環境問題の変遷と環境分析 - MS-JSWE

福嶋 実
(大阪市立環境科学研究所)
第12回日本水環境学会シンポジウム
「化学物質分析の過去・現在・未来」(MS技術研究委員会)
お茶の水女子大学 、2009.09.14、13:30~
環境(公害)問題の変遷
・社会・経済情勢の側面
エネルギー革命、重化学工
業化
・公害・環境問題の側面
公害対策、省エネルギー、技
術革新
大量生産・大量消費・大量廃棄
産業高度化、
エネルギー
低成長・安定化、環境
消費拡大、
への負荷削減
余暇・レ
日常の生産・消費活動
ジャー
特定発生源、
高濃度排出
産業型公害
地球環境問題
都市型・生活型公害
・化学物質の側面
特定物質による環
境汚染の顕在化
・物質の種類数の増大
・汚染源の多様化
・潜在的汚染域の拡大
・問題視される
汚染レベルの
低下
・有害性(影響)認識の側面
短期、高用量曝露
・急性的障害
長期間低用量連続曝露
・慢性的障害
次世代への影響
・生殖、発生障害
・神経行動学的障害
生態系保全の必要性
・法整備の側面
公害対策
基本法お
よび関連
法整備
~1960
1970
個別的規制強化
・環境基準、排出基準値
・生産・使用制限(化審法)
1980
・負の遺産解消
環境基本法
・循環型社会
および関連
・総合管理
法整備
・環境基準、排出基準
値の見直し
1990
2000~
分析機器の変遷
2010
2000
1990
1980
1970
・内分泌かく乱化学物質
・PPCPs
・PFCs
LRGC-ECD、FPD
MRGC-ECD、FPD
HRGC-ECD、FPD
LRGC/LRMS
HRGC/LRMS
HRGC/HRMS
LC/MS/MS
(化審法改正)
(AFS条約)
(SAICM)
(POPs条約)
(WSSD,02)
(PCB処理特措法)
(ダイオキシン特措法)
(環境基本法)
(UNCED92)
(化審法)
(関連14法)
(公対法)
・PCB,有機塩素系農薬
・THMs
・VOCs
・PCDD/Fs
・有機スズ化合物
主要機器
・ゴルフ場農薬
主要テーマと分析技術上の課題
1.PCB、有機塩素系農薬(LRGC-ECD)


濃度レベルの減衰傾向・・・同定精度の確保(キャピラリーカラ
ムへ)
海産哺乳類の生物濃縮現象・・・脂質除去、PCBとp,p’-DDEの分
離
2.揮発性有機塩素化合物(LRGC-ECD)

ヘキサンの精製と代替法の開発
3.農薬

新規技術(固相抽出法、HR/LRMS)の導入
4.次世紀を見据えた新たな分析技術


HRGC/HRMS
LC/MS/MS
分析法
大阪市内河川・港湾域におけるPCB濃度の減衰傾向
300
表層水中のPCB濃度
250
濃度(ng/L)
200
A
150
A: 寝屋川水系 -●-
B: 港湾域 -▲-
C: 淀川水系 -○-
100
B
50
C
0
1970
1975
1980
1985
年
1990
1995
2000
2005
琵琶湖・淀川水系におけるHCHsの分布と
淀川下流域(毛馬橋)で観測した減衰傾向
2.00
琵琶湖
HCHs
0.15
回帰式からの予測濃度
C=0.16exp(-0.17t/365)+0.05exp(-0.23t/365)sin(t+102/365・2π)
0.10
HCHの分布(1975,6-8)
0.05
実測値
0
2.00
δ αα
)l g/(
0.1μg/L
γ β
HCH
0.15
回帰式からの予測濃度
C=0.12exp(-0.18t/365)+0.05exp(-0.29t/365)sin(t+93/365・2π)
0.10
0.05
大阪市内河川
濃 度
淀川
実測値
0
0.06
0.05
HCH
0.04
0.03
大阪湾
HCH
0.02
0.01
0
75
80
85
年
90
95
海産哺乳類(スジイルカ)
-生育にともなう蓄積濃度と量の変化
g/g(湿重)
分析法上の要点
脂皮中DDTs濃度
mg
年齢
DDTs体内蓄積総量濃度
年齢
● 未成熟個体・成熟雄、○ 妊娠雌、× 授乳雌
・ 脂質除去: フロリジルドライカラム法(逆相クロマ
トグラフィー)
[告示法付表3の備考1、JISK0093の付属書1]
・ PCBとp,p’-DDEの分離: シリカゲルの新規開発
[告示法付表3、JISK0093の“PCB分析用シリカゲ
ル”]
PCBのクロマトグラムとシリカゲルの調製手順
Na2SiO3 + 2HCl →H2SiO3 + 2NaCl
水ガラス + 塩酸
(ケイ酸ナトリウム)
反応
ゲル化
シリカハイドロゲル
水洗
乾燥
粉砕
分画試験へ
キャピラリーカラム分離の試み
VOCs-トリハロメタン等のGC-ECDクロマトグラムと
ヘッドスペース法の概要
VOCs-P&T-HRGC/LRMS法
54種のTICクロマトグラム
VOCsの分布-1977と1990年の比較
LRGC-FPDによる農薬類の分析
HRGC-FPDによる農薬類の分析
固相抽出-HRGC/LRMSによる農薬類の分析
淀川水系における農薬類の分布
農薬濃度の経時変動
木津川、1996.05-10
carbofuran
fenobucarb
1 .5 0
0 .2 0
0 .1 5
0 .1 0
0 .0 5
0 .0 0
1 .0 0
0 .5 0
0 .0 0
5
6
7
8
9
10
5
6
pretilachlor
9
10
9
10
9
10
9
10
9
10
9
10
2 .5 0
2 .0 0
1 .5 0
1 .0 0
0 .5 0
0 .0 0
0 .3 0
0 .2 0
0 .1 0
0 .0 0
5
Concentration g・l-1
8
iprobenfos
0 .4 0
6
7
8
9
10
5
6
thiobencarb
7
8
diazinon
2 .0 0
0 .5 0
0 .4 0
0 .3 0
0 .2 0
0 .1 0
0 .0 0
1 .5 0
1 .0 0
0 .5 0
0 .0 0
5
6
7
8
9
10
5
6
mefenacet
7
8
pyroquilon
6 .0 0
5 .0 0
4 .0 0
3 .0 0
2 .0 0
1 .0 0
0 .0 0
4 .0 0
2 .0 0
0 .0 0
5
6
7
8
9
10
5
6
molinate
有機リン農薬3種の河川水中濃度の
経年的推移
7
2 0 .0
1 .5 0
1 .0 0
1 5 .0
1 0 .0
0 .5 0
0 .0 0
5 .0
0 .0
6
7
8
8
isoprothiolane
2 .0 0
5
7
9
10
5
6
simetryne
7
8
flutolanil
2 .5 0
2 .0 0
1 .5 0
1 .0 0
0 .5 0
0 .0 0
2 .0 0
1 .5 0
1 .0 0
0 .5 0
0 .0 0
5
6
7
8
9
10
5
Month in 1996
6
7
8
21世紀を見据えた体制整備と分析法
1.水質公定分析法の見直し(1993)

HRGC/LRMS法、サロゲートの利用
 農薬: 固相抽出-HRGC/LRMS法
 VOC: P&T-HRGC/LRMS法
2.ダイオキシン類、環境ホルモン、
POPs・・・超微量分析


HRGC/HRMS-EI、-NCI
HR/LRMS-NCI
3.LC/MS/MSの環境分析への適用性の検
討
LC/MS/MSとの出会い
(M + H ) +
(M+H)+
(M+H)+
HPLC Analysis
F lo w In je c tio n A n a ly sis
N
N
S
O
Cu
O
S
N
<拡大図>
O
S
Zn
O
S
N
M W : 3 1 5 .9 3
MW: 314.93
(M+Na)+
(M+Na)+
(M + N a ) +
<HPLC> カラム: C4シリカ系充填剤 、移動相: A液(2mM酢酸アンモニウム水溶液)、B液(HPLC用アセトニトリル)
溶離条件: 0~10分⇒B液(20%)→(95%)、10~15分⇒B液(95%)→(100%)、流速: 0.5ml/分、カラム温度: 40°C、注入量: 20 l
<MS> マスレンジ(m/z): 100~400、イオン化法: Electrospray 陽イオン検出モード (ESI-Positive)、フラグメンター電圧: 50V
ネブライザー: N2(60psi)、ドライングガス: N2 (12l/分、350°C)、モニターイオン(m/z): 316(定量用)、318(確認用)、(カッパーピリ
チオンとしてモニターする。)
このからの環境分析は・・・
高感度、高選択性、自動化の落と
し穴

必要に応じ、基本に照らした操作の点検を


WSSD2020年目標への対応を
 “No data No market”の活用
増大する分析対象物質、拡大する
試料マトリックス
