15 先端光医用技術と将来

光システム工学
15 先端光医用技術と将来
15.1 先端医用技術
今後発展が期待される医療技術は
などが想定されている.図 15.1 は画像診断の高機能化の
例、図 15.2 は診断と治療の一体化の例である.
μ-TAS の要素部品を基板上に集積することにより,
(1) 小型・低価格
(2) 分析時間の低減
(1) 診断技術(1)
(3) 環境保全(試料や試薬の量が極小)
・画像診断の高機能化
などが期待できる.μ-TAS は老齢化社会をむかえ肥大化す
る各種医療検査や環境保全に対応しようとしている.
このような分析システムでは,極微量の液を扱う.し
かし,1mm 以下の断面の流路では,流路の壁と流体の間
に作用する粘性の影響が大きく,流れは層流になる.こ
のため,試液(サンプル液)と試薬がなかなか混じり合
図 15.1 磁気共鳴画像(MRI、白色)に光CTによる
図 15.2 診断と治療の一体化
脳機能の分布図(黄~赤色)を重ねたもの
15.2 オンチップ医療検査装置(μ-TAS)
・オンチップ医療検査装置→15.2
NaOH
with colloid
電子 IC (LSI)はマイクロマシン技術と結合して機械 IC
・バイオチップ技術の細胞工学への応用→15.3
(MEMS)へ,そして化学 IC(μ-TAS:マイクロ化学分析チ
・診断と治療の一体化
ップ)へと進化している.
μ-TAS は従来のフローインジェクション分析システム
(2) 治療技術
を基板上に集積化したもので,試料や試薬の流入口,流
・機能代行
出口,混合器,バルブ,ポンプなどが作製された基板上
・再生医療
の微小流路を用いる.また,反応結果は,電気化学,質
・医療情報ネットワークの構築
量分析,蛍光などの方法で分析する.
BTB
(a) Flow velocity: 67 µm/s
(b) Wing top velocity: 530 µm/s
図 15.3 光ミキサーによる微小流体の混合
わない(拡散でしか混合しない).したがって,化学反応
を促進するため,微小流体に適した対流効果を利用した
混合器(ミキサー)の開発が必要とされている.その一
つに,光圧を利用した光ミキサーがある(図 15.3)(2).
なお、μ-TAS の例を図 15.4 に示す。
15.4
生理・代謝機能の可視化
・赤外分光→細胞内部可視化
・人工視覚
・ラマン分光→タンパク質のダイナミックス(5)
・テラヘルツ波生体イメージング
15.5
図 15.4 光ミキサーによる微小流体の混合
脳機能の可視化(6)
・ドラッグデリバリー(実用)
・眼底イメージング
・fMRI,脳波,PET
・ナノ絆創膏
・近赤外光 OCT, OT
15.3 バイオチップ技術の細胞工学への応用
15.6
治療・機能代行(7)
・光ピンセットによる細胞融合(3)
・レーザー治療(実用)
・オンチップ細胞電気泳動チップ(4)
・インプラント機器(実用)
15.7
再生医療(7)
ペースメーカー,人工内耳,歯根,関節
文献
・人工心臓(実用)
(1) アカデミック・ロードマップ,応用物理学会,2010
(2) 浮田他,電気学会論文誌 E, 127, 1, pp.25-30, 2007
(3) 佐藤,稲場‘レーザー研究,20, 11, 1992.
(4) 一木隆範:応用物理,80,128,2011.
(5) 藤田、河田:応用物理,78,1118,2009.
(6) 脳機能の光計測特集号:レーザー研究,30, 11, 2002.
(7) 先端医療と応用物理特集号:応用物理,80,2,2011.
図 15.5 オンチップ細胞電気泳動チップ
図 15.6 人工心臓の例
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