ベクトルと行列 1 ベクトル ベクトル ・・・ 複数の要素をひとまとめとして表現・計算する手段 ・ベクトルの表記 ベクトル a = (a1 , a 2 ) ・・・ 2つの成分 成分 a1 , a 2 をひとまとめにし a と表記 ※1 通常,ベクトルは太字/ゴシック( a )で表記. ※2 成分の個数=次元.成分が2つのベクトル=2次元のベクトル ・ベクトルの性質 a = (a1 , a 2 ) , b = (b1 , b2 ) , c = (c1 , c 2 ) , p = ( p1 , p 2 ) ①定数倍(スカラー倍) m a = m (a1 , a 2 ) = (m a1 , m a 2 ) (m:定数) ②加減 a + b = (a1 , a 2 ) + (b1 , b2 ) = (a1 + b1 , a 2 + b2 ) a − b = (a1 , a 2 ) − (b1 , b2 ) = (a1 − b1 , a 2 − b2 ) ③内積 p ⋅ a = ( p1 , p 2 ) ⋅ (a1 , a 2 ) = p1 a1 + p 2 a 2 (加法) (減法) 3 次元のベクトルの場合も同様に, (a1 , a 2 , a 3 ) ⋅ ( p1 , p 2 , p 3 ) = a1 p1 + a 2 p 2 + a 3 p3 ④一次結合 零ベクトルでない(2次元の)ベクトル a, b が平行でない場合, (2次元の) 零ベクトル どんなベクトル c であっても,定数 m,n を適当にとることで, c = ma + nb と表現可能. ※「零ベクトル」=成分がすべて 0 のベクトル. ⑤方程式 (例) b + x = a → x = a − b ・ ベクトルの図示(ベクトルの性質①,②,④,⑤を図示) ・ 原点からベクトルで表記される座標までの有向線分(矢印)を利用 第2成分 c=ma+nb c2 (ベクトル b を n 倍) nb b2 a+b n倍 x b m倍 a2 a b1 a1 ma (ベクトル a を m 倍) c1 1 第1成分 練習問題1 1.次のベクトルについて,以下の問い(1),(2)に答えよ. a=(1,2), b=(2,3), c=(3,-2), d=(0,1,1), e=(1,0,0) (1) 次の①∼⑤を計算せよ.(ベクトルの成分を求めよ.) ① 2a ② a+b ③ d+e ④ a・b ⑤ b・cc (④,⑤は内積) a b e b (2) 次の方程式①∼③を解け(ベクトル x の成分を求めよ). ① b+x=a ② 2x ③ 3x x=a+b x‐2d d=e e 2.次の3つのベクトル a = (3,1), b = (1,2), p = (5, 3) に関して,以下の問い(1)∼(3)に答えよ. (1) 次の①∼⑤を計算せよ. ① a+b ② a−b ③ 2a a ④ 2a a−b b ⑤ a・p p (内積) b (2) ベクトル a, b を図示せよ.さらに,ベクトル a+b b, 2a a も同一平面上に書き込め. (3) ベクトル c = (8,6)に関して,c = m a + n b を満たす定数 m,n を求めよ. 3.ある家計の 1 日の消費ベクトル(米,魚,果物)が x = (2, 3, 3)であるとする.価格ベ クトルが p = (50, 80, 100)であるとき,この家計の 1 週間分の支出を求めよ. 4.ある企業は,次の表にあるような投入・産出関係で X 財,Y 財を生産している. このとき,以下の問い(1)∼(3)に答えよ. (1) X 財を x 単位,Y 財を y 単位生産するのに必要な総投入量のベクトル((資本,労働) の形式で書かれたベクトル)を求めよ. (2) この企業の総資本,総労働量が(18,18)であるとき,効率的な(=資本,労働が過不 足なく使われる)生産量 x,y を求めよ. (3) この企業の総資本,総労働量が(24,18)に変化したとき,効率的な生産量 x,y はどうな るか. 2 2 行列 行列・・・表などの要素をまとめて表現.ベクトル・行列を線形変換するもの. ・行列の表記 §a b· ¸¸ ・・・ 表の要素 a,b,c,d をひとまとめで表現 行列 A = ¨¨ ©c d¹ ※1 もとの表が次のような場合 POINT: m行n列の表 ↓ 要素m×nの行列 (m=n の場合→正方行列) 1 行目→ 2 行目→ ↑1 列目 ↑2 列目 ・特殊な行列 § 1 0· ¸¸ , 単位行列 I = ¨¨ © 0 1¹ § 0 0· ¸¸ 零行列 O = ¨¨ © 0 0¹ ・行列の性質 §a A = ¨¨ 11 © a 21 ① 定数倍 ② 加法 a12 · §b ¸¸ , B = ¨¨ 11 a 22 ¹ © b21 §a kA = k ¨¨ 11 © a 21 §a A + B = ¨¨ 11 © a 21 a12 · § k a11 ¸=¨ a 22 ¸¹ ¨© k a 21 §a A x = ¨¨ 11 © a 21 a12 · § b11 ¸¨ a 22 ¸¹ ¨© b21 ※一般に,AB≠BA k a12 · ¸ k a 22 ¸¹ b12 · § a11 + b11 ¸=¨ b22 ¸¹ ¨© a 21 + b21 a12 · § b11 ¸+¨ a 22 ¸¹ ¨© b21 ③ ベクトルの一次変換 §a ④ 乗法 A B = ¨¨ 11 © a 21 b12 · §x · ¸¸ , x = ¨¨ 1 ¸¸ b22 ¹ © x2 ¹ (k:定数) a12 + b12 · ¸ a 22 + b22 ¸¹ a12 · § x1 · § a11 x1 + a12 x 2 · ¸¨ ¸ = ¨ ¸ a 22 ¸¹ ¨© x 2 ¸¹ ¨© a 21 x1 + a 22 x 2 ¸¹ b12 · § a11b11 + a12 b21 ¸=¨ b22 ¸¹ ¨© a 21b11 + a 22 b21 a11b12 + a12 b22 · ¸ a 21b12 + a 22 b22 ¸¹ (積の順序が異なると結果が異なる) −1 ・逆行列 ・・・ 行列 A に対して, A A = I を満たす行列 A −1 §a b· 1 § d − b· ¸¸ の場合, A −1 = ¨¨ ¸ 2×2 の行列 A = ¨¨ A © − c a ¸¹ ©c d¹ ※1 ※2 ※3 |A|・・・行列 A の行列式.上記の行列(2×2 行列)の場合,|A|=ad‐bc 行列式が 0(|A|=0)の場合,逆行列は存在しない. ベクトルの方程式 y = Ax を x について解く: (両辺に前から A −1 を乗じる) A −1 y = A −1 Ax 3 → A −1 y = x 練習問題2 1.次の行列,ベクトルについて,以下の問い(1)∼(3)に答えよ. § 2 1· § −1 3 · § 1 0· § 2· ¸¸ , I = ¨¨ ¸¸ , x = ¨¨ ¸¸ ¸¸ , B = ¨¨ A = ¨¨ © 2 − 6¹ © 0 1¹ © 2¹ © 1 2¹ (1) 次の①∼⑤を計算せよ. ② A+B ① 2A (2) 次の①∼⑤を求めよ. ③ AI ④ IA ⑤ Ix ② |B| ③ A −1 ④ A −1 A ⑤ A −1 x ① |A| (3) ベクトルに関する方程式 x = A y を満たす2次元のベクトル y を求めよ. 2.次の行列について,以下の問い(1),(2)に答えよ. § 1 1 0· § −1 −1 1 · ¨ ¸ ¨ ¸ − 1 1 § 2 1· § · 1 ¸¸ , A −1 = ¨¨ ¸¸ , B = ¨ 1 0 1 ¸ , B −1 = − ¨ − 1 1 − 1¸ A = ¨¨ 2¨ © 1 1¹ ©−1 2 ¹ ¨ 0 1 1¸ ¸ © ¹ © 1 − 1 − 1¹ (1) 次のベクトルに関する方程式①∼③について,それぞれを満たすベクトル x を求めよ. §10 · §10 · § a· ① ¨¨ ¸¸ = Ax ② ¨¨ ¸¸ = Ax ③ ¨¨ ¸¸ = Ax (a,b:実数) ©10 ¹ ©5¹ ©b¹ (2) 次のベクトルに関する方程式①,②について,それぞれを満たすベクトル x を求めよ. § 4· ¨ ¸ ① ¨ 4¸ = B x ¨ 4¸ © ¹ § a· ¨ ¸ ② ¨b¸ = B x ¨c¸ © ¹ (a, b, c:実数) 3.ある企業は,次の表にあるような投入・産出関係で X 財,Y 財を生産している. このとき,以下の問い(1)∼(3)に答えよ. (1) 生産量 1 単位あたりの投入量の関係を行列A(投入係数行列)で表わすことにする. このとき,行列Aの要素を答えよ.(A=( ) の形式で表わせ.) (2) 行列Aの逆行列を求めよ. (3) この企業にある総資本,総労働量のベクトル(K, L)が以下の①∼③のとき,それぞれ について,効率的な生産量(x,y)を求めよ. ①(K, L) = (18, 18) ②(K,L) = (24,18) ③(K,L) = (18,24) 4 経済数学 (補論)サラスの法則とクラーメルの公式 § a11 ¨ 3×3 の行列 A = ¨ a 21 ¨a © 31 a12 a 22 a32 a13 · ¸ a 23 ¸ に関する性質 a33 ¸¹ ○ サラスの法則 行列式|A|は,次のように求めることができる. A = a11 a 22 a33 + a13 a 21 a32 + a12 a 23 a31 (サラスの定理) − a13 a 22 a31 − a11 a 23 a32 − a12 a 21 a33 (図解) § a11 ¨ ¨ a21 ¨a © 31 a12 a22 a32 a13 · ¸ a23 ¸ a33 ¸¹ 太線( )の要素の積を 加え,破線( )の要素 の積を差し引く ○ クラーメルの公式 ベクトルに関する方程式 A x = b,つまり, § a11 ¨ ¨ a 21 ¨a © 31 a12 a 22 a32 a13 ·§ x1 · § b1 · ¸¨ ¸ ¨ ¸ a 23 ¸¨ x 2 ¸ = ¨ b2 ¸ a33 ¸¹¨© x3 ¸¹ ¨© b3 ¸¹ を x について解くと,次のようになる. b1 1 x1 = × b2 A b3 a12 a13 a 22 a32 a 23 a33 a11 1 × a 21 , x2 = A a31 b1 a13 b2 b3 a 23 a33 a11 1 × a 21 , x3 = A a31 a12 b1 a 22 a32 b2 b3 (クラーメルの公式) ※ これらの方法はコンピュータが一般的でないときには重要な手法であったが,現在,実 用性は低い.(一部の公務員試験では,現在でも出題されることがある.) 以上 5
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