締固め特性に着目した ため池堤体土の強度設定

【59】
全地連「技術e-フォーラム2008」高知
締固め特性に着目した ため池堤体土の強度設定
株式会社ウエスコ
田平
健二
○森下
智貴
堀
1. はじめに
100
90
通過重量百分率 (%)
本稿は、
農業用老朽ため池改修に伴う調査事例である。
ため池堤体土の強度特性について、かく乱試料を用いた
締固め試験結果と写真-1 に示す二重管式標準貫入試験
器(以下 SPT サンプラー)で求めた湿潤密度を用いて、
考察した。
コネクタ-ヘッド
シュ-
φ51
φ 35
俊男
560
70
60
50
40
30
20
盛土上層の粒度分布
10
三軸圧縮試験の供試体の粒度分布
0
0.001
スプリットバレル
75
80
0.010
0.100
1.000
粒 径 (mm)
10.000
100.000
175
図-1 粒度試験結果
50
610
150
810
(2)最大粒径制限による土質試験の試料の相違
真鍮製中空管
内径φ35, 外径φ38
土質試験は試料が礫などの粗粒分を含む場合について、
最大粒径が設定されており、最大粒径の相違により試験
100
に用いられる粒度特性が変化する可能性がある。
堤体土の締固め試験は、A-b 法で行った。その場合、
モールド径は 100mm であり、最大粒径は 20mm となる。
写真-1 SPT サンプラー
一方、三軸圧縮試験は、50mm のモールドを用いて行っ
2. 着目・留意点
た。その場合、最大粒径は 2mm となる。表-1 に各試験
(1)ため池堤体土の湿潤密度と締固め状況
のモールド径と最大粒径をまとめる。
堤防の土質定数の設定は、本来なら不かく乱試料を採
堤体土の粒度試験の結果を図-1 に示す。最大粒径は
取して把握するべきである。しかし、そのためには大掛
19mm であり、締固め試験は試料をそのまま使用できる
かりな装置が必要であり、経済面での制約もあることか
が、三軸圧縮試験を行う場合は、2mm ふるい通過試料に
ら一般的に困難である。そこで、堤体でボーリングによ
ついて供試体を作成する。すなわち、両試験については
るかく乱試料を採取し、原位置の湿潤密度で締固めた試
粒度特性が変化している。したがって、2mm ふるい通過
料について三軸圧縮試験を行うことにより土質強度を設
試料について締固め試験を行い、締固め特性の変化につ
定した。
いて考察する。
原位置の湿潤密度は、標準貫入試験を行う際に、体積
表-1
と重量が一定の真鍮製のスリーブを内部に装備した SPT
サンプラーを用いて測定した。また、かく乱試料につい
て締固め試験を行い、得られた湿潤密度と締固め状況の
関係を考察した。
各試験のモールド径と最大粒径
試験の種類
モールド径
最大粒径
締固め試験(A-b 法)
100mm
20mm
三軸圧縮試験
50mm
2mm
gr
Co
H=13.6m
盛土(上層)
gr
Co
盛土(下層)
gr
gr
板
55.82
gr
図-2
堤体断面図
基礎地盤線
図
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3. 材料特性
(1)試料採取
は、堤長13.6m のため池であり、盛土は、過去の改修で
1.86
嵩上げされている。堤体土は上層(嵩上げ部)と下層(旧
実施した試験結果について示す。
締固め試験用の試料は、φ86mm の鉛直ボーリングに
より採取した(深度は表層を除く GL-2.0~6.5m)
。
(2)土質特性
堤体土の自然含水比は、wn=13.2%であり、N 値は11
1.7
1.62
1.54
1.46
三軸試験試料の締固め曲線
ρdmax=1.626(g/cm3)
wopt=18.9%
~19である。土質は、φ2~70mm 程度の礫が混入し、や
や粘性を含んだ砂質地盤である。三軸試験を行う試料は
SPT試験
締固め85%
一般値
1.78
乾燥密度(g/cm3)
堤体部)の2層に分けられ、本稿では、盛土上層について
通常の締固め曲線
ρdmax=1.799(g/cm3)
wopt=14.8%
1.94
ため池堤体の断面図を図-2に示す。対象となるため池
1.38
2mm 以上の粒径をカットする。その際、細粒分含有率
1.3
0
(FC)は12%から23%へと増加する。
4. 結果と考察
4
8
図-3
12
16
含水比(%)
20
24
28
乾燥密度と締固め特性の関係
(1)密度測定結果
SPT サンプラーを用いた密度は、ρd=1.871(g/cm3)であ
カットすることにより、最大乾燥密度が低下した。その
った。SPT サンプラーで求めた乾燥密度は、上載荷重を
ため、三軸圧縮試験においては、過度の締固め状態にあ
考慮して補正することが提案されている1)。
り、その点においては定数を過小に評価している可能性
その結果、堤体土の密度条件は表-2の通りとなる。
表-2
がある。
各条件の密度特性
密度
補正前
補正後
湿潤密度(g/cm )
2.118
2.055
乾燥密度(g/cm3)
1.871
1.815
3
※含水条件は、wn=13.2%としている
(2)密度と締固め特性の関係
図-3に堤体土の締固め曲線を示す。試験の結果、最大
(4)三軸圧縮試験(CU 試験)
図-3に示す密度条件で供試体を作成し、三軸圧縮試験
を実施した。結果を表-3にまとめる。
①
SPT サンプラーによる湿潤密度測定値
②
Dc=85%で締固めた場合の湿潤密度
③
単位体積重量の一般値(γt=19kN/m3)
表-3
三軸圧縮試験結果
3
条件
乾燥密度は1.799g/cm 、最適含水比は14.8%であった SPT
サンプラーから得られた乾燥密度は、締固め曲線よりや
や高い値を示した。(2)式より得られる締固め度は、101%
となった。
締固め度 Dc=ρd/ρdmax×100(%)・・・(2)式
①SPT
②Dc85%
③一般値
c (kN/m )
13.2
12.9
35.1
2
全応力
有効応力
φ(°)
32.2
25.7
24.7
c’ (kN/m2)
6.2
10.2
19.6
φ’(°)
36.5
33.5
29.7
2mm ふるい通過試料についての締固め曲線を図3に示
す。最大乾燥密度は低下し、最適含水比は高くなった。
5. まとめ
これは、試料の細粒分が増加し、締固め特性が悪くなっ
(1)SPT サンプラーにより原位置の湿潤密度を測定した。
たためである。
締固め度は100%を越える結果となった。今後、RI 検
参考として、SPT サンプラーの結果に併せて、砂質土
2)
3
の一般値 である単位体積重量γ=19kN/m の場合、締固
め度 Dc=85%の場合の乾燥密度をプロットした。
層を併せて行うなどデータの精査に努める。
(2)室内試験において粒径制限により、
試験を行う試料の
性質が変化する可能性がある。土質定数の設定を行う
際には、試料の特性を把握し、検討する必要がある。
(3)最大粒径の違いによる締固め特性の変化
表-1で示したように、土質定数を得るために行う三軸
圧縮試験は最大粒径を2mm とした試料で行う。本調査地
においては、2mm 以上の礫はおよそ60%程度であり、礫
をカットすることにより土の強度が低下し、設計を行う
際に過大となる可能性がある。また、2mm 以上の粒径を
《引用・参考文献》
1) 奥山一典:密度による砂礫地盤の力学定数の推定シス
テム,岡山大学博士論文,2000.9.
2) 中日本高速道路株式会社編:設計要領第一集,pp.1-44,
2007.4