鋼魂の望む詠 ∼序章∼ - タテ書き小説ネット

鋼魂の望む詠 ∼序章∼
符万
タテ書き小説ネット Byヒナプロジェクト
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︻小説タイトル︼
鋼魂の望む詠 ∼序章∼
︻Nコード︼
N9459BQ
︻作者名︼
符万
︻あらすじ︼
標準歴326年、主星歴9年。
地球から遠く離れた惑星ベイグラム。
そこでは大自然の中で、由来不明の多種多様な機械体が生態系を構
築し、
惑星を発見した人類はそれらに様々な形で関わり、生活していた。
1
主人公のミーテ・クオーレは、望んで派遣されたこの不思議な惑星
で一体何を知り何を見るのか?
2
Fragments 1
分厚い大気を貫き、その大型艦は地表を目指していた。
巨大な艦体が押しのける空気は地響きのような音で震わされ、
お返しとばかりに摩擦による高熱で巨体を焼き尽くさんとする。
だが、不可視の力場に手厚く守られた艦体には、音も熱も一切届い
ていなかった。
やがて地表に近づいたそれは降下を緩やかにし、徐々に水平航行へ
と移行していく。
そんな最中、これまでなんの変化も無かった艦体表面に動きが現れ
た。
沈黙していた航行灯が明るく点滅を始め、複数のカーゴ・ハッチが
開く。
その動きは大気圏の内外問わず、大型艦が搭載している艦載機と共
働航行を行う際の手順だ。
そうこうしている内に、大小様々な艦載機が勢い良く発艦し始めた。
が、そこに一点、通常とは違うモノが射ち出される。
それはどこをどう見ても、ただのフロート・コンテナだった。
運搬の手助けとなるよう浮遊機能こそあるものの、それ自体に推進
機構は付いていない。
と、自由落下を続けていたコンテナのフロート機構が作動したらし
く、速度が急激に落ちた。
だがしかし、空中で垂直に静止したコンテナは続く動きで大きく変
3
形する。
通常のフロート・コンテナには、そんな変形機構は必要無い。
運用から仕様まで、全てが異様なコンテナの開口部から現れたのは、
ミサイル・セル。
直立した姿の最下部にあるフロート機構を除き、上から下までぎっ
しり詰まっている。
いや、正確には最上部の中央は一発分、セルの代わりにカプセルが
詰まっていた。
そのカプセルが開くと、内部との気圧差で発生した水蒸気が吹き出
す。
水蒸気を割って出てきたのは、一人の人間だった。
いくら静止しているとはいえ高度は約10キロ、生身の人間が容易
に生存出来る環境ではない。
が、防寒着も酸素マスクも無しに、その人物は軽装のまま立ち上が
る。
それどころか、今居る場所がまるで日常生活をおくる空間と何一つ
変わらない、
そう言いたげなほどに、環境の過酷さを意に介さない身のこなしだ。
そのままゆっくりと、切り立った淵まで歩いていくとスッとしゃが
み、片膝を突いた。
そしてコンテナのフレームに左手を当て、自分の頭を右手でガリガ
リと音がしそうなくらい掻くと、
伏せていた顔を勢い良く上げ、その視線の先の自身より遥かに巨大
な目標を力強い瞳で見据えた。
4
その表情には怖れなど微塵も無く、ただ大胆不敵に笑っていた。
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Fragments 2
蒼空を圧して乱れなく征く大型艦、ウォラーレ・バーラエナ。
﹃飛び鯨﹄を意味する艦名の刻まれた艦首やバーラエナ級最大の特
徴である双胴型の艦体、
そして鈍色の金属で造られた全長100キロもの巨体は航行灯の光
に各所を照らされ、
まだ明けきっていない空にかかる雲を、その威容で吹き散らしてい
く。
収容されていた全艦載機︵と特装のフロート・コンテナ︶を繰り出
した後、
表向きはまた、大気圏突入時とほぼ変わらず静まり返っているよう
に見えた。
だが、左右の艦体を繋ぐセンター・ジョイントに位置するセントラ
ル・ブリッジは、違う。
現在はミドルデッキに固定された短寸の葉巻型をした可動式ブリッ
ジの内部では、
中央の席に居るチーフに向けて、大量の情報や報告が様々な形で挙
げられている最中だった。
チェックプログラムの結果や遠方の部署からの映像を示す多数のホ
ロ・モニターが並び、
声の届く範囲にある各席からは口頭での報告が飛ぶ。
それだけでなく、体殻に埋め込まれたレゾナイト・リンクに視聴覚
以上の膨大な情報が流れ込む。
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これらの内容を手早く確認し、報告に差異が無い事をチェックし終
えた頃、
四つの丸い球体を集合させたピラミッド状の物体から、リンク上で
﹃声﹄がかかった。
﹃全機発艦を完了、不調機無し、当艦各部も異常無し、全て問題無
し、だ。﹄
そちらに向くと、ボディを構成している球体の下側、チーフに向い
ている一つの表面に、
幼子が書いた落書きのような文字で﹁かんさょー﹂と書かれている
のが目に入った。
艦長の娘に対する溺愛ぶりに内心微笑んでいると、もう一方から口
頭で報告が飛んでくる。
﹁現在、配置に着いた機から順次、目標の観測データ送信されてい
ます。﹂
これまで無言でミッションスケジュールと各担当の報告を精査して
いた、副長からだ。
﹁了解した、引き続き観測データのチェックを頼む。﹂
顔だけを向けて報告に応えると、再び艦長に向き直る。
﹃どうやら娘さんは、あなたに甘える上手い方法を身に付けたよう
ですな、艦長﹄
7
艦長の妻でもある副長のそっけない様子からあっさり状況を看破し
たチーフは、
イタズラ心をリンクの﹃声﹄に乗せつつ、もう一度チラリと副長を
見る。
こちらに背を向けているので顔色は伺えないが、猫人型の彼女の耳
は微かだが不規則に震え、
尻尾は不機嫌そうにゆらゆらと揺れているのが分かった。
﹃まだ独身の君には分からんかもしれんが、子供は可愛いモンだぞ、
チーフ﹄
表情を表す顔が無くとも、娘への愛情で緩みきった感情満載の﹃声﹄
に、
チーフがわざとらしくやれやれと言った表情で首を振っていると、
2人の会話を黙って聞いていた副長から、トゲ付きの﹃声﹄が艦長
へと飛ぶ。
﹃そうやって甘やかしてばかりだと、後で大変な目に遭うんでしょ
うねぇ﹄
後の苦労は自業自得だから全ての責任を負え、と暗に示している。
﹃勿論、大事な家族の為なら頑張れますよねぇ、﹁艦長﹂﹄
﹃ぃ、いや・・しかしだな・・・﹄
正論過ぎて何も言い返せずオロオロとする艦長に副長は、
猫特有のジワジワといたぶるような、そんな口調で畳み掛ける。
その様子を目の当たりにして、チーフは苦笑しつつもふと考えた。
8
副長は体殻こそ猫の特徴を持っているものの、中身は正真正銘の人
間だ。
だが、発言やそこから読み取れる性格と様々な仕草は、猫の特徴を
多く持っている事が分かる。
それが外見に由来するものか、逆に無意識下の選択が外見に強化さ
れた結果なのか。
では、副長と同じく人にして人では無い体殻を持つ、自分はどうな
のだろうか?
自身の腕や手を眺め、外見をイメージしながらぼんやりそう思うチ
ーフの姿は、
全身鱗に覆われ、爬虫類そのものな顔と太く長い尾で、リザードマ
ン型とひと目で分かる。
そんなチーフは人間だが艦長はAI︵この事もまた、バーラエナ級
の特徴の一つだ︶、
その娘は少しずつ増えつつある人とAIのハーフ、紛れもなく艦長
と副長の愛し子である。
これはゆっくり時間をかけて考える必要が有る、とても興味深い事
案だな。
そう思いながら目の届く範囲に居る他の者達を眺めていると、
いよいよ進退極まった艦長が話題逸らしとばかりに、話しかけてき
た。
﹃あ∼・・・その、ところでチーフ、﹁彼﹂の方はどうかね?﹄
どうやら今日も︵いや、いつも通りか︶、艦長の負けが決定したら
しい。
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チーフは再びやれやれと首を振りながら肩をすくめると、副長に向
く。
するとやはり、無言で苦笑いする副長の姿がそこにあった。
気にするな、と首をわずかに傾けると表情を改めて口頭で訪ねる。
﹁副長、﹁びっくり箱﹂の様子はどうだ?﹂
﹁そちらは現在、降下から姿勢制御過程へ順調に移行中。﹂
一瞬微笑んだ副長も表情を改め、手元のモニターを素早く読み上げ
る。
﹁アイツはどうだ?さっきまで随分グズってたようだが。﹂
﹁現在は問題有りません。スケジュールが遅れた事を気にしていた
ようですが。﹂
スケジュールの遅れを気にしているのは、管理を任されている副長
も同じだった。
だが逆に、管理を担当していない者がそこを気にするのは、奇妙な
事だ。
﹁ふむ、ま、何か思う所が有るんだろうが、﹁積み荷﹂の搭乗は予
定範囲だったんだ。﹂
﹃うむ、連絡艦の遅れも宇宙の天気が原因、誰も責める事は出来ん。
﹄
確かに、艦長の言う通り﹁宇宙の天気﹂が相手では、スケジュール
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遅延も致し方ない。
しかし自身が口にした尤もな理由でも、チーフは何か腑に落ちない
感覚を拭えずにいた。
と、それ以上の思索を進める前に、副長からの言葉が現実へ意識を
引き戻す。
﹁チーフ、そろそろ彼らへの挨拶をお願いします。﹂
﹁おう、そうだった。さて、今期の連中はどんなモンかね。﹂
軽口を呟きながら、これまで放置していたある場所へのリンクを開
く。
途端にそこから流れてきたのは、緊張感の薄い様々な雑談だった。
今はまだ﹁積み荷﹂としか呼べない彼ら彼女らを一人前に鍛え上げ
る、
その長い道程を思い、チーフは三度やれやれと首を振りつつ、口を
開いた。
11
Fragments 3
﹃世界基準の紀年﹁標準歴﹂へ変わる以前から太陽系外惑星の探査・
開発目的で提案されていた、
航宙艦の開発・建造計画に端を発する、多機能・多目的大型航宙
艦﹁バーラエナ級﹂。
標準歴以前の﹁国家﹂という枠組みが存在した頃の初期計画から
比較すると、
その行為自体がナンセンスと思えるほど、サイズ・用途は共に大
幅に拡大している。
だがそれとは逆に、初期の頃から変わらない部分も存在している。
﹁ASRS計画︵先進惑星探査船計画︶﹂と呼ばれた国際共同プ
ロジェクトだった当時、
世界各国が保有していた、﹁軍用艦﹂と分類される艦船の開発・
建造計画の手順と同じく、
基礎となる設計図から複数の同型艦を建造する手法である。
この手法によって同級・同型艦の建造・保守・改修・共通パーツ
の融通が容易となり、
また同型である為、他の艦に配属された人員の研修も比較的短期
で済むのがメリットである。
最初期の提案からネームシップとなった1番艦﹁バーラエナ﹂の
就航まで、
計画の大幅変更や見直し、一時は計画の全面凍結など紆余曲折を
経ているが、
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現在では徐々に数を増やし、各星系を拠点に探査・開発や物資・
人員の輸送を受け持ち、
太陽系だけでなく他全ての星系を飛び回って物流・経済を支え、
多種多様な人々の生活の場となるなど、様々な場面で活躍する第
一線級の艦と言える。
こうした経歴を持つ本級の2番艦として建造された現在就航中の
当艦、
﹁ウォラーレ・バーラエナ﹂も共通設計から形作られた、独特の
様々な特徴を備えている。
鯨を思わせるような巨体と、それら2つを繋ぐ3本のジョイント。
艦首付近のフォワード・ジョイントに航行専用のクルーズ・ブリ
ッジ、
艦中央のセンター・ジョイントに全艦制御・管制用のセントラル・
ブリッジ
艦尾のバック・ジョイントに各艦特有の装備を備え、様々な任務
に対応する。
ちなみに、クルーズ、セントラルの各ブリッジはジョイントを軸
とする可動式となっている。
また各艦体にブリッジや制御中枢、主機・駆動系など航宙能力を
分散した設計を採用しており、
緊急時には全ジョイントをパージしての各艦体による単独航行も
可能となっている。
更に、本級では各艦体の艦尾機関区画に﹁空間・物質同素統合理
論﹂に基づいた、
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最新鋭の主機﹁マス・トランスファー・エンジン﹂を1基ずつ合
計2基搭載しており、
任意空間の書き換え原理を利用した艦体保護用の防護フィールド
﹁アルファ・シェル﹂と、
質量の任意書き換えを応用した超光速航法﹁フィールドリティル・
ドライブ﹂を実現している。
もう一つ他の航宙艦と区別する特徴は、本級は例外無く艦長をA
Iが努めている事である。﹄
星系に入り、ウォラーレ・バーラエナと無事ランデブーして連絡艦
から移乗するまでに3時間、
左艦体のサブ・ブリッジに通され、説明が始まってからは既に2時
間近く経過していた。
通常は、艦の運用に関わるほぼ全てがセントラル・ブリッジで統合
制御されているので、
使用されていない左右どちらのサブ・ブリッジも機能をほとんど凍
結されている。
しかも艦内で見晴らしの良い外郭部、更に最も人気の高いトップ・
デッキと言う場所のおかげで、
日頃は乗員の憩いのスペースとして全面開放され、半ば公園のよう
な扱いだった。がしかし、
普段は大気圏突入時でも開いたままで、艦外の景色をグラス越しに
一望出来る外殻は堅く閉じられ、
人工の光に照らされる多めに植えられた観用樹と、それらに囲まれ
るように特設された多数の席、
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そして全員が統一された制服に身を包み、そこに落ち着き無く座っ
ている彼ら彼女らは、
存在する空間の広さに薄められてはいるものの、常の状態からの乖
離を生んでいた。
これを僅かに増幅させているのが、声が届く範囲の者同士の間で控
えめに交わされている声だった。
それぞれが収まる球体に近い形のフロート式シートは傍目からも座
り心地は良さそうに見えるが、
現時点までの経過時間とその間も高まる緊張と進まぬ流れのせいで、
流石に疲れてきたのだ。
シートは同心円状に配置された上、配属先・習得スキル・成績等で
着席位置が指定されている為、
自席の周囲にいる者が必ずしも、出身である専門機関学校での親し
かった相手とは限らない。
運良く友人・知人と隣り合った者は当然、そして新しい出会いや良
い刺激を求める者も、
退屈しのぎとばかりに会話をし、リンク上ではもう少し大胆にスト
レスの発散を行った。
こうしている最中も延々と、自己紹介の有った艦長監修の各種デー
タがリンクで流れているが、
今更と言っては艦長に悪いと思っているだろうが、誰一人としてそ
れに耳を傾ける者は居ない。
しかし、それは至極当然の事︵もしくは仕方のない事︶とも言えた。
何故なら基礎教育の過程では大まかにだが1回、専門機関学校では
より詳しく1回、
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そして専門機関学校は当たり前だが﹁惑星ベイグラム専門﹂であっ
た為に、
進路として選択した者は自力で最低限でも1回、それら各種データ
は入手済みなのだ。
既に知り尽くしている︵とほとんど全員が思っている︶情報は、退
屈以外の何者でもない。
では、それでも耳を傾けている私は、一体なんなのだろう?
ここに来るまでは言葉少なに、そして着席後は無言のまま艦長の﹃
声﹄に聞き入る、
成績上位者5名、通称﹁クラウン﹂と呼ばれるグループの末席に微
動だにせず座った彼女、
ミーテ・クオーレは自嘲とも取れる微かな思いを浮かべた後、再び
静かにデータの流れに戻った。
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Fragments 4
﹃諸君、遠路はるばるご苦労。そしてようこそ、惑星ベイグラムへ。
﹄
直接映像とリンクの両方で呼びかけつつ、チーフはあるデータに注
目していた。
時間経過と共にせわしなく移り変わり、一瞬たりとも落ち着きを見
せないグラフや数値は、
彼らの体殻にかかるストレスや融体の成分変化など、バイタルサイ
ンと呼ばれるものだ。
この行為は一見すると、個人的プライバシーの著しい侵害と取られ
かねないがベイグラムに限らず、
人類︵当然AIも含む︶の活動範囲内では職務規定上の﹁危険任務﹂
に従事する全ての者達が、
それら必須とされるデータの採取や自主的な提出を当たり前の事と
受け入れ、行っている。
その中で現在チーフが特に注目しているのが、心理変化のデータで
ある。
﹃さて、突然ではあるが君らに初任務をこなしてもらう。﹄
事も無げにあっさり言われるが、当然ながら経験の無い者が平静を
保つのは容易ではない。
それを機に踊りだす心理データを、チーフは興味を持って注意深く
観察した。
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﹃と言っても、参加はリンク上のみ。ま、試合観戦ってトコだ。﹄
艦内を束ねる三役の一角としての厳しい表情から一転、人懐っこい
笑顔でタネ明かしをするチーフ。
勿論これも手管の一つ、それに見事にかかった彼らの心理はより明
確なデータを示した。
ふむ、期待・・・動揺・・・不安・・・感動・・・安堵・・・躊躇・
・・・・ん?
一通り確認した後で通常とは違う反応を示す人物のデータを、更に
クローズアップする。
今までチーフは何度もこの場面に立会い、時には任務不適格な者へ
の通告も冷静にこなしてきたが、
口先ではそう言いつつも内心の動揺や不安を隠す為の虚勢を張る者
だった、ならばまだ理解出来た。
・・・不満だと?ミーテ・クオーレ、﹁クラウン﹂の5番・・・一
匹狼タイプか?
彼女のデータを遡ると、そう思えるような節がいくつか見られた為
に過去の事例と比較し、
軽い気持ちで一匹狼タイプと評したが、決して喜ばしい事とは捉え
ていなかった。
他者と関わりをあまり持たず、単独行動を好む人物はどんなに成績
優秀でも非常に扱い辛い。
それがただのハッタリならばまだやりやすいが、彼女はどうもそれ
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とは違うように思える。
﹃だが気は抜くな。﹄
気を取り直して再び厳しい表情を作ると、チーフは話を続けた。
﹃諸君はサラリーマンでは無い、だから月間ノルマや達成目標なん
て物を我々は提示しない。﹄
同時に艦内外の様々な部署とのリンクを接続し、彼らの世話を引き
継いでいく。
﹃その代わり、我々は判断の手加減など一切しない。その事をよく
理解してくれ、以上だ。﹄
リンクが広がるにつれて騒がしくなる中、手短だが重要な事項で話
を締めくくる。
さて、そうは言ったものの、どれだけモノになるのだろう。
これから始まる面倒事に密かに頭を悩ませていると、個別リンクの
﹃声﹄がした。
﹃失礼します、チーフ。﹄
相手はミーテ・クオーレだった。
﹃どうした、リンク相手とトラブルか?﹄
軽口で空気を和やかなものにしようとするが、内心は少し気が重か
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った。
﹃はい、実は・・・﹄
﹃なんだ、先輩が気に入らないのか?それなら諦め・・・﹄
﹃いえ、そうではありません。﹄
彼の癖となっているやれやれという仕草と、言いかけた言葉がミー
テの否定に遮られる。
﹃じゃあ、何が不満なんだ?﹄
﹃いえ・・・そうではなく、相手側リンクに接続出来ません。原因
は不明です。﹄
﹃了解、君の側に問題が無い事は確認した。しばらくそのままで待
機。﹄
先程の心理データ評価にまだ気を取られて思わず口にした事を密か
に恥じ入ったが
反省しつつも﹁不満﹂という言葉に彼女が僅かに反応した事を、チ
ーフは見逃さなかった。
なるほど、不測の事態への対処が良い、しかもコミュニケーション
能力も高いレベルに有る。
本来リンクすべき相手との接続に失敗した場合、手続き上は他者と
の個別リンクを試行する事で、
自身の機器の不具合か他の原因かを早急に特定する必要が有る。
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彼女はそれに加えて、指示を仰ぐべき相手を個別リンクの対象に選
ぶ事によって手間を省き、
事前の自己チェックと簡潔明瞭な報告で、チーフの踏む手順も短縮
していた。
また、相手の僅かな言葉から自身が要注意対象になっている事も、
瞬時に察知してみせた。
ただのはぐれ者気取りじゃない、だがその分余計にやり辛いな。
ミーテの評価を修正しつつリンクチェックを始めるが、並行しても
う一度彼女へ声をかける。
﹃一つ言い忘れていたが君のリンク相手の都合上、視覚・体感デー
タは省かれる。﹄
﹃それでは研修になりません。﹄
﹃そう噛み付かないでくれ、君の参考にならな・・・待て。﹄
即座に返ってきた明らかな不満に苦笑いで応えるチーフの元へ、緊
急時専用の短縮シグナルが届く。
E・・・エマージェンシー︵緊急事態︶、CB・・・クルーズブリ
ッジ発、FF!?
﹃フレンドリーファイア︵味方誤射︶!!あいつ、またか・・・副
長、現状報告。﹄
﹃﹁クレイジー﹂より﹁飛び鯨﹂へ緊急報告。即座に回避運動に入
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らないと、撃沈されるぞ。﹄
ミーテとの個別リンクが繋がったままで対処に追われるチーフとブ
リッジに、
そしておまけにいつの間にか個別に接続された彼女にも、艦外から
の﹃声﹄がかかる。
﹃ああそうだな、今まさに、それも味方の誤射でだ。アーサー﹄
﹃あの、どういう事ですか!?﹄
﹃ブリッジ!右下方20度へ転舵、急げ!!同時に、﹁アルファ・
シェル﹂全力展開!﹄
﹁撃沈﹂という言葉で流石に心中穏やかではいられなくなったミー
テを置き去りに、
チーフは素早く指示を出し、代わりに艦外の﹃声﹄が彼女の疑問に
応える。
﹃今回の相手がちょいとズル賢いヤツだから、﹁飛び鯨﹂に無理矢
理どいてもらってる。﹄
﹃な!?﹄
﹁今回の相手﹂と聞いて、ミーテは慌ててサブ・ブリッジの外に目
を向ける。
さっきまで閉じていた外殻は開放され、緊急運動で傾斜していく景
色の中心にある、
黒々とした山のように大きな﹁物体﹂から、強烈な閃光が発せられ
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たのが見えた。
光はあっという間に点から線へ延び、ウォラーレ・バーラエナが先
程まで居た空間を貫いて、
遥か上空、大気圏外へ向かって空気を轟かせる衝撃波を伴って飛び
去っていく。
その手前、巨大な艦体との間に左下から何かが、ミーテの視界に飛
び込んできた。
真っ白な噴射煙を引きながら飛ぶそれは、どこからどう見てもミサ
イルそのものだったが、
たった一つ、普通ならば絶対に有り得ない事だが、そこには一人の
大柄な男が乗っていた。
荒れ狂う大気の波に上手く流れを合わせているのか、サブ・ブリッ
ジを覗き込むその人物は、
防寒着も酸素供給マスクも無く、ましてや機械的なアシストすら使
用していない。
と、こちらが見ているのに気付いたのか、ニヤリと大胆な笑顔と﹃
声﹄を向けた。
﹃どうやら俺が、アンタのチームメイトらしい。よろしく頼む。﹄
23
Fragments 5
それだけ伝えると後は脇目も振らず、眼下の﹁物体﹂へと彼はその
まま急降下していく。
さっきは気付かなかったが、彼の乗るミサイルの飛ぶ少し後を追う
形で全く同型や、
あるいは違うタイプのミサイルが多数、白煙を引いて飛んで往くの
も見えた。
何も言えずに呆然と見送るミーテに、一通りの指示を終えたチーフ
から再び﹃声﹄が飛んだ。
﹃相手の視覚や体感データが、省かれた理由が理解出来たか?﹄
﹃・・・・・。﹄
﹃ミーテ・クオーレ、君から見てアイツはどうだ?﹄
名前を呼ばれ我に返ったものの、チーフの言葉からは今ひとつ真意
が読めない。
﹃失礼しました、チーフ。ところで、どうとはどういう意味でしょ
うか?﹄
﹃・・・チームメイトとして、上手くやっていけそうか?﹄
何か上手い冗談を言おうとし、しかしそれを止めたチーフはストレ
ートに尋ねる。
だが当のミーテはしばらく吟味すると、︵彼女にとって︶当然の疑
24
問を投げてきた。
﹃なぜ、チームメイトなのですか?﹄
確かに、もっともな疑問だった。
彼女を含め専門機関学校の卒業者は、配属先での研修者としてしば
らく任務に従事し、
現場での知識と経験を充分に積んだ上で、独り立ちするのが通常の
流れだったからだ。
未経験者と組んで任務を遂行するなど、大胆を斜め上に飛び越えた
無謀そのものでしかない。
が、説明しようとしたチーフを制するように、外からの﹃声﹄が言
った。
﹃なぜも何も、優秀だったからそう決まったんだろ。﹁クラウン﹂
の5番だしな。﹄
さもそれが当然であるかのように言っているが、全く説明にはなっ
ていない。
彼は嫌味でなく本心からミーテの優秀さと彼女とチームを組める事
を喜んでいるらしいが、
つい先程彼の取った行為も相まって、ミーテの心中には強い苛立ち
と反発が生まれていた。
だが感情に任せて罵るのは彼女の流儀に反する為か、表面上は冷静
さを保ちつつ応える。
﹃先程の行為とその命知らずな発言、コールサインは伊達じゃない
ですね、ミスタ﹁クレイジー﹂﹄
25
﹃おっ、早速俺のコールサインを覚えてくれたか、格好良いだろ?﹄
この男・・・・、皮肉が通じないのか。
﹃声﹄の調子からして本気で喜んでいるのが読み取れたのが、より
苛立ちを大きくさせる。
任地に到着して早々に乗艦を撃沈されそうになれば、彼女の反応も
当然だろう。
だが、チーフの発言からチーム解消は不可能だと彼女は︵非常に残
念ながら︶理解していたので、
小さな舌打ち一つの後は無駄な発言を控え、今回の任務に意識を集
中させる事に決めた。
﹃チーフ、今回の任務と﹁クレイジー﹂のデータをお願いします。﹄
﹃お、おう。﹄
本来は、目の前で起きている︵一方的ではあるが︶明らかな不和を
注意しなければならない。
だが多少気圧されたのと、どんな行動を起こすのか強い興味を覚え
たチーフはそれ以上言わず、
促されるままにミーテの要求したデータを素直に送り出した。
・・・・・イカれてる。
流れてきたそれに斜め読みでざっと目を通したミーテの感想は、そ
れしか出てこなかった。
それほど、データ上の彼、アーサー・”クレイジー”・ウォルトン
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の評価は並外れていたのだ。
彼が、この惑星ベイグラムに固有の存在、﹁ライメック﹂を対象と
した捕獲・研究の専門機関、
﹁バローメ﹂に配属されて5年、その間様々な功績を上げ、同時に
数々の問題も引き起こした。
配属されてから現在まで変わる事なく同じ﹁ミサイルと共に突撃す
る﹂という活動スタイルを貫き、
初日に彼が起こした行動が原因となって、現在のリンク経由での研
修手順が生まれる事となった。
だが同時にバローメの設立以来初めて、ライメックのカテゴリ中で
は最大のサイズとされる、
﹁クラス=ペルグランデ﹂の捕獲に成功する、という快挙も共同で
成し遂げている。
それ以降、捕獲する種類も数もどんどん増え、その度に問題行動も
増えていった。
そして現在バローメへの貢献︵同時に人類全体への貢献とも言える︶
記録は文句無しのトップ、
だが問題行動の累積数もワースト記録を堅守するという、滅茶苦茶
な有様だった。
もはや、﹁卵が先か、鶏が先か﹂をその身で体現していると言って
いいだろう。
実際、併記されている第三者評価も︵非常に珍しいが︶肯定・否定
の二色にくっきり分かれていた。
しかし、その評価を踏まえた上で︵いやむしろ、踏まえたからこそ︶
、不可解な点が有った。
27
Fragments 6
・・・なぜ誰も、この男の解任・追放を言い出さない?
そう、彼の問題行動に大いに頭を悩ませているであろうベイグラム
行政府やバローメの管理者達、
そして、共同で捕獲任務を担当し前線で彼と肩を並べる者達も皆、
その事を言い出していなかった。
特に記載されていない為に不明だが、彼の背後に権力者が居る可能
性を真っ先に考えてみた。
が、そういった連中とは恐らく全く無縁な部類の人間だろう、とす
ぐ否定するハメとなった。
ミーテは、専門機関学校に在籍していた期間中、そんな輩の何人か
と出会った事がある。
全員それぞれ、性格や能力・成績はてんでバラバラだったが、全員
に共通する部分もあった。
皆いわゆる﹁選民思想﹂と言える尊大さと傲岸不遜な思考・態度を
基本として持ち、
自らを特別な存在として意識し、あるいはそれをはっきり名言した
りもしていた。
時には場違いかつ、自身の立場をはき違えた誇りや出自を振りかざ
して敵対してくる者さえ居た。
目の前に立ち塞がる全てを持てる能力のみで、冷酷としか言えない
容赦の無さで徹底的に叩き潰し、
己の進む道を切り拓いてきた彼女は、そのどうしようもないほどの
28
黒い空気を味わってきた。
だからこそ、分かるのだ。
その上、ぶつけた皮肉も通じない︵皮肉とは思っていないかもしれ
ないが︶となると、
そんな﹁口撃﹂など息をするのと同じように、当たり前に行う政治
的駆け引きの場とは、
これまでの彼の人生の中では一度も関わりが無かっただろう事は、
容易に推察出来る。
また、彼が貫き続けている活動スタイルも雄弁に物語っていると言
ってだろう。
相手は政治的なやり取りどころか、意思の疎通すら未だに取れない
機械仕掛けの獣、ライメック。
そして、そういったやり取りが可能な人間達は、彼自身が文字通り
音速で後方へ置き去って征く。
なにより、そういう事を許してくれるほど、この惑星の環境も任務
も、甘くなかった。
活動の華やかさが目を引きやすい為か、過度に報道されがちなバロ
ーメでの前線任務。
純粋に憧れたり出世への弾みを付けたいなど、様々な理由で若者達
が毎年続々と志願する。
がしかし、バローメの全登録者約6万人中で前線に携わる者は、現
在たったの3百人強。
少数精鋭と言えば聞こえは良いが、勇壮な響きに隠された現実はど
こまでも非情である。
前線担当者達が相手にするライメックは、どの種類も一様にタフだ
29
った。
しかも、一度でもテリトリーに侵入されれば執拗かつ獰猛に攻撃を
繰り返す性質も持っていた。
更に、ライメックの攻撃手段はどれもこれも非常に強力で侮れない
物ばかりである。
僅かな油断や慢心が原因で、例え中堅や古参の担当者でさえ即、死
に繋がる可能性は低くなく、
そんな過酷極まりない任務に心折られ、バローメやベイグラムを去
る者も多かった。
そういった条件下で彼のようなスタンドプレイを︵もはや暴走に等
しいが︶容認し、
多少の不和はあるものの組織的活動が成り立っている事自体、奇跡
としか思えなかった。
確認するほど・・・常軌を逸しているのが分かる・・・後は、能力
的な何か?
﹃﹁クレイジー﹂より﹁コールド﹂へ。間もなく目標と接触するが、
任務の確認は済んだか?﹄
ミーテがデータを追っていると突然、外から先程より落ち着いた﹃
声﹄が飛んできた。
だがしかし名前を呼ばれていない為、自身に向けられているとは思
わず、無視してしまう。
﹃・・・・・・。﹄
﹃﹁コールド﹂聞こえているか?あー・・・確か・・・、ミーテ、
30
で良かったか?﹄
﹃えっ?あ、はい何でしょうか?﹄
あまりにも唐突に思考の水面から引き戻された為か、ミーテは苛立
ちを忘れて素で対応してしまう。
﹃繰り返すが﹁コールド﹂、間もなく目標と接触するが、任務の確
認は済んだか?﹄
﹃・・・・・﹁コールド﹂?﹄
﹃ああ、アンタのコールサインだ。﹁クール﹂ってのも良かったん
だが、もう既に・・・﹄
﹃それも研修の一環、拒否は許されないのでしょう?﹄
他の候補を挙げる彼を制し、諦めをたっぷり乗せた﹃声﹄を押し付
けてみる。
﹃格好良いと思うんだが、不満か?﹄
﹃どうでもいいです。﹄
﹃そうか?﹄
彼女の応対への当て付け、という皮肉は彼の性格上考えられないと
僅かなやり取りで分かっていた。
恐らくこれも本気で、彼独自のセンスを発揮して格好良いと思って
の結果なのだろう。
31
そう思えばこそ、そして研修の慣例だと理解しているからこそ、早
々に諦めがついた。
﹃﹁コールド﹂から﹁クレイジー﹂へ。任務詳細は確認中、しばし
お待ちを。﹄
﹃了解、急いでくれ。それと同時に、攻撃ポイントの指示も頼む。﹄
﹃・・・は?﹄
32
Fragments 7
・・・一体、何を考えている・・・・・?
ミーテがそう思っているのとほぼ同時に、全くの偶然からチーフも
同じ思いを抱いていた。
最初は彼女の感情・言動から、最も対処しやすい思考パターンを読
み取るのが狙いだった。
当然、先程のやり取りで自身がうっかり犯したミスを、もう一度繰
り返す気など毛頭無かったので、
︵こう言っては彼女に悪いが︶運良くアーサーとの会話で感情が読
み易くなったのをこれ幸いと、
データを送る前、彼とのやり取りが始まった辺りから、より重点的
に分析を進めていたのだ。
そこからまず一つ、第一印象からは考えられない意外な事実が浮か
び上がった。
他者に対する無関心な態度から﹁はぐれ者﹂もしくは﹁一匹狼タイ
プ﹂と評価していたが、
そういう心構えの者がこれみよがしに現す﹁反抗心﹂など殆ど無く、
むしろ驚く程従順だった。
無論、全ての状況に当てはまるという意味では無く、ましてや盲目
的な﹁服従﹂では決して無い。
相手の発言に疑問を抱けば即座に尋ね、彼女のルールに反するなら
ば抗議に出る。
抗議自体も感情優先では無く、あくまで理性を保った内容で出来う
る限り穏当に行っているようだ。
33
先程は、初対面のアーサーへの対応パターンを誤ったらしい結果が
舌打ちという態度に現れたが、
ざっと眺めた限りでは、彼女の反論や心理データは妥当な反応の範
疇に収まっていた。
また、配属されたばかりの者なら大抵有る、望んで就いた職務に対
する期待や喜びも持っていた。
感情の起伏が乏しいのは生来の性格から、表情の変化が少ないのは
緊張から来るものかもしれない。
呆れや諦め・苛立ちは、相手が﹁あの﹂アーサーなのだから、と苦
笑いで済ませられるレベルだ。
実際つい先程までは、苦笑しつつも安心して2人のやり取りを眺め
ていられたのだ。
だがそれも、アーサーの発言をきっかけになんの前触れも無く唐突
に起きた心理データの異変と、
ミーテが隠し切れなかった︵あるいは無意識に出てしまった︶僅か
な表情を目にするまでだった。
時間にして僅か1秒にも満たない、刹那の変化だった為に最初は見
間違いか機器の異常を疑ったが、
起伏の乏しかった直前までの心理データを比較対象に、その瞬間は
確かに色濃く存在していた。
そして何より決定的だったのが異変の瞬間に見てしまった、彼女の
瞳に渦巻く感情の嵐だった。
微かな悲しみ・・・大きな歓喜と・・・・・それより遥かに大きな・
・・憎悪!?
34
偶然の幸運からか目撃した事は悟られてはいないようだが僅かな会
話や仕草・態度などから、
相手の感情や思考をある程度読みとれるミーテに対し油断は出来な
い、とチーフは思った。
なので改めて、彼女のプロフィールデータを洗ってみたが、鍵にな
りそうな項目は皆無だった。
そもそも、ミーテがその激情を向ける相手が必ずしもアーサーとは
限らない事にも気付く。
だが、それが他の誰かに向けられたものであれ、立場上チーフは許
す訳にはいかなかった。
そこで、﹁いざという時に切れる手札﹂を増やす時間を稼ぎ、それ
と同時に注意を強く促す為に、
ある人物に︵やや強引に︶付加されたものの滅多に使用しなかった、
とある機能を起動させた。
リンクは原理上盗聴なんて出来ないが、これから先の話が非常にデ
リケートな問題を含む以上、
万が一も無いとは思うが、アイツの気まぐれで彼女に中継される訳
にはいかないからな。
そう考えてから、自身の用心深さ︵あるいは臆病さ︶に密かに苦笑
すると、彼に﹃声﹄をかけた。
﹃なあ、アーサー。﹄
﹃ん?こっちで連絡なんて珍しいな。何かあったのか、義兄さん。﹄
日頃は﹁同じ職場に勤める上司と部下﹂というお互いの立場を弁え
35
てか不必要な接触を避け、
またその生真面目な性格上公私混同を嫌うチーフからの急な連絡に、
何かを感じ取ったのだろう。
茶化したりする事無くとても落ち着いた様子で、アーサーは言葉少
なに話を促した。
﹃いや、まだ何かあった訳じゃない。﹄
﹃だけど、何か気になる事が有るから連絡したんだろう?﹄
﹃ああ。・・・お前、誰かに恨まれるような覚え、有るか?﹄
どうやって伝えようかとチーフは少し迷ったが結局、余計な事は交
えず単刀直入に聞いてみた。
﹃何だいそりゃ?﹄
﹃・・・だよな。﹄
余りに間の抜けた答えにチーフは安堵と共に緊張の糸が切れたのか、
脱力し切った返事を返す。
アイツの事は信頼してるが、人の恨み︵しかも女性からだ!︶は分
からんからな。
僅かな時間そう考えると迷いを払うように首を振り、気を取り直し
てアーサーに話しかける。
﹃気になったのはお前のチームメイト、ミーテ・クオーレの事だ。﹄
36
﹃﹁コールド﹂がどうかしたのか?﹄
﹃プロフィールは優等生らしい綺麗なものだが、心理データが気に
なるんだ。﹄
そうは言うものの、チーフはアーサーに対して物的証拠を提示する
事は一切無かった。
またアーサーも、チーフにそういった情報の開示を要求する気は、
微塵も無い。
それは職務規定の順守という事情を超えて、互いに対する信頼が成
さしめた事象であるし、
そしてそれ以上に、アーサーの持つ野性的な鋭い感働きが彼の返答
に現れたからでもあった。
﹃なるほど、義兄さんは俺が﹁コールド﹂に恨みを買ってる、そう
思ったんだよな?﹄
﹃そう思ったし、まだ疑いが晴れた訳じゃない。たとえ、お前に心
当たりが無くても、だ。﹄
﹃分かった。﹄
﹃ならいい。﹄
たった一言のやり取りを最後に連絡を終えたが、その瞬間に交わし
た互いの真っ直ぐな視線、
その中に2人がそれぞれ込めた意味を、チーフは今一度強く祈るよ
うに思った。
37
﹁上手くやるさ﹂か・・・。本当に油断するなよ、アーサー。
38
Fragments 8
﹃本気で・・・いや、正気ですか?﹄
アーサーからの要求にしばし呆然としたミーテが我に返り、口を突
いて出たのはそれだった。
今までの会話から冗談を言う癖は無さそうに見えた為、彼の発言が
本気かどうかを尋ねる事自体が、
余りに馬鹿馬鹿しく感じたのも有るが、現在の彼女の本音を表現す
る言葉はそれしかなかった。
彼女自身、この日が来るまで様々な情報を入手し続け、前線任務の
過酷さは充分知っていた。
ベテランと呼ばれる者達でさえ、一定以上の危険に曝される可能性
は低くない状況において、
研修初日、かつ任務初参加の彼女に攻撃ポイントの選定を任せるの
は、自殺行為としか言えない。
・・・一体、何を考えているの・・・・・?
彼女は知る由も無かったが偶然、チーフと全く同じ事を同じタイミ
ングで違う相手に対し考えつつ、
彼の回答を待つ間に改めて今回の任務内容、特に捕獲対象のライメ
ックのデータに目を通し始めた。
対象名イウェルスム・プルモー、﹁逆さクラゲ﹂という名前通りの
見た目。
クラスはグランディス、このサイズまで成長するなんて珍しいから
捕獲対象になったのか。
39
機動力は皆無、だけど防御・攻撃手段はそれを補って余りある・・・
・・ん?
次々と流れるデータを確認する最中に攻撃手段の項目を比較した結
果、不可解な点に気付いた。
今回の対象、イウェルスム・プルモーに対する大規模な捕獲任務は
既に5回目を迎えており、
先程間一髪で回避に成功した攻撃、﹁高温物質流動投射﹂も3回目
までは頻繁に放たれていた。
前回は放たれなかったと記録されているが、それと同時に活動の鈍
化も報告されていたので、
こちら側の度重なる攻撃とそれに対する防御・反撃で消耗しつつあ
る、と分析班は予測していた。
事実、対象のリアルタイムデータでは、初撃の直前までその兆候は
観測されていなかった。
この攻撃は投射までの間、全てのプロセスに比較的長い時間と莫大
なエネルギーを要する。
また、投射直前の最終過程では構造体中央部に有る複数の蝕腕︵こ
れ自体が攻撃手段ともなる︶が、
加速ライン及び投射の方向・角度を決定する、言わばガイドの役目
を果たす為に大きく変形する。
この為、捕獲任務の際前もって配置した観測班より送られてくるエ
ネルギーの推移と分布のデータ、
そして後衛︵あるいは本陣︶となるウォラーレ・バーラエナの光学
観測データを組み合わせる事で、
威力は脅威的だが、余程運や状況が悪くない限りはかなり避け易い
攻撃に分類されていた。
40
ところが今回、﹁分かり易い為に避け易い﹂はずの攻撃は投射の寸
前まで全く察知されておらず、
アーサーが強引かつ意図的に行った、フレンドリーファイア︵味方
誤射︶からの回避運動の結果、
投射線上に位置していたウォラーレ・バーラエナは辛くも被弾を免
れ、彼は艦を救った事になる。
また、その時のアーサーの言葉と、直後にチーフから出された指示
の内容も妙な組み合わせだった。
彼は突撃時、艦を撃沈﹁する﹂と脅したのでは無く、撃沈﹁される﹂
と警告を発していた。
そしてチーフは、彼への叱責では無くウォラーレ・バーラエナへの
回避指示で対応しているが、
彼が乗り、そして引き連れているミサイル群は本来、そこまでする
程の脅威では無かった。
何故なら、味方誤射だけで無く流れ弾の被弾も考慮した、厳重なセ
イフティが施されているからだ。
しかも、もし彼がミサイル群の全セイフティを解除していても、攻
撃がこちらに徹る可能性は低く、
その時は全力展開されていなかったとはいえ、アルファ・シェルに
ほぼ完全に阻まれていただろう。
マス・トランスファー・エンジンが作り出す艦体防護フィールドで
あるアルファ・シェルは、
従来の金属製の装甲や、エネルギーを集中展開させるバリア・シス
テムなどとは根本的に異なり、
設定した領域内の任意空間を直接操作する事で、防護対象に到達・
接触出来なくしてしまう。
41
その為、もし彼が本気で攻撃したとしても一部の種類を除き、ミサ
イルは届かなかったはずだが、
にも関わらずチーフは、彼の発言を無視せず、叱責する事も無く、
即座に回避を選択していた。
それも、ただ単にニアミス︵異常接近︶の回避を目的とした緩やか
な艦体運動、などでは無かった。
ウォラーレ・バーラエナが余りに巨大であるが故に、艦の航路デー
タを見るまで気付かなかったが、
チーフの指示は、コンバット・マニューバ︵戦闘機動︶と呼ばれる
動き、そのものだった。
それは本来、旋回性の良い小型の機体が戦闘中に行う操縦テクニッ
クの一種に分類されており、
敵の攻撃とその機会を奪いつつ逆に敵を攻撃し得るよう、自機を優
位な位置に置く為の技である。
もし、アーサーを敵とみなした場合の機動だったとするならば、あ
の動きでは絶対に逃れられない。
だが、イウェルスム・プルモーの攻撃を回避する場合なら、理想的
な機動と言えた。
しかも追撃に備えたのだろう、アルファ・シェルの全力展開という
おまけまでついている。
そしてそれは全て、捕獲対象からの攻撃を予測していなければ、全
く必要の無い行動ばかりだった。
絶対に偶然なんかじゃない。彼には﹁何か﹂があって、チーフもそ
れを知ってる・・・でも。
42
投射寸前のアーサーとチーフの言葉、その直後に出された回避運動
と最大限の防御の指示、
そして一連の流れにおいて、アーサーを咎める事など始終微塵も無
かったチーフの行動、
全てが彼の持つ何らかの能力を示唆し、それ故問題行動の容認に繋
がっていると彼女は確信した。
だがそこに至っても、やはり今回の対象イウェルスム・プルモーの
行った察知されなかった攻撃と、
アーサーの持つ何らかの能力、そしてその明確な関連性の理由は依
然として謎のままだったが、
任務の確認とそこからの類推に数秒とはいえ意識を集中していたミ
ーテに、彼からの返答が来た。
﹃正気かどうか、決めるのは俺じゃない。﹄
落ち着き澄み切った﹃声﹄で返ってきた彼の答えは、どこまでも至
極真っ当な内容だったが、
ミーテは意味を吟味した上で僅かに首を傾げ、﹁本当に?﹂と言い
たげに片方の眉を上げる。
それでも、﹁お前が決めろ﹂という彼の言外の返答と自信に満ちた
態度は、変わらなかった。
しばし互いに視線を交錯させた後、ゆっくり息を吐いて目を伏せた
のは、ミーテの方だった。
﹃なるほど・・・分かりました。﹄
43
Fragments 9
彼は、自信を見せつけ・・・いや、態度と言葉で表した。次は間違
いなく、私の番。
﹃ところで、任務の確認と攻撃ポイントの指示の方は、どうだ?﹄
﹃任務確認と攻撃プラン構築は、ほぼ終了しています。ですがその
前に、質問が有ります。﹄
﹃何が聞きたいんだ?﹄
その態度や発言を受け、アーサーの評価を僅かに改めていたミーテ
は考えを一旦保留する事にした。
これから彼女が行う質問はどれも確信は有るが、与えられた情報を
元にした個人的推測に過ぎない。
だが、与えられたと言っても情報の出処やその内容は、どれも一定
の信用性は有るものばかりだ。
しかし、イウェルスム・プルモー︵あるいはライメックそのもの︶
の有している性能の情報と、
彼が持つ何らかの能力または機器︵でなければ、ただの野性的な勘︶
に関する情報は別だった。
専門機関学校に在籍する前から収集してきた情報に、ライメックの
項目は必ず記載されていたが、
このような性能の情報など、︵少なくとも彼女は︶今まで一度たり
とも目にした事は無かった。
ライメックに関する情報の更新頻度から考えると、つい最近発見さ
44
れた新種という訳では無いし、
今回の対象が変種であるならば、今度は彼の能力とチーフの行動に
説明がつかなくなってしまう。
また、彼ら2人の出世や現在の地位の安泰を狙った情報の隠蔽や欺
瞞工作の可能性については、
彼らを取り巻く人間関係やアーサーの評価を見る限り、そのパーセ
ンテージはゼロに等しかったが、
だからこそ彼女自身が自分の言葉ではっきりと、問い質さなければ
気が済まなかったのだ。
﹃捕獲対象の性能に関する情報と、貴方の持つ何らかの能力につい
て、説明を求めます。﹄
﹃なるほど。それを聞かなきゃ、確かに何も提示出来ないな。﹄
﹃そういう事です。﹄
﹃だが残念ながら、今すぐ全部を説明する時間は無いな。だから、
手短に頼む。﹄
私の構築した攻撃プランを、理解・・・しているのだろうな。
彼がそうしなければ自身が言っていたであろう言葉を受け、ミーテ
は少し安心した。
そうして時間的制約を踏まえた上で、ミーテは問い質す内容を素早
く吟味し直し、口を開く。
﹃ではまず今回の任務ですが、対象の捕獲は成功しますか?﹄
45
﹃あの様子じゃ、まず無理だな。﹄
﹃貴方の能力をもってしても?﹄
﹃ああ。だが、今弱らせておけば、必ず次に繋がる。﹄
その言葉を受け、考えていたプランの内いくつかを、躊躇無く削除
していく。
﹃貴方の能力と、対象の性能との関連性は?﹄
﹃有る、らしい。﹄
﹃何故、曖昧なんです?﹄
﹃これまで捕獲したヤツ全部、どんなに調べてもそんな機能は見つ
からなかったからだ。﹄
﹃けれど、現象は確かに存在している、と?﹄
﹃ああ。﹄
大分減っていたプランは更に消されていき、残りは僅かとなった。
﹃ではこれで最後ですが、貴方の能力と活動スタイルとの関係は?﹄
﹃有る、と俺は思ってる。﹄
﹃これも曖昧ですね。何故です?﹄
46
﹃直接触れ合えば分かり合える、と思うんだが・・・試すヤツが他
に居ない。﹄
最後の回答で攻撃プランは決定し、後は実行する本人のチェックを
待つばかりとなる。
そのデータを即座に渡してチェックを待つ間、ミーテは更に一つ、
聞いてみた。
﹃では・・・そんな貴方は自分を、特別な存在だと思いますか?﹄
﹃いや、別に。﹄
これから行うプランに目を通しながらだからか、やや投げやりでは
あるがあっさり否定された為、
自分にとって重要な質問を適当にはぐらかされたと感じたミーテは、
口調を強めて再度問う。
﹃現象は確かに存在して、それを認識出来るのは貴方だけ、それで
もですか!?﹄
﹃目が見えて、耳が聞こえて、言葉を話せる、それだけで特別なの
か?﹄
攻撃プランのチェックを終え、真っ直ぐ彼女に向き合い静かにそう
言うアーサーから暗に、
落ち着けと諭された気がしたミーテは僅かに目を伏せトーンを抑え
て、念押しのように尋ねる。
﹃貴方にとってはその程度、という事なのですね。﹄
47
﹃ああ、そうだ。あいつらの声が聞こえる、ただそれだけだしな。﹄
耳慣れた言葉が妙な意味を持ったのに惹かれ、ミーテは伏せていた
目を向け直して言葉を尋ね返す。
﹃声?﹄
﹃俺がそう思ってるだけなんだがな。﹁モーター・ワード﹂って言
うんだ、格好良いだろ?﹄
﹃・・・モーター・ワード﹄
元から有る単語を無理矢理組み合わせただけで、飾り気の一欠片も
感じられない武骨な言葉だが、
屈託無く笑う彼から発せられたそれはとても不思議な響きを持って、
ミーテの耳に届いていた。
48
Fragments 10
﹃2人共、そろそろ時間だ。﹄
ミーテとアーサーの会話を黙って聞いていたチーフは、2人の間に
現状を据え置いた。
時間的制約を思い出したミーテが表情を引き締めたのを認め、アー
サーは会話を切り上げる。
﹃そういう訳だ﹁コールド﹂、また後で説明するが、今知りたいな
らチーフに聞いてくれ。﹄
﹃了解しました。ところで﹁クレイジー﹂、攻撃プランのチェック
は終了しましたか?﹄
﹃ああ問題無い、良いプランだな。﹄
確かに、提出された攻撃プランに問題は無い・・・・・軍務の経験
など全く無いというのに。
アーサーから密かに送られてきた攻撃プランのデータとミーテの経
歴・成績データとを見比べ、
短時間に構築されたプランの見事な出来栄えと、軍事方面とは全く
無縁な記録との余りの落差に、
チーフは一人、解決されずに積もり続ける不安要素を抱え、小さな
唸り声を上げていた。
彼がデータを睨んでいる間にも2人は任務上の必要事項を確認し続
け、最終チェックに入っていた。
49
﹃では、機体の・・・いえ、兵装チェックを開始します。﹄
﹃了解。アーマメント・システムチェック、スタート。﹄
アーサーの応答を皮切りに、それぞれの目の前に複数のウィンドウ
が表示される。
一つのシステムの信頼性・安全性を複数の人員で確認する、ダブル
チェックという行為である。
自己診断プログラムの目で追えない程高速のチェックが済み、正規
のチェックリストが表示された。
チーフの目の前にも2人のものと同じウィンドウが開いているが、
ミーテはその事を知らない。
﹃セイフティシステム。﹄
﹃グリーン、チェック。﹄
﹃クルーズガイドシステム。﹄
﹃グリーン、チェック。﹄
やれやれ・・・研修初日から要監視対象になるとはバローメの発足
以来、史上初だな。
チーフは出そうになる渋面を押し隠し、淀みなく進められるダブル
チェックを眺める。
アーサーの問題行動で慣れている為その程度で済ませているが、本
来は大問題となる可能性もある。
バローメは軍所属の恒星系探査部署を独立させ、ベイグラム行政府
50
へ管轄を移行した組織であり、
ライメック捕獲に際して各種兵器の集団運用を行う為に、一般的に
は準軍事組織とみなされている。
それ故、純粋な軍事力としては規模こそ軍に次ぐものの、その練度・
装備は共に常に全軍を上回り、
極小規模ながら、軍からは前線任務に随行する形での実戦形式の訓
練を依頼される事もある程だ。
そういった組織としての流れと衆目に曝される体裁、そして強力な
兵器を運用・保有する立場上、
バローメ配属となる人員はもれなく、そして専門機関学校への進学
を決定した段階の者達でさえも、
軍情報部や中央政府の最重要機関並みの、非常に厳しい精神・心理
鑑定を受ける義務が生じる。
当然ミーテも精神・心理鑑定を受け、クリアしたからこそこの場に
研修者として居られる訳だが、
彼女だけでなく、これまでの経歴・成績からは︵優秀であっても︶
全く予測出来なかった能力や、
精神・心理鑑定をクリアした後から、︵大抵は偶然だが︶心理的な
不安定さが発覚した場合には、
それがどんなに些細な内容であっても必ず、要監視対象とする事を
チーフは自身のルールと定め、
組織内での己の立場と職務を良く理解した上で、﹁必要な措置﹂を
淡々とこれまでこなしてきた。
﹃フライトマニューバシステム。﹄
﹃オールグリーン、チェック。﹄
51
﹃ウォーヘッドコンディション。﹄
﹃Mk3、Mk5、Mk7、Mk11、レディ。オールグリーン、
チェック。﹄
﹃FAMAリミット。﹄
﹃Mk3、460。Mk5、320。Mk7、360。Mk11、
540。グリーン、チェック。﹄
・・・・・理由はさっぱり分からんが、余りに手馴れ過ぎている。
緊張や焦り、不安や先程の︵何かしらへの︶憎悪の片鱗など、どん
な小さな動きも見逃すまいと、
心理データにいくら注目しても全く現れない変化に、チーフは逆に
不安と不審を同時に覚える。
手順が素早く的確に行われるという事は、それだけ彼女の能力が高
い事を意味しているのだが、
若者に有りがちな、﹁己の才に増長し、溺れる﹂などといった分か
り易い反応は欠片も無く、
成績は優秀でも、現場での即戦力と成り得る高い能力を裏付けるよ
うな立派な経歴なども一切無い。
偶々開花した素晴らしい能力、という偶然の産物と片付けるには本
人の感情は非常に希薄な上、
どんな状況であっても常に冷静沈着という評価は、例え社交辞令上
の世辞でも言えはしない。
チーフがこれまで淡々と﹁必要な措置﹂を下した人物達とは、余り
52
にも大きくかけ離れていて、
大問題に発展する可能性を内包していたとしても現状、監視以上の
手出しが出来る訳も無く、
だからと言って無視する訳にもいかない存在、それが︵彼女にはと
ても失礼だが︶不気味だった。
53
Fragments 11
﹃﹁コールド﹂からチーフへ。ダブルチェック、終了しました。﹄
﹃おう、ご苦労さん。その様子だと、問題は無かったようだな?﹄
﹃はい、チーフ。﹄
﹃チェック終了と同時に突撃開始した事は、気にならないのか。﹄
﹃はい、既に貴重な時間を浪費させてしまっていましたし、それに・
・・﹄
﹃それに?﹄
﹃これ以上押し留める理由も意味も有りません。また、その手段も
持ち合わせていません。﹄
自身が要監視対象という、見方を変えれば犯罪者扱いの一歩手前と
なっている事など露知らず、
ミーテはチーフに対し、今の正直な己の立場と心境の客観的感想を
包み隠さず素直に述べる。
彼女を﹁危険人物である可能性﹂を前提に、その行動や発言・心理
を密かに監視するチーフに対し、
彼︵を含む複数の人物︶に﹁問題児と見られている﹂程度の認識で
あるミーテの発言と態度は、
専門機関学校在籍中に自然と身に付いた、︵相手が原因の︶身辺上
での諸問題を自力解決する上で、
54
﹁被害者としての立場﹂を崩さず最短かつ最小限の被害で、事態を
収拾出来る対処法の一つだった。
﹃ミーテ・ク・・・﹄
﹃﹁コールド﹂の方が、呼びやすいと思いますが?﹄
﹃分かった。﹁コールド﹂﹄
﹃なんでしょうか?﹄
﹃後で報告書にも添付してもらうんだが、アイツに出した攻撃プラ
ンをこちらにも回してくれ。﹄
﹃了解。﹄
そう言われる事を想定してあらかじめ送信待機して置いたデータを
即座に送りつけると彼女は、
艦外で繰り広げられる激しい攻防を捉えた光学観測データを遠景モ
ードで開き、無言で眺める。
そこに丁度映し出されたのは、見事に決まったアーサーの初撃によ
って出来たバリアの穴に向けて、
これでもかと言わんばかりに殺到する、他のベテラン達が放った多
数の攻撃が作る火球の嵐だった。
プランで提案した位置を正確に射抜くとその場を離れ、次の目標を
目指して飛翔を続ける彼は、
もののついでといった何気ない機動で、次々に迫る対象の反撃をい
とも簡単にくぐり抜けて征く。
その動きと素っ気無さ、というよりどこか楽しんでいる節さえ有る
55
フライトの様子はまるで、
様々に形を取る荒波へ丁寧に乗って素晴らしい技を披露する、熟練
サーファーの美しさに似ていた。
だが、彼女の提案した攻撃プランはそんな優雅な遊びを取り入れら
れる、生易しいものでは無い。
捕獲︵は今回出来ないが︶対象の防御・攻撃手段の多彩さと、それ
をものともしない彼の能力、
そしてやや目減りしてしまった制限時間と、次回へ確実に繋げられ
るようにする、という目的。
それらが合わさって導き出された︵残されたとも言える︶選択は、
非常に苛烈なものだった。
対象の反撃をかなり限定出来るが多大な時間と兵装を消費するのん
びりとした長距離攻撃ではなく、
反撃を喰らう可能性が高い中で高速かつ直線的に接近・攻撃し、逃
げ出す一撃離脱戦法でもない。
それらを組み合わせた波状攻撃も、対象の防御能力を強引に突き破
る飽和攻撃も、選択を破棄した。
そうして最後に残った選択肢とは、至近距離に張り付いて反撃をた
だひたすらに回避し続け、
僅かに生まれる隙を突いて対象の防御を崩した所へ、協働する味方
の攻撃を一気に集中させる、
対人戦闘ではボクシング等でポピュラーかつメジャーな戦法、﹁イ
ンファイト﹂に限りなく近い。
しかしそれはあくまで、人間対人間という同種の存在との近接格闘
における戦法であって、
大気圏外まで届く超長射程の高威力攻撃や、山盛りという言葉すら
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生温い中・近距離攻撃を持ち、
正確に狙いすまさなければ、貫くどころか弱める事すら容易では無
い防御手段で分厚く鎧っている、
金属と精密機器とで構成された山のように巨大な相手に、しかも身
一つで挑む為の方法では無い。
それでも彼女はその事を︵危険性をも理解して︶踏まえた上で実行
可能な攻撃プランに推奨し、
目を通したアーサーは︵チーフもだが︶問題無しと判断し、いとも
容易くやってのけている。
ただ時々、ミーテの目では何も攻撃が見えない所でも﹁何か﹂を回
避するような仕草が見られたが、
先程彼が告げた、ライメックに備わっている謎の機能が関わってい
る事は、容易に推察出来た。
﹃﹁コールド﹂よりチーフへ。﹄
﹃どうした?﹄
﹃先程﹁クレイジー﹂の言っていた、﹁モーター・ワード﹂につい
ての説明を要求します。﹄
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Fragments 12
﹃了解した。だが、こちらから出せる情報は、そう多くないぞ?﹄
﹃・・・機密ですか?﹄
﹃いや、﹁モーター・ワード﹂の項目に機密は一切無い。﹄
機密情報への接触を考慮して身構えたミーテの発言を、チーフはあ
っさり否定する。
だが彼女が知り得るのと同程度の内容ならば、外部への流通経路ま
で的確に把握している彼は、
未だ納得出来ないと言いたげな彼女の機先を制し、その事を強調す
る為にもう一度伝えた。
﹃﹁モーター・ワード﹂だけでなく、ライメックの機能に関連する
機密は一切無いぞ。﹄
﹃しかし、その事はここに来て貴方達に今日、聞かされたのが初め
てです。
それまで私は全く知りませんでしたし、恐らく私以外の全員が同
じだと思います。﹄
﹃バローメでは特に情報公開の差し止めはしていないし、それ以前
に広報担当の部署が存在しない。
それに君も知っての通り、ウチはベイグラム行政府の傘下組織だ、
情報統制の権限は持てない。﹄
チーフの述べる事柄は至極真っ当で、その上全てが事実だった。
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所属が軍からベイグラム行政府へと移行し、活動内容の変化に合わ
せて組織強化はあったものの、
バローメは依然として政府隷下の惑星行政府傘下組織であり、完全
独立の研究・調査機関ではない。
その為、独立組織ならば大抵が有している広報・予算編成・人事に
関わる部署を持っておらず、
それらに関する一切の情報は、管轄している行政府への報告という
形を取っている。
上層に送られた情報がどう取り扱われるか、それを左右する権限な
ど持ち合わせていなかった。
﹃では、ライメックの機能に関する情報は・・・﹄
﹃行政府側の意向が全てだ。﹄
﹃ですが、より安全で確実な任務遂行を目指すのなら・・・﹄
﹃﹁現象は確かに存在して、それを認識出来るのは一人だけ﹂・・・
君の言葉だ。﹄
﹃・・・・・。﹄
自身が先刻発した言葉の意味を、そして言葉を繰り返したチーフの
真意を、彼女は改めて理解した。
前線に出ている全員が、様々な捕獲対象の持つ未知の機能とそれが
起こす現象を目の当たりにし、
存在は確かに確認し報告は上げられるものの、はっきりと認識出来
る者はただ一人という現実を。
それを理解した彼女は、自身が図らずも提示してしまった矛盾を前
に、押し黙るしかなかった。
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﹃そういう事だ。未知に対する恐怖を無視する訳じゃないが、殊更
に煽る必要もまた無いんだ。﹄
﹃それが、行政府の意向ですか?﹄
﹃恐らくは、そうだろうな。それに全ての情報を隠蔽している訳で
も無いのも、また事実だ。
だからまぁそう噛み付いてやらないでくれ、現場での必須情報に
は何も制限は無いのだからな。﹄
﹃・・・了解しました。﹄
﹃大分話が逸れた、そろそろ戻そう。﹄
﹃お願いします。﹄
﹃なら、まずは確認からだ。アーサー!﹄
﹃はいよ!﹄
突然呼び出されたアーサーは、前もって何かしら聞かされていたの
だろう。
任務の片手間にと言わんばかりの軽口で短く応えると、ミーテのリ
ンクに新たなデータを送る。
すると途端に、静かだった彼女の耳元へ向けて大音量の騒音が流れ
込んできた。
急激な変化に思考が追い付かず、顔を顰めて音を絞ろうとする彼女
を制するように、チーフが言う。
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﹃音量は絞るな。﹄
﹃・・・了解、ですがこれは一体・・・?﹄
﹃何か聞こえないか?﹄
﹃・・・っええ!爆発音と風の音、それと金属音が・・・。﹄
﹃そうか。よし、アーサーもういいぞ。﹄
﹃やっぱり、ダメだったか。﹄
アーサーの言葉を最後に騒音はぱったりと止み、残ったのは耳鳴り
のような感覚と混乱だけだった。
急な身体感覚データの流入に呆然としている彼女に、再びチーフが
話しかける。
﹃突然で驚いただろうが必要な事だった、その事情は理解してくれ。
﹄
﹃・・・了解しました。ですが、今のは一体?﹄
﹃﹁モーター・ワード﹂が君にも聞こえるか、そのテストだ。﹄
﹃では、テストは失敗ですか?﹄
﹃ああ。本当に、なんで聞こえるのがアイツだけなんだろうな。﹄
いつものようにやれやれといった表情で肩を竦めた彼の発言は、彼
女に向けられたものではないが、
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例え尋ねられたとしても返せる答えを持たない彼女は、新たな疑問
を投げかけるしかなかった。
﹃耳に届いているのに、音波ではないのですか?﹄
﹃ああ、音波・電磁波・空間振動、ありとあらゆる機器で測定した
が検知出来なかった。﹄
﹃それが、﹁モーター・ワード﹂の特性・・・。﹄
﹃全ての現象に共通する特性の一つだ、しかもそれだけじゃない。﹄
﹃捕獲した対象からは機能を発生させる機構が発見出来なかった、
と彼は言っていました。﹄
﹃その通り、だから対策の立てようも無い。﹄
﹃ライメックのカテゴリや種類によっては特定の機能を有している、
という事は?﹄
﹃そこにも規則性は無い、分かっているのはカテゴリ次第で現象の
範囲と規模が変わる事だけだ。﹄
﹃つまり、対象大きいほど周囲への影響が大きくなる訳ですね?﹄
﹃概ねその通りだが、それにも多少の例外はある。﹄
﹃それでは本当に・・・﹄
﹃ん?﹄
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呟くような彼女の小声へ意識を傾けたチーフに、僅かに伏せていた
顔を向けるとはっきり伝えた。
﹃行き当たりばったりの、出たとこ勝負が正攻法になってしまいま
す。﹄
﹃・・・・・そうだな。﹄
それを長らく続けてきただろうチーフの苦笑いと言葉に、ミーテは
嘆息で応えるほかなかった。
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Fragments 13
モニタの向こうで盛大な嘆息と共に眉をひそめた彼女を深く静かな
苦笑いで眺めていたチーフに、
これまでそれぞれの管轄部署を指揮していた艦長と副長から、示し
合わせたように声がかかった。
﹁チーフ、現在活動中の攻撃班の内、約半数が残弾規定値を下回り
ました。﹂
﹃こちらは被弾・損傷した機体を順次格納し修理を始めたところだ、
補給は後回しになっとる。
それと、﹁アウタードック・シスターズ﹂からは艦体機動の件で、
検査解析許可申請の嵐だ。
リンク越しとは言え、こうがなられてばかりではたまらん。なん
とか対処してくれんか?﹄
艦体の航行と各種設備の運用を艦長が、前線担当者と付随する人員
及び任務進捗の統括を副長が、
互いの役職上において持てる能力と許される限りの権限、それらを
フルに活用して実行していた。
が、やはり任務全体における各部署の円滑化と進捗の総括に、チー
フの存在は必須だったようだ。
今回は研修者達への対応がメインとなっていたが、問題の放置は彼
の立場においては許されない。
淀み始めた流れをスムーズにするべく、手始めに副長とのやり取り
を始めた。
﹁副長、アーサーの手札と対象の現状はどうなっている?﹂
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﹁現在彼の手持ちは8・・・いえ、たった今5発に。残りもFAM
Aリミット、300未満です。
対象の現状は、完全破壊が約3割、不活性部位4割を超えました。
概ね順調に推移しています。﹂
副長の手元に有るモニタに映し出された各種消耗資材のデータ、そ
の内の特にアーサーの項目が、
艦外の状況と対象の現状に関する全観測データとの関連を裏付ける
ように、移り変わっていく。
対象への直撃コースに乗せたミサイルは1発が迎撃によって、直前
で派手な爆炎と共に散ったが、
彼自身の陽動と爆発とを目くらましに、爆心を上下に迂回した2発
が時間差を置いて突撃する。
1発目が対象を堅護していたエネルギーによる不可視の鎧を下から
抉り込むように消し去り、
2発目はがら空きになった防御をすり抜け、巨大なクラゲの傘の内
側へ素早く飛び込んで征く。
突進する最中もひと時たりと緩まなかった加速は、着弾点からの距
離が設定値を下回った瞬間、
残っていた全ての燃料を一気に食い尽くして推進する機能が作動し、
爆進へと切り替わった。
傘の外まで届かんとする強大な燃焼の白炎に後押しされたそれは、
弾頭内の更なる機能を発揮させ、
持っていた質量を運動エネルギーへと変換して万物をも貫き通す破
城槌へと瞬時に形成されていき、
味方機への被害を防ぐ為にやや深めの角度で突入したミサイルは、
課された役目を果たした。
アルファ・シェルで隔てられた艦内にまで直接響きそうな轟音と、
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閃光そして衝撃を生み出して、
強烈な破城槌は着弾点に有った蝕腕の大半をもぎ取り、その向こう
の傘と大地にまで大穴を穿つ。
モニタ上の光学観測データが表示した、恐ろしいほどの威力で彩ら
れた破壊の光景とは正反対に、
対象の現状とアーサーの残弾、それらの数値は僅かに、そして静か
に変化したのみだ。
彼の手持ち扱いとなるフロート・コンテナ内のミサイルは、既に全
弾撃ち尽くしている。
また、残った5発もFAMA︵飛行及び最大加速︶リミットが、3
00秒を切っていた。
今の一撃で不活性部位の割合が4割から5割に増えたが、まだ油断
していい状況では無い。
その他様々な条件を全て見極め、消耗の進んだ味方を下げるか否か
を的確に判断すべく、
チーフは傍らにどっしりと鎮座する艦長と、次いでアーサーにそれ
ぞれの意見を求めた。
﹃艦長、今から補給メインに切り替えたとして、体勢維持に必要な
時間は割り出せますか?
それと、アーサー。今有る残りの手札と味方機からの追加発射で、
時間は稼げそうか?﹄
﹃ふむ。今からだと、最低でも10分は欲しいところだ。アーサー、
君はどうかね?﹄
﹃時間稼ぎは勿論出来るが、その必要は無さそうだ。﹄
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﹃理由は?﹄
﹃後2∼3発、きっちりお見舞い出来ればアイツは完全に守りに入
る、多分な。﹄
﹃相変わらず、適当だな。﹄
﹃なにせ、行き当たりばったりの出たとこ勝負だからな。ハハッ!﹄
そう言い切って最後に笑い声を乗せた彼の発言に、不安を欠片も感
じなかったチーフは意を固め、
指示を待つ各部署とそれを統括する艦長と副長へ、改めて練り上げ
た流れを言葉で促した。
﹃艦長。現時刻をもって補給作業は中止、以降は収容した機体の修
理・整備をメインに。
それと、﹁シスターズ﹂には全機体の収容作業後、艦体の検査解
析許可を出して下さい。
機体収容に合わせて、艦を対象を中心に反時計回りで周回する軌
道をお願いします。﹄
﹃了解した。﹄
﹁副長。全攻撃班の内、残弾数の少ない機体を後衛に、余裕の有る
機体を前衛に配置してくれ。
後衛と前衛の中間、やや上空を周回して対象との距離を保ちつつ、
全機体を順次収容する。
それから、被弾・損傷した機体は艦尾側に回り込むよう指示を徹
底、最優先で収容する。﹂
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﹁了解しました、チーフ。﹂
﹃アーサー。自分の役割は理解したか?﹄
﹃ああ。全部終わるまでの時間稼ぎと決定打、だろ。﹄
﹃そうだ。﹄
﹃了解。﹄
﹃それから﹁コールド﹂、コイツに目を通しておいてくれ。﹄
﹃・・・え?﹄
流れに見入って︵あるいは聞き入って︶いて自身が呼ばれる事など
微塵も思っていなかった彼女へ、
チーフは﹁任務中の気晴らしに世間話でも﹂といった気軽さで、あ
るデータを手早く送りつけた。
﹃君達チームに、ちょっとしたプレゼントだ。﹄
﹃・・・了解しました、不明な点は後ほど質問します。﹄
﹃そうしてくれ。﹄
それから僅か10分も経たない内に、対象イウェルスム・プルモー
は活動低下で休眠に入り、
ウォラーレ・バーラエナは展開していた全機体︵と勿論、特装フロ
ート・コンテナも︶収容後、
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現れた時と同じく威容を余すところ無く誇るように、対象の傍を離
れて悠々と飛び去っていく。
穿たれた穴やもぎ取られた蝕腕、潰され凹み砕かれた巨大な傘など
あちこちから火煙を吹き、
とても再度活動するとは思えないほどのダメージを受け、休眠した
イウェルスム・プルモーの、
煙に包まれた傘付近の地上から、徐々に小さくなっていくウォラー
レ・バーラエナの姿を、
誰にも気付かれる事無く、一対の機械の瞳が静かに、そして密かに
見送っていた。
∼序章∼終了、∼第1章∼へ続く。
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PDF小説ネット発足にあたって
http://ncode.syosetu.com/n9459bq/
鋼魂の望む詠 ∼序章∼
2013年7月8日14時54分発行
ット発の縦書き小説を思う存分、堪能してください。
たんのう
公開できるようにしたのがこのPDF小説ネットです。インターネ
うとしています。そんな中、誰もが簡単にPDF形式の小説を作成、
など一部を除きインターネット関連=横書きという考えが定着しよ
行し、最近では横書きの書籍も誕生しており、既存書籍の電子出版
小説家になろうの子サイトとして誕生しました。ケータイ小説が流
ビ対応の縦書き小説をインターネット上で配布するという目的の基、
PDF小説ネット︵現、タテ書き小説ネット︶は2007年、ル
この小説の詳細については以下のURLをご覧ください。
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