交通需要と経路選択の確率変動を考慮した確率的 交通ネットワーク均衡

土木学会論文集D Vol.62 No.4, 537-547, 2006. 11
交通需要と経路選択の確率変動を考慮した確率的
交通ネットワーク均衡モデル
中山 晶一朗 1・高山 純一 2
1
正会員 金沢大学大学院助教授 自然科学研究科社会基盤工学専攻 (〒920-1192 金沢市角間町)
E-mail: [email protected]
2
フェロー会員 金沢大学大学院教授 自然科学研究科社会基盤工学専攻 (同上)
E-mail: [email protected]
災害や事故が発生していない通常の交通状況下では,交通ネットワークの不確実性の主な原因として,交通需要や
個々人の経路選択が日々変動することが挙げられる.これらの交通需要及び経路選択を確率事象として捉え,本研究
では,交通需要が確率的に変動するとともに,経路選択が確率的に行われる場合の確率的ネットワーク均衡モデルを
構築する.本モデルでは,交通需要と経路選択の両方が確率的であるため,交通量及び旅行時間が確率的に変動す
る.この提案したモデルを利用,そして発展することにより,交通ネットワークの不確実性や旅行時間信頼性の評価とと
もに,交通量や旅行時間の確率的な性質の理論的な解明が可能となると期待できる.
Key Words: uncertain travel demand, stochastic route choice, stochastic network equilibrium
場合のモデルなどが提案されている 1),2),3).本研究では,
常に変動しており,より日常的と言える,利用者に関係す
る不確実性,つまり,交通需要や経路選択が確率変動す
るために生じる交通ネットワークの不確実性を取り扱う.利
用者の行動は内生的に決まるため,利用者に起因する不
確実性は,天候等の外生的な要因の場合に比べて取り扱
いが一段階難しくなる.
これまで利用者の行動に起因する不確実性を考慮した
交通ネットワークの均衡モデルはいくつか提案されている.
小林 4)は,合理的期待仮説 5),6)に基づいた交通ネットワー
ク均衡を提案している.この均衡では,道路利用者の期待
(認知)する旅行時間の確率分布と実際の旅行時間の確
率分布が一致すると仮定されている.小林のモデルでは,
均衡へ至るプロセス等も解明されており 7),また,ゲーム理
論との整合性も図られている.そして,道路利用者の期待
(認知)を陽に取り扱っており,行動論的基礎から精緻に
モデル化されていることが特長と言えよう.しかし,現段階
では,単純ネットワークへの適用に留まり,一般ネットワー
クへの適用までには至っていないようである.
確率的利用者均衡 8),9)はランダム効用理論に基づいた
利用者の経路選択を考慮した均衡モデルである.本来で
あれば,利用者の経路選択は確率的であり,その集積で
ある経路交通量も確率的となるはずである.しかしながら,
経路交通量は十分に大きいと仮定すると,大数の法則に
1. はじめに
これまで交通ネットワークに関する均衡モデルは,確定
的な交通量や旅行時間を取り扱うものが大半を占めてい
る.しかし,実際のネットワークの交通量や旅行時間は確
定的ではなく,不確実に変動することがほとんどであると
考えられる.したがって,交通ネットワークの信頼性や不確
実性を考慮した均衡モデルに関する研究も少なからず存
在している.
災害や事故が発生しているなど非日常時の交通状況と
そのような災害や事故が発生していない通常の交通状況
とでは,交通ネットワークの不確実性の性質は大きく異な
ると考えられる.本研究では,我々が日常的に遭遇する,
災害や事故等が発生していない通常の交通状況下での
交通ネットワークの交通量や旅行時間の不確実性を対象
とする.
ここで,通常時での交通ネットワークの交通量や旅行時
間が不確実になる原因を大きく 2 つに分類する.一つは,
経路選択や交通需要など利用者に起因するものであり,
もう一つは,天候など外生的な要因によりリンク容量やリン
クの自由走行時間が変化するなど(ハードウェアとしての)
ネットワークに起因するものである.ネットワーク自体が原
因となる場合の均衡モデルに関しては,リンク容量の確率
変動を考慮した均衡モデルや自由走行時間が変動する
537
土木学会論文集D Vol.62 No.4, 537-547, 2006. 11
より,経路交通量の変動係数は十分に小さくなり,その平
均値のみが生起するとみなすことができる.したがって,
確率的利用者均衡では,経路交通量の平均のみを確定
値として取り扱い,その確定的な経路交通量(の平均値)
に基づいて旅行時間を算出する.このように確率的利用
者均衡では,交通量を確率的には取り扱っておらず,配
分により求められる交通量も確定的なものとなっている.
Watling10)は,確率的利用者均衡を,離散選択モデルから
算出される経路選択確率の通りに確率的に経路選択が行
われるとした場合の均衡モデルに発展させている.したが
って,それは確率的な経路選択を考慮した確率的均衡モ
デルであり,旅行時間及び交通量ともに確率的になって
いる.ただし,Watling のモデルは,一つの OD ペアのみ
のネットワークでは解の一意性が保証されているが,それ
以外の一般的なネットワークでは,解の一意性が保証され
ない.そのため,Watling は解の範囲を解析的に導出して
いる.
著者ら 11)は,大規模ネットワークでは経路交通量がポア
ソン近似できることに着目し,Watling10)のモデルを発展さ
せた解が一意なモデルを提案している.
以上の研究では,確率的な経路選択を考慮した均衡モ
デルと言える.しかし,通常時のネットワークの不確実性の
重要な原因である,交通需要(OD 交通量)が確率的であ
ることが考慮されていない.Clark と Watling12)は交通需要
はポアソン分布に従うと仮定し,交通需要と経路選択の両
方が確率的な場合の均衡を扱っている.また,Watling13)
は,トリップを行わないという仮想経路をネットワークに導
入することにより,交通需要の確率変動を考慮したモデル
を発表している.Clark と Watling12)は交通需要がポアソン
分布に従うことを仮定しているが,ポアソン分布は平均と
分散が同一の値である特殊な分布であり,ポアソン分布を
用いると交通需要の設定の際,交通需要の平均と分散が
同じという制約を受けることになる.また,Watling13)は,トリ
ップを行わないという仮想経路を導入しているが,それは
交通需要が二項分布に従うことを意味している.二項分布
は分散は平均以下となるという制約を持つ.また,旅行時
間の分布の(テイラー展開の)二次近似を行っている.
交通需要や経路選択の確率性を考慮する場合,交通
量や旅行時間がどれほど変動するのかを知ることが目的
のことが多く,この場合,平均と分散が同じという制約は,
旅行時間や交通量の変動を現実ネットワークにあわせて
チューニングできない結果となり,信頼性評価等に用いる
ことが出来なくなるという問題を持つ.また,著者らの経験
では,現実ネットワークへの適用では,交通需要の分散は
その平均以上となる場合が多く,Watling13)のモデルを用
いることが出来ない場合も多いと考えられる.
本研究では,現実ネットワークに適用可能な確率分布
を仮定した交通需要及び経路選択の確率変動を同時に
考慮した確率ネットワーク均衡モデルを構築することを目
的とする.このようなモデルにより,交通ネットワークの旅行
時間の信頼性評価などが可能となると期待できる.また,
交通情報提供効果分析なども可能となろう.なぜならば,
交通情報は旅行時間などが不確実である場合に意味が
あるため,その評価のためには,旅行時間の不確実性の
定量的な取り扱いが不可欠であるためである.
2. 経路交通量
(1) 実効旅行時間と確率的経路選択
本研究では,経路選択はロジットモデルに従って,確
率的に変化すると仮定する.OD ペア i (= 1, 2,…, I ) の
各道路利用者が経路 j (= 1, 2,…, Ji ) を選択する確率
pij は以下の式の通りである.
pij =
(
exp − θ cij
Ji
(
)
∑ exp − θ cij′
j ′ =1
)
(1)
ここで, cij は次の段落で説明する旅行時間(実効旅行
時間)であり,θ は正のパラメータである.
本研究では,旅行時間は確率変動するため,利用者
の経路選択では,その変動(分散もしくは標準偏差)を
考慮したものとするのが自然である.不確実性が高い場
合,遅刻を避けるため,セイフティマージンをとり,出発
時刻を早めると考えられる.このようなセイフティマージン
を含んだ旅行時間が実効旅行時間である 14),15).本研究
では,このセイフティマージンは経路旅行時間の標準偏
差に比例すると仮定し,以下のような実効旅行時間 cij
を仮定する.
cij = mij + η sij
(2)
ここで,mij は OD ペア i の経路 j の(経路)旅行時間
の平均,sij は OD ペア i の経路 j の(経路)旅行時間
の標準偏差,η はセイフティマージン(あるいはリスク態
度)に関するパラメータである.
経路の旅行時間がある一つの確率分布型に従う場合
(例えば全ての経路の旅行時間が正規分布に従う場合),
遅刻する確率が一定値 ρ になるために必要なセイフテ
ィマージンが η sij とできる.旅行時間が従う確率分布
について,平均が 0 で分散が 1 の標準型の正規分布の
累積関数を FT (⋅) とする.その逆関数を用いることによっ
て,η を FT−1 (1 − ρ ) として求めることができる.本研究の
枠組みの中では,厳密には経路旅行時間の全てがある
一つの分布型のみに従っているとは限らず,必ずしも η
sij は遅刻確率が一定値となるためのセイフティマージン
538
土木学会論文集D Vol.62 No.4, 537-547, 2006. 11
となるとは限らない.よって,Hall14)と飯田・内田 15)が提案
したセイフティマージンとは必ずしも同一のものではない
ことに留意する必要がある.
本研究では,以下で,通常の旅行時間の代わりに実
効旅行時間を用いる.しかし,Hall14)と飯田・内田 15)の仮
定と異なり,本研究でのモデルの旅行時間の確率分布
は,一般に正規分布になるとは限らず,また,各リンクの
旅行時間は同一の確率分布に従うとも限らない(従わな
い場合がほとんどである).式 (2) で示した実効旅行時
間は,次章以降,通常の旅行時間の代わりに用いられる
重要な概念であるため,Hall14)や飯田・内田 15)で明らか
にされていない旅行時間が正規分布とならない場合の
(式 (2) の実効旅行時間の)意味について,ここに記載
する.チェビシェフの不等式から,Tij の分布形によらず,
Pr[|Tij − mij|≥η] ≤ sij2/η 2 が成立する.ただし,Pr[⋅] は確
率を算出する演算,Tij は OD ペア i の経路 j の旅行
時間の確率変数である.よって, Pr[Tij ≥ (mij + η sij)] =
Pr[Tij ≥ cij] ≤ 1/η 2 となる.したがって,式 (2) に示した実
効旅行時間 cij は遅刻確率(旅行時間がその cij より
大きくなる確率)が 1/η 2 もしくはそれ未満になるために
必要な時間(セイフティマージン+平均旅行時間)を意
味している.到着希望時刻(もしくは到着制約時刻)から
cij 分早い時刻に出発すると,遅刻する確率を 1/η 2 以
下にすることができる.Hall13)と飯田・内田 14)は,旅行時
間は正規分布と仮定することで,式 (2) は遅刻する確
率がある一定値となるために必要な時間となることを示し
た.一方,上で述べたチェビシェフの不等式の議論は,
旅行時間が従う分布形がどのようなものであっても,式
(2) は 遅刻す る確 率がある一 定 値もし くは そ れ未満
( Hall14) と飯田・内田 15) の場合は一定値のみとなってい
る)になるために必要な時間と解釈することが出来ること
を示している.このように実効旅行時間の概念を若干
(拡大)変更することによって,式 (2) は,旅行時間がど
のような分布であっても,式 (2) を平均旅行時間とセイ
フティマージンの和と解釈することが可能であり,時には
積分等が必要になる確率累積関数を用いることなく,実
効旅行時間を定義することができ,便利である.
項分布として与えられる.
f Xi ni (x i ) =
ni !
Ji
∏ xij !
Ji
∏ pij
xij
(3)
j =1
j =1
ここで,fXi⏐ni (xi) は OD ペア i の OD 交通量が ni の場合
の経路交通量の同時生起確率,Xi⏐ni は OD ペア i の
Ji 次元の経路交通量の確率変数ベクトルで,その要素
は Xij⏐ni (j = 1, 2,…, Ji) である.また,xi は OD ペア i
の Ji 次元の経路交通量の実現値のベクトルで,その要
素は xij (j = 1, 2,…, Ji) である.
ある一つの経路の経路交通量は,式 (3) の同時生起
確率の周辺確率として与えることが可能であり,以下の
通り,それは次式の二項分布 Bn(ni, pij) となる.
f X ij ni (x i ) = ∑ L∑ ∑ L∑ f X i ni (x i )
xi 1
=
xij −1 xij +1
xiJ i
(
ni !
x
pij ij 1 − pij
xij !(ni − xij )!
)
ni − xij
(4)
なお,上の式は,ある着目する経路が j の時の交通量
の確率分布である.同じ OD ペア内の経路 j 以外の経
路交通量の和は, ni から経路 j の交通量を引いたも
のであり,それも二項分布 Bn(ni, 1−pij) となる.式 (4)
では,経路交通量間の共分散を0と考えているのではな
く,経路 j のみに着目した場合の経路経路 j の交通
量の分布を見たものである.
二項分布は選択確率が小さい場合,ポアソン分布で
近似できることが知られている.交通ネットワークの規模
が大きい場合は OD 間の経路の数は大きくなるため,
(任意の)一つの経路の選択確率は小さくなり,経路交
通量にポアソン分布を適用することが可能となると考えら
れる 11).ポアソン分布については,独立なポアソン変数
の和はポアソン変数になるという再生性の性質を持つた
め,二項分布よりも取り扱いが容易である.
経路交通量がポアソン分布に従うと仮定できると,OD
ペア i の経路 j の(経路)交通量は平均が ni pij (≡ µij)
の以下の確率関数を持つポアソン分布 Po(µij) に従う.
(2) 条件付経路交通量
確率的利用者均衡 8),9)と異なり,本研究では,経路選
択確率 pi = (pi1,.., pij,.., piJi)T の確率の通りに道路利用
者の経路選択を確率的に行わせる.ここで,T は転置を
表し,Σj pij = 1 である.なお,確率的利用者均衡 8),9)では,
経路選択の確率に比例して,確定的に経路交通量が決
定されている.本節では,OD 交通量が与えられた場合
の経路交通量の確率分布について考察する.OD ペア
i の OD 交通量が ni として与えられた場合の(OD ペア
i の)経路交通量の(条件付)同時生起確率は以下の多
539
f Xˆ
ij
ni
(x ) = e
ij
− µij
µ ij xij
xij !
(5)
ここで, Xˆ ij n i は,OD ペア i の OD 交通量が ni として
与えられ,上記の近似を行った場合の OD ペア i の経
路 j の経路交通量の確率変数である.
多項分布の性質から,経路 j と経路 j' の交通量の
共分散は – ni pij pij' となる.しかし,上で述べたようにポ
アソン分布を仮定する場合,経路選択確率 pij 及び pij'
土木学会論文集D Vol.62 No.4, 537-547, 2006. 11
はポアソン分布に従うと述べた.ここで,上のように OD
交通量がガンマ分布に従う場合について考えよう.
OD ペア i の OD 交通量が以下の確率密度関数を持
つガンマ分布 Ga(αi, βi) に従うとする.なお,ガンマ分
布 Ga(αi, βi) の平均と分散は各々 αi βi, 及び αi βi2
である.
は小さいと仮定しているため,微小項の二乗は無視でき
るとし,経路交通量の共分散は 0 で近似できる.つまり,
ポアソン分布を仮定することは経路交通量の共分散は
考えないことを意味する.ただし,それは,リンク交通量
の共分散(相関)を考慮しないことを意味しているもので
はなく,配分の際には,リンク交通量の共分散(相関)は
考慮されなければならない.
上で述べたように,経路交通量をポアソン分布と仮定
した場合,経路交通量は独立と近似できるため,経路交
通量の同時生起確率は以下の通りとなる.
f Xˆ
Ji
i
(x i ) = ∏
n
i
j =1
e
− µ ij
µ ij xij
xij !
g Nˆ (ni ) =
ni
α i −1
(6)
ˆ n は経路交通量がポアソン分布に従う場合
ここで, X
i i
の OD ペア i の経路交通量の確率変数ベクトル(その
要素は上述の Xˆ ij n i )である.
以上では,経路選択確率が小さい場合について述べ
た.ポアソン分布は取り扱いが容易であり,可能な限り,
ポアソン分布の経路交通量を考えることが望ましい.こ
の時,確率的な均衡は最適化問題として定式化可能で
ある 11).しかし,ポアソン分布と近似できるのは,経路選
択確率が小さい場合のみである.後で詳述するが,経路
選択確率がそれほど小さくなく,平均交通量が大きい場
合,経路交通量は正規分布により近似することが出来る.
この時,共分散は 0 で近似できるとは限らないため,全
経路の交通量は多変量正規分布に従うことになる.
exp(− ni β i )
(7)
β i α i Γ(α i )
i
ここで, Nˆ i は OD 交通量がガンマ分布に従う場合のその
確率変数, ni は OD 交通量の実現値,Γ(⋅) はガンマ関
数である.
OD 交通量が与えられた場合の経路交通量の分布が
式(4)として与えられている.上で述べたように,OD 交
通量がガンマ変動する場合,経路交通量は式 (6) の
(多変量)ポアソン分布とガンマ分布の複合(compound)
となり,その確率関数は以下のように与えられる.
f X i (x i ) = ∫0 f Xˆ i (x i ni ) g Nˆ (ni ) dni
∞
(8)
i
ここで,Xi は OD ペア i の経路交通量ベクトルであり,
その要素は Xij (j = 1,…, Ji) である.なお,ポアソン近似
を行った場合の経路交通量を取り扱っているため,
f Xˆ i (x i ) と表記すべきであるが,後述のように,ポアソン
近似を行わない場合も負の多項分布に従うため,fXi(xi)
と表記する.
式 (6) 及び (7) を式 (8) に代入し,ガンマ関数の
∞
性質 16) ∫0 n k −1e −ω n dn = Γ(k ) ω k を用いて,それを整理
(3) 負の多項分布モデル
a) ガンマOD交通量
本研究では,OD 交通量(交通需要)の確率変動も考
慮する.ここで,OD ペア i の OD 交通量の確率変数を
Nˆi とし,それはガンマ分布に従っていると仮定する.な
お,本稿のモデルの全てにおいて,各 OD ペア間では,
OD 交通量は独立であると仮定する.すなわち,経済成
長・曜日や月間等の周期変動など OD 間に共通に働く
要因による確率変動は取り扱わない.OD 交通量が正規
分布に従うと仮定することも考えられるが,正規分布の
場合,OD 交通量が負となる場合があり,負の OD 交通
量の配分を考慮しなければならないなど理論上問題が
発生する.しかし,ガンマ分布は負の値をとることがない
という特徴を持つ.また,以下で述べるが,OD 交通量を
ガンマ分布と仮定し,経路選択の確率変動とを合わせて
考慮すると,経路交通量の分布は負の多項分布という
既知の分布に従うようになる.既知の分布は特性関数・
確率母関数等が定義されており,旅行時間の平均・分
散を求める際に都合が良い.
前節では,OD 交通量が固定値の場合,経路交通量
すると,fXi (xi) は以下のようになる.
f X i (x i ) =
(
)
Γ α i + ∑ j xij ⎛ 1
⎜
⎜ 1+ β
Ji
i
Γ(α i ) ∏ xij ! ⎝
⎞
⎟
⎟
⎠
αi
⎛ β i pij
∏ ⎜⎜ 1 + β
j =1 ⎝
i
Ji
⎞
⎟
⎟
⎠
xij
(9)
j =1
このような同時確率密度関数 [1] を持つ確率分布は負の
多項分布と呼ばれる 17),18),19).なお,多変量負の二項分
布と呼ばれることもあるが,負の多項分布という呼び方が
一般的である.経路交通量が負の多項分布に従う場合
の OD ペア i の経路 j の経路交通量の平均 µij,分散
σij2 及び OD ペア i の経路 j と経路 j′ の交通量の共
分散 σij,j' は以下の通りである.
µij = α i β i pij
(10)
σ ij = α i β i pij (1 + β i pij )
(11)
σ ij , j ′ = α i β i 2 pij pij ′
(12)
2
なお,異なった OD 間では,経路交通量は互いに独立
になっている.
540
土木学会論文集D Vol.62 No.4, 537-547, 2006. 11
論では,経路交通量は,一見,負の多項分布という特殊
な分布を使用しているように見えたが,一般に交通量は
小さい値ではないため,それは多変量正規分布ともみな
せること,つまり,多変量正規分布とみなせるほどの(比
較的)自然な確率分布であることを示すためである.
以上のことを確認する前に,まず,負の多項分布の確
率母関数を考えよう.確率母関数は離散確率分布に定
義される母関数である.OD ペア i の経路交通量の確
率 変 数 ベ ク ト ル Xi の 確 率 母 関 数 φX i (ui) は
x
E[∏ j uij ij ] すなわち Σxi1⋅⋅⋅ΣxiJ fXi(xi) ∏j uijxij と定義され,
負の多項分布の確率母関数 φ Xi ( u i ) は以下の通りであ
る 18).
b) 負の二項OD交通量
前項 a)ガンマOD交通量 のモデルでは,(需要が固
定の場合)経路交通量がポアソン分布に従うという近似
を行った上で,交通需要がガンマ分布に従う場合を考え
た.このようなポアソン近似を行わず,OD ペア i の ni
人の利用者が経路選択確率 pi で確率的に経路を選
択する場合は,既に述べたように経路交通量は多項分
布 Mn(ni, pi) に従う.このように(交通需要が所与の場
合の)条件付経路交通量が多項分布に従う場合につい
ても,交通需要(OD 交通量)の確率変動を同時に考慮
することも可能である.OD 交通量が負の二項分布に従
うと仮定すると,以下に示すように経路交通量は負の多
項分布となる.つまり,負の二項分布と多項分布の複合
を考えることを意味する.
OD交通量は以下のような確率関数を持つ負の二項
分布と仮定する[2].
⎛ βi
⎜
⎜1+ β
i
⎝
⎞
⎟
⎟
⎠
(13)
ここで,Ni は負の二項分布に従う OD ペア i の OD 交
通量の確率変数, g Ni (ni ) は Ni が従う確率関数である.
なお,この負の二項分布の平均及び分散はそれぞれ
αi βi 及び αi βi (1 + βi) となる.ポアソン分布や二項分布
では,分散を自由に設定することができないが,この負
の二項分布では,αi 及び βi を変えることによってそれ
を自由に設定することができる.
ここで,負の多項分布の確率関数を取り上げる.式
(9) に ni = Σj xij を代入し,整理すると,次式を導くこと
ができる.
f X i (x i ) =
Γ(α i + ni )
Γ(α i ) ni !
⎛ 1
⎜
⎜1+ β
i
⎝
⎞
⎟
⎟
⎠
αi
⎛ βi
⎜
⎜1+ β
i
⎝
⎞
⎟
⎟
⎠
ni
ni !
Ji
∏ xij !
Ji
∏ pij
xij
(15)
{
}
j =1
f X~ ( x i ) =
j =1
= f X i ni (x i ) g N i (ni )
i
(14)
以上のように,OD ペア i の OD 交通量が負の二項分布
に従って確率変動する場合,経路交通量は,前項の a)
ガンマOD交通量 と同様に,負の多項分布となることが
確認できる.
(4) 多変量正規分布への近似
多変量中心極限定理として,多数の多変量確率変数
の和の極限は多変量正規分布に従うことが知られており,
経路交通量を多変量正規分布によって近似することが
可能である.ただし,本研究では,経路交通量を多変量
正規分布で近似し,多変量正規分布とした経路交通量
を取り扱うものではない.本項の目的は,前項までの議
541
⎧ 1
⎫
−1
exp⎨− (x − µ i ) T Σ i (x − µ i )⎬
2
⎩
⎭
(2π ) Σ i
1
Ji
(16)
ここで, f X~ i ( xi ) は OD ペア i の経路交通量が多変量正
規分布に従う場合の同時確率密度関数,µi は OD ペア
i の経路交通量の平均のベクトル,即ち,(µi1,…, µiJi)T,
Σi は OD ペア i の経路交通量の分散・共分散行列で
あり,式 (11) と (12) で述べた σij2 , σij,j' を要素に持
った次式の行列である.
…
⎡σij 2
⎢
2
σij σij,j′
Σi = ⎢
⎢
σij,j′ σij′ 2
⎢
…
⎣⎢σi1,J
i
σi1,J ⎤
⎥
⎥
⎥
⎥
σiJ 2 ⎦⎥
i
…
⎞
⎟
⎟
⎠
−α i
独立な確率変数の和の(確率変数の)確率母関数は
それぞれの確率変数の確率母関数の積である 19).ここ
で,αi = 1 の負の多項分布を考えよう.なお,この αi =
1 の負の多項分布の確率母関数 φ X1 i ( u i ) は式 (15) に
αi = 1 を代入することにより得られる.よって,式 (15)
αi
の負の多項分布の確率母関数は φ Xi ( u i ) = φ X1 i ( u i )
となる.独立な確率変数の和の積率母関数は各変数の
積率母関数の積であるため, φ Xi ( u i ) は独立な確率変
数の和の確率母関数とみなせる.OD 交通量は一般に
十分に大きな数であるため,αi も十分に大きな数となる.
したがって,上で述べた中心極限定理により,(負の多
項分布に従う)経路交通量は極限近似としての多変量
正規分布とみなすことができる.このように多変量正規
分布に近似した場合の OD ペア i の経路交通量の確
~
率変数ベクトルを X i とする.その時の OD ペア i の経
路交通量の同時確率密度関数は以下の通りとなる.
…
⎛ 1
⎜
⎜1+ β
i
⎝
ni
…
Γ(α i + ni )
Γ(α i ) ni !
Ji
⎡
⎛
⎞⎤
φXi (u i ) = ⎢1 + β i ⎜⎜1 − ∑ pij uij ⎟⎟⎥
j =1
⎢⎣
⎝
⎠⎥⎦
…
g N i (ni ) =
αi
i
i
(17)
土木学会論文集D Vol.62 No.4, 537-547, 2006. 11
経路交通量の確率変数 Xij の和となる.つまり,
OD ペア間では,経路交通量は独立であり,独立な多
変量正規確率変数の和は多変量正規分布に従うため,
リンク交通量の同時確率密度関数は次式となる.
I
Ji
X a = ∑∑ δ a ,ij X ij
(22)
i =1 j =1
f X (x ) =
1
(2π ) Σ A
A
⎧ 1
⎫
−1
exp ⎨− (x − µ A ) T Σ A (x − µ A ) ⎬
⎩ 2
⎭
である.ただし,δa,ij はリンクと経路の接続変数であり,リ
ンク a が OD ペア i の経路 j に含まれている場合は 1
であり,含まれていない場合は 0 になる変数である.しか
し,式 (16) での Xij は必ずしも互いに独立ではない.
異なる OD ペアの経路交通量は互いに独立であるが,
同じ OD ペアでの経路交通量の確率変数は一般に独立
ではない.
多変量正規分布の場合,独立な確率変数の和も多変
量正規分布となる再生性の性質を持つが,多項分布,
負の二項分布は一般に再生性の性質を持たない.よっ
て,ネットワークの OD ペアが複数の場合,経路交通量
を多変量正規分布と考えると,リンク交通量はその周辺
分布である(一変量)正規分布となるが,多項分布,負の
二項分布,ベータ複合負の二項分布の場合は,正規分
布のように単純ではなく,非常に取り扱いが複雑になる.
(18)
ここで, µ A はリンク交通量の平均値ベクトルであり, Σ A
は,次式のように σa2 及び σaa' を要素に持つリンク交
通量の分散・共分散行列である.
…
…
…
…
⎡σ 12
σ 1A ⎤
⎥
⎢
2
σ a σ aa ′
⎥
ΣA = ⎢⎢
⎥
σ aa ′ σ a ′ 2
⎥
⎢
…
σ A 2 ⎦⎥
⎣⎢σ 1 A
(19)
…
ただし, µ A と Σ A は以下のように与えられる.
µA = ∆ µ
(20)
ΣA = ∆ Σ ∆
T
(21)
ここで, ∆ はリンク・経路接続行列で,次章で説明する
δa,ij から構成され, T は転置を意味する. Σ は(全て
の)経路交通量の分散共分散行列であり, Σi と同様に
σij2,σij,j' から構成される.このように経路交通量を多変
量正規分布で近似すると,リンク交通量も多変量正規分
布として与えられる.なお,本研究では,経路交通量は
負の多項分布と仮定しており,この場合,その和とも言え
るリンク交通量は必ずしも負の多項分布となるとは限らな
い.しかし,その場合でも,リンク交通量の平均や分散・
共分散を計算することが出来る.繰り返しになるが,近似
的にはそれも多変量正規分布とみなせる.
このように多変量正規分布によって経路交通量を近
似した場合,小さい確率ながら,経路交通量が負の値を
とることがある.その場合,例えば,10 [1 + (−20/1000)2.5]
などを計算しなければならず,旅行時間が実数にならな
いなど問題が生じる.
著者らの論文 20)において,経路交通量が正規分布の
場合が取り扱われているので,詳細に関しては,それを
参照されたい.なお,そこでは,経路交通量が独立の場
合,つまり,式 (17) が対角行列で,σij,j′ = 0 の場合を
検討しているが,同様の取り扱いが可能である.
(2) 旅行時間平均と分散
本研究では,各リンクの旅行時間関数は多項展開が
可能であると仮定し,以下のような多項展開された旅行
時間関数を取り扱う.
K
t a ( xa ) = ∑ ba ,k xa
k
(23)
k =0
ただし,ta(xa) はリンク a の旅行時間関数,xa ははリン
ク a の交通量の実現値,ba,k は係数である.BPR 関数
を含め,多くの旅行時間関数は十分な大きさの K をと
ることによって,上のような多項式による旅行時間関数で
定式化もしくは近似可能と考えられる.
経路交通量が離散分布に従う場合,リンク旅行時間
の平均は平均の定義から以下の式のように表される.
E[Ta ] =
⎛
I
∑ ta ⎜ ∑ ∆i
x∈Ωx
⎝ i =1
T
⎞ I
x i ⎟ ∏ f X i (x i )
⎠ i =1
(24)
ここで,Ta (= ta(Xa)) はリンク a の旅行時間の確率変数,
ta(⋅) はリンク a の旅行時間関数,∆i = (δa,i1,…, δa,iJ )T
は OD ペア i の経路に対するリンク・経路接続ベクトル,
Ωx は経路交通量ベクトル x の全集合である.
著者らは,旅行時間関数が BPR 関数の場合に関して,
積率母関数を用いて旅行時間の平均・分散の計算する
ことを紹介している 11).本稿では,以下の説明の都合上,
周辺確率を求めるのに便利な確率母関数を用いた旅行
時間の平均・分散等の計算について記載する.
旅行時間の平均・分散について述べる前に,まず,周
i
3. リンク交通量・旅行時間
(1) リンク交通量
リンク a (a = 1, 2,…, A) の交通量の確率変数 Xa は
542
土木学会論文集D Vol.62 No.4, 537-547, 2006. 11
k
2K
~ d φ Xa(u)
2
E[Ta Ta′ ] = ba , 0 + ∑ ba ,k
du k
k =1
辺確率としての経路交通量について触れておこう. OD
ペア i の経路 j の経路交通量は負の多項分布の周辺
確率 Σxij⋅⋅⋅Σxij-1 Σxij+1⋅⋅⋅ΣxiJ fXi(xi) として求めることができ
る.上記の確率母関数の定義より,その周辺確率の確
率母関数は φ Xi (u) u j′ =1 ∀j ′ ≠ j すなわち, uj 以外の uj΄
(∀j′≠ j) に 1 を代入した φ Xi (u) となる 19).この性質を用
いることによって,任意のある一つの経路交通量(OD ペ
ア i の経路 j の経路交通量)は以下の負の二項分布
に従うことを容易に確認することができる.
(30)
u =1
i
(
Γ α i + xij
f X ij ( X ij ) =
)
( β i pij )
ここで,
⎧ k
⎪ ∑ ba ,k ′ ba′,k −k ′
~
⎪ k ′= 0
ba ,k = ⎨2 K −k
⎪
ba ,K −k ′ ba′,k +k ′− K
⎪⎩ k∑
′= 0
(25)
この負の二項分布の平均及び分散は,式 (10) 及び式
(11) と同じである.
平均旅行時間の算出のために,OD ペア i の交通量
のうちリンク a を通過する交通量の確率変数 Xa,i (= Σj
δa,ij Xij) 及び OD ペア i の交通量のうちリンク a が選択
される確率 pa,i (= Σj δa,ij pij) を定義する.そして,その
確率母関数を φXa,i(u) とする.
多項展開(もしくは二項展開)より,OD ペア i の交通
量のうちリンク a を通過する交通量は以下の負の二項
分布に従うことが分かる[3].
f X a ,i ( xa ,i ) =
Γ(α i + xa ,i )
( β i p a ,i )
(1) 定式化と解法
交通需要(OD 交通量)の確率分布は所与とし,つまり,
OD 交通量である負の二項分布もしくはガンマ分布の母
数 α i と β i を与え,経路選択確率 pij を内生的に求め
ることが配分となる.
確率的ネットワーク均衡モデルを定式化するのに際し,
式 (1) を含んだ関数 h = (h11,.., h1J1 , h21,…, hIJ )T を考
えよう.関数 h の要素 hij を以下のように定義する.
(26)
OD 交通量は互いに独立であるため,リンク a の交通
量 Xa は独立な確率変数の和である Σi Xa,i となる.確
率母関数の性質を使うと,独立な確率変数の和である
Xa (= Σi Xa,i) の確率母関数 φXa(u) はそれぞれの確率
母関数の積である Πi φXa,i(u) となる.また,確率変数の
原点周りの l 次モーメント E[Xal] は d l φ Xa (u ) du l u =1
となる 18) .式 (23) より,リンク a の旅行時間の平均
E[Ta] について,E[Ta] = E[Σk ba,k Xak] = Σk ba,k E[Xak] と
なる.また,OD ペア i の経路 j の旅行時間の平均 mij
とその標準偏差 sij は次式のように表すことができる.
A
mij = ∑ δ a ,ij E[Ta ]
I
hij (p ) =
d k φ Xa(u)
k =1
du k
E[Ta ] = ba , 0 + ∑ ba ,k
)
exp(− θ cij ′ (p) )
∑
′
(32)
ここで,p (∈ Ωp) は経路選択確率ベクトル (p11,.., pIJ )T
である.
確率ネットワーク均衡は,関数(写像) h に関する以
下の不動点問題として定式化できる.
I
(27)
12
p = h( p )
(28)
(33)
上式は下式と等価である.
式 (27) 及び (28) は E[Ta],E[Ta Ta′] (Ta と Ta′の積の
期待値)より構成される.これらは以下の通りである.
K
(
exp − θ cij (p)
Ji
j =1
a =1
2
2
⎡ ⎧⎪ ⎛ A
⎞ ⎤
⎞ ⎫⎪ ⎛ A
sij = ⎢ E ⎨ ⎜ ∑ δ a ,ij Ta ⎟ ⎬ − ⎜ ∑ δ a ,ij E[ Ta ] ⎟ ⎥
⎢⎣ ⎪⎩ ⎝ a =1
⎠ ⎥⎦
⎠ ⎪⎭ ⎝ a =1
otherwise
4. 均衡モデルの定式化
x a ,i
Γ(α i ) xa ,i ! (1 + β i p a ,i )α i + xa ,i
(31)
ただし,0 ≤ k ≤ 2K である.
式 (23) の旅行時間は xa に関する K 次の関数であ
る(具体例に関しては数値計算の章を参照).この時,式
(29) の E[Ta] も αi と βi に関する K 次の関数として
導出できる. αi と βi というように変数は多くなるが,次
数は通常の旅行時間関数と同じであるため,それほど計
算時間はかからないと思われる.また,式 (30) は 2K 次
の関数となる.よって,式 (29) もしくは 式 (30) の和で
ある式 (27) 及び (28) もそれぞれ K 次及び 2K 次の関
数であり,計算は困難ではないと考えられる.
xij
Γ(α i ) xij ! (1 + β i pij )α i + xij
if k ≤ K
1
⎧
⎪cij + θ ln pij − κ i = 0
⎨
⎪∑ pij − 1 = 0
⎩ j
(29)
u =1
543
∀i ∀j
∀i
(34)
土木学会論文集D Vol.62 No.4, 537-547, 2006. 11
ただし,pij > 0 ∀i ∀j である.
上式は以下のような相補性問題として定式化すること
が出来る.
⎡p ⎤
Find z * = ⎢ ⎥ ∈ R+J × R+I
⎣κ ⎦
such that z, L( z ) = 0, L(z ) ≥ 0, z ≥ 0
(35)
⎡ 0 − Λ T ⎤ ⎡p ⎤ ⎡c + ln(p) θ ⎤
L(z ) = ⎢
⎥⎢ ⎥ + ⎢
⎥
−I
0 ⎦ ⎣κ ⎦ ⎣
⎦
⎣Λ
(36)
旅行時間の和となるとは限らない(ただし,式 (2) の実
効旅行時間で,η = 0 の場合はそれが可能である).こ
れは,各リンクのリンク交通量の分布を特定できたとして
も,リンク間の共分散を考慮しなければ経路の実効旅行
時間を算出することが出来ないためである.このように実
効旅行時間 cij は,複雑な関数であり,それ故に,上記
の問題では一般に解の一意性は保証されるとは限らな
い.つまり,経路及びリンクの交通量の分布を一意に計
算できるとは限らない.なお,η = 0 の場合であっても,
特殊なネットワーク(1OD のネットワークなど)を除き,一
般には解が一意であるとは限らない.
ここで,p = (p1,..,pi,..,pI)T,pi = (pi1,…, piJ )T, ln(p) = (ln
p11,..., ln pIJ )T,c(p) は経路に対する実効旅行時間ベクト
ル (c11(p),…, cIJ (p))T , κ は経路の最短期待旅行時間
のベクトル,Λ は OD・経路接続行列,〈x, y〉 はベクトル
の内積,I は単位ベクトル,0 は零ベクトル,T は行列・
ベクトルの転置である.また,I と J はそれぞれ OD 及
び経路の総数である.
相補性問題は,2 乗 FB 関数を用いて,等価な最適化
問題として再定式化が可能である 21).よって,以下の 2
乗 FB 関数を用いた最小化問題をニュートン法などの通
常の最適化アルゴリズムによって,本均衡モデルの解の
計算を行うことが出来る.
i
(3) 本均衡モデルの特徴
交通量及び旅行時間を確率的に扱う場合の大きな問
題の一つは,交通量として正規分布やその他の既知の
確率分布を仮定した場合,一般に旅行時間の確率分布
は交通量のそれとは別の分布となるとともに,それは未
知の分布になってしまうことが多いことと思われる.これ
は,交通量と旅行時間の関係は旅行時間関数によって
与えられ,交通量と旅行時間の確率分布の両方を同時
に自由に設定できないためである.本研究では,通常の
旅行時間関数から,確率母関数を用いて,リンク旅行時
間の平均と分散・共分散を算出する関数を解析的に導
出することによって,この問題に対処している.一方,従
来までは,モンテ・カルロ法などを用いて旅行時間の平
均や分散を求めていたことが多く,その場合,計算は乱
数などにより誤差を含むものとなり,均衡計算の収束に
大きな影響を与える可能性がある.また,旅行時間が確
率的な均衡を考える上でのもう一つの大きな問題は,リ
ンク旅行時間の相関や共分散の存在である.リンク旅行
時間の相関や共分散も計算する場合,モンテ・カルロ法
では,少なからずの計算時間が必要であり,計算精度も
低くなると予想される.
本研究の特徴は,モンテ・カルロ法や Watling13)のよう
な二次近似などを用いず,解析的に取り扱うことが可能
な,交通需要及び経路選択が確率的に行われる場合の
確率的な均衡を提案したことにある.このように解析的な
取り扱いを可能とするために,交通需要に負の二項分
布という分布を仮定した.もし解析的に取り扱う必要がな
い場合,つまり,計算時間が豊富にあり,必ずしも計算
の収束を必要とはしない場合は,自由に交通需要の分
布を仮定し,モンテ・カルロ法などを用いて,シミュレー
ション的に均衡を計算することが可能である.なお,2.
経路交通量 (4)多変量正規分布への近似 で述べたよ
うに,負の二項分布は特殊な確率分布とは限らない.
I
I
minψ ( z ) =
z
I +J
∑ ⎡⎢⎣ zl + Ll (z) −
l =1
zl + Ll ( z ) 2 ⎤
⎥⎦
2
(37)
ここで, Ll(z) は上の相補性の含まれる(ベクトル)関数
L(z) の l 番目の要素である(l = 1, 2,…, I + J ).
上の方法は経路ベースの計算方法である.リンクベー
スの計算法に関しては,従来の確率的利用者均衡モデ
ルでも各計算方法は一長一短があり,確立されていると
は言えず,本均衡モデルも同様の問題を抱えるため,今
後の課題としたい.
(2) 解の性質
経路選択確率 p (∈ Ωp) の要素 pij は 0 ≤ pij ≤ 1 で
あるため, Ωp は有界な凸集合であり,また, Ωp は RJ
の部分集合であるため(ただし,J = Σi Ji で有限),Ωp
はコンパクト集合でもある.また,h は連続な関数から構
成されているため,明らかに連続である.そして,h では
ロジットモデルが用いられているため,h(p) が Ωp に含
まれることは明らかである.したがって,ブラウワーの不
動点定理 21)より,上の不動点問題は少なくとも 1 つの解
を持ち,解が存在することが分かる.
通常の(確定的な)ワードロップ均衡の場合では,経
路旅行時間 tij はリンク旅行時間 ta の和 Σa δa,ij ta と
なるが,本研究の実効旅行時間は一般にリンクの実効
544
土木学会論文集D Vol.62 No.4, 537-547, 2006. 11
リンク2
リンク1
1
2
0.0020
3
OD 1
OD 2
0.0015
確率
リンク3
図-1 対象ネットワーク
0.0010
0.0005
0.0000
表-1 交通需要
0
OD 1
OD 2
ノード 1 と 3 の間
ノード 2 と 3 の間
分布
NgBn(40, 40)
NgBn(20, 50)
平均
1600
1000
分散
65600
51000
標準偏差
256.1
225.8
500
1000
1500
2000
OD交通量(台/時)
2500
図-2 交通需要の確率関数
表-2 旅行時間関数の設定
5. 数値計算例
複数 OD を複数経路で結んだネットワークとして最も
単純なものの 1 つである,図-1 に示す 2OD3 リンクの単
純なネットワークに前章までに述べた確率的ネットワーク
均衡モデルを適用する.ノード 1 及びノード 3 の間を
OD1(OD ペア 1),ノード 2 及びノード 3 の間を OD2(OD
ペア 2)とする.それぞれの OD 間には 2 つの経路が存
在する.OD1 について,リンク 1 とリンク 2 からなる経路を
R11(経路 11)とし,その選択確率を p11 とする.リンク 1
とリンク 3 からなる経路を R12(経路 12)とし,その選択確
率を p12 とする.また,OD2 について,リンク 2 の経路を
R21 とし,その選択確率を p21 とする.リンク 3 の経路を
R22 とし,その選択確率を p22 とする.
交通需要は表-1 に示す負の二項分布に従うとした.
図‐2 は,この時の交通需要の確率関数を表している.リ
ンク旅行時間関数 ta は t afr (1 + xa2/Ca2) とする.ここで
t afr はリンク a の自由走行時間,Ca はその容量である.
各リンクの自由走行時間と容量は表-2 の通りであり,リン
ク 1 とリンク 2 のリンク特性は同一である.なお,式 (1)
での経路選択に関するパラメータ θ = 1.0 とし,式 (2)
でのリスク態度(セイフティマージン)に関するパラメータ
η = 1.0 とする.
交通需要は与えられているため,経路の選択確率
(p11, p12, p21, p22) を求めることが,均衡配分を行うことに
なる.前章で,本研究の特徴は解析的に交通量及び旅
行時間が確率的な均衡を解くことができることであると述
べた. 3. リンク交通量・旅行時間 (2)旅行時間平均と分
散 で述べた確率母関数を用いる方法に従い,交通需
要の数値を代入すると,リンク 1 からリンク 3 の旅行時間
の平均は以下の関数(もしくは定数)となる.
自由走行時間(分)
交通容量(台)
リンク 1
10
2000
リンク 2
10
2000
リンク 3
5
1000
4141
(38)
250
p (1 + 1640 p11 )
p (1 + 1050 p21 )
E[T2 ] = 10 + 11
+ 8 p11 p21 + 21
250
400
(39)
p12 (1 + 1640 p12 )
p22 (1 + 1050 p22 )
+ 16 p12 p22 +
E[T3 ] = 5 +
200
125
(40)
ここで,E[T1], E[T2], E[T3] は,それぞれリンク 1 からリン
E[T1 ] =
ク 3 までの旅行時間の平均である.なお,p11 及び p12 に
関係なく,リンク 1 の平均旅行時間は定数となる.旅行時
間の分散等も同様に,解析的に求めることが出来る.
以上の平均リンク旅行時間関数等を用いて,実効旅
行時間関数を構成し,前章で述べた計算アルゴリズムに
より,求められた経路選択確率は p11 = 0.499…,p21 =
0.512… であり,p12 = 1− p12,p22 = 1 − p21 となった.リン
ク交通量に関する結果は表-3 の通りである.4 つの経路
交通量はリンク 2 もしくはリンク 3 のいずれかを通るが,そ
の 4 つの経路交通量は互いに独立とは限らないため,リ
ンク 2 とリンク 3 の交通量の分散の和は 2 つの OD 交通
量の分散の和の約半分ほどになっている.もし 4 つの交
通量が独立であるならば,リンク 2 とリンク 3 の交通量の
分散の和は 2 つの OD 交通量の分散の和になる.リンク
旅行時間に関する結果は表-4 の通りである.リンク 1 とリ
ンク 2 は特性の同じリンクであるが,リンク 1 を通る交通量
の方が多いため,リンク 1 の平均旅行時間の方がリンク 2
よりも大きくなっている.それに対応して,旅行時間の標
準偏差や分散もリンク 1 の方が大きくなっている.リンク 3
は交通容量がリンク 1 やリンク 2 の半分であり,交通量の
変動によるリンク 3 の旅行時間の変動は他のリンクに比
545
土木学会論文集D Vol.62 No.4, 537-547, 2006. 11
表-3 リンク交通量に関する計算結果
平均
標準偏差
分散
リンク 1
1600.0
256.1
65600.0
リンク 2
1312.1
175.1
30669.1
本研究のモデルは,交通需要と経路選択が確率的な
場合のネットワーク均衡であり,本モデルを用いることに
よって,ネットワークの不確実性や時間信頼性の評価や
ネットワークフロー等の確率的な性質の解明に役立つと
期待される.しかしながら,本研究のモデルは,それらを
可能にするための第一歩に過ぎず,今後,様々な発展
が必要である.今後の課題に関しては,本文中にいくつ
か記載したが,その他の主要な課題として,動的なモデ
ル(time-to-time や within-day での動的化)への発展,周
期変動や月間変動等の時系列の考慮や確率的な OD
交通量を推定する方法を確立することなどをあげること
ができる.
リンク 3
1287.9
170.4
29048.4
表-4 リンク旅行時間に関する計算結果
平均
標準偏差
分散
共分散
相関係数
リンク 1
16.56
2.11
4.47
リンク 2
14.40
1.18
1.38
リンク 3
13.40
2.24
5.01
リンク 1, 2 リンク 1, 3 リンク 2, 3
1.81
3.55
2.50
0.73
0.75
0.95
謝辞:本研究は,科学研究費補助金 15760393 (若手研
究 B,研究代表・中山晶一朗),18760387 (若手研究 B,
研究代表・中山晶一朗),16360254 (基盤研究 B,研究代
表・髙山純一)の援助により行われているものである.ここ
に記し,感謝の意を表します.
べて大きくなる.よって,リンク 3 の平均旅行時間は最も
小さいものの,旅行時間の標準偏差及び分散が最も大
きくなっている.旅行時間の相関に関しては,リンク 2 とリ
ンク 3 の相関が非常に大きい.これは,OD 交通量(OD1
と OD2 の OD 交通量の和)が大きければリンク 2 とリンク
3 の旅行時間がともに大きくなり,逆に OD 交通量が小さ
ければリンク 2 とリンク 3 の旅行時間はともに小さくなるた
めである.OD1 と OD2 の OD 交通量は独立であるため,
リンク 1 とリンク 2 及びリンク 1 とリンク 3 の旅行時間の相
関はリンク 2 とリンク 3 ほどではないが,共通して通過す
る経路交通量が存在するため,相関は比較的大きいも
のと言える.
ここで適用したネットワークは非常に単純なものでは
あるが,この適用結果によって,本モデルはネットワー
ク・フロー及びネットワークの旅行時間に関する変動を定
量的に評価するのに有用であることが分かる.
注
[1] 負の多項分布は次式のような形式で書かれることが多い.
Γ(α + n )
x
f X i (xi ) =
Q −α ∏ j ( Pj Q) j
Γ(α )∏ j x j !
ここで,n = Σj xj,Q − Σj Pj = 1,Pj > 0 (∀j) である.Q = 1
+βi, Pj = β pj とすることで,式 (9) に容易に変換すること
ができる.なお,右辺では,OD を表す添え字 i は省略さ
れている.
[2] 負の二項分布は,ある事象が成功する確率が p の時(0 ≤ p
≤ 1),その事象が n 回成功するまでに発生した失敗の数の
分布であり,その確率関数 gN(n) は n+α−1Cn−1 pα (1 − p)n な
どと書かれることが多い.ただし,C は組み合わせの数を表
している.上のように考えた場合,α は非負の整数であるが,
カンマ関数を用いて,それを非負の実数にまで拡張した時,
その確率関数は式 (13) のように表すことができる.
[3] 負の多項分布に従う xi = (x1, x2,…, xiJi)T について,(x1 + x2,
x3,…, xiJi)T を考える.(x1 + x2, x3,…, xiJi)T の確率関数は以
下のように順次展開・整理でき,これも負の多項分布に従う
ことが分かる.式 (14) の形式を用いると,(x1 + x2, x3,…, xJ)T
の確率関数は以下の通りである(OD ペアの添え字 i は省
略する).
x12
J
Γ(α + n )
n!
βn
x −x
x
x
p1 12 2 p2 2 ∏ p j j
∑
J
α +n
Γ
(
)
!
(
1
+
)
n
α
β
=
0
x2
j =3
( x − x )! x ! x !
6. おわりに
本研究では,交通需要が確率的に変動するとともに,経
路選択が確率的に行われる場合の確率的ネットワーク均
衡モデルを提案した.この確率的ネットワーク均衡モデル
では,交通需要及び経路選択の確率性により,経路・リン
ク交通量及び旅行時間は確定的ではなく,確率的に変動
する.
交通需要に負の二項分布を仮定した場合,任意のある
一つの OD ペアの経路交通量は負の多項分布という既知
の分布に従うことになり,旅行時間の平均や分散を計算す
るのに都合がよい.この場合の旅行時間の平均や分散の
計算方法を紹介し,単純なネットワークでのモデル適用例
を示した.また,本モデルの拡張として,道路利用者の異
質性の考慮や交通量の正規近似に関しても述べた.
12
2
2
∏
j =3
j
なお,x12 は x1 + x2 である.ここで,組み合わせ C を用
いて整理すると,
J
n!∏ p j j x
12
βn
Γ(α + n )
x −x
x
j =3
∑ x Cx p1 12 2 p2 2
Γ(α ) n! (1 + β )α +n x ! J x ! x2 =0 12 2
12 ∏ j
x
j =3
となり,二項展開により,
J
Γ(α + n )
n!
βn
x
(p1 + p2 ) x12 ∏ p j j
J
α +n
Γ(α ) n! (1 + β )
j =3
x12!∏ x j !
j =3
となる.よって,(p1 + p2, p3,…, pJ)T の負の多項分布であるこ
546
土木学会論文集D Vol.62 No.4, 537-547, 2006. 11
とが分かる.この操作を繰り返し,本文中で示した確率母関
数を用いて周辺確率を求めることによって,OD ペア i 交
通量のうちリンク a を通過する交通量の確率変数 Xa,i
は式 (26) の確率関数を持つ負の二項分布となる.
11)
12)
参考文献
1)
Mirchandani, P. and Soroush, H.: Generalized Traffic
Equilibrium with Probabilistic Travel Times and Perceptions,
Transportation Science, Vol. 21, pp. 133-152, 1987.
2) Chen, A., Yang, H., Lo, H.K. and Tang, W.H.: Capacity
Reliability of a Road Network: An Assessment Methodology
and Numerical Results, Transportation Research, Vol. 36B,
pp. 225-252, 2002.
3) Arnott, R., de Palma, A. and Lindsey, R.: Does Providing
Information to Divers Reduce Traffic Congestions?,
Transportation Research, Vol. 25A, pp. 309-318, 1991.
4) 小林潔司:不完備情報下における交通均衡に関する研
究,土木計画学研究・論文集,No. 8,pp. 81-88,1990.
5) Muth, J.F.: Rational Expectations and the Theory of Price
Movements, Econometrica, Vol. 29, pp. 315-335, 1961.
6) Lucas, R.E., Jr.: Asset Prices in an Exchange Economy,
Econometrica, Vol.46, pp. 1429-1445, 1978.
7) 小林潔司,藤岡勝巳:合理的期待形成過程を考慮した経路
選 択 モ デ ル に 関 す る 研 究 , 土 木 学 会 論 文 集 , No.
458/IV-18,pp. 17-26,1993.
8) Fisk, C.: Some Developments in Equilibrium Traffic
Assignment, Transportation Research, Vol. 14B, pp. 243-255,
1980.
9) Daganzo, C.F. and Sheffi, Y.: On Stochastic Model of
Traffic Assignment, Transportation Science, Vol. 11, pp.
253-274, 1977.
10) Watling, D.: A Second Order Stochastic Network Equilibrium
13)
14)
15)
16)
17)
18)
19)
20)
21)
Model I: Theoretical Foundation, Transportation Science, Vol.
36, pp. 149-166, 2002.
中山晶一朗,高山純一,長尾一輝,笠嶋崇弘:旅行時間の
不確実性を考慮した交通ネットワーク均衡モデル,土木学
会論文集,No. 772/IV-65,pp. 67-77,2004.
Clark, S. and Watling, D.: Modelling Network Travel Time
Reliability under Stochastic Demand, Transportation
Research, Vol. 39B, pp. 119-140, 2005.
Watling, D.: Stochastic Network Equilibrium under Stochastic
Demand, In Transportation Planning: State of Art, Patriksson,
M. and Labbe, M. ed., pp. 33-51, 2002.
Hall, R.W.: Travel Outcome and Performance: The Effect of
Uncertainty on Accessibility, Transportation Research, Vol.
17B, pp. 275-290, 1983.
飯田恭敬,内田敬:リスク対応行動を考慮した道路網経路
配分,土木学会論文集,No. 464/IV-19, pp. 63-72,1993.
例えば,高木貞治:解析概論,岩波書店,東京,1983.
Bates, G.E. and Neyman, J.: Contributions to the Theory of
Accident Proneness I and II, University of California
Publications in Statistics, Vol. 1, pp. 215-263, 1952.
Shibuya, M., Yoshimura, I. and Shimizu, R.: Negative
Multinomial Distribution, Annals of the Institute of Statistical
Mathematics, Vol. 16, pp. 409-426, 1964.
Johnson, N.L. and Kotz, S.: Discrete Distributions, Houghton
Mifflin, Boston, 1969.
中山晶一朗,高山純一,長尾一輝,所俊宏:現実道路ネット
ワークの時間信頼性評価のための確率的交通均衡モデル
及びそれを用いた情報提供効果分析,土木学会論文集D,
Vol. 62,No. 4,2006.
例えば,福島雅夫:非線形最適化の基礎,朝倉書店,2001.
(2005.8.1 受付)
STOCHASTIC NETWORK EQUILIBRIUM MODELS CONSIDERING BOTH
STOCHASTIC TRAVEL DEMAND AND ROUTE CHOICE
Shoichiro NAKAYAMA and Jun-ichi TAKAYAMA
Under the ordinary circumstance without any accidents and disasters, the main causes of transportation
network’s uncertainty are variations of travel demand and route choice behavior. We assume that travel
demand and route choice are stochastic, and develop stochastic network equilibrium models. In the
models, network flows and travel times are also stochastic due to stochastic travel demand and route
choice. The models are promising for assessing uncertainty or travel time reliability of transportation
network and analyzing its stochastic properties theoretically.
547