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平成17年度 第12期 神戸協同病院公認 呼吸療法講座 : CE宮本のトピックスレポート
第5節ポイント
講義中に感じた疑問はおざなりにせず、よく見て聴いて理解しましょう。
バックナンバーをご希望の方はご連絡下さい。書面による質問も受け付けます(無記名OK)。庶務課横の鍵付きの臨床工学科ボックスへ!
1, 人工呼吸器の換気モード
人工呼吸器は、日々進歩しており、詳細な設定には、より複雑に煩雑化している。換気モードとは必要条件の組み合わせの
名称と訳している人もいる。そのためか、基本的なモード以外にも、メーカーの新たな換気方式の開発に伴い、その機種特有の
換気システムに付けられたモード名も存在するようになり、開発者や説明する人の考え方でも呼び方が多少異なり、換気様式も
何もかも「モード」と付き、さらに理解しにくいものとなっている。
2, 人工呼吸の目的
より有効なガス交換
…
適正換気の維持、肺におけるガス交換能の改善
呼吸仕事量の軽減
…
呼吸筋の休息
循環系の負担減少
…
患者管理の容易化
呼吸不全の予防
…
予防的適応
3, 人工呼吸管理の目標
換気時の陽圧は出来るだけ低く
…
30cmH2O未満、低TV
生理的範囲の換気設定
…
年齢・性別・体格・基礎疾患、を考慮
可能な限り自発呼吸を温存してアシストする …
PSV、(S)IMV、NPPV、など
高濃度酸素を避ける
…
最高でも50∼60%未満で管理
合併症の予防
…
4, 陽圧呼吸による問題点
圧障害(Barotrauma)
陽圧による圧障害(圧損傷)は、気腫状変化や気胸になることをいう。
これは、高い気道内圧・不均等換気・エアー・トラッピングにより発生。
人工呼吸管理自体により惹起される肺傷害(VILI:Ventilator-Induced
-Lung Injury)は、換気中内圧による圧損傷(Barotrauma)、高容量
換気による容積損傷(Volutrauma)、低容量換気による無気肺損傷
(Atelectrauma)、サイトカインによる生物学的損傷(Biotrauma)がある。
圧損傷(Barotrauma)は、VILIとして最もよく知られている。圧損傷とは、
肺胞から空気が漏れた状態で、縦隔気腫、皮下気腫、気胸、などに代表される。
圧損傷の原因として、最高気道内圧、平均気道内圧、PEEP、などのどの圧力が重要であるのかは、未だ明確ではな
い。気道内圧よりも、肺胞内圧に胸腔内圧を加えた経肺胞圧(Transalveolar Pressure)が重要である事が明らかに成
ってきている。気道内圧の絶対値自体が圧損傷に関与しないと云う報告も認められる。
容積損傷(Volutrauma)は、人工呼吸自体により肺水腫が生じる事が明らかに成ってきている。大きい一回換気量で、
人工呼吸を行うとARDS類似の肺水腫を生じる。一回換気量を抑えた状態で、気道内圧を上昇させても肺水腫は生
じないとの報告が出されている。
静脈還流量の減少
右心拡張→左心側コンプライアンス低下→肺血管抵抗上昇→心拍出量減少→血圧低下
心拍出量低下→末梢のうっ血→頭蓋内圧亢進・肝うっ血
心拍出量低下(→血圧低下)→肝血流減少→肝機能低下
心拍出量低下(→血圧低下)→腎血流減少→腎機能低下
肺血流減少、肺胞血流減少、ガス交換不良、PaO2低下・PaCO2上昇
PvO2低下→PaO2低下
シャント血流増加→PaO2低下
など、静脈還流量の低下により、生体に様々な問題を引き起こす。
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A
第5節ポイント
B
不均等換気
仰位での人工呼吸では、背部(重力)と横隔膜側(腹部臓器の圧迫)
が換気されにくい。流入しにくいガスは、流入しやすい部分に過剰換気
として流入される。この状態が長期間におよぶと、流入しにくい部分(図のC)
では、無気肺に陥りやすくなり、流入しやすい部分(図のA)では、気腫
状肺(肺胞構築が大きな腔胞なる)に変化しやすくなる。
結果として、ガス交換の障害につながる。
多くの肺胞の中で、陽圧換気で容易に開くものと、より高い気道内圧・より長い吸気時間が
必要なものが混在し、気道内圧と吸気時間が不適当な場合は、換気が不十分な肺胞が
できる可能性がある。陽圧換気だけでは肺を改善する事は不可能に近く、全身管理が重要となる。
ファイティング(fighting)
患者の呼吸と人工呼吸器の補助や強制換気が合わないこと。
文字通り患者が人工呼吸器と戦っている状態で、自発呼吸があるか、または、発生している事がわかる。
人工呼吸管理中に自発呼吸と人工呼吸リズムの不一致などで正常に換気できないような状態を言い、患者さんには苦
痛を与え、治療には抵抗を与える。
自発吸気中には人工呼吸器は呼気相となり、換気不足、気道内圧の異常な上昇、ストレスの増大、が発生する。
換気不全からは、炭酸ガス貯留・低酸素。気道内圧上昇からは、気管壁損傷・気胸・頭蓋内圧亢進。ストレスからは、
高血圧・頻脈・不整脈などが発生する。
現 象
要 因
人工呼吸器・回路の異常
人工呼吸器の故障による、、ガス供給の不足などによる、閉鎖・屈曲、呼気弁の
不良
人工呼吸器設定の不適切
換気モードの不適切、吸・呼気時間の不適切、トリガレベルの不適切、吸気流速、
1回換気量の不適切
気道・気管チューブの異常
咳嗽反射の亢進、不適切なチューブ位置、カフの不良、分泌物の貯留、分泌物
の貯留による狭窄・閉塞
換気需要の増大
代謝の亢進、熱発、痙攣、酸素化能低下、炭酸ガス排出能の低下
呼吸仕事量の増加
気道抵抗の増加、コンプライアンスの低下
患者の心理向上
疼痛や苦痛の増大、不安や恐怖の増大
チューブの位置や気道内の分泌物が原因のこともあり、適切な鎮静やケアが重要だが、原因の追及とともに人工呼吸
器の設定を再考することも必要である。
ハード面では、人工呼吸器の問題(動作不良、回路、気管チューブ、送気ガス温度、など)
ソフト面では、人工呼吸器の問題(設定)、患者側の問題(病態の変化、鎮静、など)があげられる。
ファイティング時のチェックポイント
(1) 呼吸器は正しく作動しているか?
(2) 気道の閉塞はないか?
(3) 低酸素血症、高炭酸ガス血症は?
(4) 意識レベルは?
(5) 分泌物の貯留はないか?
(6) 肺は硬くないか?
(7) 最後に麻薬、鎮静剤を投与したのはいつか?
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第5節ポイント
C
エアー・トラッピング(Auto-PEEP)
喘息や末梢気道に分泌物が貯留している場合には、肺胞
にガスは流入するが、流出しにくい現象がおこる。
エアー・トラッピングが発生すると、末梢の肺胞は気腫状変
化を起こし、正常肺が減少し換気面積の減少を招来する。
特に、高圧での陽圧換気でおこりやすい。
エアー・トラッピングが発生すると、ガスが流入しにくく、流出
しにくいという悪循環を引き起こす事となる。呼吸仕事量の増加と肺胞内圧上昇をきたす。
auto-PEEPの測定法
呼気終末にインターバルを設定し、吸気弁、呼気弁を閉鎖し、上昇してくる気道内圧がauto-PEEPである。
5, 人工呼吸器のタイプ
吸気相から呼気相への転換相による規定因子の違い
従圧式と従量式とタイムサイクルの分類は、図のフロー曲線①∼②で決定される。
『①∼②(吸気相)を何で規定するか』
圧サイクル(pressure cycle)
…
②に達する圧力を規定する。
容量サイクル(volume cycle)
…
②までに送り込む容量を規定する。
時間サイクル(time cycle)
…
②までにかかる時間を規定する。
吸気相開始の規定因子による違い
吸気相の開始が、あらかじめ設定された時間によって規定されるもの …
CMV
吸気相の開始が、吸気努力のトリガーによって規定されるもの
Assist-Control、AMV
…
呼気相の規定因子による違い
呼気相で気道を大気圧にまで開放する
…
呼気相で気道を大気圧にまで開放せず陽圧を残す …
CPPV、CPAP
IPPV、他
圧力の規定因子による違い
胸郭を外部からの陰圧により引っ張る …
胸郭外陰圧式人工呼吸器(全身チェンバ、胸郭チェンバ、気密ジャケット)
胸郭を内部からの陽圧で押し広げる …
気道内陽圧式人工呼吸器
送気デバイスによる違い
人工気道を用いた方法
…
TPPV : Trachial Postive Pressure Ventilation
人工気道を用いない方法
…
NPPV : Non-invasive Positive Pressure Ventilation
6, 送気方法の規定因子による分類
従圧式 : pressure cycle
プレッシャータイプ…圧力のみを規定する。
最高気道内圧を設定し、その圧に達するまでガスを送り込み、設定圧に達したら呼気弁を
開いて呼気を開始するという方法。
設定圧に達したら呼気に転じるような仕組みのため、肺コンプライアンスに依存し、吸気時間がバラバラで換気量も
保証できない。回路に多少のリークがあっても換気は保障される。
圧規定式(定圧式) : pressure control
プレッシャーコントロール…圧力と吸気時間を規定する。
最高気道内圧をできるだけ低く抑え、換気量も確保する。という、
陽圧式人工呼吸器のデメリットをカバーする事が可能な換気方式。
吸気時に設定した陽圧をかける点ではPSV(後述)と同様であるが、
吸気時間も設定するという点でPSVと異なる。
一気に設定圧までガスを送り込み、吸気時間を設けて吸気時間
内はその圧力を維持する。
コンプライアンスの異なる肺胞でも、過膨張させず均等にガスを送り込み、肺胞の不均等換気を是正する。
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第5節ポイント
D
従量式 : volume cycle
ボリュームタイプ…換気量を規定する。
送気する容量を設定し、その量に達するまでガスを送り込み、設定量に達したら呼気弁を開いて呼気を開始する
という方法。
肺コンプライアンスに依存せず、確実に設定量を送り込もうとする。回路にリークがあると換気は保障されない。
時間式 : time cycle
タイムサイクル…換気量と吸気時間を規定する。
吸気流量、吸気時間を設定し、設定吸気時間に達すると呼気弁を開いて呼気を開始する。
肺コンプライアンスに依存せず、確実に設定量を送り込もうとする。回路にリークがあると換気は保障されない。
7, 人工呼吸器のモード (代表的なモード)
調節呼吸 (CMV : Controlled Mechanical Ventilation)
換気の条件は全て人工呼吸器に委ねる。自発呼吸が完全に消失した(させ
た)状態で行われる人工呼吸モード(自発呼吸があっても器械は無視する)。
一定間隔で、強制換気が行われる。
器械的人工呼吸の基本となる。
原則として、吸気をトリガーさせない。
IPPV
Intermittent Positive Pressure Ventilation
CPPV Continuous Positive Pressure Ventilation
IPPV + PEEP(Positive End-Expiratory Pressure)
…
間歇的陽圧換気
…
持続的陽圧換気
…
間歇的陽圧換気 + 呼気終末陽圧
部分的補助呼吸(調節的補助呼吸) AMV : Assist Mechanical Ventilation
自発呼吸があることが前提条件。
トリガー機能により自発呼吸を感知させ、自発呼吸に応じて換気を実行する。自発呼吸はあるが、換気量
が十分でない場合に毎回自発呼吸に同期して設定条件で換気を補助する人工呼吸モード。
A/C : Assist-Control
全ての自発呼吸を感知させ、強制換気を実行する(Assist)。自発呼吸を感知しない場合には、設定された条件で
強制換気を実行する(Control)。
Assistでは、設定換気回数以上に吸気努力に対して同期して強制換気が行われた場合に過換気に注意する。
また自発呼吸全てに強制換気が行われるため、PSVはかけることができない。
「Control」と「Assist」は切り替えて行うのではなく、トリガー感度を調節する事で自動的に切り替わる。
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第5節ポイント
E
(S)IMV : (Synchronized) Intermittent Mandatory Ventilation
自発呼吸が十分でない場合に、何回かに1回、定期的に設定条件で強制
換気を行う人工呼吸モード。
無呼吸となっても、設定IMV回数は最低強制換気を行い補償するモード。
自発呼吸数が多い患者さんには、換気させすぎてCO2が低下する危険性
がある。
低炭酸ガス血症になると、脳血流や冠血流が低下するため、充分な注意
が必要となる。
自発呼吸数が多い場合には、S-IMVやPSVが適している。
S-IMVでは、自発呼吸をトリガーさせるため、不定期に強制換気が行われる。
自発呼吸の吸気努力をトリガー(感知)して、吸気に同期して強制換気を行うIMVを、S-IMV。
Weaningに多用され、同時にPEEPやPSVをかける事も多い。
(E)MMV : (Extended) Mandatory Minute Ventilation
自発呼吸量と人工呼吸の強制換気量を合計した総分時間気量を設定し、自発呼吸による換気量が十分でない
場合に強制換気が増加して補い分時換気量を常に一定に保つ人工呼吸モード。
自発呼吸量だけで設定した分時換気量を超えた場合でも自由に自発呼吸を行えるようにしたMMVが、拡大強制
分時換気(EMMV)。
補助呼吸
PSV : Pressure Support Ventilation
吸気が楽に吸い込めるように手助けする。
吸気時には気道内圧が低下しがちであるが、自発呼吸の吸気努力をトリ
ガー(感知)して、毎呼吸に設定した圧で吸気時間中送気し、自発吸気を
補助するモード。
PSVでは量は一切設定せず、換気回数(f)もI:E比も不要。他のモードと大
きく違う点は、息を吸う量、吸う回数、吸う時間、吐く時間、その全てが
現在の患者さんの状態次第で決定される。
PCVのように、強制的に肺を膨らます
ほどの圧をかけるのではなく、あくまで
も自発呼吸にそって、後押しする。
吸気の間、低圧をかけて吸息がしや
すいように手助けする。
吸気がはじまると気道内圧が下がり、
すかさず、下がった圧力を打ち消す、
または、設定した圧になるまでガスを
送り込む。これで吸気がしやすくなり、患者さんはもっと息を吸う事ができるようになる。
自発呼吸のない、呼吸がいつ止まるかわからない、また、自発呼吸がかなり弱い (検知できない)などには不向き。
PSVはPCVと同様に、息を吸う力や、肺のコンプライアンスによって、換気量が変化する。あまりにも換気量が少な
いようなら、サポート圧を上げたり、S-IMVに切り替えて、ある程度の換気量をキープするなどの方法も検討する。
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第5節ポイント
CPAP : Continuous Positive Airway Pressure
完全な自発呼吸の状態で、PEEPをかけたモード。
換気としての補助は行なわないが、呼気を大気圧まで吐ききらないようにし、肺胞の虚脱を予防。
PEEPは、人工呼吸の呼気終末に陽圧をかける事で、CPAPは、ある一定の陽圧が自発吸気相、呼気相のいずれ
にもかかっている状態をいう。
自発換気量は十分あるが、酸素化が不十分な場合に使用する。
NPPV : Non-invasive Positive Pressure Ventilation
気管内挿管チューブや、気管切開カニューレを介さず、鼻マスクやフルフェイスマスクを用い、自然気道で行う換
気方法。
NPPVは、従来の呼吸モードではPSV
に相当する類似した様式で、PSVは自
発呼吸に同期して陽圧換気を加え吸
気を補助する。
PSVは吸気時のみ発動するが、NPPV
はEPAPを維持するため吸気時以外
でも定常流が流れ、PEEPを発生させ
る(PSV + CPAP)。
自発呼吸では陰圧を発生させ換気を行う(図:薄紫)。
陽圧換気により換気補助を行う(図:水色)。
差し引きした圧力が、実際の気道内圧(図:赤)。
人工換気(水色)によって、気道内圧の陰圧部分が減少する(紫 → 赤)。
その分、吸気努力が減少し、呼吸仕事量を軽減する。
NPPVでは、EPAP(呼気圧)とIPAP(吸気圧)の圧力差で換気量を決定する。
上図で、IPAPを上昇させる事で換気量が増量する事を表している。
IPAP(IPAPとEPEPの圧格差)は『換気量の調節』。EPAPは『PEEPレベル』。
EPAPの発生に利用されている定常流は、
① IPAPとの差により換気の促進・増大
② PEEPとしての肺胞虚脱防止・酸素化向上
③ マスク死腔に関わる問題の回避
④ マスク内のCO2排出・再呼吸防止
⑤ 非吸気時のCO2洗い出し効率の向上、 の役割を持っている。
人工換気補助を圧力で制御している点ではPCVの要素を持ち、定常流で管理している点では、フロー・バイ要
素も持ち合わせている。
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F
第5節ポイント
NPPVのメリットとデメリット
NPPVのメリット
NPPVのデメリット
気管挿管操作に伴う危険の回避
気管内分泌物吸引困難
迅速な陽圧換気開始
気道内圧の制限
コミュニケーション
誤嚥の危険性、胃膨満の危険
経口摂取
マスクの不快・違和感
呼吸器関連肺炎の減少
マスクの合併症
沈静の必要量の減少
油断
ADLアップ
NPPV合併症
軽症な合併症
マスク関連
不快感
フィッティングの確認、ヒモの調整、別のマスクに交換
顔面皮膚の紅斑
留めヒモを緩める、人工皮膚の適応エアリーク
閉所恐怖症
小さいサイズのマスク、鎮静
鼻柱の潰瘍
留めヒモを緩める、人工皮膚、別のマスクに交換
アクネ様皮疹
一時的なステロイド薬・抗生物質
圧力またはフロー関連
鼻づまり
ステロイド薬・抗ヒスタミン薬などの点鼻薬
鼻痛、耳痛
受容不可能な場合は減圧
鼻・口の乾燥
加湿器併用、リーク防止
目への刺激
マスク装着状態の確認、留めヒモの調整
腹部膨満感
消化管ガス排除剤、受入れ不可→圧を下げる、不安の軽減
エアリーク
口を閉じる指導、チンストラップやテープィングを試みる、口鼻マスクの使用、圧を下げる
重大な合併症
誤嚥性肺炎
慎重な患者選択
血圧低下
圧を下げる
気胸
可能なら人工呼吸中止、困難なら圧の調節、適応があれば胸腔ドレナージ
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G
第5節ポイント
8, 換気モードまとめ
人工呼吸の分類
人工呼吸
CMV
調節呼吸
陽圧人工呼吸
陰圧人工呼吸
(俗に云う:人工呼吸)
(俗に云う:鉄の肺)
AMV
調節的補助呼
吸
IPPV
CPPV
Assist
補助呼吸
Assist-Control
(S)IMV
(E)MMV
(NPPV)
全身型チェンバー
胸郭型チェンバー
PSV
VSV
CPAP
(NPPV)
人工呼吸換気特性の分類
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H
第5節ポイント
TPPV
tracheostomized positive pressure ventilation
I
気管切開下気道内陽圧換気
気管内チューブをデバイスとして人工呼吸を行う方法。
NPPV
non-invasive positive pressure ventilation
非侵襲的陽圧換気
生体内に気管チューブを挿入する事無く(非侵襲的)人工呼吸を行う方法。
NETPV
negative extra-thoracic pressure ventilation
胸郭外陰圧式換気
全身チェンバ、胸郭チェンバ、気密ジャケット、などを用いて密閉し、外部から陰圧を用いて換気を行う。鉄の肺に代
表される。
IPPV
intermitent positive pressure ventilation
間歇的陽圧換気
気道入口部に陽圧を負荷し強制的に肺胞内送気し、強制吸気の合間には負荷していた陽圧を大気圧に開放する。
CPPV
continuous positive pressure ventilation
持続陽圧換気
気道入口部に陽圧を負荷し強制的に肺胞内送気し、強制吸気の合間には負荷していた陽圧を大気圧に開放せ
ず、設定した陽圧を残す。
IPPB
intermitent positive pressure breathing
間歇的陽圧呼吸
IPPVとは別に捉える。間欠的陽圧呼吸法(IPPB)。吸入法として扱われる。間欠的陽圧吸入装置を用い、患者の
呼吸に調子を合わせて吸気時に圧を加えて、酸素やアレベール等の薬剤を肺の深部まで吸入させる方法として
利用される。
CMV
controled mechanical ventilation
機械的調節換気
自発呼吸が無い、非常に弱い、呼吸パターンが悪い時に適応となる。人工呼吸器が全面的に換気を維持する方法。
AMV
assisted mechanical ventilation
調節的補助換気
自発呼吸はあるが、吸気力が弱く充分な換気が得られない場合にその不足分を吸気に合わせて補う方法。
IMV
intermitent mandatory ventilation
間歇的強制換気
自発呼吸を生かしながら設定した換気量を一定時間ごとに設定回数だけ強制的に送気する。
SIMV
synchronized intermitent mandatory ventilation
同期式間歇的強制換気
自発吸気に同期してIMVを行う事で、IMVによるファイティングの誘発を抑える事ができる。
MMV
mandatory minute-volume ventilation
強制分時換気
自発呼吸量と強制換気量の合計分時換気量を設定し、自発呼吸が予測より少ない場合強制換気が増え設定分
時換気量を維持する。
EMMV
extended mandatory minute-volume ventilation
拡張強制分時換気
MMVで自発呼吸が設定した分時換気量以上になっても自由に追加分の呼吸が出来る。
PSV
pressure support ventilation
圧支持換気
吸気努力にトリガーして設定された一定の陽圧を負荷し吸気の補助を行う。
PEEP
positive end-expiratory pressure
呼気終末陽圧
肺胞の虚脱、FRCの増加、酸素化の改善を目的として呼気終末に陽圧が残ったままの状態とする。
CPAP
continuous positive airway pressure
持続気道陽圧
自発呼吸の状態で気道に常時陽圧(PEEP)をかけた状態。
APRV
airway pressure release ventilation
気道圧開放換気
CPAP中の呼吸補助として用いる。BIPAP同様に二相性のPEEPにより換気を行う。CPAPレベルより低いレベルに一
時的に下げる事で機能的残気量が低下し、呼気が呼出され換気の促進を図る。低圧相の時間が短く(1∼1.5秒)
周期的に高いPEEPから開放する。
BIPAP
biphasic positive airway pressure
双気道陽圧交換換気
二相性のPEEP圧力差により換気を行う。
EIP
end -inspiratory pause(plateau)
吸気終末休止
肺内のガス分布向上、死腔の減少、炭酸ガス排出促進、不均等換気是正を目的として吸気相の終わりに陽圧をかけ
たまま休止する。EIPは、生理的でなく鎮静が必要。また、EIPでは、PCVほどの効果はなく、むしろ肺胞過伸展、過膨張
が助長される。
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第5節ポイント
PCV
pressure control ventilation
圧規定換気
従来の従圧式とは異なり、気道内圧が設定圧に達しても、設定された吸気時間内は規定圧を維持する。早い吸気
流速で設定圧まで上昇させ、設定時間内はその圧力を維持する。低い気道内圧で換気でき、吸気ガスの不均等
分布を是正。PSVとPCVは酷似しているが、PSVは患者の吸気努力に従って吸気時間が決まる(flow-cycled)で、
PCVは設定した時間で吸気が終わる(time-cycled)。
PRVC
pressure regulated volume control
圧補正従量式
設定された換気量になるように圧を調節する方式で、換気量が保証された PCV。圧も容量も規定した換気方式で
すから、従圧式か従量式かといった概念がもう通用しない。
IRV
inverse ratio ventiration
吸気呼気比率逆転換気
自発呼吸では吸呼気比が1:1.3∼1.5、人工呼吸では1:2が一般である。逆に吸気を長く、呼気を短くする事で吸
気ガスが均等に分布し、呼気にPEEP様の効果が得られる。調節換気で、FiO2やPEEPをかけてもPaO2が上昇しな
い場合に用いられる。
DLV
differential lung ventilation
左右肺分離(独立)換気
片側限局の換気を行う。専用の気管チューブが必要。
ILV
independent lung ventilation
左右肺独立換気
片側限局の換気を行う。専用の気管チューブが必要。
HFJV
high frequency jet ventilation
高頻度ジェット換気
100∼200回/分程度の回数で換気。ノズルより間歇的にジェット流を噴出しジェット流が発生している間が吸気、
ジェット流の無い間が呼気となる。エアートラッピィングを起こしやすく、気道内圧の調節・モニタが困難で加湿にも工
夫が必要で、受動的に呼気を行わせる。器機は専用の人工呼吸器。
HFV
high frequency ventilation
高頻度換気
通常換気量の4倍以上の高換気を行い、気道内圧を上げる事無くCO2排泄する。駆動方法と換気回数により分類
される。
HFCWC
high frequency chest wall compression
高頻度胸壁振動換気
胸壁周囲に巻いたカフなどを振動させる事で胸郭外より加えた振動を利用して換気を行う。基本的に挿管せず人
工換気が可能。
HFFI
high frequency flow interruppter
高頻度フロー・インターラプタ
高圧の気流を間歇的に送り出す事で吸気を作り出す。HFJVに近いが受動的呼気・能動的呼気のいずれも行える。
HFO
high frequency oscillation
高頻度振動換気
リニアモータの駆動で発生した振動を加える。200∼50Hz(3000回/分)の周波数帯域(新生児では10∼
15Hz(600∼900回/分))。吸気で送気されたガス量と同等のガス量が呼気で引き出されるためエアートラッピィン
グの危険がなく、気道内圧の調節・モニタが簡単で加湿も容易に行える。
HFPPV
high frequency positive pressure ventilation
高頻度陽圧換気
150回/分程度の回数で換気。器機は従来型の人工呼吸器と差がない。
VSV
volume support ventilation
量支持換気
一定の換気量を設定するとその値が達成されるように吸気量の信号をフィードバックさせ1呼吸毎にサポート圧が自
動制御される。
VCV
volume control ventilation
量規定換気
PAV
一回換気量が規定されています。VCVでは ボリュームをゆっくり入れたとしても,健康な肺胞のみに気体が流入し
やすく、過膨張になりやすいのです。VCVでは初めから肺の中に圧がかかっていようとも関係なく設定換気量を押し
込みます。このために肺胞の過伸展が起きてしまいます。柔らかな状態の良い肺胞ほど過伸展の度合いは大きい
のです。
proportional assist ventilation
比例補助換気
呼吸筋の活動により発生する圧力を捕らえ、患者のデマンドに応じて呼吸筋の活動を軽減するように気道内圧を制
御し、一定の割合で呼吸補助する。
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J