
・環境の向上(水洗トイレ、下水道、アスファルト道路)
・住宅構造の変化
・ゴミの収集
・アミ戸の普及
・大掃除の減少
・子供の遊び (屋外→室内)
・温暖化、グローバル化
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目次
1.家庭用殺虫剤の変遷
2.害虫の知識
3.家庭用殺虫剤と法律の関係
4.家庭用殺虫剤の安全性について
5.家庭用殺虫剤の正しい使い方
6.終わりに
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害虫退治は必要なの?
複数の法律で、
「昆虫の駆除その他公衆衛生上講ずべき措置」を明記
①伝染病予防法(明治30年公布)
→「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に
関する法律」に(平成11年)
②食品衛生法
③ビル管理法
④学校保健法
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殺虫剤に適用される法律
„
„
„
„
„
„
„
„
„
薬事法
農薬取締法
化審法(化学物質の審査および製造等の規制
に関する法律)
有害物質を含有する家庭用品の規制に関する
法律
毒物及び劇物取締法
電気用品保安法
高圧ガス保安法
消防法
その他
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殺虫剤と法規制の関係
衛生害虫
食品害虫
不快害虫
木材害虫・
衣料害虫
ハエ・蚊・ゴキブリ・ノ 薬事法の医薬
ミ・トコジラミ・シラミ・屋 品/医薬部外品
内塵性ダニ
ゾウムシ・粉ダニ等 食品衛生法
厚生労働省
アリ・クモ・ハチ・
化審法
ムカデ゙等
シロアリ・キクイムシ等 化審法
イガ・カツオブシムシ等
経済産業省
農業用害虫 ウンカ・カメムシ・コナガ
ハダニ等
農薬取締法
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厚生労働省
経済産業省
農林水産省
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家庭用殺虫剤の法律上の区分
分類
対象害虫
準拠法
医薬品
衛生害虫(ハエ、蚊、ゴキブリ、ノミ、トコジラミ、シ
ラミ、ダニ)
薬事法
医薬部外品
衛生害虫(ハエ、蚊、ゴキブリ、ノミ、トコジラミ、シ
ラミ、ダニ)
薬事法
食品害虫駆除剤
貯殻害虫(ゾウムシ、粉ダニ)
食品衛生法
一般雑貨品
不快害虫
(アリ、ハチ、クモ、ムカデ等)
化審法
衣料防虫剤
衣料害虫(イガ等)
化審法
その他
木材害虫
(シロアリ、キクイムシ等)
化審法
動物用医薬品
犬ノミ、猫ダニ
薬事法
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担当省庁
厚生労働省
経済産業省
農林水産省
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医薬品と医薬部外品は何が違う?
„
医薬品
・人体等に直接的に影響を及ぼすもの
人・動物の疾病の診断、治療、予防に使用され、身体の
構造または機能に影響を及ぼすもの(薬)
・薬局・薬店しか販売できない(薬剤師が居る所)
・殺虫剤では燻煙剤等一部が例外的に医薬品扱い
„
医薬部外品
・人体等に間接的に影響を及ぼすもの(作用が緩和なもの)
・効能/効果を謳っている商品 (薬用歯磨等)
・人/動物の保健のためにするネズミ、ハエ、蚊、ノミ等の
駆除 →家庭用殺虫剤
・スーパー・ホームセンター等で販売できる
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目次
1.家庭用殺虫剤の変遷
2.害虫の知識
3.家庭用殺虫剤と法律の関係
4.家庭用殺虫剤の安全性について
5.家庭用殺虫剤の正しい使い方
6.終わりに
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殺虫剤の選択毒性
Q:殺虫剤はヒトには安全なのですか?
1.化学物質のもつ選択毒性
2.昆虫とヒト・動物の体の構造の違い
①体内への吸収速度の違い
②分解酵素の働きの違い(分解速度の差)
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殺虫剤に要求される安全性試験
„
„
„
„
„
„
„
„
急性毒性試験
亜急性・慢性毒性試験
生殖に及ぼす影響試験
刺激性試験(眼、皮膚)
感作性試験(アレルギー試験)
遺伝毒性試験
体内への蓄積性
一般薬理試験 他
他にも多数の安全性試験が要求され、
殺虫剤は安全性が確認されている物質
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ガンの原因の考え方の相違
50
43.5
40
工業生産物
医薬品
放射線・紫外線
30
1
2
4
7
10
30
アルコール
20
食品添加物
10
職業
1
農薬
0
4
性生活・出産
9
普通の食べ物
10
11.5
ウイルス
24
おこげ
20
大気汚染・
公害
タバコ
30
主婦
35
3
3
1
1
ガン疫学者
出典:「暮らしの手帖」1990年4・5月号
40
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化学物質の急性(経口)毒性
物質
LD50 (mg/kg)
含有するもの・用途
ボツリヌストキシン(A)
0.0000011∼0.001
ボツリヌス菌
ダイオキシン(2,3,7,8TCDD)
0.0006∼0.002
産業副産物
テトロドトキシン
0.01
フグ他
ニコチン
1∼7
タバコ
カフェイン
200
茶・コーヒー等
塩化ナトリウム
3,000∼3,500
食塩
エタノール
5,000∼14,000
酒類
メトフルトリン(ピレスロイド) >2,000
*メトフルトリン以外のデータはWikipediaより抜粋
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目次
1.家庭用殺虫剤の変遷
2.害虫の知識
3.家庭用殺虫剤と法律の関係
4.家庭用殺虫剤の安全性について
5.家庭用殺虫剤の使い方
6.終わりに
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家庭用殺虫剤の移り変わり
明治20年頃
明治23年
大正末
昭和初期
昭和10年代
昭和20台後半
昭和30年頃
昭和38年
昭和40年頃
昭和53年
平成12年
平成20年
蚤取粉
蚊取線香
殺虫液
毒餌剤(ホウ酸ダンゴ)
オルソ剤(ウジ殺し)
エアゾール
燻煙剤
蚊取りマット
液体式電気かとり(リキッド)
燻煙剤新タイプ
電池式(ファンタイプ)
ワンプッシュ型エアゾール
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殺虫剤の種類と使い方(1)
剤型
特徴
使用場所と注意点
蚊取線香
1巻で8∼10時間
風上に置くと効果的
窓を開けている時
屋外向き
*火災に注意(800℃)
蚊取りマット
リキッド
煙が出ない
火を使わない
電源(コンセント)が必要
窓を締め切ってる時
火災が不安な場所
*幼児に注意(150℃位)
*スイッチ切り忘れに注意
ファン式殺虫剤
移動式(電源が不要)
電池が必要
熱がでない
複数の部屋で共用する時
野外作業の時
*水・衝撃に注意
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殺虫剤の種類と使い方(2)
剤型
特徴
使用場所と注意点
エアゾール
(ハエ・蚊用)
速効性・簡便
5∼10秒の噴霧で十分
熱がでない
どこでも使える
急ぐときに便利
*廃棄はガス抜きしてから
*火気に注意
エアゾール
(ゴキブリ用)
エアゾール
(ダニ用)
速効性・簡便
残留塗布も可能
家具の裏等狭い隙間から
追い出す
どこでも使える
確実な効果
噴霧と畳への注入の両用
床への表面塗布
畳への注入
*同上
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*同上
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殺虫剤の種類と使い方(3)
剤型
特徴
使用場所と注意点
燻煙剤
(煙タイプ)
(水タイプ)
部屋のすみずみまで行き渡り効
果が高い
(ゴキブリ、ダニ向き)
使用中は部屋の外へ
2時間後位に入室可
居室
広い空間
全量噴射型
エアゾール
燻煙剤と同じなるも、火災誤認
はない
やや拡散範囲が狭い
操作は簡単
居室
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*火災と間違えられない
よう、また火災に注意
*家財の暴露に注意
*観葉植物・観賞魚に
注意
*火気に注意
*家財の暴露に注意
*観葉植物・観賞魚に
注意
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殺虫剤の種類と使い方(4)
剤型
特徴
使用場所と注意点
ベイト剤
(ゴキブリ用)
(アリ用)
待ち伏せ型
死骸を見ずにすむ
薬剤が飛散しない
流しの下
ゴキブリの通りそうな隅
アリ用はアリの通り道
*設置場所を工夫
*誤飲・誤食に注意
粉剤
長期効果の持続
屋外、床下
畳の下
*風での飛散に注意
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殺虫剤の種類と使い方(5)
剤型
特徴
使用場所と注意点
樹脂製剤
電源・電池不要
熱が出ない
ベランダ、窓の外など
*効力は周囲の環境に強
く影響を受ける
*一定期間後に交換必要
一晩程度効果が持続
エアゾール
(蚊用・ワンプッ 電源・電池不要
熱が出ない
シュ型)
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寝室など
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緊急の場合は?
(財)日本中毒情報センター
(大阪)072−727−2499
(筑波)029−852−9999
化学物質・タバコ・医薬品・家庭用品等による
急性中毒に関する対処
(異物・慢性中毒・動物による咬傷は対象外)
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目次
1.家庭用殺虫剤の変遷
2.害虫の知識
3.家庭用殺虫剤と法律の関係
4.家庭用殺虫剤の安全性について
5.家庭用殺虫剤の正しい使い方
6.終わりに
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蚊取り製品の進化
自然蒸散蚊取り
自然蒸散蚊取り
無加熱、無動力
無加熱、無動力
利便性の追求
利便性の追求
低温化
低温化
省エネルギー
省エネルギー
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エアゾールの廃棄に関する業界の取り組み
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ご清聴有り難うございました
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