と畜場に搬入されたクロ

演 題 番 号:
演 題 名:と畜場に搬入された牛クローディン 16 欠損症の症例比較
発表者氏名:○仲宗根 智彦,江藤 知江,山﨑 陽子,赤木 雅彦,辻 正康,山根 伸久,田口 和史,
瀬尾 豊記
発表者所属:福山市食肉衛検
1.はじめに:牛クローディン 16 欠損症(CL16 欠損症)は黒毛和種に見られる腎病変を伴う遺伝性の疾患であり,近
年,農家において若齢で発症せず飼育された後,と畜場で発見される事例が報告されている。今回,当検査所でも本症
例 5 症例に遭遇し,血液生化学的および病理学的に比較検討する機会を得たので,その概要を報告する。
2.材料および方法: 2004 年 10 月から 2005 年 3 月末までに福山市食肉センターに搬入され,生体検査で本症を疑っ
た黒毛和種牛 5 頭について生体所見,血液生化学所見および病理学的所見を比較した。また糸球体数の比較のため対照
群 4 頭を加え,計 9 頭の腎臓について病理学的検索を行った。遺伝子型検査は家畜改良事業団に依頼した。
3.結果:
(1)生体所見:共通の生体所見は発育不良と削痩で,沈うつを呈するものも確認された。
(2)血液生化学所
見: BUN90∼306mg/dl であり,全て尿毒症により全部廃棄した。
(3)腎臓の肉眼所見:共通所見として両側性に萎縮・
硬化し,腎表面は顆粒状で凹凸不整を示していた。色調は全体的に茶褐色から暗褐色で,褪色して淡褐色を示すものも
認められた。また割面においては皮質がひ薄化し,皮質から髄質にかけて白色帯状紋理を多数認め, BUN の高い症例に
その傾向が強かった。
(4)腎臓の組織所見:病変の程度には違いがあるものの,全体的に尿細管の不規則な配列,糸球
体数の著しい減少,間質の炎症細胞の浸潤と結合織の増生については共通していた。肉眼所見で線維化が顕著な症例ほ
ど,糸球体数も減少し尿細管上皮の偏平化や管腔の拡張が広範囲に見られ,間質結合織は著しく増生していた。糸球体
数の比較は弱拡大 1 視野あたり対照群の中央値 48.8 個に比べ,本症例の中央値は 7.4 個であり有意に低下していた(p
<0.05)。
4.考察:本症例の所見は過去に報告のあった CL16 欠損症の所見とほぼ一致し,遺伝子型検査でも 5 症例全て CL16 欠
損症―欠損 1 と診断された。本症例において,BUN に関しては糸球体数と負の相関および組織所見における間質結合織
の増生と正の相関が認められ,さらに肉眼所見における傾向から,ネフロンの消失および線維化による置換により BUN
が上昇することが示唆された。