土木学会第65回年次学術講演会(平成22年9月) Ⅰ-658 FPGA による構造システムの実時間地震応答シミュレーターの実装 野村総合研究所 正会員 ○間嶋 純一 1.はじめに 京都大学工学研究科 正会員 五十嵐 晃 3.FPGA 実時間ハイブリッド実験におけるシミュレータと FPGA は内部の論理回路を自由に設計することが し て 、 集 積 回 路 の 一 種 で あ る FPGA (Field 出来る高い柔軟性を持った集積回路である。FPGA Programmable Gate Array)を用いることを想定し、多 の内部構成を図2に示す。図のように、格子状に多 自由度系モデルを適用する場合に必要となる計算高 数個並んだ LE(Logic Element)と呼ばれる論理ブロ 速化を行うための論理回路設計及びその動作解析を ックとその間の接続を自在に変更することで、所望 行い、FPGA を用いた大規模モデルの実時間応答シ の論理回路を実現することができる。本研究では、 ミュレーションへの適用性に関する考察を行った。 加算器や乗算器等の演算器を HDL(ハードウェア記 2.実時間ハイブリッド実験 述言語:Hardware Description Language)により設計 実時間ハイブリッド実験手法は、対象構造物を実 した。FPGA には、LE 数が許す限り演算器を組み込 験部分と計算部分に分割し、実験部分の応答計測値 むことが可能であり、大規模な並列演算を行うこと をシミュレータによる計算部分の応答解析に実時間 が出来る。 で取り込み、次ステップにおける加振装置の動作を Logic Element 決定するプロセスにより実行される(図 1)。供試体 の応答計測値はオンラインでシミュレータに送られ、 これを入力値として計算部分の応答を実時間で求め Internal Wiring る必要がある。規定した計算時間刻み内に 1 ステッ プの動作を行うことでリアルタイム性が確保される が、応答計算に要する時間は、非線形性や自由度数 図2 FPGA の内部構成 4.回路の全体動作 等のモデルの規模や複雑度により変化するため、大 実時間応答シミュレーションは、数値演算を行う 自由度数モデルを適用する場合は、要求計算量の大 論理回路を構築するにより実現される.数値積分法 きな計算を高速化する必要がある。 に Operator Splitting 法を採用し、加算器・乗算器と中 計算部分の応答計算 m c,k A/D シミュレータ D/A 計測値 実験部分 M C,K 間データ保持用レジスタを回路で繋いだ構成となる。 回路の全体的な動作の状態遷移図を図3に示す。1 時刻ステップ内の計算の進行に応じて状態(state) 計算部分 制御信号 信号をカウントアップし、その値に応じた動作を指 定する回路とする。 実験部分の加振 state = 0 … … RESET … … End Overwrite Reset All Register state = 1 … … … Not End OV/WR CAL End Calculation Run Operation Overwrite (disp.,vel.,acc.) 図 1 ハイブリッド実験概念図(例) 図3 論理回路の状態遷移図 キーワード 連絡先 実時間シミュレーション,高速演算,大規模演算,論理回路,半導体素子 〒615-8540 京都市西京区京都大学桂 京都大学工学研究科社会基盤工学専攻 -1315- TEL075-383-3245 土木学会第65回年次学術講演会(平成22年9月) Ⅰ-658 5.論理回路の動作確認 4 number of used LE ModelSim を用いて行った結果と、汎用プログラミン グソフトである MATLAB により応答計算を行った 結果を比較したものを図4に示す。両者はほぼ完全 x 10 6 25 32bit 16bit limit of target FPGA 3 number of required clocks 設計した回路の動作確認を論理回路シミュレータ 2 1 に一致しており、想定した動作を行うことの出来る 0 0 2.5 number of used LE また、論理回路の FPGA ボード実機における動作 確認を行った結果、実機上でも正常に動作すること を確認した。実装対象 FPGA としては、Altera 社の DE2-70 ボード(写真 1)に搭載されている Cyclone Ⅱを使用した。 15 0.5 10 15 number of DOF x 10 -10 25 シミュレーション 30 写真1 8 6 4 2 実装対象ボード 0 0 6.FPGA の計算処理能力限界の検討 15 限界を検討した。取り扱いデータビット数として 32 ビット精度、16 ビット精度の場合を考え、対象モデ ルに非線形多自由度系モデルの場合、質量・減衰・ number of used LE FPGA をデバイス単体で使用した場合の処理能力 12.5 10 500 x 10 5 1000 1500 number of DOF 2000 5 10 15 number of DOF 20 10 5 7.5 5 2.5 0 剛性マトリクスが密行列である場合を想定した。単 純なモデルの場合、各マトリクスが式(1)のように帯 20 40 60 80 number of DOF x 10 4 4 3 2 1 0 0 500 1000 1500 number of DOF 2000 1500 32bit 16bit limit of target FPGA number of required clocks 15 20 time[sec] 40 15 5 32bit 16bit limit of target FPGA 10 10 20 30 number of DOF 0 0 20 number of required clocks 0 5 10 20 5 number of used LE displacement[cm] 0 0 25 1 12 -5 図4 5 40 1.5 5 10 図5 最短処理を行う場合(上:非線形,下:密行列) 5 -15 0 20 30 number of DOF 32bit 16bit limit of target FPGA 2 0 0 MATLAB circuit simulation 10 10 6 x 10 15 number of required clocks 回路が設計できたと言える。 20 100 120 1250 1000 750 500 250 0 20 40 60 80 number of DOF 100 120 図6 RS を行った場合(上:非線形,下:密行列) 行列となるのに対し、密行列である場合は全体の演 算量が飛躍的に増すこととなる。限界 LE 数としては、 現存するデバイスを参照し、544880 個を想定した。 なお、大自由度数における消費 LE 数の算出は、実際 加算器、乗算器をそれぞれ 100 個に限定した場合の 結果を示す。 7.まとめ に設計した回路情報を元に行った。最短時間で処理 を行う場合の調査結果を図5に示す。 0⎤ 0⎤ ⎡* * ⎡* ⎢* * % ⎥ ⎥ ⎢ * ⎥ ⎥ C, K = ⎢ M =⎢ % ⎥ ⎢ % % *⎥ ⎢ ⎥ ⎢ ⎥ ⎢ *⎦ * *⎦ ⎣0 ⎣0 ・多自由度系モデルの地震応答シミュレーション を高速に行うことが可能である論理回路を設計した。 ・FPGA の計算処理能力限界の検討を行い、限界 LE 数 544880 個で応答計算及び制御信号の出力を (1) 1kHz で行う場合、非線形多自由度モデルの場合 1600 自由度程度まで、密行列モデルの場合、100 自由度程 *部分は非ゼロ値が入っていることを表す. 度まで対応できることが分かった。 (RS 使用・16 ビ 最短で処理を行う場合、高速処理が可能である一方 ット精度) で消費 LE 数が多くなり、適応範囲が狭くなってしま う。そこで次にリソースの共有化(RS:Resource Sharing)を考え、演算器を繰り返し使用することで ・実時間シミュレータとして FPGA を用いること で、実時間ハイブリッド実験の適用範囲拡大の可能 性があることを示した。 消費 LE 数を節約し、適用範囲拡大を考えた。図6に -1316-
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