7−9 2004 年新潟県中越地震前の静穏化とb値低下 Seisimic

7−9 2004 年新潟県中越地震前の静穏化とb値低下
Seisimic Quiescence and b-value decrease preceding the 2004 Niigata-ken Chuuetsu
earthquake
防災科学技術研究所
National Research institute for Earth Science and Disaster Prevention
2004 年新潟県中越地震前の地震活動を気象庁カタログ(以下,JMA)
,及び防災科研の関東・東海観
測網カタログ(以下,NIED)に基づいて調査した。
第1図は,1990 年以降について,上から震央分布,長辺方向に投影した時系列分布,マグニチュー
ド分布図を示す。左列は JAM,右列は NIED である。JAM では,M1.0 近くまで,NIED では,M2.0 が
検知限界となる。右列中図で,発震に向けて震央が中央付近に集中していく様子が見られるが,JMA
ではこの傾向は明瞭でない。
第 2 図 は, マ グ ニ チ ュ ー ド し き い 値 を M1.0 か ら M2.0 ま で 0.2 ず つ 上 げ て い っ た 積 算 回 数 図
(declustering 済みデータによる)
。JAM では,一元化処理による 1998 年以降,M1.0 程度まで検知能力
が向上したことが分かる。本震の直前に注目すると,M1.0 から M1.6 あたりまで事前の静穏化を見る
ことができる。静穏化の程度は微弱で,統計的検定に耐えられるほどの有意性を主張することは難し
いが,複数のマグニチュードレンジに現れることから,ある程度の robustness は備わっていると考えら
れる。一方,右列の NIED からは,静穏化は全く検知されない。NIED で M2.0 以下を見ることは無理
ということになるが,逆に言えば,M2.0 以上において静穏化が見られないことは単なるサンプル数の
多寡によるばらつきの問題ではない,ということも示唆される。
第 3 図は,JAM に基づいた年毎のマグニチュード分布図。2004 年(本震の前日まで)になって,b
値が低下したことが明瞭である。これから,2004 年では,M1 級の地震が減少した割には,M2 級以上
の地震数が減らなかったことから,前述の静穏化にマグニチュード依存性のあったことが理解できる。
(松村正三)
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第 1 図 上から震央分布,長辺方向に投影した時系列分布,マグニチュード分布図。左列はJMAカタログ,右列はN
IEDカタログ。
Fig.1 Epicentral distribution (top), temporal seismic sequence projected along the long side of the seismogenic zone (middle),
and magnitude distribution (bottom). The left side figures are obtained from JMA catalogue, and the right ones from NIED
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第 2 図 マグニチュードしきい値を変えての地震回数積算図。データはデクラスタリング済み。
Fig.2 Cumulative earthquake frequency for each magnitude threshold. The clustered activities are removed.
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第 3 図 年毎のマグニチュード分布図。
Fig.3 Magnitude distributions for each year.
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