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LD SEMINAR
セミナー推進室
「内助の功」と年金
茅島 伸年
<年金分割ショック>
夫婦参加型の和やかな雰囲気の中では離婚の二文字は禁句に等しく、離婚を前提とした話題は場違い
で、冗談は別として極力避けることにしている。したがって、
「年金分割」関連の年金改正についても、
「夫からの自立を密かに考えている妻には有利、それに気がつかず妻をないがしろにしてきた夫は要注
意、関係の修復を急ごう」にとどめている。
しかしながら、巷ではこの年金改正が結構話題になっているようだ。そこで、
「夫の年金」が一人だけ
のものでなく、場合によっては妻にも分けなければいけない「夫婦の年金」となる「年金分割」の意義
について、あえて取り上げてみることにした。
<定年後離婚、妻の年金はどうなるの?>
改正前の制度では、離婚した専業主婦の年金は65歳から支給される「老齢基礎年金」のみである。も
っとも、基礎年金でさえ1986年の改正で第3号被保険者制度ができ、夫の厚生年金の一部が妻名義に振
り替えられたことで、初めて専業主婦の年金権が確立し認められたものだ。
したがって、それまで任意加入しなかった主婦は離婚後の生活に不安が残るのが実情で、せめて65歳
からの「振替加算」の上乗せ支給を待ったほうが得策となる。基礎年金に振替加算を上乗せした年金は
受給開始すれば夫との生・死別の如何を問わず終身受け取ることができるが、65歳前に離婚すると振替
加算は受け取ることはできない。
現実は、
厚生年金を分割した相当額を慰謝料としてまとめて請求する、
ということになるのだろうが、どうしても女性に不利なケースが多いのが実態だ。
<年金分割の意義>
今回の年金改正では、急増する熟年離婚と年金問題(2007 年4月からの「離婚時の厚生年金の分割」
)
にスポットがあてられ、このため離婚を助長するようなイメージで受けとめられる向きもある。
制度内容の詳細は割愛するが、注目すべきは 2008 年4月から制度導入される「第3号被保険者期間に
ついての厚生年金の分割」に大きな意義があることを指摘したい。具体的には「第2号被保険者が負担
した保険料は、その被扶養者たる第3号被保険者が共同で負担したものであることを基本認識とする」
ことが厚生年金保険法に明記されたことだ。
つまり、専業主婦の「内助の功」を法的に明確にし、女性の年金権を一段向上させたものであり、究
極の課題である「年金の個人単位化」のさきがけとして評価できるものである。
家事もしない気ままな妻はどうするのか、とあれこれ悩むより、
「夫婦の年金」に関する考え方が大き
く変わってきたことの意義をわきまえ、家事を共同で行う等ずっと仲良く暮らしていけるセカンドライ
フのあり方をこの機会にあらためて考えていくのが賢明のようだ。
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LifeDesign REPORT
2004.11